JP2019099525A - ビスフェノール粉体の製造方法、及び、ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

ビスフェノール粉体の製造方法、及び、ポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリカーボネート樹脂の製造に適したビスフェノール粉体の簡易かつ効率的な製造方法を提供する。また、該ビスフェノール粉体を使用したポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。【解決手段】 原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であることを特徴とするビスフェノール粉体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとから製造されたビスフェノールの溶液を用いてビスフェノール粉体を製造する方法に関する。また、本発明は、該製造方法で得られた中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体を用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
本発明の方法で製造された中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体は、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1)。
また、フェノール類化合物中に含まれる金属イオン濃度及び溶存酸素濃度を規定したビスフェノール及びその製造方法が知られている(特許文献2)。
更に、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を添加して、酸性触媒の残留を少なくするため、ビスフェノールの塩基性度を調整する方法において、前記塩基性度が該ビスフェノールと炭酸ジエステルとをエステル交換反応させたときのエステル交換反応速度から求められることを特徴とするビスフェノールの製造方法も知られている(特許文献3)。
特開2008−214248号公報 特開2015−209490号公報 特開平11−152240号公報
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載の方法で2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを製造し、得られた2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを用いて、溶融重合反応によりポリカーボネート樹脂を製造したところ、該溶融重合反応が期待通り進行しなかった。
また、特許文献2に記載の方法を用いて、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを製造したが、水洗時にナトリウムイオンが除去されてしまい、該溶融重合反応が期待通り進行しなかった。
更に、特許文献3に記載の方法を用いてナトリウム塩を添加しようとしたが、該添加方法が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン特有の製造方法での添加方法であり、有機溶媒を用いた晶析により精製する2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンなどの製造方法に適用できないことがわかった。
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、ポリカーボネート樹脂の製造に適したビスフェノール粉体の簡易かつ効率的な製造方法を提供することを目的とする。また、該ビスフェノール粉体を使用したポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとから製造されたビスフェノールを含む溶液に中性のナトリウム塩の水溶液を添加した後に晶析することで、ポリカーボネート樹脂の製造に適した、中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体を製造できることを見出した。また、該ビスフェノール粉体の製造方法で得られた中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体を用いて、炭酸ジエステルとの溶融重合反応を進行させ、ポリカーボネート樹脂を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[7]に存する。
[1] 原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であるビスフェノール粉体の製造方法。
[2] 前記ビスフェノール析出用溶液は、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合して得られたものである[1]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[3] 前記ビスフェノール溶液の溶媒が、有機溶媒である[2]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[4] 前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルから選ばれる少なくとも1種以上である[3]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[5] 前記中性のナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルホン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上である[1]から[4]のいずれかに記載のビスフェノール粉体の製造方法。
[6] 前記スルホン酸ナトリウムが、一般式(1)で示される化合物である[5]に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
(式中、Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を示す。)
[7] [1]から[6]のいずれかに記載のビスフェノール粉体の製造方法により製造したビスフェノール粉体を用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂の製造に適したビスフェノール粉体の簡易かつ効率的な製造方法が提供される。また、該ビスフェノール粉体を使用したポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を説明するためのフローチャートである。 本発明のビスフェノール粉体の製造方法の一例を示したフローチャートである。 ビスフェノール溶液を調製するためのビスフェノール溶液調製工程を説明するためのフローチャートである。 本発明のビスフェノール粉体の製造方法の別の例を示したフローチャートである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
<ビスフェノール粉体の製造方法>
本発明は、原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であることを特徴とするビスフェノール粉体の製造方法(以下、「本発明のビスフェノール粉体の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
なお、以下、本発明のビスフェノール粉体の製造方法における「原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程」を、「晶析工程A」と記載する。
本発明のビスフェノール粉体の製造方法により得られるビスフェノール粉体を用いることで、炭酸ジエステルとの溶融重合反応を効率的に進行させることができる。この理由は完全には明らかではないが、本発明のビスフェノール粉体の製造方法とすることにより、製造されるビスフェノール粉体に含まれる中性のナトリウム塩がポリカーボネート製造時の触媒として作用することや、ビスフェノール粉体に中性のナトリウム塩を均一に分散できることが、ポリカーボネート製造時の反応を効率的に進行させることに寄与している可能性がある。
ここで、溶融重合反応にてポリカーボネート樹脂を製造する方法では、原料であるビスフェノールに含有する酸性物質などの不純物により反応性が大きく影響を受けるため、塩基性物質による中和や洗浄により酸性物質などの不純物を除去し、原料であるビスフェノールの純度を高める必要がある。不純物(例えば、ポリカーボネートの反応を阻害しうる酸性物質や、酸性物質の中和に寄与しない中性物質等)が含まれる状態で、ビスフェノールを晶析させることは、結晶中にこれらの物質が残存することとなり、このような原料を用いてポリカーボネート樹脂の溶融重合反応を行えば、重合反応が阻害され反応性が低下すると考えることが一般的である。
しかしながら、本発明者らは、特定の濃度の中性のナトリウム塩水溶液を積極的に添加し晶析させることで得られたビスフェノール粉体を用いて、ポリカーボネート樹脂を製造した場合に、驚くことに、中性のナトリウム塩を添加せずに晶析させたビスフェノール粉体を原料とした場合と比較して、効率的に反応が進行することを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
<晶析工程A>
本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、上記のように、原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程(図1参照)を有する。
通常、晶析工程Aでは、ビスフェノール析出用溶液を冷却し、ビスフェノールを析出させる。このとき、ビスフェノール析出用溶液に含まれる中性のナトリウム塩も共に析出するため、中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体が得られる。
晶析工程Aで用いられるビスフェノール析出用溶液は、原料ビスフェノールと中性のナトリウム塩とを含み、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下である。中性のナトリウム塩の濃度が低いと、得られるビスフェノール粉体の中性のナトリウム塩の含有量が低くなり、炭酸ジエステルとの反応が進行しにくくなることから、その下限は、0.1質量ppm以上である。好ましくは0.2質量ppm以上、より好ましくは、0.5質量ppm以上、更に好ましくは1質量ppm以上である。また、中性のナトリウム塩の濃度が高いと、得られるビスフェノール粉体の中性のナトリウム塩の含有量が多くなり、炭酸ジエステルとの反応前の溶融時に、中性のナトリウム塩が析出しやすくなることから、その上限は150質量ppm以下である。好ましくは100質量ppm以下であり、より好ましくは90質量ppm以下であり、更に好ましくは80質量ppm以下である。
[原料ビスフェノール]
本発明のビスフェノール析出用溶液に含まれる原料ビスフェノールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
1〜R4の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i―プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i‐ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n―ウンデシル基、n−ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i―プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i‐ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n―ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちR2とR3は、合成して得る場合に立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
5とR6の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i―プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i‐ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n―ウンデシル基、n−ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i―プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i‐ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n―ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。
5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良く、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
本発明に用いる原料ビスフェノールとしては、何ら限定されるものではないが、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられる。
この中でも、好適な原料ビスフェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン又は2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパンのいずれかである。
[中性のナトリウム塩]
本発明において、「中性のナトリウム塩」とは、強酸を中和して得られたナトリウム塩のことであり、水酸化ナトリウム由来のナトリウムイオンと、強酸由来のアニオンとから形成されるナトリウム塩を意味する。
なお、強酸とは、酸乖離定数pKaが1以下の酸を意味する。具体的に、強酸としては、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸、アルキルスルホン酸等が挙げられ、これらに由来するアニオンとしては、塩化物イオン、硫酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等が挙げられる。
このような中性のナトリウム塩としては、ハロゲン化ナトリウム、硫酸ナトリウムやスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。具体的には、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどのハロゲン化ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、エタンスルホン酸ナトリウム、プロパンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸ナトリウムやトルエンスルホン酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、クレゾールスルホン酸ナトリウムなどの炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基を有するスルホン酸ナトリウムが使用できる。
本発明のビスフェノール析出用溶液に含まれる中性のナトリウム塩は、これらの中性のナトリウム塩の1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
これらの中でも、中性のナトリウム塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルホン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
また、前記スルホン酸ナトリウムとしては、一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
(式中、Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を示す。)
ビスフェノール析出用溶液の溶媒は、原料ビスフェノールが溶解すれば特に限定されず、通常、有機溶媒を主成分(例えば、90質量%以上や95質量%以上含有)とする。有機溶媒としては、後述するビスフェノール溶液に用いられる有機溶媒と同様のものを用いることができる。
ビスフェノール析出用溶液の調整方法等は特に限定されないが、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合して得られたものであることが好ましい。詳しくは後述する。
ビスフェノールを析出させるための晶析の温度条件等は特に限定されず、適宜決定される。通常、中性のナトリウム塩は水溶液の状態で混合されるため、冷却開始温度(T2)が高すぎると、水溶液が蒸発し、ナトリウム塩が析出してしまうことから、冷却開始温度(T2)の上限は95℃以下であることが好ましく、90℃以下がより好ましい。また、冷却開始温度(T2)が低すぎると、晶析して結晶を効率的に得ることができないため、冷却開始温度(T2)の下限は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上がより好ましい。
冷却温度(T3)は、高すぎると結晶が十分に析出しないため、その上限は、30℃以下であることが好ましく、20℃以下がより好ましい。また、冷却温度(T3)が低すぎると、溶媒が凝固してしまう恐れがあるので、冷却温度(T3)の下限は、5℃以上が好ましい。
冷却速度は、通常、0.1〜1.5℃/min程度である。より好ましくは、0.2〜1.0℃/minである。冷却速度が遅すぎると、ビスフェノールの析出に長時間を要し、冷却速度は速すぎても、不純物を含んだ状態で結晶となりやすい。
また、晶析時間は、1〜10時間であることが好ましい。
冷却方法は、特に限定されないが、水冷や空冷等で行うことができる。
また、結晶が析出しやすく、析出する結晶の純度を高めるためには、種晶を添加後に晶析してもよい。種晶は、冷却開始時に添加してもよいし、冷却中に添加してもよい。
中性のナトリウム塩の濃度や、晶析時の温度、冷却速度等を適宜制御することにより、中性のナトリウム塩の濃度が0.1〜150質量ppmである中性のナトリウム塩が分散されたビスフェノールを好適に得ることができる。
析出したビスフェノールは、その後、固液分離し、乾燥される。固液分離の方法は、特に限定されず、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の常法を用いることができる。
また、乾燥の方法は、減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができるが、乾燥しやすさの観点から、50〜120℃であることが好ましく、2〜15時間乾燥させることが好ましい。
<ビスフェノール析出用溶液の調製工程>
本発明のビスフェノール粉体の製造方法では、ビスフェノール析出用溶液において、中性のナトリウム塩の濃度が、原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下において、晶析工程Aを行う。ビスフェノール析出用溶液において、中性のナトリウム塩の濃度が、原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下になるように制御するために、本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、晶析工程Aの前に、ビスフェノール析出用溶液を調製するための調製工程を有することができる。
ビスフェノール析出用溶液の調製方法は、特に限定されない。例えば、原料ビスフェノールと中性のナトリウム塩とを同時に溶媒に混合してもよいし、原料ビスフェノールと中性のナトリウム塩とを別々に混合してもよい。
好ましくは、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合する方法であり、より好ましくは、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩水溶液とを混合する方法である。すなわち、次の(方法1)又は(方法2)が好ましく、(方法2)がより好ましい。
(方法1) ビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩とを混合する方法
(方法2) ビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩水溶液とを混合する方法
(方法1)のビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩とを混合する方法においては、ビスフェノール溶液に含まれる溶媒の種類によるが、中性のナトリウム塩の有機溶媒に対する溶解性が低く、中性のナトリウム塩を均一にビスフェノール溶液に混合することが困難な場合がある。
(方法2)のビスフェノール溶液と、所定量の中性のナトリウム塩水溶液とを混合する方法においては、中性のナトリウム塩を均一にビスフェノール溶液に混合できることから、好ましい。
[ビスフェノール溶液]
ビスフェノール溶液は、上記のように原料ビスフェノールを溶媒に溶解した溶液であり、原料ビスフェノールの濃度が、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
このビスフェノール溶液に、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液を混合し、ビスフェノール析出用溶液(中性のナトリウム塩が混合されたビスフェノール溶液)を調製する。
[溶媒]
ビスフェノール溶液に用いられる溶媒は、原料ビスフェノールが溶解するものであれば特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましい。用いられる有機溶媒は、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルなどを単独又は混合して使用することが可能であり、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
晶析は通常冷却により行われる為、ビスフェノール溶液に用いられる溶媒は、高い温度でビスフェノールの溶解度が高く、低い温度でビスフェノールの溶解度が低い有機溶媒が好適である。このことから、芳香族炭化水素が好ましい。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。該有機溶媒を再利用する場合は、沸点の低い芳香族炭化水素が好ましい。
中性のナトリウム塩は、上記のように水溶液として混合されることが好ましい。中性のナトリウム塩を、水溶液として添加する場合、その濃度は、1質量ppm〜3000質量ppmであることが好ましく、5〜2800質量ppmであることがより好ましい。濃度が高すぎると、ビスフェノール溶液との混合時に中性のナトリウム塩が析出しやすい。また、濃度が低すぎると、混合する水溶液の使用量が増え、中性のナトリウム塩の水溶液の混合時にビスフェノールが析出する可能性があるため好ましくない。
ビスフェノール溶液と中性のナトリウム塩水溶液との混合方法としては、例えば、中性のナトリウム塩水溶液1重量部に対して10〜10,000重量部のビスフェノール溶液を混合する方法や、中性のナトリウム塩水溶液1重量部に対して50〜1,000重量部のビスフェノール溶液を混合する方法が挙げられる。
また、ビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩の水溶液との混合時の混合温度(T1)は、低いと混合時にビスフェノールが析出してしまうことから、50℃以上であることが好ましく、60℃以上がより好ましい。該中性のナトリウム水溶液の混合温度(T1)が高いと、水溶液の水が蒸発し、ナトリウム塩が析出してしまうことから、95℃以下であることが好ましく、90℃以下がより好ましい。
例えば、ビスフェノール析出用溶液の調製工程と、晶析工程Aとを有するビスフェノール粉体の製造方法として、図2に示すような製造方法が挙げられる。図2に示すビスフェノール粉体の製造方法において、ビスフェノール析出用溶液の調製工程は、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合する工程である。すなわち、図2に示すビスフェノール粉体の製造方法は、ビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合し、ビスフェノール析出用溶液を得た後に、前記ビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる方法である。
<ビスフェノール溶液調製工程>
また、本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、ビスフェノール溶液の調製工程を有してもよい。ビスフェノール溶液は、例えば、原料ビスフェノールと有機溶媒とを混合し、撹拌することで調製することができる。
好ましくは、ビスフェノール溶液は、水洗されたビスフェノール溶液であることが好ましい。具体的には、図3に示すように、ビスフェノール溶液としてビスフェノール溶液(A)を調製する場合、まず、原料ビスフェノールを有機溶媒に溶解させたビスフェノール溶液(A’)を得た後、水を加えて撹拌する。次いで、油水分離することで有機相をビスフェノール溶液(A)(水洗されたビスフェノール溶液)として得ることができる。
ビスフェノール溶液調製工程にて用いる原料ビスフェノールは、市販のビスフェノールを用いてもよいが、下記原料ビスフェノールの生成反応工程により得ることが好ましい。
<原料ビスフェノール生成工程>
本発明において、ビスフェノール溶液の調製に使用される原料ビスフェノールは、酸触媒存在下、一般式(3)で示される芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとの縮合反応(原料ビスフェノールの生成反応)により得ることができる。
(式中、R1〜R6は、一般式(2)におけるものと同義である。)
[酸触媒]
本発明において、原料ビスフェノールの生成反応で使用される酸触媒は、塩化水素ガス、塩酸、塩酸と硫酸の混合物、硫酸、硫酸モノメチル、スルホン酸などの公知の酸を使用することが可能である。
この中でも、硫酸、硫酸モノメチル及びスルホン酸からなる群から選択される1種以上の酸を使用することが好ましい。
[芳香族アルコール]
原料ビスフェノール生成工程において使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(4)で表される化合物である。
(式中、R1〜R4は、一般式(2)におけるものと同義である。)
一般式(4)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなどが挙げられる。
[ケトン又はアルデヒド]
原料ビスフェノール生成工程において使用するケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(5)で表される化合物である。
(式中、R5〜R6は、一般式(2)におけるものと同義である。)
一般式(5)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類、ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応において、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比((芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)又は(芳香族アルコールのモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないとケトン又はアルデヒドが多量化しやすく、多いと芳香族アルコールを未反応のまま損失する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比の下限は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくはモル比1.7以上である。また、その上限は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応では、通常、芳香族アルコールと酸触媒との混合溶液に、ケトン又はアルデヒドが供給される。このケトン又はアルデヒドの供給方法は、一括で供給する方法や、分割して供給する方法を用いることができるが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給する方法が好ましい。
ケトン又はアルデヒドに対する触媒のモル比((触媒のモル数/ケトンのモル数)又は(触媒のモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないと縮合反応時に副生する水によって酸性度が低下し長い反応時間を要することになる。多いとケトン又はアルデヒドの多量化が進行しやすい。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する酸触媒のモル比の下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
また、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応では、助触媒としてチオールを用いることができる。助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタンなどが挙げられる。
ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比((該チオールのモル数/ケトンのモル数)又は(該チオールのモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないとチオール助触媒を用いることによるビスフェノールの選択性改善の効果が得られず、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
チオールは、ケトン又はアルデヒドと予め混合してから反応に供することが好ましい。チオールと、ケトン又はアルデヒドとの混合方法は、チオールにケトン又はアルデヒドを混合してもよく、ケトン又はアルデヒドにチオールを混合してもよい。
また、チオールと、ケトン又はアルデヒドとの混合液と酸触媒の混合方法は、該混合液に酸触媒を混合してもよく、酸触媒に該混合液を混合してもよいが、酸触媒に該混合液を混合する方が好ましい。更に、反応槽に酸触媒と芳香族アルコールを供給した後に、該混合液を反応槽に供給して混合する方がより好ましい。
[溶媒]
原料ビスフェノール生成工程にて用いる溶媒として、芳香族炭化水素を使用することが可能である。また、原料ビスフェノールの製造に使用した溶媒を、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。該溶媒を再利用する場合は、沸点が低い溶媒が好ましい。
また、溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することで損失を低減できる。
原料ビスフェノールの生成反応は縮合反応であるが、生成反応の反応温度が高すぎると触媒による助触媒の酸化分解が進行しやすく、低すぎると反応に要する時間が長時間化することから、好ましくは0℃以上50℃以下である。
原料ビスフェノールの生成反応の反応時間は、長すぎると生成した原料ビスフェノールが分解する場合があることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は通常15時間以上である。なお、用いる酸触媒と同等量以上の水を加えて酸触媒の濃度を低下させ、反応を停止することが可能である。
上記の原料ビスフェノール生成反応によって得られたビスフェノール生成物は、必要に応じて粗精製を行い、ビスフェノール溶液調製のための原料ビスフェノールとして得ることができる。粗精製は、常法により行うことができる。例えば、通常の晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により粗精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。必要に応じ、洗浄後の有機相を冷却し通常の晶析を行ってもよい。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、粗精製時の該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させることが好ましい。
上記粗精製後の原料ビスフェノールを、ビスフェノール溶液調製工程にて、有機溶媒に溶解して均一溶液とし、ビスフェノール溶液とすることが好ましい。
また、粗精製後の原料ビスフェノールが溶解した溶液をそのまま、ビスフェノール溶液として用いてもよい。
本発明のビスフェノール粉体の製造方法は、晶析工程Aに加えて、上記のように、原料ビスフェノール生成工程と、ビスフェノール溶液調製工程などの工程を有してよい。本発明のビスフェノール粉体の製造方法の好ましい態様の一つは、図4に示すように、原料ビスフェノール生成工程と、ビスフェノール溶液調製工程と、ビスフェノール析出用溶液調製工程と、晶析工程Aと、固液分離・乾燥工程とを有するビスフェノール粉体の製造方法である。
<ビスフェノール粉体>
本発明のビスフェノール粉体は、ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下の中性のナトリウム塩を含有するものである。
本発明のビスフェノール粉体は、ビスフェノールと、ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下の中性のナトリウム塩とを含むものであるため、「本発明のビスフェノール粉体」と称すが、「中性のナトリウム塩を含むビスフェノール粉体」とも称すことができるものである。
このような本発明のビスフェノール粉体は、炭酸ジエステルとの溶融重合反応を効率的に進行させて、ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
なお、本発明のビスフェノール粉体の製造方法では、ビスフェノール析出用溶液に含有される中性のナトリウム塩を、得られるビスフェノール粉体にほぼ定量的に含有させることができるため、本発明のビスフェノール粉体は、本発明のビスフェノール粉体の製造方法により好適に得ることができる。
本発明のビスフェノール粉体の製造方法におけるビスフェノール析出用溶液中の中性のナトリウム塩の濃度と同様に、本発明のビスフェノール粉体において、ビスフェノールに対する中性のナトリウム塩の含有量は、少ないと炭酸ジエステルとの反応が進行しないことから、0.1質量ppm以上、好ましくは0.2質量ppm以上、より好ましくは0.5質量ppm以上、更に好ましくは1質量ppm以上である。また、中性のナトリウム塩の含有量が多いと、炭酸ジエステルとの反応前の溶融時に、中性のナトリウム塩が析出することから、150質量ppm以下であり、好ましくは100質量ppm以下であり、より好ましくは90質量ppm以下であり、更に好ましくは80質量ppm以下である。
上記のように、中性のナトリウム塩とは、強酸を中和して得られたナトリウム塩であり、「中性のナトリウム塩の含有量が0.1質量ppm以上、150質量ppm以下」とは、ナトリウムの含有量と強酸由来のアニオンの含有量との合計が0.1質量ppm以上、150質量ppm以下という意味である。
例えば、本発明のビスフェノール粉体では、塩化ナトリウムのとき、ナトリウムの含有量が、0.04〜60質量ppmであり、塩化物イオンの含有量が0.06〜90質量ppmであるビスフェノール粉体とすることができる。
本発明のビスフェノール粉体は、ポリカーボネート樹脂の合成原料として用いたときに炭酸ジエステルとの反応を効率的に進行させることができる程度であれば、ビスフェノール及び中性のナトリウム塩以外の成分を含んでいてもよいが、上記のように、本発明のビスフェノール粉体は、本発明のビスフェノール粉体の製造方法により好適に製造されるため、ビスフェノールを高純度で含むビスフェノール粉体となる。
例えば、ビスフェノール粉体におけるビスフェノールの含有量が95質量%以上、好ましくは97.0質量%以上であり、より好ましくは98.0質量%以上であり、さらに好ましくは98.5質量%以上であり、最も好ましくは99.0質量%以上とすることができる。
また、本発明において、中性のナトリウム塩に、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの弱酸とのナトリウム塩が混入すると、本発明の効果が得られにくい。そのため、本発明の中性のナトリウム塩に対する該弱酸とのナトリウム塩量は、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下である。
<ビスフェノール粉体の用途>
本発明のビスフェノール粉体は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることから、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の原料(モノマ−)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
次に、本発明のビスフェノール粉体を原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
ポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノール粉体と、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノール粉体と炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、本発明のビスフェノール粉体中のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましい。また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対して使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、本発明のビスフェノール粉体及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられるエステル交換触媒の触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上である。また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
エステル交換触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下、原料ビスフェノールCと称する)、クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、トルエン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、炭酸セシウム、硫酸ナトリウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、原料ビスフェノールAと称する)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン(以下、原料テトラメチルビスフェノールAと称する)、メタンスルホン酸ナトリウム、p−フェノールスルホン酸ナトリウム二水和物は、東京化成株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
[分析]
(フェノールの生成量)
製造したビスフェノールの粉体と炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製カラム恒温槽CTO−10
島津製作所社製検出器SPD―M10AVP
島津製作所社製ポンプLC−10AD
GLサイエンス株式会社製Inertsil ODS−II 5μm 150mm×4.6mmID
・アイソククラティック法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:水:アセトニトリル=10:90(体積比)
・分析時間0分ではポンプ流量0.5ミリリットル/分、
分析時間0〜15分はポンプ流量2ミリリットル/分へ徐々に変化させ、
分析時間15〜30分はポンプ流量2ミリリットル/分を維持して、分析した。
・検出波長は、210nmとした。
ビスフェノールに、炭酸ジフェニルとの反応を阻害する成分が多く存在するほど、フェノール生成量は少なくなり、反応を阻害する成分が少ないほどフェノールの生成量は多くなる。
(ビスフェノールの生成反応の組成)
ビスフェノールの生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt ScherzoSM−C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1ミリリットル:900ミリリットルの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0〜25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25〜30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8ミリリットル/分にて分析した。
(ビスフェノールの反応収率(アセトン基準))
アセトン基準のビスフェノールの反応収率(モル%)は、高速液体クロマトグラフィーで波長280nmにより検出されたピークより反応液中に含まれるビスフェノールの濃度を算出し、その濃度よりビスフェノール生成反応液中に含まれる該ビスフェノールのモル量を算出して、該ビスフェノールのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
(ビスフェノールに含まれるナトリウム原子濃度)
ビスフェノールに含まれるナトリウム原子濃度の測定は、以下の手順で実施した。
ビスフェノールに硝酸を加え、マイクロウェーブ分解装置を用いて、加圧密閉分解した。得られた分解液を純水に希釈し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製ELEMENT2を用いてビスフェノールに含まれるナトリウム原子濃度を測定した。
(ビスフェノールに含まれる塩素原子濃度)
ビスフェノールに含まれる塩素原子濃度の測定は、以下の手順で実施した。ビスフェノールを三菱ケミカル製固定床半回分式燃焼装置(QF−02)を用いて燃焼させ、燃焼ガスを吸収液に吸収させ、その吸収液中のイオンをサーモフィッシャーサイエンティフィック社製DX−500 Dionex社製カラム(Iоn Pac AS12A)、溶離液(炭酸ナトリウム2.7ミリモル/L+炭酸水素ナトリウム0.3ミリモル/L)を用いて、ビスフェノールに含まれる塩素原子濃度を測定した。
(粘度平均分子量(Mv))
粘度平均分子量(Mv)は、 ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
(ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度)
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
(ペレットYI)
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
[実施例1]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールC 100g及びトルエン163gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
なお、脱塩水とは、イオン交換樹脂によりイオンを除去した水であり、ナトリウムイオンや塩化物イオンの含有量は、0.01ppm未満であるため、本工程でこれらのイオンの混入は実質的に起こっていないと判断した。
(1−2)ビスフェノール析出用溶液の調製工程
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4g(塩化ナトリウムとして、10mg)を加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料ビスフェノールC(原料ビスフェノール)に対して100質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
(1−3)晶析工程A
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールCを晶出させた。
(1−4)固液分離・乾燥工程
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールCを得た。該湿潤状態のビスフェノールCを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールCの粉体(1)95gを得た。
(2)塩化ナトリウム含有量の測定
得られたビスフェノールCの粉体(1)に含まれる塩化ナトリウム濃度を測定したところ、ナトリウム原子濃度が38質量ppm、塩素原子濃度が62質量ppm、塩化ナトリウムとして100質量ppmであった(ビスフェノールCの粉体(1)に含まれる塩化ナトリウム量は95g×100質量ppm=9.5mg)。塩化ナトリウムの回収率=ビスフェノールCに含まれる塩化ナトリウム量÷供給した塩化ナトリウム量×100(%)は95%であった。
(3)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールCの粉体(1) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.1面積%生成していた。
[実施例2]
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1とは、異なるロットの原料ビスフェノールCを用いて、実施例1と同様の方法で、ビスフェノールCの粉体(2)を得た。
(2)塩化ナトリウム含有量の測定
得られたビスフェノールCの粉体(2)に含まれる塩化ナトリウムの量を測定したところ、ナトリウム原子濃度が39質量ppm、塩素原子濃度が62質量ppm、塩化ナトリウムとして101質量ppmであった(ビスフェノールCの粉体(2)に含まれる塩化ナトリウム量は95g×101質量ppm=9.6mg)。塩化ナトリウムの回収率=ビスフェノールCに含まれる塩化ナトリウム量÷供給した塩化ナトリウム量×100(%)は96%であった。
(3)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールCの粉体(2) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
[比較例1]
テフロン(登録商標)製試験管に、原料ビスフェノールCの粉体 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7μg/gの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.1面積%生成していた。
なお、原料ビスフェノールCに含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
[比較例2]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールCの粉体 100g、トルエン163gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相を得た。
なお、有機相に含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
(1−2)晶析工程
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールCを晶出させた。
(1−3)固液分離・乾燥工程
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールCを得た。
該湿潤状態のビスフェノールCを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールCの粉体(1’)96gを得た。
(2)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールCの粉体(1’) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.2面積%生成していた。
実施例1〜2及び比較例1〜2について、ビスフェノール溶液への塩化ナトリウム水溶液の添加有無、ビスフェノールCの粉体に含まれる塩化ナトリウム量、得られたビスフェノールCの粉体と炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量を表1に纏めた。
実施例1より、塩化ナトリウム水溶液を添加した後に晶析させて得られたビスフェノールCの粉体(1)は、塩化ナトリウムを添加していない比較例1、2に比べて炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量が多いことから、炭酸ジフェニルとの反応がより進行したことが分かる。この結果より、驚くべきことに、中性である塩化ナトリウムが炭酸ジフェニルとの反応を進行させる触媒作用を示したことが分かる。
[実施例3]
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmの硫酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(3)を得た。
(2)フェノール生成量の測定
得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.8面積%生成していた。
[実施例4]
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmのp−トルエンスルホン酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(4)を得た。
(2)フェノール生成量の測定
得られたビスフェノールCの粉体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
[実施例5]
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmのp−フェノールスルホン酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(5)を得た。
(2)フェノール生成量の測定
得られたビスフェノールCの粉体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.1面積%生成していた。
[実施例6]
(1)ビスフェノール粉体の製造
実施例1において、2500質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gの代わりに、2500質量ppmのメタンスルホン酸ナトリウム溶液4gを用いた以外は、実施例1と同様に実施し、ビスフェノールCの粉体(6)を得た。
(2)フェノール生成量の測定
得られたビスフェノールCの粉体の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.5面積%生成していた。
実施例1、3〜6及び比較例2について、晶析時に用いたビスフェノール析出用溶液に含まれる中性のナトリウム塩の種類、得られたビスフェノールCの粉末と、炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量を表2に纏めた。
比較例2より、ナトリウム塩水溶液を加えない場合、得られたビスフェノールCの粉体(1’)は、炭酸ジフェニルとの反応はほとんど進行しないことが分かる。
また、実施例3より、硫酸ナトリウム水溶液を含むビスフェノール析出用溶液から晶析させた場合、得られたビスフェノールCの粉体(3)と炭酸ジフェニルとの反応が進行し、硫酸ナトリウムが触媒作用を有することが分かる。
更に、実施例4〜6より、p−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液、p−フェノールスルホン酸ナトリウム水溶液及びメタンスルホン酸ナトリウム水溶液を含むビスフェノール析出用溶液から晶析させた場合も、得られたビスフェノールCの粉体と炭酸ジフェニルとの反応が進行し、p−トルエンスルホン酸ナトリウム水溶液、p−フェノールスルホン酸ナトリウム水溶液及びメタンスルホン酸ナトリウム水溶液が触媒作用を有することが分かる。
したがって、実施例4〜6の結果より、一般的なスルホン酸ナトリウムにおいても、炭酸ジフェニルとの反応を進行させる触媒作用を有することを類推できる。
なお、実施例1、2において、混合した塩化ナトリウムが、得られるビスフェノールCの粉末にほぼ定量的に含有されていることから、実施例3〜6においても同様に、得られたビスフェノールCの粉体(3)〜(6)にも中性のナトリウム塩が定量的に(約100質量ppm)含有されていると推察される。
[実施例7]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールA15g及びトルエン300gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
(1−2)ビスフェノール析出用溶液の調製工程
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に、250質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gを加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料ビスフェノールA(原料ビスフェノール)に対して66.7質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
(1−3)晶析工程A
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールAを晶出させた。
(1−4)固液分離・乾燥工程
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールAを得た。該湿潤状態のビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールAの粉体(7)11gを得た。
(2)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールAの粉体(7) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが1.2面積%生成していた。
[比較例3]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料ビスフェノールA15g及びトルエン300gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相を得た。
なお、有機相に含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
(1−2)晶析工程
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールAを晶出させた。
(1−3)固液分離・乾燥工程
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のビスフェノールAを得た。該湿潤状態のビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したビスフェノールAの粉体(2’)11gを得た。
(2)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、ビスフェノールAの粉体(2’) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.2面積%生成していた。
[実施例8]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、テトラメチルビスフェノールA30g及びトルエン200gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
(1−2)ビスフェノール析出用溶液の調製工程
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に、250質量ppmの塩化ナトリウム水溶液4gを加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料テトラメチルビスフェノールA(原料ビスフェノール)に対して33.3質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
(1−3)晶析工程A
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃に降温させることでビスフェノールAを晶出させた。
(1−4)固液分離・乾燥工程
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを得た。該湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したテトラメチルビスフェノールAの粉体(8)21gを得た。
(2)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、テトラメチルビスフェノールAの粉体(8) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールが0.8面積%生成していた。
[比較例4]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)ビスフェノール溶液調製工程
コンデンサー、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、原料テトラメチルビスフェノールA30g及びトルエン200gを入れ、80℃まで昇温して均一溶液とした。該均一溶液に脱塩水40gを入れ、80℃に維持した状態で10分間混合した後に静置し、油水分離させた。その後、該セパラブルフラスコから水相を除去し、有機相を得た。
なお、有機相に含まれる中性のナトリウム塩の含有量は、検出限界以下(0.1質量ppm未満)であった。
(1−2)晶析工程
得られた有機相を、80℃から10℃に降温させることでテトラメチルビスフェノールAを晶出させた。
(1−3)固液分離・乾燥工程
次いで、遠心分離器で固液分離することで、湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを得た。該湿潤状態のテトラメチルビスフェノールAを1Lのナス型フラスコに入れ、80℃の水バスを備えたロータリーエバポレータを用い、減圧下で乾燥させ、水洗及び乾燥したテトラメチルビスフェノールAの粉体(3’)21gを得た。
(2)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、テトラメチルビスフェノールAの粉体(3’) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで炭酸ジフェニルとの反応によるフェノール生成量を確認したところ、フェノールは未検出であった。
実施例7、実施例8、比較例3及び4について、用いた原料ビスフェノール、ビスフェノール溶液への塩化ナトリウム水溶液の添加有無、得られたビスフェノールの粉体と炭酸ジフェニルとの反応によるフェノールの生成量を表3に纏めた。
表3の結果から、ビスフェノールA及びテトラメチルビスフェノールAに塩化ナトリウムを含有させたビスフェノール粉体とすることで、炭酸ジフェニルとの反応を促進させることができることがわかった。この結果より、様々なビスフェノールにおいても、中性のナトリウム塩を含有させたビスフェノール粉体を製造し、炭酸ジフェニルと反応させることで、該反応を促進させると容易に類推することができる。
[実施例9]
(1)ビスフェノール粉体の製造
(1−1)原料ビスフェノール生成工程
(1−1−1)生成反応
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入れた後に、88重量%硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で反応させた。
(1−1−2)抽出・粗精製
反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩素水175.5gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。
下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。
得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モル%であった。
この有機相を80℃から30℃まで冷却して、30℃に到達時にした時に種晶ビスフェノールC 1gを添加させて析出を確認した。
その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとして原料ビスフェノールC239.9gを得た。
(1−2)ビスフェノール溶液調製工程
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、前記原料ビスフェノールC全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認し、該有機相を脱塩水600gで2回に分けて十分洗浄し、有機相(ビスフェノール溶液)を得た。
(1−3)ビスフェノール析出用溶液の調製工程
80℃に維持した状態で、得られた有機相(ビスフェノール溶液)に10質量ppmの塩化ナトリウム水溶液5gを加え、塩化ナトリウム(中性のナトリウム塩)の濃度が、原料ビスフェノールC(原料ビスフェノール)に対して0.21質量ppmであるビスフェノール析出用溶液を得た。
(1−4)晶析工程A
得られたビスフェノール析出用溶液を、80℃から10℃まで冷却した。
(1−5)固液分離・乾燥工程
その後、遠心分離器(毎分3000回転で10分間)を用いて濾過を行い、湿潤状態のビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールCの粉体(9) 180.9gを得た。
(2)フェノール生成量の測定
テフロン(登録商標)製試験管に、得られたビスフェノールCの粉体(9) 4.7g、炭酸ジフェニル 4.5g、及び33.7質量ppmの水酸化カリウム水溶液20μLを加え、194℃に加熱したアルミブロックヒーターで90分加熱した。得られた反応液の一部を取出し、高速液体クロマトグラフィーで初期重合活性を確認したところ、フェノールが1.6面積%生成していた。
(3)ポリカーボネート樹脂の製造
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、該ビスフェノールCの粉体(9)100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は24800であり、末端水酸基濃度(OH濃度)は769質量ppmであった。またペレットYIは、7.62であった。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂の製造の原料として適した、中性のナトリウム塩を含有するビスフェノール粉体を簡易かつ効率的に製造することができる。また、製造された本発明のビスフェノール粉体は、中性のナトリウム塩を含有していることで、炭酸ジフェニルとの溶融重合反応を効率的に進行させることができ、ポリカーボネート樹脂を製造することができる。

Claims (7)

  1. 原料ビスフェノールと、中性のナトリウム塩とを含有するビスフェノール析出用溶液から晶析によりビスフェノールを析出させる工程を有し、
    前記ビスフェノール析出用溶液において、前記中性のナトリウム塩の濃度が、前記原料ビスフェノールに対して0.1質量ppm以上、150質量ppm以下であることを特徴とするビスフェノール粉体の製造方法。
  2. 前記ビスフェノール析出用溶液は、原料ビスフェノールを溶媒に溶解したビスフェノール溶液と、中性のナトリウム塩又は中性のナトリウム塩水溶液とを混合して得られたものである請求項1に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
  3. 前記ビスフェノール溶液の溶媒が、有機溶媒である請求項2記載のビスフェノール粉体の製造方法。
  4. 前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエステルから選ばれる少なくとも1種以上である請求項3記載のビスフェノール粉体の製造方法。
  5. 前記中性のナトリウム塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルホン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
  6. 前記スルホン酸ナトリウムが、一般式(1)で示される化合物である請求項5に記載のビスフェノール粉体の製造方法。
    (式中、Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を示す。)
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のビスフェノール粉体の製造方法により製造したビスフェノール粉体を用いてポリカーボネート樹脂を製造することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
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