JP7255109B2 - ビスフェノールの製造法、及びポリカーボネート樹脂の製造法 - Google Patents
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Description
本発明のビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
また、光学用ポリカーボネート樹脂のように光学用材料の原料として使用される分野もあり、近年では、より色調の優れたポリカーボネート樹脂を得るため、色調の良好なポリカーネート樹脂を製造できるビスフェノールが求められている。
また、特許文献2には、副反応物の生成を抑制するために、酸性触媒を含む第1の混合物と、特定のフェノール化合物と、特定のケトン化合物又はアルデヒドと化合物を含む第2の混合物のうち少なくとも一方に有機溶媒を添加し、前記第1の混合物に前記第2の混合物を加えて縮合反応させるビスフェノール化合物の製造方法が開示されている。
また、特許文献1や2に記載の製造方法で製造したビスフェノールは、反応に長時間を要し、反応時間の点でも改善の余地があった。
また、本発明は、前記ビスフェノールの製造法で得られたビスフェノールを用いた、色調の優れたポリカーボネート樹脂を安定的に製造できるポリカーボネート樹脂の製造法を提供することを目的とする。
[1] 酸触媒及び有機溶媒の存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造法であって、前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を、1.85以上2.20以下とし、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させるビスフェノールの製造法。
[2] 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトンである[1]に記載のビスフェノールの製造法。
[3] 前記芳香族アルコールが、クレゾールである[1]または[2]に記載のビスフェノールの製造法。
[4] 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素を含む[1]から[3]のいずれかに記載のビスフェノールの製造法。
[5] 前記酸触媒が、硫酸である[1]から[4]のいずれかに記載のビスフェノールの製造法。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載のビスフェノールの製造法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造法。
本発明は、酸触媒及び有機溶媒の存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造法であって、前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を、1.85以上2.20以下とし、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させるビスフェノールの製造法(以下、「本発明のビスフェノールの製造法」と記載する場合がある。)に関するものである。
本発明のビスフェノールの製造法に用いる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造法に用いるケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
R5とR6とが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されるシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
また、より重合活性の高いビスフェノールを得るためには、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、1.90以上が好ましい。また、その上限は、2.15以下が好ましく、2.10以下がより好ましい。
なお、このケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、反応液を調製するときに用いる芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとのモル比であり、仕込み時のモル比である。
本発明のビスフェノールの製造法で用いられる酸触媒としては、硫酸、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸などが挙げられる。
硫酸は、化学式H2SO4で表される酸性の液体である。一般的に、硫酸は水で希釈された硫酸水溶液として用いられ、その濃度に応じて、濃硫酸や希硫酸といわれる。例えば、希硫酸とは、質量濃度が90質量%未満の硫酸水溶液である。
用いる硫酸の濃度(硫酸水溶液のH2SO4の濃度)が低いと、水の量が多くなるため、ビスフェノールの生成反応が進行しにくくなり、ビスフェノールを製造する反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することが難しい場合がある。そのため、用いられる硫酸の濃度は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。また、90質量%以上や95質量%以上とすることもできる。また、用いられる硫酸の濃度の上限は、99.5質量%以下や99%質量以下とすることができる。
なお、この硫酸の濃度は、反応液を調製するときに用いられる硫酸水溶液の濃度であり、仕込み時の濃度である。
また、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させる反応では、助触媒としてチオール助触媒を用いることができる。助触媒として用いるチオール助触媒としては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸や、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン、メルカプトフェノールなどのアルキルチオールなどが挙げられる。
また、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比は、多い場合、ビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン及びアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
本発明のビスフェノールの製造法では、生成してくるビスフェノールを溶解や分散させるために有機溶媒の使用が必須である。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害しない範囲で特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられ、これらの溶媒を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
このように、硫酸と脂肪族アルコールを併用することで、硫酸の酸強度を制御し、原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色をより抑制することができる。また、硫酸と脂肪族アルコールの反応により生成する硫酸モノアルキルも触媒効果を示すことでビスフェノールの生成反応が起こりやすくなると考えられる。このため、副生成物の生成が抑制され、かつ、生成物の着色が低減されたビスフェノールを簡便かつ効率よく製造することが可能となる。
本発明のビスフェノールの製造法では、以下に示す反応式(3)に従って、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合により、以下の一般式(4)で表されるビスフェノールが製造される。
ビスフェノールの生成反応が発熱反応であることから、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給は、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給することが好ましい。
ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給時間(滴下時間)は、反応槽の冷却能力や製造スケール、製造されるビスフェノールの種類等に応じて適宜調整され、反応槽の冷却能力等によるが、例えば、0.3時間以上や0.5時間以上とすることができる。その上限は、例えば、5時間以下や3時間以下、1時間以下とすることができる。このようにすることで、反応熱の発生を抑えながら、反応液を調製できる。
本発明のビスフェノールの製造法において、縮合反応によって得られたビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。
具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。水洗や重曹水による洗浄、晶析等は複数回行ってもよい。
また、芳香族アルコールを多量に用いる場合は、晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させることができる。
本発明のビスフェノールの製造法により得られるビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
次に、本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造法につき説明する。
本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造法は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造する方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
(ビスフェノールCの定量分析)
ビスフェノールCの定量分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8mL/分、検出波長は280nmにて分析した。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
ポリカーボネート樹脂のペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。
装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
(1)ビスフェノールCの製造
(第1工程)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた3Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン278g、及び、オルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を30℃以下とした。次いで、トルエン及びオルトクレゾールの混合液を撹拌しながら、ここへ35質量%塩酸650gをゆっくり加え、トルエン、オルトクレゾール、及び、塩酸の混合液(a1-1)を得た。
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン66.8g(1.15モル)、ドデカンチオール7.5gを混合して混合液(a2-1)を調製し、前記滴下ロートに入れた。アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.15モル=1.85であった。
混合液(a2-1)を1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が30℃を越えないように混合液(a1-1)に滴下した。
滴下終了後、内温を30℃に維持したまま1時間撹拌し、その後、1時間かけて45℃に昇温し、スラリー反応液(A1)を得た。
有機相(b1-1)に脱塩水400gを入れ、混合した後に静置することで有機相と水相とに分離させ、水相を除去し、有機相(b2-1)を得た。
更に、有機相(b2-1)に1.5質量%の重曹水溶液240gを2回に分けて供給し、混合洗浄し、水相を除去し、有機相(b3-1)を得た。
得られた有機相(b3-1)を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却し、10℃の状態で1時間撹拌することで第1の晶析を行い、晶析スラリー液(B1)を得た。
得られた晶析スラリー液(B1)を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ケーキ(c1-1)192gを得た。
得られた有機相(b5-1)を、80℃から10℃まで冷却し、第2の晶析を行った。その後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットのビスフェノールC(c2-1)を得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC(c3-1)177gを得た。
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、得られたビスフェノールC(c3-1)100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から56.2g(0.968モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷0.968モル=2.20)に変更した以外は、実施例1-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-2)183gを得た。更に、ケーキ(c1-1)をケーキ(c1-2)に代えた以外は、実施例1-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-2)154gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-2)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、193分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、26,100であり、ペレットYIは、10.5であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から71.4g(1.23モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.23モル=1.73)に変更した以外は、実施例1-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-3)223gを得た。更に、ケーキ(c1-1)をケーキ(c1-3)に代えた以外は、実施例1-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-3)192gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-3)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、240分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、21,100であり、ペレットYIは、65.2であった。
表1より、ビスフェノールの製造においてアセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)が1.85よりも低いと、得られたビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造において得られるポリカーボネート樹脂のペレットYIが高く、色調が良好なポリカーボネート樹脂は得られないことが分かる。
また、アセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)が1.73では、得られたビスフェノールCを用いてポリカーボネート樹脂を製造するときに所定の撹拌動力となるまでの重合時間を長くしても、得られるポリカーボネート樹脂の分子量も低い結果であった。このことから、アセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)が1.73では、得られるビスフェノールCの重合活性が低下することがわかる。これは所定の撹拌動力となるまでの重合時間が長いためポリマー鎖に分岐ができるためと推定できる。
(1)ビスフェノールCの製造
(第1工程)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた3Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン278g、及び、オルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を30℃以下とした。次いで、トルエン及びオルトクレゾールの混合液を撹拌しながら、ここへ98質量%硫酸80gをゆっくり加え、トルエン、オルトクレゾール、硫酸の混合液(a1-4)を得た。
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン65.0g(1.12モル)、ドデカンチオール10.5gを混合して混合液(a2-4)を調製し、前記滴下ロートに入れた。アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.12モル=1.90であった。
混合液(a2-4)を1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が30℃を越えないように混合液(a1-4)に滴下した。
滴下終了後、内温を30℃に維持したまま1時間撹拌した。その後、トルエン60gを加え、1時間かけて45℃に昇温し、スラリー反応液(A4)を得た。
有機相(b1-4)に脱塩水400gを入れ、混合した後に静置することで有機相と水相とに分離させ、水相を除去し、有機相(b2-4)を得た。
更に、有機相(b2-4)に1.5質量%の重曹水溶液240gを2回に分けて供給し、混合洗浄し、水相を除去し、有機相(b3-4)を得た。
得られた有機相(b3-4)を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却し、10℃の状態で1時間撹拌することで第1の晶析を行い、晶析スラリー液(B4)を得た。
得られた晶析スラリー液(B4)を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ケーキ(c1-4)152gを得た。
得られたケーキ(c1-4)の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認することで、ケーキ(c1-4)がビスフェノールCであることを確認した。
得られた有機相(b5-4)を、80℃から10℃まで冷却し、第2の晶析を行った。その後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットのビスフェノールC(c2-4)を得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC(c3-4)132gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-4)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、200分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、24,900であり、ペレットYIは、11.2であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から70.2g(1.21モル; アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.21モル=1.76)に変更した以外は、実施例2-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-5)212gを得た。更に、ケーキ(c1-4)をケーキ(c1-5)に代えた以外は、実施例2-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-5)182gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-5)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、240分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、20,100であり、ペレットYIは、58.2であった。
(1)ビスフェノールCの製造
(第1工程)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1.5Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン278g、メタノール5g及びオルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を30℃以下とした。次いで、トルエン、メタノール及びオルトクレゾールの混合液を撹拌しながら、ここへ80質量%硫酸250gをゆっくり加えトルエン、メタノール、オルトクレゾール、硫酸の混合液(a1-6)を得た。
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン66.8g(1.15モル)、ドデカンチオール7.5gを混合して混合液(a2-6)を調製し、前記滴下ロートに入れた。アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.15モル=1.85であった。
混合液(a2-6)を1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が30℃を越えないように混合液(a1-6)に滴下した。
滴下終了後、内温を30℃に維持したまま1時間撹拌し、その後、0.5時間かけて45℃に昇温し、スラリー反応液(A6)を得た。
有機相(b1-6)に脱塩水400gを入れ、混合した後に静置することで有機相と水相とに分離させ、水相を除去し、有機相(b2-6)を得た。
更に、有機相(b2-6)に1.5質量%の重曹水溶液240gを2回に分けて供給し、混合洗浄し、水相を除去し、有機相(b3-6)を得た。
得られた有機相(b3-6)を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却し、10℃の状態で1時間撹拌することで第1の晶析を行い、晶析スラリー液(B6)を得た。
得られた晶析スラリー液(B6)を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ケーキ(c1-6)230gを得た。
得られたケーキ(c1-6)の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認することで、ケーキ(c1-6)がビスフェノールCであることを確認した。
得られた有機相(b5-6)を、80℃から10℃まで冷却し、第2の晶析を行った。その後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットのビスフェノールC(c2-6)を得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC(c3-6)205gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-6)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、150分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、25,700であり、ペレットYIは、12.0であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から65.1g(1.12モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.12モル=1.90)に変更した以外は、実施例3-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールCのケーキ(c1-7)228gを得た。更に、ケーキ(c1-6)をケーキ(c1-7)に代えた以外は、実施例3-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-7)201gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-7)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、120分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、24,700であり、ペレットYIは、9.7であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から60.8g(1.05モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.05モル=2.03)に変更した以外は、実施例3-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールCのケーキ(c1-8)218gを得た。更に、ケーキ(c1-6)をケーキ(c1-8)に代えた以外は、実施例3-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-8)195gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-8)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、180分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、24,900であり、ペレットYIは、7.6であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から58.0g(0.999モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.00モル=2.13)に変更した以外は、実施例3-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-9)203gを得た。更に、ケーキ(c1-6)をケーキ(c1-9)に代えた以外は、実施例3-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-9)180gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-9)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、193分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、253,00であり、ペレットYIは、8.5であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8(1.15モル)gから70.5g(1.21モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.21モル=1.76)に変更した以外は、実施例3-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-10)235gを得た。更に、ケーキ(c1-6)をケーキ(c1-10)に代えた以外は、実施例3-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-10)215gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-10)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、240分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、23,300であり、ペレットYIは、47.3であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を66.8g(1.15モル)から30.9g(0.532モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷0.532モル=4.00)に変更した以外は、実施例3-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-11)14gを得た。ケーキ(c1-11)の収量が少ないことから、これ以上の実験を断念した。
表2より、ビスフェノールCの製造において、アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比が、1.85以上であると、得られたビスフェノールCを用いたポリカーボネート樹脂の製造において、重合時間が短く、得られるポリカーボネート樹脂のペレットYIも低く抑えることができることが分かる。
一方で、ビスフェノールCの製造において、アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比が高くなると、第1の晶析で得られるケーキ量が減少することが分かる。
Claims (6)
- 酸触媒及び有機溶媒の存在下で、芳香族アルコールと、ケトンとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造法であって、
前記芳香族アルコールが、フェノール、クレゾール、及び、キシレノールからなる群から選択されるいずれかであり、
前記ケトンに対する前記芳香族アルコールのモル比を、1.85以上2.20以下とし、前記ケトンと、前記芳香族アルコールとを反応させるビスフェノールの製造法。 - 前記ケトンが、アセトンである請求項1に記載のビスフェノールの製造法。
- 前記芳香族アルコールが、クレゾールである請求項1または2に記載のビスフェノールの製造法。
- 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素を含む請求項1から3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法。
- 前記酸触媒が、硫酸である請求項1から4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造法。
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