JP7167537B2 - ビスフェノール製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のビスフェノール製造方法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
例えば、特許文献1に記載の方法のように、反応液に水を供給して酸触媒の濃度を低減することで反応を終了(停止)させた後、ビスフェノールを回収する方法が知られている。
また、ビスフェノール生成反応後の反応液の酸性が高い状態で、ビスフェノールの回収時に加熱等を行うと、ビスフェノールが分解しやすくなる。このビスフェノールの分解を抑制するために、塩基性水溶液を用いて酸触媒を中和することにより反応液の酸性を下げて、反応を終了する方法が知られている(例えば、特許文献2)。
[1] ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、を有し、前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であるビスフェノール製造方法。
[2] 前記第2工程において、前記反応液と前記第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度よりも高い温度にする[1]に記載のビスフェノール製造方法。
[3] 前記第2工程の後に、前記第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する[1]または[2]に記載のビスフェノール製造方法。
[4] 前記第2工程で得られた前記第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有する[1]または[2]に記載のビスフェノール製造方法。
[5] 前記第1の水洗工程で得られた洗浄された第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する[4]に記載のビスフェノール製造方法。
[6] 前記アルカリ洗浄工程の後に、前記第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有する[3]または[5]に記載のビスフェノール製造方法。
[7] 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンである[1]から[6]のいずれかに記載のビスフェノール製造方法。
[8] 前記酸触媒が、硫酸である[1]から[7]のいずれかに記載のビスフェノール製造方法。
[9] [1]から[8]のいずれかに記載のビスフェノール製造方法で製造したビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
・反応終了後の精製工程にて水洗等を行う際の洗浄効率は、液量による影響が小さいため、反応槽の大きさ等に応じて、液量を制御しやすい。
・反応終了時の水や塩基性水溶液の量によって反応液の酸性度が異なり、反応液の酸性度によってビスフェノールの分解等の起こりやすさが異なるため、反応終了時の液量はビスフェノールの品質に影響を与えやすい。このため、反応槽の大きさ等に応じた液量の制御が困難である。
本発明のビスフェノール製造方法では、第2工程で、第1の塩基性水溶液を用いて特定の酸濃度となるように調整するため、このときの液量増加を抑制することができ、その分原料仕込み量を増やすことができる。このような本発明のビスフェノール製造方法は、ビスフェノール生成反応終了時や精製時の液量が製造効率に大きく影響を与える回分反応での製造において特に好適である。
第1工程は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る工程である。
ビスフェノールの反応は、通常、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
ビスフェノールの原料として使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
ケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
R5とR6とが隣接した炭素と結合してシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
(i)芳香族アルコールと酸触媒を含む混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを供給した後、所定の時間反応させる方法
(ii)芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドを含む混合溶液に、酸触媒を供給した後、所定の時間反応させる方法
酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、メタスルホン酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から、この中でも、硫酸を含有することが好ましく、硫酸であることが特に好ましい。
硫酸は、濃硫酸や希硫酸と呼ばれる、硫酸が水で希釈された硫酸の水溶液(原料硫酸)を使用することで、反応系内に供給することができる。原料硫酸としては、濃硫酸を用いても希硫酸を用いてもよい。しかし、用いる原料硫酸の濃度が低すぎると、反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することができないため、用いられる原料硫酸の質量濃度の下限は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。また、用いられる原料硫酸の質量濃度の下限は、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下である。
また、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液と、芳香族アルコールとの混合方法は、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液に芳香族アルコールを混合してもよく、芳香族アルコールにチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合してもよい。芳香族アルコールにチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合する方が好ましい。
また、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液と、酸触媒との混合方法は、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液に酸触媒を混合してもよく、酸触媒にチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合してもよいが、酸触媒にチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合する方が好ましい。
更に、反応槽に酸触媒と芳香族アルコールを供給した後に、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を反応槽に供給して混合する方がより好ましい。
ビスフェノールの生成反応に用いる有機溶媒として、芳香族炭化水素を使用することが可能である。また、ビスフェノールの製造に使用した有機溶媒を、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。有機溶媒を再利用する場合は、沸点が低い有機溶媒が好ましい。
また、有機溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して有機溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することで損失を低減できる。
なお、反応時間は、原料混合のときの混合時間も含むものである。例えば、芳香族アルコー及び酸触媒を混合した混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
第2工程は、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る工程である。また、第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満となるように第1の塩基性水溶液は供給される。
第1の塩基性水溶液は、第1の塩基性物質が水に溶解した水溶液である。第1の塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの強塩基性物質が挙げられる。中でも、第1の塩基性物質としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度より高い温度にするためには、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液とを混合後に、混合液を所定の温度まで昇温する方法が挙げられる。また、所定の温度となるように、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液と昇温しながら混合する方法が挙げられる。また、ビスフェノールや中和塩の析出を抑制し、洗浄効率をより向上させるためには、所定の温度まで昇温し、所定の温度に達した時点から、第2工程の終了時まで、その温度を維持することが好ましい。
なお、本発明のビスフェノール製造方法は、回分反応により行うことができ、反応器は回分式反応器や半回分式反応器を用いることができる。
本発明のビスフェノール製造方法は、第2工程で得られた第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有することが好ましい。第2工程で得られた第1の有機相を水で洗浄することで、第1の有機相に残存する酸触媒等を更に低減できる。
例えば、第1の水洗工程では、得られた第1の有機相に脱塩水を供給し、第1の有機相を脱塩水で洗浄することができる。
また、第1の水洗工程である、第1の有機相を水で洗浄する工程は複数回行ってもよい。
本発明のビスフェノール製造方法は、第2工程または第1の水洗工程の後に、得られた有機相を第2の塩基性水溶液で洗浄するアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
詳しくは、第2工程の後に、第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
また、第1の水洗工程の後に、第2工程で得られた洗浄された第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
なお、アルカリ洗浄工程は、複数回行ってもよい。
本発明のビスフェノール製造方法は、アルカリ洗浄工程の後に、第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有することが好ましい。第2の水洗工程は、第1の有機相を第2の有機相とする以外は、第1の水洗工程と同様に行うことができる。第2の有機相は、第2工程の後にアルカリ洗浄工程を行い得られたものであっても、第2工程の後に第1の水洗工程及びアルカリ洗浄工程を行い得られたものであってもよい。また、第2の水洗工程は複数回行ってもよい。
本発明のビスフェノール製造方法は、晶析工程を有することが好ましい。晶析工程は、第2工程の後に行われるが、第2工程と晶析工程との間に別の工程を有してよい。
例えば、第2工程と晶析工程との間に、上記のアルカリ洗浄工程を有してよい。この場合、晶析工程は、第2の有機相を冷却し、ビスフェノールを析出させる工程とすることができる。上記の第1の水洗工程または第2の水洗工程の後に晶析工程を行う場合は、各工程で得られた有機相を冷却し、ビスフェノールを析出させればよい。
また、有機相中の芳香族アルコール含有量が多い場合には、晶析前に蒸留により余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させてもよい。
第2工程と晶析工程との間に、第1の水洗工程やアルカリ洗浄工程、第2の水洗工程等の工程を有する場合、これらの工程においても液量の増加が生じるが、上記のように、得られるビスフェノールの品質への影響が大きいのは、本発明の第2工程に相当する反応終了時の液量の管理である。本発明のビスフェノール製造方法では、この反応終了時の液量増加を抑制できるため、全体的に液量の増加を抑制できる。例えば、各工程の液量のうち最大のものを最大液量とした場合、第1工程の反応液の液量に対する最大液量の質量比(第1工程の反応液の液量(g)/最大液量(g))を2以下や、1.5以下、1.3以下に抑えることができる。
本発明のビスフェノール製造方法で製造したビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
本発明のビスフェノール製造方法で製造されるビスフェノールの用途のひとつは、ポリカーボネート樹脂の製造方法の原料である。本発明のビスフェノール製造方法で製造されるビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法は、上述の方法により製造されたビスフェノールと、炭酸ジフェニル等とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる製造方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に撹拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、容量分析用0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液、及び容量分析用1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液は、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
(ビスフェノールC生成反応液の組成)
ビスフェノールC生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8mL/分にて、検出波長280nmで分析した。
なお、クレゾールおよびビスフェノールC(BPC)は、それぞれ検量線を作成し、質量%で算出した。クレゾールおよびビスフェノールC以外の成分は、面積%で算出した。
酸濃度測定は、電位差自動滴定装置を用いて実施した。
第2工程において抜き出された(除去された)第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を、測定に用いた第1の水相の質量(g)で除し、酸濃度を求めた。
・装置:京都電子工業株式会社製AT-610
・滴定液:測定する酸濃度に応じて、容量分析用0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液、又は容量分析用1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
(第1工程)
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、メタノール5g、クレゾール230g(2.13モル)、98質量%硫酸90gを入れた。また、滴下ロートにドデカンチオール5.4g、アセトン61g(1.05モル)を入れた。該セパラブルフラスコの内温が5~10℃の範囲となるように、滴下ロートの内液を滴下した。滴下後、該内温を10℃に維持し、1時間反応させた。その後、45℃まで昇温し、内温を45℃に維持した状態で1時間反応させ、ビスフェノールCを含む反応液を得た。
第1工程で得られたビスフェノールCを含む反応液に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを供給して、80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置し、第1の有機相と第1の水相とに分離し、第1の有機相を得た。
なお、第1の水相に析出物は見られなかった。また、第1の水相を抜出し、酸濃度を測定したところ、2.2mmol-NaOH/gであった。
得られた第1の有機相を80℃に維持した状態で、第1の有機相へ炭酸水素ナトリウム水溶液120gを加えて下相の第2の水相のpHが9以上になったことを確認した。第1の有機相と第2の水相とを相分離させて、下相の第2水相を抜き出し、第2の有機相を得た。
下相の第2の水相を抜出した後、得られた第2の有機相を80℃に維持した状態で、第2の有機相に脱塩水200gを加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相を第3の有機相とした。
得られた第3の有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで第3の有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCが32.6質量%であり、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量は6.8面積%であった。
実施例1において、第2工程で供給した25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを86gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
第2工程で得られた第1の水相には、析出物は見られなかった。第1の水相を抜出し、酸濃度を測定したところ、7.1mmol-NaOH/gであった。
第2の水洗工程後の第3の有機相の一部と取出し、高速液体クロマトグラフィーで有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCが32.6質量%であり、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量は6.8面積%であった。
実施例1において、第2工程で供給した25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを288gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
第2工程で得られた第1の水相には、硫酸ナトリウムの析出物が見られた。セパラブルフラスコから第1の水相を除去しようとしたが、セパラブルフラスコの槽底が閉塞し、抜き出すことができなかった。析出した硫酸ナトリウムを溶解させるため、セパラブルフラスコに入り得る水の量を供給したが、析出した硫酸ナトリウムを溶解させて閉塞を解消することはできず、第1の有機相の洗浄ができなかった。第1の水相の一部をセパラブルフラスコの上部から取出し、酸濃度を測定したところ、酸は検出されなかった(N.D.)。
実施例1において、第2工程で供給した25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを63gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
第2工程で得られた第1の水相には、硫酸ナトリウムの析出物が見らなかった。第1の水相を抜出し、酸濃度を測定したところ、9.2mmol-NaOH/gであった。
第2の水洗工程後に得られた第3の有機相の一部と取出し、高速液体クロマトグラフィーで該有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCが30.8質量%であり、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量は8.0面積%であった。
製造効率を評価するために、以下のように仮定し、第2工程の単位液量当たりのビスフェノールC(BPC)の製造量の数値を算出した。この値が大きいほど好ましいといえる。
・第2工程の液量は、第1工程の液量(使用した原料及び試薬(クレゾール、トルエン、ドデカンチオール、アセトン、原料硫酸及びメタノール)の合計量)と、第2工程で加えた水酸化ナトリウム水溶液の合計質量とする。
・第1の有機相は、第1工程おいて使用した原料及び試薬のうち有機相となるもの(クレゾール、トルエン、ドデカンチオール及びアセトン)の合計量と同じ616.4gとする。
・第3の有機相は、第1の有機相と同じとする。
・ビスフェノールCの質量は、高速液体クロマトグラフィーにより求められた第3の有機中のビスフェノールCの濃度に基づき、算出する。例えば、実施例1においては、第3の有機相中のビスフェノールCの濃度が32.6質量%であったので、この値を第3の有機相の質量にかけて、616.4g×32.6質量%=201gとなる。なお、比較例1については、第2工程においてセパラブルフラスコの槽底が閉塞してしまい、その後の精製ができなかったため、実施例1のビスフェノールの質量と同じとした。
実施例1で得られたビスフェノールC249gを、温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1.5Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、仕込んだ。また、トルエン373gを供給し、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認して、10℃まで冷却した。その後、遠心分離器(分速3000回転、10分間)を用いて固液分離を行い、ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC197gを得た。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
Claims (10)
- ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、
前記第2工程の後に、前記第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程と、
前記アルカリ洗浄工程の後に、前記第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であり、
前記第1の水相の酸濃度は、前記第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(ミリモル)を、前記滴定に用いた第1の水相の質量(g)で除した値であるビスフェノール製造方法。 - ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、
前記第2工程で得られた前記第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程と、
前記第1の水洗工程で得られた洗浄された第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であり、
前記第1の水相の酸濃度は、前記第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(ミリモル)を、前記滴定に用いた第1の水相の質量(g)で除した値であるビスフェノール製造方法。 - 前記アルカリ洗浄工程の後に、
前記第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有する請求項2に記載のビスフェノール製造方法。 - 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンである請求項1~3のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法。
- ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であり、
前記第1の水相の酸濃度は、前記第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(ミリモル)を、前記滴定に用いた第1の水相の質量(g)で除した値であり、
前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンであるビスフェノール製造方法。 - 前記第2工程の後に、
前記第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する請求項5に記載のビスフェノール製造方法。 - 前記第2工程で得られた前記第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有する請求項5に記載のビスフェノール製造方法。
- 前記第2工程において、前記反応液と前記第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度よりも高い温度にする請求項1~7のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法。
- 前記酸触媒が、硫酸である請求項1~8のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法でビスフェノールを製造する工程と、
製造した前記ビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有するポリカーボネート樹脂の製造方法。
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