JP7213786B2 - エレベーター運行診断装置およびエレベーター運行診断システム - Google Patents

エレベーター運行診断装置およびエレベーター運行診断システム Download PDF

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Description

本発明は、エレベーター運行診断装置およびエレベーター運行診断システムに関する。
エレベーターは、ビル内における垂直移動の交通システムであり、ビル内の利用者のスムーズな移動を支えている。特に、複数台のエレベーターが運行しているケースでは、複数台のエレベーターを「群」として統括制御するエレベーター群管理システムが、利用者の待ち時間を考慮して効率の良い運行を実現している。近年、群管理システムでは、乗りかごの運行軌跡を予測し、待ち時間のさらなる短縮を図る制御が行われている。しかしながら、利用者側の利用条件によってはエレベーターの運行効率が低下することがある。
特許文献1には、エレベーター群管理システムに対して、エレベーター運行に関する利用者からのクレームや、実際にクレームが寄せられなくても一時的にエレベーターの運行効率が低下するような現象が発生しないようにする改善策と、これを用いてエレベーターの運行制御を行うシステムが開示されている。なお、特許文献1に示される改善策には、複数台のエレベーター群の運転仕様に関するもの、例えば、停止中のエレベーターを稼働させるなどの改善策や、少数人数での発車を抑制するために、出発階での乗り込み待ちサービス中のエレベーター号機の戸閉ボタンを無効にするなどの改善策がある。
また、特許文献2には、エレベーター利用者の入館情報を集計して運行計画を作成する技術が開示されている。すなわち、特許文献2には、エレベーターホールに通じる通路に利用者が通過するゲートが設置され、このゲート通過人数の情報から分割急行運転のような群管理エレベーターの運行制御を実施する例が開示されている。
さらに、特許文献3には、エレベーターの利便性低下を最小限に抑えた上で、管理者の設定した省エネ目標を確実に達成するためのエレベーターの運転制限情報を提示する技術が開示されている。すなわち、特許文献3には、積算電力量情報から、遠隔監視装置、管制センターを介して省エネのためのエレベーターの運転制限情報を提示して、顧客端末で確認できる例が開示されている。
特許第2846102号公報 特許第4739848号公報 特開2007-55700号公報
しかしながら、特許文献1に記載のエレベーターの運行制御システムは、実施される改善策がエレベーターの群管理制御装置によって実行できるものに限定される。ここで、実際の現場で起きているエレベーターの運行効率の低下が生じる原因を調べると、エレベーターの群管理制御のようなシステム制御による原因以外の場合が多い。このため、エレベーターの群管理制御装置によって実行できる改善策では大きな改善効果を期待できないという問題がある。またこの特許文献1に記載の技術では、複数の改善策の候補が提示される可能性があり、その場合に、ビルの管理者がどの改善策を選ぶのが適切かが分からないということも問題である。
また特許文献2に開示されている分割急行運転やフレキシブル急行運転などのエレベーターの運行制御は、エレベーターの行先階を限定する制御となるため、利用者にとって利用の自由度が減って利便性が損なわれるという問題がある。また制御のプログラムの変更や案内表示が必要なため、実施費用も大きい。したがって、混雑が問題となっているエレベーターに対して、特許文献2に記載の技術が必ずしもより適切な改善策であるとは限らず、より広い観点で改善策を選んで実施することが望まれている。
また、特許文献3に記載の技術は、省エネを重視してエレベーターの運行を制限するようにビル管理者に情報提供するものであり、エレベーターの運行効率を改善するための技術ではない。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決するもので、待ち時間が長い状況や混雑状況などのエレベーターの運行効率低下が発生している状況で、その運行効率低下を多様な方法で適切に改善するような改善策をビル管理者に提示し、さらにそのような改善策を実行できるエレベーター運行診断装置およびエレベーター運行診断システムを提供することにある。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本発明のエレベーター運行診断装置は、エレベーターの運行データを収集して、運行データに基づいてそのエレベーターの運行効率が低下する現象を検出する運行効率低下現象検出処理部と、運行効率の低下現象の要因を判定する要因判定処理部と、運行効率低下現象検出処理部で検出した運行効率低下現象と要因判定処理部で判定した要因に基づいて一つもしくは複数の改善策を選定する改善策選定処理部と、改善策選定処理部で選定した改善策を出力する改善策情報出力処理部と、エレベーターの運行効率低下現象の要因および他のエレベーターで過去に実施した改善策を記録したデータベースと、を備える。
そして、本発明のエレベーター運行診断装置は、改善策は、エレベーターの運行制御の変更、エレベーターの利用者に対するエレベーターの利用方法および/または操作方法に関する情報の通知、エレベーターの利用状態の制限のうち、すくなくとも2つを含み、改善策選定処理部は、改善策の改善効果の大きさ、改善策の実施にかかる費用、および改善策の実施で生じるエレベーター利用者の行動変化の大きさのそれぞれに対する評価値を算出するとともに、これらの各評価値の加算値もしくは重み付け加算値によって、改善策に対する評価スコアを算出し、算出した評価スコアに基づいて、選定した改善策の改善効果の大きさを見積るとともに、データベースに記録されている他のエレベーターにて同じ改善策を実施した場合には、他のエレベーターで実施した改善効果の実績データに基づいて効果の大きさを見積もるようにした
本発明によれば、エレベーターの運行効率低下が発生している状況で、そのエレベーターの運行データに基づいて運行効率低下を多様な方法で適切に改善することが可能な改善策を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明による一実施形態を示すエレベーター運行診断システム全体のソフトウェア機能を示す機能ブロック図である。 本発明による一実施形態を示すエレベーター運行診断システムで用いられるデータベースのデータ構造を示す図である。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システム全体のハードウェア構成を示す図である。 本発明の一実施形態におけるエレベーター運行診断システム全体の処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策の評価処理の例を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策の評価データの例を示す図である。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策の効果算出処理の例を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策の推奨順位を決定する処理の例を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策の実施計画を策定する処理の例(その1)を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策の実施計画を策定する処理の例(その2)を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策のうち、最初にベース型の制御を行い、次に特化型の制御を行ったときの性能の変化を示す図である。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおけるダッシュボード上での運行診断結果の表示例を示す図である。 本発明の一実施形態のエレベーター運行診断システムにおける改善策実施の手順の提示例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態例について、図面を参照して説明するが、その前に、本発明によるエレベーター運行診断システムに関する基本的考え方について説明する。
本発明の実施の形態例が対象とする課題は、ビルで稼働しているエレベーターの運行効率が低下する現象を改善することである。
ここで、「運行効率低下の現象」とは、何らかの理由でエレベーターの運行性能が利用者の所望する性能に至らない状態となる現象である。例えば、ある時間帯において利用者に対する平均待ち時間が長い状態、乗り場の利用者が乗りかごに乗り切れず積み残しとなる状態、さらにそれが継続して乗り場に利用者の行列ができる状態、あるいはエレベーターが各階停止となって乗車時間が長い状態などが考えられる。
これらの運行効率低下の現象には、エレベーター群管理制御が原因となる場合もあるが、実際に生じているケースを見ると、エレベーターの群管理制御の方法を改善するだけでは難しい場合も多い。その典型的な例としては、出勤時や昼食時などの混雑時にエレベーターの輸送能力以上に利用者がエレベーターに集中するケースが挙げられる。
本発明の実施の形態例では、上述したエレベーター運行効率低下の現象に対して、エレベーター制御による改善策だけではなく、利用者の適切な利用を通知するタイプの改善策、利用者の利用状態(例えば、利用時間)を変更するタイプの改善策のような複数のタイプの改善策を、ビルオーナーやビル管理者に提案する。そして、ビルオーナーやビル管理者は、提案された複数の改善策の中から、最適な改善策を選択して実行する。
また、複数の異なるタイプの改善策に対して、ビルオーナーやビル管理者がより適切な改善策を選ぶことができるように、改善効果、費用、利用者の行動変化の各評価項目に基づいて、提案した複数の改善策を評価し、その評価結果も提示するようにする。
このように、本発明の実施の形態例では、エレベーター制御による改善策と利用者の利用方法による改善策とを合わせることで、そのビルのエレベーターの運行効率低下現象の要因に応じた改善策を選定することができる。また、本発明の実施の形態例では、複数の改善策と併せて改善策の評価結果を提示している。この評価結果の提示は、改善効果というプラスの作用に加えて、さらに実施費用と利用者の行動変化という改善に伴うマイナスの作用が提示されることになる。これにより、ビルオーナーやビル管理者は、費用対効果の観点で提示された改善策を評価できるので、適切な改善策を選ぶことができるという利点がある。
以上説明したように、本発明の実施形態例によれば、対象のビル内で生じているエレベーター運行効率低下の現象に対して、ビルオーナーやビル管理者がより適切に改善できる改善策を提示することができ、その結果、ビルオーナーやビル管理者はエレベーター運行効率低下現象に対して最適な改善策を実行することが可能になる。
以上が、本発明の実施形態例によるエレベーター運行診断システムに対する考え方の要点である。以下では、この考え方の要点に基づいた本発明の実施の形態例に係るエレベーター運行診断システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
<本発明の第一の実施の形態例>
まず、図1~図13を参照して、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」という)であるエレベーター運行診断システム100およびその主要な構成要素であるエレベーター運行診断装置1について詳細に説明する。
<エレベーター運行診断システム100の全体構成の説明>
図1は、本例のエレベーター運行診断システム100およびエレベーター運行診断装置1のソフトウェア機能を示す機能ブロック図である。
図1の一点鎖線で囲った領域内のブロックが、本例のエレベーター運行診断装置1であり、以下では、一点鎖線で囲ったエレベーター運行診断装置1と、一点鎖線で囲った領域外のブロックを含めて、本例のエレベーター運行診断システム100と呼ぶことにする。
図1に示すように、本例のエレベーター運行診断装置1は、エレベーターの運行診断の実施判定を行う運行診断実施判定処理部11、運行データ・改善策実施結果データベース12、運行効率低下現象検出処理部13、要因判定処理部14、要因および改善策データベース15、改善策選定処理部16、改善策情報出力処理部18および改善策実行処理部19を備える。
さらに、本例のエレベーター運行診断装置1は、改善策を実行するための具体的な実行処理部である制御の改善策実行処理部20、情報提供の改善策実行処理部21および利用状態制限の改善策実行処理部22を備える。
運行診断実施判定処理部11は、後述するダッシュボード情報処理装置2からの運行診断の実施に対する要求信号を受けた場合に、運行データ・改善策実施結果データベース12からのエレベーターの運行データに基づいて、エレベーターの運行診断の実施を行うか否かを判定する。
図1に示す運行データ・改善策実施結果データベース12は、図2Aに示す運行データのデータベース121と、図2Bに示す改善策実施結果のデータベース122から構成される。
図2Aに示す運行データのデータベース121には、通信ネットワークを介して収集された各ビルのエレベーターの運行データが蓄積されている。これらの運行データは、各ビルのエレベーター群管理装置4、エレベーター制御装置5より通信ネットワークを介して収集される。当然のことながら、複数のエレベーターを群として制御する群管理制御の場合は、各エレベーターの号機毎の運行データが収集される。
図2Aに示すように、運行データのデータベース121には、ビル名、エレベーターバンク名、日付によって分類された運行データが格納されている。
この運行データとしては、時刻と結び付けられた各号機のかご位置データ、乗り場呼びデータ、かご呼びデータの他に、不図示の乗車階と人数、降車階と人数などのデータが格納されている。これらの運行データを用いて、そのビルのエレベーターに対する運行状態の指標、運行効率低下現象に関する指標が算出される。
図2Bに示す改善策実施結果のデータベース122には、過去において実施された改善策の実施結果に関するデータが格納されている。すなわち、各ビルのエレベーターで既に改善策が実施された場合に、その内容と実施日、実施前後の運行状態の変化などの履歴が記録されている。図2Bに示された例では、開始日、終了日、改善策のタイプと改善策、改善策の実施前後の性能指標、実施費用などのデータが記録されている。これらのデータは、実績データとして、新たなビルでの改善策を選定する際の評価値などの算出に利用される。
再び図1に戻って説明すると、運行効率低下現象検出処理部13は、運行診断実施判定処理部11で運行診断実施の判定がなされた場合に、対象とするエレベーターの運行データを用いて運行効率低下現象の検出を行う。ここで、運行効率低下現象とは、エレベーターの運行性能が所望のレベルより低下している現象をいい、その意味で運行性能低下現象と言い換えてもよい。
例えば、(1)平均待ち時間または平均乗り場呼び継続時間が長い、(2)平均乗車時間が長い、(3)積み残しが多く発生している、(4)乗り場に待ち行列が発生している、(5)到着したかごに既に多くの人が乗車しており、乗り込めない状況が多く発生している、などが挙げられる。
この中で、特に重要な運行効率低下現象は、平均待ち時間が長い状態になる現象である。エレベーターの待ち時間が長いことは、そのビルのテナントのビルに対する満足度が低いということにもなりかねない。したがって、ビルオーナーまたはビル管理者にとっては、テナントの満足度の観点からも、適切な改善策を実施することが必要になる。
要因判定処理部14には、運行効率低下現象検出処理部13の出力と、要因および改善策データベース15からの運行効率低下現象を引き起こした要因と関連する改善策が供給される。要因判定処理部14は、この2つの入力情報に基づいて、運行効率低下現象の要因を判定する処理を行う。
図2Cは、要因および改善策データベース15に蓄積されるデータ構造を示したものである。
図2Cに示すように、要因および改善策データベース15には、運行効率低下現象、要因、改善策タイプおよび改善策が関連付けられて記録されている。
すなわち、要因および改善策データベース15には、検出した運行効率低下現象と、この運行効率低下現象に結び付く要因、さらに判定した要因に結び付く改善策タイプとその具体的な改善策が記録されている。
運行効率低下事象それぞれに対する要因候補は、必ずしも1つに決まるわけではなく複数あることも多い。また要因候補それぞれに対して改善策の候補も1つだけではなく、複数の改善策が考えられる。図2Cは、これをテーブル形式で対応付けて示している。要因判定処理部14は、この要因および改善策データベース15を参照することで、当該ビルのエレベーターで発生している運行効率低下事象に対する要因、さらに改善策を適切に選定することができる。
要因判定処理部14は、例えば、運行データから分析される運行効率低下現象の特徴となる情報から、「if-thenルール」などを用いた推論によって要因判定を実施する。あるいは、要因判定処理部14は、運行効率低下現象発生時の運行データから抽出された特徴量を分類して運行効率低下の原因を判定することも可能である。
例えば、出勤時の平均待ち時間が長いという運行効率低下現象に対しては、出勤時のエレベーター利用人数がそのエレベーターの設備能力(輸送能力)の限界に近い値もしくはそれ以上の値となっていることなどが運行効率低下の要因として挙げられる。これ以外にも、エレベーター利用者が乗りかごに乗り込まないために、混雑時にも関わらず乗車率が低くなることも考えられる。乗車率が低いと、エレベーターの実質的な輸送人数(運ぶ人数)が増えないから、エレベーター利用者の積み残しが発生して待ち時間が長くなってしまう。このように、本例のエレベーター運行診断システム100における運行効率低下現象の要因判定には、エレベーター制御の問題だけではなく、エレベーター利用者のエレベーターの利用状態や操作方法などによる要因も含まれる。
改善策選定処理部16は、本例のエレベーター運行診断システムの要の部分であり、運行効率低下の要因に応じた広く多様な観点で抽出された改善策の集合から、より適切な改善策の候補を選定する処理を行う。改善策選定処理部16には、要因判定処理部14と、運行データ・改善策実施結果データベース12と、要因および改善策データベース15と、エレベーター運行シミュレータ17が接続されている。
図1に示すように、改善策選定処理部16は、改善策候補抽出処理部161、改善策候補効果算出処理部162、評価値算出処理部163、評価スコアおよび推奨順位付け処理部164および実施計画策定処理部165を備える。
以下、図1を参照しながら、改善策選定処理部16が備える各部の処理について詳細に説明する。
まず、改善策候補抽出処理部161は、要因判定処理部14が判定した要因と、要因および改善策データベース15からの要因とその関連する改善策情報に基づいて、運行効率低下の要因に応じた改善策候補の抽出処理を行う。この改善策候補の抽出では、要因判定処理部14で判定した要因と、要因および改善策データベース15に蓄積されている要因と改善策の対照データから要因に適した改善策が抽出される。
図2Cで説明したように、要因および改善策データベース15には、過去の多数のエレベーターの事例に関しての運行効率低下を引き起こす種々の要因とその複数の改善策タイプおよびその改善策が蓄積されている。具体的には次の3タイプの改善策のグループが蓄積されている。すなわち、
(1)群管理制御または運行制御の制御変更もしくは新規追加のタイプ。
(2)エレベーター利用者に向けたエレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供のタイプ、
(3)ビルに入居しているテナント会社および/またはビルオーナーに向けた利用状態の制限(例えば、利用時間の制限など)のタイプ、
である。
上記(1)~(3)の各タイプには、そのタイプに属する複数の改善策が割当てられている。詳細は図6で後述するが、例えば、(2)のエレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供のタイプの場合には、出勤時間帯などに対する混雑状況の情報提供と、それに対する出勤時間帯にエレベーターを使った下降方向の移動は避けるようにエレベーター利用者に案内する情報提供などの改善策が含まれる。
このように、改善策候補抽出処理部161は、上述した3タイプの改善策のグループから、要因判定処理部14で判定された要因に対して、「if-then形式」のようなルールベースの推論や、図2Bに示す改善策実施結果のデータベース(テーブル)を参照して、要因判定処理部14から入力される要因に対応した改善策の候補を選定する。この「if-then形式」のルールというのは、例えば要因と改善策を対応させたルールであり、要因が特定されれば、それに対応した改善策が選定できるというものである。
なお、過去に実施した改善策と判定要因との関係性に着目した機械学習などの手法に基づいて、要因判定処理部14から入力される要因に対する改善策の候補を選定することも可能である。
なお、既に述べたように、ここで選定する改善策の候補は基本的に複数個あり、改善策のタイプも1つまたは複数になる。ここで、上述した3タイプの改善策のグループの働きを「制御」の観点で分類すると、制御の変更もしくは追加が「エレベーターの運行制御」、利用方法または操作方法の情報提供が「利用者の行動/操作の間接的な制御」、利用状態の制限が「利用者の行動の直接的な制御」になる。本例のように、3タイプのカテゴリーに分けて改善策を設けると、エレベーターの運行と、その利用者の行動/操作の双方を適正に調整することができる。つまり、エレベーターで生じている運行効率の低下現象を複数の改善策を同時に用いて適正に改善することが可能となる。
次に、改善策候補効果算出処理部162は、複数の改善策候補に対するそれぞれの効果を算出する処理を行う。この効果算出処理では、選定された改善策の候補のそれぞれに対して、改善策の実施の前後での改善策による効果がどの程度あったかを算出する。
すなわち、複数の改善策候補からビルオーナーやビル管理者が適切な改善策を選ぶためには、まずはそれぞれの改善策によりどれだけの所望の効果が得られるかを示す必要がある。そのために、改善策候補効果算出処理部162は、その改善策候補の効果算出処理において、定量的もしくは概算的にそれぞれの改善策候補の効果を算出して評価する。
この改善効果の算出は、エレベーター運行シミュレータ17を用いて行われる。すなわち、エレベーター運行シミュレータ17は、エレベーターの設備仕様および交通流などの運行条件を参照して、稼働しているエレベーターの実際の条件と合わせるようにエレベーター運行シミュレータ17の入力条件を設定する。ここで、エレベーターの設備仕様とは、対象のビル、階床数、エレベーター速度、乗車定員、エレベーター台数、行程、エレベーター機種、群管理機種などを総称して述べている。
そして、そのように設定したエレベーター運行シミュレータ17のプログラムによりエレベーター運行のシミュレーションを実施することにより、改善策候補それぞれの改善効果を算出することができる。
また、他のビル、他のエレベーターでの同じ改善策の実績データから、対象としているビル、エレベーターの条件に近いものを選んで、その結果を基に推定演算を行うようにしてもよい。ここでは、改善策の実績データとしては、要因および改善策データベース15の中に蓄積されたデータが利用される。ここで説明した改善策の効果算出処理の詳細については、図7にてフローチャートを用いて説明する。
次に、評価値算出処理部163は、改善策候補効果算出処理部162の結果である改善効果を見て、それぞれの改善策に対する評価値を算出する処理を行う。すなわち、評価値算出処理部163は、選定された改善策候補のそれぞれに対して、どの改善策がどの項目で優れているかを示す評価項目別の評価値を算出する。ここでは、評価項目として、例えば、(1)改善策による改善効果の大きさ、(2)改善策の実施費用の大きさ、(3)改善策による利用者の行動変化の大きさの3つの項目が選定される。
これらの評価値は、5段階などのレベルで評価する場合と連続値により数値評価を行う場合などが考えられるが、ここでは、レベルで評価する場合を例にとって説明する。
まず、(1)の「改善策による改善効果の大きさ」に関する評価値は、改善策候補の効果算出処理で算出した効果の大きさを基に、例えば5段階のレベルでの評価値に変換する。また上述した(2)の「改善策の実施費用の大きさ」の評価値は、改善策実施に当たっての金額ベースでの評価値となる。改善策の実施のための費用、例えば、群管理制御のプログラムの改造費、情報表示装置への追加費用、人による案内誘導が必要な場合はその人件費などが該当する。上述した(3)の「利用者の行動変化の大きさに対する評価値」は、その改善策の実施によって変化する利用者全体の行動の総量を評価するものとなる。これは例えば、数1式によって評価することができる。
[数1]
利用者の行動変化の大きさ =
影響を受ける利用者数× 改善策による利用者1人当たりの行動変化量
例えば、出勤時間帯の利用人数の集中を抑えるため、改善策として、一部の階床の利用者(テナント会社)に対して、出勤時間の変更を提案する場合が考えられるが、このような場合には、その影響を受ける人数と変更の時間量などで行動変化量を評価することができる。この他、例えば、出勤のような時間帯に利用を抑えるために特定階の利用を制限するような制御の改善策を提案する場合も考えられるが、この場合も同様に、利用制限を変化量として改善策の評価をすることができる。
また、停止階の床数を抑制する改善策として、例えば偶数階または奇数階のみの運転を提案する場合もあり、この場合には、停止階から停止しない階に階段で移動することが利用者の行動変化となる。この利用者の行動変化の大きさも、上記数1式で評価することができる。
ここで、利用者1人当たりの行動変化量は、利用時間の変化分、階床の移動量の変化分(移動の制限も含む)、その他、操作方法の変化分などを定量化することで評価値を表すことができる。また、利用時間、階床の移動量、操作方法の変化量は、それぞれ単位が異なるが、利用者にとっての負担の度合いに基づいた変換係数(一種の重み係数)を用いることで統一して扱うこともできる。
上述した(1)改善効果の大きさ、(2)改善策の実施費用の大きさ、(3)利用者の行動変化の大きさの3つの評価項目の関連を整理すると、「改善効果の大きさ」が効果を表し、「改善策の実施費用の大きさ」と「利用者の行動変化の大きさ」がコストを表すものに対応している。すなわち、「利用者の行動変化の大きさ」は、利用者側にとっての負担をコストとして指標化したものになる。この結果、3つの評価項目によって改善策候補の費用対効果もしくはコストパフォーマンスを評価することができる。
なお、既に述べたように、運行効率低下の要因に応じた3つのタイプの改善策候補の中で、「エレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供のタイプ」が挙げられていた。このタイプの改善策は、利用者に強制的に行動変化を強いるというよりも、提供した情報から自発的に行動変化を促す改善策であるため、行動変化の大きさについてはより小さくするか、もしくは変化無しにするように調整するのがよい。
評価値算出処理部163による評価値の算出処理が終わると、評価スコアおよび推奨順位付け処理部164は、評価値算出処理部163で算出した評価値に基づいて、評価スコアの算出と推奨順位付けの処理を行う。評価スコアと推奨順位付けの処理では、評価スコアおよび推奨順位付け処理部164は、改善策候補のそれぞれについて算出された3項目の評価値から評価スコアを設定し、この評価スコアに基づいて改善策候補の順位付けを行う。ここで、評価スコアは、3項目の各評価値の重み付けの和もしくは3項目の評価値の状態から所定のルールに基づいて設定するスコアである。
なお、評価値算出処理部163で求めた評価値から新たに評価スコアを設定せずに、3項目の評価値から直接に推奨順位付けをしてもよい。この推奨順位は、ビルオーナーまたはビル管理者に推奨する改善策候補の順位を示すもので、当然のことながら、評価スコアまたは評価値の良い改善策から順位を設定することになる。
評価スコアおよび推奨順位付け処理部164が付ける推奨順位は、基本的に費用対効果が良い順となるが、ビルオーナーまたはビル管理者の要望によって、コスト重視や効果重視などのバリエーションを持つようにしてもよい。このようなバリエーションは、3つの評価項目の重み付けや推奨順位を決めるルールによって反映させることができる。このような推奨順位と推奨の度合いを定量化した評価スコアによって、後述するように、多様なタイプから選定された複数の改善策候補に対しても、ビルオーナーまたはビル管理者は共通の基準により、適切な改善策を選定することが可能になる。
次に、実施計画策定処理部165は、実施順序を含む実施計画の策定処理を行う。この実施計画では、改善策候補から1つの改善策のみを実施するように提案するのではなく、複数の改善策を同時に実施することの提案や、複数の改善策に対する実施の順序を定めたプロセスの提案などが策定される。
ここで、実施の順序を定めたプロセスを提案する場合には、例えば、費用がゼロで利用者の行動変化もない実施し易い改善策をまず実施し、その結果から、改善が少ないかまたは改善が見られない場合は、より効果の高い改善策を次に実施するような実施計画を立てるようにする。
ビル管理者側としては、まずは費用がかからず利用者への負担もない改善策が実施しやすいため、まずはそれを実施した上で、効果をみてさらに次の改善策を実施するという実施手順が好ましい。すなわち、上述した3つの評価項目のうち、実施費用の少ない順または利用者の行動変化が少ない順から実施するということも考えられる。
さらに、実施計画策定処理部165は、上述した3つの改善策タイプで考えて、まず実施費用が小さく利用者への影響も少ない実施し易い制御の変更の改善策を策定する。次に、やはり実施費用が小さく利用者の自発的な行動に委ねる情報提供の改善策を策定する。そして、それでも効果が上がらない場合は、実施費用のかかる制御の変更または新規制御の追加、もしくは利用者のエレベーター利用状態の制限、例えば、時差出勤、時差昼食などを実施する実施計画を策定するのがよい。
このような順序で改善策を進める実施計画を、運行効率低下の状況と要因に従って事前に実施計画としてビルオーナーまたはビル管理者に提案することが効果的である。つまり、実施計画策定処理部165は、このような選定した改善策の候補からその特徴に応じて実施順序を定めて実施計画(実施プロセス)として提案することが望ましい。
これにより、ビルオーナーまたはビル管理者は、対象のビルで発生している運行効率低下事象に対して、単発的ではなく、計画的かつ継続的な改善策を選定して、適切な対応を実施することが可能となる。なお、この実施計画(実施プロセス)については、図13でさらに具体的に説明する。
以上、本例のエレベーター運行診断装置1の主要な構成要素である改善策選定処理部16の各機能と処理について説明した。改めてその特徴をまとめると以下のとおりである。
・エレベーターの制御を含む広く多様な改善策を提案し実行するために、エレベーターと利用者のそれぞれに働きかける3タイプの改善策のグループを設け、その中から複数の改善策を選定する(改善策候補抽出処理)。
・多様な種類の改善策に対して、候補となる各改善策がどのように良いのかを評価するために、費用対効果の観点から、(1)改善効果、(2)実施費用、(3)利用者の行動変化の評価項目で改善策を評価する(評価値算出処理)。
・ビルオーナーまたはビル管理者が適正な改善策を選定できるように、上記の評価項目に基づいて候補となる各改善策の評価スコアを算出し、推奨順位を定める(評価スコアおよび推奨順位付け処理)。
・複数の改善策を、評価に基づいた実施順序を事前に定めてその順に実行する、つまり改善策を順序に従ったプロセスで実行する(実行計画策定処理)。
上述した改善策選定処理部16による改善策の選定処理によって、対象とするビル、エレベーターで生じている運行効率低下現象とその要因に応じた適切な改善策を、ビルオーナーまたはビル管理者に提案することができる。これにより、ビルオーナーまたはビル管理者は、より適した改善策を改善策候補より選ぶことが可能となる。
なお、実施計画策定処理部165のより詳細な処理手順については、図9および図10のフローチャートに基づいて後述される。
次に、改善策選定処理部16の実施計画策定処理部165で策定された改善策の実行計画は、改善策情報出力処理部18に供給される。この改善策情報出力処理部18は、改善策選定処理部16で選定された改善策と推奨順位などの付加情報を出力し、ビルオーナーまたはビル管理者に提案する。この改善策情報出力処理部18からの情報の出力先は、ダッシュボード情報処理装置2となる。
このダッシュボード情報処理装置2は、スマートフォンのような携帯情報端末、パソコンやタブレット型端末のような情報端末装置、情報処理装置などインターネットのような通信ネットワークで結ばれており、これらの情報端末装置からインターネットを介して情報コンテンツを受信することができる。
すなわち、ダッシュボード情報処理装置2は、ビルオーナーやビル管理者の情報処理端末装置3とネットワークで接続され、改善策情報出力処理部18から出力された改善策に関する情報と運行診断の結果に関する情報コンテンツをビルオーナーあるいはビル管理者に提供する。
また、ダッシュボード情報処理装置2は、エレベーター運行診断装置1、ビル管理者向け情報処理端末装置3とそれぞれ双方向に通信できるようになっている。この仕組みによって、ビルオーナーまたはビル管理者は、ダッシュボード情報処理装置2からの運行診断に関するダッシュボード(情報コンテンツ)を受信して、運行効率低下事象とその要因、そして診断に基づいて提案される改善策とその評価スコア、推奨順位などの情報を受け取ることができる。
改善策情報出力処理部18がダッシュボード情報処理装置2に提示した改善策候補は、ビル管理者の情報処理端末装置3を通してビルオーナーまたはビル管理者に閲覧される。そして、ビルオーナーまたはビル管理者は、閲覧した改善策候補の中から実施する改善策を決定し、決定した改善策をダッシュボード情報処理装置2経由で改善策実行処理部19に送る。
改善策実行処理部19は、ビルオーナーまたはビル管理者が決定した改善策の実行処理を行う。
改善策実行処理部19は、この実行処理を3タイプに分けた改善策のカテゴリーグループに応じて実行する。このタイプ別の実行処理も本例のエレベーター運行診断装置1の特徴となる技術であり、以下、それぞれのタイプ(A)~(C)に分けて説明する。
(A)群管理制御/運行制御の変更または新規追加の改善策タイプ
タイプ(A)に分類される改善策の場合、制御の改善策実行処理部20は、具体的な制御の変更または制御パラメータなどの新規追加の詳細仕様を設定する。そして、タイプ(A)の仕様を実行する指示データをエレベーター群管理装置4および/またはエレベーター制御装置5に送信する。その結果を受けて、エレベーター群管理装置4および/またはエレベーター制御装置5は、ビルオーナーまたはビル管理者が決定した改善策を実行する。
(B) エレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供の改善策タイプ
タイプ(B)に分類される改善策の場合、情報提供の改善策実行処理部21は、利用者に提供するための情報データを作成して、乗りかご内の情報表示装置6、乗り場の情報表示装置7、ビルのフロア(階)に設置されたデジタルサイネージ装置8、個人の携帯情報端末装置9などの各種の情報表示装置に配信する。この配信結果を受信した各装置6~9は、エレベーターの利用者に対して、ビルオーナーまたはビル管理者が決定した改善策に関する所望の情報を提供する。
情報提供の改善策実行処理部21から提供された情報を見て、利用者がエレベーターの利用方法を変更することで、そのエレベーターで生じている運行効率低下現象が改善されることになる。例えば、 ロビー階からの上昇方向移動が主となる出勤混雑時間帯なのに、エレベーターの下降方向の移動需要が多く運行効率が低下している場合などが考えられる。そのような場合には、運行効率低下の改善策として、出勤混雑時間帯の下降方向のエレベーター利用の抑制をお願いする情報提供を、乗りかご内の情報表示装置6、乗り場の情報表示装置7に対して行うことが考えられる。その結果、エレベーターの利用者がこの情報を参考にして、出勤時間混雑帯の下降方向のエレベーター利用を減少するようになれば、エレベーターの運行効率の低下が改善される。
(C) テナント会社、ビルオーナーに向けた利用状態制限の改善策タイプ
タイプ(C)に分類される改善策の場合、利用状態制限の改善策実行処理部22は、具体的な利用状態の制限内容を定める。そして、利用状態制限の改善策実行処理部22は、その利用状態の制限内容をそのビルのテナントの情報処理端末装置10およびビル管理者の情報処理端末装置3に送信する。
ビルに入居しているテナント会社やビル管理者は、この情報を基にしてエレベーターの利用状態を制限する対応を実施する。例えば、利用状態制限の具体例には、エレベーターの利用時間を分散させるための出勤時間(就業開始時間)の制限や、昼食時間(昼の休憩時間)の制限、退勤時間(就業終了時間)の制限などが含まれる。他には、出勤時などの混雑時の利用階の制限なども考えられる。
例えば、あるテナントが7、8、9、10階に入居していて、出勤時に各階停止状態となって運行効率が低下しているような場合が考えられる。このような場合には、利用可能な停止階を8階と10階に制限するなどの、出勤時の利用階を制限する改善策をテナントに提案する形で情報提供することができる。
以上のように、(A)~(C)に示した改善策のタイプに応じて、改善策実行の指示先(出力先)を切り替えることも、本例のエレベーター運行診断システム100の重要な技術である。これにより、ビルオーナーやビル管理者は、改善策のタイプ(A)~(C)に応じた適切な改善策を実行することが可能となる。
以上、図1で示した本例のエレベーター運行診断システム100によって、対象のビルで生じているエレベーター運行効率低下の現象に対応した、より適切な改善策を、ビルオーナーまたはビル管理者に提案することができ、さらにそのような改善策を適切な実行手段で実施することが可能となる。
<本例のエレベーター運行診断システム全体のハードウェア構成の説明>
図3は、本例のエレベーター運行診断システム100を含めたシステム全体のハードウェア構成を示す図である。
図3に示すように、本例のエレベーター運行診断システム100のハードウェア構成は、大きく分けて、(1)エレベーター遠隔管理システム系、(2)群管理エレベーター系、(3)ビル管理系の3つの系で構成されている。図1で説明したエレベーター運行診断装置1はエレベーター遠隔管理システム系の中に位置付けられる。
以下、上記3つの系に対して、それぞれの構成と具体的な作用について説明する。
(1)エレベーター遠隔管理システム系
エレベーター遠隔管理システム系は、対象とするビルで運行しているエレベーターを管理する系でエレベーター側とビル管理側とを通信手段によって結ぶ役割も担っている。
この系を構成するエレベーター遠隔監視システム31は、その中の主要な構成要素として、図1で説明したエレベーター運行診断装置1およびダッシュボード情報処理装置2を含む。
エレベーター遠隔監視システム31は、監視対象としている多数のビル、その中で稼働している多数エレベーターを安全、安心かつ円滑に効率良く運行させるために、通信ネットワークを介して状態を監視するシステムである。その中の主たる機能を持つ構成として、ビルオーナー、ビル管理者との情報をやりとりするダッシュボード情報処理装置2、さらにエレベーター運行診断装置1が含まれている。
エレベーター運行診断装置1とダッシュボード情報処理装置2については、既に図1で説明しているので詳細な説明は省略する。
図1で説明したように、エレベーター運行診断装置1は、遠隔監視により得られる多数のエレベーターの運行データから各エレベーターの運行状態を診断し、運行効率低下が発生している場合には、その運航効率の改善を図る。ダッシュボード情報処理装置2は、ビルオーナーまたはビル管理者に向けて、エレベーターの保守の状況、エレベーターの運行状態や診断結果の状況の提示、さらに改善策の提示を実施する。
(2)群管理エレベーター系
群管理エレベーター系は、対象とするビルのエレベーターを直接管理する系である。以下では、複数のエレベーターが群として統括管理された群管理エレベーターを例にして説明する。対象となるビルのエレベーター群管理装置41、42(図1のエレベーター群管理装置4と同じ)は、管理対象のエレベーター群の制御を実行する。エレベーター制御装置51、52(図1のエレベーター制御装置5と同じ)は各号機毎に設けられ、エレベーターの運行動作を制御する。
すなわち、1号機乗りかご511はエレベーター制御装置51によって制御され、M号機乗りかご521はエレベーター制御装置52によって制御される。1号機乗りかご511には、かご呼び登録装置512、かご内の荷重を測る荷重センサ513、さらに乗りかごに設置された乗りかごの情報表示装置61が備えられている。荷重センサ513は、かご内の乗車人数の重量を計測し、この重量の変化から各停止階での乗り人数、降り人数を推定する。
なお、荷重センサ513と合わせて、乗りかご511内に画像センサ(不図示)を設けて人数を計測してもよい。かご呼び登録装置512は利用者が行先階を登録する装置であり、行先階情報や荷重センサ513と合わせて乗りかご511内の人数を推定することができる。乗りかごの情報表示装置61は、例えば乗りかご511内のディスプレイ装置であり、図1で示した乗りかご内の情報表示装置6に相当する。この乗りかごの情報表示装置61に、図1に示した情報提供の改善策実行処理部21から画像情報や音声情報が出力される。つまり、乗りかごの情報表示装置61は、既に説明したエレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供の改善策タイプにおいて利用される。
M号機乗りかご521についても、かご呼び登録装置522、荷重センサ523、かご内情報表示装置62が備えられており、その作用は1号機乗りかご511と同じなので説明は省略する。
続いてエレベーターの乗り場側について説明する。1階のエレベーター乗り場81には、乗り場呼び登録装置811と、乗り場の情報表示装置71が設置されている。乗り場呼び登録装置811は乗り場にて利用者が行先方向を入力する装置であり、乗り場の情報表示装置71は乗り場にてディスプレイなどで情報を表示出力する装置である。乗り場の情報表示装置71は、図1で説明した乗り場の情報表示装置7に相当し、乗りかごの情報表示装置61と同様に、図1に示した情報提供の改善策実行処理部21から画像情報や音声情報が出力される。この乗り場の情報表示装置71も、エレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供の改善策タイプで利用される。
同様にN階のエレベーター乗り場82についても、乗り場呼び登録装置821と乗り場の情報表示装置72が設置されており、その作用は1階のエレベーター乗り場81と同じなので説明は省略する。
同じビルもしくは別のビルで運行している他のエレベーター群管理装置42についてもその機能および構成はエレベーター群管理装置41と同様なので、その説明は省略する。
(3)ビル管理系
ビル管理系は、ビルの設備、ビル内に入居しているテナント会社や利用者など、ビル全体の管理をハード面、ソフト面で実行している系である。このビル管理系は、ビル管理者の情報処理端末装置3、ビルテナントの情報処理端末装置10、ビルのフロアに設置されたデジタルサイネージ装置8、エレベーター利用者の携帯情報端末装置9とこれらを通信でつなぐ通信ネットワーク32で構成されている。ここで、ビル管理者の情報処理端末装置3、ビルテナントの情報処理端末装置10、ビルのフロアに設置されたデジタルサイネージ装置8、エレベーター利用者の携帯情報端末装置9は、図1で説明したものと同じなので、同じ符号を付し、説明は省略する。
これらの情報処理端末装置、情報端末とエレベーター運行診断装置1、ダッシュボード情報処理装置2とが通信ネットワーク32を介して接続されており、相互にデータ、情報を交換できるようになっている。この構成によって、エレベーター運行診断装置1における運行診断の結果がダッシュボード情報処理装置2に送られ、運行診断の結果である改善策がビルオーナーおよび/またはビル管理者に提示される。
ビルオーナーおよび/またはビル管理者は、選択したエレベーター運行に対する改善策の情報を、ダッシュボード情報処理装置2を介してエレベーター運行診断装置1に送信する。この結果、エレベーター運行診断装置1側から群管理エレベーター系に対して改善策の実施の対応を行うように指示がなされる。
なお、ビルのフロアに設置されたデジタルサイネージ装置8とエレベーター利用者の携帯情報端末装置9の役割について補足的に説明する。デジタルサイネージ装置8とエレベーター利用者の携帯情報端末装置9も、乗りかご内や乗り場の情報表示装置と同様の役割を担っている。すなわち、エレベーターの適正な利用方法または操作方法に関する情報提供の改善策タイプに属する改善策が実施される場合、デジタルサイネージ装置8および理容者の携帯情報端末装置9にその情報が提供されて、エレベーターの利用者はそれを参考にエレベーターの利用を改善することができる。
また、テナント会社またはビルオーナーに向けたエレベーター利用状態の制限のタイプに属する改善策の場合に、テナント会社がその改善策を実施する場合には、テナント会社は、利用者に利用状態の制限をアナウンスする必要がある。このため、テナント会社は、デジタルサイネージ装置8、エレベーター利用者の携帯情報端末装置9、さらに乗りかごの情報表示装置61、62、乗り場の情報表示装置71、72により情報を提示することで、利用者により速やかに利用制限の情報を通知することができる。
<本例のエレベーター運行診断システム全体の処理の流れ>
図4は、本例のエレベーター運行診断装置1を含むシステム全体の処理の流れを示すフローチャートである。図4のフローチャートは既に図1の機能ブロックで説明した内容を、その操作手順として示したものであり、以下、図1の処理とも対応させながら図4のフローチャートの内容を説明する。
まず、運行診断実施判定処理部11で、エレベーター運行診断の実施要求が有か否かを判定する(S1)。ここで、運行診断の実施要求はビルオーナーまたはビル管理者がダッシュボード情報処理装置2を介して発信するものである。
ステップS1で、運行診断の実施要求が有った場合(S1のYES)は、運行診断を実行するため、対象となるエレベーターの運行データを入力する(S2)。ここでは、図1の運行データ・改善策実施結果データベース12に蓄積されているデータが読みだされて入力される。なお、ステップS1で、運行診断の実施要求がない場合(S1のNO)には、処理を終了する。
次に、運行効率低下現象検出処理部13により、入力された運行データを用いて運行効率低下現象の検出処理が実行される(S3)。ここで運行効率低下現象は、既に説明したように、エレベーターの運行性能が要求された性能よりも低下している場合をいい、具体的には、(1)平均待ち時間(または平均乗り場呼び継続時間)が長い、(2)長い待ち時間の発生比率が多い、(3)平均乗車時間が長い、(4)積み残しが多く発生している、(5)乗りかごの待ち行列が発生している、(6)到着したかごに既に多くの人が乗車しており乗り込めない状況が多く発生している等が挙げられる。
運行効率低下現象検出処理部13は、運行効率低下現象の検出処理の結果、診断対象としているエレベーターに運行効率低下現象が検出されたかどうかを判定する(S4)。ステップS4で、運行効率低下現象が検出された場合(S4のYES)は、要因判定処理部14は、検出された運行効率低下現象に対する要因の判定を実施する(S5)。例えば、平均待ち時間が長いという運行効率低下現象に対する要因としては、その時間帯のエレベーター利用人数が非常に多い、ビルの多数の階でエレベーターを利用する人が多く乗り場呼び停止回数が多い、出勤時に多数の人が乗りかごに乗車するため、かご呼び(行先階呼び)による停止回数が多いなどが考えられる。
この要因に関するデータとしては、図1の要因および改善策データベース15に蓄積されているデータが参照される。この要因および改善策データベース15には、多数のビル、多数のエレベーターでの運行効率低下現象に対する要因にかかるデータが蓄積されている。要因が判定されると、改善策選定処理部16は、判定した要因に基づいた改善策の候補を選定する(S6)。
なお、ステップS4で、運行効率低下現象が検出されなかった場合(S4のNO)には、処理を終了する。
まず、改善策選定処理部16の改善策候補抽出処理部161で、ステップS6で判定した要因に基づいた改善策候補が選定される。この改善策候補抽出処理部161で選定される改善策は、既に述べたように次の3タイプの改善策のカテゴリーの中より選定される。
すなわち、(1)運行制御の変更または追加、(2)利用者に向けたエレベーターの利用方法/操作方法に対する情報の通知、(3)エレベーターの利用状態の制限(例えば、利用時間の制限など)である。
これら3タイプに属する各改善策は、図1の要因および改善策データベース15の中に要因と関連付けられて蓄積されている。この要因および改善策データベース15には、過去に実施した多数の改善策が格納されているため、実績があり信頼の高い改善策を候補として選定することができる。
次に、改善策選定処理部16の改善策候補効果算出処理部162で各改善策候補の効果が算出され、続いて評価値算出処理部163で、選定された改善策候補に対する評価値が算出される(S7)。
既に述べたように、この改善策の評価値は、(1)改善効果の大きさ、(3)改善策の実施費用の大きさ、(3)利用者の行動変化の大きさ、に基づいて算出される。この3項目は費用対効果の効果と費用に対応しており、この3項目の評価値を用いることで、費用対効果の観点から、選定された改善策候補を適格に評価することが可能となる。
各改善策の候補に対して、上記の3項目の評価値が算出されると、改善策選定処理部16の評価スコアおよび推奨順位付け処理部164により、この評価値に基づいた評価スコアの算出と、評価値および評価スコアに基づいた各改善策候補の推奨順位付けが行われ、続いて実施計画策定処理部165により実施順序などを定めた実施計画の策定が行われる(S8)。
これらの処理は、図1にて既に説明しているため、詳細は省くが、評価スコアおよび推奨順位付け処理部164は、選定した改善策の候補それぞれに対して、算出した項目別の評価値を基に、その改善策の総合点に相当する評価スコアを定める。そして、この評価スコアを基にどの改善策が推奨できるかを順にした推奨順位付けを行う。ここで、評価スコアは評価値の3つの項目の中でどれを重要と評価するかで、評価値に重みを付けて評価したスコアである。既に図1で説明したように、実施計画策定処理部165が策定する実施計画は、改善策を単発で実施する計画ではなく、複数の改善策を時間的に順に実施するプロセスを策定する実施計画となる。
例えば、まず費用がかからず、利用者への負担(行動変化)の小さいものからすぐに実施して、その結果の状況で、次に費用がかかっても効果が高いと期待できる改善策を実施するなどの実施プロセスが考えられ、これが実施計画策定処理部165により策定される実施計画となる。この点については、図13でも詳しく説明する。
選定した改善策候補について、項目別の評価値、総合評価値となる評価スコア、推奨順位、実施計画(実施プロセス)が定まったならば、これらの情報は、図1の改善策情報出力処理部18により、運行効率低下現象、要因なども合わせて、運行診断結果としてダッシュボード情報処理装置2に表示される(S9)。このダッシュボード情報処理装置2上に表示された運行診断結果(情報コンテンツ)は、図1のビル管理者の情報処理端末装置3を介して、ビルオーナーまたはビル管理者に情報提供される。
ビルオーナーまたはビル管理者は、この運行診断結果の情報を見て、どの改善策を実施するかの選択と決定を実施する(S10)。このビルオーナーまたはビル管理者が決定した改善策は、図1のビル管理者の情報処理端末装置3、ダッシュボード情報処理装置2を介してエレベーター運行診断装置1の改善策実行処理部19へ送信される。
改善策実行処理部19は、受信した改善策を実行処理し、その処理結果を、既に述べたように、3タイプの改善策に種類に応じた実行処理を実施する制御の改善策実行処理部20、情報提供の改善策実行処理部21、または利用状態の改善策実行処理部22のいずれかに供給して、選定された改善策を実施する(S11)。
以上が、本例のエレベーター運行診断システム100全体の処理フローである。
<改善策の評価に関する処理手順>
図5は、本例のエレベーター運行診断装置1における改善策の評価処理の例を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、図1で説明した改善策候補抽出処理部161~実施計画策定処理部165の処理、すなわち、改善策候補の抽出から、改善効果算出処理、改善策の評価値算出処理、評価スコアと推奨順位付けの処理、実施計画(実施順序)の策定処理の手順をより詳細に説明するためのものである。
まず、改善策選定処理部16の改善策候補抽出処理部161は、判定した要因に応じた改善策を、要因と改善策を対応させた要因および改善策データベース15に基づいて、例えばif-then形式のようなルールを用いて選定する(S12)。ここで、if-then形式のようなルールとは、例えば、要因と改善策を対応させたルールであり、このルールを使うことにより要因が特定できれば、それに対応した改善策が選定可能になる。
ステップS12で、改善策の候補が選定されると、まず、改善策候補効果算出処理部162は、運行効率低下現象に対する改善効果の大きさを算出する(S13)。これには、まず、シミュレーションによる改善効果の算出を行い、次に、他のエレベーターでの同じ改善策による実績データに基づいて改善効果の算出を行う。例えば、運行効率低下現象が平均待ち時間が長いという場合には、改善策の実施前と実施後での平均待ち時間を比較した待ち時間の低減比、低減比率などにより低減効果を定量化する。この定量化では、例えば、改善策の実施前後で平均待ち時間が20%低減されるなどの改善効果が算出される。
ここでは、図1で既に説明したように、評価値算出処理部163は、改善効果の数値を例えば5段階のレベル値で評価値に変換する。例えば、運行効率の低下現象が30%低減するならば評価値は5、20%低減ならば評価値は4などのように変換する。この評価値は、決められた範囲のレベル値、もしくは正規化した値とし、他の項目の評価値との比較がしやすいようにする。改善策の評価値の具体例については、図6を用いて再度説明する。
まず、評価値算出処理部163は、改善策の費用対効果の費用に対応する、改善策の実施に必要な費用(金銭的な費用)に対する評価値を算出する(S14)。この評価値の算出は以下の(1)~(3)に示すいずれかの方法で行われる。
(1)改善策毎の費用を記載したデータ表を参照。
(2)改善策に対する費用を計算式により算出(例えば、変更するプログラムの分量を費用に換算する計算式など)。
(3)他のエレベーターで実施した同じ改善策に対する費用の実績データに基づいた費用の算出。
さらに、評価値算出処理部163は、金額的費用ではない改善策実施による利用者の行動変化も費用の観点で評価する。これは、改善策の実施で生じる利用者の行動変化の大きさに対応する評価値として算出される(S15)。例えば、評価値算出処理部163は、出勤時間を5分変更する場合には評価値を「4」、10分変更する場合には評価値を「3」、30分変更する場合は評価値を「2」とするなどのように算定する。
この出勤時間の変更のように、エレベーターの利用に関する行動の変化は、利用者にとっては負担(不利益)となるので、一種の費用として評価値を見積もることにする。この例では、費用の評価値を、費用が大きいほど評価値が小さくなるようにする。これは効果の評価値と費用の評価値を対応させるためである。
次に、評価値算出処理部163は、利用者の行動変化の大きさに対応する評価値を算出する(S15).この利用者の行動変化の大きさに対応する評価値も、上述した改善策の実施に必要な金銭的な費用に対する評価値の算出と同様に、以下(1)~(3)に示す方法のいずれかにより算出される。
(1)行動変化量を評価値に換算する換算表による参照
(2)行動変化量から評価値を求める計算式による算出
(3)他のエレベーターで実施した同じ改善策に対する行動変化量の実績データに基づいた行動変化の大きさとその評価値の算出
但し、改善策の実施によって生じる利用者の行動変化の予測は、決して簡単ではない。
そのような場合は、上記(3)に示すように、過去の同様の改善策による実績データを用いて推定することが有効となる。
ステップS14~S15で、各改善策の候補について、改善効果、費用、利用者の行動変化についての評価値が算定されたならば、次に、改善策選定処理部16の評価スコアおよび推奨付け処理部164は、各評価値からの算定ルールもしくは評価値の重み付け和などにより総合評価点に対応する評価スコアを計算する(S16)。
ここで、各評価値から評価スコアを算定するルールには、例えば費用がかからないものを優先して良い評価スコアとする、あるいは利用者の行動変化が小さいものを重視して良い評価スコアとするなどのルールが考えられる。
ステップS16で、評価スコアが算定されたならば、評価スコアおよび推奨付け処理部164は、評価スコアの大きさもしくは評価値毎のルールに基づいて、改善策の推奨順位を設定する(S17)。
最後に、改善策選定処理部16の実施計画策定処理部165は、各評価値、評価スコア、推奨順位に基づいた改善策の実施順序、つまり実施計画を策定する(S18)。
ここで推奨順位とは、ビルオーナーまたはビル管理者に対して、複数の改善策の評価スコアを高い順に示して、ビルオーナーまたはビル管理者が改善策の選定をしやすくするためのものである。ビルオーナーまたはビル管理者はこの推奨順位に従って、対象とするビルで実施する改善策を選定する。
<改善策の評価データの例>
図6は、本例のエレベーター運行診断システム100における改善策の評価データの例を示す図である。図6では、改善策のタイプ(A1)、改善策(A2)、評価値(A3)、評価スコア(A4)、および推奨順位(A5)の5つの欄が設けられている。
図6に示すデータには、エレベーター運行診断装置1が内部データとして持つデータと、ダッシュボード情報処理装置2が診断結果の一部として表示出力するデータとが含まれる。
以下、図6の内容をさらに詳しく説明する。まず、改善策のタイプ欄(A1)は、既に述べたように、改善策を3タイプで分類している。すなわち、(1)制御の変更/追加、(2)利用方法/操作方法に関する情報提供、(3)利用状態の制限の3タイプである。
改善策の欄(A2)には、運行効率低下現象を改善するものとして選定した改善策の候補が改善策のタイプで分けて示されている。
例えば、改善策のタイプが、(1)制御の変更/追加の場合では、出勤時間帯のロビー階へのエレベーター全台呼び寄せの改善策、および出勤時間帯の分割急行運転(セクタリング運転とも呼ばれる)の改善策が候補として選定される。
また、改善策のタイプが、(2)利用方法/操作方法に関する情報提供の場合には、出勤時間帯の混雑状況情報の提供、および出勤時間帯の下降方向のエレベーター利用抑制の情報提供という改善策が選定される。
さらに、改善策のタイプが、(3)利用状態の制限の場合には、時差出勤の実施という改善策が候補として選定される。
評価値の欄(A3)には、選定された各改善策の候補に対する評価値の値が示されている。ここで評価値は、既に述べたように、費用対効果の観点から改善効果、実施時の費用、実施した場合の利用者の行動変化の3項目に分けて評価されている。ここでは、評価値を、1から5の5段階で評価している。つまり、評価値が高いほど、改善策の評価が良いことを示す。なお、5段階の評価値は、あくまでも一例であり、この例以外にも、評価値を0~1の範囲で正規化した値にしたり、0~100の点数で表したりすることも考えられる。
いずれの場合も、それぞれの改善策の比較をし易くするため、評価値の取る領域(値域)を統一することが重要になる。さらに評価値の項目毎にも同様に値の取る領域(値域)を統一して、比較しやすいようにしている。また、各評価値の項目については、優先度、重要度に対応する重みを設けている。
図6の例では、大、中、小の定性的で粗い重み付けによって、評価値を決めているが、評価値を重み係数などで数値化してもよい。この例では、費用対効果の内の費用の方をより重視する重みとしている。すなわち、評価値の各項目の重みについて、改善効果は「中」、費用と行動変化は「大」としている。なお、この重みは、総合評価に対応する評価スコアの値、改善策の推奨順位を決める際に用いられる。
評価スコアの欄(A4)には、各改善策の候補の評価値と重みを基にして算定した評価スコアが示されている。この評価スコアも1~5の5段階の値としている。この例では、費用、行動変化の重みを大としているため、これらの評価値が高いものが、良い評価スコアとなっている。具体的には、制御の変更/追加のタイプの改善策および出勤時間帯のロビー階へのエレベーター全台呼び寄せの改善策が、評価スコア「4」が最も高い(良い)結果となっている。
この評価スコア「4」の改善策は、エレベーターの制御のプログラム変更が比較的少量であり、かつエレベーターの動作が変わるだけで利用者の行動変化もないため、導入しやすい改善策になる。したがって、制御の変更/追加のタイプの改善策は、実際のエレベーターの現場でも待ち時間が長いなどの運行効率低下現象のケースでよく使われているものである。
利用方法/操作方法に関する情報提供のタイプに属する改善策である、出勤時間帯の混雑状況に関する情報の提供も、費用と利用者の行動変化が比較的小さいため、評価スコア「3」の中程度に良い結果となっている。ここで、利用者への情報提供による改善策は、強制的に利用者の行動を変更させるものではなく、情報提供によって自発的な変更を促すもののため、行動変化の評価値は「3」で、比較的小さい値となっている。
推奨順位の欄(A5)には、評価スコアもしくは各評価値項目に従って設定した改善策の推奨順位が示されている。ビルオーナーまたはビル管理者に対して、この順位で改善策を推奨というものを示すものとなる。
以上、図6に示す改善策の評価データを用いることによって、対象とするビル、エレベーターで生じている運行効率低下現象に対して、ビルオーナーまたはビル管理者の観点で、より適切な改善策をエレベーター運行診断装置1側から提案することができる。そして、その結果、ビルオーナーまたはビル管理者は、適切な改善策を選定して、選定した改善策をエレベーターで実施することができる。
<改善策の効果算出のための処理手順>
図7は、本例のエレベーター運行診断装置1における改善策の効果算出の例を示すフローチャートである。この効果算出の処理は、図5の改善策の評価処理の中の、運行効率低下現象に対する改善策の大きさに対応する評価値算出の処理を詳細に示したフローチャートである。
図7に示す改善策の効果算出処理では、既に説明した改善策の3つのタイプの種類に応じた改善効果の算出処理を行っている。
以下、図7のフローチャートに従って運行効率低下現象に対する改善策の大きさに対応する評価値算出の処理について詳細に説明する。
ここで示す一点鎖線の四角形で囲われた処理全体が図5のステップS13に相当する処理である。
まず、図5のステップS12で選定された改善策のタイプが、制御の変更または追加のタイプであるか否かを判定する(S131)。
ステップS131で、改善策が制御の変更または追加のタイプである(S131のYES)の場合には、制御の変更または追加を模擬した改善策の実施前と実施後のシミュレーションを行って、その改善効果を算出する(S132)。
また同じ制御変更もしくは制御追加の改善策を実施した他のエレベーターでの事例を検索し、その改善効果を基にして本ケースでの効果を算出する(S133)。
このようにして、改善策が制御の変更または追加のタイプの改善策である場合の改善効果を算出することができる。
ステップS131で、改善策が制御の変更または追加のタイプでなかった(S131のNO)の場合には、次に選定した改善策のタイプが、利用方法または操作方法に対する情報提供のタイプであるか否かを判定する(S134)。
ステップS134で、改善策が利用方法または操作方法に対する情報提供のタイプである(S134のYES)の場合には、情報提供による利用者の利用方法または操作方法の改善を模擬した改善策の実施前と実施後をシミュレーションで行って改善の効果を算出する(S135)。
さらに、同じ利用方法または操作方法の情報提供の改善策を実施した他のエレベーターでの事例を検索し、他の事例の改善効果を基にして本ケースの効果を算出する(S136)。このようにして、利用方法または操作方法に対する情報提供のタイプの場合の改善策の実施前後の効果を算出することが可能である。
ステップS134で、改善策が利用方法または操作方法に対する情報提供のタイプでなかった(S134のNO)の場合には、最後に、利用者の利用状態の制限のタイプの改善策を模擬した改善策実施前と実施後のシミュレーション計算を行って改善効果を算出する(S137)。
さらに同じ利用者の利用状態の制限のタイプの改善策を実施した他のエレベーターでの事例を検索し、他の事例の改善効果を基にして本ケースの効果を算出する(S138)。このようにして、利用者の利用状態の制限のタイプの改善策に対しても、実施前後の効果を算出することが可能である。
以上のように、3つのタイプの種類の改善策に対して、シミュレーションと他のエレベーターでの実施事例の2通りで改善効果を算定することによって、より確度の高い改善効果の見積りが可能となる。また図7のフローチャートでは説明しなかったが、シミュレーションと他のエレベーターでの実施事例の両方から改善効果を算定してもよいし、どちらか片方から算出してもよい。両方から改善効果を算定できる場合は、両者の平均をとることも考えられる。また、他のエレベーターの実施事例が少ない場合はシミュレーションの結果を用い、他のエレベーターの実施事例が多くなった場合はシミュレーションと事例の両方を組合せて改善効果を算定するようにしてもよい。
<改善策の推奨順位を決定する処理手順>
図8は、本例のエレベーター運行診断装置1における改善策の推奨順位を決定する処理の例を示すフローチャートである。この処理は、図4のフローチャートのステップS8の「算出した評価値に基づいた改善策の評価スコア算出、推奨順位付け、実施計画策定」に関する処理の詳細を示している。すなわち、図1の改善策選定処理部16の評価スコアおよび推奨順位付け処理部164と実施計画策定処理部165の処理である。
この図8で示す処理では、選定された改善策候補について、費用対効果の観点で算出した図4のステップS7に示した3項目の評価値を活用して推奨順位を決定している。
以下、図8のフローチャートを用いて「算出した評価値に基づいた改善策の評価スコア算出、推奨順位付け、実施計画策定」に関する処理の手順を詳細に説明する。
ステップS7で、改善策に対する各評価値が算出される。このステップS7では、既に説明したように、改善効果の大きさ、改善策の実施費用の大きさ、および利用者の行動変化の大きさの各項目に対して改善策の評価値が算出される。
図1に示す改善策選定処理部16の評価スコアおよび推奨順位付け処理部164は、ステップS7で算出された評価値に基づいて、改善策の推奨順位を定める一連の処理を実施する(S8)。
これまで図1、図4の説明では、改善策の推奨順位付けについて、総合点となる評価スコアを基に定める場合と、3項目の評価値から定める場合の両方があることを説明したが、ここで示すステップS8の処理は、3項目の評価値の重要度や優先度に応じた順位付けのルールを定めて推奨順位を定める方法を採用している。なお、3項目の評価値を総合点としての評価スコアに換算する場合でも、換算の仕方を以下に示す考え方に従って定めれば、3項目の評価値の重要度や優先度に応じた推奨順位付けと同じことができる。
以下、図8を参照して、3項目の評価値に基づいて推奨順位を定める具体的な処理について説明する。ここで示す例では、費用対効果の観点でみて、実施費用と利用者の行動変化がより小さいものを優先して推奨順位を定めている。
まず、(1)実施費用の評価値がゼロの中で、さらに(2)改善効果の評価値が高く、かつ(3)利用者の行動変化が小さい改善策を推奨順位1位に選定する(S81)。これは、実施費用がかからず、利用者のへの影響も小さく、そしてすぐに実施できる改善策を最優先で実施するという方針に基づいている。
次に、(1)費用が低く、(2)効果が高く、かつ(3)利用者の行動変化が小さい改善策の中から仮の推奨順位を定める(S82)。この順位付けは、上記(1)、(2)、(3)の優先順で定める。ここでは、費用はゼロではないが小さく、その代わりに改善効果がより高いものを次の優先的な改善策として選ぶようにしている。
続いて、利用者の行動変化量が特に大きい改善策、例えば、100人以上の利用者に対して行動変化が必要な改善策などは、推奨順位を下げるように調整する(S83)。つまり、多人数の利用者の行動変化が必要となるような改善策は、実施することが難しくなるので、実施の優先度を下げるようにする。なぜなら、ビルオーナーまたはビル管理者側にとって、利用者への負担が大きくなることは避けることが望ましいからである。
さらに、改善策のタイプが利用者への利用方法/操作方法に関する情報提供に属する改善策である場合には、その推奨順位を上げるように修正する(S84)。利用者への情報提供のタイプの改善策の推奨順位を上げるのは、利用者側への改善に向けた働きかけとして有効であり、強制ではなく情報提供によって自発的に利用方法や操作方法の改善を促すことになるからである。
情報提供のデバイスとして、乗りかご内の情報表示装置(ディスプレイ)、乗り場の情報表示装置、ビルのロビー階などに設置されたデジタルサイネージ装置、さらにスマートフォンのような個人向け携帯端末装置など、容易かつ円滑に利用者への情報提供が可能となる環境にあることも、利用者への情報提供のタイプの改善策の推奨順位を上げる理由となる。
最後に、修正した仮の推奨順位を基に最終的な推奨順位に定める(S85)。この最終的な推奨順位は、運行診断による改善策の推奨順として、ビルオーナーまたはビル管理者に提案される。
以上説明したように、改善策の推奨順位を決定する処理によって、エレベーターの運行制御の変更に限らない多様な種類の改善策に対して、費用対効果に対応した3項目の評価値を活用して、適切な改善策の推奨順位を定めることできる。その結果、ビルオーナーまたはビル管理者は、対象のビルに対して、より適切な改善策を選定して実施することでき、エレベーターの運行効率低下現象を円滑に改善することが可能となる。
<実施計画を作成するための処理手順>
図9は、図1に示す実施計画策定処理部165で実施さる改善策の実施計画の策定処理のフローチャートである。
既に述べたように、図1の実施計画策定処理部165では、改善策候補から1つの改善策のみを実施するように提案するのではなく、実施の順序を定めたプロセスによる実施計画を策定する。複数の改善策を適正な順序、適正なプロセスに従って順に実施することでより高い改善効果もしくは副作用の少ない改善処理を実施することを狙っている。
以下、図9の処理の流れを説明する。この図9に示す実施計画策定処理は、選定された改善策に、情報提供のタイプと制御の変更/追加のタイプまたは利用状態制限のタイプがある場合、先に情報提供のタイプの改善策を実施して、その後に情報提供のタイプと制御の変更/追加のタイプまたは利用状態制限のタイプの改善策を実施するものである。
まず、図1の要因判定処理部14によって判定された要因に対応する改善策を、改善策選定処理部16で選定する(S91)。ここで、選定される改善策は概ね複数個の集合となる。
次に、この改善策(集合)に対して、改善策が、制御の変更/追加のタイプ、情報提供のタイプ、利用状態の制限のタイプの内の2つ以上のタイプが存在するか否かを判定する(S92)。そして、ステップS92で、2つ以上のタイプが存在すると判定された場合(S92のYES)には、続いて、改善策(集合)の中に利用方法/操作方法に関する情報提供のタイプに属する改善策があるか否かを判定する(S93)。ステップS92で2つ以上のタイプが存在しないと判定された場合(S92のNO)には、処理を終了する。
ステップS93で、改善策(集合)の中に利用方法/操作方法に関する情報提供のタイプに属する改善策があると判定された場合(S93のYES)には、改善策を実施する手順を定めた実施計画において、情報提供のタイプに属する改善策を先に実施する計画に設定する(S94)。
ステップS93で、改善策(集合)の中に利用方法/操作方法に関する情報提供のタイプに属する改善策がないと判定された場合(S93のNO)には、処理を終了する。
続いて、改善策(集合)の中に、制御の変更/追加のタイプまたは利用状態制限のタイプに属する改善策があるか否かを判定する(S95)。そして、ステップS95で制御の変更/追加のタイプまたは利用状態制限のタイプに属する改善策があると判定された場合(S95のYES)には、改善策の実施計画を、制御の変更/追加または利用状態制限のタイプに属する改善策を次に実施する計画に設定する(S96)。ステップS95で、制御の変更/追加のタイプまたは利用状態制限のタイプに属する改善策がないと判定された場合(S95のNO)には、処理を終了する。
この図9に示した実施計画策定処理は、情報提供のタイプの改善策を先に実施し、その後に制御の変更/追加のタイプまたは利用状態制限のタイプの改善策を実施するものであるが、これにより、いきなり制御の変更/追加のタイプや利用状態制限のタイプの改善策を実施することによる副作用(マイナスの効果)を軽減することができる。
例えば、乗り場呼びボタンについて、一般呼びのボタンと車いす呼びのボタンを同時に押すような不要な使用、あるいは好ましくない使用をして、車いす対応のエレベーター号機の運行効率を低下させる場合が起こり得る。
このような場合には、エレベーター制御装置5による制御によって、一般呼びのボタンと車いす呼びのボタンとを共通化するような対応が取られる場合があるが、いきなりこのような対応をすると、実際に車いす呼びを利用している利用者にとって不便となる可能性がある。そこで、まずは利用方法/操作方法に関する情報提供のタイプの改善策から、車いす呼びのボタンに対する適正な利用方法/操作方法を情報提供する改善策を実施することが望ましい。このような対応を取ることで、一般呼びのボタンと車いす呼びのボタンを同時に押すような不要な使用、あるいは好ましくない使用を減らすことができる。
このような対応を取った場合でも、車いす呼びは通常通り使えるため、車いす呼びを利用している利用者が不便になることはない。しかし、上述の改善策を実施しても、一般呼びのボタンと車いす呼びのボタンを同時に押すような不要な使用、あるいは好ましくない使用があまり減らない場合もあるので、次にやむを得ずに一般呼びのボタンと車いす呼びのボタンとを共通化することが考えられる。このような順序に従うことで、強制的に実施される制御の改善策による副作用の発生を抑えることが可能となる。
図10も図9と同様に、図1に示す実施計画策定処理部165で実施さる改善策の実施計画の策定処理のフローチャートを示しているが、図10の例は、図9とは異なり先に実施する改善策とのシナジーを考慮して次に実施する改善策を提案している。
以下、図10のフローチャートに従って処理の流れを説明する。図10で示す実施計画策定処理は、選定された改善策に、制御の変更/追加のタイプが複数個ある場合に、適用範囲が広く副作用のリスクが少ないベース型の改善策をまず先に実施して、次に特定の運行効率低下事象を対象にした特化型の改善策を実施するものである。
まず、判定された要因に対応する改善策を選定する(S101)。次に、選定した改善策に対して、制御の変更/追加のタイプが複数個あるか否かを判定する(S102)。
ステップS102で、選定した改善策に対して、制御の変更/追加のタイプが複数個あると判定された場合(S102のYES)は、続いて実施計画策定処理部165は、複数個ある制御の変更/追加のタイプの改善策について、ベース型と特化型の2種類があるか否かを判定する(S103)。
ステップS103で、制御の変更/追加のタイプの改善策について、ベース型と特化型の2種類があると判定された場合(S103のYES)には、実施計画策定処理部165は、ベース型の改善策を先に実施して、特化型の改善策を次に実施する計画に実施計画を策定して(S104)処理を終了する。
ここで、制御の変更/追加のタイプのベース型と特化型の改善策について説明する。ベース型の改善策は、適用範囲が広く副作用のリスクが少ない改善策である。
例えば、割り当てられたエレベーター号機が呼びのある乗り場への到着予測時間が長いと判定された場合に、より到着予測時間が短いエレベーター号機があればその号機に割当てを変更するような改善策が挙げられる。つまり、到着時間が長いことが予測される場合に割当てを変更する改善策である。
もう一つの特化型の改善策は、例えば出勤時のアップピークに特化したような改善策である。この特化型の改善策は、適用対象が特化しているため、その適用対象では高い効果が出るが、適用対象外では効果が出なかったり、かえって悪くなったりする可能性もあるので、適正に実施する必要がある。このような特化型の改善策の例として、例えば、出勤時間帯の分割急行運転(セクタリング運転とも呼ぶ)が挙げられる。
ステップS103のYESの場合に、ベース型の改善策を先に実施して、特化型の改善策を次に実施するのは、先に適用範囲が広くリスクの少ないベース型を実行して、所望の効果を確認してから、次の特化型の改善策を実施することを意味する。つまり、ベース型で所望の効果が得られれば、それで「良し」として特化型の改善策を実施しないで済ますこともあるということである。そして、ベース型の改善策で所望の効果が得られない場合にのみ、特化型の改善策を実施して改善策の効果をより高めるという狙いがある。
なお、ステップS102で、選定した改善策に対して、制御の変更/追加のタイプが複数個ないと判定された場合(S102のNO)、及びステップS103で、制御の変更/追加のタイプの改善策にベース型と特化型の2種類がない、つまりどちらかの改善策しかないと判定された場合(S103のNO)には、処理を終了する。
図11は、図10に示した実施計画策定処理のフローチャートに従って、ベース型の制御による改善策を1回目、特化型の制御による改善策を2回目として、計2回実施した場合の改善効果の様子を示した図である。
図11に示すグラフは、横軸が期間(例えば、数週間~数カ月のスケール)、縦軸が運行効率に関わる性能指標を表している。
以下、図11について、横軸の期間の左から右に沿ってその意味を説明する。まず期間の始め(最も左側)は改善前の状態であり、運行効率に対する性能は低い状態になっている。その後、運行診断を実施して、図10の実施計画策定処理のフローチャートに示した改善策の実施計画に従って、順に改善策を実施していく。
まず1回目に制御の変更/追加のタイプのベース型の改善策を実施したことにより、運行効率低下事象に対する改善がなされて性能は向上する。しかし、まだ好ましい性能のラインには達していない。そこで2回目の制御の変更/追加のタイプの特化型の改善策を実施する。この結果、さらに性能の効果が積み上がり、好ましい性能のラインに到達する。
以上のように、図11に示した実施計画策定処理のフローチャートに従って、効果に対するリスクを抑えながら、改善策を適正な順番で実施することで、図11のように効果を積み上げながら改善を実施することが可能になる。
<ダッシュボード上での運行診断結果の表示例>
図12は、本例のエレベーター運行診断装置1に用いられるダッシュボード上での運行診断結果の表示例である。この表示コンテンツは、図1で説明した、提案された改善策情報出力処理部18、ダッシュボード情報処理装置2を介してビル管理者の情報処理端末装置3に出力される。
図12に示す表示コンテンツは、対象ビルのエレベーターに対して、発生している運行効率低下現象およびその要因、そして要因に基づいた改善策の候補を提示するものである。さらに、図12では、ビルオーナーまたはビル管理者が適切な改善策を選定しやすいように、改善策に対する推奨順位、改善策を費用対効果の観点で評価した評価値とその総合点となる評価スコアを合わせて提示している。
以下、図12に示した運行診断結果の表示コンテンツの詳細を説明する。まず、エレベーター運行診断結果の表示画面(B1)が、図1で説明したダッシュボード情報処理装置2を介してビル管理者の情報処理端末装置3に出力されて表示される。
ここで、ダッシュボードとは、企業や組織などのKPI(Key Performance Index)を、収集した関連データで分析して可視化するツールであり、このダッシュボード上で、ビルの主要設備の一つであるエレベーターの稼働状態、運行状態に関するKPIが可視化されて表示される。このダッシュボード上に表示される表示画面のコンテンツは、ダッシュボード情報処理装置2で作成され、インターネットなどの通信ネットワークを介して、ビル管理者の情報処理端末装置3で閲覧できるようになっている。
このエレベーター運行診断結果の表示画面(B1)には、診断対象のビルに対して、検出した運行効率低下現象の結果(B2)がまず表示される。この例では、検出した運行効率低下現象として、「出勤時間帯にて平均待ち時間が長い」という結果が表示されている。また、表示画面(B1)には、運行効率低下現象に対する要因の判定結果(B3)も表示される。この例では、「出勤時間帯におけるエレベーター利用人数が多い」ことが要因として表示されている。このように、まずはエレベーターの運行診断の結果として、対象のビルで課題となっている現象と要因を提示することで、ビルオーナーまたはビル管理者に状況を明確に示すことができる。
続いて、運行効率低下現象とその要因に基づいて、そのビル、対象のエレベーターで実施するのか望まれる改善策が提案され、これがビル管理者に提案される改善策の一覧リスト(B4)になる。
この改善策のリスト(B4)では、既に説明した推奨順位(B5)の順に改善策が提示されている。さらにリスト(B4)には、改善策候補の名称(B6)の欄、各改善策の評価結果(B7)の欄、そしてそれらの情報を基にビルオーナーまたはビル管理者がどの改善策を実施するかを選定する回答箇所(B8)の欄が設けられている。
ここで、各改善策の評価結果(B7)の欄には、総合評価値となる評価スコア、効果、費用、利用者行動変化の各項目の評価値のデータが提示される。さらにビルオーナーまたはビル管理者がどの改善策を実施するかを選定する回答箇所(B8)の欄には、実施の判定選択ボタン(B9)が設けられており、ビルオーナーまたはビル管理者はこの実施の判定選択ボタン(B9)を押すことで必要とする改善策を選択できるようになっている。
ここで選択された改善策情報は、図1の改善策実行処理部19に送信されて、改善策実行処理部19において選択された改善策の実行処理がなされる。
ビルオーナーまたはビル管理者は、図12に示された表示画面によって、エレベーターの診断対象のビルおよびエレベーターにおいて課題となっている運行効率低下現象とその要因、さらに適切な改善策を容易に把握することができる。また、ビルオーナーまたはビル管理者は、改善策のリストによって、費用対効果の評価値を基にした明確な判断基準を根拠に適切な改善策を選ぶことが可能になる。
<改善策の実施手順>
図13は、本例のエレベーター運行診断装置1において、改善策の実施手順を提案する表示画面の例を示している。ここで提示される改善策の実施手順は、改善策を単発で実施するのではなく、複数の改善策を特定の実施順序に従ったプロセスで実施する手順を表している。
例えば、費用がかからず、利用者の行動変化も小さい、すぐ実施できる改善策をまず実施する。そして、その結果の状況を確認した上で、費用が多少かかるが、効果がより高い改善策を次に実施する手順になる。なお、この実施手順の策定は、図1の改善策選定処理部16における実施計画策定処理部165で行われる。
以下、図13を参照して、改善策の実施手順の提示例について説明する。図13は、改善策の実施手順を提示する場合の表示画面(C1)である。この表示画面(C1)は、これまで説明した運行診断結果を提示するダッシュボードの表示画面のメニューの一つである。この図13に示す表示画面(C1)は、改善策を提案する際に、改善策候補の提案と併行して表示される提示画面である。ここでは、単発での改善策の実施に加えて、複数の改善策を順序に従って実施するプロセスを提案する表示画面となっている。
図13の例では、実施ステップ1、2、3の3段階の実施手順が示されている。実施ステップ1の改善策の提案は、「出勤時間帯のロビー階へのエレベーター全台呼び寄せ」(C2)である。この最初に実行する実施ステップ1の実施項目は、実施費用が比較的小さく、かつ利用者の行動変化、つまり利用者の行動への影響が小さい改善策になっている。この改善策のタイプは制御の変更に属しており、それなりの効果が期待できる。
実施ステップ1の改善策を実施して、実施後Xか月(例えば2か月など)で効果が見られなかった場合には、次の実施ステップ2の改善策を実行する。ここでは、利用者に対して「出勤時間帯の混雑状況情報の提供」(C3)行われる。この改善策は、図6に示した改善策の評価結果の通りで、費用、行動変化が比較的小さく、効果も実施ステップ1の改善策よりも高いことが期待される改善策である。したがって、実施ステップ1の改善策で効果が小さい場合でも実施ステップ2の実施によって、生じている運行効率低下現象が改善されることが期待できる。
実施ステップ2の改善策を実施しても、実施後Xか月(例えば2か月など)で効果が見られなかった場合には、実施ステップ3で、費用、利用者の行動変化が大きいが、期待効果が大きい改善策を実施項目として実行する。この実施ステップ3の改善策としては、「時差出勤の実施(高層階の出勤時間変更)」(C4)または「出勤時間帯の分割急行運転」(C6)が挙げられている。時差出勤の実施(C4)は、利用者の行動変化が大きいが効果も高い改善策となり、出勤時間帯の分割急行運転(C5)は、実施費用が大きいが効果も高い改善策となる。ビルオーナーまたはビル管理者が改善策(C4)と(C5)のどちらを許容するかで改善策が選定される。
以上、図13に示した複数の改善策を用いた実施手順を改善策の提案の一つとして示すことにより、ビルオーナーまたはビル管理者は、対象としているビル、エレベーターで生じている運行効率低下現象に対して、まずは素早く改善策を実施することができる。そして、ビルオーナーまたはビル管理者は、さらにその実施効果をみて、より効果の高い改善策を順次実施することが可能となる。
また前もって計画立てた改善策の実施順序に基づいて費用対効果を踏まえた改善策を実施するため、ビルオーナーまたはビル管理者は、費用対効果のリスクを抑えることができる。さらに単発の改善策の実施とは異なり、費用対効果の点でより確実な改善を実施することが可能となる。
以上、本発明の一実施の形態例としてのエレベーター運行診断装置およびエレベーター運行診断システム100の説明をしたが、上述した各構成、機能、処理部等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現することもできる。また、上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを実行することによりソフトウェアで実現することもできる。なお、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に記述したものであり、必ずしも記述した全ての構成を備えるものに限定されない。実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
すなわち、本発明は、明細書または図面に開示した実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない限りにおいて、他の応用例及び変形例を含むことは勿論である。
1…エレベーター運行診断装置、
11…運行診断実施判定処理部、
12…運行データ・改善策実施結果データベース、
121…運行データのデータベース
122…改善策実施結果のデータベース
13…運行効率低下現象検出処理部、
14…要因判定処理部、
15…要因および改善策データベース、
16…改善策選定処理部、
161…改善策候補抽出処理部、
162…改善策候補効果算出処理部、
163…評価値算出処理部、
164…評価スコアおよび推奨順位付け処理部、
165…実施計画策定処理部、
17…エレベーター運行シミュレータ、
18…改善策情報出力処理部、
19…改善策実行処理部、
20…制御の改善策実行処理部、
21…情報提供の改善策実行処理部、
22…利用状態制限の改善策実行処理部、
2…ダッシュボード情報処理装置、
3…ビル管理者の情報処理端末装置、
4…エレベーター群管理装置、
5…エレベーター制御装置、
6、61、62…乗りかごの情報表示装置、
7、71、72…乗り場の情報表示装置、
8…ビルフロアのデジタルサイネージ装置、
9…利用者の携帯情報端末装置、
10…ビルテナントの情報処理端末装置、
31…エレベーター遠隔監視システム
32…通信ネットワーク
511、521…乗りかご、
512、522…かご呼び登録装置、
513、523…荷重センサ、
81、82…乗り場
811、822…乗り場呼び登録装置

Claims (9)

  1. エレベーターの運行データを収集して、前記運行データに基づいてそのエレベーターの運行効率が低下する現象を検出する運行効率低下現象検出処理部と、
    前記運行効率の低下現象の要因を判定する要因判定処理部と、
    前記運行効率低下現象検出処理部で検出した運行効率低下現象と前記要因判定処理部で判定した要因に基づいて一つもしくは複数の改善策を選定する改善策選定処理部と、
    前記改善策選定処理部で選定した改善策を出力する改善策情報出力処理部と、
    エレベーターの運行効率低下現象の要因および他のエレベーターで過去に実施した改善策を記録したデータベースと、を備え
    前記改善策は、エレベーターの運行制御の変更、エレベーターの利用者に対するエレベーターの利用方法および/または操作方法に関する情報の通知、エレベーターの利用状態の制限のうち、すくなくとも2つを含み、
    前記改善策選定処理部は、前記改善策の改善効果の大きさ、前記改善策の実施にかかる費用、および前記改善策の実施で生じるエレベーター利用者の行動変化の大きさのそれぞれに対する評価値を算出するとともに、これらの各評価値の加算値もしくは重み付け加算値によって、改善策に対する評価スコアを算出し、前記算出した評価スコアに基づいて、前記選定した改善策の改善効果の大きさを見積るとともに、前記データベースに記録されている他のエレベーターにて同じ改善策を実施した場合には、前記他のエレベーターで実施した改善効果の実績データに基づいて効果の大きさを見積もる
    エレベーター運行診断装置。
  2. 前記改善策選定処理部は、算出した改善策に対する評価スコアに基づいて、前記選定した改善策に対する優先順位を設定し、
    前記改善策情報出力処理部は、前記改善策選定処理部で選定した改善策の順位付けに従って前記選定した改善策を出力する
    請求項1に記載のエレベーター運行診断装置。
  3. 前記改善策選定処理部は、選定した改善策の実施にかかる費用が低い改善策ほど、前記改善策の評価スコアが高くなるように評価する
    請求項1または2に記載のエレベーター運行診断装置。
  4. 前記改善策選定処理部は、選定した改善策の実施による利用者の行動変化が大きい改善策ほど、前記改善策の評価スコアが低くなるように評価する
    請求項1または2に記載のエレベーター運行診断装置。
  5. 前記改善策選定処理部は、選定した改善策の実施による前記エレベーターの利用方法および/または操作方法に関する情報の通知に属する改善策の評価スコアが、他の改善策よりも高くなるように評価する
    請求項1または2に記載のエレベーター運行診断装置。
  6. さらに、前記改善策を順番に実施する実施計画を定める実施計画策定処理部を備え、
    前記実施計画策定処理部は、エレベーターの利用方法および/または操作方法に関する情報の通知に属する改善策を先に実施し、エレベーターの運行制御の変更またはエレベー
    ターの利用状態の制限、またはエレベーターの利用者の行動スケジュールの変更による改善策を後に実施する順番となる実施計画を策定する
    請求項1に記載のエレベーター運行診断装置。
  7. さらに、前記改善策を順番に実施する実施計画を定める実施計画策定処理部を備え、
    前記実施計画策定処理部は、エレベーターの運行制御の変更に属する改善策に対して、ベース型の改善策を先に実施し、特化型の改善策を後に実施する順番となる実施計画を策定する
    請求項1に記載のエレベーター運行診断装置。
  8. さらに、ビルオーナーまたはビル管理者が実施するための改善策を決定する改善策実行処理部を備え、
    前記改善策実行処理部は、
    前記決定された改善策がエレベーター運行制御の変更に属する場合は、外部のエレベーター制御装置に対して制御の変更を実施するように通知し、
    前記決定された改善策がエレベーターの利用方法および/または操作方法に関する情報の通知に属する場合は、前記エレベーターの乗りかごおよび/または乗り場にある情報出力装置に対して前記改善策に関わる情報を通知し、
    前記決定された改善策が利用状態の制限である場合は、前記エレベーターが設置されているビルのテナントの情報処理装置に利用状態の制限に関する情報を通知する
    請求項1に記載のエレベーター運行診断装置。
  9. 一台もしくは複数台のエレベーターの運行を制御するエレベーター制御装置と、エレベーターの運行診断に関わる情報を出力するダッシュボード情報処理装置と、エレベーターの運行診断を行って、エレベーターの運行効率が低下している現象を発見した場合にビルオーナーまたはビル管理者に対して改善策を提案するエレベーター運行診断装置とを含むエレベーター運行診断システムであって、
    前記エレベーター運行診断装置は、
    エレベーターの運行データを収集して、前記運行データに基づいてそのエレベーターの運行効率が低下する現象を検出する運行効率低下現象検出処理部と、
    前記運行効率の低下現象の要因を判定する要因判定処理部と、
    前記運行効率低下現象検出処理部で検出した運行効率低下現象と前記要因判定処理部で判定した要因に基づいて一つもしくは複数の改善策を選定する改善策選定処理部と、
    前記改善策選定処理部で選定した改善策を出力する改善策情報出力処理部と、
    エレベーターの運行効率低下現象の要因および他のエレベーターで過去に実施した改善策を記録したデータベースと、を備え
    前記改善策は、エレベーターの運行制御の変更、エレベーターの利用者に対するエレベーターの利用方法および/または操作方法に関する情報の通知、エレベーターの利用状態の制限のうち、すくなくとも2つを含み、
    前記改善策選定処理部は、前記改善策の改善効果の大きさ、前記改善策の実施にかかる費用、および前記改善策の実施で生じるエレベーター利用者の行動変化の大きさのそれぞれに対する評価値を算出するとともに、これらの各評価値の加算値もしくは重み付け加算値によって、改善策に対する評価スコアを算出し、前記算出した評価スコアに基づいて、前記選定した改善策の改善効果の大きさを見積るとともに、前記データベースに記録されている他のエレベーターにて同じ改善策を実施した場合には、前記他のエレベーターで実施した改善効果の実績データに基づいて効果の大きさを見積もる
    エレベーター運行診断システム。
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