JP2021123544A - ビスフェノールの製造法及びポリカーボネート樹脂の製造法 - Google Patents

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馨 内山
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Abstract

【課題】ビスフェノールを効率よく製造することができるビスフェノールの製造法を提供する。また、ポリカーボネート樹脂の製造法を提供する。【解決手段】ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリー反応液を得る第1工程と、前記第1工程で得られたスラリー反応液又は前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を強酸性の状態で固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る第2工程とを有するビスフェノールの製造法。また、前記ビスフェノールの製造法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ビスフェノールの製造法に関するものである。また、前記ビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造法に関するものである。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1〜3)。
特開2014−40376号公報 特開昭62−138443号公報 特開2018−145176号公報
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂等の様々な樹脂の原料として幅広い用途に使用され、今後も、その用途の拡大が期待される。
通常、ビスフェノールの製造では、反応の進行に伴い、生成するビスフェノールが析出するため、反応終了後に析出したビスフェノールを溶媒に溶解させて均一溶液を得、次いで、得られた均一溶液を、適宜、酸や塩基、水を用いて洗浄を行なった後、晶析させて固液分離することで、副生成物を除去してビスフェノールを取り出す方法が採用されている。
均一溶液を得る方法としては、(1)温度を上げて析出したビスフェノールを溶解させる方法(特許文献1〜3)、又は、(2)多量の溶媒を用いて析出したビスフェノールを溶解させる方法(特許文献3)が採用されている。
例えば、特許文献1の実施例には、反応終了後に、水と目的物を抽出するためのトルエンを加え、75〜80℃に加熱して静置し、下層の廃酸を分液し、炭酸水素ナトリウムで油層を中和後、温水洗浄を2回行い、濾過、晶析、結晶単離、乾燥の工程を経て目的の化合物を得ることが記載されている。
特許文献2の実施例1には、反応終了後に、反応混合物を減圧下に加熱して塩酸および反応で生成した水を除去し、脱塩素液を冷却して結晶を析出される方法が記載されている。
特許文献3の実施例では、反応終了後の反応液に水酸化ナトリウムを加えて80℃に昇温し、静置して水相を除去し、さらに、有機相の洗浄や晶析、乾燥を行い、ビスフェノールを得ている。特許文献3の別の実施例では、反応終了後の反応液に、酢酸エチルと水を加えた後、油水分離させ、水相を除去し、さらに、中和や洗浄を行い、ビスフェノールを得ている。
しかしながら、反応終了後に、析出したビスフェノールを溶解させる操作は時間を要するため、さらなる改良が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、効率の良いビスフェノールの製造法を提供することを目的とする。また、前記ビスフェノールの製造法で得られたビスフェノールを用いて、色調の良いポリカーボネート樹脂の製造法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成及び析出させてスラリー反応液を得て、固液分離することで、効率良くビスフェノールを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 以下の第1工程及び第2工程を有するビスフェノールの製造法。
第1工程:ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリー反応液を得る工程
第2工程:前記第1工程で得られたスラリー反応液又は前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を強酸性の状態で固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程
<2> 前記反応液が、第1の有機溶媒を含み、前記第1の有機溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び脂肪族アルコールからなる群から選択される1種以上である前記<1>に記載のビスフェノールの製造法。
<3> 前記第2工程が、前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程であり、前記混合用溶媒が、第2の有機溶媒である前記<1>又は<2>に記載のビスフェノールの製造法。
<4> 前記第2工程が、前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程であり、前記混合用溶媒が、水である前記<1>又は<2>に記載のビスフェノールの製造法。
<5> 前記第2工程が、前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程であり、前記混合用溶媒が、第2の有機溶媒及び水である前記<1>又は<2>に記載のビスフェノールの製造法。
<6> 前記第2の有機溶媒が、芳香族炭化水素である前記<3>又は<5>に記載のビスフェノールの製造法。
<7> 前記酸触媒が、硫酸である前記<1>乃至<6>のいずれかに記載のビスフェノールの製造法。
<8> 前記芳香族アルコールが、メチルフェノールである前記<1>乃至<7>のいずれかに記載のビスフェノールの製造法。
<9> 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトン又はシクロヘキサノンである前記<1>乃至<8>のいずれかに記載のビスフェノールの製造法。
<10> 前記<1>乃至<9>のいずれかに記載のビスフェノールの製造法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造法。
本発明によれば、色調が良く、効率の良いビスフェノール製造法が提供される。また、前記ビスフェノールの製造法で製造されたビスフェノールを用いて、色調の良いポリカーボネート樹脂を製造できる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
<ビスフェノールの製造法>
本発明は、以下の第1工程及び第2工程を有するビスフェノールの製造法(以下、「本発明のビスフェノールの製造法」と記載する場合がある。)に関するものである。
第1工程:ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリー反応液を得る工程
第2工程:前記第1工程で得られたスラリー反応液又は前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を強酸性の状態で固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程
本願において、「強酸性の状態」とは、第1工程で得られたスラリー反応液(単に、「スラリー反応液」と記載する場合がある)又は第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液(単に、「スラリー混合液」と記載する場合がある)が、酸濃度5.0mmol−水酸化ナトリウム/g以上の水相を含む状態を意味する。
強酸性の状態であるかどうかは、スラリー反応液又はスラリー混合液の一部をサンプリングし、サンプリングした液を静置し水相を分離させ、この分離した水相の酸濃度を算出することで判断できる。
水相の酸濃度とは、水相1g中に含まれる酸(H+)を中和するのに必要とする水酸化ナトリウムのモル数である。具体的には、水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を求める。次いで、以下の式(4)に示すように、測定に用いた水相の質量(g)に対するpH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を求め、この値を酸濃度とする。
Figure 2021123544
例えば、水相を1g用いて、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウム溶液が1mL(水酸化ナトリウムのモル数は0.1mmol)であった場合、酸濃度は、0.1mmol−水酸化ナトリウム/gとなる。
本発明のビスフェノールの製造法の特徴の一つは、析出したビスフェノールを溶解させることなしに、スラリー反応液又はスラリー混合液を強酸性の状態で固液分離することである。
本発明のビスフェノールの製造法では、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを縮合反応の進行に伴い、生成されるビスフェノールが析出する。そのため、反応により得られるスラリー反応液は、析出したビスフェノール(固体のビスフェノール)と、有機相と、水相との3相系の溶液となる。油水混合系(2相系)の反応液を濾過すると、一般的には、濾過性が非常に悪いことが知られており、3相系の反応液についても同様に濾過することが容易でないと推察されるものである。しかし、本発明者らは、反応終了後のスラリー反応液やスラリー混合液を濾過すると、驚くべきことに、濾過性が良いことを見出した。
また、本発明の製造法では、工程数を削減しつつ、色調のよいビスフェノールを製造することができる。これは、反応終了後に中和などの水相の酸濃度を下げる操作を行わず、強酸性の状態で液体を除去することで、水相に濃縮される傾向にあると考えられる極性の着色成分(ビスフェノールの色調を悪化させる着色成分)が効率的に除去されるためと考えられる。
以下、各工程に分け説明する。
[第1工程]
第1工程は、ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリー反応液を得る工程である。
(芳香族アルコール)
本発明のビスフェノールの製造法で用いられる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2021123544
1〜R4の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は、1以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。アリール基の炭素数は、6以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
1〜R4の置換基として、具体的には、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。
1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
これらのうち、R2とR3は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、R2とR3は好ましくは水素原子である。
また、 例えば、R1及びR4が、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R2及びR3が、水素原子である化合物が挙げられる。
上記一般式(1)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなど等が挙げられる。
この中でも、フェノール、メチルフェノール及びジメチルフェノールからなる群から選択されるいずれかが好ましく、メチルフェノール又はジメチルフェノールがより好ましく、メチルフェノールが更に好ましい。
(ケトン又はアルデヒド)
本発明のビスフェノールの製造法で用いられるケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
Figure 2021123544
5とR6の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は、1以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。アリール基の炭素数は、6以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
5とR6の置換基として、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。
5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良い。R5とR6とが隣接する炭素原子と一緒に結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。
例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
一般式(3)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類;ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン類;シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類;フルオレノン、キサントン、チオキサントンなどの複素環ケトン類等が挙げられる。
(酸触媒)
本発明のビスフェノールの製造法で用いられる酸触媒としては、硫酸、塩化水素ガス、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、リン酸などの強酸を用いることができる。
中でも、酸触媒は、硫酸、塩化水素ガス、塩酸、芳香族スルホン酸、及び脂肪族スルホン酸からなる群から選択される1以上であることが好ましい。より好ましくは、硫酸、塩化水素ガス、及び塩酸からなる群より選ばれる1以上であり、更に好ましくは、硫酸及び/又は塩化水素ガスである。反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から、酸触媒としては硫酸が特に好ましい。
硫酸は、化学式H2SO4で表される酸性の液体である。一般的に、硫酸は水で希釈された硫酸水溶液として用いられ、その濃度に応じて、濃硫酸や希硫酸といわれる。例えば、希硫酸とは、質量濃度が50質量%未満の硫酸水溶液である。
硫酸の濃度(硫酸水溶液(H2SO4+H2O)中のH2SO4の濃度)は、強酸性の状態で固液分離することができる範囲であればよいが、用いる硫酸の濃度が低すぎると、水の量が多くなるため、ビスフェノールの生成反応が進行しにくくなり、ビスフェノールを製造する反応時間が長くなり、非効率となる。そのため、用いる硫酸の濃度は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。また、用いる硫酸の濃度の上限は、通常99.5質量%以下又は99質量%以下である。
(縮合反応)
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドと、酸触媒とを含む反応液中で、以下に示す反応式(3)に従って縮合反応が起こり、ビスフェノールが生成される。
Figure 2021123544
(式中、R1〜R6は、一般式(1)及び(2)におけるものと同義である。)
芳香族アルコールに対しケトン又はアルデヒドの量が多すぎると、ケトン又はアルデヒドが多量化し易い。また、少なすぎると、芳香族アルコールが未反応で損出する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比((芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)又は(芳香族アルコールのモル数/アルデヒドのモル数))の下限は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくはモル比1.7以上である。また、その上限は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
ケトン又はアルデヒドに対する酸触媒のモル比((酸触媒のモル数/ケトンのモル数)又は(酸触媒のモル数/アルデヒドのモル数))は、少なすぎると、縮合反応の進行とともに副生する水によって酸触媒が希釈されて反応に時間を要する。また、多すぎると、ケトン又はアルデヒドの多量化が進行する場合ある。これらのことから、原料であるケトン又はアルデヒドに対する酸触媒のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
本発明のビスフェノールの製造法で製造されるビスフェノールとして、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも、本発明のビスフェノールの製造法で製造される好適なビスフェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、又は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンである。
(第1の有機溶媒)
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの反応は、第1の有機溶媒の存在下で行っても良い。
第1の有機溶媒としては、縮合反応により生成したビスフェノールが析出できる範囲で、適宜選択することができ、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコールなどが挙げられる。有機溶媒は、これらの溶媒を1種以上含んでもよい。例えば、第1の有機溶媒として、芳香族炭化水素と脂肪族アルコールとの混合溶媒を用いてもよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
脂肪族アルコールは、反応効率等の観点から、炭素数1〜12の1価のアルキルアルコールが好ましく、炭素数1〜8の1価のアルキルアルコールとすることがより好ましい。
なお、原料である芳香族アルコールを多量に使用することで、第1の有機溶媒の代わりとしてもよい。一方で、第1の有機溶媒の代わりに芳香族アルコールを用いる場合は、ビスフェノール中に残存する芳香族アルコールの量が増加するが、芳香族アルコールは沸点の高いものが多く、ビスフェノール中に残存する芳香族アルコールを除去するために時間を要するため、第1の有機溶媒を用いることが好ましい。
第1の有機溶媒を用いる場合、生成してくるビスフェノールが析出しやすいことや、反応終了後の反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時の濾液への損失)を低減できることから第1の有機溶媒として、室温におけるビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。室温におけるビスフェノールの溶解度が低い溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、第1の有機溶媒は、芳香族炭化水素を主成分として含むことが好ましく、第1の有機溶媒中に芳香族炭化水素を55質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
第1の有機溶媒を用いる場合、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する第1の有機溶媒の質量比((第1の有機溶媒の質量/ケトンの質量)又は(第1の有機溶媒の質量/アルデヒドの質量))は、多すぎると、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、生成してくるビスフェノールが固化しやすく、また、ケトン又はアルデヒドの多量化が促進される場合がある。また、第1工程と第2工程は通常別の装置で行われるため、スラリー反応液やスラリー混合液を別の装置に移送する必要がある。縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対する第1の有機溶媒の質量比が少なすぎると、スラリー反応液の流動性が悪化し、第2工程を行うために別の装置に移送することが困難となる場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する第1の有機溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。また、その上限は、ビスフェノールの析出が起こる範囲で適宜選択できるが、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
なお、後述するように、第1の有機溶媒は、分割して供給してもよく、分割して供給する場合は、ケトン又はアルデヒドに対する、反応液の調製に用いられる第1の有機溶媒の合計量が上記範囲内であることが好ましい。
(チオール助触媒)
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの縮合反応は、助触媒としてチオール助触媒を用いることができる。助触媒として用いるチオール助触媒としては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸や、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン、メルカプトフェノールなどのアルキルチオールなどが挙げられる。
チオール助触媒を用いる場合、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比((チオール助触媒のモル数/ケトンのモル数)又は(チオール助触媒のモル数/アルデヒドのモル数))は、少ない場合、チオール助触媒を用いることによるビスフェノールの反応選択性に対する改善の効果が得られにくい。なお、ビスフェノールの反応選択性とは、ビスフェノールの生成反応において目的物であるビスフェノールの生成のされやすさの指標であり、ビスフェノールの反応選択性が優れるほどビスフェノールの生成量が多くなる。
また、縮合に用いるケトン又はアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比は、多い場合、ビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン及びアルデヒドに対するチオール助触媒のモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドと、酸触媒とを含む反応液の調製方法は特に限定されず、各種原料の混合順は適宜選択される。ケトン又はアルデヒドの自己縮合による多量化の抑制の観点から、芳香族アルコールと酸触媒とを含む溶液に、ケトン又はアルデヒドを含む溶液を供給することが好ましい。このケトン又はアルデヒドを含む溶液の供給方法は、一括で供給する方法や、分割して供給する方法を用いることができるが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給する方法が好ましい。
芳香族アルコールと酸触媒とを含む溶液は、芳香族アルコールと酸触媒とからなるものであってもよく、それ以外の成分を含むものであってもよい。例えば、芳香族アルコールと酸触媒と第1の有機溶媒とを含む溶液としてもよい。
また、ケトン又はアルデヒドを含む溶液は、ケトン又はアルデヒドからなるものであってもよく、それ以外の成分を含んでもよい。例えば、チオール助触媒を用いる場合、チオール助触媒は、ケトン又はアルデヒドに予め混合してから反応に供することが好ましい。チオール助触媒と、ケトン又はアルデヒドとの混合方法は、チオール助触媒に、ケトン又はアルデヒドを供給してもよく、ケトン又はアルデヒドにチオール助触媒を供給しても良い。また、ケトン又はアルデヒドを含む溶液は、第1の有機溶媒を含むものとしてもよい。
第1の有機溶媒を用いる場合は、芳香族アルコールと酸触媒とを含む溶液と、ケトン又はアルデヒドを含む溶液に分けて混合してもよい。
反応温度は、低すぎると縮合反応が進行しにくくなることから、好ましくは−30℃以上であり、より好ましくは−20℃以上であり、更に好ましくは−15℃以上である。また、−5℃以上や0℃以上としてもよい。反応温度が高すぎると、副反応であるアセトン又はケトンの自己縮合反応が進行し、助触媒であるチオールを用いた場合にはチオールの酸化分解が進行しやすくなるため、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。
本発明のビスフェノールの製造法において、縮合反応の反応時間は、製造するビスフェノールの種類や反応温度、製造スケール等の反応条件により適宜調整されるものであるが、通常、500時間以下であり、400時間以下や350時間以下であってもよい。長い場合生成したビスフェノールが分解しやすくなることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。また、反応時間の下限は、通常、0.5時間以上であり、1時間以上であることが好ましく、1.5時間以上であることがより好ましい。
なお、酸触媒下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドが接触することで縮合反応が起こるため、反応時間の開始点は、酸触媒下、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの接触が開始した時点(縮合反応開始時点)となる。例えば、芳香族アルコールと酸触媒とを混合した混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
第1工程で得られたスラリー反応液は、そのまま第2工程に用いることができる。また、第1工程で得られたスラリー反応液をそのまま用いることなく、第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合してスラリー混合液を得る工程(以下、「A工程」という)を行った後に、得られたスラリー混合液を第2工程に用いることもできる。
第2工程の固液分離方法等にもよるが、第2工程を行う装置への移送性や、濾過性の観点から、第2工程に用いるスラリー反応液又はスラリー混合液は、粘度30Pa・s以下が好ましい。より好ましくは20Pa・s以下であり、さらに好ましくは10Pa・s以下である。
なお、第1工程で得られた反応液をそのまま第2工程に用いる場合、反応温度は、縮合反応開始時点から第2工程を開始する時点の時間として管理できる。反応温度は、縮合反応開始時点から第2工程を開始する時点までの平均の温度である。
また、第2工程において、第1工程で得られた反応液と混合用溶媒とを混合した混合液を用いる場合、反応時間は、縮合反応開始時点からA工程を開始する時点(混合用溶媒の混合を開始する時点)までの時間として管理できる。反応温度は、縮合反応開始時点からA工程を開始する時点までの平均の温度である。
<A工程>
A工程は、第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合してスラリー混合液を得る工程である。A工程は、第2工程においてスラリー混合液を用いる場合に行われる工程であり、第1工程の次に行われる工程である。
上記の通り、第1工程と第2工程は通常別の装置で行われるため、スラリー反応液やスラリー混合液を別の装置に移送する必要がある。第1工程は、第1の有機溶媒の存在下で行うことが好ましいが、第1の有機溶媒の量を増加させるほど、スラリー反応液の流動性が低下し第2工程を行う装置への移送が容易となる一方で、反応性が低下し縮合反応が進行しにくくなる。A工程を行うことで、第1工程では反応性を高めつつ、第2工程を行う装置への移送も容易なものとできる。
混合用溶媒は、第1工程で得られたスラリー反応液と混合してスラリー混合液を調製するために用いられる溶媒である。
混合用溶媒としては、ビスフェノールが析出した状態を維持できるものであれば特に限定されない。混合用溶媒は、製造するビスフェノールの種類等に応じて適宜選択されるものであるが、室温におけるビスフェノールの溶解性が低いことから、第2の有機溶媒及び/又は水であることが好ましい。
混合用溶媒として用いられる水としては、蒸留水や脱塩水、イオン交換水などを用いることができる。
混合用溶媒として用いられる第2の有機溶媒としては、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂肪族アルコールなどが挙げられ、芳香族炭化水素を含むことが好ましく、芳香族炭化水素がより好ましい。この混合用溶媒として用いられる、第2の有機溶媒は、第1の有機溶媒と同じものであっても、異なるものであってもよい。
スラリー反応液に対する混合用溶媒の供給量(質量)(混合用溶媒の質量/スラリー反応液の質量)は、強酸性の状態を維持できる範囲で適宜選択することができる。混合用溶媒の種類や製造スケール等にもよるが、ビスフェノールが混合用溶媒に溶けることをより抑えるためには、スラリー反応液に対する混合用溶媒の供給量(質量)は、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。その下限は特に限定されないが、0.001以上や、0.005以上、0.01以上などと下限を設けて管理してもよい。
混合温度は、ビスフェノールが析出した状態を維持できる範囲で、適宜選択することができる。混合温度は高すぎると、生成したビスフェノールが分解しやすくなるため、反応温度と同じ温度範囲から選択することができる。好ましくは50℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。混合温度の下限は、第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒との混合性を考慮して設定すればよく、−30℃以上の温度で適宜選択することができる。例えば、−20℃以上や、−15℃以上、−5℃以上、0℃以上にしてもよい。混合温度は低すぎると、混合用溶媒が固まりやすく、混合しにくくなる。
混合温度や製造スケール等によるが、混合時間が長すぎると、ビスフェノールが徐々に分解する傾向にある。そのため、混合時間は、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、1時間以下が更に好ましい。混合時間の下限は特に限定されないが、スラリー反応液と混合用溶媒をより均一に混合するためには、混合時間は、0.01時間以上が好ましく、0.05時間以上がより好ましく、0.1時間以上が更に好ましい。
なお、混合時間は、第1工程で得られたスラリー反応液に混合用溶媒の混合を開始した時点から第2工程を開始する時点までの時間として管理でき、混合温度は、第1工程で得られたスラリー反応液に混合用溶媒の混合を開始した時点から第2工程を開始する時点までの平均の温度である。
また、第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒との混合は、撹拌しながら行うことが好ましい。
<第2工程>
第2工程は、前記第1工程で得られたスラリー反応液又は前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を強酸性の状態で固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程である。
第1工程で得られたスラリー反応液を固液分離する場合、第2工程は、第1工程の次に行われる工程である。また、第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離する場合、第2工程は、A工程の次に行われる工程である。
第2工程で固液分離させる、スラリー反応液又はスラリー混合液は、強酸性であり、酸濃度5.0mmol−水酸化ナトリウム/g以上の水相を含むものである。また、第2工程では、酸濃度6.0mmol−水酸化ナトリウム/g以上の水相を含む、スラリー反応液又はスラリー混合液を固液分離することが好ましく、酸濃度7.0mmol−水酸化ナトリウム/g以上の水相を含む、スラリー反応液又はスラリー混合液を固液分離することがより好ましく、酸濃度8.0mmol−水酸化ナトリウム/g以上の水相を含む、スラリー反応液又はスラリー混合液を固液分離することが更に好ましい。
上記の通り、スラリー反応液又はスラリー混合液は、析出したビスフェノール(固体のビスフェノール)と、有機相と、水相との3相系の溶液であり、除去される液体成分は、有機相と水相を含む。
また、得られる固形分は、ビスフェノールを含む。なお、得られる固形分は、液体成分の一部を含んでよいが、その含液量は通常50質量%以下である。
固液分離の方法としては、ろ過や遠心分離、デカンテーション等が挙げられる。
ろ過には、加圧ろ過機や真空ろ過機を用いることができる。ろ過機のフィルターの孔径は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、300μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。差圧条件は、100Pa以上が好ましく、50kPa以上がより好ましい。また、5kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましい。
遠心分離には、バスケット型遠心分離機や、円筒型遠心分離機、分離板型遠心分離機、デカンター型分離機など遠心分離機を用いることができる。また、バッチ式でも連続式であってもよい。
また、スラリー反応液やスラリー混合液には、酸触媒が含まれることから、遠心分離機の処理部は、耐腐食性の材質であることが好ましい。例えば、フッ素樹脂などの耐腐食性の高い材質でライニング加工された装置を用いることが好ましい。
有孔壁タイプの遠心分離機を用いる場合、遠心分離機に用いるろ布は、通気度が0.5cm3/cm2/秒以上が好ましく、1.0cm3/cm2/秒以上がより好ましい。また、50cm3/cm2/秒以下が好ましく、30cm3/cm2/秒以下がより好ましい。
遠心分離の遠心力は、10G以上が好ましく、50G以上がより好ましい。また、その上限は、特に限定されず、スラリー反応液やスラリー混合液の粘度や遠心分離機の種類等を考慮して適宜決定することができる。例えば、100000G以下や10000G以下、5000G以下、1000G以下など任意で選択可能である。
固液分離時の温度は、適宜決定されるものであるが、高すぎるとビスフェノールが液体成分に溶けて損出する量が増加する傾向があり、低すぎると、スラリー反応液又はスラリー混合液の粘度が増加し、濾過性が悪化する傾向にある。そのため、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。また、好ましくは−50℃以上であり、より好ましくは−30℃以上であり、更に好ましくは−10℃以上である。また、−5℃以上や0℃以上としてもよい。
固液分離の時間は、十分に固液分中の含液量を低下させるため、0.01時間以上が好ましく、0.05時間以上がより好ましい。また、固液分離の時間の上限は特に限定されないが、10時間以下や5時間以下、1時間以下など上限を設けて管理してもよい。
第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分は、その用途に応じて公知の方法でさらに精製を行うことができる。例えば、第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分は、以下に記載する洗浄工程および晶析工程を含む方法で精製を行うことができる。
<固形分洗浄工程>
本発明のビスフェノールの製造法は、第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分に第1の洗浄溶媒を加え、固液分離する固形分洗浄工程を有することが好ましい。
第1の洗浄溶媒としては、水や、食塩水、アルカリ水溶液などが挙げられる。第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分の洗浄は複数回行うことができ、同一の洗浄溶媒で複数回洗浄を行っても、異なる洗浄溶媒を用いて複数回洗浄を行ってもよい。
第1の洗浄溶媒として用いることができる水としては、蒸留水や脱塩水、イオン交換水などを用いることができる。
第1の洗浄溶媒として用いることができるアルカリ水溶液としては、pHが7よりも高いものであればよく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩などが溶解した水溶液が挙げられる。
第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分には酸触媒が残存している場合もあるため、アルカリ水溶液を用いることが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液または炭酸水素ナトリウム水溶液を用いることがより好ましい。
アルカリ水溶液の塩濃度は、高すぎると、得られるビスフェノールに塩が残存しやすくなるため、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
洗浄効果を高めるためには、ビスフェノールを含む固形分に対する第1の洗浄溶媒の使用量(第1の洗浄溶媒の質量/ビスフェノールを含む固形分の質量)は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。また、使用する第1の洗浄溶媒の量は一定量以上になると洗浄効果が飽和する傾向にあり、非効率となる。そのため、ビスフェノールを含む固形分に対する第1の洗浄溶媒の使用量は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
固形分洗浄の洗浄温度は、反応温度や固液分離時の温度と同じ温度範囲の範囲から適宜選択することができる。複数回洗浄を行う場合には、各洗浄は同一の温度としても異なる温度としてもよい。また、洗浄時間は特に限定されず、第1の洗浄溶媒等に応じて適宜選択することができる。例えば、0.01〜10時間の間で洗浄時間を適宜選択することができる。
固液分離の方法は、第2工程と同様に、ろ過、遠心分離、デカンテーション等を用いることができる。
具体的には、ビスフェノールを含む固形分に洗浄溶媒を加え、濾過や遠心分離する方法や、洗浄溶媒にビスフェノールを含む固形分を懸濁させて、濾過や遠心分離・デカンテーションする方法などが挙げられる。
固形分洗浄工程は、第2工程と同一の装置内で行うことが好ましい。同一の装置内で第2工程(固液分離)及び固形分洗浄工程を行うことで、固液分離後の固形分を別の装置に供給する必要がなく、効率的である。また、遠心分離機を用いて脱液(第2工程)及び洗浄(固形分洗浄工程)を行うことで、供給された洗浄溶媒が、脱液後(第2工程後)のケーキ(ビスフェノールを含む固形物)の表面全体に広がり、ケーキの表面全体からケーキ内部に浸透するため、均一な洗浄ができ、安定した洗浄効果を得やすい。
第2工程や固形分洗浄工程では、固形分の含液量を指標として、固液分離条件(差圧や遠心力、時間等)設定することができる。第2工程及び固形分洗浄工程を同一の装置内で行う場合には、固形分洗浄工程後の固形分の含液量を指標としてもよい。第2工程や固形分離工程後の固形分の含液量は、通常50質量%以下であるが、40質量%以下や30質量%以下などの値を含液量の指標としてもよい。また、含液量5質量%以上や10質量%以上など、含液量の下限値を指標としてもよい。
<晶析工程>
本発明のビスフェノールの製造法は、第2工程の後に、晶析工程を有することが好ましい。具体的には、晶析工程として、第2工程又は固形分洗浄工程で得られたビスフェノールを含む固形分を第3の有機溶媒に溶解させた晶析用溶液を、冷却温度まで冷却することでビスフェノールを析出させ、ビスフェノールを得る工程を有することが好ましい。
以下、晶析工程について具体的に説明する。晶析用溶液の調製については後述する。
冷却方法は特に限定されないが、水冷や空冷等で行うことができる。結晶が析出しやすく、析出する結晶の純度を高めるためには、種晶を添加してもよい。種晶は、冷却開始時や冷却中に添加することができる。
冷却開始温度は、晶析用溶液の調製方法等に応じて、ビスフェノールが析出しない範囲で適宜選択することができるが、冷却開始温度が高すぎると、ビスフェノールが分解しやすくなる。また、冷却開始温度が低すぎると、ビスフェノールを効率的に析出させにくくなる。そのため、冷却開始温度は、後述する晶析用溶液調製時の加熱温度や洗浄温度と同じ温度範囲から選択することが好ましい。具体的には、冷却開始温度は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。また、冷却開始温度は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。
冷却温度は高すぎると結晶が十分に析出しないため、30℃以下であることが好ましく、20℃以下がより好ましい。また、冷却温度は、−30℃以上の温度で適宜選択することができる。例えば、−20℃以上や、−15℃以上、−5℃以上、0℃以上としてもよい。晶析用溶液の組成によるが、冷却温度は低すぎると、晶析用溶液が凝固しやすくなるので、5℃以上が好ましい。
冷却速度は、通常、0.1〜1.5℃/min程度であり、好ましくは、0.2〜1.0℃/minである。冷却速度が遅すぎると、ビスフェノールの析出に長時間を要し、冷却速度が速すぎても、不純物を含んだ状態で結晶となりやすい。晶析時間は1〜10時間であることが好ましい。
析出したビスフェノールを固液分離することで、ビスフェノールを得ることができる。固液分離の方法は特に限定されず、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の常法を用いることができる。
また、固液分離後にビスフェノールを乾燥させることが好ましく、乾燥の方法は減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができ、例えば、50〜120℃で、2〜15時間乾燥させることができる。
<晶析用溶液の調製>
上記晶析工程に用いられる晶析用溶液は、第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分又は固形分洗浄工程後のビスフェノールを含む固形分を、第3の有機溶媒に溶解させることで調製することができる。
ビスフェノールを効率的に析出させるために、温度に依存してビスフェノールの溶解度が異なる有機溶媒を用い、加熱により第3の有機溶媒にビスフェノールを溶解させることが好ましい。
加熱温度は、第3の有機溶媒の種類に応じて適宜選択されるものであるが、加熱温度が高すぎるとビスフェノールが分解しやすくなるので、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。また、加熱温度の下限は、ビスフェノールが溶解する範囲であれば特に限定されないが、冷却により効率的にビスフェノールを析出させるためには、40℃以上でビスフェノールを溶解させることができる第3の有機溶媒を選択することが好ましく、50℃以上でビスフェノールを溶解させることができる第3の有機溶媒を選択することがより好ましい。
第3の有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、エステルなどを挙げることができ、これらは単独または混合して用いることができる。冷却によりビスフェノールを析出させやすいため、好適な第3の有機溶媒のひとつは、芳香族炭化水素を含む(例えば、90質量%以上や95質量%以上含有する)溶媒である。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。
ビスフェノールを含む固形分に対する第3の有機溶媒の量(第3の有機溶媒の質量/ビスフェノールを含む固形分の質量)は、多すぎると、ビスフェノールが析出しにくくなるため、50以下が好ましく、10以下がより好ましい。また、その下限は、ビスフェノールが析出する範囲であれば特に限定されないが、例えば、0.1以上や0.5以上とすることができる。
<晶析用溶液の洗浄>
第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分又は固形分洗浄工程後のビスフェノールを含む固形分を、第3の有機溶媒に溶解させた溶液(晶析用溶液)をさらに洗浄して、晶析に用いてもよい。晶析用溶液の洗浄は、具体的には、晶析用溶液と、水やアルカリ水溶液などの第2の洗浄溶媒とを混合し、静置することで油水分離させ、水相を除去することで行うことができる。第2の洗浄溶媒としては、上記の第1の洗浄溶媒と同様のものを用いることができる。
洗浄効果を高めるためには、晶析用溶液に対する第2の洗浄溶媒の使用量(第2の洗浄溶媒の質量/晶析用溶液の質量)は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。また、使用する洗浄溶媒の量は一定量以上になると洗浄効果が飽和する傾向にあり、取り扱いも困難となる。そのため、晶析用溶液に対する洗浄溶媒の使用量は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
洗浄時の温度は、ビスフェノール溶解のための加熱温度と同じ温度範囲から適宜選択することができる。ビスフェノールの析出を防ぐために、ビスフェノール溶解時の加熱温度以上の同じ温度で洗浄は行うことが好ましい。
晶析用溶液の洗浄時間は特に限定されず、第2の洗浄溶媒等に応じて適宜選択することができる。例えば、0.01〜10時間の間で1回あたりの洗浄時間を適宜選択することができる。
晶析用溶液の洗浄は複数回行うことができ、同一の洗浄溶媒で複数回洗浄を行っても、異なる洗浄溶媒を用いて複数回洗浄を行ってもよい。晶析用溶液の洗浄は、水を用いた水洗浄を含むことが好ましく、除去される水相の電気伝導度が5μS/cm以下となるまで繰り返し行うことが好ましく、2.5μS/cm以下となるまで繰り返し行うことがより好ましい。
上記の通り、第2工程で得られたビスフェノールを含む固形分又は固形分洗浄工程後のビスフェノールを含む固形分を、第3の有機溶媒に溶解させた溶液や、この溶液を洗浄したものを晶析用溶液として用い、晶析工程を行うことができる。晶析工程は複数回行ってもよく、晶析工程後のビスフェノールをさらに洗浄や晶析することで精製してもよい。また、カラムクロマトグラフィーなどの方法によって精製を行ってもよい。
なお、本発明のビスフェノールの製造法では、第1工程で得られたスラリー反応液又はスラリー混合液を固液分離することにより、効率的にビスフェノールの品質を悪化する成分を除去することができるため、晶析工程(晶析回数)が1回でも色調の良いビスフェノールを得ることができる。
[ビスフェノールの用途]
本発明のビスフェノールの製造法で得られるビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ−)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<ポリカーボネート樹脂の製造法>
本発明のビスフェノールの製造法にて得られたビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と記載する場合がある。)を原料とするポリカーボネート樹脂の製造法について説明する。本発明のポリカーボネート樹脂の製造法にて得られるポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造法において、炭酸ジフェニルは、本発明のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、本発明のビスフェノール及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられる触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、シクロヘキサノン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
[分析]
(ビスフェノールの定量分析)
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンの定量分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt ScherzoSM−C18 3μm 150mm×4.6mmID
・方式:低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
分析時間0分では、A液:B液=60:40(体積比、以下同様。)、分析時間0〜25分は溶離液組成をA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、分析時間25〜30分はA液:B液=10:90に維持した。
・流速:0.8mL/分
・検出波長:280nm
(酸濃度測定)
酸濃度測定は、電位差自動滴定装置を用いて実施した。
スラリー反応液又はスラリー混合液の一部をサンプリングし、サンプリングしたスラリー反応液又はスラリー混合液を静置し水相を分離させた。次いで、分離した水相を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を、測定に用いた水相の質量(g)で除し、酸濃度を求めた。
・装置:京都電子工業株式会社製AT−610
・滴定液:測定する酸濃度に応じて、容量分析用0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液、又は容量分析用1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
(ビスフェノールの溶融色差)
ビスフェノールの溶融色差は、日電理化硝子社製試験管「P−24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールを20g入れて、190℃で30分間溶融させ、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
(pHの測定)
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METERES−73」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
(電気伝導度)
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D−71」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
(ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH)濃度)
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH)濃度は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
(粘度平均分子量(Mv))
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
(ペレットYI)
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。
・装置:コニカミノルタ社製分光測色計CM−5
・測定条件
測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
<実施例1>
[第1工程]
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン160g、メタノール7.5g及びオルトクレゾール115g(1065mmol)を入れ、内温を10℃以下とした後に、撹拌しながら98質量%硫酸47.5gをゆっくり加えた。500mLの三角フラスコに、トルエン25g、アセトン32.5g(560mmol)、ドデカンチオール2.7gを混合して滴下液を調製し、前記滴下ロートに入れた。該滴下液をゆっくり1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように滴下した。滴下液を滴下している途中で、生成したビスフェノールCが析出し、反応液がスラリー状となった。滴下終了後、内温を10℃に維持したまま2.5時間(反応熟成時間)撹拌し、縮合反応をさらに進行させ、析出したビスフェノールCを含むスラリー反応液を得た。
なお、スラリー反応液の粘度は約1Pa・sであった。
[A工程]
得られたスラリー反応液に、混合用溶媒としてトルエン135gを加え、10℃に維持したまま0.5時間(混合時間)撹拌し、スラリー混合液を得た。
また、スラリー混合液の一部をサンプリングし、水相の酸濃度を算出したところ、酸濃度は14.5mmol/gであった。
[第2工程]
得られたスラリー混合液を、遠心分離機(三陽理化学器械製作所 TYPE SYK−3800−10 回転数2000rpm)で固液分離し、ビスフェノールCを含むケーキを得た。この濾過性は、良好であった。
[固形分洗浄工程]
得られたケーキに、1.5質量%の重曹水溶液100gで振りかけ洗浄し、遠心分離機で固液分離したところ(1.5質量%の重曹水溶液100gを遠心分離機に供給し、固液分離したところ)、ビスフェノールCを含む白色のケーキ151gを得た。
第2工程及び固形分洗浄工程に要した時間は0.5時間であった。
得られた白色のケーキの一部を取り出し、アセトニトリルに溶解させ、高速液体クロマトグラフィーでケーキの組成を確認したところ、ビスフェノールCを61質量%含有していた。したがって、得られたビスフェノールCは151g×61質量%=92gであった。
反応開始から、ビスフェノールCを含む白色のケーキが得られるまでの時間は、反応時間3.5時間(滴下時間1時間+反応熟成時間2.5時間)+混合時間0.5時間+第2工程及び固形分洗浄工程に要した時間0.5時間=4.5時間であった。したがって、単位時間あたりのビスフェノールCの取得量は92g÷4.5時間=20g/時間と見積もられた。
<実施例2>
A工程において混合用溶媒をトルエン135gに代えて、脱塩水50gとした以外は実施例1と同様にして、ビスフェノールを含む白色のケーキ161gを得た。
A工程後のスラリー混合液の一部をサンプリングし、水相の酸濃度を算出したところ、酸濃度は8.4mmol/gであった。
第2工程および固形分洗浄工程の固液分離に要した時間は0.5時間であった。
得られた白色のケーキの一部を取り出し、アセトニトリルに溶解させ、高速液体クロマトグラフィーでケーキの組成を確認したところ、ビスフェノールCを43質量%含有していた。したがって、得られたビスフェノールCは161g×43質量%=69gであった。
反応開始から、ビスフェノールCを含む白色のケーキが得られるまでの時間は、実施例1と同様に4.5時間であった。したがって、単位時間あたりのビスフェノールCの取得量は69g÷4.5時間=15g/時間と見積もられた。
<実施例3>
A工程において混合用溶媒をトルエン135gに代えて、トルエン135gと脱塩水50gとの混合溶媒とした以外は実施例1と同様にして、ビスフェノールCを含む白色のケーキ161gを得た。
A工程後のスラリー混合液の一部をサンプリングし、水相の酸濃度を算出したところ、酸濃度は8.5mmol/gであった。
第2工程および固形分洗浄工程の固液分離に要した時間は0.5時間であった。得られた白色のケーキの一部を取り出し、アセトニトリルに溶解させ、高速液体クロマトグラフィーでケーキの組成を確認したところ、ビスフェノールCを58質量%含有していた。したがって、得られたビスフェノールCは165g×58質量%=96gであった。
反応開始から、ビスフェノールCを含む白色のケーキが得られるまでの時間は、実施例1と同様に4.5時間であった。したがって、単位時間あたりのビスフェノールCの取得量は96g÷4.5時間=21g/時間と見積もられた。
<比較例1>
[第1工程]
実施例1と同様にしてスラリー反応液を得た。
[水酸化ナトリウム水溶液の供給及び昇温]
スラリー反応終了後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液95gを供給して80℃まで昇温し、ビスフェノールCを溶解させた。25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給及び昇温時間の所要時間は3時間であった。80℃に到達後、静置させ、油水分離させて、下相の水相を抜き出した。
[水洗及び炭酸水素ナトリウム水溶液洗浄]
80℃を維持したまま、得られた有機相に脱塩水200gを入れ、混合して、静置し、油水分離させて、水相を除去した。80℃を維持したまま、得られた有機相に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液60gを加えて、油水分離させ、下相の水相pHが9以上になったことを確認し、下相の水相を抜き出した。80℃を維持したまま、得られた有機相に、更に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液60gを加えて撹拌後、静置し、油水分離させて、水相を抜き出した。水洗及び炭酸水素ナトリウム水溶液洗浄に要した時間は、1.5時間であった。
[晶析工程]
得られた有機相を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却し、10℃の状態で1時間撹拌した。晶析工程に要した時間は、3時間であった。
[固液分離]
遠心分離機を用いて固液分離を行い、白色のケーキ99gを得た。固液分離に要した時間は0.5時間であった。
固液分離後の白色のケーキの一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCを91質量%含有していた。したがって、得られたビスフェノールCは99g×91質量%=90gであった。
反応開始から白色のケーキが得られるまでの時間は、反応時間3.5時間(滴下時間1時間+反応熟成時間2.5時間)+水酸化ナトリウム水溶液の供給及び昇温に要した時間3時間+水洗及び炭酸水素ナトリウム水溶液洗浄に要した時間1.5時間+晶析工程に要した時間3時間+固液分離に要した時間0.5時間=11.5時間であった。したがって、単位時間あたりのビスフェノールCの取得量は90g÷11.5時間=8g/時間と見積もられた。
実施例1〜3及び比較例1について、表1に、第2工程の実施有無、単位時間あたりのビスフェノールCの取得量をまとめた。表1から、反応後に固液分離をした方が単位時間あたりのビスフェノールCの取得量が多く、効率的にビスフェノールCを製造できることが分かる。
Figure 2021123544
<実施例4>
[第1工程]、[A工程]、[第2工程]及び[固形分洗浄工程]を実施例3と同様の方法で行い、ビスフェノールCを含む白色のケーキ165gを得た。
[晶析用溶液の調製]
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、得られたビスフェノールCを含む白色のケーキ165gとトルエン300gを入れ、80℃まで昇温し、ビスフェノールCを溶解させ、晶析用溶液を得た。この工程の所要時間は1時間であった。
[晶析用溶液の洗浄]
80℃に維持したまま、得られた晶析用溶液に脱塩水50gを加え、混合及び静置し、油水分離させて、下相の水相を除去した。下相の水相の電気伝導度が5μS/cm以下になるまで、脱塩水を用いた洗浄を5回実施し、有機相を得た。この工程の所要時間は2時間であった。
[晶析工程]
得られた有機相を80℃から10℃まで降温し、ビスフェノールが析出したスラリー液を得た。この工程の所要時間は2時間であった。
[固液分離及び乾燥]
得られたスラリー液を固液分離し、ケーキを得た。得られたケーキを、オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度80℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC70gを得た。固液分離及び乾燥の所要時間は3時間であった。
反応開始からビスフェノールC70gが得られるまでの時間は、反応時間3.5時間(滴下時間1時間+反応熟成時間2.5時間)+混合時間0.5時間+第2工程及び固形分洗浄工程に要した時間0.5時間+晶析用溶液調製に要した時間1時間+晶析用溶液の洗浄に要した時間は2時間+晶析工程に要した時間2時間+固液分離及び乾燥に要した時間3時間=12.5時間であった。単位時間当たりのビスフェノールCの取得量は5.6g/時間と見積もられた。
得られたビスフェノールCの溶融色差を測定したところ、APHA16であった。
<比較例2>
比較例1と同様にして、[第1工程]、[水酸化ナトリウム水溶液の供給及び昇温]、[洗浄]、[晶析]及び[固液分離]を行い、ビスフェノールCを含む白色のケーキ99gを得た。次いで、得られたビスフェノールCを含む白色のケーキ99gを用いて、実施例4の[晶析用溶液の調製][晶析用溶液の洗浄][晶析工程]及び[固液分離及び乾燥]と同様の操作を行い、白色のビスフェノールC65gを得た。
反応開始からビスフェノールC65gが得られるまでの時間は、反応時間3.5時間(滴下時間1時間+反応熟成時間2.5時間)+水酸化ナトリウムの供給及び昇温時間3時間+水洗及び炭酸水素ナトリウム水溶液洗浄に要した時間1.5時間+晶析工程に要した時間3時間+固液分離に要した時間0.5時間+晶析用溶液調製に要した時間1時間+晶析用溶液の洗浄に要した時間は2時間+晶析工程に要した時間2時間+固液分離及び乾燥に要した時間3時間=19.5時間であった。単位時間当たりのビスフェノールCの取得量は3.3g/時間と見積もられた。
得られたビスフェノールCの溶融色差を測定したところ、APHA35であった。
実施例4および比較例2において、第2工程の実施有無と得られたビスフェノールCの溶融色差について、表2にまとめた。表2より、第2工程を実施することでビスフェノールCの溶融色差が改善することが分かる。この理由は、第2工程の酸濃度が高い条件下でビスフェノールのケーキと液を分離することで効果的に着色物質が除去できるためと考えられる。
Figure 2021123544
<実施例5>
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例4で得られたビスフェノールC100.00g(ビスフェノールC0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は185分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24800であり、ペレットYIは7.9であった。
<実施例6>
[第1工程]
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン66.5g、メタノール7.5g及びオルトクレゾール76.5g(598mmol)を入れ、内温を10℃以下とした後に、撹拌しながら98質量%硫酸47.5gをゆっくり加えた。500ミリリットルの三角フラスコに、トルエン56.5g、シクロヘキサノン36.3g(370mmol)、ドデカンチオール1.8gを混合して滴下液を調製し、前記滴下ロートに入れた。該滴下液をゆっくり1時間(滴下時間)かけて、セパラブルフラスコの内液の温度が10℃を越えないように滴下した。滴下液を滴下している途中で、生成した1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンが析出し、反応液がスラリー状となった。滴下終了後、内温を10℃に維持したまま2.5時間(反応熟成時間)撹拌し、縮合反応をさらに進行させ、析出した1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンを含むスラリー反応液を得た。
[A工程]
得られたスラリー反応液に、脱塩水50g、トルエン135g、メタノール50gを加え、10℃に維持したまま0.5時間(混合時間)撹拌し、スラリー混合液を得た。
A工程後のスラリー混合液の一部をサンプリングし、水相の酸濃度を算出したところ、酸濃度は15.2mmol/gであった。
[第2工程]
得られたスラリー混合液を、遠心分離機で固液分離した。この濾過性は、良好であった。
[固形分洗浄工程]
前記固液分離で得られたケーキに、脱塩水100gで振りかけ洗浄し、遠心分離機で固液分離したところ、青色のケーキ76.5gを得た。
第2工程及び固形分洗浄工程の固液分離に要した時間は0.5時間であった。
得られた青色のケーキの一部を取り出し、アセトニトリルに溶解させ、高速液体クロマトグラフィーで1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンの組成を確認したところ、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンが80質量%含有していた。したがって、得られた1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンは76.5g×80質量%=61gであった。
本発明の製造法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。

Claims (10)

  1. 以下の第1工程及び第2工程を有するビスフェノールの製造法。
    第1工程:ケトン又はアルデヒド、芳香族アルコール及び酸触媒を含有する反応液中で、前記ケトン又はアルデヒドと前記芳香族アルコールとを縮合させることによりビスフェノールを生成させ、ビスフェノールが分散したスラリー反応液を得る工程
    第2工程:前記第1工程で得られたスラリー反応液又は前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を強酸性の状態で固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程
  2. 前記反応液が、第1の有機溶媒を含み、
    前記第1の有機溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び脂肪族アルコールからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のビスフェノールの製造法。
  3. 前記第2工程が、前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程であり、
    前記混合用溶媒が、第2の有機溶媒である請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造法。
  4. 前記第2工程が、前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程であり、
    前記混合用溶媒が、水である請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造法。
  5. 前記第2工程が、前記第1工程で得られたスラリー反応液と混合用溶媒とを混合したスラリー混合液を固液分離して、ビスフェノールを含む固形分を得る工程であり、
    前記混合用溶媒が、第2の有機溶媒及び水である請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造法。
  6. 前記第2の有機溶媒が、芳香族炭化水素である請求項3又は5に記載のビスフェノールの製造法。
  7. 前記酸触媒が、硫酸である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法。
  8. 前記芳香族アルコールが、メチルフェノールである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法。
  9. 前記ケトン又はアルデヒドが、アセトン又はシクロヘキサノンである請求項1乃至8のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート樹脂の製造法。
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