JP2023006817A - ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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幸恵 中嶋
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Abstract

【課題】溶融色が良好なビスフェノールの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】ビスフェノールの製造方法であって、ビスフェノール溶液に酸化剤を添加した後、還元剤を添加する酸化還元工程を有する、ビスフェノールの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、又は芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1及び2)。
特開昭62-138443号公報 特開2008-214248号公報
ビスフェノールを原料に用いて得られる代表的な樹脂であるポリカーボネート樹脂は、無色であり、透明であることが求められる。ポリカーボネート樹脂の色調は、原料の色調の影響を大きく受ける。そのため、原料であるビスフェノールの色調も、無色であることが求められる。ここで、ビスフェノール粉末の色を直接定量することは困難であることから、溶媒に溶解させた際の色調をビスフェノールの色調として評価することがある。本明細書では、この色調を「溶融色」と称する。ポリカーボネート樹脂の製造において、特に溶融法においては、ビスフェノールを溶融させてポリカーボネート樹脂を製造することから、高温にさらされる。そのため、ビスフェノールの熱的な色調の安定性も求められる。
また、ポリカーボネート樹脂については、設計通りの分子量を有し、かつ色調が良好なポリカーボネート樹脂が求められている。このため、このようなポリカーボネート樹脂を製造するために、原料であるビスフェノールについては、溶融色に優れたビスフェノールが求められている。
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであって、溶融色が良好なビスフェノールの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ビスフェノ―ルに、酸化剤を作用させた後、還元剤を作用させることで、ビスフェノールの溶融色が改善することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[7]に存する。
[1] ビスフェノールの製造方法であって、
ビスフェノール溶液に酸化剤を添加した後、還元剤を添加する酸化還元工程を有する、ビスフェノールの製造方法。
[2] 前記ビスフェノール溶液が、
酸性触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合反応させて生成させて得られた反応工程の後、反応工程により得られた反応液の有機層を中和処理する中和工程によって得られた溶液である、[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3] 前記ビスフェノール溶液が、
ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させて得られた溶液である、[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4] 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトン又はアセトアルデヒドである、[2]に記載のビスフェノールの製造方法
[5] 前記ケトン又はアルデヒドが、ケトンである、[2]に記載のビスフェノールの製造方法。
[6] 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンである、[1]~[5]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法により製造したビスフェノールを原料に用いてポリカーボネート樹脂を重合する工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、酸化剤を作用させた後、還元剤を作用させることで、溶融色の良好なビスフェノールの製造方法が提供される。また、このビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法によって、色調に優れたポリカーボネート樹脂が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
<1.ビスフェノールの製造方法>
本発明の一実施形態に係るビスフェノールの製造方法(以下、単に「ビスフェノールの製造方法」とも称する。)は、ビスフェノール溶液に酸化剤を添加した後、還元剤を添加する酸化還元工程を有する、ビスフェノールの製造方法である。
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法は、上記の酸化還元工程以外の工程を有していてもよい。
上記の製造方法により得られたビスフェノールは、溶融色が良好である。本明細書において、「溶融色」とは、ビスフェノールの色調を評価するための指標であり、ビスフェノールを加熱溶融させて得られる溶液の色調を評価することができる。
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法により、上記の効果が得られる理由を本発明者らは以下のように考察する。本発明者らによる鋭意研究の結果、酸化剤で酸化された後、還元剤で還元されて生成された成分であり、かつ、有機相と水相とに分離させたときに水相に含まれる成分(色調悪化原因成分)が、色調悪化の原因であることが判明した。そして本発明者らは、ビスフェノール溶液に対して、酸化剤を添加した後、還元剤を添加することにより、溶液中の色調悪化原因成分の量を低減させることができる、すなわち色調が良好なビスフェノールを製造することができることを見出した。
ビスフェノール溶液は、特段制限されないが、pHに対する酸化剤又は還元剤の安定性の観点から、酸性触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合反応させて生成させて得られた反応工程の後、反応工程により得られた反応液の有機層を中和処理する中和工程によって得られた溶液(以下、「第1のビスフェノール溶液」とも称する。)であってよく、また、固体状態では表面のみ作用され、十分な効果が得られない観点から、ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させて得られた溶液(以下、「第2のビスフェノール溶液」とも称する。)であることが好ましい。
<1-1.第1のビスフェノール溶液>
ビスフェノール溶液が、第1のビスフェノール溶液である場合、つまり、酸性触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合反応させて生成させて得られた反応工程の後、反応工程により得られた反応液の有機層を中和処理する中和工程によって得られる溶液である場合について以下に説明する。
<1-1-1.反応工程>
第1のビスフェノール溶液の製造方法(以下、本項において「本実施形態に係るビスフェノールの製造方法」とも称する。)は、酸性触媒の存在下、アセトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合反応させてビスフェノールを生成させてビスフェノール溶液を得る反応工程を有する。
[芳香族アルコール]
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法に用いる芳香族アルコールは、特段制限されないが、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2023006817000001
~Rとしては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
これらのうちR及びRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから水素原子であることが好ましい。また、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。例えば好適なものとして、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R及びRが、水素原子である化合物が挙げられる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基や炭素数1~6のアルキル基であってよい。
上記一般式(1)で表される化合物として、具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなどが挙げられる。
中でも、芳香族アルコールは、キシレノール以外のものであることが好ましく、フェノール、及びクレゾールからなる群から選択されるいずれかであることが好ましく、クレゾールがより好ましい。
芳香族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
[ケトン又はアルデヒド]
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法に用いるケトン又はアルデヒドは、特段制限されないが、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
Figure 2023006817000002
とRとしては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
本発明者らは、色調悪化原因成分が、酸化剤の添加及び還元剤の添加によって水相に分離されるアルデヒド由来の一部の成分であることを見出した。したがって、本実施形態に係るビスフェノールの製造方法に用いるケトン又はアルデヒドとしては、色調悪化原因成分を生成し得るアルデヒドの含有量が低いことが好ましいことから、ケトンであることが好ましく、具体的には、上記のRとRは水素原子以外の基であることが好ましい。なお、色調悪化成分は、アルデヒドから生成された全ての化合物が相当するわけではなく、アルデヒドから生成され得る一部の化合物である。
とRは、2つの基の間で互いに結合又は架橋していてもよく、RとRとが隣接する炭素原子と一緒に結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。なお、シクロアルキリデン基とは、シクロアルカンの1つの炭素原子から2個の水素原子を除去した2価の基である。
とRとが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されるシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
上記一般式(2)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトア
ルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類、ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。アルデヒドとしては、アセトアルデヒドであることが好ましく、ケトンとしては、アセトンであることが好ましく、特に、アセトンを用いることが好ましい。
ケトン又はアルデヒドは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
アルデヒドの含有量の低いケトンを用いることで、溶融色の良好なビスフェノールを製造できる。また、得られたビスフェノールを用いて色調の優れたポリカーボネート樹脂を製造できる。ケトン中のアルデヒドの含有量は、通常300質量ppm以下であり、好ましくは200質量ppm以下であり、より好ましくは150質量ppm以下であり、さらに好ましくは100質量ppm以下であり、また、下限値は特に限定されないが、通常0.1質量ppm以上であり、0.2質量ppm以上であってよく、0.3質量ppm以上であってよい。ケトン中のアルデヒドの含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
本明細書における「質量」は、特段の断りがない限り、対象の要素が単一種から構成される場合には、その単一種の質量を示し、対象の要素が複数種から構成される場合には、その複数種の合計の質量を示す。
上記のアルデヒド含有量の範囲を満たすケトンは、アルデヒド含有量が少ない市販のケトンを入手してもよく、アルデヒド含有量が高いケトンから、アルデヒドを除去する処理をすることで、得ることもできる。ケトンからアルデヒドを除去する処理は、既知の方法を適用すればよく、例えば、化学処理(酸化又は還元)した後に蒸留することによりアルデヒドを除去することができる。
原料である芳香族アルコールに対するケトン又はアルデヒドの量が多い場合、ケトン又はアルデヒドが多量化し易く、また少ない場合は芳香族アルコールが未反応で損出する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比(芳香族アルコールのモル数/ケトン又はアルデヒドのモル数)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
[酸性触媒]
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法で用いられる酸性触媒の種類は特段制限されず、硫酸、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、又はメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸等を用いることができるが、反応性及び経済性の観点から、硫酸又は塩酸であることが好ましい。
縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する酸触媒のモル比(酸触媒のモル数/ケトン又はアルデヒドのモル数)は、少ない場合は、縮合反応の進行とともに副生する水によって酸触媒が希釈されて反応に時間を要する。また、多い場合は、ケトン又はアルデヒドの
多量化が進行する場合ある。これらのことから、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する酸触媒のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
[チオール助触媒]
また、本実施形態に係るビスフェノールの製造方法では、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させる反応において、助触媒としてチオール助触媒を用いることができる。助触媒として用いるチオール助触媒としては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸や、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン、メルカプトフェノールなどのアルキルチオールなどが挙げられるが、メルカプトカルボン酸は親水性が高いためにビスフェノール原料と混合し難いため、アルキルチオールが好ましく、アルキルチオールとしては、アルキル基が小さいと沸点が低く、取り扱いが難しい(臭気)ため、炭素数が6以上のものであることが好ましく、特に、手に入りやすく、親油性であり、沸点が高くハンドリングが容易である観点から、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)が好ましい。
縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比(チオール助触媒のモル数/ケトン又はアルデヒドのモル数)は、少ない場合、チオール助触媒を用いることによるビスフェノールの反応選択性に対する改善の効果が得られにくい。なお、ビスフェノールの反応選択性とは、ビスフェノールの生成反応において目的物であるビスフェノールの生成のされやすさの指標であり、ビスフェノールの反応選択性が優れるほどビスフェノールの生成量が多くなる。
また、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比は、多い場合、ビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、また、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
チオール助触媒は、後述するように、ケトン又はアルデヒドと予め混合してから反応に供することが好ましい。チオール助触媒とケトン又はアルデヒドとの混合方法は、チオール助触媒にケトン又はアルデヒドを供給してもよく、ケトン又はアルデヒドにチオール助触媒を供給してもよい。また、チオール助触媒とケトン又はアルデヒドとの混合液と、酸触媒との混合方法は、チオール助触媒とケトン又はアルデヒドとの混合液に酸触媒を供給してもよく、酸触媒にチオール助触媒とケトン又はアルデヒドとの混合液を供給してもよい。ケトン又はアルデヒドの自己縮合を抑えるため、酸触媒にチオール助触媒とケトン又はアルデヒドとの混合液を供給する方が好ましい。更に、反応槽に酸触媒と芳香族アルコールとを供給した後に、チオール助触媒とケトン又はアルデヒドとの混合液を反応槽に供給して混合する方法がより好ましい。
[反応溶媒]
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法では、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとの縮合反応を、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害しない範囲で特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられ、これらの溶媒を単独で用いても、2種以上を併用して用いて
もよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、又はメシチレン等が挙げられ、これらの溶媒を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。芳香族炭化水素は、ビスフェノールの製造に使用した後、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。このように芳香族炭化水素を再利用する場合は、沸点が低いものが好ましい。
脂肪族アルコールは、アルキル基とヒドロキシル基が結合したアルキルアルコールである。脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシル基が結合した1価アルコールでもよく、アルキル基と2個以上のヒドロキシル基が結合した多価アルコールであってもよい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐していてもよく、無置換であっても、アルキル基の炭素原子の一部が酸素原子によって置換されていてもよい。
また、脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシル基が結合したアルコールであることが好ましく、酸触媒との相溶のしやすさから、炭素数1~12のアルキル基と1個のヒドロキシル基が結合したアルコールであることがより好ましく、炭素数1~8のアルキル基と1個のヒドロキシル基が結合したアルコールであることが更に好ましい。
具体的な脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、又はトリエチレングリコール等を挙げることができる。好ましい脂肪族アルコールのひとつは、メタノールである。
なお、原料である芳香族アルコールを多量に使用して有機溶媒の代わりとしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再利用することで損出を低減できる。
溶媒を用いる場合、原料であるケトン又はアルデヒドに対する溶媒の質量比(溶媒の質量/ケトン又はアルデヒドの質量)は、多すぎると、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、生成してくるビスフェノールにより混合不良が生じる場合や、ケトン又はアルデヒドの多量化が促進される場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、また、その上限は、溶媒の種類に応じて、ビスフェノールの析出が起こる範囲で調整すればよく、50以下であってよく、30以下であってよい。
生成してくるビスフェノールは有機溶媒に完全に溶解させずに分散させた方が、ビスフェノールが分解しにくい。また、反応終了後、得られたビスフェノール溶液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時のろ液への損失)を低減できることからも、ビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。ビスフェノールの溶解度が低い溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、有機溶媒は、芳香族炭化水素を含むことが好ましく、ビスフェノールが溶解しにくいことや沸点が低いことから、好ましい芳香族炭化水素のひとつはトルエンである。
[ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとの縮合反応]
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法では、以下に示す反応式(3)に従って、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合により、以下の一般式(4)で表さ
れるビスフェノールが製造される。
Figure 2023006817000003
一般式(3)中、R~Rは、一般式(1)及び(2)におけるものと同義である。
Figure 2023006817000004
一般式(4)中、R~Rは、一般式(1)及び(2)におけるものと同義である。
上記一般式(4)で表される化合物として、具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらの中でも、色調のより優れたビスフェノールを得やすいため、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの製造方法とすることが好ましい。なお、本明細書では2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンをビスフェノールCと称する。
反応液の調製方法は、特に限定されず、芳香族アルコール、及びケトン又はアルデヒドを含有する溶液と、酸触媒を含有する溶液とを混合する方法や、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する溶液と、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液とを混合する方法等が挙げられる。
ケトン又はアルデヒドの自己縮合による多量化を抑制するためには、酸触媒及び芳香族アルコールを含有する溶液と、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液とを混合することが好ましい。この場合、酸触媒及び芳香族アルコールを含有する溶液は、チオール助触媒を含有することが好ましい。
また、酸触媒及び芳香族アルコールを含有する溶液と、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液との混合は、通常、酸触媒及び芳香族アルコールを含有する溶液に、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液を供給することで行うことができる。ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給は、一括で供給しても、分割して供給してもよい。
ビスフェノールの生成反応が発熱反応であることから、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給は、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給することが好ましい。
ビスフェノールの生成反応は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合反応である。縮合反応の反応温度は、高温の場合、ケトン又はアルデヒドの多量化が進行しやすい。また、低温の場合、反応に要する時間が長時間化する。これらのことから、反応温度は、-30℃以上、-20℃以上、-15℃以上とすることができ、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。また、反応温度は段階的に昇温してもよい。
縮合反応の反応時間は、製造スケールや製造するビスフェノールの種類、反応温度等の反応条件により適宜調整される。反応時間が長い場合、生成したビスフェノールが分解しやすくなることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内であり、また、通常2時間以上であり、5時間以上又は10時間以上としてもよい。
なお、反応時間は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの混合時間(反応液の調製の時間)も含むものである。例えば、芳香族アルコールと酸触媒とを混合した溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、2時間反応させた場合、反応時間は3時間である。
ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給時間(滴下時間)は、反応槽の冷却能力や製造スケール、製造されるビスフェノールの種類等に応じて適宜調整され、反応槽の冷却能力等によるが、例えば、0.3時間以上又は0.5時間以上とすることができ、また、例えば、5時間以下、3時間以下、又は1時間以下とすることができる。このようにすることで、反応熱の発生を抑えながら、ビスフェノール溶液を調製することができる。
反応により得られたビスフェノール溶液中のビスフェノールの含有量は、特段制限されないが、通常10質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常65質量%以下であり、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
反応により得られたビスフェノール溶液のpHは、特段制限されないが、反応が酸触媒下で行われるため、通常5.5以下であるが、5.0以下であってよく、4.5以下であってよく、4.0以下であってよく、また、通常0以上であり、0.1以上であってよく、0.2以上であってよく、0.3以上であってよい。このpHの測定温度は、室温(20~30℃)が好ましく、例えば25℃が好ましい。
<1-1-2.中和>
前記反応工程の後、さらに、反応工程により得られた反応液の有機層を中和処理する中和工程を有する。
中和処理では、縮合反応によって得られたビスフェノールにおいて、酸触媒を中和し、除去することができ、具体的には、ビスフェノールを含有する有機相と、脱塩水又は塩基性水溶液とを混合した後、有機相と水相とに相分離させ、水相を除去し、有機相を得る。
この除去される水相のpHが7.5以上、13.0以下、又は8.0以上、12.5以下、又は8.5以上、12.0以下の塩基性になるまで、脱塩水及び/又は塩基性水溶液を用いて、有機相の洗浄を繰り返し行う。塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム等の塩基物質が溶解した水溶液が挙げられる。複数回洗浄を行う場合は、同一の塩基性水溶液を用いても、異なる塩基性水溶液を用いてもよい。
水相のpHの測定温度は、室温(20~30℃)が好ましく、例えば25℃が好ましい。
ビスフェノールを含む有機相を水で洗浄する際、除去される水相の電気伝導度で洗浄の終点を管理することが出来る。触媒由来の金属塩がビスフェノールを含む有機相に残留すると色調悪化を引き起こすため、洗浄後の水相の電気伝導度は好ましくは100μS/cm以下であり、より好ましくは50μS/cm以下であり、更に好ましくは10μS/cm以下である。
水相の電気伝導度の測定温度は、室温(20~30℃)が好ましく、例えば25℃が好ましい。
反応工程以後の各工程に供するビスフェノール溶液としては、別の反応工程で得られたビスフェノール溶液を混合した混合溶液を用いてもよい。混合溶液とした場合の混合溶液の構成や特性の条件は、上記のビスフェノール溶液の構成や特性の条件を適用することができる。また、混合溶液とした場合、複数の反応工程のうち、少なくともいずれか1つの反応工程が上記の反応工程の条件を満たすことが好ましく、全ての反応工程が上記の反応工程の条件を満たすことがより好ましい。
<1-1-3.精製工程>
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法は、上述の反応工程と後述の酸化還元工程との間に、さらに、反応工程により得られたビスフェノール溶液を精製する工程、具体的には、晶析やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製する工程を有していてよい。精製手段としては、作業容易性及び経済性の観点から、晶析が好ましく、この場合、本実施形態に係るビスフェノールの製造方法は、反応により得られたビスフェノール溶液を晶析してビスフェノール組成物を得た後、該ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させてビスフェノール溶液を得る精製工程を有する。
晶析を行う場合、ビスフェノール溶液の有機相を冷却し晶析させてよく、芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させてよい。
晶析は複数回行ってもよい。例えば、本実施形態に係るビスフェノールの製造方法が第2の精製工程が有する場合、第1の精製工程と後述する酸化還元工程との間に、さらに、ビスフェノール溶液を晶析してビスフェノール組成物を得た後、該ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させてビスフェノール溶媒を得る第2の精製工程を有していてよい。第2の精製工程の条件は、上述の精製工程の条件を同様に適用することができる。このように、精製工程を繰り返すことにより、第3の精製工程を有していてもよく、第4の精製工程を有していてもよいが、晶析の際にビスフェノールが一部母液に溶解し損失となるため、好ましくは5回以下であり、より好ましくは3回以下である。
晶析処理としては、具体的には、反応工程により得られたビスフェノール溶液又は中和処理により得られたビスフェノールを含む有機相を冷却することにより行うことができる。
晶析のための冷却温度は、特段制限されないが、冷却温度は高すぎると結晶が十分に析出しないため、通常30℃以下であり、25℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましく、15℃以下であることがさらに好ましく、また、通常-30℃以上であり、-20℃以上であることが好ましく、-15℃以上であることがより好まし
く、-10℃以上であることがさらに好ましい。
晶析のための冷却時間は、特段制限されず、所望の量が入手できるまで行うことが好ましい。
晶析して得られたビスフェノール組成物を溶解させる溶媒の種類は特段制限されず、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール等を用いることができ、経済的観点から、トルエン、キシレン、又はベンゼンが好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
晶析したビスフェノールを有機溶媒に溶解させることによって得られるビスフェノール溶液中のビスフェノールの含有量は、特段制限されないが、経済的観点から、通常10質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましく、17質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、また、晶析時のビスフェノール濃度が高すぎると、結晶の成長を阻害し、また、流動性の悪化により抜出の際に配管の閉塞等のトラブルが生じるため、通常60質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
晶析したビスフェノールを有機溶媒に溶解させることによって得られるビスフェノール溶液中の有機溶媒の含有量は、特段制限されないが、晶析時のビスフェノール濃度が高すぎると、結晶の成長を阻害し、また、流動性の悪化により抜出の際に配管の閉塞等のトラブルが生じるため、通常1質量%以上であり、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、また、経済的観点から、通常95質量%以下であり、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
精製工程後のビスフェノール溶液のpHは、特段制限されないが、重合活性安定化の観点から、通常6.5以上であり、6.6以上であることが好ましく、6.7以上であることがより好ましく、6.8以上であることがさらに好ましく、また、通常8.0以下であり、7.7以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましく、7.4以下であることがさらに好ましい。このpHの測定温度は、室温(20~30℃)が好ましく、例えば25℃が好ましい。
なお、精製工程は、後述する酸化還元工程の後にも設けていてよく、酸化還元工程により得られる酸化還元処理済み溶液におけるビスフェノールの含有率を向上させることができる。
精製工程以後の各工程に供するビスフェノール溶液としては、別の精製工程で得られたビスフェノール溶液と混合した混合溶液や、反応工程で得られたビスフェノール溶液と、別の反応工程で得られたビスフェノール溶液を精製工程に供して得られたビスフェノール溶液とを混合した混合溶液を用いてもよい。混合溶液とした場合の混合溶液の構成や特性の条件は、上記のビスフェノール溶液の構成や特性の条件を適用することができる。
<1-2.第2のビスフェノール溶液>
ビスフェノール溶液が、第2のビスフェノール溶液である場合、つまり、ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させて得られたビスフェノール溶液である場合について、以下に説明する。
ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させてビスフェノール溶液を得る方法は、特段制限されないが、例えば、上記の精製工程における、ビスフェノール組成物を有機溶媒に
溶解させてビスフェノール溶液を得る方法を同様に適用することができる。
ビスフェノール組成物は、ビスフェノールが含まれていれば特段制限されず、ビスフェノール以外の成分が含まれていてよく、例えば、上述した「1-2.精製工程」で説明したビスフェノール組成物を用いてもよく、具体的には、上述の反応工程、中和工程、及び精製工程を経て調製されたビスフェノール組成物であってよい。また、ビスフェノール組成物の形態は特段制限されないが、通常、固体である。
ビスフェノール組成物中に含まれるビスフェノールの種類は特段制限されず、上述の第1のビスフェノール溶液で説明したビスフェノールであってよい。ビスフェノール組成物中のビスフェノールの含有量は、特段制限されないが、少ないと経済的でなく、多すぎると均一溶液となり得ない観点から、通常0.1質量%以上であって、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常90質量%以下であって、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
ビスフェノール組成物は、ビスフェノール以外の成分を含んでいてよく、例えば、クレゾール、フェノール、キシレノール、が挙げられる。
また、ビスフェノール組成物を溶解させるための有機溶媒の種類は特段制限されず、上述の第1のビスフェノール溶液で説明した有機溶媒であってよい。
また、第2のビスフェノール溶液は、ビスフェノール組成物及び有機溶媒以外の成分を含有していてもよい。
ビスフェノール溶液中のビスフェノールの含有量は、特段制限されないが、経済的観点から、通常10質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましく、17質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、また、晶析時のビスフェノール濃度が高すぎると、結晶の成長を阻害し、また、流動性の悪化により抜出の際に配管の閉塞等のトラブルが生じるため、通常60質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
ビスフェノール溶液中の有機溶媒の含有量は、特段制限されないが、少ないと経済的でなく、多すぎると均一溶液となり得ない観点から、通常0.1質量%以上であって、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常90質量%以下であって、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
<1-3.酸化還元工程>
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法は、ビスフェノール溶液に、酸化剤を添加した後、還元剤を添加する酸化還元工程を有する。上述したように、酸化剤で酸化された後、還元剤で還元されて生成された成分であり、かつ、有機相と水相とに分離させたときに水相に含まれる成分(色調悪化原因成分)が、色調悪化の原因であることを本発明者らは見出した。よって、この色調悪化原因成分を酸化還元済み溶液から排水として除去することにより、該溶液中の色調悪化原因成分の量を低減させることができる、すなわち色調が良好なビスフェノールを製造することができる。
ビスフェノール溶液へ酸化剤を添加する方法、及び還元剤を添加する方法は、特段制限されず、公知の方法により行うことができ、適宜攪拌しながら行うことができる。
なお、酸化還元の処理は、1回のみ実施してもよく、複数回実施してもよい。
また、酸化処理と還元処理との間に別の処理を行ってもよいが、連続で行うことが好ましい。
酸化剤の種類は特段制限されず、例えば、過酸化水素水、塩素酸塩水、次亜塩素酸塩水
、又は過マンガン酸カリウム水等を用いることができ、酸化剤が無色である方が好ましい観点から、過酸化水素水、塩素酸水、又は次亜塩素酸塩水が好ましく、過酸化水素水が特に好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
還元剤の種類は特段制限されず、例えば、クエン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、シュウ酸、又は水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができ、取扱いが容易であり、安定であり、安全に取扱いが出来る観点から、クエン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、又は亜硫酸ナトリウムが好ましく、クエン酸ナトリウムが特に好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
ビスフェノール溶液において、ビスフェノールに対する酸化剤の質量比は、特段制限されないが、少ないと効果が得られず、多いと廃水処理の負荷が増加する観点から、通常0.00001以上であり、0.0005以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.005以上であることがさらに好ましく、また、通常10以下であり、5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
ビスフェノール溶液において、ビスフェノールに対する還元剤の質量比は、特段制限されないが、少ないと効果が得られず、多いと廃水処理の負荷が増加する観点から、通常0.00001以上であり、0.0005以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.005以上であることがさらに好ましく、また、通常10以下であり、5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
酸化還元工程により得られた酸化還元処理済み溶液中のビスフェノールの含有量は、特段制限されないが、多すぎるとビスフェノールが析出してしまい効果が得られなくなり、少なすぎると効率が悪化する観点から、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常80質量%以下であり、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化還元工程により得られた酸化還元処理済み溶液のpHは、特段制限されないが、酸化剤と還元剤が安定に存在して、ビスフェノールに作用させる観点から、通常1以上であり、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、また、通常12以下であり、11以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。このpHの測定温度は、室温(20~30℃)が好ましく、例えば25℃が好ましい。
上記の酸化剤及び還元剤の添加処理後の溶液において、色調悪化原因成分を分離する方法は特段制限されず、溶液を放置することにより分離させてもよく、一般的な分離操作で用いる成分を添加して分離させてもよい。
<1-4.濃縮工程>
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法は、上述の酸化還元工程により得られた酸化還元処理済み溶液を濃縮することにより、該溶液中のビスフェノールを回収する濃縮工程を有していてよい。
濃縮する手段は特段制限されず、公知の方法を適用することができ、例えば、晶析処理を適用する場合、固体のビスフェノールを得ることができ、上述の精製工程で説明した晶
析処理の条件を適用することができる。また、晶析処理以外の手段としては、遠心分離法等の固液分離法を利用するこができ、この方法によれば固体のビスフェノールを得ることができる。
<2.ビスフェノールの用途>
上述したビスフェノールの製造方法において得られるビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、又はシアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの樹脂の原料として用いることができる。また、硬化剤、添加剤、又はこれらの前駆体などとして用いることができる。さらに、感熱記録材料等の顕色剤、退色防止剤、殺菌剤、又は防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、又はエポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、又は変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<3.ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明の別の実施形態は、上記の製造方法により得られたビスフェノールを原料に用いてポリカーボネート樹脂を重合する工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法(以下、単に「ポリカーボネート樹脂の製造方法」とも称する。)である。
上記の製造方法で得られたビスフェノールを原料に用いてポリカーボネート樹脂を重合する工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、上記のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造する方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノール及び炭酸ジフェニルを原料に用いた製造方法の一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノール中のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、ビスフェノール及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられるエステル交換触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、更に好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、更に好ましくは20μモル以下である。
エステル交換触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
ポリカーボネート樹脂の製造において、重合時間は、製造スケールや原料の比率、所望とするポリカーボネート樹脂の分子量等によって適宜調整される。重合時間が長いと色調悪化などの品質悪化が顕在化するため、10時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。重合時間の下限は、0.1時間以上や0.3時間以上とすることができる。
また、ビスフェノールを原料として用いて、溶融重合法によりポリカーボネート樹脂を製造する場合、高分子量のポリカーボネート樹脂を得にくい傾向にあるが、本実施形態に係るビスフェノールは、重合活性に優れる(重合活性が高い)ため、分子量の大きなポリカーボネートを効率的に製造することができる。本実施形態に係るポリカーボネート樹脂の製造方法では、本実施形態に係るビスフェノールを用いることで、このような高分子量(例えば、粘度平均分子量10,000~100,000や24,000~50,000)のポリカーボネート樹脂を短い重合時間(例えば、3時間以下)で製造できる。また、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂の製造方法では、本実施形態に係るビスフェノールを用いることで、色調の優れたポリカーボネート樹脂を得ることができる。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
以下の実施例および比較例において、オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、98質量%硫酸、ドデカンチオール、アセトン、アセトアルデヒド、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、アセトニトリル、酢酸、酢酸アンモニウム、及び富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
[分析]
<ビスフェノールCの分析>
ビスフェノールの組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。以下の各実施例で得られたビスフェノールはビスフェノールCであり、その純度は通常99質量%以上であることから、この分析では、得られた固体がビスフェノール
Cであることを確認するために用いた。
・装置:島津製作所社製「LC-2010A」
Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 250mm×3.0mmID・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル:脱塩水=1.500g:1mL:900mL:150mLの溶液
・分析時間0分では、溶離液組成はA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~41.67分はA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間41.67~50分はA液:B液=10:90に維持、
流速0.34mL/分にて分析した。
<pHの測定>
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METER ES-73」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
<電気伝導度>
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D-71」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
<ビスフェノールの溶融色>
ビスフェノールの溶融色は、日電理化硝子社製試験管「P-24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールCを20g入れて、190℃で30分間溶融させ、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
[参考例1]
(1-1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、オルトクレゾール230g、及びメタノール15gを入れ、内温を10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%硫酸95gを入れ、混合液A1とした。
次に、三角フラスコにアセトン65g、ドデカンチオール5g、及びトルエン50gを入れて攪拌して混合液B1を得て、滴下ロートに入れた。
混合液A1を10℃以下に維持した状態で、該滴下ロート内の混合液B1を撹拌しながら1時間分かけて混合液A1へ滴下し、10℃に維持した状態で更に2時間撹拌し、ビスフェノールCのビスフェノール溶液C1を得た。
ビスフェノール溶液C1に25%水酸化ナトリウム溶液190gを加えて撹拌し75℃まで昇温した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相D1を得た。
75℃で得られた有機相D1に、脱塩水100gを加え、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相E1を得た。
得られた有機相E1に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液100gを加えて撹拌して中和し、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相F1を得た。
得られた有機相F1に、脱塩水100gを加え、1時間攪拌して、静置させて油水分離した。油水分離後、水相1をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相G1を得た。得られた水相1は525μS/cmであったが、水相が10μS/cm以下になるまで、脱塩水100gで有機相の水洗を繰り返し、有機相H1を得た。
有機相H1を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた。得られたビスフェノールC含有結晶を含むスラリー液を、遠心分離機により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ180gを得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度90℃で軽沸分を留去することで、白色固体152gを得た。得られた白色固体の一部を、高速液体クロマトグラフィーを用いて、ビスフェノールCであることを確認した。
(1-2)ビスフェノールCの色調
上記の(1-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は15であった。
[参考例2]
(2-1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、オルトクレゾール230g、及びメタノール15gを入れ、内温を10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%硫酸95gを入れ、混合液A1とした。
次に、三角フラスコにアセトン65g、ドデカンチオール5g、及びトルエン50gを入れて攪拌して混合液B1を得て、滴下ロートに入れた。
混合液A1を10℃以下に維持した状態で、該滴下ロート内の混合液B1を撹拌しながら1時間分かけて混合液A1へ滴下し、ビスフェノールCのビスフェノール溶液C1’を得た。
更に、アセトアルデヒド4gを該滴下ロートに入れ、滴下ロートを用いてビスフェノールの反応液C1’に10℃に維持した状態でアセトアルデヒドを供給した後に、更に2時間撹拌し、ビスフェノールCのビスフェノール溶液C2を得た。
ビスフェノール溶液C2に25%水酸化ナトリウム溶液190gを加えて撹拌し75℃まで昇温した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相D1を得た。
75℃で得られた有機相D1に、脱塩水100gを加え、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相E1を得た。
得られた有機相E1に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液100gを加えて撹拌して中和し、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相F1を得た。
得られた有機相F1に、脱塩水100gを加え、1時間攪拌して、静置させて油水分離した。油水分離後、水相1をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相G1を得た。得られた水相1は625μS/cmであったが、水相が10μS/cm以下になるまで、脱塩水100gで有機相の水洗を繰り返し、有機相H1を得た。
有機相H1を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた。得られたビスフェノールC含有結晶を含むスラリー液を、遠心分離機により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ160gを得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度90℃で軽沸分を留去することで、白色固体140gを得た。得られた白色固体の一部を、高速液体クロマトグラフィーを用いて、ビスフェノールCであることを確認した。
(1-2)ビスフェノールCの色調
(1-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は87であった。
[参考例3]
参考例1で得られたハーゼン色数(APHA)15のビスフェノールC 67gと参考例2で得られたハーゼン色数(APHA)87のビスフェノールC 100gを500リットルのポリ容器に入れ、十分に混合して、ビスフェノールC混合物を得た。得られたビスフェノールC混合物の溶融色を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)が58であった。
[実施例1]
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、参考例3で得られたビスフェノールC混合物50g、トルエン100g、5質量%過酸化水素水100gを入れた後、75℃まで昇温した。その後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相1を得た。
得られた有機相1に5質量%クエン酸ナトリウム水溶液100gを加え、1時間攪拌した。その後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相2を得た。
得られた有機相2に、脱塩水100gを加え、1時間攪拌した。その後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相1をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相3を得た。得られた水相1の電気伝導度は734μS/cmであったが、水相が10μS/cm以下になるまで、脱塩水100gで有機相の水洗を繰り返し、有機相4を得た。
有機相4を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた。得られたビスフェノールC含有結晶を含むスラリー液を、遠心分離機により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ40gを得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度90℃で軽沸分を留去することで、白色固体25gを得た。得られた白色固体の一部を、高速液体クロマトグラフィーを用いて、ビスフェノールCであることを確認した。得られたビスフェノールCの色調を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)が30であった。
[比較例1]
5質量%過酸化水素水100gも、5質量%クエン酸ナトリウム水溶液100gを加えなかったこと以外は実施例1と同様に実施してビスフェノールCを得た。得られたビスフェノールCの色調を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)が38であった。
[比較例2]
5質量%過酸化水素水100gを加えなかったこと以外は実施例1と同様に実施してビスフェノールCを得た。得られたビスフェノールCの色調を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)が38であった。
[比較例3]
5質量%クエン酸ナトリウム水溶液100gを加えなかったこと以外は実施例1と同様に実施してビスフェノールCを得た。得られたビスフェノールCは、ビスフェノールC混合物よりも色調が悪化し、着色が激しいものであった。
上記の実施例1及び比較例1~3におけるビスフェノールC混合物のハーゼン色数(APHA)、酸化剤の使用の有無、還元剤の使用の有無、得られたビスフェノールCの色数(APHA)を下記表1にまとめた。
下記表1より、ビスフェノールC混合物について、酸化剤を添加した後、還元剤を添加することで、ビスフェノールCの色調が大きく改善することが分かる。
Figure 2023006817000005

Claims (7)

  1. ビスフェノールの製造方法であって、
    ビスフェノール溶液に酸化剤を添加した後、還元剤を添加する酸化還元工程を有する、ビスフェノールの製造方法。
  2. 前記ビスフェノール溶液が、
    酸性触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合反応させて生成させて得られた反応工程の後、反応工程により得られた反応液の有機層を中和処理する中和工程によって得られた溶液である、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  3. 前記ビスフェノール溶液が、
    ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解させて得られた溶液である、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトン又はアセトアルデヒドである、請求項2に記載のビスフェノールの製造方法
  5. 前記ケトン又はアルデヒドが、ケトンである、請求項2に記載のビスフェノールの製造方法。
  6. 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンである、請求項1~5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法により製造したビスフェノールを原料に用いてポリカーボネート樹脂を重合する工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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