JP7167536B2 - ビスフェノール製造法、及びポリカーボネート樹脂の製造法 - Google Patents
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Description
本発明のビスフェノール製造法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
また、光学用ポリカーボネート樹脂のように光学用材料の原料として使用される分野もあり、近年では、より色調の優れた、透明なビスフェノールが求められている。しかしながら、従来のビスフェノールはその色調に改善の余地があった。
[1] ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリーを得る第1工程と、前記スラリーに第2の有機溶媒を供給し、前記第1工程よりも高い温度で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させる第2工程とを有するビスフェノール製造法。
[2] 前記反応液が、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液を、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する溶液に供給して調製したものである[1]に記載のビスフェノール製造法。
[3] 前記第2工程の縮合は、前記第1工程よりも5℃以上高い温度で行う[1]または[2]に記載のビスフェノール製造法。
[4] 前記第2の有機溶媒が、芳香族炭化水素である[1]から[3]のいずれかに記載のビスフェノール製造法。
[5] 前記酸触媒に対する、前記第2工程にて供給される前記芳香族炭化水素のモル比が、0.10以上、1.1以下である[4]に記載のビスフェノール製造法。
[6] 前記第2の有機溶媒が、脂肪族アルコールである[1]から[3]のいずれかに記載のビスフェノール製造法。
[7] 前記酸触媒に対する、前記第2工程にて供給される前記脂肪族アルコールのモル比が、0.05以上、0.4以下である[6]に記載のビスフェノール製造法。
[8] [1]から[7]のいずれかに記載の酸触媒が、硫酸が含まれる酸であるビスフェノール製造法。
[9] [1]から[8]のいずれかに記載のビスフェノール製造法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造法。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
更に、第2の有機溶媒を供給して行う第2工程での縮合を、第1工程よりも高い温度で実施することにより、第2の有機溶媒の追加による反応液(スラリー)の希釈に伴う、反応性の低下を抑制できる。
すなわち、ビスフェノールの生成反応があまり進行していない第1工程では、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールの濃度を高めた状態で反応を進行させ、第2工程において、有機溶媒を追加し、第2工程よりも高い温度で、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを反応させることで、反応開始直後から反応終了まで安定して反応を進行させることができる。
第1工程は、ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリーを得る工程である。
ビスフェノールの原料として使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
また、上記一般式(2)において、R2とR3は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、R1~R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基であり、R1およびR4の少なくとも1つは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基であり、R2およびR3は水素原子であることが好ましい。また、R1およびR4はそれぞれ独立に水素原子、または、アルキル基であり、R1およびR4の少なくとも1つは、アルキル基であり、R2およびR3が水素原子であることがより好ましく、R1がアルキル基であり、R2~R4が水素原子であることが更に好ましい。
この中でも、フェノール、メチルフェノールおよびジメチルフェノールのいずれかが好ましく、メチルフェノールまたはジメチルフェノールがより好ましく、メチルフェノールが更に好ましい。
ケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類、ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。
酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。中でも、反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から硫酸を含有することが好ましく、硫酸であることがより好ましい。
硫酸は、濃硫酸や希硫酸と呼ばれる、硫酸が水で希釈された硫酸の水溶液(原料硫酸)を使用することで、反応系内に供給することができる。原料硫酸としては、濃硫酸を用いても希硫酸を用いてもよい。しかし、用いる原料硫酸の濃度が低すぎると、反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することができない。そのため、用いられる原料硫酸の質量濃度の下限は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。また、その上限は好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。
第1の有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害しない範囲で特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられ、これらの溶媒を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。第1の有機溶媒を用いることで、芳香族アルコールの量を低減し、かつ、反応液の固化を抑制することができ、混合状態を改善し、反応時間を短縮することが可能である。
脂肪族アルコールは、例えば、炭素数12以下のアルキルアルコールや炭素数8以下のアルキルアルコールを用いることができる。
(i)ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を同時に混合する方法
(ii)酸触媒を、ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び第1の有機溶媒を含有する溶液に供給する方法
(iii)ケトン又はアルデヒドを含有する溶液を、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する溶液に供給する方法
例えば、有機溶媒Aを芳香族炭化水素と脂肪族アルコールとの混合溶媒とし、有機溶媒Bを芳香族炭化水素とすることができる。
原料混合段階は、第1工程の開始から、反応液の調製が完了する時点までの段階である。例えば、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液を、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する溶液に供給し、反応液を調製する場合、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液を供給し始める時点から、供給が終わる時点までの段階である。原料混合段階においても、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合によりビスフェノールが生成する。
反応段階は、反応液の調製が完了した時点から、第1工程の終了までの段階である。反応段階で、ビスフェノールの生成反応が更に進行し、ビスフェノールの生成量が増加する。
原料混合段階の温度は、低すぎると原料混合段階で縮合が進行しにくくなることから、好ましくは-30℃以上であり、より好ましくは-20℃以上であり、更に好ましくは-15℃以上である。また、温度が高すぎると、副反応であるアセトン又はケトンの自己縮合反応が進行し、助触媒であるチオールを用いた場合にはチオールの酸化分解が進行しやすくなるため、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。
なお、第1工程の反応時間は、反応段階だけでなく、原料混合段階も含むものである。例えば、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を混合した溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
第2工程は、第1工程で得られたスラリーに第2の有機溶媒を供給し、前記第1工程よりも高い温度で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させる工程である。
第2の有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素等が挙げられ、第1工程で使用した第1の有機溶媒と同一でも、異なる有機溶媒でも使用できる。
具体的には、第1工程で得られたスラリーに第2の有機溶媒を供給したスラリー(第2工程の反応液)を第1工程の温度より高い所定の温度まで昇温し、所定の温度を維持するように制御しながら、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させる。
第1工程で得られたスラリーに第2の有機溶媒を供給したスラリーは、第1工程の温度に対して5℃以上高い温度まで昇温することが好ましく、10℃以上高い温度まで昇温することがより好ましく、15℃以上高い温度まで昇温することが更に好ましい。また、第1工程で得られたスラリーに第2の有機溶媒を供給したスラリーを昇温し、所定の温度に達した時点から第2工程終了時まで平均の温度が、第1工程の反応温度よりも5℃以上高くなるように制御することが好ましい。より好ましくは、10℃以上であり、更に好ましくは15℃以上である。
(1)第1工程の反応液中の水の質量に対する、芳香族炭化水素の質量比は、5.1以上が好ましく、5.3以上が更に好ましい。なお、芳香族炭化水素の質量は、第1の有機溶媒に含まれる芳香族炭化水素と第2の有機溶媒に含まれる芳香族炭化水素との合計である。
(2)第1工程の反応液中の水の質量に対する、脂肪族アルコールの質量比は、0.11以上が好ましく、0.12以上が更に好ましい。なお、脂肪族アルコールの質量は、第1の有機溶媒に含まれる脂肪族アルコールと第2の有機溶媒に含まれる脂肪族アルコールとの合計である。
(3)酸触媒に対する芳香族炭化水素の合計量の質量比は、1.28以上が好ましく、1.30上が更に好ましい。なお、芳香族炭化水素の質量は、第1の有機溶媒に含まれる芳香族炭化水素と第2の有機溶媒に含まれる芳香族炭化水素との合計である。
(4)酸触媒に対する脂肪族アルコールの質量比は、0.027以上が好ましく、0.029以上が更に好ましい。なお、脂肪族アルコールの質量は、第1の有機溶媒に含まれる脂肪族アルコールと第2の有機溶媒に含まれる脂肪族アルコールとの合計である。
第2工程後に精製、単離することで、ビスフェノールを得ることができる。ビスフェノールの精製、単離は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。一例として、第2工程において得られたスラリーを加熱等により溶解、分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。必要に応じ、洗浄後の有機相を冷却し晶析させてもよい。晶析は複数回行ってもよい。
芳香族アルコールを多量に用いる場合は、精製時の晶析前に蒸留によって余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させることが好ましい。
本発明のビスフェノール製造法にて製造されるビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
次に、本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造法につき説明する。
本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造法は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造する方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
(ビスフェノールC生成反応液の組成)
ビスフェノールC生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8mL/分にて、検出波長280nmで分析した。
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
[実施例1-1]
(第1工程)
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン27.8g、メタノール5g、クレゾール230g(2.13モル)、80質量%硫酸250g(硫酸の物質量2.01モル)を入れた。また、滴下ロートにトルエン222g、ドデカンチオール7.5g、アセトン61g(1.05モル)を入れた。該セパラブルフラスコの内温が30~35℃の範囲となるように、滴下ロートの内液を60分かけて滴下した。
その後、前記スラリー(1)にトルエン45g(0.48モル、酸触媒に対するモル比は0.48モル÷2.01モル=0.24)を5分かけて供給し、45℃まで昇温させ、内温を45℃に維持した状態で1時間反応させた。ビスフェノールの生成量は反応の進行とともに増加し、撹拌は良好であった。なお、トルエン供給時には、セパラブルフラスコの内温が30~35℃の範囲となるようにし、トルエン供給後に45℃まで30分かけて昇温させた。
反応終了後、28%水酸化ナトリウム水溶液550gを供給して、80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて、下相の水相pHが9以上になったことを確認した。下相の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出し、有機相(1)を得た。
この有機相(1)を80℃から30℃まで冷却して、30℃に到達した時に種晶ビスフェノールCを1g添加させて、ビスフェノールの析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェットケーキとしてビスフェノールC188gを得た。得られたビスフェノールCは、白色固体であった。
実施例1-1において、第2工程のトルエン45gの代わりにトルエン100g(1.06モル、酸触媒に対するモル比は1.06モル÷2.01モル=0.53)に代えた以外は実施例1-1と同様に実施した。第1工程、第2工程ともに撹拌は良好であった。
また、精製工程(2)後に、ウェットケーキとしてビスフェノールC168gを得た。得られたビスフェノールCは、白色固体であった。
実施例1-1において、第2工程のトルエン45gの代わりにトルエン200g(2.13モル、酸触媒に対するモル比は2.13モル÷2.01モル=1.06)に変えた以外は実施例1-1と同様に実施した。第1工程、第2工程ともに撹拌は良好であった。
精製工程(1)後に得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで該有機相の組成を確認したところ、クレゾールが20.0質量%であった。
また、精製工程(2)後に、ウェットケーキとしてビスフェノールC123gを得た。得られたビスフェノールCは、白色固体であった。
実施例1-1において、第2工程のトルエン45gを供給する代わりに何も供給しなかった以外は、実施例1-1と同様に第1工程、第2工程を実施した。その結果、第2工程中に、撹拌不可となった。撹拌不可となったため、そのまま1時間静置した。
その後の精製は、実施例1-1と同様に実施した。
また、精製工程(2)後に、ウェットケーキとしてビスフェノールC119gを得た。得られたビスフェノールCは、淡赤色固体であった。
また、酸触媒に対する第2工程で供給したトルエンの量が1.06倍に増えると得られるビスフェノールCの量が減少することが分かる。
実施例1-1において、第2工程のトルエン45gの代わりにメタノール7.5g(0.23モル、酸触媒に対するモル比は0.23モル÷2.01モル=0.11)に代えた以外は実施例1-1と同様に実施した。第1工程、第2工程ともに撹拌は良好であった。
精製工程(1)後に得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで該有機相の組成を確認したところ、クレゾールが11.3質量%であった。
また、精製工程(2)後に、ウェットケーキとしてビスフェノールC180gを得た。得られたビスフェノールCは、白色固体であった。
実施例1-1において、第2工程のトルエン45gの代わりにメタノール15g(0.46モル、酸触媒に対するモル比は0.46モル÷2.01モル=0.23)に代えた以外は実施例1-1と同様に実施した。第1工程、第2工程ともに撹拌は良好であった。
精製工程(1)後に得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで該有機相の組成を確認したところ、クレゾールが14.5質量%であった。
また、精製工程(2)後に、ウェットケーキとしてビスフェノールC160gを得た。得られたビスフェノールCは、白色固体であった。
(第1工程)
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン27.8g、メタノール5g、クレゾール230g(2.13モル)、80質量%硫酸250g(硫酸の物質量2.01モル)を入れた。また、滴下ロートにトルエン267g、ドデカンチオール7.5g、アセトン61g(1.05モル)を入れた。該セパラブルフラスコの内温が30~35℃の範囲となるように、滴下ロートの内液を60分かけて滴下した。
その後、45℃まで昇温させ、内温を45℃に維持した状態で1時間反応させた。このときも、撹拌は良好であった。
比較例1-2の第1工程において、セパラブルフラスコに入れるメタノールを「5g」から「12.5g」に変更し、滴下ロートに入れるトルエンを「267g」から「222g」に変更した以外は、比較例1-2と同様に実施した。
精製工程(1)後に得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで該有機相の組成を確認したところ、クレゾールが15.2質量%であった。
精製工程(2)後に、ウェットケーキとしてビスフェノールC116gを得た。得られたビスフェノールCは、白色固体であった。
[実施例2-1]
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、実施例1-1で得られたビスフェノールC150g及びトルエン280gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認して、10℃まで冷却した。その後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過を行い、ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC113gを得た。
Claims (9)
- ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリーを得る第1工程と、
前記スラリーに第2の有機溶媒を供給し、前記第1工程よりも高い温度で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させる第2工程とを有し、
前記第1工程終了時のスラリー中のビスフェノールの濃度が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とするビスフェノール製造法。 - 前記反応液が、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液を、芳香族アルコール、第1の有機溶媒及び酸触媒を含有する溶液に供給して調製したものである請求項1に記載のビスフェノール製造法。
- 前記第2工程の縮合は、前記第1工程よりも5℃以上高い温度で行う請求項1または2に記載のビスフェノール製造法。
- 前記第2の有機溶媒が、芳香族炭化水素である請求項1から3のいずれか1項に記載のビスフェノール製造法。
- 前記酸触媒に対する、前記第2工程にて供給される前記芳香族炭化水素のモル比が、0.10以上、1.1以下である請求項4に記載のビスフェノール製造法。
- 前記第2の有機溶媒が、脂肪族アルコールである請求項1から3のいずれか1項に記載のビスフェノール製造法。
- 前記酸触媒に対する、前記第2工程にて供給される前記脂肪族アルコールのモル比が、0.05以上、0.4以下である請求項6に記載のビスフェノール製造法。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の酸触媒が、硫酸が含まれる酸であるビスフェノール製造法。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載のビスフェノール製造法によってビスフェノールを製造する工程と、
製造された前記ビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造する工程とを有するポリカーボネート樹脂の製造法。
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