JP7180344B2 - ビスフェノールの製造方法、及び、ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の方法で製造されたビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとからビスフェノールを生成する反応において、ビスフェノールへの反応時間を短縮し、生成するビスフェノールの選択率を改善し、良好な色調を有するビスフェノールを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。また、上記ビスフェノールの製造方法にて得られたビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
[1] 芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態で、前記有機相において芳香族アルコールスルホン酸を生成させ、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)と、前記芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液と、ケトン又はアルデヒドとを混合し、前記芳香族アルコールスルホン酸の存在下で、前記芳香族アルコールと、前記ケトン又はアルデヒドとからビスフェノールを生成する工程(2)と、を含むビスフェノールの製造方法。
[2] 芳香族アルコールを含む有機溶液と、質量濃度が70質量%以上、90質量%未満である原料硫酸とを混合して、前記芳香族アルコールを含む有機相と、前記硫酸を含む水相とに油水分離した状態とする[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3] 芳香族アルコール及び炭化水素を含む有機溶液と、原料硫酸とを混合して、前記芳香族アルコールを含む有機相と、前記硫酸を含む水相とに油水分離した状態とする[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4] 前記工程(1)において、芳香族アルコールスルホン酸を生成する反応温度が、60℃未満である[1]から[3]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[5] 前記芳香族アルコールが、フェノール、クレゾールおよびキシレノールからなる群から選択されるいずれかである[1]から[4]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法によって得られたビスフェノールを用いた、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明は、芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態で、前記有機相において芳香族アルコールスルホン酸を生成させ、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)と、前記芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液と、ケトン又はアルデヒドとを混合し、前記芳香族アルコールスルホン酸の存在下で、前記芳香族アルコールと、前記ケトン又はアルデヒドとからビスフェノールを生成する工程(2)と、を有するビスフェノールの製造方法(以下、「本発明のビスフェノールの製造方法」と称する場合がある。)に関する。
芳香族アルコールと硫酸とを油水分離させず1相で反応させると、芳香族アルコールが容易にスルホン化してしまうため、過剰に芳香族アルコールスルホン酸が生成しその結果、芳香族アルコールからビスフェノールへの選択率は低下する。また、ビスフェノールの原料となる芳香族アルコールが消費されることで、濃度が下がり、触媒(芳香族アルコールスルホン酸)は多量に存在するが、原料濃度が低いために、反応速度が下がり、反応時間が長くなるという問題がある。更に、芳香族アルコールが酸化され、キノン類が生成される。このキノン類は着色成分であり、ビスフェノールの着色を引き起こす。
(i)芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とが上下2相に分離した状態
(ii)芳香族アルコールを含む有機相中に、硫酸を含む水滴が分散する油中水滴状態(いわゆる、W/O型)
(iii)硫酸を含む水相中に、芳香族アルコールを含む油滴が分散する水中油滴状態(いわゆる、O/W型)
反応中に反応液が懸濁していれば、反応は油水分離した状態で行われていると判断できる。また、反応終了後に、反応生成液を静置させ(1~60分間程度)、芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とが上下2相に分離すれば、反応は油水分離した状態で行われたと判断できる。
以下、本発明のビスフェノールの製造方法で得られるビスフェノールと、原料となる芳香族アルコール、及び、ケトン又はアルデヒドについて説明する。
本発明のビスフェノールの製造方法で製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造方法に用いる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
本発明の製造方法に用いるケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
工程(1)は、上述の通り、芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態で、前記有機相において芳香族アルコールスルホン酸を生成させ、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程である。
「芳香族アルコールを含む有機相」とは、油水分離した状態において、芳香族アルコールを含む有機溶液を主成分とする相を意味する。
芳香族アルコールを含む有機相において、芳香族アルコールを含む有機溶液は、芳香族アルコール単独であっても、芳香族アルコールと、芳香族アルコールと異なる有機溶媒との混合溶液であってもよい。
なお、芳香族アルコールを含む有機相における芳香族アルコールは、製造するビスフェノールの原料となる芳香族アルコールと同一のものが使用される。芳香族アルコールとしては、上述の芳香族アルコールが使用できる。
「硫酸を含む水相」とは、油水分離した状態において、硫酸(H2SO4)と水とを主成分とする相を意味する。硫酸を含む水相における硫酸の濃度は、芳香族アルコールを含む有機溶液の構成等に応じて、有機相と水相とが油水分離できる範囲で適宜決定され、通常70質量%以上である。詳しくは後述する。
「芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態」とするための方法は特に限定されないが、芳香族アルコールを含む有機溶液(以下、「O液」と称する場合がある。)と、原料硫酸(以下、「W液」と称する場合がある。)とを混合する方法が一般的である。芳香族アルコールを含む有機溶液と、原料硫酸との混合時に、芳香族アルコールを含む有機溶液の構成成分や原料硫酸の質量濃度を調製することで、油水分離した状態とすることができる。
このように芳香族アルコールを含む有機溶液と、原料硫酸とを混合し、芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態とする場合、反応開始時の「芳香族アルコールを含む有機相」と「芳香族アルコールを含む有機溶液」の構成は実質的に同じであり、「硫酸を含む水相」と「原料硫酸」の構成は実質的に同じである。
芳香族アルコールを含む有機溶液(O液)は、芳香族アルコールのみからなる溶液であっても、芳香族アルコールと、芳香族アルコールと異なる有機溶媒との混合溶液であってもよい。
なお、芳香族アルコールは、製造するビスフェノールの原料となる芳香族アルコールと同一のものが使用される。芳香族アルコールとしては、上述の芳香族アルコールが使用できる。また、芳香族アルコールと異なる有機溶媒(その他の有機溶媒)としては、芳香族アルコールを含む有機相に含まれる、その他の有機溶媒と同様のものを使用することができる。
このため、芳香族アルコールを含む有機溶液と、原料硫酸とが反応液調製時においても速やかに油水分離状態となる混合方法とすることが特に好ましい。
「芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態」とする好適な方法のひとつは、原料硫酸(W液)として、「質量濃度が70質量%以上、90質量%未満である原料硫酸」(以下、「W’液」と称する場合がある。)を用いる方法である。すなわち、芳香族アルコールを含む有機溶液(O液)と、質量濃度が70質量%以上、90質量%未満である原料硫酸(W’液)とを混合し、前記芳香族アルコールを含む有機相と、前記硫酸を含む水相とに油水分離した状態とする方法(以下、「油水分離方法(1)」と称する場合がある。)である。
このように質量濃度の低い原料硫酸を使用することにより、芳香族アルコールを含む有機溶液との親和性を下げることができ、反応液調製時においても速やかに油水分離状態とすることができる。
上述のように、脂肪族アルコールの炭素数は多くなると疎水性が上がり、硫酸と反応しにくくなるため、脂肪族アルコールとしては、炭素数は1~12の脂肪族アルコールが好ましい。
「芳香族アルコールを含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態」とする別の好適な方法は、芳香族アルコールを含む有機溶液(O液)として、「芳香族アルコール及び炭化水素を含む有機溶液」(以下、「O’液」と称する場合がある。)を用いる方法である。すなわち、芳香族アルコール及び炭化水素を含む有機溶液と、原料硫酸とを混合し、前記芳香族アルコールを含む有機相と、前記硫酸を含む水相とに油水分離した状態とする方法(以下、「油水分離方法(2)」と称する場合がある。)である。
このように芳香族アルコールと炭化水素とを含む有機溶液を用いて疎水性を上げることで、親水性の高い硫酸を有機相から水相へ移動させ、反応液調製時においても速やかに油水分離状態とすることができる。
工程(1)で得られた反応生成液中の芳香族アルコールスルホン酸の濃度は、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を30分間静置し、油水分離させた上相中に含まれる芳香族アルコールスルホン酸の濃度を示す。油水分離させた上相中に含まれる芳香族アルコールスルホン酸の濃度は、高速液体クロマトグラフィーにより算出した濃度である。詳しい測定条件は、実施例にて説明する。
工程(2)は、工程(1)で得られた芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液と、ケトン又はアルデヒドとを混合し、前記芳香族アルコールスルホン酸の存在下で、前記芳香族アルコールと、前記ケトン又は前記アルデヒドからビスフェノールを生成する工程である。
具体的には、ビスフェノールの反応は、通常、以下に示す反応式(4)に従って行われる。
ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコール及び芳香族アルコールスルホン酸のモル比((芳香族アルコール及び芳香族アルコールスルホン酸のモル数/ケトンのモル数)又は(芳香族アルコール及び芳香族アルコールスルホン酸のモル数/アルデヒドのモル数))が少ない場合ケトン又はアルデヒドが多量化しやすい。また、このモル比が多い場合は、芳香族アルコールを未反応のまま損出する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコール及び芳香族アルコールスルホン酸のモル比の下限は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上である。また、その上限は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
なお、工程(1)で得られた反応生成液に含まれる芳香族アルコール及び芳香族アルコールスルホン酸の量(モル数)は、工程(1)における反応液調製時の芳香族アルコールの量(モル数)と実質同一である。
工程(2)においては、更に、チオールを添加することが好ましい。用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ウンデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等である。
工程(2)において、ビスフェノールを生成する反応は、更に、トルエン、キシレンなどの溶媒を加えて、溶媒存在下で行っても良い。また、更に、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族アルコールを添加して行っても良い。特に脂肪族アルコールを添加することで硫酸と反応して硫酸モノアルキルが生成して触媒作用を示すことから、脂肪族アルコールの添加が好ましい。
ビスフェノールの製造後、使用した有機溶媒(工程(1)の芳香族アルコールを含む有機溶液に含まれる有機溶媒、または、工程(2)において追加した有機溶媒)は、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。
また、有機溶媒を使わず芳香族アルコールを多量に使用して有機溶媒の代わりにする場合、未反応の芳香族アルコールは損失となることから、蒸留などにより回収及び精製して再使用することが可能である。
本発明のビスフェノールの製造方法の縮合反応によって得られた前記ビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
本発明のビスフェノールの製造方法で得られるビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
本発明のビスフェノールの製造方法にて得られたビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法にて得られるポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン(以下、テトラメチルビスフェノールAと称する)、オルトクレゾール、2,6-ジメチルフェノール(本願では、キシレノールとも称する)、トルエン、水酸化ナトリウム、原料硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
クレゾールスルホン酸水溶液は、キシダ化学株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
<芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液及びビスフェノールを含む反応生成液の組成分析>
ビスフェノールCを含む反応生成液、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液、テトラメチルビスフェノールAを含む反応生成液、及び、ジメチルフェノールスルホン酸を含む反応生成液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID
・方式:低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持
・流速:0.8mL/分
・検出波長:280nm
なお、クレゾールスルホン酸の濃度はクレゾール換算値、ジメチルフェノールスルホン酸の濃度はジメチルフェノール換算値とした。
撹拌を停止した後、30分間静置する。静置後、油水界面が生じたことで油水分離の有無を評価した。
実施例1-1~1-4及び比較例1-1のクレゾールスルホン酸溶液の色調は、静置した後に、得られた芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液の有機相の色調を目視で評価した。
それ以外の実施例および比較例の芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液の色調は、1時間撹拌した後の色調を目視で評価した。
判断基準は無色を◎、淡黄色を○、黄色を△、赤みのある黄色を×とした。
なお、得られるビスフェノールの色調は、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液の色調と相関しているため、本実施例では、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液の評価とした。
ビスフェノールCの溶融時のハーゼン色数の測定は、色差計を用いて、以下の手順と条件で行った。
分光色差計用の試験管は、日本理化硝子製の試験管(24mm×200m/m P-24)を使用した。
装置は、日本電色工業株式会社製「SE-6000」を使用した。
ハーゼン色数の測定は、ビスフェノールCを入れた分光色差計用の試験管をアルミブロックヒーターで所定の温度で加熱し、所定時間となったところで30秒以内に行った。
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。
装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、オルトクレゾール150g(1.4モル)、トルエン35gを入れた後、90質量%の原料硫酸125gを入れた。セパラブルフラスコ内の混合物を30℃に維持し、懸濁状態(油水分離した状態)で30分撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-1a)を得た。
上記30分の撹拌終了後、反応生成液(1-1a)を30分間静置させたところ、油水分離したことからも、反応は油水分離した状態で行われたと判断した。
上記30分間静置させた後の油水分離した反応生成液(1-1a)の上相の有機相(クレゾールスルホン酸溶液と称する)は、淡黄色であった。該有機相の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が36.7質量%生成していた。
(2-1)反応
前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。
次に、セパラブルフラスコ内を30℃に維持した状態で、前記反応生成液(1-1a)へ、該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。
その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(1-1b)(有機相)を得た。
得られた反応生成液(1-1b)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(1-1b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが24.1面積%、ビスフェノールCが25.6面積%、その他の副生物が50.3面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、オルトクレゾール150g(1.4モル)、トルエン35g及びメタノール7gを入れた後、90質量%の原料硫酸125gを入れた。セパラブルフラスコ内の混合物を30℃に維持し、油水分離した状態で30分撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-2a)を得た。
上記30分の撹拌終了後、反応生成液(1-2a)を30分間静置させたところ、油水分離したことからも、反応は油水分離した状態で行われたと判断した。
上記30分間静置させた後の油水分離した反応生成液(1-2a)の上相の有機相(クレゾールスルホン酸溶液と称する)は、淡黄色であった。該有機相の1部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が15.9質量%生成していた。
(2-1)反応
前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。 次に、セパラブルフラスコ内を30℃に維持した状態で、前記反応生成液(1-2a)へ該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(1-2b)を得た。
得られた反応生成液(1-2b)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(1-2b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが25.6面積%、ビスフェノールCが33.1面積%、その他の副生物が41.3面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、オルトクレゾール150g(1.4モル)、ヘキサン10gを入れた後、90質量%の原料硫酸125gを入れた。セパラブルフラスコ内の混合物を30℃に維持し、懸濁状態(油水分離した状態)で30分撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-3a)を得た。
また、30分撹拌終了後、反応生成液(1-3a)を30分間静置させたところ、油水分離したことからも、反応は油水分離した状態で行われたと判断した。
上記30分間静置させた後の油水分離した反応生成液(1-3a)の上相の有機相(クレゾールスルホン酸溶液と称する)は、淡黄色であった。該有機相の1部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が44.7質量%生成していた。
(2-1)反応
前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。 次に、セパラブルフラスコ内を30℃に維持した状態で、前記反応生成液(1-3a)へ該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(1-3b)を得た。
得られた反応生成液(1-3b)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(1-3b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが27.8面積%、ビスフェノールCが11.2面積%、その他の副生物が61.0面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、オルトクレゾール150g(1.4モル)、オルトキシレン10gを入れた後、90質量%の原料硫酸125gを入れた。セパラブルフラスコ内の混合物を30℃に維持し、懸濁状態(油水分離した状態)で30分撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-4a)を得た。
上記30分の撹拌終了後、反応生成液(1-4a)を30分間静置させたところ、油水分離したことからも、反応は油水分離した状態で行われたと判断した。
上記30分間静置させた後の油水分離した反応生成液(1-4a)の上相の有機相(クレゾールスルホン酸溶液と称する)は、淡黄色であった。該有機相の1部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が22.1質量%生成していた。
(2-1)反応
前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。次に、セパラブルフラスコ内を30℃に維持した状態で、前記反応生成液(1-4a)へ該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(1-4b)を得た。
得られた反応生成液(1-4b)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(1-4b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが28.1面積%、ビスフェノールCが10.1面積%、その他の副生物が61.8面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、オルトクレゾール150g(1.4モル)及び90質量%の原料硫酸125gを入れた。セパラブルフラスコ内の混合物を30℃に維持した状態で30分撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-1a’)を得た。このとき、反応液は懸濁しておらず、反応は油水分離した状態で行われなった。さらに上記30分の撹拌終了後、反応生成液(1-1a’)を30分間静置させたところ、油水分離しなかった。
上記30分静置させた後の反応生成液(1-1a’)の上層は、赤みのある黄色であった。反応生成液(1-1a’)の上層の1部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が36.8質量%生成していた。
(2-1)反応
前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。
次に、セパラブルフラスコ内を30℃に維持した状態で、前記反応生成液(1-1a’)へ該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(1-1b’)を得た。
得られた反応生成液(1-1b’)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(1-1b’)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが18.3面積%、ビスフェノールCが2面積%、その他の副生物が79.7面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
(1-1)反応
コンデンサー、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、オルトクレゾール150g(1.4モル)、及び80質量%の原料硫酸125gを入れて30℃に維持し、懸濁状態(油水分離した状態)で1時間撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(2-1a)を得た。
得られた反応生成液(2-1a)には、着色は見られなかった。
上記1時間の撹拌終了後、反応生成液(2-1a)を30分静置したところ、油水分離した。
上記30分静置させた後の油水分離した反応生成液(2-1a)の上相の有機相の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が2.51質量%生成していることを確認した。
(2-1)反応
前記滴下ロートに、トルエン130g、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。次に、セパラブルフラスコ内を30℃に維持した状態で、前記反応生成液(2-1a)へ該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(2-1b)を得た。
得られた反応生成液(2-1b)に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた反応生成液(2-1b)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーによりビスフェノールC反応液の組成を確認したところ、オルトクレゾールが18.5面積%、ビスフェノールCが76.2面積%、その他の副生物が5.3面積%であった。
実施例2-1において、80質量%の原料硫酸125gの代わりに、70質量%の原料硫酸125gを用いたこと以外は、実施例2-1と同様に実施し、工程(1)においてクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(2-2a)を得た後、工程(2)においてビスフェノールCを含む反応生成液(2-2b)を得た。
得られたクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(2-2a)には、着色は見られなかった。
反応時は、懸濁状態で油水分離しており、また、反応生成液(2-2a)を静置したところ、油水分離した。
得られた反応生成液(2-2a)の有機相の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が0.08質量%生成していることを確認した。
また、ビスフェノールCを含む反応生成液(2-2b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが78.3面積%、ビスフェノールCが19.8面積%、その他の副生物が1.9面積%であった。
実施例2-1において、80質量%の原料硫酸125gの代わりに、90質量%の原料硫酸125gを用いたこと以外は、実施例2-1と同様に実施し、工程(1)においてクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-2a’)を得た後、工程(2)においてビスフェノールCを含む反応生成液(1-2b’)を得た。
得られたクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-2a’)は、赤みのある黄色であった。
反応時は、懸濁状態でなく、また、反応生成液(1-2a’)を静置したところ、油水分離しなかった。
得られた反応生成液(1-2a’)の有機相の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が22.1質量%生成していることを確認した。
実施例2-1において、80質量%の原料硫酸125gの代わりに、60質量%の原料硫酸125gを用いたこと以外は、実施例2-1と同様に実施し、工程(1)においてクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-3a’)を得た後、工程(2)においてビスフェノールCを含む反応生成液(1-3b’)を得た。
得られたクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(1-3a’)には、着色は見られなかった。
反応時は、懸濁状態で油水分離しており、また、反応生成液(1-3a’)を静置したところ、油水分離した。
得られた反応生成液(1-3a’)の有機相の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸は検出限界以下であった。
また、ビスフェノールCを含む反応生成液(1-3b’)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが100面積%、ビスフェノールCは検出されなかった。
疎水性が比較的低いオルトクレゾールのみを有機溶液として用いて反応を行うと、比較例1-2に示すように、原料硫酸の質量濃度が高いと油水分離せず、得られるクレゾールスルホン酸を含む反応生成溶液が著しく着色する結果となる。
実施例2-1において、オルトクレゾール150g(1.4モル)及び80質量%の原料硫酸125gを入れて30℃に維持したまま1時間撹拌したことの代わりに、オルトクレゾール150g(1.4モル)及び80質量%の原料硫酸125gを入れて50℃に維持したまま1時間撹拌したこと以外は、実施例2-1と同様に実施し、工程(1)においてクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(2-3a)を得た後、工程(2)においてビスフェノールCを含む反応生成液(2-3b)を得た。
得られたクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(2-3a)の色調は、黄色を呈していた。
反応時は、懸濁状態で油水分離しており、また、反応生成液(2-3a)を静置したところ、油水分離した。
得られた反応生成液(2-3a)の有機相の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が27.6質量%生成していることを確認した。
ビスフェノールCを含む反応生成液(2-3b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが32.9面積%、ビスフェノールCが57.8面積%、その他の副生物が9.2面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、オルトクレゾール51.6g(0.48モル)、98%硫酸2.7gを仕込んだ。加えた硫酸は、オルトクレゾールに溶解して均一溶液となった(油水分離しなかった)。該均一溶液を、80℃まで昇温した。同温度で1時間撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(2a’)を得た。
(1-2)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液の組成分析
反応生成液(2a’)の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで反応生成液(2a’)の有機相中の組成を確認したところ、クレゾールスルホン酸が10.50質量%生成していることを確認した。
得られた反応生成液(2a’)を60℃まで冷却した。そこへ、アセトン2.8g(0.048モル)、ドデシルメルカプタン1.1gを加え、60℃で3分間撹拌した。その後、30℃まで冷却し、1時間撹拌した。得られた反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、水相を除去し、ビスフェノールCを含む反応生成液(2b’)(有機相)を得た。得られた反応生成液(2b’)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(2b’)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが61.11面積%、ビスフェノールCが27.50面積%、その他の副生物が11.39面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む生成反応液を得る工程(1)
(1-1)反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール5g及びオルトクレゾール235g(2.2モル)を入れた後に、80質量%原料硫酸250gをゆっくり加え、30℃に維持した状態で1時間撹拌し、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(3a)を得た。
得られた反応生成液(3a)には、着色は見られなかった。
反応時は、懸濁状態で油水分離しており、また、反応生成液(3a)を静置したところ、油水分離した。
(2-1)反応
前記滴下ロートにトルエン250g、ドデカンチオール7.5g、アセトン61g(1.1モル)を入れてアセトン混合物を調製し、滴下ロートを用いて該アセトン混合物を1時間かけてゆっくりセパラブルフラスコ内の反応生成液(3a)へ滴下して供給した。該アセトン混合物の滴下終了後、更に30分間混合させた。
反応終了後、トルエン60.0g及び脱塩水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置させ反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出し、ビスフェノールCを含む反応生成液(3b)を得た。
得られた反応生成液(3b)の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで反応生成液(3b)の組成を確認したところ、オルトクレゾールが16.1面積%、ビスフェノールCが80.7面積%、その他の生成物が3.2面積%であった。
この反応生成液(3b)を80℃から30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶ビスフェノールC 1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、湿潤状態の粗ビスフェノールCを得た。
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、前記粗ビスフェノールC全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認し、該有機相を脱塩水600gで2回に分けて十分洗浄した。その後、得られた有機相に2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液7.5gを加え、そのまま80℃から10℃まで冷却した。その後、遠心分離器(毎分3000回転で10分間)を用いて濾過を行い、湿潤状態の精ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC生成物(3) 180.9gを得た。
分光色差計用の試験管に該ビスフェノールC生成物(3)15gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールC生成物(3)の溶融液を調製した。加熱開始から30分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は15と良好であった。
(3-1)合成
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、該ビスフェノールC生成物(3)100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
該ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24800であり、末端水酸基濃度(OH)濃度は769質量ppmであった。またペレットYIは、7.62であった。
80質量%の原料硫酸250gの代わりに、92質量%の原料硫酸250gを用いたこと以外は、実施例3と同様に実施し、工程(1)においてクレゾールスルホン酸を含む反応生成液(3a’)を得た後、工程(2)においてビスフェノールC生成物(3’)を得た。
クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(3a’)は、黄色であった。
反応時は、均一溶液であり、また、反応生成液(3a’)を静置しても、油水分離は確認されなかった。
分光色差計用の試験管に得られたビスフェノールC生成物(3’)15gを入れ、194℃に設定したアルミブロックヒーターに入れて、ビスフェノールC生成物(3’)の溶融液を調製した。加熱開始から30分後、色差計で該溶融液を測定したところ、ハーゼン色数(APHA)は189であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
(1-1)反応
コンデンサー、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコを50℃に維持し、溶融したキシレノール150g(1.2モル)及びトルエン40gを入れた。その後、80質量%の原料硫酸125gを入れて静置したところ、油水分離した。該混合物を50℃に維持したまま、30分間撹拌し、キシレノールスルホン酸を含む反応生成液(4a)を得た。
得られた反応生成液(4a)は、淡黄色であった。
反応時は、懸濁状態で油水分離しており、上記30分の撹拌終了後、反応生成液(4a)を静置したところ、油水分離した。
得られた反応生成液(4a)の有機相(以下、キシレノールスルホン酸溶液と称する)の一部を取出し、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、キシレノールスルホン酸が3.8質量%生成していることを確認した。
(2-1)反応
得られた反応生成液(4a)を、混合しながら50℃から30℃に降温した。 前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。次に、30℃に維持した状態で、該滴下ロート内の溶液を30分かけて、反応生成溶液(4a)へ滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、テトラメチルビスフェノールAを含む反応生成液(4b)を得た。
得られた反応生成液(4b)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(4b)の組成を確認したところ、キシレノールが39.0面積%、テトラメチルビスフェノールAが49.8面積%、その他の副生物が11.2面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を生成する工程
(1-1)反応
コンデンサー、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコを50℃に維持し、溶融したキシレノール150g(1.2モル)を入れた。その後、98質量%の原料硫酸125gを入れて静置したところ、均一溶液となった。該混合物を50℃に維持したまま30分間撹拌したところ、固化した。
得られた固体(以下、キシレノールスルホン酸混合物と称する)の一部を取出しアセトニトリルに溶解させ、炭酸水素ナトリウムで中和した後、高速液体クロマトグラフィーで有機相中の組成を確認したところ、キシレノールスルホン酸が68.5質量%生成していることを確認した。
(2-1)反応
得られたキシレノールスルホン酸混合物を、混合しながら50℃から30℃に降温した。前記滴下ロートに、アセトン31g(0.5モル)、ドデカンチオール4gを入れた。固化しているため混合不良であったが、30℃に維持した状態で、該滴下ロート内の溶液を30分かけて滴下し、得られた反応液を30℃に維持した状態で更に30分撹拌した。その後、該セパラブルフラスコに水125g及び酢酸エチル125gを加えて撹拌した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、テトラメチルビスフェノールAを含む反応生成液(4b’)を得た。
得られた反応生成液(4b’)の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーにより反応生成液(4b’)の組成を確認したところ、キシレノールが96.7面積%、テトラメチルビスフェノールAが1.3面積%、その他の副生物が2.0面積%であった。
(1)芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、メタノール12g、オルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を10℃以下とした。その後、撹拌しながら98重量%原料硫酸95gを0.3時間かけてゆっくり加えた後、5℃以下まで冷やし、クレゾールスルホン酸を含む反応生成液(5a)を得た。
なお、反応時は、懸濁状態で油水分離しており、上記0.3時間の撹拌終了後、反応生成液(1-1a)を30分間静置させたところ、油水分離したことからも、反応は油水分離した状態で行われたと判断した。
(2-1)反応
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン65g(1.12モル)、ドデカンチオール5.4gを混合し、滴下液を調製した。
反応生成液(5a)が入ったセパラブルフラスコの内温を5℃以下にした。次いで、前記滴下ロートを用いて滴下液を、前記内温が10℃以上にならないように反応生成液(5a)へ1時間かけて供給した。さらに、内温が10℃で、2.5時間撹拌し、ビスフェノールを含む反応生成液(5b)を得た。
反応終了後、25%水酸化ナトリウム水溶液190gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置させて、下相の水相を抜き出した。得られた第1の有機相に脱塩水100gを入れ、30分混合して静置し、水相を除去した。得られた第2の有機相に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液100gを加えて、30分混合して静置し、下相を抜き出した。得られた第3の有機相に更に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液120gを加えて、30分混合して静置し、下相を抜き出した。得られた第4の有機相を抜出し、その質量を測定したところ、666gであった。
第4の有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーにより第4の有機相の組成を確認した。第4の有機相中のオルトクレゾールおよびビスフェノールCは、検量線をそれぞれ作成し、質量%として算出した。測定の結果、オルトクレゾールが5.8質量%(5.8質量%×有機相の質量666g÷オルトクレゾールの分子量108g/モル÷仕込んだオルトクレゾールの物質量2.1モル=16.8モル%)、ビスフェノールCが31.4質量%(31.4質量%×有機相の質量666g×2÷ビスフェノールCの分子量256g/モル÷仕込んだオルトクレゾールの物質量2.1モル=76.7モル%)であった。
得られた第4の有機相を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットケーキを得た。
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、前記粗ビスフェノールC全量とトルエン373gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認し、第5の有機相を得た。得られた第5の有機相に、脱塩水200gを加え、30分混合し静置し、下相の水相(第1の水相)を除去した。なお、第1の水相のpHは、9.7であった。得られた第6の有機相に、脱塩水200gを加え、30分混合し静置し、下相の水相(第2の水相)を除去した。得られた第7の有機相に、脱塩水200gを加え、30分混合し静置し、下相の水相(第3の水相)を除去した。
得られた第8の有機相を、80℃から10℃まで冷却した。その後、遠心分離器(毎分3000回転で10分間)を用いて濾過を行い、ウェットの精ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC生成物(5) 193gを得た。
得られたビスフェノールC生成物(5)の190℃溶融色差は、ハーゼン色数APHA21であった。
(3-1)合成
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、前記ビスフェノールC生成物(5)100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は170分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24800であり、ペレットYIは、7.4であった。
Claims (6)
- 芳香族アルコール及び炭化水素を含む有機相と、硫酸を含む水相とに油水分離した状態で、前記有機相において芳香族アルコールスルホン酸を生成させ、芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液を得る工程(1)と、
前記芳香族アルコールスルホン酸を含む反応生成液と、ケトン又はアルデヒドとを混合し、前記芳香族アルコールスルホン酸の存在下で、前記芳香族アルコールと、前記ケトン又はアルデヒドとからビスフェノールを生成する工程(2)と、を含み、
前記工程(1)において、前記芳香族アルコール及び前記炭化水素を含む有機溶液と、原料硫酸とを混合して、前記有機相と、前記水相とに油水分離した状態とするビスフェノールの製造方法。 - 前記有機溶液と、質量濃度が70質量%以上、90質量%未満である前記原料硫酸とを混合して、前記有機相と、前記水相とに油水分離した状態とする請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記工程(1)において、芳香族アルコールスルホン酸を生成する反応温度が、60℃未満である請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記芳香族アルコールが、フェノール、クレゾールおよびキシレノールからなる群から選択されるいずれかである請求項1~3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記有機溶液中の前記芳香族アルコールに対する前記原料硫酸中の前記硫酸のモル比が、0.1以上10以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によって得られたビスフェノールを用いた、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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