JP2020152650A - ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の方法で製造されたビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
そのため、品質の良いビスフェノールを得るためには、ビスフェノールを効率的に洗浄し、効率的に回収することが重要である。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[7]に存する。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明のビスフェノールの製造方法は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、塩化水素の存在下で縮合させてビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、該反応液と水を混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、該第1の水相を除去して該第1の有機相を得る第2工程とを有するビスフェノールの製造方法であって、該第2工程における該第1の水相の酸濃度が2.0mmol−NaOH/g以上、10.0mmol−NaOH/g以下であることを特徴とする。
即ち、本発明者らは、縮合反応を終了させる際の水相の酸濃度が、最終的に固体として得られるビスフェノールに与える影響について検討し、以下の知見を得た。
・塩化水素ガス又は塩酸を触媒に用いた場合、用いた触媒が設備を腐食させ、その腐食によって得られるビスフェノールの品質が悪化する。
・反応終了時に添加する水の量によって反応液の酸性度が異なり、反応液の酸性度によってビスフェノールの分解等の起こりやすさが異なるため、反応終了時の水相の酸濃度がビスフェノールの品質に影響を与えやすい。
・反応終了時の酸濃度が高い方が、腐食によって悪化したビスフェノールの品質を改善しやすい。
本発明はこのようなメカニズムに基づくものである。
第1工程は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、塩化水素の存在下で縮合させてビスフェノールを含む反応液を得る工程である。
ビスフェノールの原料として使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
また、芳香族アルコールとしては、R1〜R4がそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であるものが好ましく、より好ましくは、R1およびR4がそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であり、R2およびR3が水素原子である芳香族アルコールである。
ビスフェノールの原料として使用するケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造方法では、前記反応式(1)に従って、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとの縮合により、以下の一般式(4)で表されるビスフェノールが製造される。
ビスフェノールを含む反応液を得るために、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを縮合させる方法に特に制限はないが、例えば次のような方法が挙げられる。
(i)芳香族アルコールと塩化水素を含む混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを供給した後、所定の時間反応させる方法
(ii)芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドを含む混合溶液に、塩化水素を供給した後、所定の時間反応させる方法
本発明において、酸触媒として用いる塩化水素としては、塩化水素ガス、塩酸が挙げられる。この中でも塩化水素ガスが好ましい。
本発明においては、ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールとを縮合させる反応に、助触媒としてチオールを用いてもよい。
助触媒としてチオールを用いることで、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの製造において、24体の生成を抑え、44体の選択率を上げる効果と共に、ポリカーボネート樹脂製造時の重合活性を高め、得られるポリカーボネート樹脂の色調を良好なものとするという効果が得られる。このポリカーボネート樹脂製造時の重合活性の向上、得られるポリカーボネート樹脂の色調の改善効果が奏される理由の詳細は明らかではないが、チオールを用いることで、ポリカーボネート樹脂を製造する重合反応に対する阻害物の生成を抑制すると共に、色調悪化物の生成を抑制することができることによると推定される。
また、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液と、芳香族アルコールとの混合方法は、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液に芳香族アルコールを混合してもよく、芳香族アルコールにチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合してもよい。芳香族アルコールにチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合する方が好ましい。
本発明のビスフェノールの製造方法では、生成してくるビスフェノールを溶解ないし分散させるために通常有機溶媒を使用する。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害しない範囲で特に限定されないが、通常芳香族炭化水素が用いられる(ここで、基質となる芳香族アルコール、および、生成物であるビスフェノールは、有機溶媒から除かれる。)。
ビスフェノールの生成反応の反応時間は、長すぎると生成したビスフェノールが分解する場合があることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は通常2時間以上である。
第2工程は、第1工程で得られた反応液と水とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、第1の水相を除去して、第1の有機相を得る工程である。ここでは、第1の水相の酸濃度が2.0mmol−NaOH/g以上、10.0mmol−NaOH/g以下となるように水が供給される。
本発明に従って、第1の水相の酸濃度を、上記範囲内とすることで、液量の増加やビスフェノールの分解を抑え、また、ビスフェノールの品質を改善することができるので、本発明では、このような酸濃度となるような量の水を第1工程で得られた反応液に添加混合する。
本発明のビスフェノールの製造方法の一例を示すと、まず、第1工程では、反応器に芳香族アルコール、有機溶媒としての芳香族炭化水素及び塩化水素を供給して混合液を調製する。次に、混合液にケトン又はアルデヒドを供給し、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを縮合させることでビスフェノールを生成させ、ビスフェノールを含む反応液としてビスフェノールが分散したスラリーを得る。
なお、本発明のビスフェノールの製造方法は、回分反応により行うことができ、反応器は回分式反応器や半回分式反応器を用いることができる。
本発明のビスフェノールの製造方法は、第2工程で得られた第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有することが好ましい。第2工程で得られた第1の有機相を水で洗浄することで、第1の有機相に残存する酸濃度を更に低減できる。
供給する水の量が多い場合、液量が多くなることで撹拌効率が低下し、水洗効率が低くなる傾向がある。また、第1の水洗工程での液量が多くなれば、第2工程での液量増加を抑制した効果が小さくなる。一方、供給する水の量が少ない場合、水相の容積が小さくなり、撹拌効率が低下し、水洗効率が低くなる傾向がある。したがって、第1の有機相の量に対する水の質量比(水の質量/第1の有機相の質量)は、0.01以上が好ましく、0.05以上が更に好ましい。また、その上限は、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
第1の水洗工程である、第1の有機相を水で洗浄する工程は複数回行ってもよい。この場合は、上記の水の供給、洗浄、相分離、および水相の除去を繰り返し実施する。
本発明のビスフェノールの製造方法は、第2工程または第1の水洗工程の後に、得られた有機相を塩基性水溶液で洗浄するアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
このアルカリ洗浄工程は、第2工程の後に、第1の有機相と塩基性水溶液とを混合した後、有機相とpH9以上の水相とに相分離させ、相分離した水相を除去して有機相を得る工程であることが好ましい。或いは、第1の水洗工程の後に、第2工程で得られた第1の有機相を洗浄して得られた有機相と塩基性水溶液とを混合した後、有機相とpH9以上の水相とに相分離させ、相分離した水相を除去して有機相を得る工程であることが好ましい。
なお、アルカリ洗浄工程は、複数回行ってもよい。
本発明のビスフェノールの製造方法は、アルカリ洗浄工程後に得られた有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有することが好ましい。第2の水洗工程は、洗浄対象を、第1の有機相をアルカリ洗浄工程でアルカリ洗浄して得られた有機相とする以外は、第1の水洗工程と同様に行うことができる。ここで洗浄する有機相は、第2工程の後にアルカリ洗浄工程を行って得られたものであっても、第2工程の後に第1の水洗工程及びアルカリ洗浄工程を行って得られたものであってもよい。また、第2の水洗工程は複数回行ってもよい。
本発明のビスフェノールの製造方法は、晶析工程を有することが好ましい。晶析工程は、第2工程の後に行われるが、第2工程と晶析工程との間に別の工程を有していてもよい。
例えば、第2工程と晶析工程との間に、上記のアルカリ洗浄工程を有していてもよい。この場合、晶析工程は、アルカリ洗浄後相分離して得られた有機相を冷却し、ビスフェノールを析出させる工程とすることができる。上記の第1の水洗工程または第2の水洗工程の後に晶析工程を行う場合は、各工程の洗浄後相分離して得られた有機相を冷却し、ビスフェノールを析出させればよい。
また、有機相中の芳香族アルコール含有量が多い場合には、晶析前に蒸留により余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析してもよい。
ここで、直前水相の電気伝導度は、例えば相分離させた室温(20〜30℃)の直前水相について、電気伝導度計で測定することができる。
本発明のビスフェノールの製造方法は、例えば、第1工程と、第2工程と、第1の水洗工程と、アルカリ洗浄工程と、第2の水洗工程と、晶析工程とを有する製造方法とすることができる。また、本発明のビスフェノールの製造方法は、第1工程と、第2工程と、アルカリ洗浄工程と、第2の水洗工程と、晶析工程とを有する製造方法とすることができる。
以下に本発明のビスフェノールの製造方法で製造したビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称す場合がある。)の好適物性について説明する。
ビスフェノールのメタノール溶解色は、常温におけるビスフェノールの色調を評価することに用いられる。ビスフェノールのメタノール溶解色のハーゼン色数が低いほど、ビスフェノールの色調が良好(白色に近い)であることを示す。ビスフェノールのメタノール溶解色を悪化させる原因としては、有機着色成分や金属の混入が挙げられる。
ビスフェノールのメタノール溶解色は、ビスフェノールをメタノールに溶解させて、均一溶液とした後、室温(約20℃)で測定する。測定方法は、ハーゼン色数の標準液と目視で比較する方法、又は日本電色工業社製「SE6000」などの色差計を用い、そのハーゼン色数を測定する方法が挙げられる。ここで使用する溶媒メタノール、ビスフェノールと溶媒の質量比は、ビスフェノールの種類により適宜選択することが好ましい。
ビスフェノールのメタノール溶解色のハーゼン色数は、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、特に好ましくは5以下である。
ビスフェノールの溶融色差は、ポリカーボネートの重合温度に近い温度でのビスフェノールの色調を評価することに用いられる。溶融色差の測定温度は、ビスフェノールの融点+50℃である。ビスフェノールの溶融色差はハーゼン色数が低いほど、ビスフェノールの色調が良好(白色に近い)であることを示す。ビスフェノールの溶融色差を悪化させる原因としては、有機着色成分や金属の混入の他に、加熱によって着色する成分が挙げられる。
ビスフェノールの溶融色差は、重合温度に近い温度でビスフェノールを溶融させ、予めその温度が安定した時間で測定する。測定方法は、ハーゼン色数の標準液と目視で比較する方法、又は日本電色工業社製「SE6000」などの色差計を用い、そのハーゼン色数を測定する方法が挙げられる。
このハーゼン色数は、好ましくは40以下であり、より好ましきは30以下であり、特に好ましくは20以下である。
ビスフェノールの熱色調安定性は、ビスフェノールの溶融色差同様、ポリカーボネートの重合温度に近い温度で所定の時間保持させ、ビスフェノールの色調の熱安定性を評価することに用いられる。ビスフェノールの熱色調安定性の測定温度は、ビスフェノールの融点+50℃である。
ビスフェノールの熱色調安定性はハーゼン色数が低いほど、ビスフェノールの熱色調安定性が良好であることを示す。ビスフェノールの熱色調安定性を悪化させる原因としては、有機着色成分や金属の混入の他に、加熱によって着色する成分やその濃度が数ppm程度の酸性物質や塩基性物質が挙げられる。
ビスフェノールの熱色調安定性は、重合温度に近い温度でビスフェノールを溶融させ、予めその温度が安定した時間で測定する。ビスフェノールの熱色調安定性の保持時間は、4時間である。測定方法は、ハーゼン色数の標準液と目視で比較する方法、又は日本電色工業社製「SE6000」などの色差計を用い、そのハーゼン色数を測定する方法が挙げられる。
このハーゼン色数は、好ましくは50以下であり、より好ましくは45以下であり、特に好ましくは35以下である。
ビスフェノールの熱分解安定性は、ビスフェノールの熱色調安定性と同様、ポリカーボネートの重合温度に近い温度で所定の時間保持させ、ビスフェノールの熱安定性を評価することに用いられる。ビスフェノールの熱分解安定性の好ましい測定温度は、ビスフェノールの融点+50℃である。ビスフェノールの熱分解安定性は分解物の生成量が少ないほど、ビスフェノールが安定であることを示す。ビスフェノールの熱分解安定性における分解物は、ビスフェノールの種類にもよるが、該ビスフェノールの原料である芳香族アルコール、又は、該芳香族アルコールと原料であるケトン又はアルデヒドの付加物が挙げられる。ビスフェノールの熱分解安定性を悪化させる原因としては、有機着色成分や金属の混入の他に、加熱によって着色する成分やその濃度が数ppm程度の酸性物質や塩基性物質が挙げられる。
ビスフェノールの分解物の検出及び定量は、標準的な高速分析用逆相カラムを用いて、行うことが可能である。
ビスフェノールの分解物として後述の実施例で測定されるイソプロペニルクレゾールの生成量は200質量ppm以下であることが好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂の製造方法の1つである溶融重合法においては、高温で重合反応を行うことから、溶融時のビスフェノールの色調(ビスフェノールの溶融色差)、溶融状態でのビスフェノールの色調安定性(ビスフェノールの熱色調安定性)が重要である。
更に、該溶融重合法において、高温でビスフェノールを溶融させた状態で重合反応開始まで保持させる。該溶融重合方法において、ビスフェノールが高温で分解する場合、炭酸ジフェニルとの物質量比が所定の物質量比から乖離し、重合反応活性や所定の分子量を持つポリカーボネート樹脂を得ることが困難となる。したがって、熱分解に対する耐性(ビスフェノールの熱分解安定性)が重要である。
特に、所定の分子量を有し、色調の良いポリカーボネート樹脂を製造するためには、ビスフェノールのメタノール溶解色、ビスフェノールの溶融色差、ビスフェノールの熱色調安定性、ビスフェノールの熱分解安定性が重要となる。
本発明のビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
本発明のビスフェノールの用途として、ポリカーボネート樹脂の製造原料がある。
本発明のビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法は、上述の方法により製造されたビスフェノールと、炭酸ジフェニル等とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる製造方法である。
なお、本発明のビスフェノールは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いて共重合ポリカーボネート樹脂を製造してもよい。また、本発明のビスフェノール以外のジヒドロキシ化合物を併用して反応させることもできる。
上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
以下の実施例および比較例において、オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、ドデカンチオール、アセトン、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、0.1モル/L及び1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液は、富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
塩化水素ガスは、住友精化株式会社の製品を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
<ビスフェノールC生成反応液の組成>
ビスフェノールC生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製「LC−2010A」
Imtakt ScherzoSM−C18 3μm 250mm×3.0mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル:脱塩水=1.500g:1mL:900mL:150mLの溶液
・分析時間0分では溶離液組成はA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0〜41.67分はA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間41.67〜50分はA液:B液=10:90に維持、
流速0.34mL/分にて分析した。
イソプロペニルクレゾールの同定は、ガスクロマト質量計を用いて、以下の手順と条件で行った。
・装置:アジレント・テクノロジー社製「Agilent6890」
・カラム:アジレント・テクノロジー社製「DB−1MS」(内径0.25mm×30m×0.25μm)
・キャリアーガス:ヘリウム
流量:毎分1cm3
・注入口温度:280℃
・トランスファー温度:250℃
・イオンソース温度:250℃
・カラムの昇温パターン:先ず50℃で3分間保持させた後に毎分10℃で320℃まで昇温させ、280℃で5分間保持
酸濃度測定は、電位差自動滴定装置を用いて以下の装置及び条件で実施した。
・装置:京都電子工業株式会社製「AT−610」
・滴定液:測定する酸濃度に応じて、容量分析用0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液、又は定量分析用1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METER ES−73」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D−71」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
ビスフェノールCのメタノール溶解色は、日電理化硝子社製試験管「P−24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールC10g及びメタノール10gを入れて、均一溶液とした後、室温(約20℃)で、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
ビスフェノールCの溶融色差は、日電理化硝子社製試験管「P−24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールCを20g入れて、190℃で30分間溶融させ、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
ビスフェノールCの熱色調安定性は、日電理化硝子社製試験管「P−24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールCを20g入れ、190℃で5時間溶融させ、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。。
ビスフェノールCの熱分解安定性は、日電理化硝子社製試験管「P−24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールCを20g入れ、190℃で2時間溶融させ、前記ビスフェノールC生成反応液の組成分析と同様に実施し、イソプロペニルクレゾールの生成量を測定した。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計「CM−5」を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラス「CM−A212」を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス「CM−A124」をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板「CM−A210」を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。
YIは、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
撹拌子、温度計、蒸留装置を備えた500ミリリットルのナス型フラスコに、ビスフェノールC85gと水酸化ナトリウム4.5gを入れ、195℃に加熱したオイルバスに浸漬した。ナス型フラスコ内のビスフェノールCが溶融したことを確認した後、真空ポンプを用いて徐々にフラスコ内を減圧していき、フル真空にした。しばらくすると蒸発が始まり、留出が収まるまで、減圧蒸留を実施した。得られた留分は、質量計検出器を備えたガスクロマトグラフィーにより、ビスフェノールCが熱分解して生成したクレゾールとイソプロペニルクレゾールの混合物であることが分かった。得られた留分を用いて、ビスフェノールC生成反応液の組成分析条件におけるイソプロペニルクレゾールの保持時間を確認した。
(1)第1工程
(1−1)混合液の調製
塩化水素吹き込み管、温度計、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でオルトクレゾール510g(4.7モル)、アセトン104g(1.8モル)、トルエン100g及びドデカンチオール10gを入れ、内温30℃にし、混合液を調製した。
前記混合液に、塩化水素ガスをゆっくりバブリングさせた後、10時間反応させて反応液を得た。
得られた反応液に、トルエン720g及び脱塩水500gを加えた後、撹拌しながら、内温を80℃まで昇温した。内温が80℃に到達した後、静置し、第1の有機相と第1の水相に分離し、第1の有機相を得た。
なお、第1の水相を抜き出し、酸濃度を測定したところ、2.1mmol−NaOH/gであった。
得られた第1の有機相1400gに脱塩水250gを加え、内温が80℃に到達した後、静置し、第2の有機相と第2の水相とに分離し、第2の水相を抜き出すことで、第2の有機相を得た。
得られた第2の有機相1400gに、10質量%炭酸水素ナトリウム水溶液を300g加え、混合しながら内温が80℃に到達した後、静置し、下層の第3の水相(炭酸水素ナトリウム水溶液相)のpHが9以上になったことを確認した。その後、上層の第3の有機相と第3の水相とを相分離させて、第3の水相を抜き出し、第3の有機相を得た。
得られた第3の有機相を80℃から10℃まで冷却して、10℃到達後、遠心分離(分速2500回転、10分間)を用いて固液分離を行ない、第1のウエットケーキを得た。得られた第1のウェットケーキをビーカーに移し、そこにトルエン500gを加えて、懸濁洗浄を行なった。得られたスラリー液を再び遠心分離(分速2500回転、10分間)を用いて固液分離を行ない、第2のウェットケーキ415gを得た。
実施例1において、(2)第2工程において、(1)第1工程で得られた反応液に添加するものを、トルエン720g及び脱塩水500gから、トルエン720g及び脱塩水300gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。第1の水相を抜き出し、酸濃度を測定したところ、3.1mmol−NaOH/gであった。
実施例1において、(2)第2工程において、(1)第1工程で得られた反応液に添加するものを、トルエン720g及び脱塩水500gから、トルエン720g及び脱塩水200gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。第1の水相を抜き出し、酸濃度を測定したところ、4.4mmol−NaOH/gであった。
実施例1において、(2)第2工程において、(1)第1工程で得られた反応液に添加するものを、トルエン720g及び脱塩水500gから、トルエン720g及び脱塩水1000gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。第1の水相を抜き出し、酸濃度を測定したところ、1.4mmol−NaOH/gであった。
表1より、第1の水相の酸濃度を上げることで、ビスフェノールCのメタノール溶解色、溶融色差、及び熱色調安定性が改善されることが分かる。また、第1の水相の酸濃度を上げることで、イソプロペニルクレゾールの生成量が低減することから、ビスフェノールの熱分解が抑制されることも分かる。
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例1で得られたビスフェノールC100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
実施例4において、実施例1で得られたビスフェノールCの代わりに、比較例1で得られたビスフェノールCを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は210分であった。また、得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24700であり、ペレットYIは16であった。
表2より、ビスフェノール製造時の第1の水相の酸濃度を上げることで、得られるポリカーボネート樹脂のペレットYIが改善することが分かる。
なお、実施例4では、第1の水相の酸濃度が2.1mmol−NaOH/gのビスフェノールCを用いているが、この酸濃度が更に高く、メタノール溶解色、溶融色差、熱色調安定性、熱分解安定性がより優れた実施例2,3のビスフェノールCを用いることで、よりペレットYIの低いポリカーボネート樹脂を得ることができると考えられる。
Claims (7)
- ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、塩化水素の存在下で縮合させてビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
該反応液と水を混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、該第1の水相を除去して該第1の有機相を得る第2工程
とを有するビスフェノールの製造方法であって、
該第2工程における該第1の水相の酸濃度が2.0mmol−NaOH/g以上、10.0mmol−NaOH/g以下であるビスフェノールの製造方法。 - 前記第2工程において、前記反応液と水との混合液の温度を、前記第1工程の反応温度より高い温度とする請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記第1の有機相を水で洗浄する水洗工程を有する請求項1または2に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記第1の有機相または前記水洗工程における洗浄後の有機相に塩基性水溶液を混合した後、有機相とpH9以上の水相とに相分離させ、該pH9以上の水相を除去して該pH9以上の水相から相分離された有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記アルカリ洗浄工程で得られた前記有機相を水で洗浄する水洗工程を有する請求項4に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記ビスフェノールが、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンである請求項1〜5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法で製造したビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法。
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