JP7135610B2 - ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のビスフェノールの製造方法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
塩酸を触媒とする製造方法(特許文献2)は、塩化水素ガスを触媒とする製造方法より塩化水素の取扱い量は少ないが、濃塩酸は、腐食性があり取扱いが容易ではない。また、反応時間を要する問題がある。
また、塩酸と硫酸の混合物を触媒とする製造方法(特許文献3)は、塩酸を使用しているため腐食性の問題がある。
硫酸を触媒とする製造方法(特許文献4)では、フェノールのスルホン化等の副反応が起こりやすく、それを抑制するために種々の溶媒を比較的多量に使用する必要がある(非特許文献1)。また、硫酸を用いた場合、原料であるケトン類やアルデヒド類の縮合(多量化)などの副反応が起きやすく、これらが着色成分となることが知られている。さらに、本発明者が検討した結果、ビスフェノールの反応液が固化しやすく、反応時間を要するという問題が発生することが判明した。
一方、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールの物質量比を理論物質量比よりも低くした条件で反応させてビスフェノールを得ることができるが、得られたビスフェノールを用いて重合反応をすると活性が悪く重合に時間がかかり、得られるポリカーボネート樹脂の色調が悪化する等の問題があった。
また、得られたビスフェノールを用いて色調の優れたポリカーボネート樹脂を安定的に製造できるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
[1] 触媒及び有機溶媒の存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法であって、前記触媒が、硫酸モノアルキルを含み、前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を1.80以上2.20以下とし、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させるビスフェノールの製造方法。
[2] 前記触媒が、硫酸と硫酸モノアルキルとを含み、前記硫酸モノアルキルが、前記硫酸と脂肪族アルコールとから生成される[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3] 芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法であって、前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を1.80以上2.20以下とし、硫酸、脂肪族アルコール及び有機溶媒の存在下で、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させることを特徴とするビスフェノールの製造方法。
[4] 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトンである[1]から[3]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[5] 前記芳香族アルコールが、クレゾールである[1]から[4]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[6] 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素である[1]から[5]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[7] [1]から[6]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明は、触媒及び有機溶媒の存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法であって、前記触媒が、硫酸モノアルキルを含み、前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を1.80以上2.20以下とし、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させるビスフェノールの製造方法(以下、「本発明のビスフェノールの製造方法(1)」という場合がある。)に関するものである。
本発明のビスフェノールの製造方法(2)では、反応系内において、硫酸と脂肪族アルコールとの反応により硫酸モノアルキルが生成し、生成した硫酸モノアルキルも触媒の機能を果たす。
硫酸モノアルキルを用いることで、触媒の酸強度を制御し、原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色化を抑制し、副反応物の生成及び生成物の着色が低減されたビスフェノールを、簡便に効率よく製造することが可能である。
このように、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比を特定の範囲とすることにより未反応の芳香族アルコールの回収量を抑え、また、原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色化を抑制することが可能となる。
また、重合活性の高いビスフェノールを得ることができる。得られたビスフェノールを用いて色調の優れたポリカーボネート樹脂などの高分子材料を効率的に製造することが可能である。
縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比を1.80以上2.20以下の範囲とするために、本発明のビスフェノールの製造方法においては、有機溶媒の存在が必須となる。
本発明のビスフェノールの製造方法に用いる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造方法に用いるケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
R5とR6とが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されるシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
重合活性が高く、色調の良好なビスフェノールを短時間で製造するためには、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比が、1.85以上が好ましく、1.90以上がさらに好ましい。また、その上限は、2.15以下が好ましく、2.10以下がより好ましい。
なお、このケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、反応液を調製するときに用いる芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとのモル比であり、仕込み時のモル比である。
本発明の製造方法で用いられる触媒は、硫酸モノアルキルを含む。触媒は、硫酸モノアルキル単独であっても、硫酸モノアルキルとその他の触媒を併用してもよい。硫酸モノアルキルと併用できるその他の触媒としては、硫酸、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸などが挙げられる。この中でも、触媒の酸強度が制御しやすいため、硫酸モノアルキルと硫酸とを触媒とすることが好ましい。
本発明において、硫酸モノアルキルとは、下記一般式(3)で表される化合物である。
置換アルキル基としては、ヒドロキシル基(OH基)が置換したヒドロキシアルキル基や、ヒドロキシアルコキシ基が置換したヒドロキシアルコキシアルキル基等が挙げられる。
この中でも、上記のように、硫酸モノアルキルは、硫酸と脂肪族アルコールとから生成させることが好ましい。また、脂肪族アルコールと硫酸を混合すると発熱することから、その混合は脂肪族アルコールの沸点以下で行うことが好ましい。
硫酸は、脂肪族アルコールや硫酸モノアルキル金属塩と反応させることで、硫酸モノアルキルを生成するものである。また、未反応の硫酸は、それ自身が触媒として働く。
硫酸は、化学式H2SO4で表される酸性の液体である。一般的に、硫酸は水で希釈された硫酸水溶液として用いられ、その濃度に応じて、濃硫酸や希硫酸といわれる。例えば、希硫酸とは、質量濃度が90質量%未満の硫酸水溶液である。
用いる硫酸の濃度(硫酸水溶液のH2SO4の濃度濃度)が低いと、水の量が多くなるため、硫酸モノアルキルが生成しにくい。また、触媒全体の酸性度も低くなり、ビスフェノールを製造する反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することが難しい場合がある。そのため、用いられる硫酸の濃度は、通常、80質量%以上である。また、より重合活性の高いビスフェノールを得るためには、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。また、用いられる硫酸の濃度の上限は、99.5質量%以下や99質量%以下にすることができる。
なお、この硫酸の濃度は、反応液を調製するときに用いられる硫酸水溶液の濃度であり、仕込み時の濃度である。
脂肪族アルコールは、アルキル基とヒドロキシル基が結合したアルキルアルコールである。本発明において、脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシル基が結合した1価アルコールでもよく、アルキル基と2個以上のヒドロキシル基が結合した多価アルコールであってもよい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐していてもよく、無置換であっても、アルキル基の炭素原子の一部が酸素原子によって置換されていてもよい。
本発明のビスフェノールの製造方法では、生成してくるビスフェノールを溶解や分散させるために有機溶媒の使用が必須である。また、ビスフェノールの製造に使用した有機溶媒は、反応終了後に蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。このように有機溶媒を再利用する場合は、沸点が低い溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害しない範囲で特に限定されないが、生成してくるビスフェノールを有機溶媒に完全に溶解させずに分散させた方が、ビスフェノールが分解しにくい。また、反応終了後、反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時のろ液への損失)を低減できることからも、ビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素を使用することが可能であり、芳香族炭化水素であることが好ましい。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。ビスフェノールが溶解しにくいことや沸点が低いことから、好ましい芳香族炭化水素のひとつはトルエンである。
また、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを縮合させる反応では、助触媒としてチオール助触媒を用いることができる。助触媒として用いるチオール助触媒としては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸や、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン、メルカプトフェノールなどのアルキルチオールなどが挙げられる。
また、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比は、多い場合、ビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン及びアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
本発明のビスフェノールの製造方法では、以下に示す反応式(4)に従って、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合により、以下の一般式(5)で表されるビスフェノールが製造される。
ビスフェノールの生成反応が発熱反応であることから、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給は、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給することが好ましい。
硫酸モノアルキルを硫酸と脂肪族アルコールの反応で生成させ、芳香族アルコール、硫酸モノアルキル、及び、有機溶媒を含有する溶液を得る方法としては、例えば、有機溶媒、脂肪族アルコール及び芳香族アルコールの混合液に硫酸を供給して、硫酸モノアルキルを生成させる方法が挙げられる。また、脂肪族アルコールと硫酸とを混合し硫酸モノアルキルを生成させた後、有機溶媒及び芳香族アルコールを供給する方法が挙げられる。
ビスフェノールの生成反応が発熱反応であることから、ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給は、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給することが好ましい。
ケトン又はアルデヒドを含有する溶液の供給時間(滴下時間)は、反応槽の冷却能力や製造スケール、製造されるビスフェノールの種類等に応じて適宜調整され、反応槽の冷却能力等によるが、例えば、0.3時間以上や0.5時間以上とすることができる。その上限は、例えば、5時間以下や3時間以下、1時間以下とすることができる。このようにすることで、反応熱の発生を抑えながら、反応液を調製できる。
本発明のビスフェノールの製造方法において、縮合反応によって得られたビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。
具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。水洗や重曹水による洗浄、晶析等は複数回行ってもよい。
また、芳香族アルコールを多量に用いる場合は、晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させることができる。
本発明のビスフェノールの製造方法により得られるビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
次に、本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法につき説明する。
本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造する方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
(ビスフェノールC等の定量分析)
ビスフェノールC、オルトクレゾール、及びイソペニルクレゾールの2量体の定量分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持し、
流速0.8mL/分、検出波長は280nmにて分析した。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
ポリカーボネート樹脂のペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。
装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
(1)ビスフェノールCの製造
(第1工程)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1.5Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン278g、メタノール5g及びオルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を30℃以下とした。次いで、トルエン、メタノール及びオルトクレゾールの混合液を撹拌しながら、ここへ80質量%硫酸250gをゆっくり加え、硫酸とメタノールとを反応させることで硫酸モノメチルを生成させ、トルエン、メタノール、オルトクレゾール、硫酸、硫酸モノメチルの混合液(a1-1)を得た。なお、硫酸モノメチルの生成の確認は、H1-NMRにて行った。
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、アセトン61.0g(1.05モル)、ドデカンチオール7.5gを混合して混合液(a2-1)を調製し、前記滴下ロートに入れた。アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.05モル=2.03であった。
混合液(a2-1)を1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が30℃を越えないように混合液(a1-1)に滴下した。
滴下終了後、内温を30℃に維持したまま1時間撹拌し、その後、0.5時間かけて45℃に昇温し、スラリー反応液(A1)を得た。
有機相(b1-1)に脱塩水400gを入れ、混合した後に静置することで有機相と水相とに分離させ、水相を除去し、有機相(b2-1)を得た。
更に、有機相(b2-1)に1.5質量%の重曹水溶液240gを2回に分けて供給し、混合洗浄し、水相を除去し、有機相(b3-1)を得た。
得られた有機相(b3-1)を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却し、10℃の状態で1時間撹拌することで第1の晶析を行い、晶析スラリー液(B1)を得た。
得られた晶析スラリー液(B1)を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ケーキ(c1-1)218gを得た。
得られたケーキ(c1-1)の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認することで、ケーキ(c1-1)がビスフェノールCであることを確認した。
得られた有機相(b5-1)を、80℃から10℃まで冷却し、第2の晶析を行った。その後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットのビスフェノールC(c2-1)を得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC(c3-1)195gを得た。
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、得られたビスフェノールC(c3-1)100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を61.0gから58.0g(0.999モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷0.999モル=2.13)に変更した以外は、実施例1-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-2)203gを得た。更に、ケーキ(c1-1)をケーキ(c1-2)に代えた以外は、実施例1-1の(1)と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-2)180gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-2)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、193分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、253,00であり、ペレットYIは、8.5であった。
(1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1.5Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン278g、メタノール5g及びオルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を30℃以下とした後に、撹拌しながら80質量%硫酸250gをゆっくり加えた。
該滴下液をゆっくり1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が30℃を越えないように滴下した。
滴下終了後、内温を30℃に維持したまま1時間撹拌し、その後、0.5時間かけて45℃に昇温して3時間撹拌し、スラリー反応液を得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-3)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、240分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、23300であり、ペレットYIは、47.3であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を61.0gから30.9g(0.532モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷0.532モル=4.00)に変更した以外は、実施例1-1の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-4)14gを得た。ケーキ(c1-4)の収量が少ないことから、これ以上の実験を断念した。
表1より、ビスフェノールCの製造においてアセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)が1.75(比較例1)では、得られたビスフェノールCを用いたポリカーボネート樹脂を製造するときに重合時間を長くしても、得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は低い結果であった。この結果より、アセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)を1.75以下で製造したビスフェノールCは、ポリカーボネート樹脂の製造において、所定の撹拌動力となるまでの重合時間が長く、得られるポリカーボネート樹脂の分子量も所定の粘度平均分子量に到達できていない。重合時間を長くしても所定の粘度平均分子量に到達できないことから、重合活性が低下することが分かる。比較例1では、所定の撹拌動力となるまでの重合時間が長いため、ポリマー鎖に分岐ができ、粘度平均分子量が低いものになっていると推定できる。
また、比較例1で得られるポリカーボネート樹脂のペレットYIも高い結果であった。この結果より、ビスフェノールCの製造においてアセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)を1.75以下にすると、得られたビスフェノールCを原料として製造されるポリカーボネート樹脂のペレットYIが高いことから、原料のビスフェノールCが、ポリカーボネート樹脂の色調が悪化する要因となることが分かる。これらの原因は、アセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)が低いと、アセトンの自己縮合が促進され、更に、硫酸によってアセトンの自己縮合物のスルホン酸化物が副生し、これが着色化の原因になるためと推定される。
一方で、ビスフェノールCの製造において、アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比が高くなると、第1の晶析で得られるケーキ量が減少することが分かる。
(1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1.5Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、メタノール12g及びオルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を10℃以下とした。次いで、トルエン、メタノール及びオルトクレゾールの混合液を撹拌しながら、ここへ98質量%硫酸95gをゆっくり加え、硫酸とメタノールとを反応させることで硫酸モノメチルを生成させ、トルエン、メタノール、オルトクレゾール、硫酸、硫酸モノメチルの混合液(a1-5)を得た。
混合液(a2-5)をゆっくり1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように混合液(a1-5)に滴下した。
滴下終了後、内温を10℃に維持したまま5時間撹拌し、スラリー反応液(A5)を得た。
有機相(b1-5)に脱塩水400gを入れ、混合した後に静置することで有機相と水相とに分離させ、水相を除去し、有機相(b2-5)を得た。
更に、有機相(b2-5)に1.5質量%の重曹水溶液240gを2回に分けて供給し、混合洗浄し、水相を除去し、有機相(b3-5)を得た。
得られた晶析スラリー液(B5)を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ケーキ(c1-5)276gを得た。
得られたケーキ(c1-5)の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認することで、ケーキ(c1-5)がビスフェノールCであることを確認した。
得られた有機相(b5-5)を、80℃から10℃まで冷却し、第2の晶析を行った。その後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットのビスフェノールC(c2-5)を得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC(c3-5)189gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-5)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、170分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、24600であり、ペレットYIは、7.4であった。
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1.5Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、メタノール15g及びオルトクレゾール230g(2.13モル)を入れ、内温を10℃以下とした。次いで、トルエン、メタノール及びオルトクレゾールの混合液を撹拌しながら、ここへ98質量%硫酸95gをゆっくり加え、硫酸とメタノールとを反応させることで硫酸モノメチルを生成させ、トルエン、メタノール、オルトクレゾール、硫酸、硫酸モノメチルの混合液(a1-6)を得た。
混合液(a2-6)をゆっくり1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように混合液(a1-6)に滴下した。
滴下終了後、内温を10℃に維持したまま2.5時間撹拌し、スラリー反応液(A6)を得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-6)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、170分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、24700であり、ペレットYIは、10.6であった。
(1)ビスフェノールCの製造
アセトンの量を65.0gから61.0g(1.05モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷1.05モル=2.03)に変更した以外は、実施例2-2の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-7)256gを得た。更に、ケーキ(c1-6)をケーキ(c1-7)に代えた以外は、実施例2-2と同様にして、第2の晶析、及び、軽沸分の留去を行い、白色のビスフェノールC(c3-7)197gを得た。
ビスフェノールC(c3-1)に代えて得られたビスフェノールC(c3-7)を用いた以外は、実施例1-1の(2)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。重合工程の時間は、140分であった。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、24900であり、ペレットYIは、12.2であった。
アセトン65.0gからアセトン49.4g(0.850モル;アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、2.13モル÷0.850モル=2.51)に変更した以外は、実施例2-2の(1)と同様にして第1の晶析後にビスフェノールのケーキ(c1-8)194gを得た。
表2より、アセトンに対するオルトクレゾールのモル比(物質量比)が、1.75よりも高い条件で製造したビスフェノールCは、ポリカーボネート樹脂の製造における重合時間が短く、得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIも低く抑えることができることが分かる。
一方で、比較例2及び比較例3の結果から、ビスフェノールCの製造において、アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比が高くなると、残存するクレゾールが増加し、第1の晶析及びろ過によるビスフェノールCの損失が多くなり、得られるビスフェノールCのケーキ量が減少することが分かる。
実施例2-1において、メタノール12gの供給を省略した以外は、実施例2-1と同様に実施し、若干黄色のビスフェノールC(c3-9)148gを得た。
なお、重曹水溶液での洗浄後の有機相(b3-9)の1部を取り出し、高速液体クロマトグラフで有機相(b3-9)の組成を確認したところ、クレゾールが6.6質量%、ビスフェノールCが27.3質量%、イソプロペニルクレゾールの2量体が2.6質量%であった。
表3より、ビスフェノールCの製造において、反応液が硫酸モノアルキルを含むことで、イソペニルクレゾールの2量体の生成を抑制し、ビスフェノールCの収量が増加し、ビスフェノールCの色調も改善されることが分かる。
温度計、撹拌機及び100mLの滴下ロートを備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール21.2gを入れた後に、92重量%硫酸46.5gをゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、オルトキシレン122.4g、オルトクレゾール137.7g(1.27モル)及びドデカンチオール4.4gを入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にし、オルトキシレン、メタノール、オルトクレゾール、硫酸、硫酸モノメチルの混合液(a1-10)を得た。前記滴下ロートにアセトン34.3g(0.590モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンに対するオルトクレゾールの物質量比は、1.27モル÷0.590モル=2.15であった。
反応終了後、スラリー反応液(A10)に、オルトキシレン100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下相の水相を抜き出し、有機相(b1-10)を得た。
その後、得られた有機相(b1-10)へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて、下相の水相pHが9以上になったことを確認した後、下相の水相を抜出し、有機相(b2-10)を得た。
得られた有機相(b2-10)に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出し、有機相(b3-10)を得た。
50mLのナス型フラスコにメタノール0.2gを取り、そこに92重量%硫酸0.5gをゆっくり加えて1分間振り混ぜた。この液を5mmφのNMR試料管に入れ、ロック用の重クロロホルム管(2mmφ封管)を試料中に挿入してプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)を測定した。1H-NMRスペクトル上、δ4.0ppmにシグナルが観測された。試薬の硫酸モノメチルナトリウム9.7mgを当該NMR試料管に添加したところδ4.0ppmのピークが増加したことから、該ピークが硫酸モノメチルのプロトンのシグナルであることを確認した。この結果より、硫酸とメタノールを混合すると硫酸モノメチルが生成することを確認した。
なお、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定は、日本電子株式会社製のJNM=ECS400型を用いて実施した。
Claims (7)
- 触媒及び有機溶媒の存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法であって、
前記触媒が、硫酸モノアルキルを含み、
前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を1.80以上2.20以下とし、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させることを特徴とするビスフェノールの製造方法。 - 前記触媒が、硫酸と硫酸モノアルキルとを含み、
前記硫酸モノアルキルが、前記硫酸と脂肪族アルコールとから生成される請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。 - 芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させ、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法であって、
前記ケトン又はアルデヒドに対する前記芳香族アルコールのモル比を1.80以上2.20以下とし、
硫酸、脂肪族アルコール及び有機溶媒の存在下で、前記ケトン又はアルデヒドと、前記芳香族アルコールとを反応させることを特徴とするビスフェノールの製造方法。 - 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトンである請求項1から3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記芳香族アルコールが、クレゾールである請求項1から4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素である請求項1から5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 請求項1から6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によってビスフェノールを製造する工程と、
製造された前記ビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造する工程と、
を有することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
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