JP6859936B2 - ビスフェノール粉体の製造方法、及び、ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の方法で製造された中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体は、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
また、フェノール類化合物中に含まれる金属イオン濃度及び溶存酸素濃度を規定したビスフェノール及びその製造方法が知られている(特許文献2)。
更に、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を添加して、酸性触媒の残留を少なくするため、ビスフェノールの塩基性度を調整する方法において、前記塩基性度が該ビスフェノールと炭酸ジエステルとをエステル交換反応させたときのエステル交換反応速度から求められることを特徴とするビスフェノールの製造方法も知られている(特許文献3)。
[1] 原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であるビスフェノール粉体の製造方法。
[2] 前記ビスフェノール析出用溶液は、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合して得られたものである[1]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[3] 前記ビスフェノール溶液の溶媒が、有機溶媒である[2]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[4] 前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルから選ばれる少なくとも1種以上である[3]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[5] 前記中性のナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルホン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上である[1]から[4]のいずれかに記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[6] 前記スルホン酸ナトリウムが、一般式(1)で示される化合物である[5]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[7] [1]から[6]のいずれかに記載のビスフェノール粉体の製造方法により製造したビスフェノール粉体を用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明は、原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であることを特徴とするビスフェノール粉体の製造方法(以下、「本発明のビスフェノール粉体の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
なお、以下、本発明のビスフェノール粉体の製造方法における「原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程」を、「晶析工程A」と記載する。
しかしながら、本発明者らは、特定の濃度の中性のナトリウム塩水溶液を積極的に添加し晶析させることで得られたビスフェノール粉体を用いて、ポリカーボネート樹脂を製造した場合に、驚くことに、中性のナトリウム塩を添加せずに晶析させたビスフェノール粉体を原料とした場合と比較して、効率的に反応が進行することを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、上記のように、原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程(図1参照)を有する。
通常、晶析工程Aでは、ビスフェノール析出用溶液を冷却し、ビスフェノールを析出させる。このとき、ビスフェノール析出用溶液に含まれる中性のナトリウム塩も共に析出するため、中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体が得られる。
本発明のビスフェノール析出用溶液に含まれる原料ビスフェノールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
本発明において、「中性のナトリウム塩」とは、強酸を中和して得られたナトリウム塩のことであり、水酸化ナトリウム由来のナトリウムイオンと、強酸由来のアニオンとから形成されるナトリウム塩を意味する。
なお、強酸とは、酸乖離定数pKaが1以下の酸を意味する。具体的に、強酸としては、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸、アルキルスルホン酸等が挙げられ、これらに由来するアニオンとしては、塩化物イオン、硫酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等が挙げられる。
ビスフェノール析出用溶液の調整方法等は特に限定されないが、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合して得られたものであることが好ましい。詳しくは後述する。
冷却温度(T3)は、高すぎると結晶が十分に析出しないため、その上限は、30℃以下であることが好ましく、20℃以下がより好ましい。また、冷却温度(T3)が低すぎると、溶媒が凝固してしまう恐れがあるので、冷却温度(T3)の下限は、5℃以上が好ましい。
また、晶析時間は、1〜10時間であることが好ましい。
冷却方法は、特に限定されないが、水冷や空冷等で行うことができる。
また、乾燥の方法は、減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができるが、乾燥しやすさの観点から、50〜120℃であることが好ましく、2〜15時間乾燥させることが好ましい。
本発明のビスフェノール粉体の製造方法では、ビスフェノール析出用溶液において、中性のナトリウム塩の濃度が、原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下において、晶析工程Aを行う。ビスフェノール析出用溶液において、中性のナトリウム塩の濃度が、原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下になるように制御するために、本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、晶析工程Aの前に、ビスフェノール析出用溶液を調製するための調製工程を有することができる。
ビスフェノール析出用溶液の調製方法は、特に限定されない。例えば、原料ビスフェノールと中性のナトリウム塩とを同時に溶媒に混合してもよいし、原料ビスフェノールと中性のナトリウム塩とを別々に混合してもよい。
(方法1) ビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩とを混合する方法
(方法2) ビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩水溶液とを混合する方法
(方法2)のビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩水溶液とを混合する方法においては、中性のナトリウム塩を均一にビスフェノール溶液に混合できることから、好ましい。
ビスフェノール溶液は、上記のように原料ビスフェノールを溶媒に溶解した溶液であり、原料ビスフェノールの濃度が、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
このビスフェノール溶液に、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液を混合し、ビスフェノール析出用溶液(中性のナトリウム塩が混合されたビスフェノール溶液)を調製する。
ビスフェノール溶液に用いられる溶媒は、原料ビスフェノールが溶解するものであれば特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましい。用いられる有機溶媒は、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルなどを単独又は混合して使用することが可能であり、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
また、本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、ビスフェノール溶液の調製工程を有してもよい。ビスフェノール溶液は、例えば、原料ビスフェノールと有機溶媒とを混合し、撹拌することで調製することができる。
本発明において、ビスフェノール溶液の調製に使用される原料ビスフェノールは、酸触媒存在下、一般式(3)で示される芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとの縮合反応(原料ビスフェノールの生成反応)により得ることができる。
本発明において、原料ビスフェノールの生成反応で使用される酸触媒は、塩化水素ガス、塩酸、塩酸と硫酸の混合物、硫酸、硫酸モノメチル、スルホン酸などの公知の酸を使用することが可能である。
この中でも、硫酸、硫酸モノメチル及びスルホン酸からなる群から選択される1種以上の酸を使用することが好ましい。
原料ビスフェノール生成工程において使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(4)で表される化合物である。
原料ビスフェノール生成工程において使用するケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(5)で表される化合物である。
原料ビスフェノール生成工程にて用いる溶媒として、芳香族炭化水素を使用することが可能である。また、原料ビスフェノールの製造に使用した溶媒を、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。該溶媒を再利用する場合は、沸点が低い溶媒が好ましい。
また、溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することで損失を低減できる。
また、粗精製後の原料ビスフェノールが溶解した溶液をそのまま、ビスフェノール溶液として用いてもよい。
本発明のビスフェノール粉体は、ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下の中性のナトリウム塩を含有するものである。
本発明のビスフェノール粉体は、ビスフェノールと、ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下の中性のナトリウム塩とを含むものであるため、「本発明のビスフェノール粉体」と称すが、「中性のナトリウム塩を含むビスフェノール粉体」とも称すことができるものである。
なお、本発明のビスフェノール粉体の製造方法では、ビスフェノール析出用溶液に含有される中性のナトリウム塩を、得られるビスフェノール粉体にほぼ定量的に含有させることができるため、本発明のビスフェノール粉体は、本発明のビスフェノール粉体の製造方法により好適に得ることができる。
例えば、本発明のビスフェノール粉体では、塩化ナトリウムのとき、ナトリウムの含有量が、0.04〜60質量ppmであり、塩化物イオンの含有量が0.06〜90質量ppmであるビスフェノール粉体とすることができる。
例えば、ビスフェノール粉体におけるビスフェノールの含有量が95質量%以上、好ましくは97.0質量%以上であり、より好ましくは98.0質量%以上であり、さらに好ましくは98.5質量%以上であり、最も好ましくは99.0質量%以上とすることができる。
本発明のビスフェノール粉体は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
次に、本発明のビスフェノール粉体を原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
ポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノール粉体と、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノール粉体と炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下、原料ビスフェノールCと称する)、クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、トルエン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、炭酸セシウム、硫酸ナトリウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、原料ビスフェノールAと称する)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン(以下、原料テトラメチルビスフェノールAと称する)、メタンスルホン酸ナトリウム、p−フェノールスルホン酸ナトリウム二水和物は、東京化成株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
(フェノールの生成量)
製造したビスフェノールの粉体と炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製カラム恒温槽CTO−10
島津製作所社製検出器SPD―M10AVP
島津製作所社製ポンプLC−10AD
GLサイエンス株式会社製Inertsil ODS−II 5μm 150mm×4.6mmID
・アイソククラティック法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:水:アセトニトリル=10:90(体積比)
・分析時間0分ではポンプ流量0.5ミリリットル/分、
分析時間0〜15分はポンプ流量2ミリリットル/分へ徐々に変化させ、
分析時間15〜30分はポンプ流量2ミリリットル/分を維持して、分析した。
・検出波長は、210nmとした。
ビスフェノールに、炭酸ジフェニルとの反応を阻害する成分が多く存在するほど、フェノール生成量は少なくなり、反応を阻害する成分が少ないほどフェノールの生成量は多くなる。
ビスフェノールの生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt ScherzoSM−C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1ミリリットル:900ミリリットルの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0〜25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25〜30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8ミリリットル/分にて分析した。
アセトン基準のビスフェノールの反応収率(モル%)は、高速液体クロマトグラフィーで波長280nmにより検出されたピークより反応液中に含まれるビスフェノールの濃度を算出し、その濃度よりビスフェノール生成反応液中に含まれる該ビスフェノールのモル量を算出して、該ビスフェノールのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
ビスフェノールに含まれるナトリウム原子濃度の測定は、以下の手順で実施した。
ビスフェノールに硝酸を加え、マイクロウェーブ分解装置を用いて、加圧密閉分解した。得られた分解液を純水に希釈し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製ELEMENT2を用いてビスフェノールに含まれるナトリウム原子濃度を測定した。
ビスフェノールに含まれる塩素原子濃度の測定は、以下の手順で実施した。ビスフェノールを三菱ケミカル製固定床半回分式燃焼装置(QF−02)を用いて燃焼させ、燃焼ガスを吸収液に吸収させ、その吸収液中のイオンをサーモフィッシャーサイエンティフィック社製DX−500 Dionex社製カラム(Iоn Pac AS12A)、溶離液(炭酸ナトリウム2.7ミリモル/L+炭酸水素ナトリウム0.3ミリモル/L)を用いて、ビスフェノールに含まれる塩素原子濃度を測定した。
粘度平均分子量(Mv)は、 ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールC 100g及びトルエン163gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
なお、脱塩水とは、イオン交換樹脂によりイオンを除去した水であり、ナトリウムイオンや塩化物イオンの含有量は、0.01ppm未満であるため、本工程でこれらのイオンの混入は実質的に起こっていないと判断した。
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4g(塩化ナトリウムとして、10mg)を加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料ビスフェノールC(原料ビスフェノール)に対して100質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
(1−3)晶析工程A
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールCを晶出させた。
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールCを得た。該湿潤状態のビスフェノールCを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールCの粉体(1)95gを得た。
得られたビスフェノールCの粉体(1)に含まれる塩化ナトリウム濃度を測定したところ、ナトリウム原子濃度が38質量ppm、塩素原子濃度が62質量ppm、塩化ナトリウムとして100質量ppmであった(ビスフェノールCの粉体(1)に含まれる塩化ナトリウム量は95g×100質量ppm=9.5mg)。塩化ナトリウムの回収率=ビスフェノールCに含まれる塩化ナトリウム量÷供給した塩化ナトリウム量×100(%)は95%であった。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールCの粉体(1) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.1面積%生成していた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1とは、異なるロットの原料ビスフェノールCを用いて、実施例1と同様の方法で、ビスフェノールCの粉体(2)を得た。
得られたビスフェノールCの粉体(2)に含まれる塩化ナトリウムの量を測定したところ、ナトリウム原子濃度が39質量ppm、塩素原子濃度が62質量ppm、塩化ナトリウムとして101質量ppmであった(ビスフェノールCの粉体(2)に含まれる塩化ナトリウム量は95g×101質量ppm=9.6mg)。塩化ナトリウムの回収率=ビスフェノールCに含まれる塩化ナトリウム量÷供給した塩化ナトリウム量×100(%)は96%であった。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールCの粉体(2) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
テフロン(登録商標)製試験管に、原料ビスフェノールCの粉体 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7μg/gの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.1面積%生成していた。
なお、原料ビスフェノールCに含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールCの粉体 100g、トルエン163gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相を得た。
なお、有機相に含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールCを晶出させた。
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールCを得た。
該湿潤状態のビスフェノールCを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールCの粉体(1’)96gを得た。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールCの粉体(1’) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.2面積%生成していた。
実施例1より、塩化ナトリウム水溶液を添加した後に晶析させて得られたビスフェノールCの粉体(1)は、塩化ナトリウムを添加していない比較例1、2に比べて炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量が多いことから、炭酸ジフェニルとの反応がより進行したことが分かる。この結果より、驚くべきことに、中性である塩化ナトリウムが炭酸ジフェニルとの反応を進行させる触媒作用を示したことが分かる。
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmの硫酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(3)を得た。
得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.8面積%生成していた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmのp−トルエンスルホン酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(4)を得た。
得られたビスフェノールCの粉体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmのp−フェノールスルホン酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(5)を得た。
得られたビスフェノールCの粉体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.1面積%生成していた。
[実施例6]
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmのメタンスルホン酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(6)を得た。
得られたビスフェノールCの粉体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.5面積%生成していた。
比較例2より、ナトリウム塩水溶液を加えない場合、得られたビスフェノールCの粉体(1’)は、炭酸ジフェニルとの反応はほとんど進行しないことが分かる。
また、実施例3より、硫酸ナトリウム水溶液を含むビスフェノール析出用溶液から晶析させた場合、得られたビスフェノールCの粉体(3)と炭酸ジフェニルとの反応が進行し、硫酸ナトリウムが触媒作用を有することが分かる。
更に、実施例4〜6より、p−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液、p−フェノールスルホン酸ナトリウム水溶液及びメタンスルホン酸ナトリウム水溶液を含むビスフェノール析出用溶液から晶析させた場合も、得られたビスフェノールCの粉体と炭酸ジフェニルとの反応が進行し、p−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液、p−フェノールスルホン酸ナトリウム水溶液及びメタンスルホン酸ナトリウム水溶液が触媒作用を有することが分かる。
したがって、実施例4〜6の結果より、一般的なスルホン酸ナトリウムにおいても、炭酸ジフェニルとの反応を進行させる触媒作用を有することを類推できる。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールA15g及びトルエン300gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に、250質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gを加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料ビスフェノールA(原料ビスフェノール)に対して66.7質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールAを晶出させた。
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールAを得た。該湿潤状態のビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールAの粉体(7)11gを得た。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールAの粉体(7) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールA15g及びトルエン300gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相を得た。
なお、有機相に含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールAを晶出させた。
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールAを得た。該湿潤状態のビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールAの粉体(2’)11gを得た。
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールAの粉体(2’) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.2面積%生成していた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、テトラメチルビスフェノールA30g及びトルエン200gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に、250質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gを加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料テトラメチルビスフェノールA(原料ビスフェノール)に対して33.3質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールAを晶出させた。
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを得た。該湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したテトラメチルビスフェノールAの粉体(8)21gを得た。
テフロン(登録商標)製試験管に、テトラメチルビスフェノールAの粉体(8) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.8面積%生成していた。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料テトラメチルビスフェノールA30g及びトルエン200gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相を得た。
なお、有機相に含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでテトラメチルビスフェノールAを晶出させた。
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを得た。該湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したテトラメチルビスフェノールAの粉体(3’)21gを得た。
テフロン(登録商標)製試験管に、テトラメチルビスフェノールAの粉体(3’) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールは未検出であった。
表3の結果から、ビスフェノールA及びテトラメチルビスフェノールAに塩化ナトリウムを含有させたビスフェノール粉体とすることで、炭酸ジフェニルとの反応を促進させることができることがわかった。この結果より、様々なビスフェノールにおいても、中性のナトリウム塩を含有させたビスフェノール粉体を製造し、炭酸ジフェニルと反応させることで、該反応を促進させると容易に類推することができる。
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)原料ビスフェノール生成工程
(1−1−1)生成反応
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88重量%硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で反応させた。
反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩素水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。
得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モル%であった。
その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとして原料ビスフェノールC239.9gを得た。
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、前記原料ビスフェノールC全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認し、該有機相を脱塩水600gで2回に分けて十分洗浄し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に10質量ppmの塩化ナトリウム水溶液5gを加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料ビスフェノールC(原料ビスフェノール)に対して0.21質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃まで冷却した。
その後、遠心分離器(毎分3000回転で10分間)を用いて濾過を行い、湿潤状態のビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールCの粉体(9) 180.9gを得た。
テフロン(登録商標)製試験管に、得られたビスフェノールCの粉体(9) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで初期重合活性を確認したところ、フェノールが1.6面積%生成していた。
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、該ビスフェノールCの粉体(9)100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は24800であり、末端水酸基濃度(OH濃度)は769質量ppmであった。またペレットYIは、7.62であった。
Claims (7)
- 原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、
前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であることを特徴とするビスフェノール粉体の製造方法。 - 前記ビスフェノール析出用溶液は、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合して得られたものである請求項1に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
- 前記ビスフェノール溶液の溶媒が、有機溶媒である請求項2記載のビスフェノール粉体の製造方法。
- 前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルから選ばれる少なくとも1種以上である請求項3記載のビスフェノール粉体の製造方法。
- 前記中性のナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルホン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のビスフェノール粉体の製造方法により製造したビスフェノール粉体を用いてポリカーボネート樹脂を製造することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
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