JP7107044B2 - ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の方法で製造されたビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
ビスフェノールは、光学用ポリカーボネート樹脂のように光学用材料として使用される分野もあり、近年では、より色調の優れた、透明なビスフェノールが求められている。
かかる色調の改善方法としては、例えば、ビスフェノールAに着色防止用安定化剤としてヒドロキシルアミンを用いた方法(特許文献3)、ビスフェノールAに次亜リン酸の添加及び熱処理を含む方法(特許文献4)、ヒドロキシフェニルアルカンにアルカリ金属ジチオナイトを用いる方法(特許文献5)、ビスフェノールフルオレン類に炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒を用いた方法(特許文献6)などが知られている。
かかる状況下、ビスフェノールの色調をより改善し、ポリカーボネートの重合反応を安定化することができるビスフェノールの製造方法が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、良好な色調を有するビスフェノールを簡便に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。また、ビスフェノールを製造し、これを用いて色調が良好なポリカーボネート樹脂を安定的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
<1> 酸触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させてビスフェノールを生成させて反応組成物を得る第1工程と、前記反応組成物をpH9以上に調整してビスフェノール溶液を得る第2工程と、前記ビスフェノール溶液を晶析してビスフェノール組成物を得る第3工程と、前記ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解してビスフェノール組成物溶液を得る第4工程と、前記ビスフェノール組成物溶液を晶析してビスフェノールを得る第5工程と、を有するビスフェノールの製造方法であって、第3工程以降の工程において、前記ビスフェノール溶液、前記ビスフェノール組成物、及び、前記ビスフェノール組成物溶液からなる群から選択される少なくとも1つにチオールを添加するビスフェノールの製造方法。
<2> 前記芳香族アルコールが、フェノール、クレゾール、及び、キシレノールからなる群から選択されるいずれか1つである<1>に記載のビスフェノールの製造方法。
<3> 前記ビスフェノール組成物1gに対して、前記チオールを0.0001g以上、0.1g以下添加する<1>又は<2>に記載のビスフェノールの製造方法。
<4> 前記酸触媒が、硫酸である<1>から<3>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<5> 前記第5工程において、前記ビスフェノール組成物溶液にチオールを添加する<1>から<4>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<6> <1>から<5>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法により得られたビスフェノールを用いて、ポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明のビスフェノールの製造方法は、以下の第1~5工程をこの順に有する方法である。
第1工程:酸触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させてビスフェノールを生成させて反応組成物を得る工程
第2工程:前記反応組成物をpH9以上に調整してビスフェノール溶液を得る工程
第3工程:前記ビスフェノール溶液を晶析してビスフェノール組成物を得る工程
第4工程:前記ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解してビスフェノール組成物溶液を得る工程
第5工程:前記ビスフェノール組成物溶液を晶析してビスフェノールを得る工程
更に、第3工程以降の工程において、前記ビスフェノール溶液、前記ビスフェノールの組成物、及び、前記ビスフェノール組成物溶液からなる群から選択される少なくとも1つにチオールを添加することを必須とする。
第1工程は、酸触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させてビスフェノールを生成させて反応組成物を得る工程である。
ビスフェノールの反応は、通常、以下に示す反応式(1)に従って、硫酸等の酸触媒存在下で、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させることにより行われる。
本発明で製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造方法に用いる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造方法の第1工程に用いるケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(4)で表される化合物である。
本発明の酸触媒としては、硫酸、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸などが挙げられる。酸触媒は、硫酸、塩酸、及び、塩化水素ガスからなる群より選ばれるいずれか1つであることが好ましい。また、反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から、酸触媒としては硫酸がより好ましい。
ビスフェノールの生成反応に用いる溶媒として、芳香族炭化水素を使用することが可能である。また、ビスフェノールの製造に使用した溶媒を、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。溶媒を再利用する場合は、沸点が低い溶媒が好ましい。
また、溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することで損失を低減できる。
本発明のビスフェノールの製造方法の第1工程において、ビスフェノールの生成反応は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合反応である。縮合反応の反応温度は、高温の場合ケトン又はアルデヒドの多量化が進行しやすく、低温の場合は反応に要する時間が長時間化する。これらのことから、反応温度の下限は、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、更に好ましくは-15℃以上である。また、反応温度の上限は、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
なお、反応時間は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの混合時間も含むものである。例えば、芳香族アルコールと酸触媒とを混合した混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
また、反応は、用いる酸触媒と同等量以上の水や塩基を加えて酸触媒濃度を低下させることで停止させることが可能である。
第2工程は、第1工程で得られた反応組成物をpH9以上に調整してビスフェノール溶液を得る工程である。具体的には、第1工程で得られた反応組成物のpHが9以上となるように、反応組成物に塩基性水溶液を混合した後、有機相と水相とに分離させる。その後、水相を除去することで、有機相であるビスフェノール溶液が得られる。
なお、反応組成物に塩基性水溶液を混合し、有機相と水相とに相分離させた後の水相のpHをpHメーターで測定し、pHが9以上であれば、反応組成物のpHが9以上であると判断できる。また、反応組成物と塩基性水溶液の混合物の一部をサンプリングし、このpHを測定して、pHが9以上となっているかを判断してもよい。
また、第2工程において、pHの上限は特に限定されず、pH14以下や、13以下、12以下、11以下、10以下に管理できる。
なお、加熱と溶媒の追加供給を行う場合、その混合の順序は特に限定されない。第1工程で得られた反応組成物に溶媒を加えて加熱し、ビスフェノールを溶解させた後、塩基性水溶液を加えて反応組成物をpH9以上に調整してもよい。また、第1工程で得られた反応組成物と溶媒と塩基性水溶液とを混合した後、加熱を行ってもよい。
溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を用いることができる。また、加熱温度は、例えば、60~90℃とすることができる。
第3工程は、第2工程で得られたビスフェノール溶液を晶析することでビスフェノール組成物を得る工程である。
晶析の方法としては、例えば、ビスフェノールの温度差による溶解度差を用いた方法、貧溶媒を供給することで固体を析出させる方法のいずれも適用できる。ビスフェノール溶液に貧溶媒を供給しビスフェノールを析出させると、得られるビスフェノール組成物の純度が低下することから、ビスフェノールの温度差による溶解度差を利用してビスフェノールを析出させる方法が好ましい。
第4工程は、第3工程で得られたビスフェノール組成物を、有機溶媒に溶解してビスフェノール組成物溶液を得る工程である。
また、第3工程で得られるビスフェノール組成物は、全量を第4工程に用いてもよく、第3工程で得られたビスフェノール組成物の一部を用いてもよい。
有機溶媒としては、上記のビスフェノールの生成反応に使用できる溶媒を用いることができる。温度によってビスフェノールの溶解度差が大きく、温度差によってビスフェノールが析出しやすいことから、芳香族炭化水素が好ましい。
また、良溶媒である、脂肪族アルコールを用いてもよく、イソプロピルアルコール等を用いることができる。
ビスフェノール組成物に対して用いる有機溶媒が多すぎると、第5工程にてビスフェノールが晶析しにくい。また、ビスフェノール組成物に対して用いる有機溶媒が少なすぎると、着色成分が残存しやすくなる。そのため、ビスフェノール組成物1gに対して、有機溶媒が0.5g以上となるように混合することが好ましく、0.6g以上となるように混合することがより好ましい。また、ビスフェノール組成物1gに対して、有機溶媒が10g以下となるように混合することが好ましく、9g以下となるように混合することがより好ましい。
第5工程は、第4工程で得られたビスフェノール組成物溶液を晶析してビスフェノールを得る工程である。
晶析の方法は、第3工程と同様に、ビスフェノールの温度差による溶解度差を用いた方法、貧溶媒を供給することで固体を析出させる方法のいずれも適用できる。ビスフェノール組成物溶液に貧溶媒を供給し、ビスフェノールを析出させると得られるビスフェノールの純度が低下することから、ビスフェノールの温度差による溶解度差を利用して、ビスフェノールを析出させる方法が好ましい。
また、チオールの添加量は、少なすぎるとベンゾキノンを還元する効果が得られにくく、多すぎると得られるビスフェノールに残存してビスフェノールの品質を悪化させてしまうことがある。そのため、第3工程で得られるビスフェノール組成物1gに対して、チオールの添加量が0.0001g以上であることが好ましく、0.001g以上であることがより好ましく、0.01g以上であることが更に好ましい。また、その下限は、第3工程で得られるビスフェノール組成物1gに対して、チオールの添加量が0.1g以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
また、第4工程又は第5工程においてチオールを添加する場合は、ビスフェノール組成物溶液の調製に用いる、第3工程で得られたビスフェノール組成物の量に応じてチオールの添加量を制御すればよい。
また、第4工程及び第5工程においてチオールを添加する場合は、添加したチオールの合計量で制御すれば良く、添加したチオールが上記範囲となるようすることが好ましい。
したがって、第3工程において、ビスフェノール溶液にチオールを添加することが好ましく、第4工程において、ビスフェノール組成物にチオールを添加することがより好ましく、第5工程において、ビスフェノール組成物溶液にチオールを添加することが特に好ましい。すなわち、図3に示すようなビスフェノールの製造方法Cとすることが好ましい。
本発明のビスフェノールの製造方法により得られるビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
次に、本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法につき説明する。
本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造する方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
オルトクレゾール、フェノール、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、オクタンチオール、メルカプトフェノール、メタノール、アセトン、シクロドデカノン、炭酸水素ナトリウム(重曹)、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、及び、亜リン酸ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
色調は、試薬を添加して30分間撹拌後した後のイソプロピルアルコール溶液の色調を目視で評価した。
判断基準は無色透明を「◎」、淡黄色透明を「○」、淡赤色透明を「○△」、赤色透明を「△」、赤色不透明を×とした。
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)又は2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)の溶融時のハーゼン色数の測定は、色差計を用いて、以下の手順と条件で行った。
分光色差計用の試験管は、日本理化硝子製の試験管(24mm×200m/m P-24)を使用した。
装置は、日本電色工業株式会社製「SE-6000」を使用した。
BP12cのハーゼン色数の測定は、BP12cと炭酸ジフェニルを入れた分光色差計用の試験管をアルミブロックヒーターで所定の温度で加熱し、所定時間となったところで30秒以内に行った。
ビスフェノールCのハーゼン色数の測定は、ビスフェノールCを入れた分光色差計用の試験管をアルミブロックヒーターで所定の温度で加熱し、所定時間となったところで30秒以内に行った。
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH)濃度は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
参考例1~8では、まず、以下の第1工程~第4工程を行い、ビスフェノールとして、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン組成物溶液(BP12c組成物溶液)を得た。次いで、BP12c組成物溶液に表1に示す試薬を添加し、晶析は行わずに、ビスフェノール組成物溶液の色の変化を観察した。以下、BP12c組成物溶液に表1に示す試薬を添加した溶液を得る工程を第5a工程と記載する。
(1)第1工程
冷却管及び磁気回転子を備えた1Lのナス型フラスコに、フェノール300g(3.2モル)、98質量%硫酸15.6gを加え、90℃のオイルバスに浸漬させ、1時間反応させた。その後、ドデカンチオール6.4g及びシクロドデカノン58g(0.3モル)を加え、90℃で1時間反応させた。次に、オイルバスの温度を65℃に昇温し、1.3kPaで水を留去した。水の留出が収まったところで、室温まで冷却した。得られた反応液を固化させ、14日間静置した。
得られた固体にトルエンを加え、80℃に昇温して完全に溶解させた。得られたトルエン溶液を、撹拌翼と冷却管を備えた1Lのジャケット式セパラブルフラスコに入れた。そこに飽和重曹水を加えてpH9以上にした後、水相を除去し、有機相を得た。
第2工程で得た有機相に、ヘキサンを加えて80℃から10℃まで冷却し、晶析したところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)が析出した。
得られたスラリー液を、減圧濾過で固液分離し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを、500mLのナス型フラスコに入れ、50hPa及び85℃の条件でエバポレータを用いて乾燥させたところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)組成物を淡赤色の固体として78g得た。
磁気撹拌子を備えた100mLのナス型フラスコに、第3工程で得られたBP12c組成物を6g及びイソプロピルアルコールを4g入れ、85℃のオイルバスに浸漬したところ、完全に溶解した。得られたBP12cが溶解したイソプロピルアルコール溶液(BP12c組成物溶液)の色は、淡赤色透明であった。
得られたBP12cが溶解したイソプロピルアルコール溶液にドデカンチオール0.2gを添加し、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は無色となった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、メルカプトフェノール0.2gを添加した以外は、参考例1と同様に実施した。メルカプトフェノールを添加し、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は無色透明となった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、オクタンチオール0.2gを添加した以外は、参考例1と同様に実施した。オクタンチオールを添加し、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は無色透明となった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、何も添加しない以外は、参考例1と同様に実施した。30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は淡赤色透明のままであった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、飽和の亜硫酸ナトリウム水溶液0.2gを加えた以外は、参考例1と同様に実施した。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は赤色不透明となった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、飽和の亜リン酸ナトリウム水溶液0.2gを加えた以外は、参考例1と同様に実施した。亜リン酸ナトリウム水溶液を加えて、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は赤色不透明となった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、10%クエン酸ナトリウム水溶液0.2gを加えた以外は、参考例1と同様に実施した。クエン酸水溶液を加えて、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は赤色透明となった。
参考例1の第5a工程において、ドデカンチオール0.2gの代わりに、飽和のチオ硫酸ナトリウム水溶液0.2gを加えた以外は、参考例1と同様に実施した。チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて、30分間撹拌したところ、イソプロピルアルコール溶液の色は赤色不透明となった。
(1)第1工程
冷却管及び磁気回転子を備えた1Lのナス型フラスコに、フェノール300g(3.2モル)、98質量%硫酸15.6gを加え、90℃のオイルバスに浸漬させ、1時間反応させた。その後、ドデカンチオール6.4g及びシクロドデカノン58g(0.3モル)を加え、90℃で1時間反応させた。次に、オイルバスの温度を65℃に降温し、1.3kPaで水を留去した。水の留出が収まったところで、室温まで冷却した。得られた反応液を固化させ、14日間静置した。
得られた固体にトルエンを加え、80℃に昇温して完全に溶解させた。得られたトルエン溶液を、撹拌翼と冷却管を備えた1Lのジャケット式セパラブルフラスコに入れた。そこに飽和重曹水を加えてpH9.2にした後、水相を除去し、有機相を得た。
第2工程で得られた有機相にヘキサンを加えて80℃から10℃に冷却し、晶析したところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)が析出した。
得られたスラリー液を、減圧濾過で固液分離し、ウェットケーキを得た。得られたケーキを、500mLのナス型フラスコに入れ、50hPa及び85℃の条件でエバポレータを用いて乾燥させたところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)組成物を淡赤色の固体として75g得た。
冷却管及び撹拌翼を備えた1Lのジャケット式セパラブルフラスコに、第3工程で得られたBP12c組成物を75g及びイソプロピルアルコールを50g入れた。その後、ジャケットの温度を85℃まで昇温させ、溶解させ、淡赤色透明のBP12c組成物溶液を得た。
85℃に加熱した状態のBP12c組成物溶液にドデカンチオール2.5gを加え、30分間撹拌し、無色透明のBP12c組成物溶液を得た。
その後、室温まで冷却し、ヘキサン750mL加え、晶析したところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)が析出してスラリー液となった。得られたスラリー液を、減圧濾過で固液分離し、ウェットケーキを得た。得られたケーキを、500mLのナス型フラスコに入れ、50hPa及び85℃の条件でエバポレータを用いて乾燥させたところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)を白色の固体として53g得た。
分光色差計用の試験管に該1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)2g及び炭酸ジフェニル12gを入れ、175℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。完全に溶解したことを確認した5分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は13であった。
実施例1の第5工程で、85℃に加熱した状態のBP12c組成物溶液に、ドデカンチオール2.5gの代わりにドデカンチオール0.8gを加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
ドデカンチオールを加え30分間撹拌した後のBP12c組成溶液の色は無色透明であった。また、炭酸ジフェニルとの溶融液のハーゼン色数(APHA)は14であった。
実施例1の第5工程で、85℃に加熱した状態のBP12c組成物溶液にドデカンチオール2.5gの代わりにドデカンチオール0.2gを加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
ドデカンチオールを添加し、30分間撹拌したところのBP12c組成溶液の色は淡黄色透明であった。また、炭酸ジフェニルとの溶融液のハーゼン色数(APHA)は20であった。
実施例1の第5工程において、ドデカンチオール2.5gを加えた代わりに、何も加えなかった以外は、実施例1と同様に実施した。
分光色差計用の試験管に得られた1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(BP12c)2g及び炭酸ジフェニル12gを入れ、175℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。完全に溶解したことを確認した5分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は33であった。
(1)第1工程
温度計、撹拌機及び100mLの滴下ロートを備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88重量%硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、60分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間、50℃で反応させた。
反応を終了するため、トルエン135.0g、脱塩水178g及び28質量%の水酸化ナトリウム水溶液160gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、下相の水相を抜き出した。
その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて、下相の水相pHが9.2になったことを確認した。
下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。
得られた有機相を80℃から30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶ビスフェノールC1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとしてビスフェノールC組成物198gを得た。
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、前記ビスフェノールC組成物の全量とトルエン370gを入れ、80℃に昇温したところ、淡赤色透明な溶液が得られた。
80℃に維持した状態で、得られた溶液に、ドデカンチオール5gを加え、60分撹拌したところ、淡黄色透明な溶液が得られた。この溶液を、10℃まで冷却した。その後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過を行い、ケーキを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC 156gを得た。
分光色差計用の試験管に得られたビスフェノールC2gを入れ、175℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、溶融液を調製した。完全に溶解したことを確認した5分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は15と良好であった。
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例4で得られたビスフェノールC100g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.5g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は25000であった。またペレットYIは、12.2であった。
Claims (6)
- 酸触媒の存在下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させてビスフェノールを生成させて反応組成物を得る第1工程と、
前記反応組成物をpH9以上に調整してビスフェノール溶液を得る第2工程と、
前記ビスフェノール溶液を晶析してビスフェノール組成物を得る第3工程と、
前記ビスフェノール組成物を有機溶媒に溶解してビスフェノール組成物溶液を得る第4工程と、
前記ビスフェノール組成物溶液を晶析してビスフェノールを得る第5工程と、
を有するビスフェノールの製造方法であって、
第3工程以降の工程において、前記ビスフェノール溶液、前記ビスフェノール組成物、及び、前記ビスフェノール組成物溶液からなる群から選択される少なくとも1つにチオールを添加することを特徴とするビスフェノールの製造方法。 - 前記芳香族アルコールが、フェノール、クレゾール、及び、キシレノールからなる群から選択されるいずれか1つである請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記ビスフェノール組成物1gに対して、前記チオールを0.0001g以上、0.1g以下添加する請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記酸触媒が、硫酸である請求項1~3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記第5工程において、前記ビスフェノール組成物溶液にチオールを添加する請求項1~4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によりビスフェノールを得る工程と、
得られた前記ビスフェノールを用いて、ポリカーボネート樹脂を製造する工程と、
を有することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
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