JP7169574B2 - 複層型下敷きテープ - Google Patents
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Description
この際、施工が良好な場合は、仕上面となる表面は平滑な面となり、突合わせ部12が判別しにくい綺麗な仕上げとなる(図4(b))。
特許文献6において、網状シートを構成する合成糸の材質として、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、天然繊維が挙げられており、ナイロンが好ましいとされている。
このため、耐切創性がより一層優れており、熟練度の浅い作業者にとっても使用しやすい下敷きテープの開発が望まれている。
設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置する上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置する下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、両端部のみにおいて、該ネット状シートとともに接着されており、
該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、
該緯糸が、引張初期弾性率290cN/dtex以上の素材で構成されていることを特徴とする複層型下敷きテープを提供するものである。
上記のように、壁紙11の貼付作業の際に、壁紙重ね合わせ部11Aを刃物で切断する作業を行う際に、下地材10(石膏ボード等)まで切断してしまうおそれがあるが、本発明の複層型下敷きテープ1を使用することで、下地材10に連続した傷がつきにくくなる。
幅が上記下限以上であると、複層型下敷きテープの設置に際し、壁紙10同士の縦方向の位置が横にずれた場合も突合わせ部12が複層型下敷きテープの幅内に収まる余裕があることはもちろん、中央部(非固定部分)の幅を十分に確保することができ緯糸4Aが引っ張られやすくなり、上記効果を奏しやすい。幅が上記上限以下であると、コスト的に有利である;壁紙10の糊の掻取量を少なくできる;突合わせ部12の付近が歪みにくくなる;等のメリットがある。
厚さが上記上限以下であると、突合わせ部12に歪みが生じにくくなり、施工不良(突合わせ部12付近の盛り上がり)が発生しにくくなる。また、各部材の強度を十分に保ったり、糊の掻取量を減少させるべくエンボス加工したりすると、厚さは上記下限以上となる場合が多い。
上記下限以上であると、両端部1Aをしっかりと固定でき、刃物で切断する際に、緯糸4Aが動きやすくなる。上記上限以下であると、コスト的に有利であり、また、上記上限を超えて接着剤を使用しても、複層型下敷きテープ1の耐切創性等の性能は向上しない。
上記範囲内であると、両端部1Aをしっかりと固定することができ、また、中央部の幅を十分に確保することができるので、緯糸4Aの動きを施工者が感じやすくなり、下地材10に傷(特に、連続した線状の傷)がつきにくくなる。
このうち、後述のように、柔軟性と加工のしやすさの兼ね合いから、無延伸ポリプロピレン(CPP)を上層フィルム2として使用するのが最適である。
上層フィルム2に凹凸構造を設ける方法には特に限定は無く、例えば、公知のエンボス加工技術により凹凸構造を設けることができる。
しかし、これらの素材は、エンボス加工を施すのが困難であり、エンボス加工を施すことによる糊の掻取量低減の効果が発揮されにくい。
厚さが上記下限以上であると、エンボス加工を施しやすい。厚さが上記上限以下であると、複層型下敷きテープ1を十分薄くでき、突合わせ部12に歪みが生じにくくなり、また、糊の掻取量が少なくなる。なお、上記上限を超えて上層フィルム2を厚くしても、エンボス加工の施しやすさは変わらない。
エンボス部2Aは、上層フィルム2の裏面(複層型下敷きテープ1においてネット状シート4に向いている面)の側に向かって突き出ていると、糊掻取量を低減することができるため望ましい。
エンボス加工後の見掛け厚さが上記下限以上であると、エンボス部2Aを設けたことによる糊掻取量の低減効果が発揮されやすい。上記上限以下であると、複層型下敷きテープ1を十分薄くでき、突合わせ部12に歪みが生じにくくなり、また、複層型下敷きテープ1を長尺巻しやすくなる。
このうち、柔軟なことから、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)が特に好ましい。
下層フィルム3には、糊が付着しないが、下層フィルム3の素材として柔軟な素材を使用することにより、複層型下敷きテープ1に柔軟性が付与され、切断後に複層型下敷きテープ1を除去しやすくなる。すなわち、複層型下敷きテープ1の柔軟性が高くなる結果、壁紙の糊の掻取量を低減しやすくなる。
前記のように、上層フィルム2は、糊の付着し難さ(柔軟性と、エンボス加工の施しやすさの両方)の観点から選択されるのに対し、下層フィルム3は、フィルム自体の柔軟性の観点から選択される結果、両フィルムの素材は異なっている方が好ましい。
厚さが上記上限以下であると、突合わせ部12に歪みが生じにくくなり、施工不良(突合わせ部12付近の盛り上がり)が発生しにくくなる。また、十分な強度のフィルムを得るためには、厚さは上記下限以下となる場合が多い。
複層型下敷きテープ1を敷いた状態で、壁紙11を切断すると、刃物の刃先は、複層型下敷きテープ1の中央部(非固定部分)の緯糸4Aに接触し、中央部において、緯糸4Aは両側のフィルムには拘束されていないので、刃先の移動方向に引っ張られ、施工者に抵抗感を伝える。
本発明の複層型下敷きテープ1においては、ネット状シート4の緯糸4Aが、特定の素材となっていることにより、上記効果が特に顕著になる。
また、本発明の複層型下敷きテープ1は、従来の下敷きテープと比べて、緯糸4Aが切断されることなく刃先が緯糸4Aに引っ掛かった状態で滑りやすくなるため、耐切創性が向上しやすい。
紡績糸を使用する場合は、繊維長の短い繊維(概ね平均繊維長60mm以下)からなる通常の綿紡式紡績糸より繊維長の長い繊維(概ね平均繊維長100mm以上)からなる牽切(パーロック)紡績糸を使用することが耐切創性の点から好ましい。
紡績糸の場合、綿番手で7番手以上が好ましく、10番手以上が特に好ましい。また、100番手以下が好ましく、50番手以下が特に好ましい。
緯糸4Aと経糸4Bの太さは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
緯糸4Aの太さが上記範囲内であると、耐切創性が十分となりやすい。また、複層型下敷きテープ1の厚さを十分に薄くすることができ、良好に施工しやすくなる。更に、切断の際に施工者に抵抗感が伝わりやすくなる。
上記範囲内であると、緯糸の動きを施工者が感じやすくなり、下地材10に傷(特に、連続した線状の傷)がつきにくくなり耐切創性が向上しやすい。また、複層型下敷きテープ1の厚さが十分に薄くなる。更に、材料コストを抑えることができ経済的である。
以下に示すようにして、複層型下敷きテープ(以下、単に「テープ」という場合がある。)を作製した。
経糸としてポリエステル紡績糸(Ne30/1)、緯糸としてパワロン(登録商標、(株)クラレ製、高強力ビニロン)のパーロック式牽切紡績糸(Ne10/1)を使用して、ネット状シートを作製した。経糸は3mm間隔(8本/インチ)、緯糸は3mm間隔(8本/インチ)で設置し、経糸と緯糸の交点は、アクリル系目止め剤(アクリル系接着剤)によって接着した。
上層フィルムとして、厚さ20μm・幅35mmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムをエンボス加工したもの、下層フィルムとして、厚さ20μm・幅35mmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(エンボス加工なし)をそれぞれ使用し、前記ネット状シートを、上層フィルムと下層フィルムで挟んだ状態で、両フィルムの両端部のそれぞれ4mmを、アクリル系接着剤により接着することにより、テープT1を作製した。
例1において、緯糸としてパワロンのパーロック式牽切紡績糸(Ne10/1)に代えて、パワロンの紡績糸(Ne10/1)を使用した以外は、例1と同様にしてテープT2を作製した。
例1において、緯糸としてパワロンのパーロック式牽切紡績糸(Ne10/1)に代えて、ナイロンの紡績糸(Ne22/2)を使用した以外は、例1と同様にしてテープT3を作製した。
例1において、緯糸としてパワロンのパーロック式牽切紡績糸(Ne10/1)に代えて、ビニロンの紡績糸(Ne10/1)を使用した以外は、例1と同様にしてテープT4を作製した。
例1において、緯糸としてパワロンのパーロック式牽切紡績糸(Ne10/1)に代えて、ケブラーの紡績糸(Ne20/2)を使用した以外は、例1と同様にしてテープT5を作製した。
例1において、緯糸としてパワロンのパーロック式牽切紡績糸(Ne10/1)に代えて、イザナスのフィラメント糸(440dtex(Ne12/1に相当))を使用した以外は、例1と同様にしてテープT6を作製した。
各テープの緯糸について、テンシロン型引張試験機を使用してJIS L 1013:2010に従って引張試験を行い、破断強度(引張強さ)、破断伸度(引張伸び率)、引張初期弾性率(初期引張抵抗度)を算出した。
(1)測定装置
図5に示す耐切創性測定装置(特願2017-085002に記載の「態様2」の耐切創性測定装置)を使用して、各テープの耐切創性を測定した。
耐切創性測定装置T1は、被切創体Sを切断するための刃物Bを保持する刃物保持体12を有する。刃物保持体T12は、刃物Bを保持するための保持部T16を具える。
耐切創性測定装置T1は、刃物Bの刃先B1を被切創体Sに接触させながら刃物保持体T12を水平方向に移動させる刃物保持体移動手段T15を有する。刃物Bの刃先B1が被切創体Sと接触した状態で、刃物保持体T12(刃先B1)を水平方向に移動させることにより、被切創体Sの耐切創性を試験する。
耐切創性測定装置T1は、ホルダー部T14aを有する棒状の錘保持手段T14を有しており、錘の数を変更することで刃物Bの刃先B1が被切創体Sに与える荷重の調整を行うことができる(なお、図5には錘を図示していない)。
刃物Bの刃先B1は被切創体Sの上方に位置するような状態で刃物保持体T12に保持されている。
測定を開始する際には、刃物保持体移動手段T15により、刃物保持体T12を、鉛直方向に降下させる。これにより、図5(b)に示すように、刃物Bの刃先B1が、被切創体Sに突き刺さった状態となる。
次いで、刃物保持体移動手段T15により、刃物保持体T12を、右方向に水平移動させる。これにより、刃物Bは、刃物保持体T12とともに、水平移動する(水平移動後の状態を図5(c)に示す)。
この動作により、被切創体Sは、刃先B1から一定の荷重を受けることにより、刃先B1と接触した部分が切断される。
基板T10としては、石膏ボードを使用した。
被切創体Sは、下地紙、各テープ、壁紙(1層目)、壁紙(2層目)の順序で積層したものを使用した。また、壁紙(2層目)において、刃先B1が触れる部分の付近は、定規によって固定した。すなわち、下地紙を使用した以外は、実際の壁紙重ね合わせ部の切断(図4(a))と同様の状況で測定した(なお、下地紙は、石膏ボードが切断されているかどうかを可視化しやすくするために挟んだものであり、ごく薄いので耐切創性にほとんど影響を与えない)。
また、刃先B1にかかる荷重(電子天秤により測定)が、629gfとなるように調整した。
切断の際の刃物保持体T12(及びそれに保持されているカッターナイフ)の水平方向の移動距離は14cm、移動速度は3m/minとなるようにした。
切断後の各テープについて、貫通部分の長さを測定し、貫通長さL[cm]を、以下のようにして算出した。
また、(L/10)×100を、貫通率[%]とし、以下の基準で評価した。
4点:貫通率が0%を超え25%未満
3点:貫通率が25%以上50%未満
2点:貫通率が50%以上75%未満
1点:貫通率が75%以上100%未満
0点:貫通率が100%
下地である石膏ボード上に各テープを設置し、その上に厚さ0.6mmの壁紙を2枚重ね、その壁紙の上から定規を当て、その定規に沿ってカッターナイフで刃先荷重が250~450gfとなるようにして壁紙を20cm切断する試験を実施した。この際に、カッターナイフを経由しての、テープの緯糸が切れているかどうかの手に伝わる感触を、以下の基準で評価した。
×:刃先に横糸が当たっている感じが不明瞭
各テープに関して、評価結果を表1に示す。
すなわち、高初期弾性率繊維から成る緯糸は、カッターナイフの刃先と接触して動く距離が長いことになり、刃先の荷重に対しての抵抗が大きいことがわかった。
以上から、高初期弾性率繊維は一定距離を動いた時点での応力が大きいため耐切創性に優れると推定される。
また、切創感覚も、高初期弾性率繊維の場合、緯糸が動いている距離が長いため刃先が横糸に当たっている感じが明瞭になると推定される。
1A 両端部
2 上層フィルム
2A エンボス部
3 下層フィルム
4 ネット状シート
4A 緯糸
4B 経糸
4C 交点
10 下地材
11 壁紙(クロス)
11A 壁紙重ね合わせ部
11B 切断部
12 突合わせ部
Claims (5)
- 下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置し、下地材を保護するための複層型下敷きテープであって、
設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置する上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置する下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、両端部のみにおいて、該ネット状シートとともに接着されており、
該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、
該緯糸が、引張初期弾性率290cN/dtex以上の素材で構成されていることを特徴とする複層型下敷きテープ。 - 上記緯糸が、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、及び、ビニロン繊維からなる群より選ばれた1種以上の繊維で構成されている請求項1に記載の複層型下敷きテープ。
- 上記緯糸が牽切紡績糸である請求項1又は請求項2に記載の複層型下敷きテープ。
- 上記経糸と上記緯糸が異なる素材で構成されている請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の複層型下敷きテープ。
- 上記ネット状シートの経糸が、紡績糸又はフィラメント糸である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の複層型下敷きテープ。
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