JP2020037529A - ビスフェノールの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明のビスフェノールの製造方法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
例えば、特許文献1には、酸性触媒として塩素ガスや硫酸を単独で使用する場合の問題点を克服し、安全に効率よくビスフェノールを製造する方法として、フェノール誘導体、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら反応させて、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはその誘導体を得る製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、副反応物の生成を抑制するために、酸性触媒を含む第1の混合物に、特定のフェノール化合物と、特定のケトン化合物又はアルデヒドと化合物を含む第2の混合物のうち少なくとも一方に有機溶媒を添加し、前記第1の混合物に前記第2の混合物を加えて縮合反応させるビスフェノール化合物の製造方法が開示されている。
また、本発明者らが特許文献1に記載の方法で2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを製造したところ、得られた2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの溶融状態のハーゼン色数が高く、また該2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを用いた溶融重合反応によりポリカーボネート樹脂を製造したところ、該溶融重合反応が期待通り進行しなかった。
また、前記ビスフェノールを用いて、溶融重合反応を進行させ、良好な色調のポリカーボネート樹脂を製造できるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
[1] 芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドと、硫酸とを含む反応液中で、前記芳香族アルコールと、前記ケトン又はアルデヒドとを反応させて、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法において、硫酸と、芳香族アルコールとを含む第1の混合液に、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを含む第2の混合液を供給して反応液を調製する反応液調製工程を有するビスフェノールの製造方法。
[2] 前記第1の混合液に含まれる芳香族アルコールと前記第2の混合液に含まれる芳香族アルコールの合計に対する前記第1の混合液に含まれる芳香族アルコールの質量比が、0.20以上0.90以下である[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3] 前記第1の混合液が、更に有機溶媒を含む[1]または[2]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4] 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールを含む[3]に記載のビスフェノールの製造方法。
[5] 前記芳香族アルコールがオルトクレゾールであり、前記ケトン又はアルデヒドがアセトンであり、前記ビスフェノールが2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンである[1]から[4]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネートを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
この原因を検討したところ、硫酸と芳香族アルコールの接触により着色成分が発生することでビスフェノールの溶融状態の色調が悪化することを見出した。また、硫酸と芳香族アルコールの接触により副生する芳香族アルコールスルホン酸が製品のビスフェノールに残存してしまい、溶融重合反応における活性低下成分となることを見出した。
更に、反応初期において、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールの量が少ないと、ケトン又はアルデヒド同士の自己縮合が起こってしまい、ケトン又はアルデヒドの2量体由来の副生物が増加することを見出した。
中でも、芳香族アルコールスルホン酸、及び、ケトン又はアルデヒドの2量体由来の副生物は、ビスフェノールの原料の損失を示すため、これらの生成量を制御することが重要である。特に、ケトン又はアルデヒドの2量体由来の副生物は、ビスフェノールの色調と相関があると考えられるため、生成を抑制することが重要であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
より詳しく説明すると、本発明のビスフェノールの製造方法では、ケトン又はアルデヒドとの反応に用いる芳香族アルコール(以下、「芳香族アルコール(T)」という。)を、第1の混合液に含まれる芳香族アルコール(以下、「芳香族アルコール(A)」という。)と、第2の混合液に含まれる芳香族アルコール(以下、「芳香族アルコール(B)」という。)とに分割して反応液を調製する。芳香族アルコール(A)の量は、芳香族アルコール(T)の量から、芳香族アルコール(B)の量を引いたものである。調製後の反応液に含まれる芳香族アルコール(T)と、第1の混合液に含まれる芳香族アルコール(A)と、第2の混合液に含まれる芳香族アルコール(B)とは同じ種類の芳香族アルコールである。
R5とR6とが隣接する炭素原子と一緒に結合し形成されるシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
また、副生成物の抑制及び色調の改善効果が高いため、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの製造方法とすることがより好ましい。より詳しくは、芳香族アルコールがオルトクレゾールであり、ケトン又はアルデヒドがアセトンであり、ビスフェノールが2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンであるビスフェノールの製造方法とすることがより好ましい。
本発明のビスフェノールの製造方法に用いる芳香族アルコール(芳香族アルコール(T))は、反応液調製のときには、芳香族アルコール(A)及び芳香族アルコール(B)に分割して用いられるものであり、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
本発明の製造方法に用いるケトン及びアルデヒドは、通常、以下の一般式(4)で表される化合物である。
本発明のビスフェノールの製造方法は、反応液調製工程を有する。反応液調製工程は、硫酸と、芳香族アルコールとを含む第1の混合液に、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを含む第2の混合液を供給して反応液を調製する工程である。
芳香族アルコール(A)と芳香族アルコール(B)の合計(すなわち、芳香族アルコール(T))の量は、第2の混合液に含まれるケトン又はアルデヒドの量や有機溶媒の有無に応じて決定される。第2の混合液に含まれるケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコール(T)のモル比((芳香族アルコール(T)のモル数/第2の混合液に含まれるケトンのモル数)又は(芳香族アルコール(T)のモル数/第2の混合液に含まれるアルデヒドのモル数))は、少ない場合、ケトン又はアルデヒドが多量化しやすい。このことから、第2の混合液に含まれるケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコール(T)のモル比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上である。
ケトン又はアルデヒドの自己縮合物に由来する副生成物等の生成をより抑制し、溶融状態における色調がより良好なビスフェノールを得るためには、芳香族アルコール(A)と芳香族アルコール(B)の合計(芳香族アルコール(T))に対する芳香族アルコール(A)の質量比(芳香族アルコール(A)の質量/芳香族アルコール(T)の質量)は、0.20以上が好ましく、0.25以上がより好ましい。また、芳香族アルコールスルホン酸等の副生をより抑制し、溶融状態における色調がより良好なビスフェノールを得るためには、芳香族アルコール(A)と芳香族アルコール(B)の合計に対する芳香族アルコール(A)の質量比が、0.90以下が好ましく、0.80以下がより好ましい。
第1の混合液は、硫酸と芳香族アルコール(A)を含むものである。芳香族アルコール(A)に対する硫酸のモル比(硫酸のモル数/芳香族アルコール(A)のモル数)は、少ない場合は、反応時間が長時間化する。また、多い場合は、反応液の調製時に硫酸と芳香族アルコールスルホン酸との副反応が起こりやすくなり、芳香族アルコールスルホン酸等が生成されやすくなる。これらのことから、芳香族アルコール(A)に対する硫酸のモル比は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上であり、更に好ましくは1.0以上である。また、その上限は、好ましくは50以下、より好ましくは25以下である。また、その上限は、10以下や、5以下であってもよい。
硫酸は、化学式H2SO4で表される酸性の液体である。一般的に、硫酸は水で希釈された硫酸水溶液として用いられ、その濃度に応じて、濃硫酸や希硫酸といわれる。例えば、希硫酸とは、質量濃度が90質量%未満の硫酸水溶液である。
用いる硫酸の濃度(硫酸水溶液のH2SO4の濃度)が高いと、ケトン又はアルデヒドの自己縮合反応が進行しやすく、ビスフェノールの色調悪化やビスフェノールの反応選択率の低下を引き起こす場合がある。また、用いる硫酸の濃度が低いと、水の量が多くなるため、ビスフェノールの生成反応が進行しにくくなり、ビスフェノールを製造する反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することが難しい場合がある。そのため、用いられる硫酸の濃度は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。また、用いられる硫酸の濃度は、99.5質量%以下や99質量%以下とすることができる。
なお、この硫酸の濃度は、反応液を調製するときに用いられる硫酸水溶液の濃度であり、仕込み時の濃度である。
有機溶媒としては、ビスフェノールの生成反応を阻害しない範囲で特に限定されず、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素などが挙げられ、これらの溶媒を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。反応終了後に、有機溶媒を回収、精製して再利用する場合は、沸点が低い溶媒が好ましい。
第2の混合液は、芳香族アルコール(B)と、ケトン又はアルデヒドとを含むものである。芳香族アルコール(B)の使用量は、反応に用いる芳香族アルコール(T)の量から、芳香族アルコール(A)として用いる量を引いた量となる。ケトン又はアルデヒドは、上記の通りである。
第1の混合液に第2の混合液を供給する供給時間は、芳香族アルコール、ケトン又はアルデヒドの量や濃度等に応じて適宜決定される。第1の混合液に第2の混合液を供給しているときにも、ビスフェノール生成反応は起こるため、第1の混合液に第2の混合液を供給する供給時間が短すぎると、反応温度を制御できずに、副生物が増大する傾向にある。また第1の混合液に第2の混合液を供給する供給時間が長すぎると、反応時間も長くなり、製造効率が低下する傾向にある。そのため、供給時間の下限は、0.3時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。また、その上限は、5時間以下が好ましい。また、3時間以下や1時間以下にしてもよい。
第1工程:反応器に、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールを供給する。
第2工程:芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールを供給した反応器に、芳香族アルコール(A)を供給する。
第3工程:芳香族炭化水素、脂肪族アルコール及び芳香族アルコール(A)を供給した反応器に、硫酸を供給し、第1の混合液を調製する。
第4工程:別の容器に、ケトン又はアルデヒド、芳香族炭化水素、助触媒のチオール、及び芳香族アルコール(B)を供給し、第2の混合液を調製する。
第5工程:第2の混合液を、第1の混合液を収容する反応器に供給する。
本発明のビスフェノールの製造方法では、反応液調製工程にて、反応液を調製した後、更に、撹拌等を行い、ビスフェノール生成反応を進行させる反応工程を有する。
なお、用いる硫酸と同等量以上の水を加えて硫酸濃度を低下させ、反応を停止することが可能である。
本発明のビスフェノールの製造方法において、縮合反応によって得られたビスフェノールの精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させることができる。また、晶析は複数回行うことができる。
本発明のビスフェノールの製造方法にて製造されたビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」という場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ−ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
本発明のビスフェノールを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造する製造方法とすることができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
オルトクレゾール、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸セシウムは、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
(ビスフェノールC等の定量分析)
オルトクレゾール、ビスフェノールC、{2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−メチルプロピル}メチルケトン(以下、MOPCと称する)の定量分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC−2010A、Imtakt ScherzoSM−C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度;40℃
・溶離液組成
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0〜25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25〜30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8mL/分、検出波長は280nmにて分析した。
ビスフェノールCの溶融色差は、日電理化ガラスP−24 24mmφ×200mmの試験管にビスフェノールC20gを入れ、190℃で30分間溶融させ、日本電色工業社製SE6000を用い、そのハーゼン色数を測定した。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、 ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH濃度)は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
ポリカーボネート樹脂のペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。
装置;コニカミノルタ社製分光測色計CM−5
測定条件;測定径30mm、SCEを選択した。
校正;シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。
測定;ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
オルトクレゾール230gを、60gと170gに分割して、第1の混合液(敷き液)中のオルトクレゾールとして60g、第2の混合液中のオルトクレゾールとして170gを用いて反応液を調製した。全オルトクレゾールに対する第1の混合液中のオルトクレゾールの割合(敷き液率:前記第1の混合液に含まれる芳香族アルコールと前記第2の混合液に含まれる芳香族アルコールの合計に対する前記第1の混合液に含まれる芳香族アルコールの質量比×100)は、60g÷230g×100=26%であった。
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、メタノール12g、オルトクレゾール60g(0.56モル)を入れ、内温を10℃以下とした。その後、撹拌しながら98重量%硫酸95gを0.3時間かけて加えた後、室温で22時間静置し、第1の混合液(敷き液)を調製した。
500mLの三角フラスコに、トルエン50g、オルトクレゾール170g(1.6モル)、アセトン61g(1.1モル)、ドデカンチオール5.4gを混合し、第2の混合液(滴下液)を調製した。
第1の混合液の内温を5℃以下にした後に、前記滴下ロートを用いて第2の混合液を、前記内温が10℃以上にならないように、第1の混合液へ1時間かけて供給し、反応液を調製した。
内温を10℃として、調製した反応液を2.5時間撹拌した。
反応終了後、25%水酸化ナトリウム水溶液190gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置させて、下相の水相を抜き出した。得られた第1の有機相に脱塩水400gを入れ、30分混合して静置し、水相を除去した。得られた第2の有機相に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液120gを加えて、下相の水相pHが9以上になったことを確認し、下相の水相を抜き出した。得られた第3の有機相に、更に1.5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液120gを加えて撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた第4の有機相を抜出し、その質量を測定したところ、666gであった。
得られた第4の有機相を80℃から20℃まで冷却して、20℃で維持させ、ビスフェノールCを析出させた。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ウェットケーキとして第1のビスフェノールCを得た。
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1Lのセパラブルフラスコに、第1のビスフェノールC全量とトルエン373gを入れ、80℃に昇温した。均一な第5の有機相となったことを確認し、第5の有機相を脱塩水600gで3回に分けて十分洗浄し、水相を除去した。得られた第6の有機相を、80℃から10℃まで冷却した。その後、遠心分離機(毎分3000回転で10分間)を用いて濾過を行い、ウェットの第2のビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色の第3のビスフェノールC 163gを得た。
オルトクレゾール229gを、2分割して、第1の混合液中のオルトクレゾールとして114.5g、第2の混合液中のオルトクレゾールとして114.5gを用いて反応液を調製した以外は、実施例1と同様にして(5)の精製(水洗及びアルカリ洗浄)までを実施し、第4の有機相666gを得た。
オルトクレゾール230gを、174gと56gに分割して、第1の混合液中のオルトクレゾールとして174g、第2の混合液中のオルトクレゾールとして56gを用いて反応液を調製した以外は、実施例1と同様にして(5)の精製(水洗及びアルカリ洗浄)までを実施し、第4の有機相666gを得た。
オルトクレゾール230g全量を、第2の混合液中のオルトクレゾールとして用い、第1の混合液中のオルトクレゾールの量を0gとして反応液を調製した以外は、実施例1と同様にして(5)の精製(水洗及びアルカリ洗浄)までを実施し、第4の有機相666gを得た。
ビスフェノールCの着色の原因のひとつとして、アセトンの3量体由来の副生成物が考えられる。アセトンの3量体由来の副生成物が生成するためには、アセトン2量体を経由する必要があり、MOPC(アセトン2量体由来の副生成物)量が多いほど、アセトン3量体由来の副生成物も多くなると考えられる。そのため、ビスフェノールCに含まれるMOPC量は、色調の指標となると考えられる。そこで、実施例1〜3及び比較例1について、第4の有機相中の{2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−メチルプロピル}メチルケトンの量(MOPC量)を、仕込んだオルトクレゾールを基準として評価した。なお、{2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−メチルプロピル}メチルケトンは、以下の一般式(5)で表される化合物である。
その結果、実施例1の第4の有機相中のMOPC量は、0.67モル%(0.44質量%×666[g]/206[g/モル]/2.1[モル]=0.67モル%)であった。
実施例2の第4の有機相中のMOPC量は、0.46モル%(0.30質量%×666[g]/206[g/モル]/2.1[モル]=0.46モル%)であった。
実施例3の第4の有機相中のMOPC量は、0.40モル%(0.26質量%××666[g]/206[g/モル]/2.1[モル]=0.40モル%)であった。
比較例1の第4の有機相中のMOPC量は、1.37モル%(0.89質量%×666[g]/206[g/モル]/2.1[モル]=1.37モル%)であった。
表1の結果、オルトクレゾールを分割せずに、オルトクレゾール全量とアセトンと混合し第2の混合液として、硫酸を含む第1の混合液に供給すると、第4の有機相中のMOPC量が増加することがわかる。また、表1からは、第4の有機相中のMOPC量が多いほど、ビスフェノールCのハーゼン色数が高く、第4の有機相中のMOPC量が仕込んだオルトクレゾール基準で1モル%以下(仕込んだアセトン基準で5モル%以下)になるとハーゼン色数が低くなる傾向が見られた。
オルトクレゾール230g全量を、第1の混合液中のオルトクレゾールとして用い、第2の混合液中のオルトクレゾールの量を0gとして反応液を調製した以外は、実施例1と同様にして(5)の精製(水洗及びアルカリ洗浄)までを実施し第4の有機相666gを得た。
実施例1及び比較例2について、第4の有機相中の不明成分量を、仕込んだオルトクレゾールを基準として評価した。第4の有機相中の不明成分量は、100モル%から、第4の有機相中のオルトクレゾール量と第4の有機相中のビスフェノールC量と第4の有機相中のMOPC量との合計を引いて求めた。
なお、第4の有機相中のオルトクレゾール量は、オルトクレゾールのモル数(高速液体クロマトグラフィーで算出した第4の有機相におけるオルトクレゾールの質量%×第4の有機相の質量666[g]/オルトクレゾールの分子量108[g/モル])を、仕込んだオルトクレゾールのモル数で除して求めた。
また、第4の有機相中のビスフェノールC量は、ビスフェノールCのモル数を2倍したもの((高速液体クロマトグラフィーで算出した第4の有機相におけるビスフェノールCの質量%×第4の有機相の質量666[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/モル])×2)を、仕込んだオルトクレゾールのモル数で除して求めた。
その結果、実施例3の第4の有機相中の不明成分量は、9.7モル%(100モル%−21.7モル%−67.9モル%−0.67モル%=9.7モル%)であった。
その結果、実施例3の第4の有機相中の不明成分量は、18.9モル%(100モル%−21.1モル%−59.5モル%−0.46モル%=18.9モル%)であった。
その結果、実施例3の第4の有機相中の不明成分量は、20.0モル%(100モル%−20.6モル%−59.0モル%−0.40モル%=20.0モル%)であった。
その結果、比較例2の第4の有機相中の不明成分量は、32.6モル%(100モル%−16.2モル%−50.8モル%−0.37モル%=32.63モル%)であった。
表2の結果、オルトクレゾールを分割せずに、オルトクレゾール全量と硫酸とを混合し第1の混合液を調製した後、アセトンを含む混合液を供給すると、不明成分量が増加することが分かる。また、敷き液率が高いほど、不明成分量が増加することが分かる。この不明成分は、硫酸とオルトクレゾールとが反応して生成したクレゾールスルホン酸等と推定される。
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例1で得られた第3のビスフェノールC100.00g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
Claims (6)
- 芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドと、硫酸とを含む反応液中で、前記芳香族アルコールと、前記ケトン又はアルデヒドとを反応させて、ビスフェノールを得るビスフェノールの製造方法において、
硫酸と、芳香族アルコールとを含む第1の混合液に、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを含む第2の混合液を供給して反応液を調製する反応液調製工程を有するビスフェノールの製造方法。 - 前記第1の混合液に含まれる芳香族アルコールと前記第2の混合液に含まれる芳香族アルコールの合計に対する前記第1の混合液に含まれる芳香族アルコールの質量比が、0.20以上0.90以下である請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記第1の混合液が、更に有機溶媒を含む請求項1または2に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記有機溶媒が、芳香族炭化水素及び脂肪族アルコールを含む請求項3に記載のビスフェノールの製造方法。
- 前記芳香族アルコールがオルトクレゾールであり、
前記ケトン又はアルデヒドがアセトンであり、
前記ビスフェノールが2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンである請求項1から4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によって製造されたビスフェノールを用いてポリカーボネートを製造するポリカーボネート樹脂の製造方法。
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