以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上の通信インターフェースデバイスで良い。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であっても良いし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であっても良い。
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスで良い。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであっても良いし不揮発性メモリデバイスであっても良い。
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスで良い。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)で良く、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、または、SCM(Storage Class Memory)で良い。
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリで良い。
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスで良い。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスで良いが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでも良い。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでも良いしマルチコアでも良い。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでも良い。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部または全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでも良い。
また、以下の説明では、「xxxDB」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のデータでも良いし(例えば、構造化データでも良いし非構造化データでも良いし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでも良い。従って、「xxxDB」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、一つのDBは、二つ以上のDBに分割されても良いし、二つ以上のDBの全部または一部が一つのDBであっても良い。
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されても良いし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されても良いし、それらの組合せによって実現されても良い。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置および/またはインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされても良い。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としても良い。プログラムは、プログラムソースからインストールされても良い。プログラムソースは、例えば、プログラム配付計算機または計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であっても良い。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしても良い。
以下、幾つかの実施形態を図面を用いて説明する。
はじめに、エレベーター利用条件評価システムに関する幾つかの実施形態の考え方についての共通の要点を説明する。
まず目的は、ビル内での感染予防対策やビル内の快適な移動のためにエレベーターの利用における混雑状況の回避となる。この目的に対して、単純にエレベーターの乗りかごの乗車率を低減しようとすると、その副作用で乗り場の待ち人数が増加して逆に乗り場が混雑する可能性が高い。このため、乗りかごの混雑度合いと乗り場の混雑度合いに対する適正な条件を定めることが難しくこれが解くべき課題となる。
この課題を解決する考え方として、乗りかごの乗車率と乗り場待ち人数とを定量的に算出し評価する仕組みがあれば、事前の計算により適正な乗りかごの乗車率と乗り場待ち人数の値を定めることできる。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態によるエレベーター利用条件評価システムを含むシステム全体の構成を示す図である。この図1において、要となる要素が、エレベーター利用条件評価システム1であり、このシステムによって、乗りかごの乗車率を低減させた場合の乗り場の待ち人数を算出し、希望条件を満たす乗車率、乗り場待ち人数の組合せが見出す処理を実施する。
対象となるビルのエレベーターについては、乗りかご2、エレベーターの運行などを制御するエレベーター制御装置3、複数台のエレベーターを群として統括制御するエレベーター群管理装置4、通信ネットワークを介してエレベーターの状態を監視するエレベーター遠隔監視システム5で構成される。
エレベーター以外のビル側の管理システムとしては、ビルの設備やセキュリティの管理を担うビル管理システム6があり、ビル内に設置された人数センサ7a(例えばビルの入り口に設置)、7b(例えばエレベーター乗り場に設置)などの検出データを収集し管理している。
エレベーター利用条件評価システム1には、エレベーター遠隔監視システム5、ビル管理システム6が例えば通信ネットワークを介して接続されており、エレベーター利用条件評価システム1は、エレベーターの運行データ、エレベーターの仕様や制御関連のデータ、ビル内の人数センサなどのデータを取得できる。
さらにエレベーター利用条件評価システム1は、ビル管理者、ビルオーナーの情報処理端末8と双方向の通信ができるように接続されており、ビル管理者、ビルオーナーがインターフェース画面を通じて、乗りかごの乗車率を入力し、対応する乗り場待ち人数を算出して、画面でその結果を確認できる。これに加えて、算出結果を実際のエレベーターで実施した場合は、後述するように情報表示装置14,15およびエレベーター制御装置3の少なくとも一つを用いて、算出結果に基づいた条件での運用を実施できる。
この運用について説明するために、まずは図1中のエレベーターの利用状況に関わる要素を説明する。エレベーターを利用する人として、エレベーター乗りかご内の乗客9とエレベーターの乗り場で待っている人10がいる。エレベーター乗りかご内の乗客9については、エレベーター乗りかご内の荷重センサにより検出された荷重を表すデータ、もしくは、人数センサ11により検出された人数を表すデータから乗りかご内の人数が特定されてよく、乗り場の待ち人数は乗りかご内の人数から推定されても良いし、人数センサがあればその検出値から特定されてもよい。乗りかご内の人数と乗り場の待ち人数との合計が、利用人数で良い。乗りかご内の乗車率を調整する場合、現状の乗車率が基準になるが、この値は荷重センサもしくは人数センサ11より検出できる。
乗り場の待ち人数を推定する上で、ビルの入り口12から入ってエレベーター乗り場に向かっているエレベーター利用者13もすぐにエレベーター乗り場の待ち人数に加わるため、考慮が必要である。ビル入り口周辺に人数センサ7aがある場合はその検出データを利用すればよく、人数センサが無い場合でも乗りかごの乗車人数の時系列データから近似的に推定することは可能である。
エレベーター利用条件評価システム1で混雑緩和の観点で適切な乗りかご内の乗車率と乗り場の待ち人数の値を算出できた場合、その条件での実運用にあたっては、まず定めた乗車率の値をエレベーター利用条件評価システム1から遠隔監視システム5に送り、さらに遠隔監視システムからエレベーター乗り場の情報表示装置14、およびエレベーターかご内の情報表示装置15の少なくとも一つにてその値をエレベーター利用者に情報提供する。情報表示装置14の画面の例16のように、乗りかご内の乗車率や乗り人数の情報を表示案内することで、利用者はそれに従って行動するように促される。またエレベーター利用条件評価システム1から遠隔監視システム5を介して、エレベーター制御装置3に設定されている満員レベルの値を算出した乗車率に変更することで、算出した乗車率以上に乗客が乗りかごに乗り込もうとした場合はブザーを鳴らしたり、算出した乗車率付近の乗りかごは満員と見なしてエレベーターをそれ以上応答させなないなどの制御を実施したりすることができる。
以上述べたように、感染症の予防などの観点でエレベーター利用における混雑状況を回避させる場合、図1に示した本発明によるエレベーター利用条件評価システムの一実施形態により、乗りかごの乗車率を低減した場合の乗り場の待ち人数を演算で定量的に算出でき、さらに希望条件を満たす乗車率、乗り場待ち人数の組合せが見出された場合、その条件で実際のエレベーターの運用を実施することができる。この結果、エレベーターの乗りかごと乗り場の両方に対して、適正な混雑緩和を実現することが可能となる。
図2は、本発明の第1の実施形態によるエレベーター利用条件評価システムの機能ブロック図である。ここで、エレベーター利用条件評価システムは図1で説明した要となる処理であり、乗りかごの混雑度合いに対する乗り場の混雑度合いを定量的に算出し、さらに算出した条件で実際のエレベーターを運用するように動作する。また、エレベーター利用条件評価システム1は、インターフェース装置、記憶装置及びそれらに接続されたプロセッサを備えた物理的な計算機システムでもよいし、物理的な計算機システム(例えばクラウド基盤)上に実現された論理的な計算機システム(例えばクラウドコンピューティングシステム)でもよい。エレベーター利用条件評価システム1における「yyy部」は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてよい。
図2に示した一実施形態の特徴は、ビル管理者などが乗りかごの乗車率を設定するとそれに対応した乗り場待ち人数を適正な算出方法で算出して、その結果を情報処理端末に出力する点にある。以下、図2の機能ブロック図の内容について構成要素を基に説明する。
まずは要となるエレベーター利用条件評価システム1において、乗車率設定部101にて乗りかごの乗車率の値を設定する。この値の設定は、ビル管理者、ビルオーナー、ビルの設備保守員の情報処理端末・携帯端末の画面上で実施される。この乗車率は、乗りかごの定員に対する乗車人数の割合で、次式で表される。
乗りかご内の乗車率=乗りかご内の乗車人数/乗りかごの定員 (1)
設定する乗車率の値については、乗りかご内が最も混雑する状況を想定しているため、乗車率の最大値を設定する。また乗車率以外に、乗車人数、乗りかご内の積載荷重値、面積当たりの人数密度、乗りかご内面積に対する乗客の占有率、乗りかご内での対人距離、社会的距離のような乗りかご内の混雑を表す指標を用いてもよい。
次に輸送能力算出部102では、乗りかごの乗車率の設定値とエレベーター仕様データ、ビル仕様データを基にして、エレベーターによる単位時間当たりの輸送人数を表す輸送能力を算出する。この輸送能力は「交通計算」の考え方によって計算できる。その概要は、乗りかごの乗車率から乗車人数を計算し、乗車人数から予想停止回数を算出して、エレベーターの定格速度や戸開放時間などを基に1周時間を計算する。その上で、算出された乗車人数と1周時間を用いることで輸送能力を算出できる。
続いて、利用人数算出部103では、エレベーター運行データ、乗り場人数センサのデータ、ビル入口や各階の人数センサのデータなどから、時間毎(例えば5分毎)のエレベーター利用人数のデータを算出する。エレベーターの運行データとは、例えば、時間毎のビル各階におけるエレベーターの乗降人数のデータであり、これは乗りかご内の荷重センサなどの検出データから推定することができる。
待ち人数算出部104では、エレベーター輸送能力の算出値とエレベーターの利用人数の算出値を用いて乗り場待ち人数(乗り場待ち人数の最大値)の推定値を算出する。この計算は、利用人数と輸送能力の差を基に実施する。より詳細には、図11を用いて後ほど説明するが、利用人数と輸送能力の差を時間的に積算することで乗り場待ち人数(最大値)を算出する。
エレベーターの利用人数に対して、輸送能力はエレベーターで運べる最大人数のため、その差の値がエレベーターで運べなかった人数(積み残し人数)となる。従って、それを積算した値がその時間全体での積み残し人数であり、乗り場の最大待ち人数となる。このプロセスを計算で表したものが上記の算出処理となる。従って、乗り場の待ち人数の発生状況に基づいたより正確な算出方法となる。この実際の状況に基づいた乗り場待ち人数の算出方法が特徴となる。
尚、乗り場待ち人数の代わりに、乗り場の面積に対する待ち人数の密度、乗り場の待ち客の対人距離、乗り場の面積に対する待ち人数の占有率などの混雑度合いを表す指標を用いても良い。これらの指標は、乗り場待ち人数を基に乗り場の面積などを用いることで算出できる。
この待ち人数算出部104が重要な要素の一つであり、設定した乗りかごの乗車率から輸送能力、またエレベーター利用人数を算出して、これらを用いて乗り場の待ち人数を実際の状況に基づいた形で算出することがポイントとなる。この算出部によって乗りかごの乗車率と乗り場の待ち人数の混雑度合いを定量的に関係付けて評価することができる。待ち人数算出部104の処理の詳細は図10、図11を用いて後ほど詳しく説明する。
評価結果出力部105では、乗り場待ち人数の算出結果、乗りかごの乗車率の設定値、乗り場待ち人数の算出の根拠となる輸送能力の算出結果、利用人数の算出結果などのデータを、ビル管理者などの情報処理端末・携帯端末やエレベーター遠隔システムに出力する。この結果、ビル管理者、ビルオーナー、ビルの設備保守員などは、設定した乗りかごの乗車率に対する乗り場待ち人数の推定値が分かり、望ましい数値が得られるように、乗車率の設定値をさらに変更して乗り場待ち人数を試算できる。これまでは、乗りかごの乗車率の変更に対して、乗り場待ち人数の影響を定量的に評価できなかったが、上記の処理により、定量的に評価できるようになる。
さらに、ビル管理者、ビルオーナー、ビルの設備保守員などが、算出した条件(乗車率)で実際のエレベーターを運用したい場合は、評価結果出力部105に対して、その実行指示を送ることで算出した条件に従った実際の運用を実施できる。
具体的には、評価結果出力部105から制御設定変更部106へ運用したい乗車率の情報が通信で送られて、制御設定変更部106では、その乗車率を基に乗りかごの満員レベルのしきい値(エレベーターの制御設定の一つ)を変更するように、遠隔監視システムへ指令が送られる。その結果、エレベーターの満員レベルのしきい値が変更されて、運用したい乗車率に従った満員レベルでエレベーターが運用される。
また評価結果出力部105から表示設定部107へ運用したい乗車率の情報が通信で送られて、表示設定部107からエレベーター遠隔システムへ乗車率の情報表示の設定指令と表示内容のデータが送られる。エレベーター遠隔システムでは、設定指令に従って、エレベーターの乗り場やエレベーター乗りかごに設置された情報表示装置14および15の少なくとも一つにて、運用したい乗車率を表示案内する。その結果、エレベーターの利用者は表示された情報を参考してエレベーターに乗車するため、表示した乗車率を基準にした運用を実施できる。ここで、表示案内する乗車率の情報は、図1に示したように「最大で〇人までご乗車下さい」、「〇人以下でご乗車下さい」、「乗車率は〇%以下でご乗車下さい」、「乗りかご内で〇m以上離れてご乗車下さい」など、利用者にとって分かりやすい案内情報を提示することで、所望の乗車率に従ってエレベーターを利用するように促すことが可能になる。
以上、図2に示したエレベーター利用条件評価システム1によって、乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数を実際の状況に従った算出方法で算出でき、乗りかごと乗り場の混雑度合いを定量的に評価することができる。この結果、感染症の予防、快適なエレベーター利用の観点から適正な乗りかご内乗車率と乗り場待ち人数の組合せを定めることができる。さらに算出した所望の乗車率について、実際のエレベーターで制御や情報表示によりその条件で運用することが可能となる。
図3は、本発明の第1の実施形態によるエレベーター利用条件評価システムが関わる要素を示す図である。
まず主軸となるのが、エレベーター利用条件評価システム1であり、このシステムに関わる構成要素として、必要な情報を提供するデータベースのグループ、ビル管理者、ビルオーナー、ビル設備の保守員などとの情報交換のための情報処理端末のグループ、評価の対象となるエレベーターおよびビル管理システムに関わるグループの大きく3つのグループで構成される。以下、それぞれに分けて説明する。
<(1)データベースのグループ>
ビル仕様DB(データベース)17には、ビルの階床の情報、エレベーター乗り場の情報、ビル内の人数センサの位置や検出データなどの情報が格納されており、交通計算の考え方を用いるエレベーターの輸送能力の算出、エレベーターの利用人数の算出、乗り場の面積当たりの人数密度の算出、乗り場の対人距離の算出などでこれらの情報を利用する。
エレベーター仕様DB18には、エレベーターの乗りかごの定員、速度、加速度、戸開放時間などの停止時間に関する情報、サービス階床データ、階床ピッチ、乗りかごの面積などの情報があり、エレベーターの輸送能力の算出、乗りかごの面積当たりの人数密度の算出、乗りかごの対人距離の算出などでこれらの情報を利用する。
エレベーター運行DB19には、エレベーターの運行状態、制御状態、稼働状態に関わる時系列データが格納されており、例えば、各階での乗り降りする人数の時系列データが格納されている。エレベーターの利用人数の算出において、この各階の乗降人数の時系列データなどを使用する。
検出人数DB20には、エレベーター乗り場の人数センサからの検出された人数データが格納されており、出入り人数DB21には、ビル入り口の人数センサからの検出された人数データ(ビル入り口の出入り人数を表すデータ)が格納されており、入退室人数DB22には、ビル各階の入退室管理装置からの検出された人数データが格納されており、これらのデータはエレベーターの利用人数の算出に使用される。人数センサが無いビルでは、エレベーター運行データのみを用いてエレベーターの利用人数を算出すればよく、人数センサのあるビルではそのデータを利用することでさらに精度よく利用人数を算出することができる。
<(2)情報処理端末のグループ>
ビル管理者の情報処理端末8、ビル管理者の携帯端末23は、ビル管理者、ビルオーナー、エレベーターも含めたビル設備の保守員などが使用する情報処理端末または携帯端末になる。ビル管理者などは、これらの情報処理端末を介して、エレベーター利用条件評価システムを利用し、乗りかごの乗車率の設定、乗り場待ち人数の算出、算出した結果の評価、算出した結果の運用実施判断などの処理を実施する。
<(3)エレベーターおよびビル管理システムに関わるグループ>
エレベーター遠隔監視システム5は、エレベーター利用条件評価システム1との情報のやりとりの基盤となる役目を担う。
エレベーター制御装置3、エレベーター群管理装置4はエレベーターの制御に関わる装置で、乗車率の変更に応じて、乗りかごの満員レベルのしきい値の変更をこれらの装置で実施する。
乗り場の情報表示装置14、およびかご内の情報表示装置15は、エレベーター利用条件評価システム1で算出した乗車率を実際に運用する場合、エレベーターの利用者に乗車率の情報を案内する手段として用いられる。
ビル管理システム6は、エレベーター利用条件評価システム1とビル内の人数センサ7、ビル内情報表示装置との情報のやりとりを担うものとなる。ビル内の人数センサ7はビル内の人数を検出するもので、エレベーターの利用人数に関するリアルタイムの情報として使用される。またここでの検出データがエレベーター乗り場の人数センサの検出人数DB20などに蓄積される。ビル内情報表示装置は、乗り場の情報表示装置14と同じくエレベーターの利用者に乗車率の情報を案内する手段として用いられる。
図4は、本発明の第1の実施形態による乗り場待ち人数算出方法の一例を示す図である。
この図4では、乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の関係を関数として捉え、この関数を特性曲線として視覚的なイメージで表すことで、乗車率に応じた乗り場待ち人数の算出方法を説明する。
まず図4において、グラフは乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の関係を示すもので、横軸G01は乗りかご内の乗車率(%)、縦軸G02は平均乗り場待ち人数(人)を表している。このグラフ上で、乗りかご内乗車率に対する乗り場待ち人数の関係を示すものが特性曲線G03になる。これは関数の式で示すと下記のようになる。なお、横軸は、第1の軸の一例であり、縦軸は、第1の軸と直交する第2の軸の一例である。
乗り場待ち人数=F1(乗りかご内の乗車率) (2)
ここで、F1()は関数を表す。
乗りかごの乗車率から乗り場待ち人数を定量的に算出するためには、この特性曲線もしくは関数に従って算出する必要があり、その方法が図2で説明した算出処理となる。逆に、乗りかごの乗車率と乗り場待ち人数に対する特性曲線G03を算出できれば、乗車率を設定すれば乗り場の待ち人数を適切に求めることができる。
図4のグラフには適正な乗車率を定めるための参考データとして、現在の乗車率(75%)の値G04に対する特性曲線上の点G05が示されている。これが現在の乗車率と乗り場待ち人数の状況となる。この例では、乗車率75%、乗り場待ち人数10人となっている。この値を参考にして、さらに混雑緩和を図るための乗車率、乗り場待ち人数を検討することになる。図4の例では、乗りかごの乗車率の設定値G06を50%に定めてこの時の乗り場待ち人数を算出している。その結果が特性曲線上の乗車率50%時の算出結果を示す点G07になる。これより、算出した結果の乗り場待ち人数の値G08は30人となる。実際には、特性曲線G03を算出せずに直接に乗車率の値から乗り場の待ち人数を算出することになるが、イメージとしては、図4のような仕組みで乗車率と乗り場待ち人数を定量的に評価している。
図4で示した乗りかごの乗車率と乗り場待ち人数に対する特性曲線G03の特徴は、乗りかごの乗車率と乗り場の待ち人数がトレードオフの関係にあることで、これは両者の混雑度合いがトレードオフの関係にあることを示している。従って、乗りかごの乗車率を下げて乗りかごの混雑度を緩和しようとすると、逆に乗り場の待ち人数が増えて乗り場が混雑することになる。このトレードオフの関係を特性曲線のような形で定量的に評価することで、そのビル毎の状況や方針に応じたバランスの良い解を選定することができる。
図2にて示した機能ブロック図に対応する一実施形態の動作を説明する。まずビル管理者、ビルオーナー、ビル設備の保守員が情報処理端末より、設定入力画面にて乗りかごの乗車率を設定する。
次に設定した乗車率を用いて、輸送能力算出部102が、交通計算によりエレベーターの輸送能力を算出する。「輸送能力」は、例えば単位時間当たりの輸送人数であり、ここでは単位時間は5分間とする。
合わせてエレベーターの運行データ等より、利用人数算出部103が、対象時間における5分間当たりのエレベーターの利用人数の時系列値を算出する。
そして、待ち人数算出部104が、算出した利用人数と輸送能力との差とその差の積算値を基にエレベーター乗り場の待ち人数を算出する。算出結果が得られたならば、算出した待ち人数の値をビル管理者の情報端末に出力する。
さらに、ビル管理者が計算した条件でエレベーターの運用を実行すると判断した場合は、評価結果出力部105が、エレベーター制御装置3、情報表示装置14および15の少なくとも一つに指令を出力し、エレベーターの乗りかごの満員レベルの設定値を変更して、乗りかごの乗車率の情報表示を実行する。
以上に述べた処理の流れにより、希望する乗車率の設定、設定値に基づく乗り場待ち人数の算出、算出結果の出力、算出結果の実際のエレベーターでの実施という一連の動作を実行できる。この動作はビル管理者とエレベーター利用条件評価システムとの間で情報処理端末を介してインタラクティブに実施される。
図5は、本発明の第1の実施形態による入出力画面の第1の例を示す図である。この入出力画面は、ビル管理者、ビルオーナー、ビル設備の保守員が情報処理端末または携帯端末を介して操作することになる。
入出力画面として、入力設定画面と結果出力画面とがあり、入力設定画面にて乗りかごの乗車率が入力され、結果出力画面にてこれに対する乗り場待ち人数の算出結果が出力される。
まず入力設定画面は、参考データとなるエレベーター乗りかご乗車率(現状の値)の項目T01と入力項目となるエレベーター乗りかご乗車率(設定値)T02で構成される。この例では、乗りかご乗車率の入力値は50%となっている。この入力値は、エレベーター利用条件評価システム1に入力され、乗車率設定部101により、エレベーター利用条件評価システム1の記憶装置に記憶(設定)される。
結果出力画面は、入力時に設定したエレベーター乗りかご乗車率T03と算出した乗り場待ち人数推定値T04で構成される。この例では、乗り場待ち人数の算出結果の値は30人である。
このようにして、ビル管理者などが希望する乗車率を入力して、その算出結果を乗り場待ち人数を確認しながら、最も適切と考えられる乗車率と乗り場待ち人数の組合せを定量的に選定することができる。
図6は、本発明の第1の実施形態による入出力画面の第2の例を示す図である。
この図6の入出力画面の例では、乗りかごの混雑度合いに関わる項目(入力設定)と乗り場の混雑度合いに関わる項目(出力結果)との単位を一致させたことが特徴となる。この例では、共に面積当たりの人の密度(単位は人/m2)としている。このように乗りかご内の混雑度合いと乗り場の混雑度合いの単位を一致させることで両者の比較が容易になる利点がある。
具体的には、入力設定画面では、乗りかごの混雑度合いに関わる指標として、乗りかごの乗車人数密度(単位面積あたりの乗車人数)を用いており、現状の値T05と値を入力する設定値T06の各項目がある。またその単位は一例として「人/m2」を用いている。
結果出力画面では、乗り場の混雑度合いに関わる指標として、乗り場待ち人数密度を用いており、設定値T07に対する乗り場待ち人数密度の算出結果T08が示される。単位は一例として同じ「人/m2」を用いており、乗りかご内と乗り場の混雑度合いを同じ単位の値で比較することできる。
図7は、本発明の第1の実施形態による入出力画面の第3の例を示す図である。
この図8の例も、図6と同様に乗りかごの混雑度合いに関わる項目(入力設定)と乗り場の混雑度合いに関わる項目(出力結果)との単位を一致させている。この例では、共に対人距離もしくは社会的距離(単位は共にm)を用いている。この結果、乗りかご内と乗り場の混雑度合いの比較が容易になる。
具体的には、入力設定画面では、乗りかごの混雑度合いに関わる指標として、乗りかごの対人距離を用いており、現状の値T09と値を入力する設定値T10の各項目がある。またその単位は一例として「m」を用いている。
結果出力画面では、乗り場の混雑度合いに関わる指標として、乗り場待ち人数の対人距離を用いており、設定値T11に対する乗り場待ち人数の対人距離の算出結果T12が示される。単位は同じ「人」を用いており、乗りかご内と乗り場の混雑度合いを同じ単位の値で比較することできる。
図8は、本発明の第1の実施形態におけるエレベーターの乗りかごと乗り場の概要を示す図である。
エレベーターの乗りかご2、乗りかご内の乗客9、エレベーター乗り場で待つ人10、および、エレベーター乗り場25は、図8に例示する通りのようになっている。
この図8に示す概要によれば、図6で説明した乗りかご内、乗り場のそれぞれにおける面積当たりの人数の密度の算出式は次のようになる。
乗りかご内の乗車人数密度
=乗りかご内の乗車人数Nc/乗りかご内の面積Sc (3)
乗り場の待ち人数密度
=乗り場の待ち人数Nh/乗り場の面積Sh (4)
同様に図7で説明した乗りかご内、乗り場のそれぞれにおける人と人との対人距離の算出式は次のようになる。
乗りかご内の対人距離Lc
=係数×√(乗りかご内の面積Sc/乗りかご内の乗車人数Nc) (5)
乗り場の対人距離Lh
=係数×√(乗り場の面積Sh/乗り場の乗車人数Nh) (6)
ここで、係数は、例えば対人距離の領域を円とした場合、√(1/π)となる。
上記で説明した面積当たりの人数の密度、人と人の対人距離を指標として用いることで、感染症の予防、混雑に対するストレスの緩和に関して、より適切な混雑の度合いの評価を実施することができる。
図9は、本発明の第1の実施形態においてビル管理者の情報処理端末8に提供されるユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
この図9に示す例では、図4で説明した乗りかご内の乗車率に対する乗り場待ち人数の特性曲線を用いたユーザーインターフェース画面の構成が特徴となる。この特性曲線の形状を見ながら乗車率に対する待ち人数を算出することで、希望する解の条件を効率良く選定できることが利点になる。
以下、図9のユーザーインターフェース画面について説明する。まず入力設定の領域F01では、入力値となる乗りかごの乗車率の入力欄F02、参考値となる現状の乗車率F03が示されている。これは図5の入力設定画面と同じ構成、働きとなる。入力設定が完了したならば計算実行のボタンF04を押して、乗車率に対する乗り場待ち人数の計算を実施する。
計算結果の領域には、乗りかご内の乗車率に対する乗り場待ち人数の特性曲線のグラフの図F05があり、計算で求めた特性曲線F06が示されている。この特性曲線F06の形状を見ることで、乗りかご内の乗車率に対する乗り場の待ち人数の概算値を知ることができ、乗車率に対する待ち人数の適正な組合せを効率良く選定することができる。尚、算出した乗り場待ち人数の数値は計算結果の出力欄F07に出力される。
算出した乗車率と乗り場待ち人数について良い解を見出すことができ、その条件で実際のエレベーターを運用する場合は、判定欄F08にある「Yes」のボタンを押す。この結果、既に図1、図2で説明した仕掛けにより、条件に従った乗りかごの乗車率の情報提供やエレベーター制御設定の変更が実施されて、実際のエレベーターで運用されるようになる。
図10は、本発明の第1の実施形態による待ち人数算出部104の機能ブロック図である。図11は、本発明の第1の実施形態による乗り場待ち人数算出の考え方の一例を示す図である。
ここでのポイントは、乗り場待ち人数算出において、実際の発生状態に基づいて積み残し人数を時間推移に合わせて積算していく処理となる。これにより実際の状況に即した乗り場待ち人数の算出が可能となる。待ち人数算出部104は、積み残し人数算出部1041、データ記憶部1042、合計積み残し人数算出部1043、乗車人数算出部1044、および、待ち人数最大値算出部1045を含む。以下、図10の処理の流れを説明する。
待ち人数算出部104の中で、積み残し人数算出部1041にて、エレベーター利用人数とエレベーター輸送能力を用いて新たに発生した(例えば5分間で発生した)エレベーターの積み残し人数を算出する。ここで、エレベーターの積み残し人数とは、その時間(例えば5分間)のエレベーターの利用人数に対してエレベーターの輸送能力では運び切れなかった人数を表す。算出式は以下となる。
新たに発生した積み残し人数
=その時間のエレベーター利用人数-エレベーター輸送能力 (7)
ここでは、実際のエレベーターの運行データ等より算出したエレベーターの利用人数、エレベーターの仕様に基づいて算出した輸送能力を用いていることもポイントであり、実際のエレベーターの状況を反映した計算が可能となる。またここでの利用人数は時間毎(例えば5分間毎)の時系列データとなる。
その前までの時間に発生した積み残し人数のデータ記憶部1042は、対象とする時間(例えば5分間)の前までに発生した積み残し人数のデータを管理している。このデータは、それまでの積み残し人数(新規発生分)を積算することによって算出される。この発生した積み残し人数を時間的に積算するという考え方が重要であり、実際の積み残しの発生状況でも、利用人数がエレベーターの輸送能力を超える場合は、積み残し人数が時間的に次々と積算されて待ち行列となる。このような実際の状況を「積算」によって反映させている。算出式は次のようになる。
その前までの時間に発生した積み残し人数
=Σ(過去の各時間(例えば5分間)に新たに発生した積み残し人数) (8)
合計積み残し人数算出部1043は、新たに発生した積み残し人数とその前までの時間に発生した積み残し人数とを加算して、合計積み残し人数を算出する。算出式は以下となる。この合計積み残し人数は乗り場待ち人数のベース(平均)の値となる。
合計積み残し人数
=新たに発生した積み残し人数+その前までの時間に発生した積み残し人数 (9)
この式をさらに分かりやすく言い換えると、「新たに発生した積み残し人数」は新たに追加された乗り場待ち人数、「その前までの時間に発生した積み残し人数」は既に生じている乗り場待ち人数となる。従って、合計積み残し人数が両者を合わせた全体の乗り場待ち人数となる。このように考えてもよい。
合計積み残し人数算出後、新たに発生した積み残し人数の値は、その前までの時間に発生した積み残し人数に加算される。既に述べたように、このようにして新たに発生した積み残し人数の時間的な積算処理が実行される。
乗車人数算出部1044は、乗りかご内の乗車率と乗りかごの定員により、乗りかごの乗車人数を算出する。算出式は以下となる。
乗りかごの乗車人数=乗りかご定員×乗りかご内の乗車率 (10)
待ち人数最大値算出部1045は、合計積み残し人数と乗りかごの乗車人数を加算して、乗り場待ち人数最大値を算出する。これは、乗りかごが到着した直後でまだ乗り場の待ち客が乗りかごに乗車していない状況が、最も乗り場待ち人数が多い状況と考えて、乗りかごの乗車人数を加算した値を最大値としている。その算出式は以下となる。
乗り場待ち人数最大値
=合計積み残し人数+乗りかごの乗車人数 (11)
以上にて説明した乗り場待ち人数の算出処理により、実際の積み残し人数の発生状況を反映させた乗り場待ち人数の算出を実施でき、その結果、より正確な乗り場待ち人数の算出が可能となる。尚、図11で説明した乗り場待ち人数算出処理の具体的なイメージは、図11にて積み残し人数などの時間推移のグラフによって後ほど説明する。
処理の内容および流れは、図10の機能ブロック図で説明した処理と同じになる。以下では処理のポイントを説明する。尚、ここでは5分毎の時間刻みで各時間における乗り場待ち人数等を算出する例を説明する。
まず、輸送能力算出部102が、乗りかごの乗車率と対象とするエレベーターの仕様データから5分間の輸送人数に対応する輸送能力を算出する。
次に、利用人数算出部103が、対象とするエレベーターの運行データ(時間毎の各階でのエレベーターの乗降人数データ等)、ビル内の人数センサの検出データから5分毎のエレベーター利用人数を算出する。
続いて、積み残し人数算出部1041が、対象としている5分間のエレベーターの利用人数と輸送能力との差により、その5分間で新たに発生したエレベーターで運べなかった積み残し人数を算出する。この積み残し人数は新たに発生した乗り場の待ち人数に対応する。
合計積み残し人数算出部1043が、上記の積み残し人数に対象としている5分間より前までの時間に発生していた積み残し人数を加算して合計の積み残し人数を算出する。この値が乗り場待ち人数のベースの値(平均)となる。
さらに、乗車人数算出部1044が、設定した乗車率と乗りかごの定員を乗算して乗りかごの乗車人数を算出する。
最後に、待ち人数最大値算出部1045が、合計積み残し人数と乗りかごの乗車人数を加算して乗り場待ち人数最大値を算出する。この乗り場待ち人数最大値を乗り場待ち人数の算出結果として出力する。尚、求めた合計の積み残し人数(乗り場待ち人数のベースの値)を乗り場待ち人数の算出結果として出力してもよい。
図11には、6つの時間経過を表すグラフが示されており、各グラフでは、いずれも、横軸G09は時間、縦軸G10は人数を表している。横軸G09の時間は8:30-8:35のように5分単位の時間経過を示しており、横軸全体で出勤混雑時8:30-9:00の時間帯を表している。
6つの各グラフは上から順に、1)エレベーター利用人数とエレベーター輸送能力の時間推移、2)新たに発生した積み残し人数の時間推移、3)それまでの時間で発生した積み残し人数の時間推移、4)合計積み残し人数の時間推移、5)乗りかごの乗車人数の時間推移、6)乗り場待ち人数算出値(最大値)の時間推移を表しており、これらの各値は乗り場待ち人数算出の各処理で計算された結果を表している。
以下、図11の各グラフについて上から順に、乗り場待ち人数算出処理と対応させながら説明する。
まずエレベーターの利用人数(実線G11)とエレベーターの輸送能力(点線G12)の時間推移のグラフはそれぞれ図のようになっている。出勤時のため、利用人数は8:45-8:50の時間まで増加しており、8:35-8:50の時間帯で利用人数が輸送能力を超過している。この時にエレベーター乗り場の待ち人数が増加する。8:50以降は出勤時間を過ぎるため、利用人数は大きく減少している。ここで、エレベーターの輸送能力(点線G12)は設定した乗りかごの内の乗車率によって変化する。乗車率を低減するように設定するとその分だけ利用人数の超過が増えることになる。
次に新たに発生した積み残し人数(実線G13)は、図10で述べたように利用人数と輸送能力の差によって算出される。グラフより、利用人数の輸送能力に対する超過分によって積み残し人数が増加するのが分かる。
続いて、対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数(実線G14)は、図10で述べたように、各対象時間の前までに発生した積み残し人数の積算値として算出される。先に述べた新たに発生した積み残し人数を積算していくため、図のように大きな値となる。
さらに続いて、合計積み残し人数(実線G15)は、新たに発生した積み残し人数(実線G13)と対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数(実線G14)の和で求められる。但し、ここで重要な注意点があり、8:55-8:55,8:55-9:00の時間のように利用人数が輸送能力よりも小さい場合は、新たに発生した積み残し人数(実線G13)が負の値となっており、このような場合でかつ対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数が正の値の場合は、合計積み残し人数は、新たに発生した積み残し人数を負の値で加算する。これはエレベーターの輸送能力に余力があるため、既に発生している積み残し人数もエレベーターで運んでいることに相当する。このため、合計積み残し人数がさらに減少することになる。実際の状況でもこのようになる。
上記の処理について、手順化して記述すると例えば次のようになる。
a)利用人数<輸送能力かつ対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数>0の場合、合計積み残し人数=(利用人数-輸送能力)+対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数
b)利用人数<輸送能力かつ対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数≦0の場合、合計積み残し人数=0
c)利用人数≧輸送能力の場合、合計積み残し人数=(利用人数-輸送能力)+対象時間の前までの時間に発生した積み残し人数
乗りかごの乗車人数(点線G16)はグラフのようになる。
最後に乗り場待ち人数算出値は、合計積み残し人数と乗りかごの乗車人数の和となる実線G17のようになり、その最大値となる乗り場待ち人数の最大値は点線G18のようになる。
以上に述べた待ち人数算出処理により、実際の乗り場待ち人数の時間推移に基づいた方法で、より正確な方法で乗り場待ち人数を算出することできる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を説明する。その際、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を簡略または省略する。
図12は、本発明の第2の実施形態によるエレベーター利用条件評価システムの機能ブロック図である。
図12において、図2と異なるポイントは利用人数変更部108が加えられた点にある。この利用人数変更部108は、乗りかごの乗車率の変更のみでは望ましい乗り場待ち人数の値を見出せない場合に、エレベーターの利用人数を変更することにより、所望の乗り場待ち人数値を見出すことを可能にする。図2では乗りかごの乗車率のみが調整できる入力項目であったが、図12では乗車率とエレベーターの利用人数が調整できる入力項目となる。このため、より柔軟かつ多様な手段で乗りかご内、乗り場の混雑度合いを緩和することが可能となる。
以下では、図12の特徴であるエレベーターの利用人数の変更方法について説明する。
まず利用人数算出部103が、エレベーターの運行データを基に算出した現状の利用人数を算出する。さらにこの現状の利用人数を基準にして、利用人数の値を変更する場合は、利用人数変更部108が変更量を定める。その上で利用人数算出部103が改めて変更後の利用人数を算出し、待ち人数算出部104が利用人数変更後の乗り場待ち人数の結果を算出する。ここで、利用人数の変更量は、情報処理端末または携帯端末を介して利用人数変更部108により設定される。また上記では利用人数の変更について、現状の値を基準にした変更量を定めるとしたが、必ずしも現状の値である必要はなく、利用人数の平均値もしくは最大値、対象とするビルの在館人員などでも良い。また利用人数変更部108が設定する変更量は、基準を100%とした時の低減量(例えば20%低減など)のような形式で良い。
以上で述べたエレベーターの利用人数の変更は、実際の運用ではオフィスビルの出社人数の制限、時差出勤、時差昼食、時差退勤によるエレベーターの利用人数の時間的な分散などに対応する。従って、エレベーターの利用人数の変更を実際のビルの運用で実行する場合は、変更量に対応した出社人数の制限、時差出勤や時差昼食、時差退勤を実施することになる。この場合は、評価結果出力部105が、ビル管理者、ビルオーナー、ビルテナントの管理者などの情報処理端末または携帯端末へ、利用人数変更の算出結果に基づいた出社人数の制限や時差出勤などの案内または提案などを実施する。さらに表示設定部107から遠隔監視システムを介して乗り場や乗りかご内の情報表示装置14および15の少なくとも一つに、出勤時間や昼食時間のシフト、分散化についての案内または提案を実施する。
このように、利用人数変更部108が加えられることで、さらに柔軟かつ多様な形で乗りかご内と乗り場の混雑状態を緩和することができ、感染症の予防やエレベーター利用の快適性を向上することができる。
図13は、本発明の第2の実施形態による乗り場待ち人数算出方法の一例を示す図である。この図13は、図4で示した乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の関係をグラフで表した特性曲線になる。
図13において、図4と異なる要素はエレベーターの利用人数の変更後の特性曲線(点線)G19になる。この特性曲線は、利用人数変更部(図12)で利用人数を変更した場合の乗車率に対する乗り場待ち時間として算出した結果をイメージしている。
この図13の特性曲線G19について重要なポイントは、図のように利用人数を低減すると、同じ乗車率の設定値に対して、乗り場待ち人数を低減できる点にある。図13の例では、利用人数を現状より30%低減することで、乗車率の設定値50%に対して、乗り場待ち人数の値を利用人数変更前の30%から20%(符号G20の点および符号21が示す乗り場待ち人数)に低減できる。このように図4で述べた乗車率と乗り場待ち人数がトレードオフの関係となる特性曲線(実線G03)に対して、そのトレードオフを解決できる解(点線の特性曲線G19)を利用人数の低減を図ることで見出すことができる。
上記を関数の式で記述すると次のようになる。
乗り場待ち人数
=F2(乗りかご内の乗車率、エレベーター利用人数) (12)
ここで、F2()は関数を表す。
乗りかごの乗車率とエレベーター利用人数が入力変数となって、乗り場待ち人数を変更できるため、より柔軟に乗り場待ち人数を低減する条件を見出せることをこの式は表している。
エレベーターの利用人数の変更に関わる処理を説明する。具体的には、ビル管理者が情報処理端末より、設定入力画面にて乗りかごの乗車率とエレベーター利用人数の変更量(低減率)を設定する処理、エレベーターの運行データ等および利用人数の変更量(低減率)を用いて対象時間における5分間当たりのエレベーターの利用人数の時系列値を算出する処理、ビル管理者が計算した条件でエレベーターの運用を実行する場合はビル内の各テナントの管理者に利用人数の変更量(低減率)でのビル利用の可否を提案する処理、各テナント管理者より提案が同意された場合はテナントに利用人数調整の実施を依頼し、その上で、エレベーター制御装置3、情報表示装置14および15の少なくとも一つに指令を出力し、エレベーターの乗りかごの満員レベルの設定値の変更、乗りかごの乗車率の情報表示を実行する処理となる。
特に特徴となる点は、エレベーターの運行データ等および利用人数の変更量を用いて対象時間における5分間当たりのエレベーターの利用人数の時系列値を算出する処理と利用人数を変更する場合は、ビル内の各テナントの管理者に利用人数の変更量での実運用の可否を提案する処理になる。
以上の処理により、エレベーターの利用人数の変更を加えた乗り場待ち人数の算出処理を時系列データなどの観点でより精度良く実施することができ、かつ利用人数を変更する場合の運用をシステムよりビル管理者やテナントに直接提案することでより速やかに実施することができる。
図14は、本発明の第2の実施形態による入出力画面の一例を示す図である。
図14において、図5~図7に示した入出力画面と異なる点は、入力設定画面にてエレベーター利用人数の変更量を設定する項目T13を追加した点にある。ここでの設定値に基づいて図12で述べた利用人数の変更が実行される。尚、図14の例では、エレベーター利用人数の変更量として現状の値に対する低減率で設定する例を示したが、変更後の利用人数を直接設定すること、変更する人数を設定すること、増加も含めた変更率で設定することなどでも良い。
図14に示す結果出力画面では、参考情報として入力設定画面で設定したエレベーター利用人数の低減率の項目T14を示した上で、乗りかごの乗車率と利用人数の変更量とを設定して算出した乗り場待ち人数の推定値T14が出力される。エレベーターの乗りかご2の利用人数の変更を加えた乗り場待ち人数の算出処理を時系列データなどの観点でより精度良く実施することができ、かつ利用人数を変更する場合の運用をシステムよりビル管理者やテナントに直接提案することでより速やかに実施することができる。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を説明する。その際、第1または第2の実施形態との相違点を主に説明し、第1または第2の実施形態との共通点については説明を簡略または省略する。
図15は、本発明の第3の実施形態によるエレベーター利用条件評価システムの機能ブロック図である。
図15において、図2および図12と異なるポイントは、待ち人数許容条件設定部109、待ち人数評価部110、および、利用人数変更部(探索型)111を加えた点にある。これら3つの新たな要素は、乗り場待ち人数の許容条件をあらかじめ設定し、算出した乗り場待ち人数が許容条件を満たすか否かを評価して、許容条件を満たさない場合は利用人数を変更して条件を満たす解を探索するという一連の処理を実施するものとなる。図2および図12の例では、ビル管理者などが乗りかご乗車率や利用人数の変更量を設定して、所望の乗り場待ち人数の値が得られるまで設定値を調整する必要があったが、図15の例では、乗り場待ち人数の許容値を定めることで、設定した乗車率に対する許容値を満たす乗り場待ち人数を、利用人数の自動的な変更処理によって速やかに求めることができる。
以下では、図15の特徴である乗り場待ち人数の許容条件の設定、乗り場待ち人数の評価、エレベーターの利用人数の変更を中心に説明する。
まず待ち人数許容条件設定部109は、待ち人数算出部104で算出する乗り場待ち人数の値に対する許容条件を設定する。例えば、待ち人数の上限値として30人などの値を設定する。
待ち人数評価部110は、待ち人数算出部104より算出された乗り場待ち人数の値が、待ち人数許容条件設定部109で設定された許容条件を満たすか否かを評価する。許容条件を満たす場合は、図2と同様の流れで算出結果、評価結果を評価結果出力部105より情報処理端末に出力する。
許容条件を満たさない場合は、利用人数変更部(探索型)111が、エレベーター利用人数をパラメータ変数として変更させながら、許容条件を満たす乗り場待ち人数の値を得るまでパラメータ探索する。そして、許容条件を満たす値が見つかった場合は、その時の乗り場待ち人数の算出値、エレベーター利用人数の変更量(もしくは利用人数の値)、設定した乗車率の値などを、評価結果出力部105より情報処理端末に出力する。
図15に示した機能ブロック部によれば、例えば以下の2点のメリットがある。
1)許容条件を設定することで算出した乗り場待ち人数の値の良し悪しをシステム側で評価できる。
2)もし許容条件を満たさないと評価された場合は、エレベーターの利用人数の変更によって自動で許容条件を満たす解を探索し、解が見つかった場合はその結果を出力する。
これにより、ビル管理者、ビルオーナー、エレベーターを含めたビル設備の保守員などは、より円滑にかつ適正に乗りかごと乗り場の混雑緩和を両立する定量的な運用条件を得ることができる。
図16~図18は、本発明の第3の実施形態による乗り場待ち人数算出方法の一例を示す図である。この図16~図18は、図4および図13で示した乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の関係をグラフで表した特性曲線になる。図16は算出した乗り場待ち人数が許容条件を満たすケース、図17は許容条件を満たさないケース、図18は図17の状況でさらに利用人数の変更により許容条件を満たす解を見出したケースになる。以下、それぞれの図について説明する。
図16は、算出した乗り場待ち人数が許容条件を満たすケースでの乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の特性曲線のグラフとなる。図16で、図4および図13と異なる要素は、乗り場待ち人数の許容条件となる許容値の上限のラインG22となる。算出された乗り場待ち人数はこの上限のラインG22以下であれば許容条件を満たすことになる。ここでは乗り場待ち人数の許容上限値を30人としている。図16の例では、乗車率の設定値50%に対して、算出した乗り場待ち人数の値は特性曲線上の点G07となり、その値は30人で許容上限値を満たしている。このため、この算出結果と許容条件を満たしたという評価結果を結果として出力する。
図17は、算出した乗り場待ち人数が許容条件を満たさないケースでの乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の特性曲線のグラフとなる。図17は、図16に対して、乗り場待ち人数の許容値の上限のラインG22が20人となっており、乗車率の設定値50%に対する乗り場待ち人数の算出結果が30人で許容条件を満たさないケースとなる。この場合は、エレベーターの利用人数をパラメータ変数として自動でパラメータ探索を実施し、許容条件を満たす解を探す処理を実施する。
図18は、図17の結果の後に、エレベーターの利用人数をパラメータ変数として自動でパラメータ探索を実施し、許容条件を満たす解が得られたケースを示している。図18の点線の特性曲線G23が、許容条件を満たす解を得た場合の利用人数に対する特性曲線になる。この例では、利用人数を現状よりも30%低減した場合となる。この時、乗車率の設定値50%に対して、利用人数変更後の乗り場待ち人数算出値は20人となり、許容値の上限のラインG22以下となっている。このため、許容条件を満たす解が得られている。
図19は、本発明の第3の実施形態による処理の一例のフローチャートである。
図19において、乗り場待ち人数の許容条件を設定し、この条件に基づいて乗り場待ち人数の算出値を評価し、条件を満たさない場合は、利用人数を変更して許容条件を満たす解を探索する各処理となる。以下、図19のフローチャートを順に説明する。
まずビル管理者が情報処理端末より、設定入力画面にて乗りかごの乗車率と乗り場待ち人数の許容条件を設定する(S17)。次に設定した乗車率を用いて交通計算により、輸送能力算出部102が、エレベーターの輸送能力(5分間当たりの輸送人数)を算出し(S02)、さらにエレベーターの運行データ等より対象時間における5分間当たりのエレベーターの利用人数の時系列値を算出する(S03)。その上で、待ち人数算出部104が、利用人数と輸送能力の差の積算データを基にエレベーター乗り場の待ち人数を算出する(S04)。
待ち人数評価部110が、算出した待ち人数に対して、設定した許容条件を基に条件を満たすか否かを評価する(S18)。ここで条件を満たさない場合は、利用人数変更部(探索型)111が、利用人数算出部103が利用人数を変更(低減)して、待ち人数算出部104が乗り場待ち人数を再計算し、待ち人数評価部110が、再評価を行う。設定した許容条件を満たす解を得るまでこのような処理を繰り返す(S19)。これが利用人数をパラメータ変数とするパラメータ探索の処理となる。
許容条件を満たす解が得られた場合は、評価結果出力部105が、算出した待ち人数の値、許容条件による評価結果、利用人数を変更した場合はその変更量の情報をビル管理者の情報端末に出力する(S20)。
さらにビル管理者が計算した条件にてエレベーターの運用を実行する場合で、利用人数の変更が不要な場合は、制御設定変更部106が遠隔監視システム5を通じてエレベーター制御装置3に指令を出力することでエレベーターの乗りかごの満員レベルの設定値の変更を実行し、表示設定部107が遠隔監視システム5を通じて情報表示装置14および15の少なくとも一つに指令を出力することで乗りかごの乗車率の情報表示を実行する。また利用人数の変更が必要な場合は、制御設定変更部106がビル内の各テナントの管理者に提案し、同意が得られた場合は運用条件(変更後の利用人数上限)を実行する(S21)。
図20は、本発明の第3の実施形態による入出力画面の一例を示す図である。
図20について、図5~図7および図14で示した入出力画面と異なるポイントを主に説明する。
まず図20の入力設定画面において、乗り場待ち人数の許容値の上限を設定する欄T16を加えている。ここで、乗り場待ち人数の許容値の上限をあらかじめ設定する。
続いて結果出力画面では、参考データとして、乗り場待ち人数の許容値の上限T17がしめされており、算出結果として、乗り場待ち人数推定値T18と許容条件を満たすためのエレベーター利用人数の変更量(低減率)T19が表示出力されている。
このようにして、ビル管理者、ビルオーナー、エレベーターを含めたビル設備の保守員は、乗り場待ち人数の許容条件の設定と許容条件を満たす解の値について、必要な結果を知ることができる。
図21は、本発明の第3の実施形態においてビル管理者の情報処理端末に提供されるユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
まず図21の入力設定の領域において、乗り場待ち人数の許容値の上限を設定する欄F09を加えている。ここで、乗り場待ち人数の許容値の上限をあらかじめ設定する。
続いて計算結果の領域では、図9と同様の乗りかご内の乗車率に対する乗り場待ち人数の特性曲線のグラフの図F05において、乗り場待ち人数の許容値の上限を示すラインF10が示されており、特性曲線F06上でどの乗車率の値で許容条件を満たすことが可能かを視覚的に判断することができる。図の例では、乗り場待ち人数の許容値の上限を30人に設定しており、乗りかごの乗車率の設定値50%で乗り場待ち人数の算出値が30人であり、許容条件を満たしている。
さらに、許容条件に対する評価結果とその条件で実際にエレベーターを運用するか否かの判定欄F11があり、計算結果の条件で運用する場合は「Yes」のボタンを押せば、条件に従った乗りかごの乗車率の情報提供やエレベーター制御設定の変更が実施されて、実際のエレベーターで運用されるようになる。
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を説明する。その際、第1ないし第3の実施形態の少なくとも一つとの相違点を主に説明し、第1ないし第3の実施形態の少なくとも一つとの共通点については説明を簡略または省略する。
図22は、本発明の第4の実施形態によるエレベーター利用条件評価システムの機能ブロック図である。
図22において、図2、図12、図15と異なるポイントは、乗車率設定部101に代えて、乗車率許容条件設定部112を設けたことにある(別の言い方をすれば、乗車率許容条件設定部112を、広義の乗車率設定部と解釈することができる)。乗車率許容条件設定部112が乗りかごの乗車率の許容条件を設定し待ち人数許容条件設定部109が乗り場待ち人数の許容条件を設定することで、後はエレベーター利用条件評価システム1側で自動で許容条件を満たす乗りかごの乗車率、乗り場待ち人数、エレベーターの利用人数の値の組合せを算出することがこの実施形態の特徴となる。このため、第4の実施形態では、ビル管理者などが乗りかごの乗車率の許容条件と乗り場待ち人数の許容条件とを設定するだけで、2つの許容条件を見たす解を自動でのパラメータ探索処理によって速やかに求めることができる。
以下、図22の機能ブロックについて、特徴となる処理に絞って内容を説明する。
まず乗車率許容条件設定部112が、乗りかごの乗車率の許容上限値を設定し、待ち人数許容条件設定部109が、乗り場待ち人数の許容上限値を設定する。その上で、まずは利用人数算出部103で算出される現状の利用人数を用いて、許容条件を満たす乗車率から、待ち人数算出部104が、乗り場待ち人数を算出する。次に待ち人数評価部110が、乗り場待ち人数の許容条件を満たすか否かを判定し、満たす場合はその結果を出力し、満たさない場合は利用人数変更部(探索型)111で利用人数をパラメータ変数にして変更し、許容条件を満たす乗り場待ち人数の値を探索する。その結果、許容条件を満たす解が見つかった場合はその結果を評価結果出力部105により情報処理端末等へ出力する。
このようにして、所望の許容条件を設定するだけで、自動計算によって条件を満たす解を算出して、その結果を情報処理端末等に出力し、さらに実際のエレベーターでの運用までを実施することができる。
図23は、本発明の第4の実施形態による乗り場待ち人数算出方法の一例を示す図である。この図23は、図4、図13および図18に示した乗りかごの乗車率に対する乗り場の待ち人数の関係をグラフで表した特性曲線になる。以下、図23について説明する。
図23において、図4、図13および図18と異なる要素は、乗りかご内の乗車率の許容値の上限ラインG25を設定したことであり、この乗車率の上限のラインG25と乗り場待ち人数の許容値の上限ラインG22の両方の上限ライン以下の領域が許容条件を満たす領域となる。まずエレベーターの利用人数が現状の場合の特性曲線G03では許容条件を満たす領域に解が無い。そこで、エレベーター利用人数と乗りかごの乗車率を変更して許容条件を満たす解を探索した結果、利用人数30%減かつ乗車率50%の解の点G26が算出されている。この時の特性曲線は点線G27の特性曲線になる(利用人数を現状よりも30%低減させた時の特性曲線)。また乗り場待ち人数の値は20人となる(許容上限を満たす)。
以上のように、乗りかご内の混雑度合いと乗り場の混雑度合いの間にあるトレードオフの関係(特性曲線の形状)に対して、許容条件を満たすような解を乗車率と利用人数を変更することで見出すことができる。具体的には特性曲線G03では2つの許容条件のラインG25,G22を満たす解が得られないが、乗車率と利用人数の変更によって特性曲線G27が得られ、この特性曲線上の解G26を得ることができる。このような仕掛けを実施するのが、図22に示したエレベーター利用条件評価システムの機能ブロック図である。
図24は、本発明の第4の実施形態による処理の一例のフローチャートである。
図24のフローチャートは、乗りかごの乗車率の許容条件と乗り場待ち人数の許容条件を設定する処理(S22)、設定した2つの許容条件を基に算出結果を評価する処理(S18)、許容条件を満たさない場合に利用人数を変更しながら条件を満たす乗り場待ち人数を探索する処理(S19)、条件を満たす解が得られた場合にその結果をビル管理者の情報端末に出力する処理(S20)、利用人数の変更が必要な場合はビル内の各テナントの管理者に提案し同意が得られた場合は運用条件を実行する処理(S21)が特徴となる。以下、図24のフローチャートの処理を順に説明する。
まずビル管理者が情報処理端末より、設定入力画面にて乗りかごの乗車率の許容条件と乗り場待ち人数の許容条件を設定する(S22)。次に乗車率の許容条件より、乗車率許容条件設定部112が、許容可能な上限値を乗車率の設定値として設定する(S23)。
続いて、設定した乗車率を用いて交通計算により、輸送能力算出部102が、エレベーターの輸送能力(5分間当たりの輸送人数)を算出し(S02)、利用人数算出部103が、エレベーターの運行データ等より対象時間における5分間当たりのエレベーターの利用人数の時系列値を算出した上で(S03)、待ち人数算出部104が、利用人数と輸送能力の差の積算データを基にエレベーター乗り場の待ち人数を算出する(S04)。
待ち人数評価部110が、算出した待ち人数に対して設定した許容条件を基に評価を実施する(S18)。許容条件を満たさない場合は、利用人数の変更(低減)、乗り場待ち人数の再計算、および、再評価が、設定した許容条件を満たす解を得るまで繰り返される(S19)。
許容条件を満たす解が得られた場合は、評価結果出力部105が、算出した待ち人数の値と、許容条件による評価結果と、利用人数を変更した場合はその変更量とをビル管理者の情報処理端末に出力する(S20)。
さらに、ビル管理者が計算した条件でエレベーターの運用を実行する場合で、利用人数の変更が不要な場合は、エレベーター制御装置3、情報表示装置14および15の少なくとも一つに指令を出力し、エレベーターの乗りかごの満員レベルの設定値の変更、乗りかごの乗車率の情報表示を実行する。利用人数の変更が必要な場合は、ビル内の各テナントの管理者に提案し、同意が得られた場合は運用条件を実行する(S21)。
以上、幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
尚、以上の説明を基に、エレベーター利用条件評価システムを下記のように表現することが可能である。
<表現1>
乗りかごを備えビルに設置されたエレベーターに関する評価を行うエレベーター利用条件評価システムであって、
前記乗車率に基づいてビルの複数の階床の乗り場の待ち人数を算出する待ち人数算出部と、
前記算出した待ち人数を出力する評価結果出力部と
を備えたことを特徴とするエレベーター利用条件評価システム。
<表現2>
乗りかごを備えビルに設置されたエレベーターに関する評価を行うエレベーター利用条件評価システムであって、
乗りかご内の乗車率の許容条件を設定する乗車率許容条件設定部と、
ビルの複数の階床にある乗り場の待ち人数の許容条件を設定する待ち人数許容条件設定部と、
前記設定された乗車率の許容条件を満たす乗車率に基づく輸送能力であって単位時間当たりのエレベーターの輸送人数である輸送能力を算出する輸送能力算出部と、
単位時間当たりの利用人数を算出するエレベーター利用人数算出部と、
前記輸送能力と前記利用人数を基に、前記設定された待ち人数の許容条件を満たす待ち人数を算出する待ち人数算出部と、
前記設定された乗車率の許容条件を満たす乗車率と前記設定された待ち人数の許容条件を満たし算出された待ち人数とを出力する評価結果出力部と
を備えたことを特徴とするエレベーター利用条件評価システム。
<表現3>
乗りかごを備えビルに設置されたエレベーターに関する評価を行うエレベーター利用条件評価システムであって、
前記乗りかご内に乗車する乗客の乗車率を設定する乗車率設定部と、
ビルの複数の階床にある乗り場の待ち人数の許容条件を設定する待ち人数許容条件設定部と、
前記乗車率に基づいて待ち人数を算出する待ち人数算出部と、
前記算出した待ち人数が前記設定した許容条件を満たすか否かを判定する待ち人数評価部と、
前記算出した待ち人数と前記判定の結果とを出力する評価結果出力部と
を備えたことを特徴とするエレベーター利用条件評価システム。