JP2004206981A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】コーティング法によって製膜されたポリマーからなる正孔輸送層を備えながら、高い性能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】本発明によれば、一般式(I)
【化1】
(式中、Xは、アルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される繰返し単位からなるπ−共役ポリマーからなる正孔輸送層を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
特に、上記基Xがスルホン酸基(アルカリ金属塩の形でもよい。)を有するアリール基である上記π−共役ポリマーは水溶性であって、例えば、このポリマーの水/エタノール溶液を用いてコーティング法によって正孔輸送層を形成することができる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明によれば、一般式(I)
【化1】
(式中、Xは、アルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される繰返し単位からなるπ−共役ポリマーからなる正孔輸送層を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
特に、上記基Xがスルホン酸基(アルカリ金属塩の形でもよい。)を有するアリール基である上記π−共役ポリマーは水溶性であって、例えば、このポリマーの水/エタノール溶液を用いてコーティング法によって正孔輸送層を形成することができる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、詳しくは、コーティング法によって製膜されたポリマーからなる正孔輸送層を備えながら、高い性能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の有機エレクトロルミネッセンス素子が低電圧直流駆動、高効率、高輝度を有し、また、薄型化できるので、バックライトや照明装置のほか、ディスプレイ装置として、その実用化が進められている。
【0003】
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、代表的には、透明基板、例えば、ガラス基板上にITO膜(酸化インジウム−酸化スズ膜)のような透明電極からなる陽極が積層されており、この陽極上に有機正孔輸送層、有機発光層及び金属電極からなる陰極がこの順序にて積層されてなるものであり、上記陽極と陰極は外部の電源に接続されている。場合によっては、有機発光層と陰極との間に有機電子輸送層が積層されることもある。このほかにも、種々の構成とした有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記有機正孔輸送層は、陽極に密着していて、この陽極から正孔を有機発光層に輸送すると共に、電子をブロックし、他方、有機電子輸送層は、陰極に密着していて、この陰極から電子を有機発光層に輸送し、そこで、有機発光層において、陰極から注入した電子と陽極から有機発光層に注入した正孔とが再結合するときに発光が生じ、これが透明電極(陽極)と透明基板を通して外部に放射される。
【0005】
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子の製作においては、それ自体、アモルファス膜を形成し得る低分子量有機化合物からなる正孔輸送層を形成する場合が多い(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、一般に、低分子量有機化合物は結晶化や凝集を起こすおそれがあり、また、ガラス転移温度も殆どの場合、60〜110℃程度であるので、従来、低分子量有機化合物からなる正孔輸送層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子は耐久性に問題がある。更に、低分子量有機化合物からなる正孔輸送層を形成するには、高価な蒸着装置を必要とし、しかも、生産性に劣る問題があった。
【0006】
そこで、近年、コーティング法にて製膜してポリマーからなる正孔輸送層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子も種々、提案されている。そのようなポリマーは、代表的には、従来より正孔輸送材料として知られている低分子量芳香族アミンを側鎖に有せしめた構造を有しており(例えば、特許文献4〜6参照)、従って、そのようなポリマーを得るためのモノマーの製造が容易ではなく、しかも、その正孔輸送層としての性能も尚、十分であるとはいい難い。
【0007】
更に、上記ポリマーは、一般に、多くの有機溶剤に溶解し、従って、そのようなポリマー溶液を用いて正孔輸送層を製膜するので、多くの場合、その上に更に有機溶剤を含む溶液をコーティングして発光層等を製膜すれば、上記正孔輸送層を溶解させて、その性能を損なうおそれがあった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−1972号公報
【特許文献2】特開平1−224353号公報
【特許文献3】特開平9−188653号公報
【特許文献4】特開平8−54833公報
【特許文献5】特開平9−12630号公報
【特許文献6】特開2002−124389号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子における上述した問題を解決するためになされたものであって、コーティング法によって製膜されたポリマーからなる正孔輸送層を備えながら、高い性能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、一般式(I)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは、アルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される繰返し単位からなるπ−共役ポリマーからなる正孔輸送層を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0013】
特に、本発明において、上記π−共役ポリマーの好ましい一例は、一般式(II)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Yはプロトン又はアルカリ金属イオンを示し、nは1、2又は3である。)
で表される繰返し単位からなる水溶性のものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、正孔輸送層として用いるπ−共役ポリマーは、一般式(I)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、Xは、アルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される繰返し単位からなる。
【0019】
上記一般式(I)で表されるπ−共役ポリマーにおいて、Xは、アルキル基か、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、好ましくは、炭素原子数1〜12のアルキル基か、又は置換基を有していてもよいアリール基、即ち、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基又はビフェニル基であり、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。ここに、上記アリール基が置換基を有する場合、その置換基の数は1〜3つの範囲である。本発明において、アリール基の有する上記置換基は、酸化還元反応に不活性なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、炭素原子数1〜12のアルコキシル基や解離性基を挙げることができ、最も好ましい解離性基として、スルホン酸基を挙げることができる。
【0020】
従って、本発明において、置換基を有するアリール基Xの好ましい具体例として、例えば、o−スルホフェニル基、m−スルホフェニル基、p−スルホフェニル基、o,p−ジスルホフェニル基、p−デシルオキシフェニル基等を挙げることができる。
【0021】
特に、本発明によれば、置換基を有するアリール基Xは、好ましくは、解離性基を置換基として有するアリール基、特に、フェニル基であり、最も好ましい解離性基はスルホン酸基である。本発明によれば、上記スルホン酸基は、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のようなアルカリ金属塩の形であってもよい。
【0022】
このように、上記一般式(I)において、Xが置換基として1〜3つのスルホフェニル基(アルカリ金属塩の形であってもよい。)を有するアリール基であるπ−共役ポリマーは、脂肪族炭化水素溶媒や芳香族炭化水素溶媒に不溶性であり、他方、水や水/低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)混合物に溶解し、従って、水や水/低級アルコール混合物を溶媒とする溶液として適宜の基材上にコーティングし、乾燥すれば、薄膜を形成することができる。
【0023】
上記一般式(I)において、Xがスルホフェニル基(アルカリ金属塩の形であってもよい。)であるπ−共役ポリマーは、既に知られており(青田ら、Chemistry Letters、1997年、527〜528頁、青田ら、第48回高分子討論会予稿集、2219〜2220頁(1999年)、大月ら、第49回高分子学会年次大会予稿集、3019〜3020頁(2000年)、塩出ら、第50回高分子学会年次大会予稿集、786頁(2001年)等)、例えば、下記スキームに示すように、溶媒中、p−トルエンスルホン酸のような酸触媒の存在下にピロールとo−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムとを付加縮合反応させて、一般式(1)に示すような非共役ポリマーを得、次いで、この非共役ポリマーを溶媒中、例えば、クロラニルのような酸化剤を用いて酸化すれば、一般式(2)に示すような目的とするπ−共役ポリマーを得ることができる。
【0024】
特に、本発明によれば、π−共役ポリマーは、重量平均分子量が2000以上であることが好ましく、特に、3000〜30000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が2000よりも小さいときは、そのようなπ−共役ポリマーを成膜して、正孔輸送層として用いても、得られる有機エレクトロルミネッセンス素子は、十分な性能を得ることができず、他方、重量平均分子量が30000を越えるときは、一般に、溶媒への溶解性が悪くなり、コーティング法によって成膜し難くなる。特に、Xがスルホフェニル基(アルカリ金属塩の形であってもよい。)を有するアリール基であるπ−共役ポリマーの場合には、水への溶解性が悪くなる。
【0025】
【化6】
【0026】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、その一例を図1に示すように、例えば、ガラスからなる透明基板1上に透明電極からなる陽極2が密着して積層、支持されており、この透明電極上に有機正孔輸送層3、有機発光層4及び金属電極からなる陰極5がこの順序で積層されてなるものである。上記陽極と陰極は外部の電源6に接続されている。従って、従来の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ装置と同様に、上記発光層における発光を上記透明基板から外部に放射させる。
【0027】
しかし、場合によっては、前述したように、有機発光層と陰極との間に有機電子輸送層が積層されてもよく、また、正孔輸送層と発光層とを単一の層としてもよく、陽極と正孔輸送層との間に導電性高分子層(バッファー層)を積層してもよい。また、図1に示したように、正孔輸送層(第1の正孔輸送層)3の上に更に第2の正孔輸送層3aを積層してもよい。このように、本発明において、有機エレクトロルミネッセンス素子の積層構造は、特に、限定されるものではない。
【0028】
即ち、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記正孔輸送層(第1の正孔輸送層)が上記π−共役ポリマーからなる点に特徴を有し、上記π−共役ポリマーを適宜の溶媒に溶解させて溶液とし、これを適宜手段、例えば、スピンコート法によって、陽極上にコーティングし、乾燥すれば、正孔輸送層を形成することができる。その膜厚は、通常、1nmから1μmの範囲である。この正孔輸送層の上に常法に従って、有機発光層と陰極を積層すれば、有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
【0029】
従って、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記正孔輸送層以外の層、即ち、透明基板、陽極、有機発光層及び金属電極は、従来より知られているものが適宜に用いられる。従って、陽極としては、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)や酸化スズ−酸化インジウム等からなる透明電極が用いられ、陰極には、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、銀等の単体金属や、これらの合金、例えば、Al−Mg合金、Ag−Mg合金等の金属電極が用いられ、透明基板としては、通常、ガラス基板が用いられる。
【0030】
有機発光層には、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3 )が用いられ、その膜厚は、通常、1nmから1μmの範囲である。また、有機エレクトロルミネッセンス素子が電子輸送層を含むときは、その膜厚は、通常、1nmから1μmの範囲であり、導電性高分子層を含むときは、その膜厚は、通常、1〜100nmの範囲である。
【0031】
また、本発明によれば、必要に応じて、従来より知られている正孔輸送層のための低分子量有機化合物、例えば、4,4’−ビス(N,N−フェニル−m−トリルアミノ)ジフェニルアミン(TPD)、4,4’,4”−トリス(N,N−フェニル−m−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等を用いて、本発明による第1の正孔輸送層の上に第2の正孔輸送層を形成してもい。また、必要に応じて、前記π−共役ポリマーと上記低分子量有機化合物との混合物を陽極上にコーティングして、正孔輸送層を形成してもよい。
【0032】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
参考例1
前記スキームに示したように、o−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウム1.05g(5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド2.36gに溶解させ、更に、p−トルエンスルホン酸0.031g(0.1mmol)を溶解させた。この溶液に窒素雰囲気下に攪拌しながら、温度25℃でピロール0.335g(5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド2.36gの溶液を滴下した。滴下終了後、温度25℃で窒素雰囲気下に攪拌しながら、更に、24時間反応させた。
【0034】
反応終了後、得られた暗赤色ゼリー状の反応混合物にN,N−ジメチルホルムアミドを加え、解砕した後、温度0℃に保ちながら、クロラニル(テトラクロル−p−ベンゾキノン)1.23g(5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド30mLの溶液を24時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、0℃で24時間攪拌して、黒色のπ−共役ポリマー溶液を得た。
【0035】
このポリマー溶液にN,N−ジメチルホルムアミド/トルエン混合溶媒を加えて、ポリマーを沈殿させ、これを濾過、乾燥させた。得られたポリマーをN,N−ジメチルホルムアミドに再溶解させ、これにトルエンを加えて、再沈殿させ、更に、再沈殿を繰り返した後、濾過、乾燥させて、黒色のπ−共役ポリマーを得た。このπ−共役ポリマーは水やN,N−ジメチルホルムアミドに易溶性であり、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン等に不溶性であった。
【0036】
このπ−共役ポリマーは、熱分析の結果、分解が始まる250℃付近まで、ガラス転移温度が観察されないので、ガラス転移温度は非常に高いものと推定される。更に、超遠心法にて測定した重量平均分子量は19000であった。また、このπ−ポリマーのサイクリック・ボルタモグラムを次のようにして行った。即ち、作用電極に白金線を用い、この電極をπ−ポリマーの5重量%濃度水溶液に浸漬し、引き上げた後、空気中で加熱、乾燥させたものを0.1MのTBABF4 (テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート)を電解質として含むアセトニトリル中、対極に白金線、参照極に銀/銀イオン電極を用いて測定した。20mV/秒の掃引速度で測定したサイクリック・ボルタモグラムを図2に示す。レストポテンシャル(自然電極電位)である−0.24V(vs.Ag/Ag+)を過ぎてから、直ぐに酸化が始まっていることから、このπ−共役ポリマーは低い酸化電位を有するものと推定され、従って、正孔輸送剤として好適に用いることができることが示される。
【0037】
実施例1
参考例1で得たπ−共役ポリマーを水/エタノール(重量比3/1)混合溶媒に溶解させて、1.5重量%溶液を調製した。この溶液を回転数2000rpmにてITO透明電極(陽極)上にスピンコートした後、180℃で15分間、加熱乾燥させて、膜厚50nmの第1の正孔輸送層を形成した。次いで、この第1の正孔輸送層の上に第2の正孔輸送層として、N,N−α−ナフチル−m−トリルアミノ)ジフェニルアミン(α−NPD)層(膜厚10nm)と発光層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3 )層(膜厚50nm)をこの順序で真空蒸着法によって積層し、更に、この上に陰極としてマグネシウム−銀合金を共蒸着して、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。上記電極間に電圧を印加して、上記素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
実施例1において、o−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムに代えて、p−デシルオキシベンズアルデヒドを用いた以外は、参考例1と同様にして、一般式(I)においてXがp−デシルオキシフェニル基であるπ−共役ポリマーを得た。このπ−共役ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させて、1.5重量%濃度溶液を調製した。この溶液を回転数2000rpmにてITO透明電極(陽極)上にスピンコートした後、180℃で15分間、加熱乾燥させて、膜厚50nmの第1の正孔輸送層を形成した。この後、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、この素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例3
実施例1において、o−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムに代えて、o,p−ベンズアルデヒドジスルホン酸ナトリウムを用いた以外は、参考例1と同様にして、一般式(I)においてXがo,p−ジスルホフェニル基であるπ−共役ポリマーを得た。このπ−共役ポリマーを水/エタノール(重量比3/1)混合溶媒に溶解させて、1.5重量%濃度溶液を調製した。この溶液を回転数2000rpmにてITO透明電極(陽極)上にスピンコートした後、180℃で15分間、加熱乾燥させて、膜厚50nmの第1の正孔輸送層を形成した。この後、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、この素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
比較例1
ITO透明電極(陽極)上に4,4’,4”−トリス〔N,N−(フェニル−m−トリルアミノ〕トリフェニルアミン(m−MTDATA)を真空蒸着して、第1の正孔輸送層(膜厚50nm)を形成した。次いで、この第1の正孔輸送層の上に第2の正孔輸送層として、N,N−α−ナフチル−m−トリルアミノ)ジフェニルアミン(α−NPD)層(膜厚10nm)と発光層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3 )層(膜厚50nm)をこの順序で真空蒸着法によって積層し、更に、この上に陰極としてマグネシウム−銀合金を共蒸着して、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。上記電極間に電圧を印加して、上記素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従って、前述したπ−共役ポリマーからなる正孔輸送層を用いることによって、m−MTDATAを正孔輸送層として用いる比較例1に比べて、低い駆動電圧によって高い輝度を得ることができる。
【0043】
【発明の効果】
前記一般式(I)で表されるπ−共役ポリマーは、酸化電位が低く、正孔注入効率が高い。従って、このようなπ−共役ポリマーを正孔輸送層として用いてなる本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、低い駆動電圧にて高い輝度を示す。また、本発明において、このように正孔輸送層として用いる上記π−共役ポリマーは、製造が非常に容易であり、低コストにて高純度品を得ることができるので、この点においても工業上、非常に有利である。
【0044】
更に、本発明によれば、前記一般式(II)で表されるπ−共役ポリマーは、そのスルホン酸基のために親水性であって、例えば、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等の溶媒に溶解しないので、正孔輸送層に乱れを生じさせることなく、上記π−共役ポリマーからなる正孔輸送層の上に上記溶媒を含むコーティング剤を塗布して所要の層を形成することができ、かくして、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造を簡単化し、製造費用の低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の断面図である。
【図2】本発明において用いるπ−共役ポリマーのサイクリック・ボルタモグラムである。
【符号の説明】
1…透明基板
2…透明電極(陽極)
3…(第1の)有機正孔輸送層
3a…第2の有機正孔輸送層
4…有機発光層
5…金属電極(陰極)
6…電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、詳しくは、コーティング法によって製膜されたポリマーからなる正孔輸送層を備えながら、高い性能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の有機エレクトロルミネッセンス素子が低電圧直流駆動、高効率、高輝度を有し、また、薄型化できるので、バックライトや照明装置のほか、ディスプレイ装置として、その実用化が進められている。
【0003】
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、代表的には、透明基板、例えば、ガラス基板上にITO膜(酸化インジウム−酸化スズ膜)のような透明電極からなる陽極が積層されており、この陽極上に有機正孔輸送層、有機発光層及び金属電極からなる陰極がこの順序にて積層されてなるものであり、上記陽極と陰極は外部の電源に接続されている。場合によっては、有機発光層と陰極との間に有機電子輸送層が積層されることもある。このほかにも、種々の構成とした有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記有機正孔輸送層は、陽極に密着していて、この陽極から正孔を有機発光層に輸送すると共に、電子をブロックし、他方、有機電子輸送層は、陰極に密着していて、この陰極から電子を有機発光層に輸送し、そこで、有機発光層において、陰極から注入した電子と陽極から有機発光層に注入した正孔とが再結合するときに発光が生じ、これが透明電極(陽極)と透明基板を通して外部に放射される。
【0005】
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子の製作においては、それ自体、アモルファス膜を形成し得る低分子量有機化合物からなる正孔輸送層を形成する場合が多い(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、一般に、低分子量有機化合物は結晶化や凝集を起こすおそれがあり、また、ガラス転移温度も殆どの場合、60〜110℃程度であるので、従来、低分子量有機化合物からなる正孔輸送層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子は耐久性に問題がある。更に、低分子量有機化合物からなる正孔輸送層を形成するには、高価な蒸着装置を必要とし、しかも、生産性に劣る問題があった。
【0006】
そこで、近年、コーティング法にて製膜してポリマーからなる正孔輸送層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子も種々、提案されている。そのようなポリマーは、代表的には、従来より正孔輸送材料として知られている低分子量芳香族アミンを側鎖に有せしめた構造を有しており(例えば、特許文献4〜6参照)、従って、そのようなポリマーを得るためのモノマーの製造が容易ではなく、しかも、その正孔輸送層としての性能も尚、十分であるとはいい難い。
【0007】
更に、上記ポリマーは、一般に、多くの有機溶剤に溶解し、従って、そのようなポリマー溶液を用いて正孔輸送層を製膜するので、多くの場合、その上に更に有機溶剤を含む溶液をコーティングして発光層等を製膜すれば、上記正孔輸送層を溶解させて、その性能を損なうおそれがあった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−1972号公報
【特許文献2】特開平1−224353号公報
【特許文献3】特開平9−188653号公報
【特許文献4】特開平8−54833公報
【特許文献5】特開平9−12630号公報
【特許文献6】特開2002−124389号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子における上述した問題を解決するためになされたものであって、コーティング法によって製膜されたポリマーからなる正孔輸送層を備えながら、高い性能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、一般式(I)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは、アルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される繰返し単位からなるπ−共役ポリマーからなる正孔輸送層を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0013】
特に、本発明において、上記π−共役ポリマーの好ましい一例は、一般式(II)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Yはプロトン又はアルカリ金属イオンを示し、nは1、2又は3である。)
で表される繰返し単位からなる水溶性のものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、正孔輸送層として用いるπ−共役ポリマーは、一般式(I)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、Xは、アルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される繰返し単位からなる。
【0019】
上記一般式(I)で表されるπ−共役ポリマーにおいて、Xは、アルキル基か、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、好ましくは、炭素原子数1〜12のアルキル基か、又は置換基を有していてもよいアリール基、即ち、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基又はビフェニル基であり、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。ここに、上記アリール基が置換基を有する場合、その置換基の数は1〜3つの範囲である。本発明において、アリール基の有する上記置換基は、酸化還元反応に不活性なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、炭素原子数1〜12のアルコキシル基や解離性基を挙げることができ、最も好ましい解離性基として、スルホン酸基を挙げることができる。
【0020】
従って、本発明において、置換基を有するアリール基Xの好ましい具体例として、例えば、o−スルホフェニル基、m−スルホフェニル基、p−スルホフェニル基、o,p−ジスルホフェニル基、p−デシルオキシフェニル基等を挙げることができる。
【0021】
特に、本発明によれば、置換基を有するアリール基Xは、好ましくは、解離性基を置換基として有するアリール基、特に、フェニル基であり、最も好ましい解離性基はスルホン酸基である。本発明によれば、上記スルホン酸基は、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のようなアルカリ金属塩の形であってもよい。
【0022】
このように、上記一般式(I)において、Xが置換基として1〜3つのスルホフェニル基(アルカリ金属塩の形であってもよい。)を有するアリール基であるπ−共役ポリマーは、脂肪族炭化水素溶媒や芳香族炭化水素溶媒に不溶性であり、他方、水や水/低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)混合物に溶解し、従って、水や水/低級アルコール混合物を溶媒とする溶液として適宜の基材上にコーティングし、乾燥すれば、薄膜を形成することができる。
【0023】
上記一般式(I)において、Xがスルホフェニル基(アルカリ金属塩の形であってもよい。)であるπ−共役ポリマーは、既に知られており(青田ら、Chemistry Letters、1997年、527〜528頁、青田ら、第48回高分子討論会予稿集、2219〜2220頁(1999年)、大月ら、第49回高分子学会年次大会予稿集、3019〜3020頁(2000年)、塩出ら、第50回高分子学会年次大会予稿集、786頁(2001年)等)、例えば、下記スキームに示すように、溶媒中、p−トルエンスルホン酸のような酸触媒の存在下にピロールとo−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムとを付加縮合反応させて、一般式(1)に示すような非共役ポリマーを得、次いで、この非共役ポリマーを溶媒中、例えば、クロラニルのような酸化剤を用いて酸化すれば、一般式(2)に示すような目的とするπ−共役ポリマーを得ることができる。
【0024】
特に、本発明によれば、π−共役ポリマーは、重量平均分子量が2000以上であることが好ましく、特に、3000〜30000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が2000よりも小さいときは、そのようなπ−共役ポリマーを成膜して、正孔輸送層として用いても、得られる有機エレクトロルミネッセンス素子は、十分な性能を得ることができず、他方、重量平均分子量が30000を越えるときは、一般に、溶媒への溶解性が悪くなり、コーティング法によって成膜し難くなる。特に、Xがスルホフェニル基(アルカリ金属塩の形であってもよい。)を有するアリール基であるπ−共役ポリマーの場合には、水への溶解性が悪くなる。
【0025】
【化6】
【0026】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、その一例を図1に示すように、例えば、ガラスからなる透明基板1上に透明電極からなる陽極2が密着して積層、支持されており、この透明電極上に有機正孔輸送層3、有機発光層4及び金属電極からなる陰極5がこの順序で積層されてなるものである。上記陽極と陰極は外部の電源6に接続されている。従って、従来の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ装置と同様に、上記発光層における発光を上記透明基板から外部に放射させる。
【0027】
しかし、場合によっては、前述したように、有機発光層と陰極との間に有機電子輸送層が積層されてもよく、また、正孔輸送層と発光層とを単一の層としてもよく、陽極と正孔輸送層との間に導電性高分子層(バッファー層)を積層してもよい。また、図1に示したように、正孔輸送層(第1の正孔輸送層)3の上に更に第2の正孔輸送層3aを積層してもよい。このように、本発明において、有機エレクトロルミネッセンス素子の積層構造は、特に、限定されるものではない。
【0028】
即ち、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記正孔輸送層(第1の正孔輸送層)が上記π−共役ポリマーからなる点に特徴を有し、上記π−共役ポリマーを適宜の溶媒に溶解させて溶液とし、これを適宜手段、例えば、スピンコート法によって、陽極上にコーティングし、乾燥すれば、正孔輸送層を形成することができる。その膜厚は、通常、1nmから1μmの範囲である。この正孔輸送層の上に常法に従って、有機発光層と陰極を積層すれば、有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
【0029】
従って、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記正孔輸送層以外の層、即ち、透明基板、陽極、有機発光層及び金属電極は、従来より知られているものが適宜に用いられる。従って、陽極としては、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)や酸化スズ−酸化インジウム等からなる透明電極が用いられ、陰極には、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、銀等の単体金属や、これらの合金、例えば、Al−Mg合金、Ag−Mg合金等の金属電極が用いられ、透明基板としては、通常、ガラス基板が用いられる。
【0030】
有機発光層には、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3 )が用いられ、その膜厚は、通常、1nmから1μmの範囲である。また、有機エレクトロルミネッセンス素子が電子輸送層を含むときは、その膜厚は、通常、1nmから1μmの範囲であり、導電性高分子層を含むときは、その膜厚は、通常、1〜100nmの範囲である。
【0031】
また、本発明によれば、必要に応じて、従来より知られている正孔輸送層のための低分子量有機化合物、例えば、4,4’−ビス(N,N−フェニル−m−トリルアミノ)ジフェニルアミン(TPD)、4,4’,4”−トリス(N,N−フェニル−m−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等を用いて、本発明による第1の正孔輸送層の上に第2の正孔輸送層を形成してもい。また、必要に応じて、前記π−共役ポリマーと上記低分子量有機化合物との混合物を陽極上にコーティングして、正孔輸送層を形成してもよい。
【0032】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
参考例1
前記スキームに示したように、o−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウム1.05g(5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド2.36gに溶解させ、更に、p−トルエンスルホン酸0.031g(0.1mmol)を溶解させた。この溶液に窒素雰囲気下に攪拌しながら、温度25℃でピロール0.335g(5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド2.36gの溶液を滴下した。滴下終了後、温度25℃で窒素雰囲気下に攪拌しながら、更に、24時間反応させた。
【0034】
反応終了後、得られた暗赤色ゼリー状の反応混合物にN,N−ジメチルホルムアミドを加え、解砕した後、温度0℃に保ちながら、クロラニル(テトラクロル−p−ベンゾキノン)1.23g(5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド30mLの溶液を24時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、0℃で24時間攪拌して、黒色のπ−共役ポリマー溶液を得た。
【0035】
このポリマー溶液にN,N−ジメチルホルムアミド/トルエン混合溶媒を加えて、ポリマーを沈殿させ、これを濾過、乾燥させた。得られたポリマーをN,N−ジメチルホルムアミドに再溶解させ、これにトルエンを加えて、再沈殿させ、更に、再沈殿を繰り返した後、濾過、乾燥させて、黒色のπ−共役ポリマーを得た。このπ−共役ポリマーは水やN,N−ジメチルホルムアミドに易溶性であり、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン等に不溶性であった。
【0036】
このπ−共役ポリマーは、熱分析の結果、分解が始まる250℃付近まで、ガラス転移温度が観察されないので、ガラス転移温度は非常に高いものと推定される。更に、超遠心法にて測定した重量平均分子量は19000であった。また、このπ−ポリマーのサイクリック・ボルタモグラムを次のようにして行った。即ち、作用電極に白金線を用い、この電極をπ−ポリマーの5重量%濃度水溶液に浸漬し、引き上げた後、空気中で加熱、乾燥させたものを0.1MのTBABF4 (テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート)を電解質として含むアセトニトリル中、対極に白金線、参照極に銀/銀イオン電極を用いて測定した。20mV/秒の掃引速度で測定したサイクリック・ボルタモグラムを図2に示す。レストポテンシャル(自然電極電位)である−0.24V(vs.Ag/Ag+)を過ぎてから、直ぐに酸化が始まっていることから、このπ−共役ポリマーは低い酸化電位を有するものと推定され、従って、正孔輸送剤として好適に用いることができることが示される。
【0037】
実施例1
参考例1で得たπ−共役ポリマーを水/エタノール(重量比3/1)混合溶媒に溶解させて、1.5重量%溶液を調製した。この溶液を回転数2000rpmにてITO透明電極(陽極)上にスピンコートした後、180℃で15分間、加熱乾燥させて、膜厚50nmの第1の正孔輸送層を形成した。次いで、この第1の正孔輸送層の上に第2の正孔輸送層として、N,N−α−ナフチル−m−トリルアミノ)ジフェニルアミン(α−NPD)層(膜厚10nm)と発光層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3 )層(膜厚50nm)をこの順序で真空蒸着法によって積層し、更に、この上に陰極としてマグネシウム−銀合金を共蒸着して、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。上記電極間に電圧を印加して、上記素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
実施例1において、o−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムに代えて、p−デシルオキシベンズアルデヒドを用いた以外は、参考例1と同様にして、一般式(I)においてXがp−デシルオキシフェニル基であるπ−共役ポリマーを得た。このπ−共役ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させて、1.5重量%濃度溶液を調製した。この溶液を回転数2000rpmにてITO透明電極(陽極)上にスピンコートした後、180℃で15分間、加熱乾燥させて、膜厚50nmの第1の正孔輸送層を形成した。この後、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、この素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例3
実施例1において、o−ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムに代えて、o,p−ベンズアルデヒドジスルホン酸ナトリウムを用いた以外は、参考例1と同様にして、一般式(I)においてXがo,p−ジスルホフェニル基であるπ−共役ポリマーを得た。このπ−共役ポリマーを水/エタノール(重量比3/1)混合溶媒に溶解させて、1.5重量%濃度溶液を調製した。この溶液を回転数2000rpmにてITO透明電極(陽極)上にスピンコートした後、180℃で15分間、加熱乾燥させて、膜厚50nmの第1の正孔輸送層を形成した。この後、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、この素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
比較例1
ITO透明電極(陽極)上に4,4’,4”−トリス〔N,N−(フェニル−m−トリルアミノ〕トリフェニルアミン(m−MTDATA)を真空蒸着して、第1の正孔輸送層(膜厚50nm)を形成した。次いで、この第1の正孔輸送層の上に第2の正孔輸送層として、N,N−α−ナフチル−m−トリルアミノ)ジフェニルアミン(α−NPD)層(膜厚10nm)と発光層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3 )層(膜厚50nm)をこの順序で真空蒸着法によって積層し、更に、この上に陰極としてマグネシウム−銀合金を共蒸着して、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。上記電極間に電圧を印加して、上記素子の輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従って、前述したπ−共役ポリマーからなる正孔輸送層を用いることによって、m−MTDATAを正孔輸送層として用いる比較例1に比べて、低い駆動電圧によって高い輝度を得ることができる。
【0043】
【発明の効果】
前記一般式(I)で表されるπ−共役ポリマーは、酸化電位が低く、正孔注入効率が高い。従って、このようなπ−共役ポリマーを正孔輸送層として用いてなる本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、低い駆動電圧にて高い輝度を示す。また、本発明において、このように正孔輸送層として用いる上記π−共役ポリマーは、製造が非常に容易であり、低コストにて高純度品を得ることができるので、この点においても工業上、非常に有利である。
【0044】
更に、本発明によれば、前記一般式(II)で表されるπ−共役ポリマーは、そのスルホン酸基のために親水性であって、例えば、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等の溶媒に溶解しないので、正孔輸送層に乱れを生じさせることなく、上記π−共役ポリマーからなる正孔輸送層の上に上記溶媒を含むコーティング剤を塗布して所要の層を形成することができ、かくして、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造を簡単化し、製造費用の低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の断面図である。
【図2】本発明において用いるπ−共役ポリマーのサイクリック・ボルタモグラムである。
【符号の説明】
1…透明基板
2…透明電極(陽極)
3…(第1の)有機正孔輸送層
3a…第2の有機正孔輸送層
4…有機発光層
5…金属電極(陰極)
6…電源
Claims (2)
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JP2008512856A (ja) * | 2004-09-03 | 2008-04-24 | ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア | 可溶性共役ポリマーを使用する方法及びデバイス |
JP4883297B2 (ja) * | 2004-08-31 | 2012-02-22 | 日産化学工業株式会社 | アリールスルホン酸化合物及び電子受容性物質としての利用 |
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2002
- 2002-12-24 JP JP2002373309A patent/JP2004206981A/ja active Pending
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