JP2022151938A - ビスフェノール組成物及びその製造方法並びにポリカーボネート樹脂及びその製造方法 - Google Patents

ビスフェノール組成物及びその製造方法並びにポリカーボネート樹脂及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化防止剤添加アセトン溶解色、及び重合活性が良好なビスフェノール組成物及びその製造方法を提供する。【解決手段】ビスフェノールと、フェニレンメチレンオリゴマーとを含むビスフェノール組成物であって、フェニレンメチレンオリゴマーを200ppm以上含み、前記ビスフェノール組成物に対する前記ビスフェノールの含有量が95質量パーセント以上であるビスフェノール組成物。【選択図】なし

Description

本発明はビスフェノール組成物及びその製造方法に関するものである。また、本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタンなどが知られている(特許文献1~3参照)。
特開2014-40376号公報 特開2020-37530号公報 特開2002-187862号公報
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂等の様々な樹脂の原料として幅広い用途に使用され、今後も、その用途の拡大が期待される。特に、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタン(以下「TMBPF」と称する)は難燃性及び耐薬品性に優れたポリカーボネート樹脂の原料モノマーとして注目されている。
ビスフェノールの代表的な用途であるポリカーボネート樹脂は、無色であり、透明であることが求められる。ポリカーボネート樹脂の色調は、原料の色調の影響を大きく受けるため、原料であるビスフェノールの色調も、無色であることが好ましい。しかし公知のTMBPFは淡黄色の結晶であり、色調の改善が求められていた。
一般的にビスフェノールの色を直接定量することは困難であることから、ビスフェノールをアセトンやメタノール等の溶媒に溶解させて色調を数値化することが出来る。前述の方法に則りTMBPFの色調の数値化を試みたところ、溶解後、時間経過とともに色調が悪化することが分かった。このような特徴を持つビスフェノール類は、真の色調を定量することが難しい。種々検討した結果、色調を定量する際に酸化防止剤を添加し、色調の変化を抑制することで色調の定量が可能であることを見出した。なお、本明細書では、ビスフェノールを、酸化防止剤を含有するアセトンに溶解させ、色調を定量する。この色調を「酸化防止剤添加アセトン溶解色」と称する。
更に、ビスフェノールが重合触媒を被毒する物質を含有する場合は重合反応が進行せず、ビスフェノールが重合触媒作用を持つ物質を含有する場合は重合反応が過剰に進行し、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ることが出来ない。そのため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得るためには、重合活性に優れたビスフェノールが求められる。
ビスフェノールの製造方法は一般的に酸性触媒下で行われるため、重合活性に優れたビスフェノールを得るには、ビスフェノールを製造する際、塩基性水溶液で洗浄する方法が一般的だが、TMBPFは塩基性環境下で著しく色調が悪化することが分かっている。そのため、重合活性に優れる公知のTMBPFは色調が優れないと推定される。
ポリカーボネート樹脂については、設計通りの分子量を有し、かつ色調が良好なポリカーボネート樹脂が求められている。このため、このようなポリカーボネート樹脂を製造するために、原料であるビスフェノールについては、酸化防止剤添加アセトン溶解色に優れ、かつ、重合活性に優れたビスフェノールが求められている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、酸化防止剤添加アセトン溶解色、及び重合活性が良好なビスフェノール組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、このビスフェノール組成物を用いた、色調に優れたポリカーボネート樹脂、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の化合物を含有するビスフェノール組成物が、酸化防止剤添加アセトン溶解色に優れ、かつ、重合活性に優れることを見出した。また、このビスフェノール組成物を用いることで、色調に優れたポリカーボネート樹脂を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[9]に存する。
[1]ビスフェノールと、一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーを合計200質量ppm以上と、を含むビスフェノール組成物であって、前記ビスフェノールの含有量が95質量パーセント濃度以上であるビスフェノール組成物。
Figure 2022151938000001

(一般式(A)及び一般式(B)中、R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択され、それぞれ同一であっても異なってもよい。)
[2]前記ビスフェノールが一般式(C)に示される化合物である、[1]に記載のビスフェノール組成物。
Figure 2022151938000002

(一般式(C)中、R及びRは、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される。)
[3]前記一般式(A)及び一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーが、3,4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2,6-ジメチルフェノール及び/又は、2.4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノールである、[1]又は[2]に記載のビスフェノール組成物。
[4]前記ビスフェノールが、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタンである[1]乃至[3]のいずれかに記載のビスフェノール組成物。
[5][1]乃至[4]のいずれかに記載のビスフェノール組成物の製造方法であって、
前記ビスフェノールを製造する際に、前記一般式(A)及び又は前記一般式(B)に示される化合物を副生させる、ビスフェノール組成物の製造方法。
[6][1]乃至[4]のいずれかに記載のビスフェノール組成物の製造方法であって、
前記ビスフェノールに前記一般式(A)及び又は前記一般式(B)に示される化合物を添加する工程、を含む、ビスフェノール組成物の製造方法。
[7][1]乃至[4]のいずれかに記載のビスフェノール組成物をエステル化反応又はエステル交換反応させる工程、を含むポリカーボネート樹脂の製造方法。
[8]少なくとも下記一般式(D)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーネート樹脂をアルカリ分解することにより得られる化合物は、一般式(C)で表される化合物および一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーを含み、該ポリカーボネート樹脂に対して、アルカリ分解によって得られる前記一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーが100質量ppm以上であるポリカーネート樹脂。
Figure 2022151938000003

(一般式(C)及び(D)中、R及びRは、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択され、一般式(D)中のnは繰返し数であり正の数である。)
Figure 2022151938000004

(一般式(A)及び一般式(B)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される。)
[9]前記ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が15000以上、35000以下である、[8]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、特定の化合物を含有することで、酸化防止剤添加アセトン溶解色、及び重合活性が良好なビスフェノール組成物が提供される。また、このビスフェノール組成物を用いたポリカーボネート樹脂の製造方法によって、色調に優れたポリカーボネート樹脂が提供される。
分取物(保持時間7.35分)のH NMRスペクトルを示すチャートである。 分取物(保持時間7.75分)のH NMRスペクトルを示すチャートである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
[ビスフェノール組成物]
本発明の一実施形態であるビスフェノール組成物は、ビスフェノールと、一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマー(以下、「フェニレンメチレンオリゴマー」と称する。)を合計200質量ppm以上と、を含むビスフェノール組成物であって、前記ビスフェノールの含有量が95質量パーセント濃度以上であるビスフェノール組成物である。
Figure 2022151938000005
ビスフェノール組成物中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量は200質量ppm以上であり、好ましくは220質量ppm以上で、より好ましくは250質量ppm以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
ビスフェノール組成物中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量が上記下限未満であると、酸化防止剤添加アセトン溶解色、及び重合活性が良好なビスフェノール組成物を得ることができない。また、ビスフェノール組成物中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量が上記上限を超えるとポリカーボネート樹脂を製造する時に炭酸ジフェニルとのモル比がずれて、重合反応に影響が出るおそれがある。また、ポリカーボネート樹脂の脆性(
アイゾット)の低減や、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン
、又は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタンなどのビスフェノールに由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂特有の高表面硬度の低減を招くおそれがある。
フェニレンメチレンオリゴマーの検出及び定量は、粒径3μmの標準的な高速分析用逆相カラムを用いて、行うことが可能である。具体的には、粒径3μmの標準的な高速分析用逆相カラムとして、内径3~4.6mm、長さ10~30cm、粒径3μmのODS系カラムが挙げられる。より具体的には、Imtakt社製 Scherzo SM-C18、Cadenza CD-C18、Unison UK-C18が挙げられる。詳しくは、実施例にて記載する。
<ビスフェノール>
ビスフェノール組成物に含まれるビスフェノールは、通常、以下の一般式(C)で表される化合物である。
Figure 2022151938000006

一般式(C)中、R及びRは、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される。
一般式(C)中、R及びRとしては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基及びアリール基から選択される。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換または無置換のいずれであってもよい。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は、1以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。アリール基の炭素数は、6以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
及びRとしては、例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
上記一般式(C)で表されるビスフェノールとして、具体的には、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。この中でも、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタンが特に好ましい。
ビスフェノール組成物は、ビスフェノールを95質量%以上含有する。ビスフェノールの含有量(ビスフェノールの質量/ビスフェノール組成物の質量×100(%))は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。ビスフェノールの含有量が上記下限よりも少ないと、ビスフェノールとしての用途において好ましくない。ビスフェノールの含有量の上限は、フェニレンメチレンオリゴマーの含有量の確保、製造コスト等の観点、ポリカーボネート樹脂の製造反応における炭酸ジフェニルとの物質量比の調整、表面硬度や脆性などのポリカーボネート樹脂の機械物性等の観点から、通常99質量%程度である。
ビスフェノールの検出及び定量は、標準的な高速分析用逆相カラムを用いて行うことが可能である。例えば、標準的な高速分析用逆相カラムとして、内径3~4.6mm、長さ10~30cm、粒径3~5μmのODS系カラムが挙げられる。具体的には、Imtakt社製 Scherzo SM-C18、Cadenza CD-C18、Unison UK-C18などを用いることができる。詳しくは、実施例にて記載する。
<フェニレンメチレンオリゴマー>
Figure 2022151938000007
一般式(A)及び一般式(B)中、R及びRとしては、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基は、置換または無置換のいずれであってもよい。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は、1以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。アリール基の炭素数は、6以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
及びRとしては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
中でも、フェニレンメチレンオリゴマーは、3,4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2,6-ジメチルフェノール及び/又は、2.4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノールであることが好ましい。
ビスフェノール組成物中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量は、精製されたフェニレンメチレンオリゴマーを含まない又は低濃度含むビスフェノールに、フェニレンメチレンオリゴマーを適量添加することにより調整することができる。また、後述する通り、ビスフェノールの製造時に反応系内でビスフェノールと共にフェニレンメチレンオリゴマーを生成させることで調整することができる。
<ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色>
ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色は、ビスフェノール組成物そのものの色調を評価する方法である。ビスフェノール組成物が最終製品である場合は、ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色が良好なことが重要である。
ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色は、常温におけるビスフェノール組成物の色調の評価に用いられる。ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色のハーゼン色数が低いほど、ビスフェノール組成物の色調が良好(白色に近い)であることを示す。ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色を悪化させる原因としては、有機着色成分や金属の混入が挙げられる。
ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色は、ビスフェノール組成物をアセトンに溶解させて、均一溶液とした後、室温(約20℃)で測定する。経時変化を避けるため、溶解後速やかに測定することが好ましい。測定方法は、ハーゼン色数の標準液と目視で比較する方法、又は日本電色工業社製「SE6000」などの色差計を用い、そのハーゼン色数を測定する方法が挙げられる。ここで使用する溶媒はアセトンである。ビスフェノールと溶媒との質量比は、ビスフェノールの種類により適宜選択することが好ましい。
ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色のハーゼン色数は、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、特に好ましくは30以下である。
<ビスフェノール組成物の重合活性>
ポリカーボネート樹脂の製造では溶融重合法が用いられることが多く、該溶融重合法においては、ビスフェノール組成物に対し極微量の重合触媒を用いる。そのため、該溶融重合方法において、ビスフェノール組成物が、ビスフェノール組成物を合成する際に用いた触媒(塩化水素や硫酸、スルホン酸)のような重合触媒被毒物質を含有する場合、重合触媒が失活し、重合反応が進行しない。また、ビスフェノール組成物が、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムのような重合促進物質を含有する場合、重合活性が過剰となり、所定の分子量を持つポリカーボネート樹脂を得ることが困難となる。したがって、ビスフェノール組成物の重合活性が重要である。
特に、所定の分子量を有し、色調の良いポリカーボネート樹脂を製造するためには、ビスフェノール組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色、ビスフェノール組成物の重合活性が重要となる。
ビスフェノール組成物の重合活性は後段重合時間240分以下が好ましく、220分以下がより好ましく、200分以下が更に好ましい。また、120分以上が好ましく、130分以上がより好ましく、140分以上が更に好ましい。
[ビスフェノール組成物の製造方法]
ビスフェノール組成物の製造方法としては特に制限はないが、例えば次のような方法が挙げられる。
・方法(1)ビスフェノールにフェニレンメチレンオリゴマーを添加する方法
・方法(2)ビスフェノールを製造する際にフェニレンメチレンオリゴマーを副生させてフェニレンメチレンオリゴマーを含有するビスフェノール生成物を得る方法
方法(1)のビスフェノールにフェニレンメチレンオリゴマーを添加する方法は、固体のビスフェノールにフェニレンメチレンオリゴマーを添加する方法としても、溶融したビスフェノールにフェニレンメチレンオリゴマーを添加する方法としてもよい。方法(1)のビスフェノールにフェニレンメチレンオリゴマーを添加する方法においては、フェニレンメチレンオリゴマーを別途準備する必要があることから、方法(2)のビスフェノールを製造する反応系においてフェニレンメチレンオリゴマーを副生させてビスフェノール生
成物にフェニレンメチレンオリゴマーを所定の割合で含有させる方法が好ましい。
<方法(2)の製造方法>
方法(2)として好適な方法は、芳香族アルコールと、アルデヒドとを、酸触媒の存在下で縮合させてビスフェノールを生成させる反応工程と、反応工程で得られた反応液から水相を除去し、ビスフェノールを含有する有機相を得る工程と、得られた有機相を、除去する水相のpHが8.5以上の塩基性になるように、脱塩水及び/又は塩基性水溶液を用いて洗浄し、有機相を得る第1洗浄工程と、得られた有機相を、除去する水相の電気伝導度が1.0μm/cm以上10μs/cm以下となるまで脱塩水を用いて洗浄し、有機相
を得る第2洗浄工程と、得られた有機相を晶析してビスフェノール組成物を得る晶析工程と、を有する方法である。
上記方法とすることで、ビスフェノール生成反応時に副生したフェニレンメチレンオリゴマーを、ビスフェノール組成物中に適量含有させることができる。
フェニレンメチレンオリゴマーを効率良く副生するには、原料である芳香族アルコールとアルデヒドとのモル比が2以下であることが好ましく、1.5以下が更に好ましい。芳香族アルコールとアルデヒドとのモル比が低すぎると、余剰のアルデヒドの損失につながるため、好ましくは0.5以上であり、更に好ましくは0.6以上である。
また、副生したフェニレンメチレンオリゴマーの含有量はビスフェノール組成物を得る晶析工程でも調整することが出来る。フェニレンメチレンオリゴマーが多く副生した場合、該晶析工程を複数回実施することでビスフェノール組成物の純度を調整することが出来る。更に、該晶析工程により得たビスフェノール組成物のケーキを、溶媒を用いて振りかけ洗浄することでもビスフェノール組成物の純度を調整することが出来る。
<反応工程>
反応工程では、酸触媒の存在下、芳香族アルコールとアルデヒドとを縮合させることによりビスフェノールを生成させる。
ビスフェノールの生成反応は、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
Figure 2022151938000008

反応式(1)中のR及びRは、上記一般式(C)におけるものと同義であり、その好適例、具体例については、上記一般式(C)における説明の通りである。
(芳香族アルコール)
ビスフェノールの製造に用いる原料芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
Figure 2022151938000009

一般式(2)中のR及びRについては、上記一般式(C)におけるR及びR
同義であり、その好適例、具体例については、上記一般式(C)における説明の通りである。
上記一般式(2)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、ベンジルフェノール、フェニルフェノールなどが挙げられる。
中でも、フェノール、メチルフェノールおよびジメチルフェノールからなる群から選択されるいずれかであることが好ましく、メチルフェノールまたはジメチルフェノールがより好ましく、ジメチルフェノールがさらに好ましい。
(アルデヒド)
ビスフェノールの製造に用いる原料アルデヒドは、以下の一般式(3)で表される化合物である。
Figure 2022151938000010
芳香族アルコールとアルデヒドを縮合させる反応において、アルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比(芳香族アルコールのモル数/アルデヒドのモル数)は、少ないとアルデヒドが多量化してしまうが、多いと芳香族アルコールを未反応のまま損失するため経済的ではなく、また、フェニレンメチレンオリゴマーも副生し難くなる。これらのことから、アルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。また、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
(酸触媒)
ビスフェノールの製造に用いられる酸触媒は、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸などが挙げられる。
縮合に用いるアルデヒドに対する酸触媒のモル比(酸触媒のモル数/アルデヒドのモル数)は、少ない場合は、縮合反応の進行とともに副生する水によって酸触媒が希釈されて反応に時間を要する。また、多い場合は、アルデヒドの多量化が進行する場合ある。これらのことから、縮合に用いるアルデヒドに対する酸触媒のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
(チオール)
ビスフェノールの製造においては、アルデヒドと芳香族アルコールとを縮合させる反応に、助触媒としてチオールを用いてもよい。
助触媒としてチオールを用いることで、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンの製造において、24体(2-(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン)の生成を抑え、44体(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン)の選択率を上げる効果と共に、ポリカーボネート樹脂製造時の重合活性を高め、得られるポリカーボネート樹脂の色調を良好なものとするという効果が得られる。このポリカーボネート樹脂製造時の重合活性の向上、得られるポリカーボネート樹脂の色調の改善効果が奏される理由の詳
細は明らかではないが、チオールを用いることで、ポリカーボネート樹脂を製造する重合反応に対する阻害物の生成を抑制すると共に、色調悪化物の生成を抑制することができることによると推定される。
助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸や、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタンなどのアルキルチオールやメルカプトフェノールなどのアリールチオールなどが挙げられる。
縮合に用いるアルデヒドに対するチオールのモル比(チオールのモル数/アルデヒドのモル数)は、少ないとチオールを用いることによるビスフェノールの反応選択性改善の効果が得られず、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、アルデヒドに対するチオールのモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
(有機溶媒)
ビスフェノールの製造では、生成するビスフェノールを溶解ないし分散させるため、また、ビスフェノールを洗浄及び精製するために有機溶媒を使用することが出来る。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害せず、ビスフェノールを溶解した際に副反応を起こさないものなら特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられる。ここで、基質となる芳香族アルコール、アルデヒド、助触媒のチオール、および、生成物であるビスフェノールは、有機溶媒から除かれる。ビスフェノールの生成反応には使用せず、洗浄及び精製する際に供給する溶媒はこの限りではなく、芳香族アルコールやアルデヒドを溶媒として用いることもできる。これらの有機溶媒は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられ、これらの有機溶媒は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。芳香族炭化水素は、ビスフェノールの製造に使用した後、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。芳香族炭化水素を再利用する場合は、沸点が低いものが好ましい。好ましい芳香族炭化水素のひとつは、トルエンである。
脂肪族アルコールは、アルキル基とヒドロキシル基が結合したアルキルアルコールである。脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシル基が結合した1価の脂肪族アルコールでもよく、アルキル基と2個以上のヒドロキシル基が結合した多価の脂肪族アルコールであってもよい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐していてもよく、無置換であっても、アルキル基の炭素原子の一部が酸素原子によって置換されていてもよい。
脂肪族アルコールは、アルキル基と1個のヒドロキシル基が結合したアルコールであることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基と1個のヒドロキシル基が結合したアルコールであることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基と1個のヒドロキシル基が結合したアルコールであることが更に好ましい。
具体的な脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどを挙げることができる。好ましい脂肪族アルコールのひとつは、メタノールである。
脂肪族炭化水素としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの炭素数5~18の直鎖状炭化水素、イソオクタンなどの炭素数5~18の分岐鎖状炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサンなどの炭素数5~18の環状炭化水素などが挙げられる。
縮合に用いるアルデヒドに対する有機溶媒の質量比((有機溶媒の質量/ケトンの質量)又は(有機溶媒の質量/アルデヒドの質量))は、多すぎると、アルデヒドと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、アルデヒドの多量化が促進され、生成してくるビスフェノールが固化する場合がある。これらのことから、仕込み時のアルデヒドに対する有機溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。また、その上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
なお、後述するように、有機溶媒は、分割して供給してもよく、分割して供給する場合は、アルデヒドに対する、反応液の調製に用いられる有機溶媒の合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
生成してくるビスフェノールを有機溶媒に完全に溶解させずに分散させた方が、ビスフェノールが分解しにくい。また、反応終了後、反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時の濾液への損失)を低減できることからも、室温におけるビスフェノールの溶解度が低い溶媒を用いることが好ましい。室温におけるビスフェノールの溶解度が低い有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、有機溶媒は、芳香族炭化水素を主成分として含むことが好ましい。
ビスフェノールを生成する工程や洗浄する工程などで用いる場合、操作温度よりも沸点が高いものを選択する必要がある。また、ビスフェノールを溶解させ、油相と水相とに2相分離させた状態で洗浄する場合、疎水性が高く、相分離が容易であることが好ましい。
(反応液の調製)
反応液の調製方法は、特に限定されず、芳香族アルコールとアルデヒドとを混合した混合液に、酸触媒を供給する方法や、酸触媒と芳香族アルコールとを混合した混合液に、アルデヒドを供給する方法、芳香族アルコール、有機溶媒、アルデヒドとを混合した混合液に、酸触媒を供給する方法、酸触媒、芳香族アルコール、有機溶媒とを混合した混合液に、アルデヒドを供給する方法等が挙げられる。
また、低温で原料を全て混合した後、ビスフェノールを生成する反応が起こる温度まで徐々に昇温して反応を調整することも出来る。
(反応条件)
ビスフェノールの生成反応の反応温度は、製造するビスフェノールの種類や製造スケール等に応じて適宜調整されるものであるが、-30℃~100℃が好ましい。ビスフェノールの生成反応は縮合反応であり、水が副生するため、水の沸点以下であることが好ましい。95℃以下、90℃以下の順でより好ましい。また、反応温度が低すぎると反応に要する時間が長時間化することから、-20℃以上、-15℃以上、-5℃以上、0℃以上の順でより好ましい。
生成反応の反応時間は、製造するビスフェノールの種類や反応温度、製造スケール等に応じて適宜調整されるものであるが、通常0.5時間~500時間である。生成反応の反応時間は、400時間以下や350時間以下としてもよいが、長すぎると生成したビスフェノールが分解することから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。
(洗浄方法)
重合活性に優れるビスフェノールを製造するには、ビスフェノールを生成する反応で用いた酸触媒を中和し、除去する必要がある。
具体的には、ビスフェノールを含有する有機相と、脱塩水又は塩基性水溶液とを混合した後、有機相と水相とに相分離させ、水相を除去し、有機相を得る。この除去される水相のpHが8.0以上の塩基性になるまで、脱塩水及び/又は塩基性水溶液を用いて、有機相の洗浄を繰り返し行う。
ここで、脱塩水とは、イオン交換処理した水、純水等の電気伝導度1.5μS/cm以下の水であることが好ましい。製造するビスフェノールの種類により、電気伝導度で工程管理をする場合、管理値よりも電気伝導度の低い脱塩水を使用する必要がある。例えば水相の電気伝導度の管理値を1.0μS/cm以下に設定する場合は、脱塩水の電気伝導度は1.0μS/cmより低いものを選択する。
また、水相のpHの測定温度は、室温(20~30℃)が好ましく、例えば25℃が好ましい。
塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどの塩基物質が溶解した水溶液が挙げられる。複数回洗浄を行う場合は、同一の塩基性水溶液を用いても、異なる塩基性水溶液を用いてもよい。
(精製方法)
ビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
晶析は複数回行ってもよい。一方で、晶析回数が多いと、フェニレンメチレンオリゴマーを適量含有させることが困難なるため、晶析回数は3回以下であることが好ましく、2回以下が更に好ましい。
ビスフェノール組成物は、芳香族炭化水素等を洗浄溶媒として用いて懸濁洗浄を行ったり、乾燥を行ってよい。乾燥の方法は減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができ、例えば、50~120℃で、2~15時間乾燥させることができる。
ビスフェノールの反応系で副生したフェニレンメチレンオリゴマーが多すぎる場合は、ビスフェノール生成物に含まれるフェニレンメチレンオリゴマーの一部を除去することにより、本発明のビスフェノール組成物にできる。このとき、本発明の規定範囲内のフェニレンメチレンオリゴマーとなるように精製条件を調整できれば、晶析や懸濁洗浄、振りかけ洗浄等を適宜組み合わせて精製をおこなってよい。カラムクロマトグラフィーなどの手法により精製してもよい。
(ビスフェノール組成物の用途)
ビスフェノール組成物は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることから、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明の別の実施形態に係るポリカーボネート樹脂は、少なくとも下記一般式(D)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
Figure 2022151938000011

一般式(D)中、R及びRは、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択され、nは繰返し数であり正の数である。nは好ましくは10~100であり、より好ましくは20~70である。
そして、該ポリカーネート樹脂をアルカリ分解することにより得られる化合物は、上記一般式(C)で表される化合物および上記一般式(A)及び/又は(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーを含み、該ポリカーボネート樹脂に対して、該ポリカーボネート樹脂に対して、アルカリ分解によって得られる一般式(A)及び/又は(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーが100質量ppm以上である。フェニレンメチレンオリゴマーは110質量ppm以上であることが好ましく、120質量ppm以上であることがより好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂をアルカリ分解することにより得られる化合物においてフェニレンメチレンオリゴマーの含有量は高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
上記ビスフェノール組成物を用いてポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、上記ビスフェノール組成物と、炭酸ジフェニル等とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下で、エステル交換反応させる方法が挙げられる。
なお、ビスフェノール組成物にはビスフェノールの1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。2種以上のビスフェノールを用いることで、共重合ポリカーボネート樹脂を製造することができる。また、上記ビスフェノール組成物以外のジヒドロキシ化合物を併用して反応させることもできる。
上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下にビスフェノール組成物と炭酸ジフェニルを原料としたポリカーボネート樹脂の製造方法の一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノール組成物中のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上である。また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、ビスフェノール組成物及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
触媒の使用量は、ビスフェノールまたは炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上である。また、その上限は、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、エステル交換触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
上記ビスフェノール組成物を用いたポリカーボネート樹脂の製造において、重合反応温度は80~400℃、特に150~350℃とすることが好ましい。また、重合時間は、原料の比率や、所望とするポリカーボネート樹脂の分子量等によって適宜調整されるが、重合時間が長いと色調悪化などの品質悪化が顕在化するため、10時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。重合時間の下限は、通常0.1時間以上、或いは0.3時間以上である。
上記ビスフェノール組成物によれば、色相が良好で透明性に優れたポリカーボネート樹脂を製造することができる。例えば、粘度平均分子量(Mv)10000~100000、好ましくは15000~35000で、ペレットYI20以下の色相が良好で透明性に優れたポリカーボネート樹脂を短時間で製造することができる。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
以下の実施例および比較例において、2,6-キシレノール、37%ホルムアルデヒド水溶液、p-トルエンスルホン酸一水和物、炭酸水素ナトリウム、トルエン、アセトン、4-メチルテトラヒドロピラン、ドデカンチオール、炭酸セシウム、アセトニトリル、酢酸、酢酸アンモニウムは富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。ビスフェノールA(以下BPA) 及び、炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用し
た。TMBPFは、東京化成工業株式会社製の試薬を使用した。
[分析]
<TMBPF組成物及びポリカーボネート樹脂アルカリ分解液中のTMBPF及びフェニレンメチレンオリゴマーの分析>
TMBPF組成物及びポリカーボネート樹脂アルカリ分解液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。以下で製造されるTMBPF組成物におけるTMBPFの純度は通常99質量%以上であり、TMBPF以外のビスフェノールの生成量はごく微量であることから、TMBPFの純度をTMBPF組成物中のTMBPF含有量とみなすことができる。
・装置:島津製作所社製「LC-2010A」
Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 250mm×3.0mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル:脱塩水=1.500g:1mL:900mL:150mLの溶液
・分析時間0分では、溶離液組成はA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~41.67分はA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間41.67~50分はA液:B液=10:90に維持、
流速0.34mL/分にて分析した。
<フェニレンメチレンオリゴマーの分子量測定>
フェニレンメチレンオリゴマーの分子量は、高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)を用いて測定した。高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)は、以下の手順と条件で行った。
・分離装置:アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent1260」
Inertsil ODS-3 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 10mM ギ酸アンモニウム水溶液
B液 アセトニトリル
・分析時間0分では溶離液組成はA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分はA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=10:90に維持、
流速1.0mL/分にて分析した。
・検出波長:280nm
・質量分析装置:アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent LC/MS 6130」
・イオン源:ESI(Postive/Negative) AJSプローブ使用
<フェニレンメチレンオリゴマーの分取>
TMBPF組成物中のフェニレンメチレンオリゴマーの分取は、分取用高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順で行った。
・装置:Agilent LC-1100
CAPCELLPAK C18 MGIII 5μm 150×10mmI.D
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 水
B液 アセトニトリル
・分析時間0分では溶離液組成はA液:B液=45:55(体積比、以下同様。)
分析時間0~10分はA液:B液=36:64へ徐々に変化させ、
分析時間10~11分はA液:B液=0:100へ徐々に変化させ、
分析時間11~16分はA液:B液=0:100に維持した。
流速5.0mL/分にて分析した。
・注入量50μL/回で、40回実施。
<NMR>
核磁気共鳴(NMR)測定は、フェニレンメチレンオリゴマーの分取によって得られた溶液をエバポレータで乾固させ、重クロロホルム溶液として、日本電子株式会社製「JNM-ECS400型」を用いて、H NMR、13C NMR、HMBC、を実施した。
[H NMR]
装置:JEOL ECS400
プローブ:H5XAT/FG2(インバース)
測定条件:single_pulse.ex2
測定回数:128 回
測定温度:室温
[13C NMR]
装置:JEOL ECS400
プローブ:H5XAT/FG2(インバース)
測定条件:single_pulse_dec
測定回数:5000 回
測定温度:室温
[HMBC]
装置:JEOL ECS400
プローブ:H5XAT/FG2(インバース)
測定条件:hmbc_pfg.ex2
測定回数:32 回
測定温度:室温
<pHの測定>
pHの測定は、株式会社堀場製作所製pH計「pH METER ES-73」を用い
て、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
<電気伝導度>
電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製電気伝導度計「COND METER D-71」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
<TMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色>
TMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色は、日電理化硝子社製試験管「P-
24」(24mmφ×200mm)にTMBPF組成物4g及び1%ドデカンチオール含有アセトン16gを入れて、均一溶液とした後、室温(約20℃)で30分静置し、その後、日本電色工業社製「SE6000」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
<ビスフェノールの重合活性評価>
ビスフェノール組成物を用いてポリカーボネート樹脂を製造し、280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)をビスフェノールの重合活性として評価した。ビスフェノールの重合活性は、以下の基準に基づき、評価した。
○:140分以上200分以下
△:140分未満、又は200分超
×:重合反応が進行しない
<粘度平均分子量>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
<ペレットYI>
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計「CM-5」を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラス「CM-A212」を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス「CM-A124」をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板「CM-A210」を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
YIは、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
<実施例1>
(1-1)TMBPF組成物の製造
[反応工程]
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えた1Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で2,6-キシレノール138g、37%ホルムアルデヒド水溶液90g、p-トルエンスルホン酸一水和物21.6g、脱塩水400gを入れ、撹拌しながら内温を80℃まで徐々に上昇させ、80℃に維持した状態で4時間撹拌し、TMBPFの反応液を得た。反応液中にはTMBPFの結晶が析出していた。得られたTMBPFの反応液を吸引ろ過し、TMBPFの粗ケーキを203g得た。
[洗浄工程]
反応工程で得たTMBPFの粗ケーキを再度セパラブルフラスコに入れ、トルエン250g、アセトン80g、脱塩水100gを加え、75℃まで昇温した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、TMBPFを含む有機相O1を得た。
得られたTMBPFを含む有機相O1に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、
TMBPFを含む有機相O2を得た。このとき、除去した水相のpHは9.2であった。この操作を再度繰り返し、TMBPFを含む有機相O3を得た。
このTMBPFを含む有機相O3に、脱塩水100gを加えて撹拌し、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。この操作を繰り返し実施し、除去した水相の電気伝導度が5.0μS/cmになるまで有機相O3を洗浄した。得られた有機相を有機相O4とした。
[精製工程]
洗浄工程で得たTMBPFを含む有機相O4を75℃から5℃まで徐々に冷却し、TMBPFの結晶を析出させた。得られたTMBPFの結晶を含む液を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、TMBPFの精ケーキを得た。
得られたTMBPFの精ケーキを、オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のTMBPF組成物を得た。
(1-2)TMBPF組成物の組成分析
(1-1)で得られたTMBPF組成物の品質を確認したところ、高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)上、保持時間11.6分のTMBPFに由来するピークのほかに、保持時間13.8分及び14.1分に特徴的なピークが検出された。この保持時間13.8分及び14.1分のピークの成分を同定するために、質量計を備えた高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、分子量が390g/モル及び376g/モルであることが分かった。
(1-1)で得られたTMBPF組成物1.0gをアセトニトリル溶液に溶解し、分取用液体クロマトグラフィーを用いて前記の特徴的なピークを分取した。分取によって得られた溶液を乾固し、得られた乾固物を重クロロホルムに溶解し、H-NMR(図1及び2)、13C-NMR、HMBCを測定したところ、3,4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2,6-ジメチルフェノール及び、2.4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノールであることを確認した。
3,4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2,6-ジメチルフェノール;NMR(400MHz,CDCl) 2.10(Me,s,3H),2.13(Me,s,12H),2.23(Me,s,3H),3.70(CH2,s,2H),3.84(CH2,s,2H),4.41(OH,s,2H),4.53(OH,s,1H),6.53(CH,s,2H),6.61(CH,s,2H),6.79(CH,s,1H)
4,6-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]2-メチルフ
ェノール;NMR(400MHz,CDCl) 2.14(Me,s,3H),2.18(Me,s,6H),2.20(Me,s,6H),3.72(CH2,s,2H),3.79(CH2,s,2H),4.46(OH,s,1H),4.50(OH,s,1H),4.56(OH,s,1H),6.78(CH,s,2H),6.81(CH,s,4H)
得られたTMBPF組成物は、フェニレンメチレンオリゴマーを質量3000ppm含有していた。 また、得られたTMBPF組成物中のTMBPF含有量は99.7質量%であった。
(1-3)TMBPF組成物の色調
(1-1)で得られたTMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色を測定したところ、ハーゼン色数は10であった。
(1-4)TMBPF組成物の重合活性、及びポリカーボネート樹脂の色調
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、(1-1)で得られたTMBPF組成物56.1g(0.22モル)、BPA50.0g(0.22モル)、炭酸ジフェニル98.5g(0.46モル)及び、1000質量ppmの炭酸セシウム水溶液428μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶融した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のTMBPF及びBPAと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は155分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は21800であり、ペレットYIは10.7であった。
(1-5)ポリカーボネート樹脂のアルカリ分解
回転子を入れた日電理化硝子社製試験管「P-24」(24mmφ×200mm)に、(1-4)で得られたポリカーボネート樹脂ペレットを0.1g量り取り、フェノール1.13g、ナトリウムフェノキシド0.05gを加え、TPFE製の栓をし、170℃のオイルバス中で180分間撹拌しながら加熱しポリカーボネート樹脂を分解した。180分後、ガラス製ピペットを用いて内容液をサンプリングし、HPLCを用いてポリカーボネート樹脂中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量を測定した。ポリカーボネート樹脂中にフェニレンメチレンオリゴマーは1500質量ppm含有していた。
<実施例2>
(2-1)TMBPF組成物の製造
[反応工程]
実施例1と同様に行い、TMBPFの粗ケーキを204g得た。
[洗浄工程]
実施例1と同様に行い、TMBPFを含む有機相O1を得た。得られたTMBPFを含む有機相O1に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、TMBPFを含む有機相O2を得た。このとき、除去した水相のpHは9.1であった。この操作を再度繰り返し、TMBPFを含む有機相O3を得た。このTMBPFを含む有機相O3に、脱塩水100gを加えて撹拌し、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの
底から除去した。この操作を繰り返し実施し、除去した水相の電気伝導度が5.0μS/cmになるまで有機相O3を洗浄した。得られた有機相を有機相O4とした。
[精製工程]
洗浄工程で得たTMBPFを含む有機相O4を75℃から5℃まで徐々に冷却し、TMBPFの結晶を析出させた。得られたTMBPFの結晶を含む液を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、TMBPFの精ケーキ1を得た。
得られたTMBPFの精ケーキ1を、セパラブルフラスコに入れ、トルエン150g、アセトン50gを加え、75℃まで昇温し、TMBPFの精ケーキ1を溶解させた後、再度75℃から5℃まで徐々に冷却し、TMBPFの結晶を析出させた。得られたTMBPFの結晶を含む液を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、TMBPFの精ケーキ2を得た。
得られたTMBPFの精ケーキ2を、オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のTMBPF組成物を得た。
(2-2)TMBPF組成物の組成分析
実施例1と同様に分析を行い、得られたTMBPF組成物は、フェニレンメチレンオリゴマーを質量350ppm含有していた。
また、得られたTMBPF組成物中のTMBPF含有量は99.9質量%であった。
(2-3)TMBPF組成物の色調
(2-1)で得られたTMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色を測定したところ、ハーゼン色数は11であった。
(2-4)TMBPF組成物の重合活性、及びポリカーボネート樹脂の色調
実施例1と同様に実施し、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は160分であった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は22500であり、ペレットYIは10.8であった。
(2-5)ポリカーボネート樹脂のアルカリ分解
(2-4)で得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用い、実施例1と同様の方法で分解し、ポリカーボネート樹脂中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量を測定した。ポリカーボネート樹脂中にフェニレンメチレンオリゴマーは160質量ppm含有していた。
<実施例3>
(3-1)TMBPF組成物の製造
東京化成工業株式会社から購入した試薬のTMBPFに、実施例1において分取した3,4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2,6-ジメチルフェノール及び、2.4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノールをそれぞれ500ppmずつ含有するように添加し、フェニレンメチレンオリゴマーを1000ppm含有するTMBPF組成物を製造した。
(3-2)TMBPF組成物の色調
(3-1)で得られたTMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色を測定したところ、ハーゼン色数は28であった。
(3-3)TMBPF組成物の重合活性、及びポリカーボネート樹脂の色調
実施例1と同様に実施し、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。280℃に昇温
してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は170分であった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は21400であり、ペレットYIは17.0であった。
(3-4)ポリカーボネート樹脂のアルカリ分解
(3-3)で得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用い、実施例1と同様の方法で分解し、ポリカーボネート樹脂中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量を測定した。ポリカーボネート樹脂中にフェニレンメチレンオリゴマーは510質量ppm含有していた。
<比較例1>
(比-1)TMBPF組成物の組成分析
東京化成工業株式会社から購入した試薬のTMBPFについて、実施例1と同様に分析を行い、試薬のTMBPF組成物は、フェニレンメチレンオリゴマーを質量100ppm含有していた。
また、試薬のTMBPF組成物中のTMBPF含有量は99.9質量%であった。
(比-2)TMBPF組成物の色調
東京化成工業株式会社から購入した試薬のTMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色を測定したところ、ハーゼン色数は43であった。
(比-3)TMBPF組成物の重合活性、及びポリカーボネート樹脂の色調
実施例1と同様に実施し、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。280℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は170分であった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は21900であり、ペレットYIは25.0であった。
(比-4)ポリカーボネート樹脂のアルカリ分解
(比-3)で得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用い、実施例1と同様の方法で分解し、ポリカーボネート樹脂中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量を測定した。ポリカーボネート樹脂中にフェニレンメチレンオリゴマーは検出されなかった。
実施例1~3、及び比較例1について、ポリカーボネート樹脂の製造に用いたTMBPF組成物中のフェニレンメチレンオリゴマーの含有量、TMBPF組成物の酸化防止剤添加アセトン溶解色、ポリカーボネート樹脂のペレットYI、後段重合時間を表1にまとめた。
表1より、フェニレンメチレンオリゴマーを所定の割合で含むビスフェノール組成物を用いることで、得られるポリカーボネート樹脂のペレットYIが改善することが分かる。
Figure 2022151938000012
本発明のビスフェノール組成物は、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。

Claims (9)

  1. ビスフェノールと、一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーを合計200質量ppm以上と、を含むビスフェノール組成物であって、前記ビスフェノールの含有量が95質量パーセント濃度以上であるビスフェノール組成物。
    Figure 2022151938000013

    (一般式(A)及び一般式(B)中、R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択され、それぞれ同一であっても異なってもよい。)
  2. 前記ビスフェノールが一般式(C)に示される化合物である、請求項1に記載のビスフェノール組成物。
    Figure 2022151938000014

    (一般式(C)中、R及びRは、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される。)
  3. 前記一般式(A)及び一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーが、3,4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2,6-ジメチルフェノール及び/又は、2.4-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノールである、請求項1又は2に記載のビスフェノール組成物。
  4. 前記ビスフェノールが、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタンである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物の製造方法であって、
    前記ビスフェノールを製造する際に、前記一般式(A)及び又は前記一般式(B)に示される化合物を副生させる、ビスフェノール組成物の製造方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物の製造方法であって、
    前記ビスフェノールに前記一般式(A)及び又は前記一般式(B)に示される化合物を添加する工程、を含む、ビスフェノール組成物の製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスフェノール組成物をエステル化反応又はエステル交換反応させる工程、を含むポリカーボネート樹脂の製造方法。
  8. 少なくとも下記一般式(D)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーネート樹脂をアルカリ分解することにより得られる化合物は、一般式(C)で表される化合物および一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーを含み、該ポリカーボネート樹脂に対して、アルカリ分解によって得られる前記一般式(A)及び/又は一般式(B)に示されるフェニレンメチレンオリゴマーが100質量ppm以上であるポリカーネート樹脂。
    Figure 2022151938000015

    (一般式(C)及び(D)中、R及びRは、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択され、一般式(D)中のnは繰返し数であり正の数である。)
    Figure 2022151938000016

    (一般式(A)及び一般式(B)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びアリール基からなる群から選択される。)
  9. 前記ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が15000以上、35000以下である、請求項8に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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