JP2022101856A - ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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馨 内山
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Abstract

【課題】歩留まりの良いビスフェノールの製造方法を提供すること。また、前記ビスフェノールの製造方法で得られたビスフェノールを用いて、色調の良いポリカーボネート樹脂の製造方法を提供すること。【解決手段】硫酸の存在下で芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを反応させるビスフェノールの製造方法であって、硫酸と前記芳香族アルコールとを含有する第1混合液を調製する第1工程、及び前記第1混合液に、前記ケトン又はアルデヒドと硫酸とを供給する第2工程を有するビスフェノールの製造方法により課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、ビスフェノールの製造方法に関するものである。また、前記ビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1及び2参照)。
特開2014-40376号公報 国際公開第2019/39520号
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂等の様々な樹脂の原料として幅広い用途に使用され、今後も、その用途の拡大が期待される。
通常、ビスフェノールの製造では、酸触媒下、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させ、ビスフェノールを生成する方法が採用されている(特許文献1及び2)。
例えば、特許文献1の実施例には、オルトクレゾールとアセトンの混合物に、塩酸を加え、攪拌した後、0.7~2時間かけて95質量%の硫酸を滴下し、ビスフェノール化合物を得る方法が記載されている。
特許文献2の実施例には、オルトクレゾールに硫酸を加えた後、アセトンを供給し、ビスフェノールを得る方法が記載されている。
しかしながら、kgやトンスケールのビスフェノールの製造においては、硫酸を反応槽に供給する時間を要するため、芳香族アルコールが硫酸と反応して芳香族アルコールスルホン酸となり、その結果、歩留まりの低下を招いている。そのため、さらなる製造方法の改良が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、歩留まりの良いビスフェノールの製造方法を提供することを目的とする。また、前記ビスフェノールの製造方法で得られたビスフェノールを用いて、色調の良いポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、芳香族アルコールと硫酸とを含有する混合液に、ケトン又はアルデヒドと硫酸とを供給して前記芳香族アルコールと前記ケトン又はアルデヒドとを縮合反応させることにより、歩留まり良くビスフェノールを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
[1]
硫酸の存在下で芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを反応させるビスフェノールの製造方法であって、
硫酸と前記芳香族アルコールとを含有する第1混合液を調製する第1工程、及び
前記第1混合液に、前記ケトン又はアルデヒドと硫酸とを供給する第2工程
を有する、ビスフェノールの製造方法。
[2]
前記第2工程において、硫酸の供給が、前記ケトン若しくはアルデヒドの供給の後又は前記ケトン若しくはアルデヒドの供給と並行して行われる、[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3]
前記第1混合液を、調製直後から50℃で3時間保持した時点での前記芳香族アルコールスルホン酸の生成量が、前記芳香族アルコールに対し、5.0モル%以下である、[1]又は[2]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4]
前記第1混合液において、前記芳香族アルコールに対する硫酸の質量比が、0.01以上、1.00以下である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方
法。
[5]
前記第1工程において第1混合液に含まれる硫酸及び前記第2工程において前記第1混合液に供給される硫酸の合計質量に対する前記第1工程において第1混合液に含まれる硫酸の質量の比が、0.05以上0.90以下である、[1]乃至[4]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[6]
前記第1混合液が、さらにチオール、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールから選択される1種以上を含有する、[1]乃至[5]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[7]
前記第2工程において、前記第1混合液に、さらにチオール、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールから選択される1種以上を供給する、[1]乃至[6]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[8]
前記芳香族アルコールが、フェノール、オルトクレゾール、及び2,6-ジメチルフェノールから選択される1種以上を含む、[1]乃至[7]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[9]
前記ケトンが、アセトン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、及びアセトフェノンから選択される1種以上を含む、[1]乃至[8]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[10]
前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから選択される1種以上を含む、[1]乃至[9]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[11]
[1]乃至[10]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネートを重合する工程を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、歩留まりの良いビスフェノール製造方法が提供される。また、本発明の好ましい態様では、芳香族アルコールスルホン酸の副生量を低減することができる。さらに、前記ビスフェノールの製造方法で製造されたビスフェノールを用いて、効率良くポリカーボネート樹脂を製造できる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
<1.ビスフェノールの製造方法>
本発明は、酸触媒である硫酸の存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの縮合反応(以下、単に「反応」と称することがある。)によりビスフェノールを生成するビスフェノールの製造方法に関する。
本発明者らは、硫酸を触媒とした場合、硫酸と芳香族アルコールの接触により芳香族アルコールスルホン酸が多量に副生して芳香族アルコールを損失すること、及び芳香族アルコールスルホン酸が生成物に残存すると、溶融重合反応において活性低下成分として作用することを見出した。そして、硫酸と芳香族アルコールとを含む混合液に、ケトン又はアルデヒドと硫酸とを供給することで、芳香族アルコールスルホン酸の副生が抑制され、歩留まり良くビスフェノールを製造できることを見出した。換言すると、本発明者らは、得られるビスフェノールの品質が、反応液の調製時の原料の混合順に影響されるという知見を得た。特に、製造スケールが大きい場合には、反応液の調製やビスフェノール生成反応の終了までの時間が長くなるため、得られるビスフェノールの品質は、反応液の調製時の原料の混合順による影響が大きいという知見を得た。なお、本明細書において、製造スケールが大きいとは、製造されるビスフェノールの収量が100kg~10トン程度の場合をいう。以下に説明する実施形態は、このようなスケールでのビスフェノールの製造に好適に利用できる。
[1-1.第1工程及び第2工程]
本発明の一実施形態は、硫酸の存在下で芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを反応させるビスフェノールの製造方法であって、硫酸と前記芳香族アルコールとを含有する第1混合液を調製する第1工程、及び前記第1混合液に、前記ケトン又はアルデヒドと硫酸とを供給する第2工程を有することを特徴とする。
このような製造方法により、歩留まり良くビスフェノールを製造できる理由について、本発明者は以下のように推察している。
すなわち、多量の硫酸は芳香族アルコールをスルホン化し、芳香族アルコールスルホン酸を副生する。副生した芳香族アルコールスルホン酸は重合活性を悪化させ、また、芳香族アルコールの損失になるため好ましくない。そのため、芳香族アルコールと混合する硫酸の量を少なくするのが好ましいが、硫酸量を少なくすると縮合反応で生じる副成水で硫酸が希釈され、反応速度が低下し、歩留まりの低下を招く。しかるに、縮合反応に用いられる全硫酸のうちの一部を芳香族アルコールと混合しておき、ビスフェノールを生成する反応の開始以降に残りの硫酸を追加供給することにより、芳香族アルコールをスルホン化、及び反応液中の硫酸濃度の低下が抑制され、高い歩留まりを実現することができると考えられる。
[1-1-1.ビスフェノール]
製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2022101856000001
~Rとしては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。また、アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよい。R~Rの具体例としては、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基などが挙げられる。
これらのうちRとRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
とRとしては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
とRは、2つの基の間で互いに結合又は架橋していてもよく、RとRとが隣接する炭素原子と一緒に結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-
ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも、好適なビスフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタンからなる群から選択されるいずれかである。
[1-1-2.芳香族アルコール]
芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
Figure 2022101856000002
一般式(2)において、R~Rは、上記一般式(1)のR~Rにおけるものと同義である。
とRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから水素原子であることが好ましい。また、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。例えば、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R及びRが、水素原子である化合物が挙げられる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基や炭素数1~6のアルキル基とできる。
具体的には、上記一般式(2)で表される化合物として、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、エチルフェノール、プロピルフェフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなど等が挙げられる。この中でも、フェノール、メチルフェノール及びジメチルフェノールからなる群から選択されるいずれかが好ましく、メチルフェノール又はジメチルフェノールがより好ましく、メチルフェノールが更に好ましい。
[1-1-3.ケトン又はアルデヒド]
ケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
Figure 2022101856000003
一般式(3)において、R、Rは、上記一般式(1)のR、Rにおけるものと同義である。
好ましくは、R及びRは、それぞれに独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、RとRとが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されたシクロアルキリデン基である。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基や炭素数1~6のアルキル基とできる。例えば、R及びRは、それぞれに独立に、アルキル基、又は、RとRとが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されたシクロアルキリデン基である化合物が挙げられる。
一般式(3)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類;ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン(アセトフェノン)、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン類;シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。この中でも、アセトン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン及びアセトフェノンが好ましい。
原料である芳香族アルコールに対しケトン又はアルデヒドの量が多い場合、ケトン又はアルデヒドが多量化し易く、また少ない場合は芳香族アルコールが未反応のまま残る。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比((芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)又は(芳香族アルコールのモル数/アルデヒドのモル数))の下限は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくはモル比1.7以上である。また、その上限は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
[1-1-4.酸触媒]
ビスフェノールの製造方法における酸触媒は、反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から硫酸を用いる。
原料である芳香族アルコールに対する縮合反応に用いられる全硫酸のモル比(硫酸のモル数/芳香族アルコールのモル数)は、少ない場合は、縮合反応の進行とともに副生する水によって硫酸が希釈されて反応に時間を要する。また、多い場合は、芳香族アルコール
がスルホン化され芳香族アルコールスルホン酸が多量に生成する場合がある。これらのことから、原料である芳香族アルコールに対する縮合反応に用いられる全硫酸のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
硫酸は、化学式HSOで表される酸性の液体である。一般的に、硫酸は水で希釈された硫酸水溶液として用いられ、その濃度に応じて、濃硫酸や希硫酸といわれる。例えば、希硫酸とは、質量濃度が50質量%未満の硫酸水溶液である。
反応液中の硫酸の濃度(硫酸水溶液の濃度)が低いと、水の量が多くなるため、ビスフェノールの生成反応が進行しにくくなり、ビスフェノールを製造する反応時間が長くなり、歩留まり良くビスフェノールを製造することが難しい場合がある。そのため、硫酸の濃度は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。また、硫酸の濃度の上限は、通常99.5質量%以下又は99質量%以下である。なお、第1工程及び第2工程で用いる硫酸の濃度は、同一であっても異なっていてもよい。
縮合反応に用いられる全硫酸量に対する第1混合液中の硫酸の割合が少なすぎる場合は、触媒の量が十分ではなく、歩留まり良くビスフェノールを製造することが難しくなる場合がある。また、多すぎる場合は芳香族アルコールと硫酸との混合に時間がかかり、その間芳香族アルコールスルホン酸が副生される。そのため、第1混合液における芳香族アルコールに対する硫酸のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上である。また、その上限は、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.50以下である。
また、第1工程において第1混合液に含まれる硫酸及び前記第2工程において第1混合液に供給される硫酸の合計質量に対する、第1工程において第1混合液に含まれる硫酸の質量の比は、芳香族アルコールスルホン酸の副生の抑制と十分な反応速度の維持とを両立する観点から、通常0.05以上、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、また、通常0.90以下、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下である。
第2工程において、第1混合液に硫酸を供給するタイミングは、特に限定されず、ケトン又はアルデヒドの供給の前又は後に行われてもよく、ケトン又はアルデヒドの供給と並行して行われてもよいが、ケトン若しくはアルデヒドの供給の後又はケトン若しくはアルデヒドの供給と並行して行われることが好ましい。また、反応液中の硫酸濃度が不足すると、ビスフェノールを生成する反応よりも、ケトン又はアルデヒドの自己縮合反応が起こりやすくなり好ましくない。そのため、硫酸の供給を開始するタイミングとしては、原料であるケトン又はアルデヒドの総量に対し、第1混合液に供給したケトン又はアルデヒドの量(ケトン又はアルデヒドの供給率)が90%以内の時点であることが好ましく、70%以内の時点であることが更に好ましく、最も好ましくは50%以内の時点である。
また、第1工程において硫酸と芳香族アルコールとを反応槽に供給して第1混合液を調製し、第2工程においてケトン又はアルデヒドと硫酸とを当該反応槽に供給する場合、第1工程において反応槽に供給される硫酸と第2工程において反応槽に供給される硫酸は、同一の容器から供給されてもよく、別々の容器から供給されてもよい。
また、その他の酸触媒として、塩化水素ガス、塩酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、リン酸などの強酸を硫酸と併用してもよい。なお、その他の酸触媒は、第1工程において第1混合液に含有させてもよく、第2工程において硫酸とともに第1混合液に供給してもよく、これら両方の態様を
採用してもよい。
本実施形態では、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとの縮合反応に供給される全硫酸のうちの一部を芳香族アルコールと混合して第1混合液とし、この第1混合液に残りの硫酸を供給することで、多量の硫酸と芳香族アルコールの接触に起因する芳香族アルコールスルホン酸の副生が抑制される。
より具体的には、第1混合液を、調製直後から50℃で3時間保持した時点での芳香族アルコールスルホン酸の生成量が、芳香族アルコール(仕込み量)に対して通常5.0モル%以下であり、好ましくは4.0モル%以下、より好ましくは3.0モル%以下である。
ここで、本明細書において調製直後とは、任意の一系内において、第1混合液の調製に供される硫酸及び芳香族アルコールの全量がともに存在する状態となった時点を指す。例えば、攪拌されている芳香族アルコールに硫酸を供給して第1混合液を調製する場合は、第1混合液の調製に供される硫酸全量の供給が終了した時点を指す。
なお、芳香族アルコールスルホン酸の生成量は、高速液体クロマトグラフィーのような液体クロマトグラフィーにより測定される。
芳香族アルコールスルホン酸の副生が抑制されることにより、芳香族アルコールの損失が抑制され、ビスフェノールの歩留まりが向上する。芳香族アルコールがビスフェノールに変換される効率は、下記式で表される選択率により評価することができる。本実施形態の製造方法によれば、例えば92モル%以上、95モル%以上又は97モル%以上の高い選択率を実現することができる。
選択率(モル%) = ビスフェノールに変換された芳香族アルコール(モル)/転化した芳香族アルコール(モル) ×100
上記式において、ビスフェノールに変換された芳香族アルコールの量及び転化した芳香族アルコールは、高速液体クロマトグラフィーのような液体クロマトグラフィーにより測定される。
[1-1-5.チオール助触媒]
芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとの縮合反応は、助触媒であるチオールの存在下で行ってもよい。チオールは、第1混合液に含有されていてもよく、第2工程において第1混合液に供給してもよく、これら両方の態様を採用してもよい。第2工程において第1混合液にチオール供給する場合、チオールは、ケトン又はアルデヒド及び硫酸とは別々に第1混合液に供給してもよく、ケトン又はアルデヒド及び必要に応じて後述する有機溶媒と混合して第1混合液に供給してもよい。
チオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン、メルカプトフェノールなどが挙げられる。
ケトン又はアルデヒドに対するチオールのモル比((チオールのモル数/ケトンのモル数)又は(チオールのモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないとチオールを用いることによるビスフェノールの選択性改善の効果が得られず、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対するチオールのモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に
好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
[1-1-6.有機溶媒]
芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとの縮合反応は、有機溶媒の存在下で行ってもよい。有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。例えば、芳香族炭化水素と脂肪族アルコールとの混合溶媒を用いてもよい。また、有機溶媒は、第1混合液に含有されていてもよく、第2工程において第1混合液に供給してもよく、これら両方の態様を採用してもよい。第2工程において第1混合液に供給する場合、有機溶媒は、ケトン又はアルデヒド及び硫酸とは別々に第1混合液に供給してもよく、ケトン又はアルデヒドと混合して第1混合液に供給してもよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノールなどの1価のアルキルアルコール;エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
脂肪族アルコールは、反応効率等の観点から、炭素数1~12の1価のアルキルアルコールが好ましく、炭素数1~8の1価のアルキルアルコールとすることがより好ましい。
なお、原料である芳香族アルコールを多量に使用して有機溶媒の代わりとしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再利用することで損出を低減できる。
有機溶媒を用いる場合、原料であるケトン又はアルデヒドに対する有機溶媒の質量比((ケトンの質量/有機溶媒の質量)又は(アルデヒドの質量/有機溶媒の質量))は、多すぎると、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、生成してくるビスフェノールにより混合不良が生じる場合や、ケトン又はアルデヒドの多量化が促進される場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する有機溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。また、その上限は、有機溶媒の種類に応じて、ビスフェノールの析出が起こる範囲で調整すればよく、50以下、30以下とできる。
生成してくるビスフェノールが析出しやすく、反応終了後、反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時の濾液への損失)を低減できることからも、ビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。ビスフェノールの溶解度が低い溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、有機溶媒は、芳香族炭化水素を主成分として含むことが好ましく、有機溶媒中に芳香族炭化水素を55質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
[1-1-7.操作]
第1工程における、第1混合液の調製方法は、特に制限されず、公知の方法、例えば芳香族アルコール、硫酸及び必要に応じてその他の成分を攪拌等により混合する方法を採用することができる。この際、混合の順番は問わない。
また、第2工程において、ケトン又はアルデヒドと硫酸とを第1混合液に供給する方法は、特に限定されない。硫酸の供給、ケトン又はアルデヒドの供給、及びチオール、有機溶媒等のその他の成分の供給のいずれにおいても、供給対象を第1混合液に一括で供給してもよく、分割して供給してもよいが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給することが好ましい。
[1-1-8.反応条件]
上記の通り、本実施形態のビスフェノールの製造方法では、縮合反応が進むにつれて、ビスフェノールの析出が起こるため、反応液はスラリー液に変化し、縮合反応がスラリー状態で行われる。スラリー液とは、液体の中に固体が分散した懸濁液である。スラリー液は、具体的には、有機相(未反応の芳香族アルコールやケトン又はアルデヒドなど)と、水相(硫酸や生成する水など)とを含む液体に、固体のビスフェノールが分散した3相系のスラリー液である。
生成したビスフェノールの析出量が少ないほど、ビスフェノールの分解物が増加する傾向にある。そのため、有機溶媒の有無、反応時間、反応温度などを適宜選択し、スラリー液中にビスフェノールを一定量以上析出させることが好ましい。例えば、反応終了時のスラリー液のスラリー濃度(固体のビスフェノールの質量/スラリー液の質量×100(%))は、15質量%以上や20質量%以上とすることができる。また、反応終了時のスラリー液のスラリー濃度が50質量%以下や40質量%以下、35質量%以下などと上限を設けて、スラリー濃度を管理してもよい。
縮合反応の反応温度は、低すぎると縮合反応が進行しにくくなることから、好ましくは-30℃以上であり、より好ましくは-20℃以上であり、更に好ましくは-15℃以上である。また、反応温度が高すぎると、副反応であるアセトン又はケトンの自己縮合反応が進行し、助触媒であるチオールを用いた場合にはチオールの酸化分解が進行しやすくなるため、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。
縮合反応の反応時間は、製造するビスフェノールの種類や反応温度、製造スケール等の反応条件により適宜調整されるものであるが、通常500時間以下であり、400時間以下や350時間以下であってもよい。長すぎると生成したビスフェノールが分解することから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。また、反応時間の下限は、通常0.5時間以上であり、1時間以上であることが好ましく、1.5時間以上であることがより好ましい。
なお、縮合反応の反応時間は、第2工程において、第1混合液へのケトン又はアルデヒドの供給を開始した時点で開始するものとする。例えば、第1混合液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
また、縮合反応は、例えば、用いる酸触媒と同等量以上の水や塩基を加えて酸触媒濃度を低下させることで停止させることが可能である。
[1-1-9.反応装置]
ビスフェノールを生成する反応は、強酸を触媒として進行するため、反応槽の内壁の表面が耐腐食性の材質であることが好ましい。特に、耐食性に優れたグラスライニング製の反応装置を用いることが好ましい。
[1-2.精製工程]
本実施形態のビスフェノールの製造方法は、ビスフェノールの分散したスラリー液を得る反応工程の後、ビスフェノールを精製する精製工程を有するものとできる。
ビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
ビスフェノールを含む有機相を水で洗浄する際、除去される水相の電気伝導度で洗浄の終点を管理することが出来る。芳香族アルコールスルホン酸、硫酸等の金属塩がビスフェノールを含む有機相に残留すると色調悪化を引き起こすため、洗浄後の水相の電気伝導度は好ましくは100μS/cm以下であり、より好ましくは50μS/cm以下であり、更に好ましくは10μS/cm以下である。
[1-3.ビスフェノールの用途]
得られるビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<2.ポリカーボネート樹脂の製造方法>
得られたビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
ポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、本発明のビスフェノール及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造
する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられる触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
オルトクレゾール、2,6-キシレノール、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、シクロヘキサノン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
[分析]
(芳香族アルコールスルホン酸の定量分析)
芳香族アルコールスルホン酸の定量分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC10A
Imtakt Unison UK-C18 3μm 250×4.6mmI.

・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 10mM酢酸アンモニウム水溶液1L+酢酸2mL
B液 アセトニトリル:メタノール=5:1の溶液
分析時間0分では、A液:B液=70:30(体積比、以下同様。)、分析時間0~35分は、溶離液組成をA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、分析時間35~45分はA液:B液=10:90に維持した。
・流速:0.8mL/分
・検出波長:280nm
(pHの測定)
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METERES-73」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
(電気伝導度)
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D-71」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
製品ビスフェノール中の金属量が多いと色調悪化を招く。
(ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH)濃度)
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH)濃度は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
(粘度平均分子量(Mv))
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
(ペレットYI)
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。
・装置:コニカミノルタ社製分光測色計CM-5
・測定条件:
測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
<実施例1>
[第1工程]
温度計、第1の滴下ロート、第2の滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン280g、メタノール15g及びオルトクレゾール230g(2130mmol)を入れ、内温を10℃以下とした後に、撹拌しながら98質量%硫酸71.3g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、71.3g×0.98÷230g=0.30)をゆっくり加え、内温5℃で3時間攪拌して、第1混合液を得た。
[第2工程]
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン61g(1052mmol)、ドデカンチオール5.4gを混合してアセトン溶液を調製し、前記第1の滴下ロートに入れた。該アセトン溶液を0.5時間(滴下時間)かけて前記第1混合液に滴下し、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように、アセトン溶液の半分を滴下して、第1の反応液を得た。
前記第2の滴下ロートに98質量%硫酸23.8g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、23.8g×0.98÷230g=0.10)を入れた。続いて、第1の反応液に第1の滴下ロートに残ったアセトン溶液を滴下するとともに、第2の滴下ロートから硫酸を滴下した。このとき、硫酸は、アセトン溶液よりも先に滴下し終わるよう滴下し、アセトン溶液は、0.5時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように滴下した。滴下終了後、内温を10℃に維持したまま1時間(反応熟成時間)攪拌し、縮合反応をさらに進行させたところ、途中でビスフェノールCが析出し、スラリー反応液を得た。
[中和及び洗浄工程]
得られたスラリー反応液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液190gを供給して、内温を10℃から75℃まで昇温し、析出したビスフェノールCを溶解させた。75℃に到達後、静置し油水分離させて、下相の水相を抜出し、第1の有機相と第1の水相を得た。得られた第1の水相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したクレゾールスルホン酸の量を確認したところ、2.74質量%であり、供給したクレゾールに対する物質量は2.05モル%であった。同様に第1の有機相中のビスフェノールCの量を確認した結果、原料クレゾールに対し82.8モル%生成しており、選択率は95.3モル%であった。
[洗浄工程]
得られた第1の有機相に、脱塩水100gを入れて80℃まで昇温し、30分混合して静置し油水分離させて、水相を除去して、第2の有機相を得た。
得られた第2の有機相に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液100gを加えて、80℃で30分混合して静置し油水分離させて、水相を除去して、第3の有機相を得た。
続いて、除去する水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまで、以下に示すように、得られた第3の有機相を80℃で、繰り返し洗浄した。
(洗浄1回目)
得られた第3の有機相に脱塩水100gを加え、30分混合して静置し、下相の水相を除去し、有機相(水洗1回)を得た。除去した水相のpHと電気伝導度は、pH9.3と405.0μS/cmであった。
(洗浄2回目)
得られた有機相(水洗1回)に、脱塩水100gを加え、30分混合して静置し、下相の水相を除去し、有機相(水洗2回)を得た。除去した水相のpHと電気伝導度は、pH8.5と50.5μS/cmであった。
(洗浄3回目)
得られた有機相(水洗2回)に、脱塩水100gを加え、30分混合して静置し、下相の水相を除去して、有機相(水洗3回)を得た。除去した水相のpHと電気伝導度は、pH7.9と18.3μS/cmであった。
(洗浄4回目)
得られた有機相(水洗3回)に、脱塩水100gを加え、30分混合して静置し、下相の水相を除去して、有機相(水洗4回)を得た。除去した水相のpHと電気伝導度は、pH7.4と8.4μS/cmであった。
除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数は4回であった。
[晶析工程]
得られた有機相(水洗4回)を、80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持し、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、粗精製ウェットケーキを得た。
得られた粗精製ウェットケーキにトルエン300gを振りかけて洗浄し、遠心分離機を用いて固液分離を行い、精製ウェットケーキを得た。
得られた精製ウェットケーキを、オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC198g(773mmol、クレゾール基準収率は773mmol×2÷2130mmol×100=72.6モル%)を得た。
<実施例2>
実施例1において、第1工程における硫酸の使用量を23.8g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、23.8g×0.98÷230g=0.10)、第2工程における硫酸の使用量を71.3g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、71.3g×0.98÷230g=0.30)とした以外は実施例1と同様に実施した。
第1の水相のクレゾールスルホン酸は、0.18質量%であり、供給したクレゾールに対する物質量は0.13モル%であった。第1の有機相中のビスフェノールCの生成量は原料クレゾールに対し80.3モル%であり、選択率は97.4モル%であった。
除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数は3回であった。また、白色のビスフェノールCが、191g(746mmol、クレゾール基準収率は746mmol×2÷2130mmol×100=70.0モル%)得られた。
<実施例3>
[第1工程]
実施例2と同様に実施し、第1の反応液を得た。
[第2工程]
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン61g(1052mmol)、ドデカンチオール5.4gを混合してアセトン溶液を調製し、前記第1の滴下ロートに入れた。該アセトン溶液を1.0時間(滴下時間)かけて前記第1混合液に滴下し、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように、アセトン溶液の全量を滴下して、第1の反応液を得た。
前記第2の滴下ロートに98質量%硫酸71.3g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、71.3g×0.98÷230g=0.10)を入れた。続いて、第1の反応液に対するアセトン溶液の滴下と硫酸の滴下とを同時に開始した。アセトン溶液及び硫酸を、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように第1の反応液に滴下することで、第2の反応液を得た。滴下終了後、内温を10℃に維持したまま1時間(反応熟成時間)撹拌し、縮合反応をさらに進行させたところ、途中でビスフェノールCが析出し、スラリー反応液を得た。
[中和及び洗浄工程]
実施例2と同様に実施した。得られた第1の水相のクレゾールスルホン酸は、0.25質量%であり、供給したクレゾールに対する物質量は0.19モル%であった。第1の有機相中のビスフェノールCの生成量は原料クレゾールに対し79.6モル%であり、選択率は97.3モル%であった。
除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数は3回であった。また、白色のビスフェノールCが、188g(734mmol、クレゾール基準収率は734mmol×2÷2130mmol×100=68.9モル%)得られた。
<実施例4>
[第1工程]
実施例2と同様に実施し、第1の反応液を得た。
[第2工程]
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン61g(1052mmol)、ドデカンチオール5.4gを混合してアセトン溶液を調製し、前記第1の滴下ロートに入れた。該アセトン溶液を1.0時間(滴下時間)かけて前記第1混合液に滴下し、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように、滴下液の全量を滴下して、第1の反応液を得た。
前記第2の滴下ロートに98質量%硫酸71.3g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、71.3g×0.98÷230g=0.10)を入れ、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように、前記第1の反応液に滴下し、第2の反応液を得た。滴下終了後、内温を10℃に維持したまま1時間(反応熟成時間)撹拌し、縮合反応をさらに進行させたところ、途中でビスフェノールCが析出し、スラリー反応液を得た。
[中和及び洗浄工程]
実施例2と同様に実施した。得られた第1の水相のクレゾールスルホン酸は、0.12質量%であり、供給したクレゾールに対する物質量は0.09モル%であった。第1の有機相中のビスフェノールCの生成量は原料クレゾールに対し80.1モル%であり、選択率は97.5モル%であった。
除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数は3回であった。また、白色のビスフェノールCが、190g(742mmol、クレゾール基準収率は723mmol×2÷2130mmol×100=69.7モル%)得られた。
<実施例5>
実施例1において、第1工程における硫酸の使用量を18.2g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、18.2g×0.98÷230g=0.08)、第2工程における硫酸の使用量を76.8g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、76.8g×0.98÷230g=0.33)とした以外は実施例1と同様に実施した。
得られた第1の水相のクレゾールスルホン酸は、0.07質量%であり、供給したクレゾールに対する物質量は0.05モル%であった。第1の有機相中のビスフェノールCの生成量は原料クレゾールに対し74.2モル%であり、選択率は97.3モル%であった。
除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数は3回であった。また、白色のビスフェノールCが、175g(684mmol、クレゾール基準収率は684mmol×2÷2130mmol×100=64.2モル%)得られた。
<比較例1>
実施例1において、第1工程における硫酸の使用量を95g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、95g×0.98÷230g=0.40)、第2工程における硫酸の使用量を0g(クレゾールに対する硫酸の質量比は、0g×0.98÷230g=0)とした以外は実施例1と同様に実施した。
第1の水相のクレゾールスルホン酸は、6.93質量%であり、供給したクレゾールに対する物質量は5.19モル%であった。第1の有機相中のビスフェノールCの生成量は原料クレゾールに対し76.1モル%であり、選択率は91.4モル%であった。
除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数は6回であった。また、白色のビスフェノールCが、180g(703mmol、クレゾール基準収
率は703mmol×2÷2130mmol×100=66.0モル%)得られた。
表1に、実施例1~5及び比較例1の、第1混合液におけるクレゾールに対する硫酸の質量比、クレゾールに対する第2工程で滴下した硫酸の質量比、第1の水相中のクレゾールスルホン酸量、除去した水相の電気伝導度が10.0μS/cm以下となるまでの水洗回数、及びビスフェノールC収率を示した。
表1より、第1工程及び第2工程のそれぞれにおいて適切な量の硫酸を使用することで、クレゾールスルホン酸の副生が抑制され、金属塩の残存量を所望のレベルに低下させるために必要な水洗回数が減少し、さらに、歩留まり良くビスフェノールCが得られることがわかった。
Figure 2022101856000004
<実施例6>
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例2で得られたビスフェノールC100.00g(ビスフェノールC0.39mol)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4mol)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温し、かつ、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧することで、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は195分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24800であり、ペレットYIは7.8であった。
<比較例2>
実施例6において、実施例2で得られたビスフェノールCを用いる代わりに、比較例1で得られたビスフェノールCを用いた以外は、実施例6と同様に実施した。比較例1で得られたビスフェノールCを用いたところ、重合反応が全く進行せず、ポリカーボネート樹脂は得られなかった。
Figure 2022101856000005
本発明のビスフェノールの製造方法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。

Claims (11)

  1. 硫酸の存在下で芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを反応させるビスフェノールの製造方法であって、
    硫酸と前記芳香族アルコールとを含有する第1混合液を調製する第1工程、及び
    前記第1混合液に、前記ケトン又はアルデヒドと硫酸とを供給する第2工程
    を有する、ビスフェノールの製造方法。
  2. 前記第2工程において、硫酸の供給が、前記ケトン若しくはアルデヒドの供給の後又は前記ケトン若しくはアルデヒドの供給と並行して行われる、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  3. 前記第1混合液を、調製直後から50℃で3時間保持した時点での前記芳香族アルコールスルホン酸の生成量が、前記芳香族アルコールに対し、5.0モル%以下である、請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記第1混合液において、前記芳香族アルコールに対する硫酸の質量比が、0.01以上、1.00以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造
    方法。
  5. 前記第1工程において第1混合液に含まれる硫酸及び前記第2工程において前記第1混合液に供給される硫酸の合計質量に対する前記第1工程において第1混合液に含まれる硫酸の質量の比が、0.05以上0.90以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  6. 前記第1混合液が、さらにチオール、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールから選択される1種以上を含有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  7. 前記第2工程において、前記第1混合液に、さらにチオール、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールから選択される1種以上を供給する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  8. 前記芳香族アルコールが、フェノール、オルトクレゾール、及び2,6-ジメチルフェノールから選択される1種以上を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  9. 前記ケトンが、アセトン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、及びアセトフェノンから選択される1種以上を含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  10. 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから選択される1種以上を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネートを重合する工程を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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