JP7212628B2 - ジヒドロキシインドール類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はジヒドロキシインドール類の製造方法に関する。
メラニンは、動物や植物において形成される黄色乃至黒色の色素であり、紫外線吸収機能、ラジカル捕獲機能、酸化防止機能等を有することが知られている。また、メラニンは、生体由来の安全性の高い物質であるので、化粧料、食品、プラスチック製品等に含有させることが広く行われており、例えば、日焼け防止クリームやサングラス等では紫外線吸収剤として使用され、また、食品やプラスチック製品等では酸化防止剤として使用され、更に、白髪染め等では色素として使用されている。
ところで、生体内において、メラニンは、基質化合物である3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)がメラニン生成酵素であるチロシナーゼの触媒作用により酸化されてドーパキノンを経てメラニン前駆体のジヒドロキシインドール類(5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸等)を生成し、このジヒドロキシインドール類が重合することにより生合成される。このようにして生合成されるメラニンは、皮膚や髪等のメラニン産生細胞内に小粒となって存在し、熱濃硫酸や強アルカリを用いなければ溶解しない水や有機溶剤に不溶の安定な高分子化合物である。そのため、例えばメラニンを繊維や皮革等の染料とする場合、メラニンをそのまま添加剤として使用しても、水や有機溶剤に不溶なメラニンを染色対象物の組織に浸透させて染色することはできないので、水溶性のジヒドロキシインドール類を添加剤として使用して染色対象物においてメラニンを形成させるということが行われる。
そのような用途で用いるジヒドロキシインドール類の製造方法として、例えば、特許文献1には、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニンを含有する水溶液にヘキサシアノ鉄(III)酸塩を添加して反応させることによりジヒドロキシインドール類を生成し、得られたジヒドロキシインドール類を含有する水溶液からヘキサシアノ鉄(II)酸塩を錯体化して除去することが開示されている。また、非特許文献1及び2には、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニンを含有する水溶液にヘキサシアノ鉄(III)酸塩を添加して反応させることによりジヒドロキシインドール類を生成し、得られたジヒドロキシインドール類を含有する水溶液に抽剤の酢酸エチルを添加してジヒドロキシインドール類を抽出することが開示されている。
米国特許第5704949号明細書
Wakamatsu,K. and Ito,S. (1988) Analytical Biochemistry 170,335-340. R.Edge,M.d’lschia,E.J.Land,A.Napolitano,S.Navaratham,L.Panzella,A.Pezzella,C.A.Ramsden and P.A.Riley (2006) Pigment Cell Res.19;443-450.
本発明は、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン及びその誘導体の群から選ばれる1種又は2種以上とヘキサシアノ鉄(III)酸塩とを反応させてジヒドロキシインドール類を生成させた水性の第1液を得る工程1と、前記工程1で得た前記第1液と抽剤とを混合して前記抽剤に前記ジヒドロキシインドール類を抽出した油性の第2液を得る工程2と、前記工程2で得た前記第2液と水とを混合して前記抽剤を留去した水性の第3液を得る工程3とを含むジヒドロキシインドール類の製造方法であって、前記工程2の前記ジヒドロキシインドール類の抽出をA槽で行い、前記A槽から前記第2液を排出した後、前記第2液を、B槽に供給し、前記B槽において前記工程3を行うものである。
反応装置の構成を示す図である。 循環濾過を行う装置構成を示す図である。 ワンパス濾過を行う装置構成を示す図である。 精製工程を示す第1の説明図である。 精製工程を示す第2の説明図である。 溶媒置換工程を示す第1の説明図である。 溶媒置換工程を示す第2の説明図である。 溶媒置換工程を示す第3の説明図である。 溶媒置換工程を示す第4の説明図である。
以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係るジヒドロキシインドール類の製造方法は、反応工程(工程1)、精製工程(工程2)、及び溶媒置換工程(工程3)を含む。なお、本明細書において、「3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン:DOPA」、「3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン及びその誘導体の群から選ばれる1種又は2種以上:DOPA類」、「5,6-ジヒドロキシインドール:DHI」、及び「ジヒドロキシインドール類:DHI類」とそれぞれ略記する。
<反応工程(工程1)>
反応工程では、DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩とを反応させてDHI類を生成させた水性の第1液L1を得る。このとき、DOPA類の水溶液又は水性懸濁液のDOPA類液Dと、ヘキサシアノ鉄(III)酸塩の水溶液又は水性懸濁液の酸化剤液Oとを混合することが好ましい。また、DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との反応は、酸化還元反応である。
図1は、反応工程(工程1)で用いる反応装置10の一例を示す。
反応装置10は、反応槽11と酸化剤槽12とを有する。反応槽11の上部には、酸化剤槽12の底部から延びた酸化剤供給管13が導入されている。反応槽11の底部からは排出管14が延びている。反応槽11及び酸化剤槽12にはそれぞれ撹拌機151,152が設けられている。撹拌機151,152の撹拌翼151a,152aは、低粘度液を十分に撹拌できるものであればよく、例えば、パドル翼、ディスクタービン、傾斜パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。反応槽11には槽内を温度調整するためのジャケット16が設けられている。
具体的には、まず、反応槽11に水を仕込む。水には、例えばイオン交換水や蒸留水を用いることが好ましい。水は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することにより溶存酸素濃度を低減したものを用いることが好ましい。水の溶存酸素濃度は、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以下である。この水の溶存酸素濃度は、市販の溶存酸素計を用いて測定される(以下同様)。
反応槽11内は、水を仕込む前又は後に、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することにより酸素濃度を低減することが好ましい。反応槽11内の気相の酸素濃度は、好ましくは1.0体積%以下、最も好ましくは0体積%である。反応槽11内の気相の酸素濃度は、市販の酸素濃度計により測定される(以下同様)。反応槽11内の気相への不活性ガスの供給は、この反応工程の操作において継続して行うことが好ましい。
次いで、反応槽11に設けられた撹拌機151を起動させて水を撹拌しながらDOPA類を投入して溶解又は分散させることによりDOPA類液Dを得る。なお、このDOPA類液Dの調製方法は好適な具体例であって、先にDOPA類を反応槽11に仕込み、次いで水を反応槽11に供給してもよいし、水及びDOPA類を同時に反応槽11に供給してもよいし、或いは、水及びDOPA類を、それぞれ分割して、交互に反応槽11に供給してもよい。
DOPA類のうちのDOPAとしては、D-DOPA(3,4-ジヒドロキシ-D-フェニルアラニン)及びL-DOPA(3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン)が挙げられる。DOPA類のうちのDOPA誘導体としては、例えば、2-3’,4’-ジヒドロキシフェニルエチルアミン誘導体(N-オクタノイル-4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオール、N-オクタノイル-4,2-(3,4-ジヒドロフェニル)エチルアミン等)、4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオール(ドーパミン)、D-DOPAの塩(カリウム塩、ナトリウム塩など)、L-DOPAの塩(カリウム塩、ナトリウム塩など)、DOPAの低級(炭素数1~4)アルキルエステル、α-低級(炭素数1以上4以下)アルキルDOPA、及びこれらの異性体等が挙げられる。なお、DOPA類液Dには、DOPA類以外に安息香酸塩類等DOPA類に対して不活性な化学物質を含有させてもよい。
DOPA類液DにおけるDOPA類の含有量は、高い生産性を得る観点から、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上であり、また、副反応の進行を抑制してDHI類の収率を高める観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下である。DOPA類液DにおけるDOPA類の含有量は、好ましくは0.10質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.20質量%以上0.70質量%以下、更に好ましくは0.30質量%以上0.50質量%以下である。
また、酸化剤槽12に水を仕込む。水としては、例えばイオン交換水や蒸留水を用いることが好ましい。水は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することにより溶存酸素濃度を低減したものを用いることが好ましい。水の溶存酸素濃度は、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以下である。
次いで、酸化剤槽12に設けられた撹拌機152を起動させて水を撹拌しながらヘキサシアノ鉄(III)酸塩を投入して溶解又は分散させることにより酸化剤液Oを得る。
ヘキサシアノ鉄(III)酸塩としては、例えば、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸ナトリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸リチウムなどのヘキサシアノ鉄(III)酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。ヘキサシアノ鉄(III)酸塩は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
酸化剤液Oにおけるヘキサシアノ鉄(III)酸塩の含有量は、反応を促進させてDHI類の収率を高める観点から、DOPA類液DにおけるDOPA類のモル数に対して、好ましくは2.0当量以上、より好ましくは2.6当量以上、更に好ましくは3.5当量以上であり、また、副反応の進行を抑制してDHI類の収率を高める観点から、好ましくは6.0当量以下、より好ましくは5.5当量以下、更に好ましくは4.6当量以下である。酸化剤液Oにおけるヘキサシアノ鉄(III)酸塩の含有量は、DOPA類液DにおけるDOPA類のモル数に対して、好ましくは2.0当量以上6.0当量以下、より好ましくは2.6当量以上5.5当量以下、更に好ましくは3.5当量以上4.6当量以下である。
酸化剤液Oは、反応時のpHを弱塩基性に保って反応を促進させる観点から、塩基剤を含有することが好ましい。塩基剤としては、例えば、炭酸水素カリウムや炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素イオンのアルカリ金属塩、炭酸カリウムや炭酸ナトリウムなどの炭酸イオンのアルカリ金属塩等が挙げられる。塩基剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、酸化剤液Oは、その他に安息香酸塩類等ヘキサシアノ鉄(III)酸塩に対して不活性な化学物質を含有してもよい。
酸化剤液Oにおける塩基剤の含有量は、反応時のpHを適度に弱塩基性に保って反応を促進させる観点から、DOPA類液DにおけるDOPA類のモル数に対して、好ましくは3.9当量以上、より好ましくは5.1当量以上、更に好ましくは5.9当量以上であり、また、同様の観点から、好ましくは9.0当量以下、より好ましくは7.8当量以下、更に好ましくは6.3当量以下である。酸化剤液Oにおける塩基剤の含有量は、DOPA類液DにおけるDOPA類のモル数に対して、好ましくは3.9当量以上9.0当量以下、より好ましくは5.1当量以上7.8当量以下、更に好ましくは5.9当量以上6.3当量以下である。
続いて、反応槽11において撹拌機151でDOPA類液Dを撹拌しながら、反応槽11内のDOPA類液Dに、酸化剤槽12から酸化剤供給管13を介して酸化剤液Oを滴下する。
酸化剤液Oの滴下時間は、大量生産への適用可能性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上であり、また、副反応の進行を抑制してDHI類の収率を高める観点から、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは10分以下である。酸化剤液Oの滴下時間は、好ましくは1分以上1時間以下、より好ましくは3分以上30分以下、更に好ましくは5分以上10分以下である。
そして、上記のDOPA類液Dへの酸化剤液Oの滴下により、DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との酸化還元反応を進行させてDHI類を生成する。なお、本実施形態では、反応槽11内のDOPA類液Dに、酸化剤槽12からの酸化剤液Oを添加する構成としたが、DOPA類液Dと酸化剤液Oとを混合する構成であれば、特にこれに限定されるものではなく、例えば、酸化剤液OにDOPA類液Dを添加する構成であってもよく、また、液槽に、DOPA類液D及び酸化剤液Oを同時に又は交互に供給する構成であってもよい。
DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との反応温度は、反応速度を高めて反応時間を短くする観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、副反応の進行を抑制してDHI類の収率を高める観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との反応温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは25℃以上45℃以下、更に好ましくは30℃以上40℃以下である。なお、この反応温度は、反応槽11に設けられたジャケット16による液温設定により制御することができ、また、反応槽11でのDOPA類液Dの調製時に、DOPA類液Dの液温をこの反応温度に設定しておくことが好ましい。
DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との反応時間(熟成時間)は、DHI類の収率を高める観点から、酸化剤液Oの滴下開始時から、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは4時間以上であり、また、生産性を高める観点から、好ましくは22時間以下、より好ましくは6時間以下、更に好ましくは5時間以下である。DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との反応時間は、好ましくは2時間以上22時間以下、より好ましくは3時間以上6時間以下、更に好ましくは4時間以上5時間以下である。
生成するDHI類は、原料のDOPA類に対応するが、例えば、DHI及びその塩(カリウム塩、ナトリウム塩など)、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸及びその塩(カリウム塩、ナトリウム塩など)等が挙げられる。DHI類は、これらのうちの1種又は2種以上を含有することが好ましい。
以上のようにして反応槽11には、DHI類を含有する水性の第1液L1が得られる。
得られた第1液L1は、DHI類を安定化させる観点から、pH調整剤を添加してpH調整を行うことが好ましい。pH調整剤としては、例えば、リン酸水溶液、希硫酸、希塩酸等が挙げられる。pH調整剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。pH調整後の第1液L1のpHは、DHI類を安定化させてその収率を高める観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上、更に好ましくは3.5以上であり、また、後述の濾過時の濾過速度を高めると共に抽出時に良好な分相を得る観点から、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.3以下、更に好ましくは5.0以下である。pH調整後の第1液L1のpHは、好ましくは3.0以上5.5以下、より好ましくは3.3以上5.3以下、更に好ましくは3.5以上5.0以下である。
得られた第1液L1は、不純物を除去する観点から、濾過を行うことが好ましい。濾過方法としては、図2Aに示すように、濾過器171が介設された循環配管181を反応槽11に設け、これに第1液L1を循環させて循環濾過し、濾過後の濾液である第1液L1を反応槽11に貯留する方法がある。また、図2Bに示すように、反応槽11から延びる濾過配管182に濾過器172を介設すると共に濾過配管182を濾液槽19に接続し、これに第1液L1を流通させてワンパス濾過し、濾過後の濾液である第1液L1を濾液槽19に貯留する方法がある。濾過器171,172に設けられる濾材の目開きは、濾過速度を高める観点から、好ましくは、0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1.0μm以上であり、また、不純物を除去する観点から、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、更に好ましくは1.5μm以下である。濾過器171,172に設けられる濾材の目開きは、0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下、更に好ましくは1.0μm以上1.5μm以下である。濾材は、水不溶性副生成物の除去の観点から、特に材質は限定されないが、濾過速度を高める観点から、親水性材料で形成されていることが好ましい。
<精製工程(工程2)>
精製工程(工程2)では、反応工程(工程1)で得た第1液L1と抽剤とを混合して抽剤にDHI類を抽出した油性の第2液L2を得る。
具体的な一例としては、図3Aに示すように、反応工程で得た第1液L1を貯留するA槽20Aにおいて、第1液L1を撹拌しながら抽剤を添加することにより、抽剤にDHI類を抽出し、また、このとき下層のシアン化物が残留する水相の第1液L1と上層の抽剤にDHI類を抽出した油相の第2液L2とに相分離し、その後、図3Bに示すように、下層の第1液L1をA槽20Aの底部から排出することにより油性の第2液L2を得る。ここで、A槽20Aは、反応工程で用いた図1及び2Aに示す反応槽11であってもよく、また、図2Bに示す濾液貯槽19であってもよく、更に、それらから第1液L1を移送した別の液槽であってもよい。なお、本実施形態では、第1液L1に抽剤を添加する構成としたが、反応槽11から第1液L1を移送する場合には、第1液L1と抽剤とを混合する構成であれば、特にこれに限定されるものではなく、例えば、抽剤に第1液L1を添加する構成であってもよく、また、液槽に、第1液L1及び抽剤を同時に又は交互に供給する構成であってもよい。
A槽20A内は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することにより酸素濃度を低減することが好ましい。A槽20A内の気相の酸素濃度は、好ましくは1.0体積%以下、最も好ましくは0体積%である。A槽20A内の気相への不活性ガスの供給は、この精製工程の操作において継続して行うことが好ましい。
抽剤は、分層性の観点から、オクタノール/水分配係数(LogP)が0以上4.0以下の有機溶剤であることが好ましい。抽剤としては、例えば、オクタノール/水分配係数が0.90未満の有機溶剤である酢酸エチル(0.73)、ジエチルエーテル(0.89);オクタノール/水分配係数が0.90よりも大きい有機溶剤であるメチルイソブチルケトン(1.4)、ジクロロメタン(1.3)、シクロヘキサン(3.4)等が挙げられる(括弧内の数値はオクタノール/水分配係数)。抽剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、抽出効率を高める観点から、オクタノール/水分配係数が好ましくは1.5以下、より好ましくは0.90未満の有機溶剤を含めて用いることがより好ましく、酢酸エチルを含めて用いることが更に好ましい。なお、第1液L1には抽剤と併せて安息香酸塩類やリン酸塩類等DHI類に対して不活性な化学物質を添加してもよい。
第1液L1に対する抽剤の混合量は、DHI類の収率を高める観点から、反応終了時における第1液L1の体積に対して、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは50体積%以上であり、また、廃液量を低減して製造コストを削減する観点から、好ましくは400体積%以下、より好ましくは200体積%以下、更に好ましくは100体積%以下である。第1液L1に対する抽剤の混合量は、反応終了時における第1液L1の体積に対して、好ましくは20体積%以上400体積%以下、より好ましくは30体積%以上200体積%以下、更に好ましくは50体積%以上100体積%以下である。
DHI類の収率を高める観点から、好ましくは第1液L1へ抽剤を添加した後又は抽剤を添加しながら、それらの混合液を撹拌する。
抽剤を添加した後、混合液を撹拌する場合、混合液の撹拌時間(抽出時間)は、DHI類の収率を高める観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは20分以上であり、また、生産性を高める観点から、好ましくは120分以下、より好ましくは90分以下、更に好ましくは60分以下である。混合液の撹拌時間(抽出時間)は、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは15分以上90分以下、更に好ましくは20分以上60分以下である。
また、抽剤を添加しながら第1液L1を撹拌する場合、第1液L1の抽剤添加開始時からの撹拌時間(抽出時間)は、DHI類の収率を高める観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは20分以上であり、また、生産性を高める観点から、好ましくは120分以下、より好ましくは90分以下、更に好ましくは60分以下である。第1液L1の撹拌時間(抽出時間)は、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは15分以上90分以下、更に好ましくは20分以上60分以下である。
上記の抽剤を混合した後、形成する油性の第2液L2は、不純物を除去する観点から、好ましくは水性の液との分離操作を行い、その後、得られた第2液L2は、更に不純物を除去する観点から、洗浄水による洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法としては、得られた第2液L2を貯留するA槽20Aにおいて、第2液L2を撹拌しながら洗浄水を添加することにより第2液L2に洗浄水を十分に接触させた後、相分離した上層の第2液L2の油相及び下層の水相のうちの後者をA槽20Aの底部から排出する方法がある。
第2液L2への洗浄水の添加量は、洗浄水のpHを中性付近に安定に保つ観点から、第2液L2の体積に対して、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは30体積%以上であり、また、DHI類の収率を高める観点から、好ましくは100体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは50体積%以下である。第2液L2への洗浄水の添加量は、第2液L2の体積に対して、好ましくは10体積%以上100体積%以下、より好ましくは20体積%以上80体積%以下、更に好ましくは30体積%以上50体積%以下である。
第2液L2の洗浄水での洗浄時間は、洗浄水のpHを中性付近に安定に保つ観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、更に好ましくは60分以上であり、また、DHI類の収率を高める観点から、好ましくは120分以下、より好ましくは105分以下、更に好ましくは90分以下である。第2液L2の洗浄水での洗浄時間は、好ましくは30分以上120分以下、より好ましくは45分以上105分以下、更に好ましくは60分以上90分以下である。
洗浄水には、pHを中性付近に調整する観点から、多塩基酸塩を含有させてもよい。多塩基酸塩としては、例えば、リン酸のカリウム塩、クエン酸のカリウム塩、炭酸のカリウム塩、リン酸のナトリウム塩、クエン酸のナトリウム塩、炭酸のナトリウム塩等が挙げられる。多塩基酸は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、リン酸のカリウム塩(リン酸水素二カリウム及びリン酸水素二カリウム)を含めて用いることがより好ましい。
<溶媒置換工程(工程3)>
溶媒置換工程(工程3)では、精製工程(工程2)で得た第2液L2と水Wとを混合して抽剤を留去することにより溶媒置換を行い、水性の第3液L3であるDHI類を含有する水溶液又は水分散液のDHI類液を得る。また、生産時の効率性の観点からは、この溶媒置換と共に濃度調整を行うことが好ましい。
具体的には、まず、精製工程で得た第2液L2をA槽20Aから排出し、それを移送した後、その第2液L2を、B槽20Bに供給して貯留する。
このとき、図4Aに示すように、精製工程で得た第2液L2をA槽20Aから排出し、それをA槽20Aとは別のB槽20Bに供給して貯留してもよい。ここで、B槽20Bは、槽内を洗浄して内壁にシアン化物の付着物が実質的にない液槽であることが好ましく、その槽内の洗浄を水洗で行った液槽であることがより好ましい。
また、図4Bに示すように、精製工程で得た第2液L2をA槽20Aから排出し、それを一旦は他の清浄な別の液槽21に供給して貯留しておき、一方、精製工程を行って第2液L2を排出した後にA槽20Aの槽内を洗浄して内壁のシアン化物の付着物の残存を実質的になくし、その槽内を洗浄したA槽20AをB槽20Bとして、液槽21から第2液L2をB槽20B(A槽20A)に供給して貯留してもよい。B槽20Bとして用いるA槽20Aの槽内の洗浄も水洗で行うことが好ましい。
なお、槽内の洗浄方法は、特に限定されるものではなく、槽内に洗浄液を貯留して撹拌してもよく、また、槽内の内壁に洗浄液を噴射してもよく、更に、槽内の内壁をブラシ等の洗浄具で擦ってもよい。
B槽20Bの槽内は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することにより酸素濃度を低減することが好ましい。B槽20Bの槽内の気相の酸素濃度は、好ましくは1.0体積%以下、最も好ましくは0体積%である。B槽20Bの槽内の気相への不活性ガスの供給は、この溶媒置換工程の操作において継続して行うことが好ましい。
次いで、第2液L2に水Wを添加する。なお、本実施形態では、B槽20Bに第2液L2を供給した後に水Wを添加する構成としたが、第2液L2と水Wとを混合する構成であれば、特にこれに限定されるものではなく、例えば、B槽20Bに水Wを供給した後に第2液L2を添加する構成であってもよく、また、B槽20Bに、第2液L2及び水Wを同時に又は交互に供給する構成であってもよい。
これに続いて、図4Cに示すように、B槽20Bにおいて水Wを添加した第2液L2を加熱することにより抽剤を留去させて抽剤を水Wに溶媒置換する。有機溶剤の濃度を低減する観点からは、この水Wの添加及び抽剤の留去による溶媒置換を複数回行うことが好ましい。溶媒置換の回数は好ましくは2回以上4回以下である。
添加する水Wには、例えばイオン交換水や蒸留水を用いる。水Wは、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することにより溶存酸素濃度を低減したものを用いることが好ましい。水Wの溶存酸素濃度は、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以下である。
初回の溶媒置換の際の第2液L2への水Wの添加は、B槽20Bに供給した後の第2液L2に対して行ってもよく、また、A槽20Aから排出してB槽20Bに供給されるまでの間の第2液L2に対して行ってもよい。なお、2回目以降の溶媒置換の際の水Wの添加は、B槽20Bに残留した液体に対して行えばよい。
水Wの添加量は、効率的に溶媒置換を行う観点から、初回の溶媒置換における第2液L2の体積に対して、又は、2回目以降の溶媒置換におけるB槽20Bに残留した液体の体積に対して、好ましくは50体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは100体積%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは150体積%以下、より好ましくは120体積%以下、更に好ましくは110体積%以下である。水Wの添加量は、初回の溶媒置換における第2液L2の体積に対して、又は、2回目以降の溶媒置換におけるB槽20Bに残留した液体の体積に対して、好ましくは50体積%以上150体積%以下、より好ましくは80体積%以上120体積%以下、更に好ましくは100体積%以上110体積%以下である。
抽剤を留去させるときの液温は、抽剤の留去速度を高める観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、また、DHI類の熱分解を抑制する観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。抽剤を留去させるときの液温は、好ましくは40℃以上90℃以下、より好ましくは50℃以上85℃以下、更に好ましくは60℃以上80℃以下である。なお、留去した抽剤の蒸気は、熱交換器等により凝縮させて回収することが好ましい。
初回の溶媒置換における抽剤を留去させるときの圧力は、抽剤の留去速度を高める観点から、好ましくは大気圧(101.325kPa(abs))以下、より好ましくは90kPa(abs)以下、更に好ましくは80kPa(abs)以下である。2回目以降の溶媒置換における抽剤を留去させるときの圧力は、抽剤の留去速度を高める観点から、好ましくは80kPa(abs)以下、より好ましくは40kPa(abs)以下、更に好ましくは10kPa(abs)以下である。
そして、図4Dに示すように、溶媒置換後にB槽20Bに残留した液体に水及び水溶性溶媒を添加して濃度調整することにより水性の第3液L3であるDHI類液の形でDHI類を得ることができる。水溶性溶媒としては、例えばエタノール等が挙げられる。
得られた第3液L3のDHI類液におけるDHI類の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。DHI類の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される。
得られた第3液L3のDHI類液における全シアン濃度は、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは5mg/L以下、更に好ましくは1mg/L以下、より更に好ましくは0.5mg/L以下である。この全シアン濃度は、第3液L3中のシアン化物イオン、シアン化水素、金属シアン化物、金属シアノ錯体、及び有機シアノ化合物における全てのシアンの含有量であって、ピクリン酸法により測定される。
また、得られた第3液L3のDHI類液において、DHI類1質量部に対するシアンの含有量は、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは5mg/L以下 より更に好ましくは1mg/L以下である。 このシアン量は、ピクリン酸法により測定される。
得られた第3液L3のDHI類液における有機溶剤の含有量は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。有機溶剤の含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定される。
ところで、溶媒置換後の第3液L3のDHI類液を染毛等の染色用途で用いる場合、DHI類の含有量が1質量%程度であることが望まれる。従って、かかる観点からは、溶媒置換前に第2液L2を濃縮することが好ましい。
第2液L2の濃縮操作は、精製工程で得た第2液L2をA槽20Aにおいて抽剤を留去させることにより濃縮した後、濃縮した第2液L2をA槽20Aから排出し、それをB槽20Bに供給して貯留してもよい。また、精製工程で得た第2液L2をA槽20Aから排出し、それをB槽20Bに供給して貯留した後、B槽20Bにおいて抽剤を留去させることにより第2液L2を濃縮してもよい。更に、精製工程で得た第2液L2をA槽20Aから排出し、それを別の液槽に供給して抽剤を留去させることにより濃縮した後にその液槽から排出し、濃縮した第2液L2をB槽20Bに供給して貯留してもよい。
第2液L2を濃縮するときの液温は、抽剤の留去速度を高める観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、また、DHI類の熱分解を抑制する観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。第2液L2を濃縮するときの液温は、好ましくは40℃以上90℃以下、より好ましくは50℃以上85℃以下、更に好ましくは60℃以上80℃以下である。
第2液L2を濃縮するときの圧力は、抽剤の留去速度を高める観点から、好ましくは大気圧(101.325kPa(abs))以下、より好ましくは100kPa(abs)以下、更に好ましくは90kPa(abs)以下である。
ところで、非特許文献1及び2に開示された方法で製造されたジヒドロキシインドール類を添加剤として使用するためには、人体に対する安全性を確保する観点から、シアン化物及び有機溶剤の含有量を低減する必要がある。これらのうちシアン化物の含有量は、ジヒドロキシインドール類を含有する水溶液から抽剤を用いてジヒドロキシインドール類を抽出することにより低減することができる。また、有機溶剤である抽剤の含有量は、抽剤を留去させると共に水を添加して溶媒置換することにより低減することができる。ところが、抽剤を水に溶媒置換したとき、低減したはずのシアン化物の含有量が上昇するという問題が見出された。
これに対し、以上の実施形態に係るDHI類の製造方法によれば、精製工程のDHI類の抽出をA槽20Aで行い、A槽20Aから第2液L2を排出した後、第2液L2をB槽20Bに供給し、B槽20Bにおいて溶媒置換工程の溶媒置換を行うことにより、精製工程において抽剤にDHI類を抽出した後に溶媒置換工程において抽剤を水Wで溶媒置換したときにおけるシアン化物の含有量の上昇を抑止することができる。
この理由については定かではないが、精製工程のDHI類の抽出をA槽20Aで行い、引き続きA槽20Aにおいて溶媒置換工程の溶媒置換を行った場合、精製工程においてシアン化物を含有する水性の第1液L1が接触してA槽20Aの内壁にシアン化物が付着し、溶媒置換工程においてそのA槽20Aの内壁に付着したシアン化物が溶媒置換のために添加された水に再溶解し、そのために抽剤へのDHI類の抽出によって低減したはずのシアン化物の含有量が溶媒置換後に上昇するものであると考えられる。そのため、実施形態に係るDHI類の製造方法では、精製工程のDHI類の抽出をA槽20Aで行い、A槽20Aから第2液L2を排出して内壁に実質的にシアン化物の付着物のないB槽20Bに供給し、そのB槽20Bにおいて溶媒置換工程の溶媒置換を行うことにより、シアン化物が溶媒置換のために添加された水Wに溶解することもなく、溶媒置換工程後のシアン化物の含有量の上昇を抑止することができるのであると推測される。
上述した実施形態に関し、更に以下の構成を開示する。
<1>DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩とを反応させてDHI類を生成させた水性の第1液を得る工程1と、前記工程1で得た前記第1液と抽剤とを混合して前記抽剤に前記DHI類を抽出した油性の第2液を得る工程2と、前記工程2で得た前記第2液と水とを混合して前記抽剤を留去した水性の第3液を得る工程3と、を含むDHI類の製造方法であって、前記工程2の前記DHI類の抽出をA槽で行い、前記A槽から前記第2液を排出した後、前記第2液を、B槽に供給し、前記B槽において前記工程3を行うDHI類の製造方法。
<2>前記DOPA類が、D-DOPA、L-DOPA、2-3’,4’-ジヒドロキシフェニルエチルアミン誘導体、4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオール、D-DOPAのカリウム塩及びナトリウム塩、L-DOPAのカリウム塩及びナトリウム塩、DOPAの低級(炭素数1~4)アルキルエステル、α-低級(炭素数1以上4以下)アルキルDOPA、並びにこれらの異性体のうちの1種又は2種以上を含む、<1>に記載された製造方法。
<3>前記ヘキサシアノ鉄(III)酸塩が、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸ナトリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸リチウムのうちの1種又は2種以上を含む、<1>又は<2>に記載された製造方法。
<4>前記工程1において、前記DOPA類を含有する水溶液又は水性懸濁液のDOPA類液と前記ヘキサシアノ鉄(III)酸塩を含有する水溶液又は水性懸濁液の酸化剤液とを混合する、<1>乃至<3>のいずれかに記載された製造方法。
<5>前記DOPA類液における前記DOPA類の含有量が、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下である、<4>に記載された製造方法。
<6>前記酸化剤液における前記ヘキサシアノ鉄(III)酸塩の含有量が、前記DOPA類液における前記DOPA類のモル数に対して、好ましくは2.0当量以上、より好ましくは2.6当量以上、更に好ましくは3.5当量以上であり、また、好ましくは6.0当量以下、より好ましくは5.5当量以下、更に好ましくは4.6当量以下である、<4>又は<5>に記載された製造方法。
<7>前記酸化剤液に塩基剤を含有させる、<4>乃至<6>のいずれかに記載された製造方法。
<8>前記塩基剤が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムのうちの1種又は2種以上を含む、<7>に記載された製造方法。
<9>前記酸化剤液における前記塩基剤の含有量が、DOPA類液におけるDOPA類のモル数に対して、好ましくは3.9当量以上、より好ましくは5.1当量以上、更に好ましくは5.9当量以上であり、また、好ましくは9.0当量以下、より好ましくは7.8当量以下、更に好ましくは6.3当量以下である、<7>又は<8>に記載された製造方法。
<10>前記DOPA類液を撹拌しながら、前記DOPA類液に、前記酸化剤液を滴下する、<4>乃至<9>のいずれかに記載された製造方法。
<11>前記酸化剤液の滴下時間が、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上であり、また、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは10分以下である、<10>に記載された製造方法。
<12>前記DOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩との反応温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である、<1>乃至<11>のいずれかに記載された製造方法。
<13>前記DHI類が、DHI、DHIのカリウム塩及びナトリウム塩、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、並びに5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸のカリウム塩及びナトリウム塩のうちの1種又は2種以上を含む、<1>乃至<12>のいずれかに記載された製造方法。
<14>前記第1液にpH調整剤を添加してpH調整を行う、<1>乃至<13>のいずれかに記載された製造方法。
<15>前記pH調整後の前記第1液のpHが、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上、更に好ましくは3.5以上であり、また、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.3以下、更に好ましくは5.0以下である、<13>又は<14>に記載された製造方法。
<16>前記第1液に濾過を行う、<1>乃至<15>のいずれかに記載された製造方法。
<17>前記第1液を、濾過器が介設された循環配管に循環させて循環濾過する、<16>に記載された製造方法。
<18>前記第1液を、濾過器が介設された濾過配管に流通させてワンパス濾過する、<16>に記載された製造方法。
<19>前記濾過器に設けられる濾材の目開きが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、更に好ましくは1.5μm以下である、<17>又は<18>に記載された製造方法。
<20>前記工程2において、前記A槽内の酸素濃度を低減する、<1>乃至<19>のいずれかに記載された製造方法。
<21>前記A槽内の酸素濃度の低減を、前記A槽内に不活性ガスを供給することにより行う、<20>に記載された製造方法。
<22>前記A槽内への前記不活性ガスの供給を、前記工程2の操作において継続して行う、<21>に記載された製造方法。
<23>前記A槽内の気相の酸素濃度が、好ましくは1.0体積%以下、最も好ましくは0体積%である、<20>乃至<22>のいずれかに記載された製造方法。
<24>前記抽剤が、オクタノール/水分配係数が0以上4.0以下の有機溶剤を含む、<1>乃至<23>のいずれかに記載された製造方法。
<25>前記抽剤が、オクタノール/水分配係数が、好ましくは0以上1.5以下、より好ましくは0以上0.90未満の有機溶剤を含む、<1>乃至<24>のいずれかに記載された製造方法。
<26>前記抽剤が、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、及びシクロヘキサンのうちの1種又は2種以上を含む、<1>乃至<25>のいずれかに記載された製造方法。
<27>前記抽剤が酢酸エチルを含む、<25>又は<26>に記載された製造方法。
<28>前記第1液への前記抽剤の添加量が、反応終了時における前記第1液の体積に対して、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは50体積%以上であり、また、好ましくは400体積%以下、より好ましくは200体積%以下、更に好ましくは100体積%以下である、<1>乃至<27>のいずれかに記載された製造方法。
<29>前記第1液と前記抽剤とを混合した後、又は、前記第1液へと前記抽剤を添加しながら、前記第1液を撹拌する、<1>乃至<28>のいずれかに記載された製造方法。
<30>前記第1液の撹拌時間(抽出時間)が、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは20分以上であり、また、好ましくは120分以下、より好ましくは90分以下、更に好ましくは60分以下である、<29>に記載された製造方法。
<31>前記第2液に洗浄水による洗浄を行う、<1>乃至<30>のいずれかに記載された製造方法。
<32>前記第2液の前記洗浄水による洗浄を、前記第2液を撹拌しながら前記洗浄水を添加することにより前記第2液に前記洗浄水を十分に接触させた後、前記第2液の油相及び前記洗浄水の水相に相分離させることにより行う、<31>に記載された製造方法。
<33>前記第2液への前記洗浄水の添加量が、前記第2液の体積に対して、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは100体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは50体積%以下である、<32>に記載された製造方法。
<34>前記第2液の前記洗浄水での洗浄時間が、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、更に好ましくは60分以上であり、また、好ましくは120分以下、より好ましくは105分以下、更に好ましくは90分以下である、<31>乃至<33>のいずれかに記載された製造方法。
<35>前記洗浄水が多塩基酸塩を含有する、<31>乃至<34>のいずれかに記載された製造方法。
<36>前記多塩基酸塩が、リン酸のカリウム塩、クエン酸のカリウム塩、炭酸のカリウム塩、リン酸のナトリウム塩、クエン酸のナトリウム塩、及び炭酸のナトリウム塩のうちの1種又は2種以上を含む、<35>に記載された製造方法。
<37>前記B槽が、前記A槽とは別の液槽である、<1>乃至<36>のいずれかに記載された製造方法。
<38>前記B槽が槽内を洗浄した槽である、請求項37に記載された製造方法。
<39>前記B槽が、前記工程2を行って前記第2液を排出した後に槽内を洗浄した前記A槽である、<1>乃至<36>のいずれかに記載された製造方法。
<40>前記B槽の槽内の洗浄を水洗で行う、<38>又は<39>に記載された製造方法。
<41>前記工程3において、前記B槽内の酸素濃度を低減する、<1>乃至<40>のいずれかに記載された製造方法。
<42>前記B槽内の酸素濃度の低減を、前記B槽内に不活性ガスを供給することにより行う、<41>に記載された製造方法。
<43>前記B槽内への前記不活性ガスの供給を、前記工程3の操作において継続して行う、<42>に記載された製造方法。
<44>前記B槽内の気相の酸素濃度が、好ましくは1.0体積%以下、最も好ましくは0体積%である、<41>乃至<43>のいずれかに記載された製造方法。
<45>前記水の溶存酸素濃度が、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以下である、<1>乃至<44>のいずれかに記載された製造方法。
<46>初回の前記第2液への前記水の添加を、前記B槽に供給した後の前記第2液に対して行う、<1>乃至<45>のいずれかに記載された製造方法。
<47>初回の前記第2液への前記水の添加を、前記A槽から排出して前記B槽に供給されるまでの間の前記第2液に対して行う、<1>乃至<45>のいずれかに記載された製造方法。
<48>前記水の添加量が、前記第2液の体積に対して、好ましくは50体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは100体積%以上であり、また、好ましくは150体積%以下、より好ましくは120体積%以下、更に好ましくは110体積%以下である、<1>乃至<47>のいずれかに記載された製造方法。
<49>前記抽剤を留去させるときの液温が、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である、<1>乃至<48>のいずれかに記載された製造方法。
<50>初回の前記抽剤を留去させるときの圧力が、好ましくは大気圧(101.325kPa(abs))以下、より好ましくは90kPa(abs)以下、更に好ましくは80kPa(abs)以下である、<1>乃至<49>のいずれかに記載された製造方法。
<51>前記第2液への前記水の添加及び前記抽剤の留去を複数回行う、<1>乃至<50>のいずれかに記載された製造方法。
<52>前記第2液への前記水の添加及び前記抽剤の留去を2回以上4回以下行う、<51>に記載された製造方法。
<53>2回目以降の前記抽剤を留去させるときの圧力が、好ましくは80kPa(abs)以下、より好ましくは40kPa(abs)以下、更に好ましくは10kPa(abs)以下である、<51>又は<52>に記載された製造方法。
<54>前記水の添加及び前記抽剤の留去の後に前記B槽に残留した液体に水及び水溶性溶媒を添加して濃度調整することにより前記第3液を得る、<1>乃至<53>のいずれかに記載された製造方法。
<55>前記水溶性溶媒がエタノールを含む、<54>に記載された製造方法。
<56>前記第3液における前記DHI類の含有量が、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である、<1>乃至<55>のいずれかに記載された製造方法。
<57>前記第3液における全シアン濃度が、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは5mg/L以下、更に好ましくは1mg/L以下、より更に好ましくは0.5mg/L以下である、<1>乃至<56>のいずれかに記載された製造方法。
<58>前記第3液における前記DHI類1質量部に対するシアンの含有量が、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは5mg/L以下 より更に好ましくは1mg/L以下である、<1>乃至<57>のいずれかに記載された製造方法。
<59>前記第3液における有機溶剤の含有量が、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である、<1>乃至<58>のいずれかに記載された製造方法。
<60>前記水の添加及び前記抽剤の留去の前に前記第2液を濃縮する、<1>乃至<59>のいずれかに記載された製造方法。
<61>前記第2液の濃縮操作では、前記工程2で得た前記第2液を前記A槽において前記抽剤を留去させることにより濃縮した後、濃縮した前記第2液を前記A槽から排出し、それを前記B槽に供給して貯留する、<60>に記載された製造方法。
<62>前記第2液の濃縮操作では、前記工程2で得た前記第2液を前記A槽から排出し、それを前記B槽に供給して貯留した後、前記B槽において前記抽剤を留去させることにより前記第2液を濃縮する、<60>に記載された製造方法。
<63>前記第2液の濃縮操作では、前記工程2で得た前記第2液を前記A槽から排出し、それを別の液槽に供給して前記抽剤を留去させることにより濃縮した後にその液槽から排出し、濃縮した前記第2液を前記B槽に供給して貯留する、<60>に記載された製造方法。
(DHI水溶液の製造)
以下の実施例1~4及び比較例1~2のDHI水溶液の製造を行った。なお、いずれの工程も窒素雰囲気下にて行った。それぞれの内容については表1にも示す。
<実施例1>
A槽として、アンカー翼を有する撹拌機及び温度調節用のジャケットが設けられた容量が300Lであり、材質がSUS製の反応槽を用い、そのA槽に窒素ガスを継続的に供給し、そこに窒素ガスを吹き込んで溶存酸素濃度を1.0mg/L以下にした水を仕込んだ。撹拌機を起動させてA槽内で水を撹拌しながらDOPAを投入して溶解させることにより、濃度が0.33質量%のDOPA水溶液を175L調製した。このとき、ジャケットによる加熱によりDOPA水溶液の液温を35℃に調整した。
また、撹拌機が設けられた酸化剤槽に水を仕込んだ。撹拌機を起動させて酸化剤槽内で水を撹拌しながらヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム及び炭酸水素カリウムを投入して溶解させることにより、濃度が16.8質量%のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液(酸化剤液)を25.2L調製した。このヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液におけるヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムの含有量は、DOPA水溶液におけるDOPAのモル数に対して4.0当量である。また、このヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液における塩基剤の炭酸水素カリウムの含有量は、DOPA水溶液におけるDOPAのモル数に対して6.0当量である。
次いで、A槽内のDOPA水溶液を撹拌しながら、そこに酸化剤槽内のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液を10分かけて滴下し、滴下開始から4時間熟成させてDOPAを酸化反応させることにより第1液としてDHI水溶液を得た。この間、A槽内の反応液の液温を35℃に維持した。
次いで、A槽内の第1液を撹拌しながら、そこにpH調整剤として溶存酸素濃度を1.0mg/L以下とした濃度が10質量%のリン酸水溶液を添加してpHを4.7に調整した。
次いで、A槽内のpH調整した第1液を循環濾過により濾過した。このとき、濾過器の濾材として目開きが1.2μmのものを用いた。
次いで、A槽内の循環濾過した濾液の第1液を撹拌しながら、そこに抽剤として酢酸エチルを100L添加し、抽剤の酢酸エチルへのDHIの抽出を20分間行った後、相分離した下層の水相を排出することにより第2液としてDHI酢酸エチル溶液を得た。酢酸エチルの添加量は、反応終了時における第1液の体積に対して50体積%である。
次いで、A槽内の第2液を撹拌しながら、そこにリン酸水素二カリウム及びリン酸二水素カリウムを水に溶解させた洗浄水(塩濃度:8.33質量%、リン酸水素二カリウム/リン酸二水素カリウム(質量比)=5.12)を添加し、第2液の洗浄を90分間行った後、相分離した下層の水相を排出した。このとき、洗浄水の添加量は、第2液の体積に対して40体積%とした。
次いで、A槽内の洗浄した第2液を撹拌しながら、第2液の液温を80℃に加熱すると共に槽内の圧力を90kPa(abs)に減圧して抽剤の酢酸エチルを留去させることにより第2液の濃縮を行った。
次いで、A槽から濃縮した第2液を排出し、それを、アンカー翼を有する撹拌機及び温度調節用のジャケットが設けられた容量が10Lの反応槽を用い、槽内を水洗し且つ槽内に窒素ガスを吹き込んで槽内の酸素濃度を0体積%としたA槽とは別の液槽のB槽に移送した。B槽の材質はSUS製であった。
次いで、B槽内の濃縮した第2液を撹拌しながら、そこに水を添加した後、それらの液温を80℃に加熱すると共に槽内の圧力を80kPa(abs)に減圧して抽剤の酢酸エチルを留去させることにより初回の溶媒置換を行った。このとき、水の添加量は、第2液の体積に対して100体積%とした。
続いて、B槽内に残留した液体を撹拌しながら、そこに水を添加した後、それらの液温を80℃に加熱すると共に槽内の圧力を25kPa(abs)に減圧して抽剤の酢酸エチルを留去させることにより2回目の溶媒置換を行った。このとき、水の添加量は、B槽に残留した液体の体積に対して100体積%とした。また、同様の操作による3回目の溶媒置換を行った。
そして、3回目の溶媒置換を行ってB槽内に残留した液体を撹拌しながら、そこに水及びエタノールを添加して濃度調整することにより第3液としてDHIの含有量が1.1質量%のDHI水溶液を得た。得られたDHI水溶液を実施例1とした。
<実施例2>
A槽として傾斜パドル翼を有する撹拌機及び温度調節用のジャケットが設けられた容量が8mであり、材質がSUS製の反応槽を用い、B槽として傾斜パドル翼を有し、材質がSUS製である撹拌機及び温度調節用のジャケットが設けられた容量が6mの反応槽を用い、A槽に濃度が0.33質量%のDOPA水溶液を4.61m調製し、また、酸化剤槽に濃度が16.8質量%のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液を0.61m調製し、更に、抽剤の酢酸エチルを2.65m添加したことを除いて実施例1と同様の操作を行うことにより得られたDHI水溶液を実施例2とした。
<実施例3>
A槽として、アンカー翼を有する撹拌機及び温度調節用のジャケットが設けられた容量が30Lの、材質がポリテトラフルオロエチレン製である反応槽を用い、A槽に濃度が0.33質量%のDOPA水溶液を17.9L調製し、また、酸化剤槽に濃度が16.8質量%のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液を2.38L調製し、更に、抽剤の酢酸エチルを10.0L添加し、そして、A槽から排出した第2液を、一旦事前に窒素ガスによって容器内の酸素濃度を0体積%にした容量が1Lの密閉可能なガラス容器に供給して貯留しておき、第2液を排出したA槽を洗浄した後、ガラス容器からA槽に第2液を戻す、つまり、槽内を洗浄したA槽をB槽として用いたことを除いて、実施例1と同様の操作を行うことにより得られたDHI水溶液を実施例3とした。なお、A槽の槽内の洗浄は、第2液を排出したA槽に水を仕込んで60分間撹拌した後、その水を排出することにより行った。また、洗浄後のA槽の槽内の酸素濃度を0体積%とした。
<実施例4>
A槽として、アンカー翼を有する撹拌機及び温度調節用のジャケットが設けられた容量が4mであり、材質がSUS製の反応槽を用い、第2液を貯留する容器として事前に窒素ガスによって酸素濃度を0体積%にした、容量が200Lで窒素ガス流通可能なSUS製オープンドラムを用い、A槽に濃度が0.33質量%のDOPA水溶液を2.36m調製し、また、酸化剤槽に濃度が16.7質量%のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液を0.31m調製し、更に、抽剤の酢酸エチルを1.33m添加したことを除いて実施例3と同様の操作を行うことにより得られたDHI水溶液を実施例4とした。
<比較例1>
A槽に濃度が0.34質量%のDOPA水溶液を17.8L調製し、また、酸化剤槽に濃度が16.8質量%のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液を2.38L調製し、更に、抽剤の酢酸エチルを10.2L添加し、そして、B槽を用いずに、A槽のみを用いたことを除いて実施例3と同様の操作を行うことにより得られたDHI水溶液を比較例1とした。
<比較例2>
A槽に濃度が0.33質量%のDOPA水溶液を175L調製し、また、酸化剤槽に濃度が16.8質量%のヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液を25.2L調製し、更に、抽剤の酢酸エチルを100L添加し、そして、B槽を用いずに、A槽のみを用いたことを除いて実施例1と同様の操作を行うことにより得られたDHI水溶液を比較例2とした。
Figure 0007212628000001
(試験方法及び結果)
実施例1~4及び比較例1~2のそれぞれのDHI水溶液について、共立理化学研究所社製の水質測定用試薬セットNo.46全シアン(R-1試薬:酸性粉末、R-2試薬:アルカリ性粉末)及びデジタルパックテスト・マルチSPを用いてピクリン酸法により全シアン濃度を測定した。具体的には、以下の測定操作を行った。
蒸留反応器のレシーバーにR-2試薬1個を入れて上から棒付き内管を嵌め、レシーバー内にスポイトで測り取った1mLのイオン交換水を加えてR-2試薬を塗らした後、レシーバーにキャップを被せた。
次いで、メスフラスコにDHI水溶液1.0gを秤量して50mLまでメスアップして調整した検水をフラスコに入れ、そこに匙摺り切り1杯のR-1試薬を加えた後、直ぐにレシーバーをフラスコにスプリングで固定した。
次いで、蒸留反応器を電熱調整器に乗せて加熱し、検水が沸騰したら電熱調整器の印加電圧を下げて15分間蒸留した後、電熱調整器のスイッチを切って放冷した。
続いて、冷えたことを確認した後にキャップを外して内管を抜き、内管に付着している液を少量のイオン交換水でレシーバー内に洗い込んでレシーバーをフラスコから外した後、25mLの目盛りまでイオン交換水でメスアップしてよく混ぜ合わせることにより測定溶液を得た。
そして、得られた測定溶液をNo.6スクリュー管に全量移し、デジタルパックテスト・マルチSPを用いて全シアン濃度を測定した。
試験結果を表1に示す。これによれば、DHIの抽出をA槽で行い、A槽から第2液を排出した後、第2液を、槽内を洗浄したB槽に供給し、そのB槽において溶媒置換を行った実施例1~4では、全シアン濃度が非常に低いのに比べ、DHIの抽出を行ったA槽においてそのまま溶媒置換を行った比較例1~2では、全シアン濃度が非常に高いことが分かる。
また、第2液の移送の有無のみが異なる実施例1と比較例2との比較、及び実施例3と比較例1との比較によれば、第2液の移送を行った実施例1及び3では、第2液をA槽から排出してB槽に供給した後、そのB槽において第2液を溶媒置換して第3液を得る過程において、外部からシアン化物が供給される要因は存在せず、従って、シアン化物の含有量が上昇することは理論的にあり得ないが、第2液の移送を行わなかった比較例1及び2では、第2液から第3液を得る過程で外部からシアン化物が供給され、その含有量が上昇しており、その供給源がA槽であることが推測される。
本発明はDHI類の製造方法の技術分野について有用である。
L1 第1液
L2 第2液
L3 第3液
W 水
10 反応装置
11 反応槽
12 酸化剤槽
13 酸化剤供給管
14 排出管
151,152 撹拌機
151a,152a 撹拌翼
16 ジャケット
171,172 濾過器
181 循環配管
182 濾過配管
19 濾液槽
20A A槽
20B B槽
21 液槽

Claims (15)

  1. 3,4-ジヒドロキシ-D-フェニルアラニン及びその塩、3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン及びその塩、並びに4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオールの群から選ばれる1種又は2種以上のDOPA類とヘキサシアノ鉄(III)酸塩とを反応させてジヒドロキシインドール類を生成させ、前記生成させた前記ジヒドロキシインドール類を含有する水性の第1液を得る工程1と、
    前記工程1で得た前記第1液と抽剤とを混合して前記抽剤に前記ジヒドロキシインドール類を抽出し、前記抽剤に抽出した前記ジヒドロキシインドール類を含有する油性の第2液を得る工程2と、
    前記工程2で得た前記第2液と水とを混合して前記抽剤を留去することにより溶媒置換し、前記ジヒドロキシインドール類を含有する水性の第3液を得る工程3と、
    を含むジヒドロキシインドール類の製造方法であって、
    前記工程2の前記ジヒドロキシインドール類の抽出をA槽で行い、前記A槽から前記第2液を排出した後、前記第2液を、B槽に供給し、前記B槽において前記工程3を行う製造方法。
  2. 前記B槽が、前記A槽とは別の液槽である、請求項1に記載された製造方法。
  3. 前記B槽が槽内を洗浄した液槽である、請求項2に記載された製造方法。
  4. 前記B槽が、前記工程2を行って前記第2液を排出した後に槽内を洗浄した前記A槽である、請求項1に記載された製造方法。
  5. 前記B槽の槽内の洗浄を水洗で行う、請求項3又は4に記載された製造方法。
  6. 前記抽剤がオクタノール/水分配係数が0.90未満の有機溶剤を含む、請求項1乃至5のいずれかに記載された製造方法。
  7. 前記抽剤が酢酸エチルを含む、請求項6に記載された製造方法。
  8. 前記A槽の材質がステンレスである、請求項1乃至7のいずれかに記載された製造方法。
  9. 前記B槽の材質がステンレスである、請求項1乃至8のいずれかに記載された製造方法。
  10. 初回の前記第2液への水の添加を、前記A槽から排出して前記B槽に供給されるまでの間の前記第2液に対して行う、請求項1乃至9のいずれかに記載された製造方法。
  11. 前記水の添加量が、前記第2液の体積に対して、50体積%以上、150体積%以下である、請求項1乃至10のいずれかに記載された製造方法。
  12. 前記抽剤を留去させるときの液温が、40℃以上、90℃以下である、請求項1乃至11のいずれかに記載された製造方法。
  13. 前記第2液への水の添加及び前記抽剤の留去を複数回行う、請求項1乃至12のいずれかに記載された製造方法。
  14. 前記水の添加及び前記抽剤の留去の後に前記B槽に残留した液体に水及び水溶性溶媒を添加して濃度調整することにより前記第3液を得る、請求項1乃至13のいずれかに記載された製造方法。
  15. 前記水溶性溶媒がエタノールを含む、請求項14に記載された製造方法。
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