JP2023006820A - ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023006820A
JP2023006820A JP2021109638A JP2021109638A JP2023006820A JP 2023006820 A JP2023006820 A JP 2023006820A JP 2021109638 A JP2021109638 A JP 2021109638A JP 2021109638 A JP2021109638 A JP 2021109638A JP 2023006820 A JP2023006820 A JP 2023006820A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bisphenol
ketone
reaction
producing
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021109638A
Other languages
English (en)
Inventor
馨 内山
Kaoru Uchiyama
幸恵 中嶋
Yukie Nakajima
未沙紀 梅野
Misaki Umeno
諒之 和泉
Masayuki Izumi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2021109638A priority Critical patent/JP2023006820A/ja
Publication of JP2023006820A publication Critical patent/JP2023006820A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Abstract

【課題】溶融色の良好なビスフェノールを製造する方法を提供する。また、このビスフェノールを用い、色調に優れたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。【解決手段】アルデヒドを含むケトンと還元剤とを混合し、前記アルデヒドの少なくとも一部を還元する還元工程、及び前記還元工程を経た前記ケトンと芳香族アルコールとを塩化水素の存在下で反応させる反応工程を含む、ビスフェノールの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明はビスフェノールの製造方法に関するものである。また、本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1及び2参照)。
特開昭62-138443号公報 特開2008-214248号公報
ビスフェノールの代表的な用途であるポリカーボネート樹脂は、無色かつ透明であることが求められる。ポリカーボネート樹脂の色調は、原料の色調の影響を大きく受ける。そのため、原料であるビスフェノールの色調も、無色であることが求められる。ここで、ビスフェノール粉末の色を直接定量することは困難であることから、溶媒に溶解した際の色調をビスフェノールの色調とすることがある。一方、ポリカーボネート樹脂の製造方法の中でも、特に溶融法は、ビスフェノールを高温にさらすことによって溶融させる工程を含む。そのため、ビスフェノールの色調は、熱的な安定性も求められる。なお、本明細書では、溶融した状態の色調を「溶融色」と称する。
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであって、溶融色の良好なビスフェノールを製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このビスフェノールを用いた、色調に優れたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、予め還元剤を作用させたケトンと芳香族アルコールとを接触させることで、溶融色の良好なビスフェノールを製造できることを見出した。また、このビスフェノールを用いることで、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[7]に存する。
[1]
アルデヒドを含むケトンと還元剤とを混合し、前記アルデヒドの少なくとも一部を還元する還元工程、及び
前記還元工程を経た前記ケトンと芳香族アルコールとを塩化水素の存在下で反応させる反応工程を含む、ビスフェノールの製造方法。
[2]
前記還元剤がチオールである、[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3]
前記チオールが、前記チオールの金属塩を塩酸で中和して得られたものである、[2]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4]
前記還元工程前の前記ケトン中の前記アルデヒドの含有量が、0質量ppm超5.0×10質量ppm以下である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[5]
前記アルデヒドがアセトアルデヒドであり、前記ケトンがアセトンである、[1]乃至[4]のいずれかに記載のビスフェノ―ルの製造方法
[6]
前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンである、[1]乃至[5]のいずれかに記載のビスフェノ―ルの製造方法。
[7]
[1]乃至[6]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法により製造されたビスフェノール用いてポリカーボネート樹脂を製造する工程を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明に係る製造方法によれば、予め還元剤を作用させたケトンと芳香族アルコールとを接触させることで、溶融色が良好なビスフェノールを提供することができる。また、このビスフェノールを用いた、色調に優れたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
1.ビスフェノールの製造方法
本発明の第1の実施形態は、アルデヒドを含むケトンと還元剤とを混合し、前記アルデヒドの少なくとも一部を還元する還元工程、及び前記還元工程を経た前記ケトンと芳香族アルコールとを塩化水素の存在下で反応させる反応工程を含むビスフェノールの製造方法である。かかる製造方法により、溶融色の良好なビスフェノールを製造することができる。
1-1.還元工程
本実施形態における還元工程は、アルデヒドを含むケトンと還元剤とを混合し、アルデヒドの少なくとも一部を還元する工程である。
後述する実施例に示されるように、工業的に製造されるケトンは、通常、アルデヒドを不可避的に含んでいる。すなわち、本明細書における「アルデヒドを含むケトン」には、市販のケトン製品のような工業的に製造されたケトン、公知の製造方法に準じて実験室スケールで製造されたケトン等を含む概念である。この他、「アルデヒドを含むケトン」は、ケトンに意図的にアルデヒドを添加したものであってもよい。
本発明者らは、鋭意検討の結果、ケトン中のアルデヒド、及び/又はこのアルデヒドが芳香族アルコールと反応して生成するビスフェノールが、色調悪化の原因となることを見出した。そこで、ケトンと芳香族アルコールとの反応に先立って、アルデヒド量を低減せしめ、色調悪化の原因物質の量を低減したり、生成を抑制したりすることで、溶融色の良好なビスフェノールが得られると考えた。しかるに、還元工程は、アルデヒドを含むケトンに還元剤を作用させ、アルデヒドをアルコールに還元することで、アルデヒド量を低減することを目的とした工程である。
したがって、反応工程で還元されるアルデヒドは、ケトン中に含まれるアルデヒドの10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、全量であることが最も好ましい。アルデヒドの還元量は、還元工程前後のケトン中の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定し、算出することができる。
以下、本工程に用いられる各試薬、操作手順、及び反応条件について説明する。
(ケトン)
ケトンは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2023006820000001
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、RとRとが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されたシクロアルキリデン基である。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノン等のジアルキルケトン類;フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトン等のアリールアルキルケトン類;シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン等の環状アルカンケトン類;等が挙げられる。これらのうち、ケトンは、ジアルキルケトン類であることが好ましく、アセトンであることがより好ましい。ケトンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(アルデヒド)
ケトンは、1種以上のアルデヒドを含有する。ケトンには、当該ケトンに由来するアルデヒドが不可避的に含まれるが、その他のアルデヒドを含有していてもよい。アルデヒドは、上記一般式(1)において、R及びRが、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基であり、一方が水素原子である化合物を挙げることができる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基であってよく、炭素数1~6のアルキル基であってよい。
アルデヒドとして、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なお、例えばケトンがアセトンである場合、アルデヒドとしては、通常、アセトン由来のアセトアルデヒド及び/又はプロピレンアルデヒドが含まれる。
還元工程に供するケトン中のアルデヒドの含有量は、特に限定されないが、通常0質量ppm超であり、5質量ppm以上、10質量ppm以上、20質量ppm以上、25質量ppm以上、又は25質量ppm超であってもよい。また、還元工程に供するケトン中のアルデヒドの含有量の上限は、通常5.0×10質量ppm以下、好ましくは5.0×10質量ppm以下、より好ましくは5.0×10質量ppm以下、さらに好ましくは5.0×10質量ppm以下である。上述したように、アルデヒドは着色を招く物質であるため、還元工程でアルデヒド量を低減することを考慮しても、溶融色の良好なビスフェノールを製造するためにはケトン中のアルデヒドの含有量は少ない方が好ましく、すなわち、上記範囲内であることが好ましい。
ケトン中のアルデヒドの含有量は、後述する実施例に示されるように、ガスクロマトグラフィーにより定量される。
(還元剤)
還元工程において用いられる還元剤は、ケトンに含まれるアルデヒドの一部又は全部を還元することができ、かつ、ケトンを還元しないものであれば、特に制限されない。このような還元剤としては、チオール、シュウ酸、ギ酸、次亜リン酸塩、亜硫酸塩等が挙げられる。しかるに、本実施形態においては、還元剤としてチオール、シュウ酸、ギ酸等を選択すれば、例えば特許文献2で用いられる次亜リン酸ナトリウムのような強力な無機還元剤を用いることなく目的のビスフェノールの着色を抑制することが可能となる。また、上述した還元剤のうち、チオールは後述する反応工程において助触媒としても機能し得るため、必ずしも反応工程前に還元反応に使用されずに残ったチオールを除去することを要しない。そのため、還元剤としては、ビスフェノールの色調改善だけでなく、作業効率及び反応工程における反応効率の観点からも、チオールを用いることが好ましい。
チオールとしては、メタンチオール、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、1,1-ジメチルエタンチオール、1-ペンタンチオール、1-ヘキサンチオール、1-へプタンチオール、1-オクタンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-トリデカンチオール、1-テトラデカンチオール、1-ペンタデカンチオール等のアルカンチオール;シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール等のシクロアルカンチオール;等が挙げられる。これらのうち、チオールは、アルカンチオールであることが好ましく、炭素数1~20のアルカンチオールであることがより好ましく、炭素数1~12のアルカンチオールであることがさらに好ましい。チオールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
チオールは、市販品であってもよく、公知の方法に準じて製造されたものであってもよい。後者のチオールとしては、例えば、チオールの金属塩を塩酸で中和して得られたものが挙げられる。チオールの金属塩としては、上述のチオールのアルカリ金属塩が好適に挙げられる。
次亜リン酸塩としては、次亜リン酸ナトリウム 、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸アンモニウム等が挙げられる。
また、亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
反応工程における還元剤の使用量は、ケトン中のアルデヒドの一部又は全部をアルコールにし得る限り特に限定されず、アルデヒドの種類、還元剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。具体的には、還元剤の使用量は、アルデヒドに対する還元剤の質量比が通常500以上、好ましくは800以上、より好ましくは1000以上、また、通常5000以
下、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下である。還元剤の使用量を上記下限以上とすることにより、アルデヒド量が十分に低減され、溶融色の良好なビスフェノールを得ることができる。また、還元剤の使用量が上記上限以下であれば、還元反応に使用されずに残った還元剤を反応混合物から除去することなく、反応混合物をそのまま反応工程に供することが可能となるため、製造コスト及び作業効率上のメリットが得られる。
なお、本明細書において、「使用量」、「質量比」、「モル比」等は、その算出に用いられる各成分が2種以上使用される場合、その総量を用いて算出された値であるものとする。
(操作手順及び反応条件)
アルデヒドを含むケトンと還元剤との混合方法は、特に限定されず、公知の方法、例えば撹拌子、撹拌翼等の撹拌手段を備えた反応器にこれらを入れ、撹拌する方法により行うことができる。
還元工程における反応温度は、特に限定されないが、アルデヒド量を十分低減する観点から、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃であり、また、ケトン及びチオールの揮発を抑制する観点から、通常50℃以下、好ましくは40度以下である。
また、還元工程における反応時間は、ケトン中のアルデヒドの少なくとも一部が還元される限り特に限定されず、アルデヒドの種類、還元剤の種類、反応温度等に応じて適宜選択すればよい。具体的には、反応時間は、通常10分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、また、通常24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
ここで、還元剤として、チオールの金属塩を塩酸で中和して得たチオールを用いる場合、予めチオールの金属塩を塩酸で中和して製造したチオールを、上述した手順によりアルデヒドを含むケトンと混合してもよく、また、アルデヒドを含むケトン、チオールの金属塩、及び塩酸を混合することで還元工程を行ってもよい。後者の場合、アルデヒドを含むケトンを含有する混合液中で、チオールの金属塩が塩酸で中和されてチオールが生成し、アルデヒドを含むケトンとチオールとが混合されることとなる。このとき、チオールの金属塩からのチオールの生成は、化学量論的に速やかに進行するため、上述したチオールの使用量の範囲は、そのままチオールの金属塩の使用量として適用することができる。また、反応条件としては、上述の反応条件を適用することができる。
1-2.反応工程
本実施形態における反応工程は、還元工程を経たケトンと芳香族アルコールとを塩化水素の存在下で反応させ、ビスフェノールを生成させる工程である。
製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
Figure 2023006820000002
~Rとしては、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキ
シ基、アリール基、及びアミノ基から選択される。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換又は無置換のいずれであってもよい。また、アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖、分枝及び環状のいずれでもよい。R~Rの具体例としては、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基等が挙げられる。
これらのうちRとRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
とRは、上記一般式(1)のR及びRにおけるものと同義である。
上記一般式(2)で表される化合物として、具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも、好適なビスフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)又は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンであり、特に好ましくは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)である。
(芳香族アルコール)
ビスフェノールの製造に用いられる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
Figure 2023006820000003
一般式(3)において、R~Rは、上記一般式(2)のR~Rにおけるものと同義である。
とRは立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから水素原子であることが好ましい。また、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。例えば好適なものとして、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R及びRが、水素原子である化合物が挙げられる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基や炭素数1~6のアルキル基であってよい。
上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、ベンジルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられる。これらのうち、芳香族アルコールは、キシレノール以外のものであることが好ましく、フェノール及びクレゾールから選択されることがより好ましく、クレゾールであることがさらに好ましい。
芳香族アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
芳香族アルコールとケトンを縮合させる反応において、ケトンに対する芳香族アルコールのモル比(芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)は、少ないとケトンが多量体化してしまうが、多いと芳香族アルコールを未反応のまま損失するため経済的ではなくなる。したがって、ケトンに対する芳香族アルコールのモル比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは2.0以上である。また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
(塩化水素)
本実施形態における反応工程では、ケトンと芳香族アルコールとの縮合反応の触媒として、塩化水素が用いられる。塩化水素は、水溶液の態様(塩酸)で反応系に添加してもよく、塩化水素ガスの態様でバブリング等により反応系に導入してもよい。
塩化水素を塩化水素ガス以外の態様で用いる場合、ケトンに対する塩化水素のモル比(塩化水素のモル数/ケトンのモル数)は、少ないと縮合反応の進行とともに副生する水によって塩化水素が希釈されて反応に時間を要する。また、多いとケトンの多量体化が進行したり、生成したビスフェノールが分解したりする場合がある。これらのことから、縮合反応に用いるケトンに対する塩化水素のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
(チオール)
反応工程において、ケトンと芳香族アルコールとを縮合させる際に、助触媒としてチオールを用いてもよい。
助触媒としてチオールを用いることで、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの製造において、2,4’体(2-(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン)の生成を抑え、4,4’体(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン)の選択率を上げる効果と共に、ポリカーボネート樹脂製造時の重合活性を高めるという効果が得られる。このポリカーボネート樹脂製造時の重合活性の向上効果が奏される理由としては、チオールを用いることで、ポリカーボネート樹脂を製造する重合反応に対する阻害物の生
成が抑制されるためであると推定される。なお、上述したように、還元工程で還元剤として用いられるチオールは、反応工程における助触媒としても機能し得る。そのため、還元工程で還元剤としてチオールを用いる場合は、反応工程において反応系内にチオールを加えなくても、還元反応に使用されずに残ったチオールにより上記重合活性向上効果を得ることができる。
助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸等のメルカプトカルボン酸;メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン等のアルキルチオール;メルカプトフェノール等のアリールチオール;等が挙げられる。チオールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
縮合反応に用いるケトンに対するチオールのモル比(チオールのモル数/ケトンのモル数)は、少ないとチオールを用いることによるビスフェノールの反応選択性改善の効果が得られず、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトンに対するチオールのモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
(有機溶媒)
ビスフェノールの製造では、生成するビスフェノールを溶解ないし分散させるため、また、ビスフェノールを洗浄及び精製するために有機溶媒を使用することが出来る。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害せず、ビスフェノールを溶解した際に副反応を起こさないものなら特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられる。ここで、基質となる芳香族アルコール、ケトン、助触媒のチオール、及び、生成物であるビスフェノールは、有機溶媒から除かれる。ビスフェノールの生成反応には使用せず、洗浄及び精製する際に供給する溶媒はこの限りではなく、芳香族アルコールやケトンを溶媒として用いることもできる。有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用して用いてもよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。芳香族炭化水素は、ビスフェノールの製造に使用した後、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。芳香族炭化水素を再利用する場合は、沸点が低いものが好ましい。好ましい芳香族炭化水素のひとつは、トルエンである。
脂肪族アルコールは、アルキル基とヒドロキシ基が結合したアルキルアルコールである。脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシ基が結合した1価の脂肪族アルコールでもよく、アルキル基と2個以上のヒドロキシ基が結合した多価の脂肪族アルコールであってもよい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分枝していてもよく、無置換であっても、アルキル基の炭素原子の一部が酸素原子によって置換されていてもよい。
脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシ基が結合したアルコールであることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基と1個のヒドロキシ基が結合したアルコールであることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基と1個のヒドロキシ基が結合したア
ルコールであることが更に好ましい。
具体的な脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール等を挙げることができる。好ましい脂肪族アルコールのひとつは、メタノールである。
脂肪族炭化水素としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの炭素数5~18の直鎖状炭化水素、イソオクタン等の炭素数5~18の分枝鎖状炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン等の炭素数5~18の環状炭化水素;等が挙げられる。
縮合反応に用いるケトンに対する有機溶媒の質量比(有機溶媒の質量/ケトンの質量)は、多すぎると、ケトンと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、ケトンの多量体化が促進され、生成してくるビスフェノールが固化する場合がある。これらのことから、仕込み時のケトンに対する有機溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。また、その上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
なお、有機溶媒は、分割して供給してもよく、分割して供給する場合は、ケトンに対する、反応液の調製に用いられる有機溶媒の合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
生成するビスフェノールを有機溶媒に完全に溶解させずに分散させた方が、副反応を抑制でき、ビスフェノールが分解しにくい。また、反応終了後、反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時の濾液への損失)を低減できることからも、室温におけるビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。室温におけるビスフェノールの溶解度が低い有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、有機溶媒は、芳香族炭化水素を主成分として含むことが好ましい。なお、本明細書において、「室温」とは15~35℃の温度範囲を意味する。
ビスフェノールを生成する工程や洗浄する工程などで用いる場合、操作温度よりも沸点が高いものを選択する必要がある。また、ビスフェノールを溶解させ、油相と水相とに2相分離させた状態で洗浄する場合、疎水性が高く、相分離が容易であることが好ましい。
(操作手順)
反応工程における反応液の調製方法は、特に限定されず、芳香族アルコール、塩化水素、並びに必要に応じてチオール、有機溶媒等を撹拌子、撹拌翼等の撹拌手段を備えた反応器中で撹拌し、得られた混合液に還元工程を経たケトンを供給する方法;還元工程を経たケトン、芳香族アルコール、及び有機溶媒を混合し、その後さらに塩化水素を混合する方法;等が挙げられる。
また、低温で原料を全て混合した後、ビスフェノールを生成する反応が起こる温度まで徐々に昇温して反応を調整してもよい。
(反応条件)
ビスフェノールの生成反応の反応温度は、製造するビスフェノールの種類や製造スケール等に応じて適宜調整されるものであるが、-30℃~100℃が好ましい。ビスフェノールの生成反応は縮合反応であり、水が副生するため、水の沸点以下であることが好ましい。95℃以下、90℃以下の順でより好ましい。また、反応温度が低すぎると反応に要する時間が長時間化することから、-20℃以上、-15℃以上、-5℃以上、0℃以上の順でより好ましい。
生成反応の反応時間は、製造するビスフェノールの種類や反応温度、製造スケール等に応じて適宜調整されるものであるが、通常0.5時間~500時間である。生成反応の反応時間は、400時間以下や350時間以下としてもよいが、長すぎると生成したビスフェノールが分解することから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。
生成反応の反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧とすることができる。また、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、窒素、二酸化炭素、アルゴン雰囲気下等が挙げられる。
1-3.精製工程
本実施形態に係る製造方法は、反応工程で生成したビスフェノールをさらに精製する生成工程を含んでいてもよい。精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水、食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
晶析は複数回行ってもよい。しかし、晶析の際にビスフェノールが一部母液に溶解し損失となるため、好ましくは5回以下であり、より好ましくは3回以下である。
析出したビスフェノールは、芳香族炭化水素等を洗浄溶媒として用いて懸濁洗浄を行ったり、乾燥を行ったりしてもてよい。乾燥の方法は減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができ、例えば、50~120℃で、2~15時間乾燥させることができる。
1-4.ビスフェノールの用途
ビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることから、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
2.ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明の第2の実施形態は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネート樹脂を製造する工程を含むポリカーボネートの製造方法である。ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。
なお、ポリカーボネート樹脂の製造にはビスフェノールを1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。2種以上のビスフェノールを用いることで、共重合ポリカーボネート樹脂を製造することができる。また、上記ビスフェノー
ル以外のジヒドロキシ化合物を併用して反応させることもできる。
上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上である。また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、ビスフェノール及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
触媒の使用量は、ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上である。また、その上限は、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分枝化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
上記ビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造において、重合反応温度は80~400℃、特に150~350℃とすることが好ましい。また、重合時間は、原料の比率や、所望とするポリカーボネート樹脂の分子量等によって適宜調整されるが、重合時間が長いと色調悪化などの品質悪化が顕在化するため、10時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。重合時間の下限は、通常0.1時間以上、或いは0.3時間以上である。
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
以下の実施例及び比較例において、オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、35質量%塩酸、ドデカンチオール、試薬アセトン、アセトアルデヒド、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、アセトニトリル、酢酸、酢酸アンモニウム、ビスフェノールCは、富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液は、東京化成工業株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
[分析方法]
<ケトン中のアルデヒド量の測定>
ケトン中のアルデヒドの分析は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:株式会社島津製作所製「GC-2014」
・カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製「DB-FFAP」,内径0.53mm,長さ60m,膜厚1.0μm
・検出方法:FID
・気化室温度:150℃
・検出器温度:240℃
・分析時間0分から8分では、カラム温度を40℃に保ち、分析時間8~40分は毎分5℃でカラム温度を240℃まで徐々に昇温し、分析時間40分から50分はカラム温度を240℃に維持した。
・定量法:トルエンを内部標準とした内部標準方法
<ビスフェノールの組成分析>
ビスフェノールの組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:株式会社島津製作所製「LC-2010A」
・カラム:インタクト株式会社製「Scherzo SM-C18」,内径3μm,長さ250mm,3.0mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル:脱塩水=1.500g:1mL:900mL:150mLの溶液
・分析時間0分では、溶離液組成はA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~41.67分はA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間41.67~50分はA液:B液=10:90に維持、
流速0.34mL/分にて分析した。
<pHの測定>
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METER ES-73」を用いて、液温25℃で行った。
<電気伝導度>
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D-71」を用いて、液温25℃で行った。
<ビスフェノールの溶融色>
ビスフェノールの溶融色は、日電理化硝子株式会社製試験管「P-24」(24mmφ×200mm)にビスフェノールを20g入れて、190℃で30分間溶融させ、日本電色工業株式会社製分光色差計「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定することにより評価した。
<粘度平均分子量>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
<ペレットYI>
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタジャパン株式会社製分光測色計「CM-5」を用い、測定条件は測定径30mm、SCE(正反射光除去)を選択した。
シャーレ測定用校正ガラス「CM-A212」を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス「CM-A124」をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板「CM-A210」を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
ペレットYIは、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定した。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を評価に用いた。
<実施例1>
(1-1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン5g及びオルトクレゾール230gを入れ、内温を30℃に維持しつつ、撹拌しながら35質量%塩酸210gを入れ、混合液A1とした。
次に、還元工程を行った。具体的には、三角フラスコにドデカンチオール2g及びアセトン65gを入れ、25℃で1時間撹拌することで混合液B1を調製した。得られた混合液B1は、滴下ロートに入れた。
続いて、反応工程を行った。具体的には、混合液A1を25℃に維持した状態で撹拌しながら、該滴下ロート内の混合液B1を1時間かけて混合液A1へ滴下し、反応液を30℃に維持した状態で更に2時間撹拌することでビスフェノールCを含む反応混合物C1を得た。
ビスフェノールCを含む反応混合物C1に25%水酸化ナトリウム溶液290gとトルエン250gとを加えて撹拌しながら75℃まで昇温した後、脱塩水を入れることで中和により生成した塩化ナトリウムの溶け残りを完全に溶解させた。得られた混合液を静置して油水分離した後、水相をセパラブルフラスコから除去し、有機相D1を得た。
75℃に維持した有機相D1に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌することで中和した。得られた混合液を静置して油水分離した後、水相をセパラブルフラスコから除去し、有機相E1を得た。
有機相E1を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた後、減圧濾過により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ220gを得た。
温度計、ジャケット、及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下得られたビスフェノールC含有ケーキ220g、脱塩水100g及びトルエン420gを室温で入れ、75℃まで昇温した。得られた混合液を静置して油水分離した後、水相(以下、「水相1」と称する。)をセパラブルフラスコから除去し、有機相F1を得た。水相1のpHは8.6であり、電気伝導度は152μS/cmであった。
得られた有機相F1に、脱塩水100gを加え、30分間攪拌した。得られた混合液を静置して油水分離した後、水層(以下、「水相2」と称する。)をセパラブルフラスコから除去し、有機相G1を得た。水相2の電気伝導度は73μS/cmであった。有機相G1を脱塩水100gで洗浄する操作を、洗浄後の水相の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで繰り返し、有機相H1を得た。
有機相H1を75℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールC含有結晶を析出させた後、減圧濾過により固液分離を行い、ビスフェノールC含有ケーキ182gを得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下、オイルバス温度90℃で軽沸分を留去することで、白色固体147gを得た。得られた白色固体の一部を採取し、上述した組成分析を行うことにより、生成物がビスフェノールCであることを確認した。
(1-2)ビスフェノールCの色調
(1-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は15であった。
(1-3)ポリカーボネート樹脂の色調
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、(1-1)で得られたビスフェノールC100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び、濃度400質量ppmの炭酸セシウム水溶液480μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶融した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて、反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去しながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に排出した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧した。続いて、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状に抜き出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化することで、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は24800であり、ペレットYIは8.0であった。
<実施例2>
(2-1)ビスフェノールCの製造
還元工程において、攪拌子を備えたシュレンクフラスコに15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液4.6gとアセトン65gとを入れることで得た混合物に、35質量%塩酸を加えて25℃で1時間撹拌することで混合液B1を調製した以外は、(1-1)と同様にして白色固体を得た。得られた白色固体の一部を採取し、上述した組成分析を行うことにより、生成物がビスフェノールCであることを確認した。
(2-2)ビスフェノールCの色調
(2-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は18であった。
(2-3)ポリカーボネート樹脂の色調
(1-1)で得られたビスフェノールCに代えて、(2-1)で得られたビスフェノールCを使用した以外は(1-3)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。
得られたポリカーボネート樹脂のペレットのYIは、8.4であった。
<比較例1>
(A-1)ビスフェノールCの製造
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン5g、オルトクレゾール230g、及びドデカンチオール2gを入れ、内温を30℃に維持しつつ、撹拌しながら35質量%塩酸210gを入れ、混合液A2とした。
次に、ケトン液B2としてアセトン65gを滴下ロートに入れた。
続いて、混合液A2を25℃に維持した状態で撹拌しながら、該滴下ロート内のケトン液B2を1時間かけて混合液A2へ滴下し、反応液を30に維持した状態で更に2時間撹拌することで反応混合物を得た。
その後、(1-1)と同様にして精製を行い、淡黄色固体を得た。得られた単黄色固体の一部を採取し、上述した組成分析を行うことにより、生成物がビスフェノールCであることを確認した。
(A-2)ビスフェノールCの色調
(A-1)で得られたビスフェノールCの溶融色を測定したところ、ハーゼン色数は25であった。
(A-3)ポリカーボネート樹脂の色調
(1-1)で得られたビスフェノールCに代えて、(A-1)で得られたビスフェノールCを使用した以外は(1-3)と同様にしてポリカーボネート樹脂を製造した。
得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは9.6であった。
実施例1及び2、比較例1において、用いたアセトン中のアセトアルデヒド量、チオールを供給した箇所、アセトン中のアセトアルデヒドに対するチオールの質量比、得られたビスフェノールCの溶融色、得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIを表1に纏めた。
Figure 2023006820000004
表1より、予めアセトアルデヒドを含むアセトンにチオールを作用させ、その後オルトクレゾールと混合することで、溶融色の良好なビスフェノールが得られることがわかる(実施例1,2)。また、このようにして得られたビスフェノールCを原料として用いることにより、色調の良好なポリカーボネート樹脂が得られることが分かる(実施例1,2)。

Claims (7)

  1. アルデヒドを含むケトンと還元剤とを混合し、前記アルデヒドの少なくとも一部を還元する還元工程、及び
    前記還元工程を経た前記ケトンと芳香族アルコールとを塩化水素の存在下で反応させる反応工程を含む、ビスフェノールの製造方法。
  2. 前記還元剤がチオールである、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  3. 前記チオールが、前記チオールの金属塩を塩酸で中和して得られたものである、請求項2に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記還元工程前の前記ケトン中の前記アルデヒドの含有量が、0質量ppm超5.0×10質量ppm以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  5. 前記アルデヒドがアセトアルデヒドであり、前記ケトンがアセトンである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスフェノ―ルの製造方法
  6. 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のビスフェノ―ルの製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法により製造されたビスフェノール用いてポリカーボネート樹脂を製造する工程を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
JP2021109638A 2021-06-30 2021-06-30 ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 Pending JP2023006820A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021109638A JP2023006820A (ja) 2021-06-30 2021-06-30 ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021109638A JP2023006820A (ja) 2021-06-30 2021-06-30 ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023006820A true JP2023006820A (ja) 2023-01-18

Family

ID=85107033

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021109638A Pending JP2023006820A (ja) 2021-06-30 2021-06-30 ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023006820A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11427523B2 (en) Bisphenol composition containing aromatic alcohol sulfonate and method for producing same, polycarbonate resin and method for producing same, and bisphenol production method
JP2023160883A (ja) 芳香族アルコールスルホン酸塩を含有するビスフェノール組成物及びその製造方法、ポリカーボネート樹脂及びその製造方法、並びに、ビスフェノールの製造方法
JP7287018B2 (ja) ビスフェノール組成物及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2021152001A (ja) ビスフェノール組成物及びその製造方法並びにポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2023006820A (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2020007233A (ja) ビスフェノールの製造法およびポリカーボネート樹脂の製造法
JP7180344B2 (ja) ビスフェノールの製造方法、及び、ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2023006817A (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2023006819A (ja) ビスフェノールの製造方法並びにポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2020152650A (ja) ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP7287019B2 (ja) ビスフェノール組成物及びポリカーボネート樹脂の製造方法
US20220098135A1 (en) Bisphenol composition and polycarbonate resin
JP7172308B2 (ja) ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP7087848B2 (ja) ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2022152461A (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP7167537B2 (ja) ビスフェノール製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2023006818A (ja) ビスフェノールの製造方法並びにポリカーボネート樹脂の製造方法
JP7107044B2 (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2023005689A (ja) ビスフェノール組成物及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP7135610B2 (ja) ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2022101856A (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2022114119A (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2022151938A (ja) ビスフェノール組成物及びその製造方法並びにポリカーボネート樹脂及びその製造方法
JP2023005691A (ja) ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2022089276A (ja) ビスフェノール製造法及びポリカーボネート樹脂の製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240312