JP2016141667A - ショ糖脂肪酸エステルの製造方法 - Google Patents

ショ糖脂肪酸エステルの製造方法 Download PDF

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啓介 楠井
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Abstract

【課題】着色が抑制され、かつ有機溶媒の残存量が低減されたショ糖脂肪酸エステルの製造方法を提供する。【解決手段】ショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルとの反応混合物を、有機溶媒と水とを用いた液液抽出に付し、有機溶媒相にショ糖脂肪酸エステルを抽出する工程と、向流分配型抽出装置を用いて、有機溶媒相および精製用溶媒を向流接触させる精製工程と、有機溶媒相に含まれる有機溶媒を、1つ以上の減圧乾燥機により、水に置換する溶媒置換工程と、水置換溶液をスプレー乾燥機により乾燥する乾燥工程と、を含む、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、着色が抑制されかつ有機溶媒の残存量が低減されたショ糖脂肪酸エステルを得ることができる、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法に関する。
ショ糖脂肪酸エステルは、化学反応における助剤、食品、化粧品、医薬品、洗剤等への添加剤、包装容器等への帯電防止剤等に代表される、種々の用途に用いられている。これらの用途において、ショ糖脂肪酸エステルは、優れた生分解性および界面活性能を示す。
ショ糖脂肪酸エステルは、たとえば、ショ糖と脂肪酸アルキルエステルとを、反応溶媒中、触媒存在下に反応させることにより得られる。この場合、反応終了後、ショ糖脂肪酸エステルを含む反応混合物が得られる。この反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取得する方法としては、たとえば、反応混合物を有機溶媒と水とを用いた液液抽出に付した後、得られる有機溶媒溶液を水で連続向流式抽出に付して反応溶媒であるジメチルスルホキシドをほとんど含まない有機溶媒溶液を取得し、この有機溶媒溶液から溶媒を留去する方法が知られている(特許文献1)。
特開平7−228590号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、有機溶媒が充分に除去されない。また、ショ糖脂肪酸エステルは、極めて着色しやすい。そのため、特許文献1に記載の方法は、乾燥後のショ糖脂肪酸エステルの着色を充分に抑制できない。
本発明は、着色が抑制され、かつ有機溶媒の残存量が低減されたショ糖脂肪酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のショ糖脂肪酸エステルの製造方法には、以下の構成が主に含まれる。
(1)反応溶媒中、アルカリ触媒の存在下、ショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルとを反応させて得た反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取得する、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法であり、前記反応混合物を、有機溶媒と水とを用いた液液抽出に付し、有機溶媒相にショ糖脂肪酸エステルを抽出する抽出工程と、軽液供給口および重液供給口を備える向流分配型抽出装置を用いて、前記抽出工程で得られた前記有機溶媒相および精製用溶媒のうち、より比重の重い方を前記重液供給口から供給するとともに、より比重の軽い方を前記軽液供給口から供給して、有機溶媒相および精製用溶媒を向流接触させる精製工程と、前記精製工程で得られた有機溶媒相に含まれる有機溶媒を、1つ以上の減圧乾燥機により、水に置換する溶媒置換工程と、前記溶媒置換工程で得られた水置換溶液をスプレー乾燥機により乾燥する乾燥工程と、を含む、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
このような構成によれば、得られるショ糖脂肪酸エステルは、着色が抑制され、かつ、有機溶媒の残存量がより低減される。
(2)前記1つ以上の減圧乾燥機は、少なくとも1つの二軸押出機を含む、(1)記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
このような構成によれば、得られるショ糖脂肪酸エステルは、着色がさらに抑制され、かつ、有機溶媒の残存量がさらに低減される。
(3)前記溶媒置換工程は、2〜9段階までのいずれかの段階に分けて実施される、(1)または(2)記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
このような構成によれば、得られるショ糖脂肪酸エステルの品質が向上する。また、溶媒置換を1段階の工程で行う場合と比較して、生産効率が向上する。
(4)前記溶媒置換工程において、前記有機溶媒相における前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、10〜80質量%である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
このような構成によれば、ショ糖脂肪酸エステルを含む有機溶媒の粘度が適切に調節される。有機溶媒には、ショ糖脂肪酸エステルが充分に含まれる。そのため、溶媒置換工程は、高効率で実施されやすい。
(5)前記溶媒置換工程は、有機溶媒の残存量がショ糖脂肪酸エステルに対して10ppm以下となるように、前記精製工程で得られた有機溶媒相に含まれる有機溶媒を、1つ以上の減圧乾燥機により、水に置換する工程である、(1)〜(4)のいずれかに記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
このような構成によれば、充分に着色が抑制され、かつ、有機溶媒の残存量が低減されるまで、溶媒置換工程が実施される。
本発明のショ糖脂肪酸エステルの製造方法によれば、着色が抑制され、かつ、有機溶媒の残存量が低減されたショ糖脂肪酸エステルを得ることができる。
以下、本発明の一実施形態のショ糖脂肪酸エステルの製造方法について説明する。本実施形態のショ糖脂肪酸エステルの製造方法は、反応溶媒中、アルカリ触媒の存在下、ショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルとを反応(エステル交換工程)させて得た反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取得する方法である。より具体的には、本実施形態のショ糖脂肪酸エステルの製造方法は、エステル交換反応により得られるショ糖脂肪酸エステルを、抽出工程、精製工程、溶媒置換工程および乾燥工程に付すことを特徴とする。
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸とのエステルである。脂肪酸としては、炭素数6〜30の飽和または不飽和脂肪酸が例示される。炭素数は、8以上が好ましい。一方、炭素数は、22以下が好ましい。飽和脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が例示される。不飽和脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等が例示される。
ショ糖脂肪酸エステルにおいて、ショ糖のアルコール部分のエステル化の割合の平均値(以下、「平均エステル化度」という)は、特に限定されない。一般に、平均エステル化度が6.0以下の場合、ショ糖脂肪酸エステルは着色しやすい。しかしながら、本実施形態のショ糖脂肪酸エステルの製造方法は、このような平均エステル化度が6.0以下のショ糖脂肪酸エステルであっても、充分に着色が抑制される。なお、平均エステル化度は、以下の方法により算出し得る。
<平均エステル化度の算出方法>
平均エステル化度=Xとする次式において、下記OHV、AV、MwSug、MwFaを代入してXを算出する。
(ショ糖1分子中のOH基の数−X)
=(サンプル1g中のOH基のモル数)/(サンプル1g中のショ糖脂肪酸エステルのモル数)
=((OHV−AV)/(1000×56.11))/{1/(MwSug+(MwFa−18)X)}
OHV:ショ糖脂肪酸エステルの水酸基価
AV:ショ糖脂肪酸エステルの酸価
MwSug:ショ糖の分子量
MwFa:構成脂肪酸の平均分子量
次に、本実施形態のショ糖脂肪酸エステルの製造方法に関連するそれぞれの工程について説明する。なお、特に断りの無い限り、以下のそれぞれの工程は、ショ糖脂肪酸エステルの分解をより抑制することができる観点から、pHが4〜9の範囲内に調整されていることが好ましい。
<エステル交換工程>
エステル交換工程は、ショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルとを、常法により、エステル交換反応に付す工程である。エステル交換反応は、全還流下で実施することができる。あるいは、エステル交換反応は、初めは反応溶媒を留出させながら行い、一定量反応溶媒を留出させて以降、留出させることなく全還流しながら実施してもよい。これにより、エステル交換反応を促進させるとともに、留出させた反応溶媒を回収し、再利用することができる。このような留出させるべき反応溶媒の一定量は、反応溶媒全体の0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%程度である。
ショ糖は、市販のものをいずれも使用することができる。また、ショ糖は、ショ糖脂肪酸エステル製造時に未反応であったショ糖を回収したもの(回収糖)であってもよい。ショ糖の形態としては、固体の状態であってもよいし、溶媒に溶解した溶液状態であってもよい。なお、回収糖を使用する場合、後述する中和を行うことにより生成される中和塩などを含むものであってもよい。
脂肪酸低級アルキルエステルとしては、上述の脂肪酸と低級脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。低級脂肪族アルコールとしては、炭素数1〜4の脂肪族アルコールが例示される。より具体的には、脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が例示される。脂肪酸低級アルキルエステルは、1種または任意の割合からなる2種以上の混合物が用いられてもよい。脂肪酸低級アルキルエステルは、通常、ショ糖1モルに対して0.1〜15モル使用される。脂肪族低級アルキルエステルは、ショ糖1モルに対して0.2モル〜10モル使用されることが好ましい。
エステル交換反応に用いる反応溶媒としては、反応を好適に進行させるものである限り、この分野で通常使用されるものがいずれも使用できる。具体的には、反応溶媒は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、キノリン、ピラジン、メチルピラジン、N,N−ジメチルピペリジン等の第三級アミン類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類等が例示される。中でも、反応溶媒は、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましい。反応溶媒は、熱的安定性、ショ糖に対する溶解性および安全性の点から、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記する。)がさらに好ましい。反応溶媒は単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて用いられてもよい。
反応溶媒の使用量は、反応混合物中、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、反応溶媒の使用量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。また、反応溶媒は、水分含有量が0.1質量%以下であることが好ましい。
エステル交換反応は、アルカリ触媒の存在下で行われる。反応系が実質的に非水系であると、アルカリ触媒は反応系内に懸濁状態で存在する。アルカリ触媒としては、アルカリ金属水素化物(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)等が例示される。これらの中でも、特に炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。アルカリ触媒は、2種以上が併用されてもよい。アルカリ触媒の使用量は、ショ糖および脂肪酸アルキルエステル1質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。また、アルカリ触媒の使用量は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。
エステル交換反応の反応温度は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、反応温度は、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。反応圧力は、0.2kPa以上であることが好ましく、0.7kPa以上であることがより好ましい。また、反応圧力は、43kPa以下であることが好ましく、32kPa以下であることがより好ましい。反応時間は、特に限定されない。反応時間は、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましい。また、反応時間は、50時間以下であることが好ましく、40時間以下であることがより好ましい。
ショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルの反応は、反応溶媒の還流下に実施することが好ましい。これにより、反応中に副生するアルコールは、容易に反応系外に除去され得る。
エステル交換反応は、酸を添加し、アルカリ触媒を中和することによって、停止し得る。酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、クエン酸およびマレイン酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸が例示される。これらの中でも、生体に対する影響等の観点からは、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等が好ましい。反応を停止する際には、反応混合物のpHが約5.0〜7.5の範囲となるように、好ましくは約5.5〜6.5となるように、酸を添加するのが好ましい。酸は、2種以上が併用されてもよい。
ショ糖は水酸基を8個有している。そのため、生成したショ糖脂肪酸エステルは、理論上、モノエステルからオクタエステルまでの混合物である。得られるエステルの組成は、原料の使用割合により調整され得る。得られるショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルとの反応混合物は、目的物であるショ糖脂肪酸エステルのほかに、反応溶媒、未反応原料、アルカリ触媒、酸等を含有する。反応混合物は、抽出工程に供される。
<抽出工程>
抽出工程は、反応混合物を、有機溶媒と水とを用いた液液抽出に付し、有機溶媒相にショ糖脂肪酸エステルを抽出する工程である。水相には、反応溶媒、未反応原料、アルカリ触媒、酸、アルカリ触媒と酸による中和塩等(以下、未反応原料等ともいう)が移行する。
反応混合物中の反応溶媒の濃度が高すぎると、上記した未反応原料等は、水相への移行が不充分となりやすい。そのため、反応混合物中の反応溶媒の濃度が高い場合には、反応溶媒は、予め、一部を留去して濃度を低下させておくことが好ましい。反応溶媒の濃度の上限は、反応混合物中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。また、反応溶媒の濃度の下限は、高粘度化し過ぎたりまたは固化しない限り特に限定されない。このような下限は、反応混合物中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。留去する場合の方法は特に限定されない。留去する方法は、減圧および加熱できる攪拌槽によるバッチ式留去や、薄膜蒸発装置(「薄膜蒸発機」や「薄膜蒸発器」ともいう。また、椀型、筒型(縦型、横型など)など、いずれのタイプも含む。以下同様。)を用いて、減圧下、60〜150℃の温度で実施する方法が例示される。留去させた反応溶媒は、回収されることにより、エステル交換反応に再利用し得る。
液液抽出は、反応混合物に有機溶媒(抽出溶媒)と水とを加え、混合物を攪拌することにより実施し得る。液液抽出に用いる有機溶媒としては、炭素数4〜10のアルコールもしくはケトン、または、酢酸エチル等が例示される。より具体的には、アルコールとしては、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等が例示される。ケトンとしては、メチルエチルケトン、ジエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等が例示される。これらの中でも、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソブチルアルコールが好ましい。
反応混合物に対する有機溶媒の使用量は、反応混合物中のショ糖脂肪酸エステル1質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、有機溶媒の使用量は、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。一方、水の使用量は、有機溶媒1質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。また、水の使用量は、有機溶媒1質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。攪拌は、0.5〜4時間程度であることが好ましい。有機溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、攪拌に代えて、スタティックミキサー(たとえば、(株)ノリタケカンパニーリミテド製)、パイプラインホモミクサー(たとえば、プライミクス(株)製)、マルチラインミキサー(たとえば、佐竹化学機械工業(株)製)などの連続混合装置を用いて反応混合物、有機溶媒および水を連続的に混合することもできる。この場合、反応混合物、有機溶媒および水は、それぞれ別々に混合されてもよく、有機溶媒と水とを予め混合し、これと反応混合物とが混合されてもよい。有機溶媒に対する水の比率(質量比)は、水/有機溶媒=0.3〜3である。また、反応混合物に対する有機溶媒と水の合計量の比率(質量比)は、有機溶媒と水の合計量/反応混合物が0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、反応混合物に対する有機溶媒と水の合計量の比率(質量比)は、有機溶媒と水の合計量/反応混合物が20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。なお、液液抽出において、水としては、通常使用する水のほか、次の精製工程で回収した精製用溶媒が使用されてもよい。
有機溶媒と水との混液のpHは、5.5〜6.5であることが好ましい。このようなpHに調整されることにより、ショ糖脂肪酸エステルは、加水分解が抑制され、かつ、効率よく有機溶媒相へ抽出されやすい。なお、有機溶媒と水との混液のpHを上記範囲内とするために、アルカリ触媒の中和に用いた酸が適宜使用されてもよい。
また、液液抽出は、安定操業の観点から、塩析剤が添加されてもよい。塩析剤としては特に限定されない。塩析剤としては、pH調整に用いた酸の塩が好適に用いられてもよい。より好ましくは、炭酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)、クエン酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)、乳酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)、硫酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)等が用いられてもよい。液液抽出は、通常、塩析剤の濃度が50ppm以上の条件下で行なわれる。安定操業性および経済性の点等から、液液抽出は、500〜3000ppmの範囲で行われることが好ましい。
液液抽出は、上記操作に従い得た混合物を攪拌することにより実施する。混合物の攪拌は、40℃以上で実施することが好ましく、50℃以上で実施することがより好ましい。また、混合物の攪拌は、80℃以下で実施することが好ましく、70℃以下で実施することがより好ましい。攪拌時間は、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましい。また、攪拌時間は、8時間以下であることが好ましく、6時間以下であることがより好ましい。
続いて、混合物を静置して有機溶媒相と水相に分離させたのち、両相をそれぞれ分取する。このとき、ショ糖脂肪酸エステルは有機溶媒相に含まれる。一方、水層には、未反応のショ糖、反応溶媒、反応工程で生成した塩などが含まれる。有機溶媒相は、以下の精製工程に供される。また、水相は、水や有機溶媒を減圧留去することにより、反応溶媒と未反応のショ糖を回収し(回収糖)、エステル交換反応に再利用することができる。
<精製工程>
精製工程は、軽液供給口および重液供給口を備える向流分配型抽出装置により、抽出工程で得られた有機溶媒相を、精製用溶媒を用いて精製する工程である。また、精製工程は、有機溶媒相および精製用溶媒のうち、より比重の重い方を重液供給口から供給すると共に、より比重の軽い方を軽液供給口から供給して、有機溶媒相および精製用溶媒を向流接触させる工程である。これにより、有機溶媒相に残る反応溶媒等が低減される。
精製用溶媒としては、水、または、水と抽出工程で使用した有機溶媒との混液を使用することができる。抽出工程と精製工程とが連続して行われる場合、予め精製用溶媒として、水に抽出工程で使用した有機溶媒の所定量を混和したものを用いれば、精製用溶媒における水と有機溶媒との混和比率を変化させることなく、安定的に精製工程を実施し得る。なお、回収された精製用溶媒は、抽出工程における「水」に代えて、再利用し得る。
精製工程を開始するにあたり、精製用溶媒のpHは、5.0〜6.0に調整されることが好ましい。これにより、ショ糖脂肪酸エステルは、加水分解が抑制され、かつ、向流分配されやすい。pHの調整は、上記アルカリ触媒の中和に用いた酸が適宜使用されてもよい。
本実施形態で用いる「軽液供給口および重液供給口を備える向流分配型抽出装置」とは、より比重の軽い軽液と、より比重の重い重液をそれぞれの供給口から供給した場合に、両液が効率よく向流接触できるよう設計された抽出装置をいう。向流接触により、有機溶媒相に残る反応溶媒等は、精製用溶媒へ移行する。その後、有機溶媒相および精製用溶媒は、それぞれ回収される。回収された有機溶媒相は、必要に応じて、再び精製工程に供される。この操作は、有機溶媒相に残留する反応溶媒の濃度が、1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下、より好ましくは0.2ppm以下になるまで繰り返される。
向流分配型抽出装置は、縦型(塔型)および横型のいずれであってもよい。また、向流分配型抽出装置は、効率的な向流を可能にするための堰を内部に設けた堰型であってもよい。さらに、向流分配型抽出装置は、操作の効率性の観点から、回収された有機溶媒相を連続して再供給することができる連続式が好ましい。向流分配型抽出装置としては、この分野で通常使用されるものをいずれも使用することができる。より具体的には、向流分配型抽出装置は、多孔板抽出塔、堰板型抽出塔、バッフル抽出塔、回転円盤塔などの段塔型抽出装置、スプレー塔、充填塔、脈動型抽出塔などの微分型接触装置等が例示される。
精製工程は、安定操業の観点から、精製用溶媒に塩析剤を添加して行うことが好ましい。塩析剤の種類は特に限定されない。塩析剤は、pH調整に用いた酸の塩が用いられてもよい。このような塩のうち、クエン酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)、乳酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)、硫酸アルカリ(カリウム、ナトリウムなど)等が好ましい。精製工程は、塩析剤の濃度が50ppm以上の条件下で行なわれる。安定操業性および経済性の点等から、精製工程は、塩析剤の濃度が500〜3000ppmの範囲で行われることが好ましい。
精製工程における温度は、生成物の分解や着色を抑制するとの観点から、40〜80℃であることが好ましい。
精製工程における重液および軽液の供給量は、装置の種類、有機溶媒の種類等により異なる。一例を挙げると、装置として堰板型抽出塔を用い、有機溶媒としてイソブチルアルコールを使用する場合、重液である精製用溶媒と軽液であるイソブチルアルコール相との供給量の割合は、5/1〜1/5(容量比)の範囲であることが好ましい。
精製工程により、ショ糖脂肪酸エステルを含む有機溶媒相が得られる。有機溶媒相は、ショ糖脂肪酸エステルを含み、かつ、有機溶媒と水とを含む。
有機溶媒相は、漂白剤が添加され、着色が低減されることが好ましい(脱色工程)。これにより、より着色が抑えられた、ショ糖脂肪酸エステルが得られ得る。漂白剤としては、過酸化水素、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムおよびオゾンなどの酸化剤、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムおよび次亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が例示される。また、活性炭などの吸着剤が使用されてもよい。漂白剤の添加量は、ショ糖脂肪酸エステル100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。また、漂白剤の添加量は、ショ糖脂肪酸エステル100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましい。
漂白剤は、30℃以上の温度で添加されることが好ましく、40℃以上の温度で添加されることがより好ましい。また、漂白剤は、80℃以下の温度で添加されることが好ましく、70℃以下の温度で添加されることがより好ましい。漂白剤を添加する際の攪拌時間は、0.1時間以上であることが好ましく、0.5時間以上であることがより好ましい。また、攪拌時間は、8時間以下であることが好ましく、6時間以下であることがより好ましい。
漂白剤の添加が過剰である場合、漂白剤を分解するか、または、残留する漂白剤を除去する。より具体的には、漂白剤として酸化剤を添加した場合は、還元剤を用いて過剰の漂白剤を分解する。同様に、漂白剤として還元剤を添加した場合は、酸化剤を用いて過剰の漂白剤を分解する。還元剤または酸化剤の使用量は、漂白剤の残存量1当量に対し、0.9当量以上であることが好ましく、1.0当量以上であることがより好ましい。また、還元剤または酸化剤の使用量は、漂白剤の残存量1当量に対し、1.5当量以下であることが好ましく、1.2当量以下であることがより好ましい。さらに、漂白剤として吸着剤を使用した場合には、混合物中に残留する漂白剤を、たとえばろ過などにより、除去する。上記のように漂白剤を分解または除去した後、これらの残存量をさらに低減するために、さらに有機溶媒や水での洗浄等が行われてもよい。
得られた有機溶媒相は、溶媒置換工程に供される。
<溶媒置換工程>
溶媒置換工程は、精製工程で得られた有機溶媒相に含まれる有機溶媒を、1つ以上の減圧乾燥機により、水に置換する工程である。有機溶媒相は、精製工程を経て得られたショ糖脂肪酸エステルを含み、かつ、有機溶媒と水とを含む。
溶媒置換工程に供される有機溶媒相におけるショ糖脂肪酸エステルの濃度は、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルの濃度は、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの濃度が10質量%未満の場合、工業的に非効率になりやすい。一方、ショ糖脂肪酸エステルの濃度が80質量%を超える場合、有機溶媒相の粘度が非常に高くなりやすく、減圧乾燥機に適応し難い傾向がある。ショ糖脂肪酸エステルの濃度は、必要に応じ、水を添加することにより調整されてもよい。溶媒置換工程を2以上の段階に分けて実施する場合において、水は、所定の段階の終了後に適宜添加されてもよい。
本実施形態において減圧乾燥機は、機内圧力および加熱温度を所定の圧力および所定の温度に維持した条件下減圧乾燥できるものであれば特に限定されない。なお、「機内圧力」とは、減圧乾燥機内の気相の圧力をいう。機内圧力は、常法により、気相に接するように設置された圧力計などにより測定することができる。圧力計は、減圧乾燥機内の気相に接する限り、その設置位置は限定されない。一例を挙げると、圧力計は、減圧乾燥機からの排気管内に設置される。また、「加熱温度」とは、混合物を加熱するために用いる、減圧乾燥機のジャケットやコイルに流通させる熱媒体(温水、蒸気、油など)や電気ヒータなどの温度をいう。
減圧乾燥機の具体例としては、攪拌槽などのバッチ型のものや、フラッシュ蒸留機、薄膜蒸発装置、ドラムドライヤー、押出機、ベルトドライヤーなどの連続型のもの等が例示される。各々の減圧乾燥機には、様々な種類のものが含まれる。押出機には、一軸押出機や二軸押出機などが含まれる。これら押出機には、それぞれスクリュー径の異なるものやスクリュー形状が異なるものなどが多種存在する。
また、減圧乾燥器による減圧乾燥は、2〜9までのいずれかの段階に分けて行われてもよい。減圧乾燥を2〜9までの段階に分けて実施することにより、1段階で実施する場合と比較して、目的物の品質および効率が向上しやすい。なお、段階の数は、特に限定されない。段階の数は、得られるショ糖脂肪酸エステルの色相等を考慮して、適宜選択されればよい。
減圧乾燥機としては、少なくとも1つが押出機であることが好ましく、特に、少なくとも1つが二軸押出機であることがより好ましい。二軸押出機を使用する場合、ショ糖脂肪酸エステルは、着色がさらに抑制されやすく、かつ、有機溶媒の残存量がさらに低減されやすい。
本明細書において、「1段階の減圧乾燥」とは、1つの減圧乾燥機により、機内圧力および加熱温度を所定の圧力および所定の温度に維持した条件下減圧乾燥することをいう。ここにおいて、「1つの減圧乾燥機」とは、単一の減圧乾燥機を意味するほか、例えば、ある減圧乾燥機内を、2以上の区画に仕切ることにより、各区画において、個別に圧力および温度の設定ができる場合を含む。
したがって、2段階以上の、一連の減圧乾燥は、少なくとも1段階以上の減圧乾燥を行う機器を、単独または2つ以上用いて実施することができる。より具体的には、減圧乾燥は、たとえば、1つの機器内にて機内圧力や加熱温度を2段階以上変化させることにより実施されてもよい。この場合において、機内圧力や加熱温度は、少なくとも2段階以上に分けて変化させられればよい。また、連続した2以上の段階において、機内圧力および加熱温度を変化させなくてもよい。ここで、「一連」とは、減圧乾燥の途中に、減圧乾燥以外の他の工程(たとえば、精製工程など)を組み入れないことを意味する。
減圧乾燥において、「機内圧力や加熱温度を変化させる」とは、「圧力」や「温度」を、「不連続的に変化させる」ことをいう。
2以上の段階に分けて減圧乾燥を行う場合において、第1段階の溶媒置換工程における機内圧力としては、大気圧以下であることが好ましく、80kPa・abs以下であることがより好ましく、60kPa・abs以下であることがさらに好ましい。また、機内圧力は、3kPa・abs以上であることが好ましく、4kPa・abs以上であることがより好ましい。機内圧力が大気圧を超える場合、脱溶媒のために必要な加熱温度が高くなり過ぎるため、ショ糖脂肪酸エステルが着色し易くなる傾向がある。一方、機内圧力が3kPa・abs未満の場合、フラッシュや飛沫同伴による閉塞が発生し易くなる傾向がある。また、第1段階における機内圧力は、最終段階の機内圧力よりも高いことが好ましい。
2以上の段階に分けて減圧乾燥を行う場合において、最終段階の溶媒置換工程における機内圧力としては、10kPa・abs以下であることが好ましく2kPa・abs以下であることがより好ましく、0.6kPa・abs以下であることがさらに好ましい。また、機内圧力の下限としては、特に限定されない。機内圧力の下限は、可能な範囲で低いほどよい。機内圧力が10kPaを超える場合、残存溶媒を充分に低減しにくくなったり、ショ糖脂肪酸エステルの温度を高くすることが必要となるために着色され易くなる。なお、最終段階の機内圧力は、第1段階の機内圧力よりも低いことが好ましい。
2以上の段階に分けて減圧乾燥を行う場合において、第1段階の溶媒置換工程における加熱温度としては、20℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱温度は、200℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度が200℃を超える場合、ショ糖脂肪酸エステルが着色されやすい。一方、加熱温度が20℃未満の場合、残存溶媒を充分に低減できない傾向がある。なお、加熱温度が20℃未満の場合に残存溶媒を充分に低減するためには、たとえば、機内圧力を著しく高真空とする必要がある。そのため、設備費が高額となりやすい。
2以上の段階に分けて減圧乾燥を行う場合において、第1段階の溶媒置換工程における処理時間は、たとえばバッチ型の減圧乾燥機を使用する場合、特に限定されない。処理時間は、0.5〜20時間程度である。処理時間が20時間を超える場合、ショ糖脂肪酸エステルが着色する傾向がある。一方、連続式の減圧乾燥機を使用する場合、処理流量は、装置の大きさによるため特に限定されない。処理時間は、0.5〜10000kg/時間程度である。
減圧乾燥機として押出機(好ましくは、二軸押出機)を使用する場合、スクリューの回転数は、その他の条件に合わせて適宜設定すればよい。回転数は、一般的には、100〜1500rpm程度である。
溶媒置換工程により、有機溶媒が除去されつつ、適宜水が添加される。これにより、有機溶媒相に含まれる有機溶媒が水に置換され、ショ糖脂肪酸エステルを含む置換溶液(水置換溶液)が得られる。得られた水置換溶液は、乾燥工程に供される。
溶媒置換工程では、有機溶媒の残存量は、ショ糖脂肪酸エステルに対して、好ましくは10ppm以下、より好ましくは、5ppm以下となるまで実施される。ガードナー色数はJIS K 0071に準じて、ショ糖脂肪酸エステルのテトラヒドロフラン溶液(濃度:200g/L)を用いて測定される。ショ糖脂肪酸エステルにおける「有機溶媒」(ppm)の量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により、求めることができる。
<乾燥工程>
乾燥工程は、溶媒置換工程で得られた水置換溶液をスプレー乾燥機により乾燥する工程である。スプレー乾燥機の機構は特に限定されない。スプレー乾燥器は、アトマイザが回転ディスク、加圧ノズル、二流体ノズルである装置が例示される。熱風の供給方法としては、特に限定されない。熱風の供給方法は、アトマイザが回転ディスクである場合は並流式が例示される。また、アトマイザが加圧ノズルや二流体ノズルである場合、熱風の供給方法は、並流式、向流式またはこれらを併用した方法が好ましい。スプレー乾燥機に供給する水置換溶液の温度は、40℃以上であることが好ましい。また、水置換溶液の温度は、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。さらに、水置換溶液の固形分濃度は、4〜60質量%であることが好ましい。
水置換溶液を霧化させる方法は特に限定されない。霧化させる方法は、回転ディスクを用いる場合のディスクの直径と回転数を、霧化した粒子が所望の粒子径となるように、得られる遠心力を考慮して適宜調整する方法が例示される。この方法において、ディスク回転数は、ディスクの直径が5〜10cmであれば、5000〜24000rpmであることが好ましい。
乾燥のために使用する空気の温度(入口空気温度ともいう)は、10℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、空気の温度は、140℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。また、空気の絶対湿度は、0.05kg・水/kg・空気以下であることが好ましく、0.04kg・水/kg・空気以下であることがより好ましい。ここで、乾燥工程の効率化の観点から、絶対湿度は、低いほど好ましい。大気をそのまま使用できること、または、除湿が比較的容易であることから、0.001kg・水/kg・空気以上であることが好ましい。なお、使用する空気の量は、入口空気温度と蒸発させる水の量により適宜調整し得る。
乾燥工程により得られるショ糖脂肪酸エステルの水分量をさらに低減する必要がある場合は、さらに減圧乾燥などを行ってもよい。減圧乾燥の温度は特に限定されない。一例を挙げると、減圧乾燥の温度は、10〜100℃である。また、減圧乾燥は、窒素などの不活性ガスを導入しながら行われてもよい。
以上の工程を経て得られるショ糖脂肪酸エステルは、着色が抑制されかつ有機溶媒の残存量が極僅かに低減されている。好ましくは、得られるショ糖脂肪酸エステルは、ガードナー指数が3以下となっている。そのため、ショ糖脂肪酸エステルは、各種用途、すなわち、化学反応における助剤、洗剤等への添加剤、包装容器等への帯電防止剤などの他、飼料、化粧品、食品、医薬品等の添加剤としても、好適に使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
<実施例1>
(エステル交換工程)
反応器にDMSO345.7質量部を仕込み、90℃、3.7kPaの条件下で、DMSOの水分含有量が0.06質量%となるまで全還流を行った。ここに、炭酸カリウム0.26質量部、ショ糖67.2質量部およびステアリン酸メチル21.4質量部を加え、95℃、3.7kPaの条件下で、DMSOを留出させながら反応を行い、DMSOの留出量が42.9質量部に到達して以降は、DMSOを留出させずに全還流の下反応を行った。合計4時間反応させた後、pHが6.0になるように90質量%乳酸水溶液を加えて、反応を停止した。留出させたDMSOは再利用のため回収した。
(抽出工程)
攪拌槽を用いて、上記反応混合物の固形分が84.0質量%となるまで、DMSOを減圧留去し、濃縮した。留去したDMSOは再利用のため回収した。
得られた濃縮物、0.1質量%硫酸カリウム水溶液240質量部およびイソブチルアルコール(IBA)240質量部をパイプラインホモミクサーに供給し、連続的に混合した。この混合液を静置して2層に分離させ、上層(IBA相)と下層(水相)とを分取した。IBA相は、次の精製工程へ送った。一方、水相は、その中に含まれるDMSOと未反応のショ糖を再利用すべく、実施例13での利用に供した。
(精製工程)
上記で得たIBA相を、多孔板抽出塔を用いて精製した。具体的には、塔内温度を60℃とし、軽液供給口から、精製工程で得られたIBA相を、重液供給口から、精製用溶媒(水/イソブチルアルコール/硫酸カリウム=92.9/7/0.1(質量比)、pH=5.5)を、供給量がIBA相/精製用溶媒=2/1(容量比)となるように供給し、連続的に向流分配させ、その結果得られるIBA相である上層において、DMSO濃度が0.2ppmになるまで、精製工程を繰り返した。
(脱色工程)
IBA相は、さらに、5質量%炭酸カリウム水溶液が加えられ、pH7.8に調整され、5質量%過酸化水素水溶液2.35質量部が加えられ、4時間攪拌された。続いて、過酸化水素の残存量に対して1.1当量比のピロ亜硫酸カリウムとなるようにピロ亜硫酸カリウム10質量%水溶液が加えられ、これにより過酸化水素を分解した。この溶液を5%炭酸カリウム水溶液でpHが6.0となるように調整した後、静置して2層に分離させ、上層(IBA相)と下層(水相)とを分取した。
(溶媒置換工程)
上記で得たIBA相(ショ糖ステアリン酸エステル(SE)12質量%、イソブチルアルコール(IBA)70質量%、および、水18質量%)について、その所定量を、表1記載の条件で減圧乾燥し、溶媒である水およびイソブチルアルコールを除去した。2段目以降においては、その開始にあたり、適宜、水を添加して、SE濃度を調整した(表中、2段目以降において、「SE濃度」とあるのは、それぞれの段階における溶媒置換工程開始前のSE濃度である)。続いて、水を加えてショ糖ステアリン酸エステルの濃度を17質量%に調整することにより、ショ糖ステアリン酸エステル水置換溶液を得た。なお、この工程を通じて留去させたイソブチルアルコールおよび水は、再利用(たとえば、抽出工程での再利用)するために回収した。溶媒置換(減圧乾燥)に使用した機器を以下に示す。
<溶媒置換に使用した機器>
攪拌槽(攪拌):容量5m3の攪拌槽、アンカ翼あり
ドラムドライヤー(ドラム):ダブルドラムドライヤー、伝熱面積0.2m2、ドラム径200mm
フラッシュ蒸発機(フラッシュ):フラッシュタンク容量200L、加熱管電熱面積0.8m2(予備加熱用)
二軸押出機(二軸):スクリュー径25mm
薄膜蒸発装置(薄膜):伝熱面積0.5m2
(乾燥工程)
溶媒置換工程で得られた水置換溶液を、アトマイザが回転ディスクであるスプレー乾燥機を用いて以下の条件で噴霧乾燥した。
<スプレー乾燥機の条件>
スプレー乾燥機の直径:2.0mφ
直筒部の長さ:1.5m
送風量:300Nm3/時間
回転ディスク直径:10cmφ
ディスク回転数:24,000rpm
入口空気温度:100℃
入口空気絶対湿度:0.020kg・水/kg・乾燥空気
水置換溶液供給温度:50℃
水置換溶液供給速度:2.2kg/時間
<実施例2〜12>
溶媒置換工程を表1に示される条件で行った以外は、実施例1と同様の方法によりショ糖ステアリン酸エステル粉末を作製した。
<実施例13>
(再利用のための処理)
実施例1の抽出工程で得られた下層である水相を蒸留塔に投入し、60℃、15kPaの条件で蒸留することにより、IBAと水の混合物を除去した。続いて、DMSOを加えた後、90℃、2.7kPaの条件で蒸留することにより、DMSOと水の混合物を除去し、35質量%ショ糖DMSO溶液を得た。なお、ショ糖DMSO溶液の水分量は0.2質量%であった。
(エステル交換工程〜乾燥工程)
DMSO345.7質量部に代えて、DMSO280.7質量部および上記35質量%ショ糖DMSO溶液100質量部の混合物を用い、さらに、ショ糖の使用量を32.2質量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、ショ糖ステアリン酸エステル粉末を得た。
<実施例14>
溶媒置換工程を表1に示される条件で行った以外は、実施例13と同様の方法によりショ糖ステアリン酸エステル粉末を作製した。
<実施例15>
ショ糖の使用量を40.0質量部、ステアリン酸メチルの使用量を172.0質量部、DMSOの使用量を265.4質量部および炭酸カリウムを0.56質量部とし、反応初期で留出させるDMSOを49.8質量部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、ショ糖ステアリン酸エステル粉末を得た。
<実施例16>
溶媒置換工程を表1に示される条件で行った以外は、実施例15と同様の方法によりショ糖ステアリン酸エステル粉末を作製した。
<実施例17>
ステアリン酸メチル21.4質量部を炭素数8〜18の偶数脂肪酸メチル(炭素数8および10の脂肪酸メチル:5質量%、ラウリン酸メチル:70質量%、炭素数14、16および18の脂肪酸メチル:25質量%の混合物)18.7質量部に、DMSOの使用量を333.9質量部に、炭酸カリウムの使用量を0.29質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、所定のショ糖脂肪酸エステル粉末を得た。
<実施例18>
溶媒置換工程を表1に示される条件で行った以外は、実施例17と同様の方法によりショ糖脂肪酸エステル粉末を作製した。
<比較例1>
溶媒置換工程において、表1記載の条件で減圧乾燥し、攪拌槽により乾燥まで行って、溶媒である水およびイソブチルアルコールを除去した(すなわち溶媒置換工程後の乾燥工程を行わなかった)以外は実施例1と同様の操作を行い、ショ糖ステアリン酸エステル粉末を得た。
<比較例2>
溶媒置換工程を表1に示される条件で行った以外は、比較例1と同様の方法によりショ糖脂肪酸エステル粉末を作製した。
実施例1〜18および比較例1〜2で得られたそれぞれのショ糖脂肪酸エステルについて、以下の方法によりIBA残存量を測定し、色相を評価した。結果を表1に示す。
<有機溶媒(IBA)の残存量の測定>
JECFA(Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives, FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)で評価・設定された食品添加物規格(Food Additive specification) INS473(Sucrose Esters of Fatty Acids)記載の方法に準じて測定した。
<色相>
得られたショ糖ステアリン酸エステルの各サンプルの色相を、JIS K 0071に準じて、ショ糖脂肪酸エステルのテトラヒドロフラン溶液(濃度:200g/L)を用いてガードナー色数により評価した。
Figure 2016141667
表1に示されるように、実施例1〜18の方法により得られたショ糖脂肪酸エステルは、有機溶媒の残存量が低減され、かつ、色相が良好であった。中でも、第1段階でフラッシュを行った実施例4や実施例13の製造方法よりも、第1段階で二軸押出機を用いた実施例6や実施例16の製造方法の方が、よりIBAの残存量を低減することができた。また、2段階で行った実施例2の製造方法よりも、3段階で行った(実施例2の2段階の前に、攪拌による減圧乾燥を採用した)実施例8の製造方法の方が、よりIBAの残存量を低減することができた。

Claims (5)

  1. 反応溶媒中、アルカリ触媒の存在下、ショ糖と脂肪酸低級アルキルエステルとを反応させて得た反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取得する、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法であり、
    前記反応混合物を、有機溶媒と水とを用いた液液抽出に付し、有機溶媒相にショ糖脂肪酸エステルを抽出する抽出工程と、
    軽液供給口および重液供給口を備える向流分配型抽出装置を用いて、前記抽出工程で得られた前記有機溶媒相および精製用溶媒のうち、より比重の重い方を前記重液供給口から供給するとともに、より比重の軽い方を前記軽液供給口から供給して、有機溶媒相および精製用溶媒を向流接触させる精製工程と、
    前記精製工程で得られた有機溶媒相に含まれる有機溶媒を、1つ以上の減圧乾燥機により、水に置換する溶媒置換工程と、
    前記溶媒置換工程で得られた水置換溶液をスプレー乾燥機により乾燥する乾燥工程と、を含む、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
  2. 前記1つ以上の減圧乾燥機は、少なくとも1つの二軸押出機を含む、請求項1記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
  3. 前記溶媒置換工程は、2〜9段階までのいずれかの段階に分けて実施される、請求項1または2記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
  4. 前記溶媒置換工程において、前記有機溶媒相における前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、10〜80質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
  5. 前記溶媒置換工程は、有機溶媒の残存量がショ糖脂肪酸エステルに対して10ppm以下となるように、前記精製工程で得られた有機溶媒相に含まれる有機溶媒を、1つ以上の減圧乾燥機により、水に置換する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。
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