本発明の実施形態に係るエレベータの群管理システムについて図面を参照して説明する。
(発明に至った経緯)
実施形態について説明する前に本発明に至った経緯について説明する。
複数台のエレベータを有するエレベータシステムにおいては、輸送効率の向上が求められている。
この課題に対処するため、行先階登録装置を有する群管理システムにおいては、各エレベータの停止階の数が制限値を超えないように、複数台のエレベータのうちのいずれかを新規の行先階呼びに割り当てる場合がある。図13(a)はこの例を示している。本例において制限値は3に設定されている。そのため、各エレベータの停止階の数は3以内となり、エレベータの1周時間(ロビー階(1階等)を出発してからロビー階に戻ってくるまでの時間)を一定程度の時間に短くできる。
しかし、上記構成においては、利用者が増加すると、積み残しが生じる。これに対処するため、利用者が増加した場合、制限値を緩和して、積み残しを抑制することがある。例えば1つの階に対し大量の行先階呼びが発生した場合、制限値を緩和して、図13(b)に示すように、当該行先階呼びに係る利用者を各エレベータに分散させる。しかし、この場合、各エレベータの停止階の数が増加し、つまり1周期間における停止回数が増加し、輸送効率が低下する。
他の対処方法として、乗客数を予測することが考えられる。しかし、乗客数の予測のためには複雑なアルゴリズムや人工知能等が必要となり、構成が複雑化する。
本発明は、上述のような問題に鑑み、エレベータシステム全体としての輸送能力を向上可能なエレベータの群管理システムを提供することを課題とし、この課題を解決するため以下の構成を採用する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。
エレベータの群管理システムは、制御装置10、及び行先階登録装置20を有する。エレベータの群管理システムは、複数台のエレベータ30の走行を統合的に制御する。また、エレベータの群管理システムは、行先階登録装置20で登録された行先階呼びに対して、複数台のエレベータ30(以下、実施形態において適宜「号機」という)のうちのいずれかを割当てる制御を行う。本実施形態では、行先階登録装置20は、ビルのロビー階(1階)に配備されているものとする。なお、行先階登録装置20は各階の乗場あるいは乗場近傍に複数台配備されていてもよい。
エレベータ30は、一例として6台設けられている。各エレベータ30(各号機)は、かご、巻上機(モータ)、釣合おもり、制御部等を有する。各エレベータ30の制御部は、制御装置10からの制御信号に基づいて、巻上機(モータ)等の動作を制御し、これにより、かごの上昇、下降、停止、走行速度等を制御する。
制御装置10は、制御部11、記憶部12、及び入出力インタフェース13を備える。記憶部12は、プログラム、及び種々のデータを格納している。プログラムは、本実施形態の各種機能を実現するためのプログラムを含む。制御部11は、演算処理を行う。制御装置10は、制御部11が上記プログラムに基づいて種々のデータ等に対して演算処理を行うことにより、後述する各種の機能を実現する。制御部11は、例えばCPU、MPU、またはFPGAで構成される。制御装置10の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
入出力インタフェース13は、行先階登録装置20及び複数のエレベータ30との間で信号を送受信するためのインタフェースである。入出力インタフェース13は、制御部11から出力される信号を所定の形式の信号に変換して出力する。また、入出力インタフェース13は、行先階登録装置20及び複数台のエレベータ30から入力された信号を所定の形式の信号に変換して制御部11に出力する。
図2は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムの行先階登録装置20の構成を示すブロック図である。
行先階登録装置20は、制御部21、記憶部22、入出力インタフェース23、表示部24、及び操作部25を有する。記憶部22は、プログラム、及び種々のデータを格納している。プログラムは、本実施形態の各種機能を実現するためのプログラムを含む。制御部21は、演算処理を行う。行先階登録装置20は、制御部21が上記プログラムに基づいて種々のデータ等に対して演算処理を行うことにより、各種の機能を実現する。制御部21は、例えばCPU、MPU、またはFPGAで構成される。行先階登録装置20の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
入出力インタフェース23は、制御装置10との間で信号を送受信するためのインタフェースである。入出力インタフェース23は、制御部21から出力される信号を所定の形式の信号に変換して出力する。また、入出力インタフェース23は、制御装置10から入力された信号を所定の形式の信号に変換して制御部21に出力する。
表示部24は、制御部21から出力される表示信号に基づく表示を行う。
操作部25は、利用者が行先階を入力するためのインタフェースである。本実施形態では、操作部25として、例えば、図1等に示すように、テンキーを採用している。操作部25は、操作部25の操作内容に対応する信号を制御部21に出力する。
2.動作
2−1.概要
2−1−1.制御装置の動作の概要
図3は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムの制御装置10の機能を示す機能ブロック図である。
制御装置10は、行先階呼び割当部10A、割当候補号機決定部10Bの各機能を実現する。
行先階呼び割当部10Aは、入出力インタフェース13を介して行先階登録装置20から、行先階呼びに対する号機の割当要求信号を受信すると、受信した行先階呼び割当要求信号を割当候補号機決定部10Bに出力する。割当候補号機決定部10Bは、受信した割当要求信号に基づいて、割当候補号機を決定する。行先階呼び割当部10Aは、割当候補号機の中から割当号機を決定し、決定した割当号機を示す割当号機信号を、行先階登録装置20、及びエレベータ30の制御装置に出力する。
2−1−2.行先階登録装置の動作の概要
図2に戻り、制御部21は、利用者による操作部25に対する操作により、操作部25から操作信号を受信すると、行先階の登録操作を受け付ける。制御部21は、利用者により登録された行先階を示す情報と、当該行先階を登録する操作が行われた行先階登録装置20を識別する情報とを示す行先階呼び割当要求信号を生成する。制御部21は、生成した行先階呼び割当要求信号を、入出力インタフェース23を介して、制御装置10に出力する。
また、制御部21は、上述の行先階呼び割当要求信号の応答として制御装置10(行先階呼び割当部10A)から出力された割当号機を示す割当号機信号を受信すると、利用者によって登録された行先階と、割当号機信号が示す割当号機とを示す表示信号を表示部24に出力する。
表示部24は、制御部21から受信した表示信号にしたがって、利用者によって登録された行先階と、当該行先階の割当号機とを示す表示を行う。
2−2.割当号機の決定動作
エレベータの群管理システムにおいて実行される割当号機の決定動作について説明する。図4は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムにおける割当号機の決定動作の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、出発階(1階)で行先階登録装置20の操作部25に対して利用者により行先階(d階)の指定操作が行われた場合について説明する。
1階で利用者により行先階登録装置20の操作部25に対して行先階(d階)の指定操作が行われると、操作部25は指定操作に対応する行先階呼びの信号を行先階登録装置20の制御部21に出力する。以下、呼び発生階である1階から行先階であるd階への新規の行先階呼びを行先階呼び(1,d)と表現する。制御部21は、指定操作に対応する新規の行先階呼び(1,d)の信号に所定の処理を施した後、当該処理後の信号を入出力インタフェース23を介して制御装置10に出力する(S11)。
行先階登録装置20からの新規の行先階呼び(1,d)の信号を受信すると、制御装置10は、当該新規の行先階呼び(1,d)の信号に基づいて、複数台のエレベータ30のうちの割当可能なエレベータ30(以下、適宜「割当候補号機」という)を判断する。具体的に、制御装置10は、かご番号iとして1を設定する(S12)。なお、かごと号機は1対1で対応するのでかご番号iは号機の番号でもある。なお、本実施形態では、6台のエレベータ30が設けられているので、iは1〜6である。1号機〜6号機は、上述のA号機〜F号機に対応する。
制御装置10は、i号機の重み付け呼び個数合計値S(i)を0に初期化する(S13)。
制御装置10は、新規の行先階呼び(1,d)を仮にi号機に割り当てる(S14)。
制御装置10は、呼び発生階(出発階)である1階から行先階であるd階への新規の行先階呼び(1,d)の重み付け呼び個数値P(1,d)を求める(S15)。重み付け呼び個数値P(1,n)は、1人の利用者の1回の操作により発生した1回の行先階呼びを本実施形態においてカウントする際のパラメータ(個別評価値)である。重み付け呼び個数値P(1,n)は、当該行先階呼びに係る出発階(呼び発生階)の1階から行先階nへの交通量(例えば、所定時間中の累積乗車人数(乗客数))に基づいて求められる。具体的に、重み付け呼び個数値P(1,n)は、下記数式1において、nとして当該新規の行先階呼び(1,d)の行先階dを代入することにより求めることができる。本実施形態では、出発階(呼び発生階)の1階から行先階nへの交通量は、出発階−行先階間交通量表(Origin Destination Table)(以下「OD表」という。)における、呼び発生階である1階から行先階であるd階への乗客数に基づいて求められる。重み付け呼び個数値P(1,d)は、重み付け呼び個数値テーブルとして予め設定しておいてもよいし、呼びが発生したときに、逐次計算により求めてもよい。
なお、行先階登録方式を採用したエレベータの群管理システムでは、全ての乗客が行先階を登録するため、過去の全乗客の出発階、行先階、登録時刻等の履歴を把握可能である。したがって、当該履歴に基づいて、過去所定期間における所定時間帯のOD表を自動的に生成することが可能である。また、OD表を、時間帯毎に生成し、時間帯毎に切り替えて、重み付け呼び個数値P(1,d)を求めてもよい。また、ある時間帯においてイベント等により一時的に交通量が急増することがわかっているときは、OD表に示された交通量に対してイベントの混雑度合い等に応じた係数を乗じて算出した仮想交通量に基づいて、重み付け呼び個数値P(1,d)を求めてもよい。
図5は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムにおけるOD表の一例を示す図である。
OD表は、m行n列のマトリクスの形式を有する。OD表は、所定時間範囲におけるm階からn階へ向かう乗客の数を示す。所定時間範囲は本例では5分であるが、これに限定されない。図5の例では、1階から、2階〜10階の各階に向かう乗客の数が記録されている。具体的に、図5のOD表には、1階から2階に3人、1階から3階に2人、1階から4階に2人、1階から5階に9人、1階から6階に1人、1階から7階に1人、1階から8階に1人、1階から9階に1人、1階から10階に1人の乗客が存在したことが示されている。
1階からn階への行先階呼びに係る重み付け呼び個数値P(1,n)は、数式1により求められる。
ここで、nは行先階呼びの行先階、Nはビルの階床数である。OD(1,n)は、OD表における、1階からn階へ向かう乗客の数である。OD(1,y)は、OD表における、1階からy階へ向かう乗客の数である。図5の例では、Nは10である。
図6は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムにおける重み付け呼び個数値の算出の一例を示す図である。
1階から2階への行先階呼び(1,2)の重み付け呼び個数値P(1,2)は、OD(1,n)においてnを2とし、OD(1,y)においてyを2〜10とし、Nを10として求める。この場合、重み付け呼び個数値P(1,2)は、1.2857となる。
また、1階から3階への行先階呼び(1,3)の重み付け呼び個数値P(1,3)は、OD(1,n)においてnを3とし、OD(1,y)においてyを2〜10とし、Nを10として求める。この場合、重み付け呼び個数値P(1,3)は、0.85714となる。
1階から2階及び3階以外の他の行先階への行先階呼びに関しては、行先階が上述の2階や3階の場合同様に求めればよい。
図4に戻り、制御装置10は、重み付け呼び個数合計値S(i)として、1階からd階への新規の行先階呼び(1,d)の重み付け呼び個数値P(1,d)を設定する(S16)。
制御装置10は、i号機に割当済の行先階呼びの中から処理対象の1つの行先階呼びを選択し、重み付け呼び個数値P(1,n)を求める際のOD(1,y)の行先階yとして、当該選択した行先階呼びに係る行先階kを設定する(S17)。本実施形態において、処理対象の割当済の行先階呼びは、(i)新規の行先階呼び(1,d)と同一進行方向で、かつ(ii)当該割当済の行先階呼びが示す行先階kと出発階(1階)との間の区間と、前記新規の行先階呼び(1,d)が示す行先階dと出発階(1階)との間の区間とが、同一でなく、かつ少なくとも一部において重なるとの条件を満たす行先階呼びである。つまり、処理対象の割当済の行先階呼びは、(1)新規の行先階呼びに係る区間、及び(2)新規の行先階呼び(1,d)に係る区間と同一でなくかつ新規の行先階呼び(1,d)を割り当てると乗車人数に変動が生じることとなる区間を有する行先階呼びである。そのため、i号機に割当済の行先階呼びの全てについて、本条件を満たすか否かの判断を行い、前記条件を満たすと判断した行先階呼びを処理対象とする。具体的には、出発階が1階の上方向の行先階呼びを対象としているので、割当済の行先階呼びが示す行先階kと出発階(1階)との間の区間と、前記新規の行先階呼び(1,d)が示す行先階dと出発階(1階)との間の区間とは、全て重なる。したがって、両行先階呼びに係る区間が同一であるとき以外は、加算の対象となる。
制御装置10は、選択した1階からk階への割当済の行先階呼びについて、重み付け呼び個数値P(1,k)を求める(S18)。
制御装置10は、ステップS16で求めた重み付け呼び個数合計値S(i)に、ステップS18で求めた重み付け呼び個数値P(1,k)を加算する(S19)。
制御装置10は、i号機に割当済の行先階呼びのうちの処理対象の行先階呼びの全てについて、ステップS18、S19の処理が完了したか否かを判断する(S20)。
完了していない場合(S20でNO)、制御装置10は、処理対象の行先階呼びのうちの他の行先階呼びを選択し、重み付け呼び個数値P(1,n)を求める際の行先階nとして、当該選択した行先階呼びに係る行先階kを設定する(S21)。
これに対し、完了した場合(S20でYES)、制御装置10は、ステップS19で最終的に求められた重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さいか否かを判断する(S22)。
重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さい場合(S22でYES)、制御装置10は、乗車人数が定員を超えているか否かを判断する(S23)。
乗車人数が定員を超えていない場合(S23でNO)、制御装置10は、i号機を割当候補号機として登録する(S24)。
これに対し、ステップS22において重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さくないと判断した場合(S22でNO)、またはステップS23において乗車人数が定員を超えていると判断した場合(S23でYES)、制御装置10は、i号機を割当候補号機とはしない。
制御装置10は、全ての号機についてのステップS13〜S24の処理が完了したが否かを判断する(S25)。
全ての号機についてのステップS13〜S24の処理が完了していない場合(S25でNO)、制御装置10は、iに1を加算し(S26)、次の号機について、ステップS13以後の処理を行う。
全ての号機についての処理が完了した場合(S25でYES)、制御装置10は、ステップS24で設定された割当候補号機の中から、割当号機を選択する(S27)。制御装置10は、選択した割当号機を示す信号を行先階登録装置20に出力する、選択した割当号機を示す信号を受信すると、行先階登録装置20は、割当号機を示す情報を表示部24に表示する。なお、割当候補号機の中からの1台の割当号機の選択は、例えば、全乗客の待ち時間最小化等の方法にしたがって行われる。この方法は、公知の技術が利用可能である。
なお、ステップS24において割当候補号機として設定された号機が存在しない場合、例えば、全ての号機を割当候補号機として設定し、その割当候補号機の中から割当号機を選択してもよいし、しばらくしてから登録操作を再度行うように利用者に報知してもよい。
図7は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムにおける行先階呼びの割当と、従来の行先階呼びの割当とを比較した図である。図7(a)は、割当条件及び行先階呼びの発生状態の一例を示す。図7(b)は、図7(a)に示す行先階呼びの発生状態における、従来のエレベータの群管理システムの行先階呼びの割当動作の一例を示す図である。図7(c)は、図7(a)に示す行先階呼びの発生状態における、実施形態1に係るエレベータの群管理システムの行先階呼びの割当の一例を示す図である。なお、図7では、1号機〜3号機の3台のエレベータ30が設けられている例を示す。従来の図7(b)における呼び個数は、号機に割り当てられた行先階の数と等しい。図7(c)における重み付け呼び個数値P(1,d)は前述の通りである。また、図7(a)に示すように、号機の定員は14人で、制限値Lは4とする。なお、行先階呼びは全て1階で発生したものとする。また、(1)〜(9)の順番で1階から各階への行先階呼びが発生したものとする。また、初期状態においては、いずれの号機にも行先階呼びが割り当られていないものとする。また、本例においては、1号機、2号機、3号機の順で行先階呼びを仮割当し、号機の呼び個数合計値が制限値よりも小さいか否かの第1の判定、及び号機の乗客数が定員以内か否かの第2の判定を行い、第1、第2の両判定において条件を満たした場合、その時点で当該号機を当該行先階呼びに対して割り当てるものとする。
まず、図7(b)を参照して従来の割当について説明する。
最初に、6人の利用者の5階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数値は1個となるが、呼び制限値の4以下である。また、1号機の乗客数は6人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを、1号機に割り当てる。
次に、3人の利用者の3階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数値は2個となるが、呼び制限値の4以下である。また、1号機の乗客数は9人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てる。
次に、5人の利用者の2階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数値は3個となるが、呼び制限値の4以下である。また、1号機の乗客数は14人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てる。なお、1号機は、乗客数が定員の14人と等しくなったので、これ以上行先階呼びを割り当てることはできない。
次に、8人の利用者の5階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。しかし、1号機の乗客数は定員の14人と等しくなっているので、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。2号機の呼び個数値は1個となるが、呼び制限値の4以下である。また、2号機の乗客数は8人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。したがって、この時点で、5階への行先階呼びが1号機と2号機に分散して割り当てられることとなる。
次に、3人の利用者の4階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。しかし、1号機の乗客数は定員の14人と等しくなっているので、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。2号機の呼び個数値は2個となるが、呼び制限値の4以下である。また、2号機の乗客数は11人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、2人の利用者の6階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。しかし、1号機の乗客数は定員の14人と等しくなっているので、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。2号機の呼び個数値は3個となるが、呼び制限値の4以下である。また、2号機の乗客数は13人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、1人の利用者の9階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。しかし、1号機の乗客数は定員の14人と等しくなっているので、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。2号機の呼び個数値は4個となるが、呼び制限値の4以下である。また、2号機の乗客数は14人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。なお、2号機は、呼び個数値が4個となり、また乗客数が定員の14人と等しくなったので、これ以上行先階呼びを割り当てることはできない。
次に、1人の利用者の7階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。しかし、1号機は、既に乗客数が定員の14人と等しくなっているので、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。しかし、2号機は、既に呼び個数値が4個となっており、また乗客数が定員の14人と等しくなっているので、これ以上行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、3号機に仮割当する。3号機の呼び個数値は1個となるが、呼び制限値の4以下である。また、3号機の乗客数は1人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを3号機に割り当てる。
次に、2人の利用者の8階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。しかし、1号機は、前述のように、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。しかし、2号機は、前述のように、これ以上、行先階呼びを割り当てることはできない。そのため、3号機に仮割当する。3号機の呼び個数値は2個となるが、呼び制限値の4以下である。また、3号機の乗客数は3人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを3号機に割り当てる。
以上の従来の割当によると、1号機は、最終的に、5階、3階、2階への行先階呼びが割り当てられ、1上昇期間中に3回停止することとなる。また、2号機は、5階、4階、6階、9階への行先階呼びが割り当てられ、1上昇期間中に4回停止することとなる。また、3号機は、7階、8階への行先階呼びが割り当てられ、1上昇期間中に2回停止することとなる。したがって、全ての行先階呼びを処理するために、従来のエレベータの群管理システムでは、エレベータ群全体として、合計9回エレベータを停止させることとなる。
次に、図7(c)を参照して本実施形態の割当について説明する。
最初に、6人の利用者の5階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571となるが、呼び制限値の4よりも小さい。また、1号機の乗客数は6人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てる。
次に、3人の利用者の3階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714との合計値の4.71424となり、呼び制限値の4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714となるが、呼び制限値の4よりも小さい。また、2号機の乗客数は3人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、5人の利用者の2階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857との合計値の5.1428となり、呼び制限値の4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857との合計値の2.14284となるが、呼び制限値の4よりも小さい。また、2号機の乗客数は8人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、8人の利用者の5階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。本行先階呼びに係る行先階は、1号機に割当済の行先階と同じ5階であるので、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571のままであり、呼び制限値の4よりも小さい。また、1号機の乗客数は14人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てる。
次に、3人の利用者の4階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,4)の0.85714との合計値の4.71424となり、呼び制限値の4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857と、重み付け呼び個数値P(1,4)の0.85714との合計値の2.99998となるが、呼び制限値の4よりも小さい。また、2号機の乗客数は11人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、2人の利用者の6階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,6)の0.42857との合計値の4.28567となり、呼び制限値の4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857と、重み付け呼び個数値P(1,4)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,6)の0.42857との合計値の3.42855となるが、呼び制限値の4よりも小さい。また、2号機の乗客数は13人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、1人の利用者の9階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,9)の0.42857との合計値の4.28567となり、呼び制限値の4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857と、重み付け呼び個数値P(1,4)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,6)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,9)の0.42857との合計値の3.85712となるが、呼び制限値の4よりも小さい。また、2号機の乗客数は14人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てる。
次に、1人の利用者の7階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,7)の0.42857との合計値の4.28567となり、制限値Lの4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857と、重み付け呼び個数値P(1,4)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,6)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,9)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,7)の0.42857との合計値の4.28569となり、制限値Lの4以上となる。そのため、この行先階呼びを2号機に割り当てることはできない。そのため、3号機に仮割当する。このとき、3号機の呼び個数合計値S(3)は、重み付け呼び個数値P(1,7)の0.42857となるが、制限値Lの4よりも小さい。また、3号機の乗客数は1人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを3号機に割り当てる。
次に、2人の利用者の8階への行先階呼びが発生したものとする。この行先階呼びを1号機に仮割当する。このとき、1号機の呼び個数合計値S(1)は、重み付け呼び個数値P(1,5)の3.8571と、重み付け呼び個数値P(1,8)の0.42857との合計値の4.28567となり、制限値Lの4よりも大きくなる。そのため、この行先階呼びを1号機に割り当てることはできない。そのため、2号機に仮割当する。このとき、2号機の呼び個数合計値S(2)は、重み付け呼び個数値P(1,3)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,2)の1.2857と、重み付け呼び個数値P(1,4)の0.85714と、重み付け呼び個数値P(1,6)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,9)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,7)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,8)の0.42857との合計値の4.71426となり、制限値Lの4以上となる。そのため、この行先階呼びを、2号機に割り当てることはできない。そのため、3号機に仮割当する。このとき、3号機の呼び個数合計値S(3)は、重み付け呼び個数値P(1,7)の0.42857と、重み付け呼び個数値P(1,8)の0.42857との合計値の0.85714となるが、制限値Lの4よりも小さい。また、3号機の乗客数は3人となるが、定員の14人以下である。そのため、この行先階呼びを3号機に割り当てる。
以上の本実施形態の割当によると、1号機は、5階への行先階呼びが割り当てられ、1上昇期間中に1回停止することとなる。また、2号機は、2階、3階、4階、6階、9階への行先階呼びが割り当てられ、1上昇期間中に5回停止することとなる。また、3号機は、7階、8階への行先階呼びが割り当てられ、1上昇期間中に2回停止することとなる。したがって、全ての行先階呼びを処理するために、本実施形態のエレベータの群管理システムでは、エレベータ群全体として、合計8回エレベータを停止させることとなる。
ここで、図7(c)の本実施形態の例を、図7(b)の従来の例と比較すると、エレベータ群全体としての停止回数を、従来の9回から、8回に減少させることができる。したがって、エレベータ群全体としての輸送効率を向上させることができる。
3.まとめ
本実施形態のエレベータの群管理システムは、
利用者が所望の行先階を示す行先階呼びを登録するための行先階登録装置20と、行先階登録装置20で登録された行先階呼びに基づいて複数台のエレベータ30のうちのいずれかを行先階呼びに割り当てる制御装置10と、を備えたエレベータの群管理システムである。
制御装置10は、
行先階登録装置20で新規の行先階呼び(1,d)が登録されたときに、
複数台のエレベータ30のそれぞれにおいて、
(1)新規の行先階呼び(1,d)に係る区間、及び(2)新規の行先階呼び(1,d)に係る区間と同一でなくかつ新規の行先階呼び(1,d)を割り当てると乗車人数に変動が生じることとなる割当済の行先階呼びに係る区間について、各区間の過去の所定期間の交通量に基づく重み付け呼び個数値P(1,n)(個別評価値)を求め、
求めた全ての重み付け呼び個数値P(1,n)(個別評価値)を加算して重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)を求め、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)に基づいて、当該エレベータ30を新規の行先階呼び(1,d)に対する割当候補エレベータとして設定するか否かを判断し、
割当候補エレベータの中から所定の割当ルールにしたがって新規の行先階呼び(1,d)に割り当てるエレベータを決定する、
本実施形態の上記構成によると、重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)に基づいて、いずれのエレベータ30を、新規の行先階呼び(1,d)に対する割当候補エレベータとして設定可能か否かが判断される。その場合において、重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)は、(1)新規の行先階呼び(1,d)に係る区間、及び(2)新規の行先階呼び(1,d)に係る区間と同一でなくかつ新規の行先階呼び(1,d)を割り当てると乗車人数に変動が生じることとなる割当済の行先階呼びに係る区間について、求められる。また、S(i)(加算評価値)は、各区間の過去の所定期間の交通量に基づく重み付け呼び個数値P(1,n)(個別評価値)を加算して求められる。つまり、重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)は、各区間の過去の所定期間の交通量に基づいて求められる。したがって、新規の行先階呼び(1,d)に対する割当候補エレベータとして設定可能か否かの判断は、各区間の過去の所定期間の交通量に基づいて行なわれる。そのため、例えば特定区間(特定階)において行先階呼びが大量に発生する等、階毎の行先階呼びの発生数に大きなばらつきがある場合においても、新規の行先階呼び(1,d)に対するエレベータの割当を、各行先階呼びに係る区間の過去の所定期間の交通量に基づいて、適切かつ柔軟に行うことができる。したがって、エレベータシステム全体としての輸送能力を向上させることができる。
本実施形態のエレベータの群管理システムにおいて、
複数台のエレベータ30のそれぞれについて、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいか否かを判定し、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいときは、当該エレベータ30を新規の行先階呼び(1,d)に対する割当候補エレベータとして設定する。
これにより、重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さいエレベータ30が、新規の行先階呼び(1,d)に対する割当候補エレベータとして設定される。本実施形態によると、交通量が多い区間の行先階呼びは、交通量が少ない区間の行先階呼びよりも、重み付け呼び個数値P(1,n)が大きくなる。そのため、交通量が多い区間の行先階呼びが割り当てられたエレベータ30は、重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lに達しやすくなる。換言すれば、交通量が多い区間の行先階呼びが割り当てられたエレベータ30には、他の行先階呼びが割り当てられにくくなる。一方、割当済の行先階呼びが示す区間と新規の行先階呼び(1,d)が示す区間とが同一であるときは、当該同一の割当済の行先階呼びに係る重み付け呼び個数値P(1,k)は、重み付け呼び個数合計値S(i)を求めるに際して加算されない。すなわち、重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値L(所定の制限値)を超過させる原因とはならない。したがって、乗客数が定員を超していなければ、後で新規に発生した同一区間の行先階呼びは、同一のエレベータ30に割り当てられることとなる。そのため、交通量が多い区間の行先階呼びが複数のエレベータ30に分散されるのが抑制され、エレベータシステム全体としての輸送能力が向上する。
本実施形態のエレベータの群管理システムにおいて、
制御装置10は、
新規の行先階呼び(1,d)に係る乗車人数と、変動が生じることとなる割当済の行先階呼びに係る区間の乗車人数とを加算し、
加算により得られた乗車人数が所定人数以下で、かつ重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいエレベータ30を割当候補エレベータとして設定する。
これにより、重み付け呼び個数合計値S(i)だけでなく、乗車人数も考慮して、割当候補号機として設定するか否かが判断される。そのため、割り当てられた号機に利用者が乗車できないようなことが防止される。
本実施形態のエレベータの群管理システムにおいて、
乗車人数に変動が生じることとなる割当済の行先階呼びに係る区間は、
新規の行先階呼び(1,d)の方向と同一方向であり、
かつ、当該割当済の行先階呼びが示す区間と、新規の行先階呼び(1,d)が示す区間とが、同一でなく、かつ少なくとも一部において重なる区間である。
(実施形態2)
実施形態1では、ビルの1階で新規に発生した行先階呼びに対して本発明を適用した場合について説明した。しかし、本発明は、ビルの各階で新規に発生した行先階呼びに対して適用することができる。以下、詳しく説明する。なお、本実施形態では、行先階登録装置20は、ビルの各階に配備されているものとする。その他の構成は同様である。
実施形態2のエレベータの群管理システムにおいて実行される割当号機の決定動作について詳しく説明する。図8は、実施形態2に係るエレベータの群管理システムにおける割当候補号機の決定動作の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、出発階(f階)で行先階登録装置20の操作部25に対して利用者により行先階(d階)の指定操作が行われた場合について説明する。なお、割当候補号機の決定動作は、行先階呼びが上方向(UP方向)か下方向(DOWN方向)かに応じて異なるフローチャートにより行われる。図8に示すフローチャートは、行先階呼びが上方向(UP方向)の場合のものである。行先階呼びが下方向(DOWN方向)の場合は、図8に示すフローチャートにおける上方向(UP方向)を下方向(DOWN方向)と読み替えればよい。
出発階(f階)で行先階登録装置20の操作部25に対して利用者により行先階(d階)の指定操作が行われると、操作部25は指定操作に対応する行先階呼びの信号を行先階登録装置20の制御部21に出力する。以下、呼び発生階であるf階から行先階であるd階への新規の行先階呼びを行先階呼び(f、d)と表現する。制御部21は、指定操作に対応する行先階呼びの信号に所定の処理を施した後、当該処理後の信号を入出力インタフェース23を介して制御装置10に出力する(S31)。
行先階登録装置20からの行先階呼びの信号を受信すると、制御装置10は、当該行先階呼び(f、d)の信号に基づいて、複数台のエレベータ30のうちの割当可能な号機割当候補号機)を判断する。具体的に、制御装置10は、かご番号iとして1を設定する(S32)。
制御装置10は、i号機の重み付け呼び個数合計値S(i)を0に初期化する(S33)。
制御装置10は、新規の行先階呼び(f、d)を仮にi号機に割り当てる(S34)。
制御装置10は、呼び発生階(出発階)であるf階から行先階であるd階への新規の行先階呼び(f、d)の重み付け呼び個数値P(f,d)を、下記数式2において、m、nとして当該新規の行先階呼び(f,d)の出発階f、行先階dを代入することにより求める(S35)。本実施形態では、重み付け呼び個数値P(f,d)は、OD表を参照して、呼び発生階であるf階から行先階であるd階への実呼び個数値に基づいて求められる。重み付け呼び個数値P(f,d)は、呼び個数値テーブルとして予め設定しておいてもよいし、呼びが発生したときに、逐次計算により求めてもよい。
図9は、実施形態2に係るエレベータの群管理システムにおけるOD表の一例を示す図である。本実施形態では、新規の行先階呼び(f,d)が上方向(UP方向)の呼びである場合、OD表における上方向(UP方向)の行先階呼びに係る乗客の数に基づいて。号機の割当を判断する。これに対し、新規の行先階呼び(f,d)が下方向(DOWN方向)の呼びである場合、OD表における下方向(DOWN方向)の行先階呼びに係る乗客の数に基づいて。号機の割当を判断する。
m階からn階への上方向(UP方向)の行先階呼びに係る重み付け呼び個数値P(m,n)は、数式2により求めることができる。
ここで、mは行先階呼びの出発階、nは行先階呼びの行先階、Nはビルの階床数である。OD(m,n)は、OD表における、m階からn階へ向かう乗客の数である。OD(x,y)は、OD表における、x階からy階へ向かう乗客の数である。上方向の行先階呼びを対象としているので、nはmより大きく、yはxよりも大きい。
なお、m階からn階への下方向(DOWN方向)の行先階呼びに係る重み付け呼び個数値P(m,n)は、数式3により求めることができる。
図8に戻り、制御装置10は、重み付け呼び個数合計値S(i)として、f階からd階への新規の行先階呼び(f、d)の重み付け呼び個数値P(f,d)を設定する(S36)。
制御装置10は、i号機に割当済の上方向(UP方向)の行先階呼びの中から処理対象の1つの行先階呼びを選択し、重み付け呼び個数値P(m,n)を求める際の出発階m、行先階nとして、当該選択した行先階呼びに係る出発階j及び行先階kを設定する(S37)。本実施形態において、処理対象の割当済の行先階呼びは、新規の行先階呼び(f,d)と同一進行方向で、かつ当該割当済の行先階呼びが示す行先階kと出発階jとの間の区間と、前記新規の行先階呼び(f,d)が示す行先階dと出発階fとの間の区間とが、同一でなく、かつ少なくとも一部において重なるとの条件を満たす行先階呼びである。つまり、処理対象の割当済の行先階呼びは、(1)新規の行先階呼びに係る区間、及び(2)新規の行先階呼び(f,d)に係る区間と同一でなくかつ新規の行先階呼び(f,d)を割り当てると乗車人数に変動が生じることとなる区間を有する行先階呼びである。そのため、i号機に割当済の行先階呼びの全てについて、本条件を満たすか否かの判断を行い、前記条件を満たすと判断したときに、処理対象とする。以下において、呼び個数値P(m,n)の加算対象となる行先階呼びについて具体的に説明する。
図10は、実施形態2に係るエレベータの群管理システムにおける重み付け呼び個数値のカウント方法を説明する図である。
図10に示すように、出発階がFA階で、行先階がFB階の上方向の行先階呼びCNが新規に発生したものとする。この場合、加算対象とする割当済行先階呼びは、新規行先階呼びCNと同方向ので、かつFA階とFB階との間の範囲Rに、出発階と行先階とのうちの少なくとも一方が含まれる行先階呼びである。割当済行先階呼びの出発階と行先階とのうちの少なくとも一方が新規行先階呼びCNの範囲Rに含まれている場合、新規行先階呼びCNを割り当てることにより、割当済行先階呼びに対して乗車人数等の面において影響を受けるからである。
例えば、図10において、割当済行先階呼びC1は、出発階と行先階のいずれもが、新規行先階呼びCNの範囲Rに含まれない。そのため、割当済行先階呼びC1は、加算対象としない。割当済行先階呼びC2は、行先階が、新規行先階呼びCNの範囲Rに含まれる。そのため、割当済行先階呼びC2は、加算対象とする。割当済行先階呼びC3は、出発階と行先階の両方が、新規行先階呼びCNの範囲Rに含まれる。そのため、割当済行先階呼びC3は、加算対象とする。割当済行先階呼びC4は、出発階が、新規行先階呼びCNの範囲Rに含まれる。そのため、割当済行先階呼びC3は、加算対象とする。割当済行先階呼びC5は、出発階と行先階のいずれもが、新規行先階呼びCNの範囲Rに含まれない。そのため、割当済行先階呼びC5は、加算対象としない。
図11は、実施形態2に係るエレベータの群管理システムにおける重み付け呼び個数値のカウント方法を説明する図である。
図11(a)に示す例において、かごKは、上方向に進行しているものとする。この場合において、かごKの進行方向前方側において、かごKの進行方向と同じ上方向の新規行先階呼びCNが発生した場合、かごKの現在位置よりも進行方向前方側の範囲R1が呼び個数値の加算対象範囲となる。そのため、かごKの現在位置よりも進行方向前方側の範囲にある割当済行先階呼びCbは呼び個数値の加算対象となるが、かごKの現在位置よりも進行方向後方側の割当済行先階呼びCaは呼び個数値の加算対象とはしない。
図11(b)に示す例において、かごKは、上方向に進行しているものとする。この場合において、かごKの進行方向後方側において、かごKの進行方向と同じ上方向の新規行先階呼びCNが発生した場合、かごKの現在位置よりも進行方向後方側の範囲R2が呼び個数値の加算対象範囲となる。そのため、かごKの現在位置よりも進行方向後方側の範囲R2にある割当済行先階呼びCcは呼び個数値の加算対象となるが、かごKの現在位置よりも進行方向前方側の範囲にある割当済行先階呼びCdは、新規行先階呼びCNよりも先に応答することとなるため、呼び個数値の加算対象とはしない。
図11(c)に示す例において、かごKは、下方向に進行しているものとする。この場合において、かごKの進行方向前方側(下方側)において、かごKの進行方向とは逆方向である上方向の新規行先階呼びCNが発生した場合、1階から最上階の間の全ての範囲R3が呼び個数値の加算対象範囲となる。そのため、範囲R3にある全ての割当済行先階呼びCe、Cfは呼び個数値の加算対象となる。
図11(d)に示す例において、かごKは、割当済行先階呼びを有しておらず、停止しているものとする(空かご)。この場合において、新規行先階呼びCNが発生した場合、1階から最上階の間の全ての範囲R4が呼び個数値の加算対象範囲となる。ただし、割当済行先階呼びは、存在しないので、結果的に、新規行先階呼びCNのみが呼び個数値の加算対象となる。
カウント対象となるのは図10と図11の条件を同時に満たすものである。
制御装置10は、選択した行先階呼びに係る出発階j及び行先階kについて重み付け呼び個数値P(j、k)を求める(S38)。
制御装置10は、ステップS36で求めた重み付け呼び個数合計値S(i)に、ステップS38で求めた重み付け呼び個数値P(j、k)を加算する(S39)。
ここで、重み付け呼び個数合計値S(i)の加算対象について説明する。図12は、実施形態2に係るエレベータの群管理システムにおける重み付け呼び個数値のカウント方法と、従来の呼び個数値のカウント方法とを比較した図である。
図12(a)に示す例において、1階から4階への割当済行先階呼びCrが存在しているものとする。その場合において、2階から4階への新規行先階呼びCNが発生したものとする。
この場合、従来においては、図12(b)に示すように、割当済行先階呼びCrの出発階と新規行先階呼びCNの出発階とが異なっても、両者の行先階が同じである場合、当該号機の呼び個数は1とカウントする。
これに対し、本実施形態では、割当済行先階呼びCrと新規行先階呼びCNとにおいて、出発階は異なるが行先階が同じ場合、両行先階呼びに係る重み付け呼び個数値P(m,n)を加算する(両方をカウントする)。これは、P(m、n)が、出発階と行先階に応じた人数予測の要素を含むためである。例えば、図12(c)に示すように、割当済行先階呼びCrの出発階と新規行先階呼びCNの行先階とが同じであっても、両者の出発階が異なる場合、当該号機の呼び個数は両行先階呼びの重み付け呼び個数値P(1,4)とP(2、4)との合計値とする。
図8に戻り、制御装置10は、i号機に割当済のUP方向の行先階呼びのうち前述した処理対象の行先階呼びの全てについて、ステップS38、S39の処理が完了したが否かを判断する(S40)。
完了していない場合(S40でNO)、制御装置10は、i号機に割当済の行先階呼びのうちの処理対象の他の行先階呼びを選択し、重み付け呼び個数値P(j、k)を求める際の行先階として、当該選択した行先階呼びに係る出発階j及び行先階kを設定する(S41)。
これに対し、完了した場合(S40でYES)、制御装置10は、ステップS39で最終的に求められた重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さいか否かを判断する(S42)。制限値Lは例えば5である。
重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さい場合(S42でYES)、制御装置10は、i号機を第1割当候補号機として登録する(S43)。
これに対し、ステップS42において重み付け呼び個数合計値S(i)が制限値Lよりも小さくないと判断した場合(S42でNO)、制御装置10は、i号機を第1割当候補号機とはしない。
制御装置10は、全ての号機についてステップS33〜S43の処理が完了したが否かを判断する(S44)。
全ての号機についてステップS33〜S43の処理が完了していない場合(S44でNO)、制御装置10は、iに1を加算し(S45)、次の号機について、ステップS33以後の処理を行う。
全ての号機についてステップS33〜S43の処理が完了した場合(S44でYES)、制御装置10は、第1割当候補号機が存在するか否かを判断する(S46)。
第1割当候補号機が存在しない場合(S46でNO)、制御装置10は、制限値Lに所定値Cを加算し(S47)、ステップS37以後の処理を実行する。所定値Cは、例えば0.5である。
これに対し、第1割当候補号機が存在する場合(S46でYES)、制御装置10は、各第1割当候補号機に対して、以下の処理を実行する。すなわち、制御装置10は、第1割当候補号機の中から1の処理対象号機pを設定する(S48)。
制御装置10は、第1割当候補号機のうちのp号機に新規行き先階呼びを割り当てた場合、乗車人数が定員を超えるか否かを判断する(S49)。
乗車人数が定員を超えていない場合(S49でNO)、制御装置10は、p号機を最終割当候補号機として登録する(S50)。
これに対し、ステップS49において乗車人数が定員を超えると判断した場合(S49でYES)、制御装置10は、p号機を最終割当候補号機とはしない。
制御装置10は、全ての第1割当候補号機についてステップS49以後の処理が完了したが否かを判断する(S51)。
全ての第1割当候補号機についてのステップS49以後の処理が完了していない場合(S51でNO)、制御装置10は、第1割当候補号機の中から次の処理対象号機pを設定し(S52)、ステップS49以後の処理を行う。
全ての第1割当候補号機について処理が完了した場合(S51でYES)、制御装置10は、ステップS50で設定された最終割当候補号機の中から、割当号機を決定する(S53)。制御装置10は、決定した割当号機を示す信号を行先階登録装置20に出力する、決定した割当号機を示す信号を受信すると、行先階登録装置20は、割当号機を示す情報を表示部24に表示する。なお、割当候補号機の中からの1台の割当号機の決定は、所定の手順にしたがって行われる。この所定の手順は、公知の技術が利用可能である。
3.まとめ
本実施形態のエレベータの群管理システムは、
利用者が所望の行先階を示す行先階呼びを登録するための行先階登録装置20と、行先階登録装置20で登録された行先階呼びに基づいて複数台のエレベータ30のうちのいずれかを行先階呼びに割り当てる制御装置10と、を備えたエレベータの群管理システムである。
制御装置10は、
行先階登録装置20で新規の行先階呼び(f,d)が登録されたときに、
複数台のエレベータ30のそれぞれにおいて、
(1)新規の行先階呼び(f,d)に係る区間、及び(2)新規の行先階呼び(f,d)に係る区間と同一でなくかつ新規の行先階呼び(f,d)を割り当てると乗車人数に変動が生じることとなる割当済の行先階呼びに係る区間について、各区間の過去の所定期間の交通量に基づく重み付け呼び個数値P(m,n)(個別評価値)を求め、
求めた全ての重み付け呼び個数値P(m,n)(個別評価値)を加算して重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)を求め、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)に基づいて、当該エレベータ30を新規の行先階呼び(f,d)に対する割当候補エレベータとして設定するか否かを判断し、
割当候補エレベータの中から所定の割当ルールにしたがって新規の行先階呼び(f,d)に割り当てるエレベータを決定する。
本実施形態のエレベータの群管理システムにおいて、
複数台のエレベータ30のそれぞれについて、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいか否かを判定し、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいときは、当該エレベータ30を新規の行先階呼び(f,d)に対する割当候補エレベータとして設定する。
本実施形態のエレベータの群管理システムにおいて、
制御装置10は、
新規の行先階呼び(f,d)に係る乗車人数と、変動が生じることとなる割当済の行先階呼びに係る区間の乗車人数とを加算し、
加算により得られた乗車人数が所定人数以下で、かつ重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいエレベータ30を割当候補エレベータとして設定する。
上記各構成により、ビルの各階で新規に発生する行先階呼びが発生する場合において、実施形態1で説明したのと同様の効果が得られる。
特に、本実施形態のエレベータの群管理システムにおいては、
制御装置10は、
重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいエレベータ30が存在しない場合、制限値L(所定の制限値)を所定量大きくして、再度、重み付け呼び個数合計値S(i)(加算評価値)が制限値L(所定の制限値)よりも小さいか否かの判定を行う。
重み付け個数値によって割当候補号機を決定する手法を採用しても、例えば特定区間(特定階)における行先階呼びが極端に多いときには、当該行先階呼びを複数台の号機に分散しなければならないような場合がある。所定の閾値を所定量(所定値C)大きくすることにより、そのような場合に対応可能となる。