以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例によるデータ表示装置を備えた群管理エレベータシステムの構成図である。主な構成は、n台のエレベータ装置(エレベータかご、駆動装置、おもり、ロープなど)71、72、…、7n、それぞれのエレベータ装置に対するエレベータ制御装置61、62、…6nである。また、乗り場に設置された予約案内灯81、82、…8n、各階の乗り場に各エレベータ毎に設けられた乗り場呼び登録装置91、92、93、…、エレベータ群管理装置1、運行表示装置4、および印刷装置5を備えている。尚、図1ではn台のエレベータ装置71、72、…、7nを上下方向に分けて示しているが、実際にはn台のエレベータは水平方向に並んで設置されている。
エレベータ群管理装置1内の割当て要因判定部12が、本発明の群管理エレベータシステムの特徴をなす要素であり、以下、全体の処理の流れを説明した後にその詳細を説明する。
まず、各階のエレベータ乗り場において、利用客が乗り場呼び登録装置91、92、93、…を押して、自分の行きたい方向の呼びを登録する。例えば、3階上方向とする。この乗り場呼び情報がエレベータ群管理装置1に伝送され、各エレベータ制御装置61、62、…6nからの情報を基にして、乗り場呼び割当て評価部11にて、各エレベータかごがその呼びにサービスした場合の割当て評価指標を求める。各エレベータ制御装置61、62、…6nからの情報としては、各エレベータの位置、速度などの動作状態、かご呼び、乗り人数、既に割当てられている呼びの継続時間、乗車時間等がある。上記評価指標が最善のかごを選択して、そのかごに乗り場呼びを割当てる。割当てかごの情報がエレベータ群管理装置1より伝送されて、その階のそのかごの予約案内灯81〜8nが点灯して、利用客にエレベータが予約されたことを案内する。
ここで、割当て評価指標は、複数の評価項目からなる多目的評価指標であり、例えば、式(1)のように表される。
式(1)において、F(k)はk番目のかご(以下、k号機と呼ぶ)の割当て評価指標、fi(k)はk号機に対するi番目の評価項目の評価値、wiはi番目の評価項目に対する重み係数、Mは評価項目の総数を表している。評価項目としては、例えば、予測待ち時間、各かごの時間的な位置関係、かご内の混雑率、乗車時間、将来発生する可能性のなる乗り場呼びの待ち時間などが挙げられる。予測待ち時間には、新規に登録された乗り場呼びに対する予測待ち時間と、既に割当て済みの乗り場呼びに対する予測待ち時間とがある。各かごに対して、割当て評価指標である総合評価値F(k)を計算して、最善(一般には最小)値となるかごを割当てかごに選択する。尚、割当て評価指標には、式(1)のような線形関数だけではなく、非線形関数も含まれる。ニューラルネットなどの入出力関係は、非線形関数に該当する。
割当てかご選定の評価結果に対して、割当て要因判定部12では、最も割当てに作用したと推定される評価項目を推定して、その割当てに対する決定要因を判定する。この判定処理の詳細は、図2〜図4にて後述する。割当て要因の判定結果と、割当てに関する情報、さらにかご位置、かご状態、かご呼び、乗降人数のような運行に関する情報が運行データ記録部13に記録される。割当てに関する情報としては、登録された乗り場呼びの階と方向、登録された時刻、割当てかご、および乗り場呼びの継続時間等である。これらの情報は、呼び割当て毎に記録される。
運行データ記録部13に記録されたデータは、メモリカード、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクなどの記録媒体2、もしくは通信回線3を介して、運行表示装置4に転送される。運行表示装置4では、転送された運行情報と表示条件設定部41で設定された表示条件を基に、表示出力部42において、割当て要因判定結果を加えた運行情報を画面などに表示出力する。表示出力の例は、図5〜図7に示す表示形態であり、後ほど詳細を説明する。印刷装置5では、表示出力部42において表示した画面情報を紙などに印刷する。
以上が、本実施例による群管理エレベータシステムの構成の一例である。繰り返すと、乗り場呼び割当て評価部11でなされた割当てかごの決定要因を判定する割当て要因判定部12と、その判定結果とエレベータかごの運行情報とを分かり易く表示する表示出力部42とが、この実施例のポイントである。以下、まず割当て要因判定部12の処理の詳細から説明する。
図2は、本発明の一実施例による割当て要因判定の処理フロー図である。その骨子は、次の通りである。すなわち、(1)まず、各評価項目のそれぞれについて、割当てたかごの評価値とそれ以外のかごの評価値との差を求める。(2)各評価項目毎に求まったこれらの差を、各評価項目間で比較する。(3)その差が最も大きく現れた評価項目を、割当てに最も作用した評価項目であるとして判定するものである。
まず、図2の割当て要因判定では、割当て評価指標を式(2)のような形態であると仮定する。
割当て評価指標=予測待ち時間評価値+かご位置関係評価値+他の評価値……(2)
式(2)において、予測待ち時間の評価項目における評価値は、新規登録された乗り場呼びの予測待ち時間、既に割当てられている予測待ち時間を基に評価値が計算される。例えば、新規登録、既割当て済みの呼びを含めて最大の予測待ち時間を選択する方法、各呼びの予測待ち時間の平均値を求める方法、各呼びの和もしくは2乗和を求める方法などが挙げられる。かご位置関係の評価項目における評価値は、各かごの空間上の位置関係の均等状態を評価するものである。例えば、近接するそれぞれのかごの時間的間隔が割当てによってどのように変化するかを評価する方法や、理想となる時間的等間隔状態から、どの程度離れる/近づくかを評価する方法などが挙げられる。尚、かご位置関係の評価値は、式(1)のように重み係数が乗算される場合もあり、この場合は、重み係数を乗じた結果を改めて評価値としてもよいし、重み係数を乗じる前の値を評価値としてもよい。後述する議論では、各評価値を直接比較するため、重み係数を乗じた値を評価値とする。
かご位置関係の評価項目に関する評価値は、将来発生する可能性のある乗り場呼びの待ち時間を表すものと見なすことができ、式(2)は、次式のようにも解釈できる。
割当て評価指標=実際に発生している呼びの予測待ち時間の評価値
+将来発生する可能性のある呼びの予測待ち時間の評価値+その他の評価値……(3)
従って、割当てにおいては、予測待ち時間の評価とかご位置関係の評価が主役であり、この2つの評価項目を中心にして割当て要因を判定する。
以下、図2の処理の流れを説明するが、以下の説明において、各評価項目毎に「割当て作用指標」と言う表現を用いる。これは、割当てに対して、その評価項目がどれだけ強く作用したかを数値化した指標である。詳細は、図3を参照して後述する。
まず、待ち時間の評価項目に対する割当て作用指標を計算する(ST01)。次に、かご位置関係の評価項目に対する割当て作用指標を計算する(ST02)。
次に、待ち時間評価に対する割当て作用指標がゼロでないか、もしくはかご位置関係評価に対する割当て作用指標がゼロでないかを判定する(ST03)。
上記の判定条件(ST03)を満たす場合は、次に、待ち時間評価に対する割当て作用指標が、かご位置関係評価に対する割当て作用指標より大きいかどうかを判定する(ST04)。
上記の判定条件(ST04)を満たす場合は、次に、割当てたかごに対して、新規乗り場呼び(割当ての対象となった新規呼び)に対する予測待ち時間が、全かごの中で最小かどうかを判定する(ST05)。
この判定条件(ST05)を満たす、つまり待ち時間評価の割当て作用指標が、かご位置関係評価の割当て作用指標よりも小さく、かつ割当てかごの新規乗り場呼びに対する予測待ち時間が最小であれば、待ち時間の評価項目が割当てに最も作用したと判定する。さらに、待ち時間の中でも、新規乗り場呼びに対する予測待ち時間が最も作用したと判定する(ST06)。この判定結果を表す記号として、割当て要因コード「1」を出力する。
判定条件(ST05)を満たさず、つまり待ち時間評価に対する割当て作用指標が、かご位置関係評価のそれよりも小さく、かつ割当てかごの新規乗り場呼びに対する予測待ち時間が最小でなければ、待ち時間の評価項目が割当てに最も作用したと判定する。さらに、待ち時間の中でも既に割当て済みの乗り場呼びに対する予測待ち時間の評価項目が最も作用したと判定する(ST08)。例えば、3階上方向の乗り場呼びが発生して割当て対象の新規呼びとなり、この呼びに対する予測待ち時間ではなく、既にかごに割当てられている例えば8階上方向の呼びの予測待ち時間の評価項目が、最も強く作用したと判定しているということである。この判定結果を表す記号として、割当て要因コード「2」を出力する。
判定条件(ST04)を満たさない場合、つまりかご位置関係評価に対する割当て作用指標が待ち時間評価の割当て作用指標よりも小さい場合は、かご位置関係の評価項目が割当てに最も作用したと判定する(ST07)。この判定結果を表す記号として、割当て要因コード「3」を出力する。
判定条件(ST03)を満たさない場合、つまり待ち時間評価と、かご位置関係評価に対する割当て作用指標がともにゼロであれば、割当てかごに対して、待ち時間評価値とかご位置関係評価値の和が、全かごの中で最小であるかどうかを判定する(ST09)。
判定条件(ST09)を満たす場合、つまり、待ち時間とかご位置関係の評価値の和が全かごの中で最小である場合は、それぞれ単独の評価項目では最善ではないが、2つの組合せでは最善で、組合せ結果が割当てに最も強く作用したと判定する(ST10)。この判定結果を表す記号として、割当て要因コード「4」を出力する。
最後に、判定条件(ST09)を満たさない場合、つまり、待ち時間とかご位置関係の評価値の和も全かごの中で最小ではない場合は、主役となる2つの評価項目(待ち時間、かご位置関係)以外の評価項目が最も強く作用したと判定する(ST11)。この判定結果を表す記号として、割当て要因コード「5」を出力する。通常は、主役となる2つの評価項目のいずれか、もしくはその組合せが割当ての主要因となる可能性が殆どと考えられるが、局面によっては、乗車時間が極端に長くなることを避けるために、乗車時間の評価項目などが強く作用する場合も考えられる。
以上に述べた割当て要因判定処理の内容をまとめると、まず、各評価項目毎に、割当てたかごの評価値と、それ以外のかごの評価値との関係に基いて、評価項目毎の割当て作用指標を求める。次に、この割当て作用指標を、各評価項目間で比較して、最も割当て決定に作用した評価項目を判定し、これを割当て要因コードとして出力する。割当て要因コードは、図2の例では5つであり、1)新規乗り場呼びの予測待ち時間、2)既に割当て済みの乗り場呼びに対する予測待ち時間、3)かご位置関係評価値、4)待ち時間評価とかご位置関係の組合せ、5)その他の評価値…である。
以上のような割当て要因コードを示すことによって、各乗り場呼びに対する割当てかごの決定の要因を容易に特定することが可能となる。例えば、従来技術のように割当て評価値の内訳を出力する場合、8台エレベータの群管理で割当て評価項目が4項目あるようなケースでは、1つの呼び割当て毎に32個の数値を比較して、最も割当てに作用した評価項を判断しなければならなかった。これに対し、本実施例では、即座に何が要因かを特定することができる。従って、群管理の運行動作の確認、制御性能の確認が容易となり、運行動作の改善を容易にすることが可能となる。
複数台のかごに対する複数の評価項目から、どの評価項目が最も作用したかを判定することは、群管理の専門家でも必ずしも容易ではない。最も作用した評価項目を特定するには、かごという要素と評価項目という2つの要素からなる2次元のマトリクス形式の要素集合から、それぞれの要素を分析して判定する必要があった。これに対して、図2に示した要因判定処理は、複雑な要素関係からいかにして割当て要因を特定するかの手順が示されている。
尚、図2では、主役となる2つの評価項目(待ち時間、かご位置関係)にのみ着目して、それ以外はその他としているが、その他の内訳を展開して、全ての評価項目に対して要因を判定することも可能である。その場合は、図2の処理の内、処理ST01、処理ST02、処理ST04の内容を評価項目の数に合わせて増やしていけばよい。この方法の場合、要因コードの数は増えることになるが、どの評価項目が作用したかを確実に判定することができる。
図3は、本発明の一実施例による待ち時間評価に対する割当て作用指標計算の具体的な処理フロー図である。
まず、待ち時間評価に対して、各かごの評価値の順位を小さい順に求める(ST010)。次に、得られた順位の結果から、割当てかごの待ち時間評価値が全てのかごの中で最小かどうかを判定する(ST011)。最小の場合は、割当てかごの待ち時間評価値と各かごの待ち時間評価値から算出した比較基準値との差を「比較基準値−割当てかごの待ち時間評価値」によって計算する(ST012)。比較基準値の設定法としては、図3内右上に示す次のAからDの4つの設定方法を示す。
A)2番目に小さい待ち時間評価値。最小は割当て決定かごのため、割当て決定かごの次に良い評価値と言っても良い。
B)待ち時間評価値の全かごの平均値。
C)総合評価値が2番目に良いかごの待ち時間評価値。総合評価値最小は、割当て決定かごであり、次に良いかごの待ち時間評価値、つまり、次点のかごと言っても良い。
D)新規乗り場呼びに対する予測待ち時間が最小のかごの待ち時間評価値。
それぞれの比較基準に対する特徴は後述するが、最も妥当な比較基準は、A)2番目に小さい待ち時間評価値である。処理(ST012)で計算された割当てかごの待ち時間評価値と、各比較基準値との差が待ち時間評価の作用指標となる(ST013)。割当てかごの待ち時間評価値が最小の場合は、4つのどの比較基準を選んでも差はゼロ以上となるため、作用指標もゼロ以上となる。
判定条件(ST011)において、割当てかごの待ち時間評価値が最小ではない場合は、待ち時間評価の作用指標をゼロとする(ST014)。
図4は、本発明の一実施例によるかご位置関係評価に対する割当て作用指標計算の具体的な処理フロー図である。この処理は図3に示した待ち時間評価に対する割当て作用指標の処理と全く同じ流れであり、以下、簡単に説明する。
まず、かご位置関係評価に対して、各かごの評価値の順位を小さい順に計算する(ST020)。この順位より、割当てかごのかご位置関係評価値が全かご中で最小かどうかを判定する(ST021)。最小の場合は、割当てかごのかご位置評価値と各かごのかご位置関係評価値より算出した比較基準値との差を計算する(ST022)。ここで、比較基準には、図4内の右上にある4つの比較基準が考えられる。これは、図3で説明した比較基準と同じものとなっている。処理(ST022)で算出した差を、かご位置関係評価の作用指標とする(ST023)。判定条件(ST021)において、割当てかごのかご位置関係評価値が最小でない場合、かご位置関係の作用指標をゼロとする(ST024)。
以上、図3、図4により、待ち時間評価と、かご位置関係評価の両者に対する割当て作用指標の計算法について説明した。それぞれの作用指標は、割当て決定かごにおけるその評価項目の作用の強さを表しており、これらを、各評価項目間で比較することによって、最も作用の強い評価項目を判定することができる。
待ち時間評価、かご位置関係評価以外の評価項目、例えば、乗車時間、かご内混雑率、未発生乗り場呼びの潜在的な待ち時間などについても、図3、図4の計算法と同様にして作用指標を求めることができる。
図2〜図4によって説明した割当て要因の判定法の要点をまとめると、次のようになる。1)まず、主要な割当て評価項目のそれぞれに対して、割当て決定かごの評価値と、各かごの評価値によって求めた比較基準値とを比較して、割当てへの寄与を示す割当て作用指標を計算する。2)次に、各評価項目の作用指標を評価項目同士間で比較して、最も大きな値となる評価項目を割当て要因と判定する。
以上のように説明した割当て決定要因の判定処理方法について、図5〜図7により、具体的な処理の詳細を説明する。図5〜図7は、それぞれ新規乗り場呼びが登録された場合の割当て評価結果の3つの例を表している。それぞれの例に対して、割当て要因を判定するための過程を説明する。
図5は、本発明の一実施例による割当て要因コード導出例その1の説明図である。各かごに対して、各割当て評価項目の評価値および割当て評価指標(総合評価値)を表している。割当て評価指標は、次式のように仮定する。
割当て評価指標(総合評価関数)=待ち時間評価値+かご位置関係評価値……(4)
ここで、待ち時間評価値は、各かご毎に、新規乗り場呼びに対する予測待ち時間と、既にかごに割当てられている乗り場呼びに対する予測待ち時間の中の最大の値(最も長い予測待ち時間)に設定される。かご位置関係の評価値は、そのかごに新規乗り場呼びを割当てた場合の各かごの時間的等間隔性の度合いを数値化したものとして設定される。この評価値が小さいほど、時間的等間隔に近い、より適切な状態を意味する。
図5のテーブルにおいて、行方向は評価項目を表しており、上から待ち時間評価値AS01、かご位置関係評価値AS03、および割当て評価指標(総合評価関数)AS04を表している。また、待ち時間評価値の算出に関わる新規乗り場呼び待ち時間AS02を、待ち時間評価値AS01の行内の一部に示している。
また、図5のテーブルにおいて、列方向はかご名を表している。ここでは、3台の群管理としており、左の列から1号機AS05、2号機AS06、3号機AS07の状態を表している。
1号機の待ち時間評価値は19であり、その下の括弧内の値2は全号機中の順位を表しており、1号機の待ち時間評価値は小さい順に2番目であることを示している。
以下、図2に示した割当て決定要因判定プロセスに従って、図5の割当て評価に対する決定要因の判定について説明する。まず、待ち時間評価値に対して、各かごの順位(小さい順)を計算する。その結果が括弧内の値で示されている。待ち時間評価値について、小さい順に3号機、1号機、2号機となる。割当て決定かごは総合評価値の最も小さい3号機であり、待ち時間評価値最小のかごと一致する。以下、割当て作用指標を求めるための評価基準を次のA)からD)の4通りに定め、それぞれについての作用指標を求める。
A)2番目に小さい待ち時間評価値を比較基準とする場合:
2番目に小さい待ち時間評価値は1号機の19であるため、割当て決定号機(3号機)の待ち時間評価の作用指標は19−15=4となる。図5に、この例を記している。
B)全かごの平均値を比較基準とする場合:
平均値は(19+42+15)/3=25となる。このため、割当て決定号機(3号機)の待ち時間評価の作用指標は25−15=10となる。この平均値を比較基準にする方法は、各かごの値のばらつきが大きい場合は、外れた値に引っ張られるため、正しい指標が得られない場合がある。
C)割当て評価指標(総合評価値)が2番目に良いかごを比較基準とする場合:
割当て評価指標が2番目のかごは1号機であり、割当て決定号機(3号機)の待ち時間評価の作用指標は19−15=4となる。この方法は、割当て評価指標に基づいて次に割当てられる可能性のあるかごを比較基準とする方法である。割当て評価指標が2番目以降の各かごの値が接近している場合は、2番目のかごの割当て評価の内訳の特性に強く影響される可能性がある。これを避けるには、A)のようにそれぞれの評価値毎に2番目に小さい評価値を比較基準にするのが良い。
D)新規乗り場呼びの予測待ち時間が最小のかごの待ち時間評価値を比較基準とする場合:
新規乗り場呼びの予測待ち時間が最小のかごは3号機であり、割当て決定号機(3号機)の待ち時間評価の作用指標は15−15=0となる。この方法は、一番早くサービスできるかごに割当てられなかった場合の要因を探ることを狙いとしている。この例のように、待ち時間評価値最小と新規乗り場呼びの予測待ち時間が最小のかごが一致する場合、指標がゼロになって判定対象から外れるという短所がある。乗り場呼びに対してかごが通過する場合の要因解明にのみ興味がある場合は、この方法を用いると良い。
以上、A)からD)の4通りの判定基準を述べたが、最も安定しているのは、A)2番目に小さい待ち時間評価値を比較基準とする方法であり、以下、この方法に限定して説明する。
待ち時間評価の作用指標が求まったので、次に、かご位置関係の評価項目における評価値を求める。かご位置関係評価値が2番目に小さいかごは2号機であり、かご位置関係評価の作用指標は、(−3)−(−11)=8となる。
待ち時間評価の作用指標は4、かご位置関係の評価指標は8であるため、図2の処理に従い、割当て決定号機(3号機)に対する割当て決定要因は、かご位置関係評価によるものと判定できる。実際、図5の割当て評価値を見ると、割当て決定号機(3号機)のかご位置関係評価値は他のかごとの値の差が、待ち時間評価の場合と比べても大きく、かご位置関係評価が要因であると判定することは妥当である。
図6は、本発明の一実施例による割当て要因コード導出例その2の説明図である。以下、図6の例について、図2〜図4の割当て要因判定処理に従い、割当て要因を判定する。
まず、割当て決定かごは総合評価値が最小の2号機となる。次に、待ち時間評価に対する割当て作用指標は、比較基準が2番目に小さい待ち時間評価値となるため、34−21=13となる。同様に、かご位置関係評価に対する割当て作用指標は、(−2)−(−10)=8となる。両者を比較すると、待ち時間評価に対する割当て作用指標が大きい。従って、図2の判別処理(ST05)に従い、割当て決定かごの新規乗り場呼びに対する予測待ち時間が全かご中で最小であるかどうかを判別する。3号機の新規乗り場呼びに対する予測待ち時間は2番目であり、最小ではない。従って、新規ではない既に割当て済みの乗り場呼びに対する予測待ち時間が最も作用したと判定される。
実際に、図6の割当て評価値を確認すると、割当て決定かごの2号機について、まず、かご位置関係評価値は全かごの2番目のため、これが要因とは言えない。次に、待ち時間評価値は全かごに対して最小のため、これが割当て決定要因と見なせる。しかし、新規乗り場呼びに対する予測待ち時間は最小ではない。新規乗り場呼びの予測待ち時間最小となるのは、1号機であるが、待ち時間評価値>新規乗り場呼びの予測待ち時間であることから、既に割当てられている乗り場呼びの予測待ち時間が長いこと推定できる。従って、2号機に割当て決定されたのは、新規乗り場呼びに対して最も早く到着できる1号機は他に予測待ち時間の長い乗り場呼びを受持っているため、全体の呼びの待ち時間を考慮して、2号機に決まったと判定できる。従って、既に割当て済みの乗り場呼びの待ち時間が割当て決定に最も作用したとの判定が適正であることが分かる。
この例のように、新規乗り場呼びに対する待ち時間最小のかごが割当てられない場合は、乗り場の利用客に対してエレベータかごが通過する。これは、乗り場の利用客にはその様子は見えないが、運行線図からは、一見不合理な運行のように見える。運行線図は、後述する図9のように、横軸を時間、縦軸を階床にとり、各エレベータかごの時間的な動き、呼びの発生イベントなどを表した図である。このようなケースに対して、割当て要因が何であったのかを示す意義は大きい。例えば、図6の例では、「既に割当て済みの乗り場呼びの待ち時間」という要因結果から、通過した1号機には他の割当て済みの乗り場呼びを優先したためということが理解でき、実際のこの状況は運行線図からも確認できる。通過は不合理ではなく、適切な動作であったことが確認できる。
このように、割当て決定要因を判定することによって、運行線図などに示される各エレベータの割当て動作の要因を確認でき、それが適正なのかそうでないのかを判別できる。適正な場合はその動作について、実際の状況に即して正確に理由をビル管理者等に説明することができ、万一適正でない場合でもさらに詳細な原因分析により、動作の改善に結びつけることできる。
図6の例のように、既に割当て済みの乗り場呼びの待ち時間が割当て要因となる場合、割当てられたかご(この場合、2号機)には既に割当て済みの乗り場呼びはなく、他のかごの方にある(この場合、1号機)。従って、図2の要因判定処理の処理ST04、処理ST05のように、まず、待ち時間評価が主要因、すなわち、割当てかごの待ち時間評価値最小が必要条件であることを判定する。そして、割当てかごの新規乗り場呼びの予測待ち時間が最小かどうかを判定するような処理を行い、間接的に既に割当て済みの乗り場呼びの待ち時間が作用したことを判定する必要がある。
図7は、本発明の一実施例による割当て要因コード導出例その3の説明図である。以下、図7の例について、図2〜図4の割当て要因判定処理に従い、割当て要因を判定する。
まず、割当て決定かごは総合評価値が最小の1号機となる。次に、待ち時間評価に対する割当て作用指標は、1号機の待ち時間評価値が最小ではないため(2番目)、0となる。同様に、かご位置関係評価に対する割当て作用指標も、1号機のかご位置関係評価値が最小ではないため(2番目)、0となる。図2の判別処理ST03に対して、待ち時間、かご位置関係評価共に作用指標が0であるため、次に、割当てかごに対して、待ち時間評価値とかご位置関係評価値の和が全かご中で最小であるかどうかを確認する(図2の判別処理ST09)。1号機に対して、待ち時間評価値とかご位置関係評価値の和は最小であるため、待ち時間評価とかご位置関係評価の組合せによって割当てが決まったと判定できる(図2の処理ST10)。
実際、図7の割当て評価値を確認すると、割当て決定かごの1号機は、待ち時間評価値、かご位置関係評価値は共に2番目であるが、2つの評価値の和では最小となっている。
このように、必ずしも1つの割当て評価項が主要因と特定できる訳ではなく、複数の評価項の組合せによる複合的な原因で決定される場合もある。このような場合でも、図2〜図4に示した割当て要因判定処理方法は、組合せが原因であることを判定できる。
図8は、本発明の一実施例による図1の運行データ記録部13にて記録されるデータテーブルを表している。図8は、各列が1つずつ発生した乗り場呼びに対するデータ集合として表している。各乗り場呼び単位で列にデータをまとめた乗り場呼びデータテーブル800である。
行方向には、乗り場呼び継続時間TA01、乗り場呼び発生時刻TA02、乗り場呼び発生階床TA03、乗り場呼び発生方向TA04、乗り場呼び割当てかご名TA05、および乗り場呼び発生要因コードTA06である。例えば、図8の乗り場呼びデータテーブル800の1行目に12秒と書かれた列について見てみる。この乗り場呼びに対するデータとして、発生時刻が13:32:03、発生階が8階、呼びの方向は上方向、割当てられたかごが2号機、乗り場呼び割当て要因コードは「1」である。また、逐次最新の状況に更新される乗り場呼び継続時間のデータは、現時点で12秒である。
図8のように、割当て要因の判定結果は、割当て要因コードとして圧縮されるため、長期間の割当て要因分析を実行しても、データ数を抑えることができ、また、複雑なデータを扱う必要がないため、簡単に要因分析を実施できる。
図9は、本発明の一実施例により運行線図上に割当て要因判定結果(要因コード)を表示した画面表示例その1である。これは、図1の運行表示装置4の表示出力部42の表示画面上、またはそれを印刷装置5で印刷した紙上に表示される。表示画面または紙上の表示領域F011において、横軸を時間、縦軸を階床位置に取ったグラフF012上に群管理エレベータの運行軌跡の線F013、F014、F015が示されている。図9では、3台の群管理を例に採っており、3本の運行軌跡線F013、F014、F015が示されている。これにより、各時刻での各かごの位置、動きを確認できる。
乗り場呼びは登録された時刻に、図のように、三角の記号F016で表示される。三角の記号の向きは方向を表しており、記号F016は上向きの呼びであることを表している。下向きの場合は三角の向きが反転する。さらに、発生時点から割当てかごが到着するまでの時間、同じ記号を並べて表示することによって、乗り場呼びの継続時間を表すことができる。図の3つの三角記号の並びF017、つまり、記号の並びF017の長さを見ることによって、その乗り場呼びにサービスするまでにどれ位時間がかかったかを知ることができる。
登録された乗り場呼びの記号F016の近傍に、その呼びの割当て決定要因として判定された割当て要因コードF018を表示する。これにより、各乗り場呼びに対する割当て決定要因を容易に確認することができる。特に、各かごの位置、方向、乗り場呼びの割当て状況と対応させながら確認できるため、割当て要因コードで示された理由をさらに実際の状況に基づいて理解することができる。
例えば、要因コード(2)「既に割当て済みの乗り場呼びの待ち時間評価が主要因」のような場合、通過しているかご(新規呼びに最も早くサービスできるかご)は、割当て済みの他の呼びを割当てられていることが運行線図から容易に確認できる。
これまでは、運行線図を基にして群管理エレベータの運行状態が確認されていたが、各呼びに割当てられたかごの決定要因は運行線図だけでは分からなかった。また、割当て評価値の内訳を全て表示しようとすると、データ数がぼう大となり、分析に多大な労力をかけることになる。これに対して、図9のように、運行線図上に乗り場呼びの記号と共に割当て要因コードを表示することによって、各かごの動きに対する理由を容易に理解することができる。
割当て要因コードの数字が何を表すかを、図9下方のF019のように表示すれば、各コードが何を意味しているかをすぐに理解することができる。
図10は、本発明の一実施例により運行線図上に割当て要因判定結果(要因コード)を表示した画面表示例その2である。図10において図9と同じ符号は同じ要素を表しており、説明を省略する。図10が図9と異なる点は、全ての呼びに対して割当て要因コードを示すのではなく、ポインタF020で乗り場呼びを表す記号の近傍を指示することによって、新たな表示画面(ポップアップ画面)F021が立ち上げる。そして、その中に乗り場呼びに関する詳細データや、割当て要因コードF022が表示される。
この方法により、運行線図上から割当ての状況を確認したい乗り場呼びをポインタで指示することによって、その要因コードを知ることができる。非常に混雑したビルの場合、乗り場呼びが多数発生するため、どの要因コードがどの呼びに対応するのか判別つかなくなる可能性がある。そのような場合に、図10に示す方法は有効となる。
図11は、本発明の一実施例により運行線図上に割当て要因判定結果(要因コード)を表示した画面表示例その3である。図11において図9、図10と同じ符号は同じ要素を表しており、説明を省略する。図11が、図9、図10と異なる点は、図9のように運行線図上の乗り場呼びを表す記号の近傍に割当て要因コードを表示する。これと同時に、ポインタF020で乗り場呼びを表す記号の近傍を指示することによって、新たな表示画面(ポップアップ画面)F021が立ち上がり、その中に割当て評価値の内訳F030が表示される。
この方法により、各乗り場呼びの割当て要因コードの中から、特に、その詳細を知りたい呼びに対して、その部分を指示することによって、割当て評価値の詳細を知ることができ、動作の適正を確認することができる。
例えば、割当て要因コードが位置関係評価を表している場合に、その位置関係評価がどの位の差で待ち時間評価を強く作用したのかを定量的に分析することができる。要因コードのみでは定性的な結果しか分からないが、割当て評価値の詳細を知ることによって、僅かの差で位置関係評価値が強く作用したこと等を確認することできる。また、全体的な作用の効き状況を確認することによって、かご位置関係評価に対する重み係数が適正な値に設定されているかどうかを確認でき、結果によっては、その値を調整することにより、より適正な動作へと改善することできる。
既に述べたように、詳細の割当て評価値を全て出力することは、膨大なデータ数を出力することになるが、群管理システムの計算機シミュレータのように、全て計算機の中で閉じている場合は、蓄積装置の容量を相当に増やすことができる。また、分析時は、割当て要因コードの値を確認して、必要な箇所だけをポインタで選択的に見ることができる。
図12は、本発明の一実施例により模擬走行図上に割当て要因判定結果(要因コード)を示す他の画面表示例である。これは、図1の運行表示装置4の表示出力部42の表示画面上、またはそれを印刷装置5で印刷した紙上に表示される。表示画面または紙上の表示領域F030において、横軸をエレベータの各かご、縦軸を階床位置に取った図F031上にある時刻における各エレベータかごの位置、方向と乗り場呼び、かご呼びの状況が表示されている。これは、各エレベータの昇降路の垂直断面の状況を仮想的に表したものである。表示部F031において、各列は左から、上方向の新規に登録された乗り場呼びの表示領域F032、1号機〜3号機に対する表示領域F033〜F035、下方向の新規に登録された乗り場呼びの表示領域F036をそれぞれ表している。矢印のついた四角形の記号は、かごの位置と方向を表しており、例えば1号機は四角形の記号F037、2号機は四角形の記号F038、3号機は四角形の記号F039を表している。各かごに割当てられた呼びは、各かごの表示領域内に三角形の記号で表されている。例えば、1号機の場合、4階に登録された上方向の乗り場呼びF040が割当てられている。同じ1号機について、10階にある黒塗りの四角記号F041は1号機で登録されたかご呼びを表している。
各かごに割当てられた乗り場呼びに対して、その呼びがそのかごに割当てられた要因を表す要因コードをその呼びの近傍に表示している。例えば、1号機の場合、4階上方向の割当て呼びF040に対して、その割当て要因コードは「(1)」F044で表示されており、新規呼びの待ち時間評価が主要因で割当てられたことを示している。2号機に対しても同様に、各々の割当て呼びに対して、対応する割当て要因コードが示されている。その結果、各乗り場呼びについて、何が主に作用して割当てられたかを時々刻々のかご動きと合わせて容易に理解することができる。
その時刻において、まさにその時点で新規に登録された乗り場呼びは、新規に登録された乗り場呼びの表示領域F032、F036に表示される。例えば、図12の場合では、8階上方向の呼びF042がまさにその時点で発生した呼びであり、F032の領域に表示されている。また、その時点で新規に登録された呼びに関する情報は、表示画面の上部領域に表示されている。新規に登録された乗り場呼びの階と方向が領域F045に、割当てられたかごが領域F046に、そして割当て要因コードが領域F047に表示される。
このようにして、その時点で新規に登録された乗り場呼びに対して、その割当て要因コードを表示することによって、容易に割当て決定理由を理解することができる。特に、この方法では、割当て決定するその時点での各かごの位置と方向、割当てられた乗り場呼び、かご呼びの状況が分かるため、割当て要因コードを見ながら、割当て決定かごに選定された理由を詳しく理解することができる。
例えば、新規乗り場呼びが登録されて、それに最も早くサービスできるかごには割り当てられなかった場合、割当て要因コードは2、3、4、5のいずれかとなる可能性があるが、それぞれの場合に対して、割当て要因コードから何が理由かを知ることができる。さらに、その時の模擬走行図の状況から具体的な詳細、例えば、最も早くサービスできるかごはその遠方に既に割当てられた呼びがあり、その待ち時間に配慮したことを理解することができる。
図13は、本発明によるデータ表示装置を備えた群管理エレベータシステムの他の実施例構成図である。図13では、各要素は図1と同じであり、符号も同じ符号で示している。図1と図13の違いは、割当て要因判定部12が、運行表示装置4内にある点である。具体的には、各かごの割当て評価値の詳細を運行データ記録部13に記録させて、記録媒体2または通信回線3を介して、評価値データをそのまま運行表示装置4に伝送して、運行表示装置4内で割当て決定要因分析(図2〜図4の処理)を行う。
運行データ記録部13の容量を非常に大きくできるか、または、通信回線3の速度を高速にできれば、このような構成も可能となる。この場合、図11に示すように、まずは、割当て要因コードを表示して、必要に応じてさらに詳細な割当て評価値の内訳を表示するということが可能になる。このように、2段階で割当て評価を分析できれば、長時間の運行状況を効率良くかつ必要に応じて詳細に分析することができる。
図14は、本発明による群管理エレベータのデータ表示装置が使用される状況を示している。その状況は、計画時と稼動時の2つのフェーズに大きく分けることができる。
計画時は、エレベータを購入するお客様に対して、エレベータ製造・販売事業者が、群管理エレベータシステムの特徴、仕様、性能などを説明する場合が考えられる。この時、仮想的にビルが竣工した後の群管理の運行状況、特に、制御の性能を説明するような場面の発生が考えられる。このような場合に、本実施例で述べた群管理システムの計算機シミュレータを用いることにより、例えば、割当て要因を表示した運行線図や模擬走行図を示すことによって、制御がどのように働いているかを具体的に説明することができる。
稼動時は、エレベータの保守サービス事業者が、群管理の運行状態をチェックしたり、エレベータを購入したお客様に稼動の状況・効果を説明するような場合が考えられる。このような場合に、本実施例で述べた群管理システムを用いることにより、実測データに基づいた割当て要因を表示した運行線図によって、実際の割当て状況をチェックして、容易に運行の状況を理解することができる。また、各割当ての要因が分かるため、例えば、この呼びではかご位置関係評価が働いたため、時間的等間隔に近づいたというような具体的な制御の効果についても説明することができる。
1…エレベータ群管理装置、11…乗り場呼び割当て評価部、12…割当て要因判定部、13…運行データ記録部、2…記録媒体、3…通信回線、4…運行表示装置、41…表示条件設定部、42表示出力部、5…印刷装置、61〜6n…エレベータ制御装置、71〜7n…エレベータ装置、81〜8n…予約案内灯、91〜93…乗り場呼び登録装置、800…乗り場呼びデータテーブル、F011,F030…画面表示例、F018…要因コード表示例。