以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
図1は、本発明の実施例1である、行先階予約式エレベーターのエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
本実施例1においては、マイクロコンピュータなどの演算処理装置が、所定のプログラムを実行することによって、各機能を有する。なお、各データは、半導体メモリーなどの記憶装置に記憶される。なお、後述する他の実施例についても、同様である。
エレベーター利用者移動予測装置1は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部101と、エレベーター運行予測部104と、行先階予約式自己判断率を設定できる利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部113と、利用者移動予測部113が備える行先階予約式乗降予測部123および行先階予約式自己判断乗降予測部124と、出力部105とによって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
利用者データ10は、時間帯毎の、エレベーターホールに到着する利用者数および利用者の行先階に関する情報を有する。
エレベーター仕様データ30は、各エレベーターの定員と、停止階(サービス階)に関する情報を有する。エレベーター仕様データ30は、さらに、定格速度やドア開閉速度、群管理の制御方式などの仕様情報を有してもよい。
レイアウトデータ20は、エレベーターの台数および行先階予約端末の台数に関する情報を有する。レイアウトデータ20は、さらに、エレベーターホールのレイアウト、エレベーターの設置位置および行先階予約端末の設置位置などのレイアウト情報を有してもよい。
利用者生成部101は、利用者データ10に基づいて、各時刻における、エレベーターホールに発生する利用者(データ)を生成する。
利用者行動パラメータ設定手段110は、利用者の行動形態に関わるパラメータとして、利用者(本実施例では行先階予約端末への入力操作を行った利用者)における、行先階予約端末への入力に応じてエレベーターシステムが示す号機情報に従わず自己判断で行動する利用者の発生割合として、自己判断率を設定する。なお、エレベーターシステムにおいて期待されるように行動する利用者、すなわち行先階予約端末への入力に応じてエレベーターシステムが示す号機情報に従って行動する利用者の発生割合は、「1−自己判断率」となる。なお、自己判断率は「%」で表しても良い。
利用者移動予測部113は、利用者データ10およびレイアウトデータ20に基づき、エレベーター乗車までの利用者の移動およびエレベーター降車後の利用者の行動を予測する。本実施例においては、エレベーター乗車までの移動予測に用いられる利用者の行動について、利用者行動パラメータ設定手段110で設定される自己判断率に基づき、エレベーターシステムの指示や案内に従って行動すると判定される場合は行先階予約式乗降予測部123によって利用者の移動が予測され、利用者の自己判断で行動すると判定される場合は、行先階予約式自己判断乗降予測部124によって利用者の移動が予測される。
なお、利用者の行動は、エレベーターホールにおける、エレベーター運行に関わる情報入出力に伴うものであるが、利用者が行うエレベーターシステムへの入力操作については利用者移動予測部113で判定され、入力操作に応じた号機の割り当てや案内表示などのエレベーターシステムの動作や応答については、次に説明するエレベーター運行予測部104で判定される。
エレベーター運行予測部104は、利用者移動予測部113で予測される、利用者のエレベーター操作行動と、エレベーター仕様データ30に基づき、各時刻におけるエレベーターの運行状況を予測する。
出力部105は、エレベーター運行予測部104および利用者移動予測部113における予測結果を出力する。
エレベーター運行予測部104から出力されるデータは、例えば、任意の階におけるエレベーターの出発する時間間隔(運転間隔)、任意の期間におけるエレベーターが輸送した利用者の人数(輸送力)、1台のエレベーターが任意の階を出発する時間間隔(一周運転時間)、任意の階での利用者の待ち時間である。これらのデータは、平均値、最小値、最大値、中央値などで示されても良い。
利用者移動予測部113から出力されるデータは、例えば、各時刻における任意の階のエレベーターホール全体の待ち人数、号機ごとの待ち人数、任意の階におけるエレベーター乗車までの待ち時間、任意の階間の移動にかかる時間である。これらのデータは、平均値、最小値、最大値、中央値などで示されても良い。
なお、出力部105は、エレベーター運行予測部104で予測される各号機の位置および乗車人数と、利用者移動予測部113で予測されるエレベーターホールにおける利用者のエレベーター号機ごとの整列人数と行先階予約端末の整列人数を用いて、予測結果をコンピュータグラフィクスによりアニメーション化して出力しても良い。
図7は、利用者行動パラメータ設定手段110において、各種確率を設定するためにソフトウェア上に設けられる入力フォームを示す。
図7に示すように、入力フォーム1000から、エレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる利用者行動の発生確率1001〜1007についてそれぞれ入力することができる。なお、発生確率1004(R4%)が、本実施例1において設定される自己判断率である。他の発生確率1001〜1003,1005〜1007については、他の実施例において設定される発生確率であり、後述する。
なお、利用者行動パラメータ設定手段110は、発生確率(本実施例1では自己判断率)を、入力フォームを用いずに、データベースなどに記録される値を読み込んで設定しても良い。
図8は、出力部105による出力データの一例である運行予測結果のレポートを示す。
図8に示すように、レポート2000は、検討対象のエレベーターの仕様情報2001として、停車する階および台数、定員を示し、対象とする時間帯や利用者の情報20002および予測結果2003として、エレベーターホールに到着してからエレベーターに乗車するまでの平均待ち時間や最大待ち人数を出力する。
また、図8に示すように、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される発生確率の値(本実施例1では「自己判断率R4%」:図7参照)2004,2005を、併せて出力しても良い。
次に、利用者移動予測方法として、本実施例1において実行される予測処理を説明する。
本実施例1においては、エレベーター運行を考慮して建物フロア内における人の動きをシミュレーションする際に、以下に説明するように、エレベーターシステムにおいて想定されている利用者の行動とは異なる行動が考慮される(他の実施例も同様)。なお、エレベーター運行を考慮して建物フロア内における人の動きをシミュレーションする技術としては、公知の技術(例えば、前述の特許文献1参照)が適用される。また、人の動きをシュミレーションする技術としては、セルオートマトンなどの公知技術が適用される。
ここで、人の移動は、周囲の状態、例えば、その人の行先、他人や障害物の有無によって異なり、公知技術においては、ある時点における周囲の状況に応じて、人が、ある時点から次の時点でどこへ(例えば、どの方向へ)動くかを予め設定しておくことによって、所定の空間内での人の移動が予測される。以下に説明するように、各実施例では、エレベーターフロアにおける人すなわち利用者の移動を予測するにあたって、利用者の動きを設定するために、周囲の状態として、エレベーター運行状態が用いられると共に、呼び登録などエレベーターシステムに対する利用者の入力操作や、呼びに割り当てられる号機に関する案内表示などのエレベーターシステムからの出力に伴う、利用者の行動が用いられる。
図9は、利用者移動予測部113(図1)における行先階予約式乗降予測部123および行先階予約式自己判断乗降予測部124によって実行される予測処理(主に、利用者の行動の判定処理:他の実施例も同様)を示すフローチャートである。なお、図9では、処理ステップを「S」と略記する(後述する図10〜14のフローチャートも同様)。また、図9において、判定処理の分岐における遷移のうち、判定YESのときの遷移は実践矢印で示し、判定NOのときの遷移は破線矢印で示す(後述する図10〜14のフローチャートも同様)。
なお、以下の説明において、利用者やエレベーターは、特に説明しない限り、ソフトウェア上(データ、プログラム)の利用者やエレベーターである(後述する図10〜14のフローチャートも同様)。
まず、S101では、エレベーターホールに到着する利用者が、行先階予約端末を操作して行先階を入力する。ここで、利用者移動予測部113には、利用者生成部101が生成する利用者(行先階を含むデータ)が設定される。S101実行後、S102へ進む。
S102において、利用者は、行き先階予約端末から、利用者の行先階に移動する号機eiの情報を取得して、号機eiを、乗車する号機eとする。すなわち、S101で設定される利用者の行先階に対してシステムによって割り当てられる号機eiが、エレベーター運行予測部104から取得され、取得した号機eiが乗車する号機eとして設定される。S102実行後、S103へ進む。
S103においては、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される自己判断率に応じて、S102の次の処理ステップ(遷移先)が確率的に選択されるように、S102からの処理フローが分岐する。すなわち、S102実行後、自己判断率の確率でS104に遷移し、残りの確率すなわち「1−自己判断率」の確率でS105に遷移する。
本実施例1において、S103のような確率的分岐においては、疑似乱数が用いられる。S102実行後、0から1の範囲の擬似乱数rを生成する。そして、生成されるrが自己判断率より小さい値の場合にはS104に遷移し、rが自己判断率以上の場合にはS105に遷移する。ここで、疑似乱数は、メルセンヌツイスター法などの公知の擬似乱数生成法を用いて生成される。
なお、上述のような確率的分岐については、図9のS108や、後述する図10〜14のフローチャートにおける確率的分岐も同様である。
S104では、利用者の自己判断で乗車する号機eiが選択され、選択される号機ejが乗車する号機eとされる。すなわち、S102で取得された号機(ei)がS104で選択された号機(ei)に変更される。
利用者が自己判断で乗車するエレベーター号機は、エレベーター号機に対応する表示器に表示される停止階に利用者の行先階が含まれており、エレベーター運行予測部104から取得される。さらに、利用者が自己判断で乗車するエレベーター号機は、いわゆる効用関数(物や情報などの効能や価値を数値で表す関数)を用いて選択される。
本実施例1において、効用関数は、自己判断時点からのエレベーター号機の到着順序k、待ち人数n、利用者の位置からのエレベーター号機の乗車位置までの移動時間tの少なくとも一つを変数として、定義される。そして、定義された効用関数の値が最大となるエレベーター号機が選択される。例えば、効用関数Uは、U(k,n,t)=−αk−βn−γt(α,β,γは任意の係数)と定義される。ここで、α=0,β=1,γ=0である場合、U(n)=−nとなり、待ち人数nが最も少ない号機が、最も効用関数が大きくなるので、自己判断で選択される号機となる。
S104実行後、S105へ進む。また、上述のように、S102実行後、(1−自己判断率)の確率でS105へ進む。
S105では、利用者が、乗車する号機eの前で到着まで待機すると推定される。すなわち、利用者は、乗車する号機eに向って、その前まで移動し、乗車する号機eの前で号機到着まで待機すると推定される。S105実行後、S106へ進む。
S106では、乗車する号機eが到着し、利用者が乗車する号機eに乗車しようとする。ここでは、エレベーター運行予測部104から、乗車する号機eの到着データが取得される。S106実行後、S107へ進む。
S107では、エレベーター運行予測部104から取得される乗車する号機eの運行データに基づいて、利用者が乗車する号機eに乗車できたかが判定される。乗車できた場合(S107のYes)、利用者移動予測部113は予測処理を終了する。乗車する号機eに乗車できなかった場合(S107のNo)、例えば、乗車人数が定員を超えてしまう場合やエレベーターのドアが乗車以前に閉じる場合、S108に進む。
S108においては、S107実行後の処理フローが、S103と同様に確率的に分岐する。S107で利用者が乗車する号機に乗車できなかったと判定される場合(S107のNo)、自己判断率の確率でS104に遷移し、残りの確率すなわち「1−自己判断率」の確率でS101に遷移する。すなわち、利用者は、自己判断率の確率で、再度自己判断に基づく行動を行い、「1−自己判断率」の確率で、端末の操作まで戻って行動をやり直すと予測される。本実施例1においては、S103とS108において、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される同じ値の自己判断率が用いられる。
なお、S103とS108において、異なる値の自己判断率を用いてもよい。この場合、利用者行動パラメータ設定手段110によって、最初の行動と再行動における自己判断率をそれぞれ設定しても良いし、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される自己判断率を所定のルールで変更しても良い。
図9に示す予測処理において、S104は、利用者の自己判断により乗車する号機を選択することを予測する処理である。従って、S104は、行先階予約式自己判断乗降予測部124によって実行される。また、S102は、エレベーターシステムの案内や指示に従って乗車する号機が判断されることを予測する処理である。従って、S102は、行先階予約式乗降予測部123によって実行される。
次に、本実施例1による利用者の移動予測結果について、図15〜17を用いて説明する。
図15、図16および図17は、本実施例1による予測結果の例であり、行先階予約式エレベーターが設置されたエレベーターホールにおける利用者とエレベーターの状態を示す。なお、各図において、3020は行先階予約式の端末を示し、3000,3001および3002は、それぞれ号機e1、号機e2および号機e3を示す。
まず、図15の状態について説明する。
号機e1に対応する表示器3010はf2階に停車することを示し、号機e2に対応する表示器3011はf5階に停車することを示し、号機e3に対応する表示器3012はf2,f3階に停車することを示している。また、利用者3101は行先階予約端末の操作を終え、利用者3101の行先階f2に対して号機e3への乗車が指示されている(3111)。利用者3100は、端末の操作中で、行先階f2に対して号機e1への乗車を指示されている(3112)。利用者3102は、号機e2の前に移動して到着を待っており、利用者3103,3014,3015および3016は号機e3の前に移動して到着を待っている。
次に、図16の状態、すなわち図15の状態から、すべての利用者がエレベーターシステムからの指示または案内に従って移動した場合の状態について説明する。
エレベーターの状態は図15と同様である。利用者3101および3100は、行先階号機の指示または案内に従って行動しており、利用者3101は号機e3の前に移動して到着を待ち、利用者3100は号機e1の前に移動して到着を待っている。
次に、図17の状態、すなわち図15の状態から、一部の利用者(3101)がエレベーターシステムからの指示または案内に従わず、自己判断で移動した場合の状態について説明する。
エレベーターの状態は図15と同様である。利用者3101の行先階f2へは、エレベーターシステムから指示された号機e3のほかに号機e1でも移動することができることが表示器3010から確認できる。さらに、号機e3の乗車を待っている人数が4人に対して、号機e1の乗車を待っている人数は、図15の時点では0人であり、より待ち人数の少ない。このため、利用者3101は、エレベーターシステムから指示とは異なる号機e1に乗車する判断を行なっている。
本予測結果では、号機e3に乗車することを期待された乗客が号機e1に乗車することで、号機e3は一人分少ない状態で出発することになり、号機e1はエレベーターシステムが想定する人数よりも一人多い人数で出発することになる。あるいは、エレベーターシステムによって号機e1への乗車を指示されたが乗車できない利用者が生じる可能性がある。このように、システムが想定するエレベーターの利用状況と実際の利用状況に差異が生じることによって、エレベーターシステム全体での運行効率の低下や、利用者に対しての的確な指示や案内ができなくなるといった状況を予測することができる。
本実施例1によれば、エレベーターシステムが指示する号機によらず利用者の自己判断によって利用者が行動する確率を用いて利用者の行動を判定することにより、エレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる行動を行う利用者がいる場合において正確に利用者の移動を予測することができる。これにより、エレベーターの運行予測の確度が向上し、エレベーターの輸送力、待ち時間や待ち人数などを正確に評価することができる。従って、本実施例1による予測結果を用いることにより、建物内におけるエレベーター需要に応じて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となる。また、本実施例1による予測結果を、エレベーターの群管理制御に用いることにより、建物内における人の輸送効率が向上する。
図2は、本発明の実施例2である、行先階予約式エレベーターのエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
エレベーター利用者移動予測装置2は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部90と、エレベーター運行予測部104と、行先階予約式自己判断率を設定できる利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部152と、利用者移動予測部152が備える行先階予約式乗降予測部123および共連れ乗降予測部154と、出力部105とによって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
以下、実施例1とは異なる点、主に、利用者行動パラメータ設定手段110、利用者生成部90および利用者移動予測部152について説明する。
利用者行動パラメータ設定手段110は、共連れ率および平均共連れ人数を設定する(前述の図7参照)。
利用者生成部90は、利用者データ10に基づいて、各時刻におけるエレベーターホールに発生する利用者(データ)を生成する。ここで、利用者を生成時、本実施例2では、利用者行動パラメータ設定手段110で設定される共連れ率R5と平均共連れ人数nに基づいて行先階が同じで出現タイミングが近い利用者を同行者としてあらかじめ設定しておく。
発生する同行者の人数は、平均(期待値)および分散を平均共連れ人数nとするポアソン分布に従って設定される。また、利用者データとして利用者一人ひとりの発生時刻および行先階を用いて、利用者に同行者情報を手動あるいは自動で付与することにより、詳細に共連れが発生する条件を設定してもよい。
利用者移動予測部152は、共連れ行動をする利用者について、共連れ乗降予測部154によって移動を予測し、共連れ行動をしない利用者について、行先階予約式乗降予測部123によって移動を予測する。
次に、利用者移動予測方法として、本実施例2において実行される予測処理を説明する。
図14は、利用者移動予測部152(図2)における行先階予約式乗降予測部123および共連れ乗降予測部154によって実行される予測処理の一部を示すフローチャートである。
実施例1の予測処理を示す図9のフローチャートのうち、S101およびS102、すなわち行先階登録装置への行先階を入力および入力した行先階へ移動する号機の取得に関わる処理が、図14のフローチャートに置き換わる。
図14のフローチャートについて以下説明する。
S601では、同行者の有無が判定され、同行者がいる場合(S601のYes)、S602に進み、同行者がいない場合(S601のNo)、S603に進む。ここで、S601は、図9のS103と同様に、確率的分岐である。すなわち、利用者生成部90によって生成される利用者には、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される共連れ率の確率で同行者がいるとされ、残りの確率すなわち「1−共連れ率」の確率で同行者はいないとする。
S602では、利用者が同行者からすでに乗車エレベーターeの情報を伝えられているかが判定される。同行者が利用者よりも先に行先階予約端末を操作しており、乗車する号機eを伝えられている場合(S602のYes)、利用者は行先階予約端末を操作せずに、乗車する号機eに向かって移動する。すなわち、利用者生成部90によって同行者が時間的に利用者よりも先に生成され、同行者の行先階に移動する号機データが、エレベーター運行予測部から取得されている場合、利用者が同行者からすでに乗車エレベーターeの情報を伝えられているとして、図14に示す一連の処理を終了し、次に、図9のS103が実行される。また、同行者が行先階予約端末を操作しておらず、乗車する号機eを伝えられていない場合(S602のNo)、すなわち利用者生成部90によって同行者が時間的に利用者よりも後に生成される場合、S603に進む。
S603では、行先階予約端末に行先階を入力される。すなわち、利用者移動予測部152に、利用者生成部90によって同行者が時間的に利用者の行先階が設定される。S603実行後、S604に進む。
S604において、利用者は、行き先階予約端末から、利用者の行先階に移動する号機eiの情報を取得して、号機eiを、乗車する号機eとする。すなわち、S603で設定される利用者の行先階に対してシステムによって割り当てられる号機eiが、エレベーター運行予測部104から取得され、取得した号機eiが乗車する号機eとして設定される。S604実行後、S605へ進む。
S605では、同行者の有無が判定される。同行者がいる場合(S605のYes)にはS606に進み、同行者がいない場合(S605のNo)、図14に示す一連の処理を終了して、図9のS103に進む。
S606では、利用者は、同行者に乗車する号機eを伝える。すなわち、同行者について乗車する号機eが設定される。S606実行後、図14に示す一連の処理を終了して、図9のS103に進む。
本実施例2によれば、共連れ率を用いて利用者の行動を予測することにより、エレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる共連れ行動を行う利用者がいる場合において正確に利用者の移動を予測することができる。従って、実施例2による予測結果を用いて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となったり、群管理制御されるエレベーターの輸送効率が向上したりする。
なお、本実施例2においては、図9のフローチャートのS101およびS102を変更したものであるため、共連れ率のほか、前述の自己判断率も考慮されている。共連れ率および自己判断率の内、共連れ率のみ考慮する場合には、自己判断率を0に設定すれば良い。
図3は、本発明の実施例3である、上下釦式エレベーターのエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
エレベーター利用者移動予測装置3は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部101と、エレベーター運行予測部104と、予告灯考慮率を設定できる利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部111と、利用者移動予測部111が備える上下釦式乗降予測部121および上下釦式予告灯考慮乗降予測部122と、出力部105とによって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
以下、実施例1とは異なる点、主に、利用者行動パラメータ設定手段110、利用者移動予測部111について説明する。
利用者行動パラメータ設定手段110は、予告灯考慮率を設定する(前述の図7におけるR1参照)。
利用者移動予測部111は、予告灯を考慮して乗降行動を行う利用者について、上下釦式予告灯考慮乗降予測部122によって移動を予測し、予告灯を考慮せずに乗降行動を行う利用者について、上下釦式乗降予測部121によって移動を予測する。
次に、利用者移動予測方法として、本実施例3において実行される予測処理を説明する。
図10は、利用者移動予測部111(図3)における上下釦式乗降予測部121および上下釦式予告灯考慮乗降予測部122によって実行される予測処理を示すフローチャートである。
S201では、利用者の行先階の上下方向に対応する上下釦が押されていないかが判定される。すなわち、エレベーター運行予測部104に乗場呼びが設定されているかが、判定される。上下釦が押されていない場合(S201のYes)、S202へ進み、押されている場合(S201のNo)、S203へ進む。
S202では、行先階の上下方向に対応する上下釦が押される。S202実行後、S203へ進む。
S203は、図9のS103と同様に、確率的分岐である。すなわち、S202実行後、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される予告灯考慮率の確率でS205に進み、残りの確率すなわち「1−予告灯考慮率」の確率でS204に進む。
S204において、利用者は、行先階の方向と同じ方向の予告灯が点灯した号機を、確認し、乗車する号機eとする。すなわち、上下方向いずれかの乗場呼びに応じてシステムによって割り当てられ予告灯が点灯される号機が、エレベーター運行予測部104によって設定され、利用者が乗車する号機eとして設定される。S204実行後、S206に進む。
S205において、利用者は、行先階の方向と同じである号機の到着を確認し、到着した号機を乗車する号機eとする。なお、行先階の方向と同じである号機の到着はエレベーター運行予測部104によって設定される。S205実行後、S206に進む。
S206では、利用者を、号機eの前で、号機eが到着するまで待機させる。すなわち、利用者は、乗車する号機eの前まで移動し、乗車する号機eの前で号機到着まで待機すると予測される。なお、S205実行後にS206が実行される場合、待機時間は0とすれば良い。S206実行後、S207に進む。
S207では、乗車する号機eが到着し、利用者が乗車する号機eに乗車しようとする。ここでは、エレベーター運行予測部104から、乗車する号機eの到着データが取得される。S207実行後、S208へ進む。
S208では、エレベーター運行予測部104から取得される乗車する号機eの運行データに基づいて、利用者が乗車する号機eに乗車できたかが判定される。乗車できた場合(S208のYes)、利用者移動予測部111は予測処理を終了する。乗車する号機eに乗車できなかった場合(S208のNo)、S201に戻って再度予測処理が実行される。
次に、本実施例3による利用者の移動予測結果について、図18〜21を用いて説明する。
図18、図19、図20および図21は、本実施例3による予測結果の例であり、上下釦式エレベーターが設置されたエレベーターホールにおける利用者とエレベーターの状態を示す。
なお、各図において、4001,4002および4003は、それぞれ、号機e4、号機e5および号機e6を示す。また、4011,4012,4021,4022,4031および4032は、それぞれ、号機e4の上方向の予告灯、号機e4の下方向の予告灯、号機e5の上方向の予告灯、号機e5の下方向の予告灯、号機e6の上方向の予告灯および号機e6の下方向の予告灯を示す。
また、各図において、4051および4052は、それぞれ、上方向のホール釦および下方向のホール釦を示す。上方向のホール釦4051および下方向のホール釦4052によって、乗り場呼びが登録され、登録された呼びに対して号機e4、号機e5、号機e6の内のいずれか1台が割り当てられる。呼びが割り当てられた号機は、押された釦の方向に向かう号機として乗場呼びが登録された階床へ配車される。
まず、図18の状態について説明する。
号機e4、号機e5、号機e6は、いずれもドアが閉じている。また、上方向のホール釦4051が押されている。利用者4101は、上方向のホール釦4051をちょうど押し終え、利用者4102はエレベーターホールにちょうど到着したところである。ここでは、利用者4101および4102の行先階は共に上方向である。
次に、図19の状態、すなわち図18の状態から、号機e4の予告灯が点灯した場合に、予告灯を考慮した利用者の行動について説明する。
図19の状態では、号機e4の上方向の予告灯4011が点灯している。利用者4101および利用者4102は、共に、点灯した予告灯4011にしたがって、号機e4を乗車する号機として、号機e4の前まで移動し、の号機e4の前で、号機e4が到着するまで待機する。
次に、図20の状態、すなわち図18の状態から、利用者は予告灯が点灯しても行動を変えず、号機が到着するまで、またはドアが開く直前になるまで行動しない場合について説明する。
図20の状態では、図19と同様に、号機e4の上方向の予告灯4011が点灯している。これに対し、利用者4101および利用者4102は、共に、点灯した予告灯4011にしたがった行動は行わない。このため、利用者の状態、すなわち利用者の位置は、図18の状態から変化していない。
次に、図21の状態、すなわち図20の状態から、号機e5が到着して、号機e5のドアが開こうとしている場合について説明する。このとき利用者4101および利用者4102は、号機e5に乗車するために、号機e5の前まで移動し、号機e5の前で待機しようとする。
図21では、予告灯が点灯した号機e4と異なる号機e5が到着する場合であるが、予告灯が点灯した号機と同じ号機が到着した場合でも、利用者4101および利用者4102は、点灯した予告灯4011にしたがった行動は行わず、図18の位置にとどまり、号機e4が到着してから、号機e4に乗車しようとする行動をとると予測される。
このように、予告灯の点灯を考慮するかどうかで、エレベーターを待つ利用者の移動行動の予測結果が異なる。到着する号機に近い位置で利用者が待機していれば短時間での乗降が期待できるが、到着する号機から離れた位置や、異なる号機の前で利用者が待機している場合、乗降時間が増大する可能性がある。従って、予告灯の点灯を考慮した予測結果によって、エレベーターの輸送力や、待ち時間や待ち人数などを的確に評価することができる。
本実施例3によれば、予告灯考率を用いて利用者の行動を予測することにより、エレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる予告灯を考慮しない行動を行う利用者がいる場合において正確に利用者の移動を予測することができる。従って、実施例3による予測結果を用いて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となったり、エレベーターの群管理制御されるエレベーターの輸送効率が向上したりする。
図4は、本発明の実施例4である、上下釦式エレベーターのエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
エレベーター利用者移動予測装置4は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部101と、エレベーター運行予測部104と、上下釦両設定率を設定できる利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部142と、利用者移動予測部142が備える上下釦式乗降予測部121および上下釦両設定乗降予測部144と、出力部105とによって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
以下、実施例1とは異なる点、主に、利用者行動パラメータ設定手段110、利用者移動予測部142について説明する。
利用者行動パラメータ設定手段110は、上下釦両設定率を設定する(前述の図7におけるR2参照)。
利用者移動予測部142は、上下釦を押すときに行先階の方向の釦だけでなく上下両方の釦を押す利用者について、上下釦両設定乗降予測部144によって利用者の移動を予測し、行先階の方向の釦のみを押す利用者について、上下釦式乗降予測部121によって利用者の移動を予測する。
次に、利用者予測方法として、本実施例4において実行される予測処理を説明する。
図13は、利用者移動予測部142(図4)における上下釦式乗降予測部121および上下釦両設定乗降予測部144によって実行される予測処理の一部を示すフローチャートである。
実施例3の予測処理を示す図10のフローチャートのうち、S202、すなわち上下釦の操作に関わる処理が、図13のフローチャートに置き換わる。
図13のフローチャートについて以下説明する。
S501は、図9のS103と同様に、確率的分岐である。すなわち、図10のS201実行後、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される上下釦両設定率の確率でS503に進み、残りの確率すなわち「1−上下釦両設定率」の確率でS502に進む。
S502では、ホールに設置される上下釦の内、利用者の行先階の方向の釦のみが押される。S502実行後、図13の一連の処理を終了し、図10のS203に進む。
S503では、行先階の方向によらず、上下釦の両方が押される。S503実行後、図13の一連の処理を終了し、図10のS203に進む。
本実施例4によれば、上下釦両設定率を用いて利用者の行動を予測することにより、エレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる上下釦を両方押すという行動を行う利用者がいる場合において正確に利用者の移動を予測することができる。従って、実施例3による予測結果を用いて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となったり、群管理制御されるエレベーターの輸送効率が向上したりする。
なお、本実施例4においては、図10のフローチャートのS202を変更したものであるため、上下釦両設定率のほか、前述の予告灯考慮率も考慮されている。上下釦両設定率および予告灯考慮率の内、上下釦両設定率のみ考慮する場合には、予告灯考慮率を0に設定すれば良い。
図5は、本発明の実施例5である、上下釦式エレベーターおよび行先階予約式エレベーターの両方に適用可能なエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
エレベーター利用者移動予測装置5は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部101と、エレベーター運行予測部104と、利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部114と、利用者移動予測部114が備える上下釦式乗降予測部121、上下釦式予告灯考慮乗降予測部122、行先階予約式乗降予測部123、行先階予約式自己判断乗降予測部124と、出力部105とによって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
各データおよび各処理部は、実施例1〜4で説明したものと同様である。なお、他に、実施例1〜4で説明した共連れ乗降予測部154、上下釦両設定乗降予測部144を加えても良い。
本実施例5において、利用者移動予測部114は、利用者の移動を予測するために、予測対象とするエレベーターホールに上下釦が設置されている場合、上下釦式乗降予測部121または上下釦式予告灯考慮乗降予測部を用い、予測対象とするエレベーターホールに行先階予約端末が設置されている場合、行先階予約式乗降予測部123または行先階予約式自己判断乗降予測部124を用いる。すなわち、利用者移動予測部114は、予測対象に応じて、上下釦式用の予測部(上下釦式乗降予測部121および上下釦式予告灯考慮乗降予測部122の組)と、行先階予約式用の予測部(行先階予約式乗降予測部123および行先階予約式自己判断乗降予測部124の組)とを、適宜選択する。
本実施例5によれば、各階のエレベーターホールに上下釦が設置されているエレベーターホールと行先階予約式端末が設置されているエレベーターホールの両方に対応して、エレベーターの輸送力や、待ち時間や待ち人数などの的確な評価が可能となる。
図6は、本発明の実施例6である、上下釦式エレベーターおよび行先階予約式エレベーターの両方に適用可能あり、かつ車椅子釦の操作を考慮したエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
エレベーター利用者移動予測装置6は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部101と、エレベーター運行予測部104と、車椅子釦併用率を設定できる利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部132と、利用者移動予測部132が備える上下釦式乗降予測部121、上下釦式車椅子釦併用乗降予測部133、行先階予約式乗降予測部123、行先階予約式車椅子釦併用乗降予測部134と、出力部105とによって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
以下、実施例1とは異なる点、主に、利用者行動パラメータ設定手段110、利用者移動予測部132について説明する。
利用者行動パラメータ設定手段110は、上下釦式エレベーターにおける車椅子釦併用率(前述の図7におけるR3参照)および行先階予約式エレベーターにおける車椅子釦併用率(前述の図7におけるR6参照)を設定する。これらの確率は、前述の図7に示すように、個別に設定される。なお、上下釦式および行先階予約式で区別せず、一つの車椅子釦併用率を設定しても良い。
利用者移動予測部132は、上下釦式のエレベーターにおいて、通常の上下釦だけでなく車椅子利用者用の上下釦も併用する利用者について、上下釦式車椅子釦併用乗降予測部133によって利用者の移動を予測し、通常の上下釦のみを押す利用者について、上下釦式乗降予測部121によって利用者の移動を予測する。
また、利用者移動予測部132は、行先階予約式のエレベーターにおいて、行先階予約端末を操作するときに車椅子利用釦を押して行先階を入力する利用者について、行先階予約式車椅子釦併用乗降予測部134によって利用者の移動を予測し、車椅子利用釦を押さずに行先階を入力する利用者について、行先階予約式乗降予測部123によって利用者の移動を予測する。
利用者移動予測部132は、予測対象(上下釦式、行先階予約式)に応じて、上下釦式用の予測部(上下釦式乗降予測部121および上下釦式車椅子釦併用乗降予測部133の組)と、行先階予約式用の予測部(行先階予約式乗降予測部および行先階予約式車椅子釦併用乗降予測部134の組)とを、適宜選択する。
次に、利用者移動予測方法として、本実施例6において実行される予測処理を、図12および図11を用いて説明する。
図11は、利用者移動予測部132(図6)における行先階予約式乗降予測部123および行先階予約式車椅子釦併用乗降予測部134によって実行される予測処理の一部を示すフローチャートである。
実施例1の予測処理を示す図9のフローチャートのうち、S101、すなわち行先階予約端末の操作に関わる処理が、図11のフローチャートに置き換わる。
図11のフローチャートについて以下説明する。
S301は、図9のS103と同様に、確率的分岐である。すなわち、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される行先階予約式の車椅子釦併用率の確率でS303へ進み、残りの確率すなわち「1−車椅子釦併用率」の確率でS302へ進む。
S302では、車椅子利用釦が併用されることなく、行先階予約端末に行先階が入力される。S302実行後、図11の一連の処理を終了し、図9のS102に進む。
S303では、行先階予約端末に行先階が入力されると共に、車椅子利用釦が押される。S303実行後、図11の一連の処理を終了し、図9のS102に進む。
図12は、利用者移動予測部132(図6)における上下釦式乗降予測部121および上下釦式車椅子釦併用乗降予測部133によって実行される予測処理の一部を示すフローチャートである。
実施例3の予測処理を示す図10のフローチャートのうち、S202、すなわち上下釦の操作に関わる処理が、図12のフローチャートに置き換わる。
図12のフローチャートについて以下説明する。
S401は、図9のS103と同様に、確率的分岐である。すなわち、図10のS201実行後、利用者行動パラメータ設定手段110によって設定される上下釦式の車椅子釦併用率の確率でS403へ進みし、残りの確率すなわち「1−車椅子釦併用率」の確率でS402へ進む。
S402では、車椅子利用者用の上下釦が併用されることなく、利用者の行先階方向の上下釦が押される。S402実行後、図12の一連の処理を終了し、図10のS203に進む。
S403では、利用者の行先階方向の上下釦が押されると共に、車椅子利用者用の上下釦についても行先階の方向の上下釦が押される。S403実行後、図12の一連の処理を終了し、図10のS203に進む。
本実施例6によれば、行先階予約式用の車椅子釦併用率を用いて利用者の行動を予測することにより、行先階予約式エレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる、行先階予約端末に行先階を入力する際に車椅子釦を併用するという行動を行う利用者がいる場合において正確に利用者の移動を予測することができる。従って、実施例5による予測結果を用いて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となったり、群管理制御されるエレベーターの輸送効率が向上したりする。
また、本実施例6によれば、上下釦式用の車椅子釦併用率を用いて利用者の行動を予測することにより、車椅子併用上下釦式のエレベーターシステムにおいて期待される行動とは異なる、車椅子利用者用の上下釦も併用するという行動を行う利用者がいる場合において正確に利用者の移動を予測することができる。従って、実施例5による予測結果を用いて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となったり、エレベーターの群管理制御されるエレベーターの輸送効率が向上したりする。
なお、本実施例6においては、図9のフローチャートのS101を変更したものであるため、行先階予約式用の車椅子釦併用率のほか、前述の自己判断率も考慮されている。行先階予約式用の車椅子釦併用率および自己判断率の内、行先階予約式用の車椅子釦併用率のみ考慮する場合には、自己判断率を0に設定すれば良い。
また、本実施例6においては、図10のフローチャートのS202を変更したものであるため、上下釦式用の車椅子釦併用率のほか、前述の予告灯考慮率も考慮されている。上下釦式用の車椅子釦併用率および予告灯考慮率の内、上下釦式用の車椅子釦併用率のみ考慮する場合には、予告灯考慮率を0に設定すれば良い。
図22は、本発明の実施例7である、上下釦式エレベーターおよび行先階予約式エレベーターの両方に適用可能なエレベーター利用者移動予測装置の構成を示す機能ブロック図である。
エレベーター利用者移動予測装置7は、利用者データ10と、レイアウトデータ20と、エレベーター仕様データ30と、利用者生成部101と、エレベーター運行予測部104と、エレベーター満員判断乗車率を設定できるエレベーター運行パラメータ設定手段141と、利用者満員判断乗車率を設定できる利用者行動パラメータ設定手段110と、利用者移動予測部140と、利用者移動予測部140が備える上下釦式乗降予測部121および行先階予約式乗降予測部123と、出力部105によって構成される。これらの処理部およびデータは相互に接続され、データあるいは信号がやり取りされる。
以下、実施例1〜6とは異なる点、主に、利用者行動パラメータ設定手段110、利用者移動予測部140、エレベーター運行予測部104およびエレベーター運行パラメータ設定手段141について説明する。
エレベーター運行パラメータ設定手段141は、エレベーター満員判断乗車率を設定する。エレベーター満員判断乗車率は、エレベーター運行予測部104におけるエレベーターの運行予測において、エレベーターの満員判断に用いられる。
一般に、エレベーターが満員と判断される場合、ホールでの呼びに応答せず、すでにエレベーターに乗っている利用者の行先階への移動を最優先するようにエレベーターの制御が変更されることが多い。そこで、エレベーター運行予測部104は、エレベーターの乗車人数または荷重に基づいて、満員であると判断すると、運行の制御を変更する。ここで、エレベーターの乗車人数が、エレベーター満員判断乗車率とエレベーター定格定員の積以上となる場合、または、エレベーターの荷重が、エレベーター満員判断乗車率とエレベーター定格積載量の積以上となる場合、エレベーターは満員であると判断される。
利用者行動パラメータ設定手段110は、利用者満員判断乗車率を設定する。利用者満員判断乗車率は、利用者移動予測部140において用いられる、利用者が行うエレベーターに乗車できるかどうかの判断に関わるパラメータである。
このように、本実施例7においては、満員判断に関わるパラメータとして、満員判断乗車率が、エレベーターシステム側と利用者側とで、独立に設定される。
その他の各データおよび各処理部は、実施例1〜4で説明したものと同様である。なお、他に、実施例1〜6で説明した、共連れ乗降予測部154、上下釦両設定乗降予測部144、上下釦式車椅子釦併用乗降予測部133、行先階予約式車椅子釦併用乗降予測部134を加えても良い。
次に、利用者移動予測方法として、本実施例7において実行される予測処理について説明する。なお、主に、他の実施例と異なる点、すなわち、利用者移動予測部140が実行する、利用者行動パラメータ設定手段110で設定される利用者満員判断乗車率を用いた利用者移動予測処理について説明する。
利用者移動予測部140における上下釦式乗降予測部121および行先階予約式乗降予測部123の各予測処理において、利用者満員判断乗車率は、個々の利用者がエレベーターに乗車できたかどうかを判定する乗車判定に用いられる。ここで、乗車判定処理は、図9のS107および図10のS208である。
図23は、本実施例7における乗車判定処理を示すフローチャートである。
S701では、到着した号機eから乗客が降車したあとの乗車人数が、定員c未満かどうかが判定される。なお、本実施例7において、定員cは、エレベーター運行パラメータ設定手段141により設定される利用者満員判断乗車率と号機eの定格定員との積である。号機eの乗車人数が定員c未満の場合(S701のYes)、S702に進み、号機eの乗車人数が定員c以上の場合(S701のNo)、S704に進む。
S702では、到着した号機eのドアが開いているかどうかが判定される。ドアが開いている場合(S702のYes)、S703に進み、ドアが開いていない場合(S702のNo)、S704に進む。ここで、ドアが開かない場合とは、例えば、エレベーター運行予測部104が、満員のため、エレベーターが、待ち客がいる階床を通過すると予測する場合である。なお、上述したように、エレベーター運行予測部104による満員予測には、エレベーター運行パラメータ設定手段141によって設定されるエレベーター満員判断乗車率が用いられる。
S703では、待ち客である利用者を号機eに乗車させ、号機eに乗車成功と予測される。S703実行後、図23の乗車判断処理を終了する。
S704では、利用者が満員と判断するような乗車人数である場合(S701のNo)、満員のためドアが開かなかい場合(S702のNo)、乗車失敗と予測される。S704実行後、図23の乗車判断処理を終了する。
なお、S701において、乗車人数が定員c未満かどうかの判定に替えて、乗客が降車したあとの荷重が、利用者満員判断乗車率とエレベーター定格積載量の積未満かが判定されても良い。
本実施例7によれば、エレベーターの満員状態を考慮して、利用者の移動行動が予測されるので、利用者の移動行動を的確に予測できる。また、満員判断乗車率が、エレベーターシステム側と利用者側とで、独立に設定されるので、満員時に予測されるエレベーター運行状態と、利用者によるエレベーター内の混雑状態に基づく満員状態の判断とが、利用者行動の予測に反映される。これにより、エレベーターの混雑時におけるに利用者の移動行動の予測精度が向上する。
従って、本実施例7による予測結果を用いて、的確なエレベーター計画や的確なエレベーター設計が可能となったり、群管理制御されるエレベーターの輸送効率が向上したりする。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。