JP7435114B2 - ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、芳香族アルコールとアセトンとからビスフェノールを製造する方法に関する。より詳しくは、メシチルオキシドと酸触媒との存在下において、芳香族アルコールとアセトンからビスフェノールを製造する方法に関するものである。また、本発明は、前記ビスフェノールの製造方法で得られたビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1)。また、腐食性が強く、専用の設備が必要となる塩化水素ガスに代え硫酸を用い、フェノールスルホン酸を生成させた後、ビスフェノールを製造する方法が知られている(特許文献2)。
特開2008-214248号公報 特開2019-99581号公報
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂等の様々な樹脂の原料として幅広い用途に使用され、今後も、その用途の拡大が期待される。そのため、より効率良く、かつ色調の良いビスフェノールを製造することが求められている。特許文献2のように、芳香族アルコールの副反応を防ぐことで、芳香族アルコールの選択率を改善しているが、アセトンの選択率には改善の余地があった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、芳香族アルコールとアセトンとからビスフェノールを生成する反応において、アセトンの選択率を改善し、ビスフェノールを高収率で得ることができるビスフェノールの製造方法を提供することを目的とする。
また、前記ビスフェノールの製造方法にて得られたビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 芳香族アルコール及び酸触媒を含む溶液(A1)と、アセトンを含む溶液(B1)とを含み、かつ、前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)がメシチルオキシドを含む反応液(C1)中で、前記芳香族アルコールと前記アセトンとを反応させ、ビスフェノールを含む反応液(D1)を得る工程(S1)と、
前記ビスフェノールを含む反応液(D1)からビスフェノールを単離する工程(S2)とを有するビスフェノールの製造方法。
<2> 前記アセトンに対する前記メシチルオキシドの物質量比が、0.0001以上、0.003以下である前記<1>に記載のビスフェノールの製造方法。
<3> 前記反応液(D1)が、前記ビスフェノール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む反応液(D1a)であり、
前記工程(S2)が、前記反応液(D1a)から水相(E1a)を除去し、前記ビスフェノール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む有機相(F1a)を得る工程(S2-1a)と、前記有機相(F1a)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1a)を得る工程(S2-2a)と、前記スラリー液(G1a)を、前記ビスフェノールと、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む溶液(H1a)とに固液分離する工程(S2-3a)と、を有し、
更に、前記工程(S2-3a)で分離された溶液(H1a)を蒸留し、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む回収溶剤(J1a)を得る工程(S3a)を有し、
前記回収溶剤(J1a)を、前記溶液(A1)の少なくとも一部に再利用する前記<1>又は<2>に記載のビスフェノールの製造方法。
<4> 前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)が、芳香族炭化水素を含む前記<1>乃至<3>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<5> 前記反応液(D1)が、前記ビスフェノール、前記メシチルオキシド、前記芳香族アルコール及び芳香族炭化水素を含む反応液(D1b)であり、
前記工程(S2)が、前記反応液(D1b)から水相(E1b)を除去し、前記ビスフェノール、前記芳香族アルコール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む有機相(F1b)を得る工程(S2-1b)と、前記有機相(F1b)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1b)を得る工程(S2-2b)と、前記スラリー液(G1b)を、前記ビスフェノールと、前記芳香族アルコール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む溶液(H1b)とに固液分離する工程(S2-3b)と、を有し、
更に、前記工程(S2-3b)で分離された溶液(H1b)を蒸留し、前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む回収溶剤(J1b)を得る工程(S3b)を有し、
前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む回収溶剤(J1b)を、前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)の少なくとも一部に再利用する前記<4>に記載のビスフェノールの製造方法。
<6> 前記酸触媒が、硫酸又は塩化水素ガスである前記<1>乃至<5>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<7> 前記芳香族炭化水素が、トルエンである前記<4>又は<5>に記載のビスフェノールの製造方法。
<8> 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-メチルフェニル)プロパンからなる群から選択されるいずれかである前記<1>乃至<7>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<9> 前記<1>乃至<8>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法で製造したビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、アセトンの選択率を改善しビスフェノールを高収率で得ることができる。
また、前記ビスフェノールの製造方法にて得られたビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
本発明のビスフェノールの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明のビスフェノールの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明のビスフェノールの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明のビスフェノールの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明のビスフェノールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
<ビスフェノールの製造方法>
本発明は、芳香族アルコール及び酸触媒を含む溶液(A1)と、アセトンを含む溶液(B1)とを含み、かつ、前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)がメシチルオキシドを含む反応液(C1)中で、前記芳香族アルコールと前記アセトンとを反応させ、ビスフェノールを含む反応液(D1)を得る工程(S1)と、前記ビスフェノールを含む反応液(D1)からビスフェノールを単離する工程(S2)を有するビスフェノールの製造方法(以下、「本発明のビスフェノールの製造方法」と記載する場合がある)に関するものである。
図1に、本発明のビスフェノールの製造方法のフォローチャートを示す。図1に示すように本発明のビスフェノールの製造方法は、溶液(A1)及び/又は溶液(B1)がメシチルオキシドを含むため、メシチルオキシドの存在下で、芳香族アルコールとアセトンとの反応が行われる。
本発明者らは、メシチルオキシドの存在下でビスフェノールを生成する反応を行うことで、アセトンの選択率が改善することを見出した。メシチルオキシドの存在下で反応を行うことで、アセトンとアセトンの自己縮合体であるメシチルオキシドとの平衡反応がアセトン側にシフトするため、ビスフェノールの生成反応の副反応として生じるアセトンの自己縮合を抑制することができたと考えられる。メシチルオキシドの存在下でビスフェノールを生成する反応を行うことで色調が良く、熱的に安定なビスフェノールの製品を高収率で得ることが可能である。
なお、図1に示すビスフェノールの製造方法では、溶液(A1)と溶液(B1)の両方がメシチルオキシドを含むが、以下で説明するように、本発明のビスフェノールの製造方法では、溶液(A1)及び溶液(B1)のうち少なくとも一方がメシチルオキシドを含めばよい。
以下、本発明のビスフェノールの製造方法について、各工程に分けて説明する。
<工程(S1)>
工程(S1)は、芳香族アルコール及び酸触媒を含む溶液(A1)と、アセトンを含む溶液(B1)とを含み、かつ、前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)がメシチルオキシドを含む反応液(C1)中で、前記芳香族アルコールと前記アセトンとを反応させ、ビスフェノールを含む反応液(D1)を得る工程である。
[溶液(A1)]
溶液(A1)は、芳香族アルコールと酸触媒とを含む。また、溶液(B1)がメシチルオキシドを含まない場合には、メシチルオキシドは、溶液(A1)の必須成分である。溶液(B1)がメシチルオキシドを含む場合、溶液(A1)はメシチルオキシドを含んでもよく、含まなくてもよい。
(芳香族アルコール)
本発明のビスフェノールの製造方法に用いる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(1)で表される化合物である。
1~R4の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基 などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などは、置換または無置換のいずれであってもよい。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は、1以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。アリール基の炭素数は、6以上であり、その上限は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
例えば、R1~R4の置換基として、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
これらのうちR2とR3は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
また、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアミノ基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。例えば、R1及びR4が、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R2及びR3が、水素原子である化合物が挙げられる。
具体的には、上記一般式(1)で表される化合物として、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなど等が挙げられる。
この中でも、フェノール、メチルフェノールおよびジメチルフェノールのいずれかが好ましく、メチルフェノールまたはジメチルフェノールがより好ましく、メチルフェノールが更に好ましい。
(酸触媒)
本発明の製造方法で用いられる酸触媒としては、硫酸、塩酸、塩化水素ガス、リン酸、p-トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸などが挙げられる。
酸触媒は、硫酸、塩酸、及び塩化水素ガスからなる群より選ばれるいずれか1つであることが好ましく、より好ましくは硫酸及び/又は塩化水素ガスである。反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から、酸触媒としては硫酸が特に好ましい。
硫酸は、化学式H2SO4で表される酸性の液体である。一般的に、硫酸は水で希釈された硫酸水溶液として用いられ、その濃度に応じて、濃硫酸や希硫酸といわれる。例えば、希硫酸とは、質量濃度が50質量%未満の硫酸水溶液である。
用いる硫酸の濃度(硫酸水溶液(H2SO4+H2O)中のH2SO4の濃度)が低いと、水の量が多くなるため、ビスフェノールの生成反応が進行しにくくなり、ビスフェノールを製造する反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することが難しい場合がある。そのため、用いる硫酸の濃度は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。また、用いる硫酸の濃度の上限は、通常99.5質量%以下又は99質量%以下である。
[溶液(B1)]
溶液(B1)は、アセトンを含む。また、溶液(A1)がメシチルオキシドを含まない場合には、メシチルオキシドは、溶液(B1)の必須成分である。溶液(A1)がメシチルオキシドを含む場合、溶液(B1)はメシチルオキシドを含んでもよく、含まなくてもよい。
(アセトン)
本発明の製造方法に用いるアセトンは、以下の一般式(2)で表される化合物である。
[メシチルオキシド]
溶液(A1)及び/又は溶液(B1)は、メシチルオキシドを含む。本発明のビスフェノールの製造方法に用いるメシチルオキシドは、以下の一般式(3)で表される化合物である。沸点は約129.5℃である。
メシチルオキシドは、市販のものを用いることができる。また、後述するように、ビスフェノールの生成時に副生したメシチルオキシドを回収して用いてもよい。
[その他の成分]
溶液(A1)及び溶液(B1)は、有機溶媒やチオール助触媒などその他の成分を含んでもよい。
(有機溶媒)
ビスフェノールを生成する反応は、有機溶媒存在下で行ってもよい。有機溶媒として、芳香族炭化水素や、脂肪族アルコール、脂肪族炭化水素を添加して行っても良い。これらの有機溶媒は、1種以上を含んでもよい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
生成してくるビスフェノールを有機溶媒に完全に溶解させずに分散させた方が、ビスフェノールが分解しにくい。また、反応終了後、反応液からビスフェノールを回収する際の損失(例えば、晶析時の濾液への損失)を低減できることからも、室温においてビスフェノールの溶解度が低い有機溶媒を用いることが好ましい。室温においてビスフェノールの溶解度が低い有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素が挙げられる。このため、溶液(A1)及び/又は溶液(B1)は、芳香族炭化水素を含むことが好ましく、芳香族炭化水素を主成分として含むことが好ましい。また、有機溶媒中に芳香族炭化水素を55質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
ビスフェノールを生成する反応に用いる芳香族炭化水素は、ビスフェノールの単離精製後に蒸留回収して再利用することができる。芳香族炭化水素を蒸留回収する場合には、芳香族炭化水素は、沸点が低いものが好ましい。
ビスフェノールの析出のしやすさや再利用のしやすさ等の観点から、芳香族炭化水素は沸点60~200℃が好ましい。芳香族炭化水素がメシチルオキシドの沸点に近い場合には、芳香族炭化水素と一緒に副生したメシチルオキシドを回収し再利用することができるため、沸点100~170℃がより好ましい。具体的には、トルエンやキシレンが挙げられる。
(チオール助触媒)
芳香族アルコールと、アセトンとを縮合させる反応では、助触媒としてチオール助触媒を用いることができる。助触媒として用いるチオール助触媒としては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタン、メルカプトフェノールなどが挙げられる。
チオール助触媒を用いる場合、チオール助触媒は、溶液(B1)に予め混合してから反応に供することが好ましい。チオール助触媒と、アセトンとの混合方法は、チオール助触媒に、アセトンを供給してもよく、アセトンにチオール助触媒を供給しても良い。
[反応液(C1)]
反応液(C1)は、溶液(A1)と、溶液(B1)とを含む。芳香族アルコールと、アセトンとの縮合反応において、溶液(A1)と溶液(B1)の混合順に特に制限はないが、溶液(A1)に、溶液(B1)を供給し、縮合反応を行うことが好ましい。溶液(B1)は、一括で供給する方法や、分割して供給する方法を用いることができるが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給する方法が好ましい。
[原料の比率]
縮合に用いる芳香族アルコールに対しアセトンの量が多い場合、アセトンが多量化し易く、また少ない場合は芳香族アルコールが未反応で損出する。これらのことから、アセトンに対する芳香族アルコールの物質量比(モル比)の下限は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上である。また、その上限は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
縮合に用いるアセトンに対する酸触媒の物質量比(酸触媒の物質量/アセトンの物質量)は、少ない場合は、縮合反応の進行とともに副生する水によって酸触媒が希釈されて反応に時間を要する。また、多い場合は、アセトンの多量化が進行する場合ある。これらのことから、縮合に用いるアセトンに対する酸触媒の物質量比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
縮合に用いるアセトンに対するメシチルオキシドの物質量比(メシチルオキシドの物質量/アセトンの物質量)は、少ない場合は、アセトンとアセトンの自己縮合体との平衡反応が、自己縮合体側へ寄り、供給したアセトン基準の選択率が低下し、ビスフェノールの製品の歩留まり低下を招く傾向になる。また、過剰な場合は、ビスフェノールの製品の色調悪化を招く傾向となる。これらのことから、アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0003以上、さらに好ましくは0.0005以上である。また、その上限は、好ましくは0.005以下であり、0.004以下、0.003以下、0.0025以下、0.002以下の順でより好ましい。
縮合に用いるアセトンに対する有機溶媒の質量比(有機溶媒の質量/アセトンの質量)は、多すぎると、アセトンと、芳香族アルコールとが反応しにくく、反応に長時間を要する。少なすぎると、生成してくるビスフェノールが固化する場合や、アセトンの多量化が促進される場合がある。これらのことから、仕込み時のアセトンに対する有機溶媒の質量比は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。また、その上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
なお、溶液(A1)及び溶液(B1)は有機溶媒を含んでもよく、この場合、アセトンに対する、溶液(A1)及び溶液(B1)中の有機溶媒の合計量が上記範囲内であることが好ましい。
アセトンに対するチオール助触媒の物質量比(チオール助触媒の物質量/アセトンの物質量)は、少ないとチオール助触媒を用いることによるビスフェノールの選択性改善の効果が得られにくく、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、アセトンに対するチオール助触媒の物質量比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
[反応温度]
反応温度は、低すぎると縮合反応が進行しにくくなることから、好ましくは-30℃以上であり、-20℃以上、-15℃以上、-5℃以上、0℃以上の順でより好ましい。また、反応温度が高すぎると、副反応であるアセトン又はケトンの自己縮合反応が進行し、助触媒であるチオールを用いた場合にはチオールの酸化分解が進行しやすくなるため、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。
[反応時間]
本発明のビスフェノールの製造方法において、縮合反応の反応時間は、製造するビスフェノールの種類や反応温度、製造スケール等の反応条件により適宜調整されるものであるが、通常、500時間以下であり、400時間以下や350時間以下であってもよい。長い場合、生成したビスフェノールが分解することから、好ましくは30時間以下、より好ましくは25時間以下、更に好ましくは20時間以下である。また、反応時間の下限は、通常、0.5時間以上であり、1時間以上であることが好ましく、1.5時間以上であることがより好ましい。
なお、酸触媒下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドが接触することで縮合反応が起こるため、反応時間の開始点は、酸触媒下、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの接触が開始した時点(縮合反応開始時点)となる。例えば、芳香族アルコールと酸触媒とを混合した混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
[ビスフェノール]
本発明のビスフェノールの製造方法で製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(4)で表される化合物である。
一般式(4)のR1~R4は、一般式(1)と同義であり、R5、R6は、一般式(2)のR5、R6におけるものと同義であり、好適な態様も同じである。
具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも、本発明のビスフェノールの製造方法で製造される好適なビスフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス-4ヒドロキシフェニル-プロパン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンからなる群から選択されるいずれかである。
<工程(S2)>
工程(S2)は、前記ビスフェノールを含む反応液(D1)からビスフェノールを単離する工程である。
ビスフェノールを含む反応液(D1)からのビスフェノールの単離は、常法により行うことができる。
例えば、工程(S2)は、ビスフェノールを含む反応液(D1)を固液分離し、ビスフェノールを得る工程とすることができる。
また、図2に示すように、工程(S2)は、反応液(D1)から水相(E1)を除去し、有機相(F1)を得る工程(S2-1)と、有機相(F1)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1)を得る工程(S2-2)と、スラリー液(G1)を固液分離し、ビスフェノールを得る工程(S2-3)と、を有するものにできる。
(工程(S2-1))
工程(S2-1)は、ビスフェノールを含む反応液(D1)から水相(E1)を除去し、有機相(F1)を得る工程である。反応液(D1)は、生成したビスフェノールに加えて、生成した水、酸触媒、メシチルオキシド、未反応の芳香族アルコール、未反応のアセトンなどを含む。このため、酸触媒及び水が水相(E1)の主な成分となり、有機相(F1)には、ビスフェノール、メシチルオキシド、芳香族アルコールなどが含まれる。また、工程(S1)や工程(S2-1)で有機溶媒を用いた場合には、反応液(D1)や有機相(F1)は有機溶媒も含む。
反応液(D1)が生成したビスフェノールが析出しスラリー状である場合は、加熱や良溶媒の添加等によりビスフェノールを溶解させることが好ましい。水相(E1)の除去とビスフェノールの溶解はどちらを先に行ってもよく、ビスフェノールを溶解させた後、水相(E1)を除去し、有機相(F1)を得てもよく、水相(E1)を除去した後、ビスフェノールを溶解させて、有機相(F1)を得てもよい。
例えば、スラリー状の反応液(D1)から有機相(F1)を得る方法として以下の方法(i)~方法(iv)の方法が挙げられる。
・方法(i)
スラリー状の反応液(D1)と塩基性水溶液とを加熱混合し、ビスフェノールを溶解させ、次いで、水相(E1)と有機相(F1)とに分離させた後、水相(E1)を除去し、有機相(F1)を得る方法
・方法(ii)
スラリー状の反応液(D1)と塩基性水溶液と抽出溶媒とを加熱混合し、ビスフェノールを溶解させ、次いで、水相(E1)と有機相(F1)とに分離させた後、水相(E1)を除去し、有機相(F1)を得る方法
・方法(iii)
スラリー状の反応液(D1)を、水相(E1)とスラリー状の有機相(F1s)とに分離させ、水相(E1)を除去し、次いで、有機相(F1s)を加熱し、ビスフェノールを溶解させ、有機相(F1)を得る方法
・方法(iv)
スラリー状の反応液(D1)を希釈溶媒で希釈したスラリー状の希釈液を、水相(E1)とスラリー状の有機相(F1s)とに分離させ、水相(E1)を除去し、次いで、有機相(F1s)を加熱し、ビスフェノールを溶解させ、有機相(F1)を得る方法
方法(i)、方法(ii)で用いられる塩基性水溶液としては、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
方法(ii)で用いられる抽出溶媒としては、芳香族炭素などの有機溶媒が挙げられる。
方法(iv)で用いられる希釈溶媒としては、酸性~中性の水溶液、水、芳香族炭化水素等が挙げられる。
方法(i)~方法(iv)でビスフェノールを溶解させるための加熱温度は、ビスフェノールが溶解する温度であれば特に限定されず、スラリー状の有機相中の有機溶媒の有無や有機溶媒の種類等に応じて適宜決定される。具体的には、50℃以上や60℃以上とすることができる。また、加熱温度が高すぎるとビスフェノールが分解しやすくなるので、100℃以下や90℃以下が好ましい。
得られた有機相(F1)は、更に、水や塩基性水溶液で洗浄を行った後、工程(S2-2)に用いてもよい。例えば、得られた有機相(F1)を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄することができる。また、有機相(F1)を重曹水などで洗浄し、更に必要に応じて水や食塩水などで洗浄することができる。
(工程(S2-2))
工程(S2-2)は、有機相(F1)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1)を得る工程である。
ビスフェノールは、有機相(F1)を冷却温度まで冷却することで析出させることができる。
冷却方法は特に限定されないが、水冷や空冷等で行うことができる。結晶が析出しやすく、析出する結晶の純度を高めるためには、種晶を添加してもよい。種晶は、冷却開始時や冷却中に添加することができる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、工程(S2-2)の前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してもよい。
冷却温度はビスフェノールの析出が起こる範囲で選択すればよく特に限定されないが、冷却温度は高すぎると結晶が十分に析出しないため、30℃以下であることが好ましく、20℃以下がより好ましい。また、冷却温度は、-30℃以上の温度で適宜選択することができる。例えば、-20℃以上、-15℃以上、-5℃以上、0℃以上としてもよい。有機相(F1)の組成によるが、冷却温度は低すぎると、有機相(F1)が凝固しやすくなるので、5℃以上が好ましい。
冷却速度は、通常、0.1~1.5℃/min程度である。冷却速度が遅すぎると、ビスフェノールの析出に長時間を要し、冷却速度が速すぎても、不純物を含んだ状態で結晶となりやすい。析出時間は1~10時間であることが好ましい。
(工程(S2-3))
工程(S2-3)は、スラリー液(G1)をビスフェノールと、溶液(H1)とに固液分離する工程である。固体成分はビスフェノールである。液体成分である溶液(H1)は、芳香族アルコールやメシチルオキシドが含まれる。また、工程(S1)や工程(S2-1)で有機溶媒を用いた場合には、溶液(H1)は有機溶媒も含む。
固液分離の方法としては、濾過、遠心分離、デカンテーション等を利用できる。
得られたビスフェノールは、更に、晶析や有機溶媒等を用いた懸濁洗浄などの精製を行ってよい。また、得られたビスフェノールは、乾燥させてもよい。乾燥の方法は減圧乾燥であっても、常圧での乾燥であってもよい。乾燥温度は、適宜決定することができ、例えば、50~120℃で、2~15時間乾燥させることができる。
<ビスフェノールの単離精製時に排出される液体成分の再利用>
工程(S2)で排出される液体成分(例えば、工程(S2-3)で分離された液体成分である溶液(H1))は、メシチルオキシドや未反応の芳香族アルコールを含む。これらのメシチルオキシドや芳香族アルコールは、蒸留等で回収し、工程(S1)の溶液(A1)や溶液(B1)の調製原料として再利用してもよい。反応や精製に用いた有機溶媒も蒸留等で回収し、再利用できる。
また、芳香族アルコールや有機溶媒と、メシチルオキシドとの沸点が近い場合は、芳香族アルコールや有機溶媒と一緒にメシチルオキシドを回収して用いてもよい。
芳香族アルコールや有機溶媒と一緒にメシチルオキシドを回収して、再利用する方法の具体例のフローチャートを図3~図5に示す。
[ビスフェノールの製造方法(I)]
図3は、芳香族アルコール及びメシチルオキシドを同時に回収し、溶液(A1)の調製原料として再利用するビスフェノールの製造方法(I)を示すフローチャートである。 図3に示すように、ビスフェノールの製造方法(I)は、工程(S1a)と工程(S2-1a)と、工程(S2-2a)と、工程(S2-3a)と、工程(S3a)とを有する方法であり、工程(S3a)で回収した回収溶剤(JIa)を、溶液(A1a)の少なくとも一部として再利用するものである。
また、芳香族アルコール及びメシチルオキシドを一緒に回収する方法であるため、ビスフェノールの製造方法(I)で用いられる芳香族アルコールは、メシチルオキシドに近い沸点を有する必要があり、メチルフェノールやジメチルフェノールのような150℃~220℃の沸点を有することが好ましい。
(工程(S1a))
工程(S1a)は、芳香族アルコール、酸触媒及びメシチルオキシドを含む溶液(A1a)と、アセトン及びメシチルオキシドを含む溶液(B1a)とを含む反応液(C1a)中で、芳香族アルコールとアセトンとを反応させ、ビスフェノール、メシチルオキシド及び芳香族アルコールを含む反応液(D1a)を得る工程であり、工程(S1)の態様のひとつである。
工程(S1a)では、溶液(A1)として、芳香族アルコール、酸触媒及びメシチルオキシドを含む溶液(A1a)を用い、溶液(B1)として、アセトン及びメシチルオキシドを含む溶液(B1a)を用い、調製される反応液(C1)は、溶液(A1a)と溶液(B1a)とを含む反応液(C1a)である。また、反応終了後の反応液(D1)は、ビスフェノール、メシチルオキシド及び芳香族アルコールを含む反応液(D1a)である。
上記の通り、溶液(A1a)及び溶液(B1a)は、有機溶媒やチオール助触媒などをさらに含んでよい。各条件等は、工程(S1)と同様である。
(工程(S2-1a)~工程(S2-3a))
工程(S2-1a)は、反応液(D1a)から水相(E1a)を除去し、ビスフェノール、芳香族アルコール及びメシチルオキシドを含む有機相(F1a)を得る工程である。
工程(S2-2a)は、有機相(F1a)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1a)を得る工程である。
工程(S2-3a)は、スラリー液(G1a)を、ビスフェノールと、芳香族アルコール及びメシチルオキシドを含む溶液(H1a)とに固液分離する工程である。
工程(S2-1a)~工程(S2-3a)は、工程(S2-1)~工程(S2-3)の態様のひとつであり、各条件等は上記と同様である。
(工程(S3a))
工程(S3a)は、工程(S2-3a)で分離された溶液(H1a)を蒸留し、メシチルオキシド及び芳香族アルコールを含む回収溶剤(J1a)を得る工程である。
蒸留は、常圧で行っても、減圧で行ってもよい。例えば、200~800hPaの減圧下、70~200℃で溶剤を回収することができる。
工程(S3a)で回収した回収溶剤(JIa)は、溶液(A1a)の少なくとも一部として再利用される。回収溶剤(JIa)は、溶液(A1a)の調製原料として、工程(S1a)を行う反応装置に循環させたり、次の反応の工程(S1a)に再利用する。
溶液(A1a)は、回収溶剤(J1a)と酸触媒とを混合したものとしてもよいが、有機溶媒や未使用の芳香族アルコール、未使用のメシチルオキシドなどと適宜加えて調製してもよい。
溶液(A1a)は、回収溶剤(J1a)中の芳香族アルコールやメシチルオキシドの量や溶液(B1a)の組成、溶液(A1a)と溶液(B1a)の混合比などを考慮して、反応液(C1a)中のメシチルオキシドの量が上記好適な範囲となるように、未使用の芳香族アルコールや有機溶媒などを用いて調製することが好ましい。
なお、図3は、溶液(A1)及び溶液(B1)にメシチルオキシドを含む例であるが、回収溶剤(J1a)を繰り返し再利用する場合、メシチルオキシドは、溶液(A1)及び溶液(B1)のうち少なくとも溶液(A1)に含まれればよく、溶液(B1)は、メシチルオキシドを含んでも含まなくてもよい。
また、上記の通り、溶液(A1)及び/又は溶液(B1)は有機溶媒として芳香族炭化水素を含んでもよい。図4、図5は、溶液(A1)及び溶液(B1)に含まれる芳香族炭化水素を再利用する例である。
[ビスフェノールの製造方法(II)]
図4は、芳香族炭化水素及びメシチルオキシドを同時に回収し、溶液(A1)及び溶液(B1)の調製原料として再利用するビスフェノールの製造方法(II)を示すフローチャートである。
図4に示すように、ビスフェノールの製造方法(II)は、工程(S1b)と工程(S2-1b)と、工程(S2-2b)と、工程(S2-3b)と、工程(S3b)とを有する方法であり、工程(S3b)で回収した回収溶剤(JIb)を、溶液(A1)及び溶液(B1)の少なくとも一部として再利用するものである。
また、芳香族炭化水素及びメシチルオキシドを一緒に回収する方法であるため、ビスフェノールの製造方法(II)で用いられる芳香族炭化水素は、メシチルオキシドに近い沸点を有する必要があり、トルエンやキシレンのような100℃~220℃の沸点を有することが好ましい。
(工程(S1b))
工程(S1b)は、芳香族アルコール、酸触媒、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む溶液(A1b)と、アセトン、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む溶液(B1b)とを混合した反応液(C1b)中で、芳香族アルコールとアセトンとを反応させ、ビスフェノールを含む反応液(D1b)を得る工程であり、工程(S1)の態様のひとつである。
工程(S1b)では、溶液(A1)として、芳香族アルコール、酸触媒、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む溶液(A1b)を用い、溶液(B1)として、アセトン、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む溶液(B1b)を用い、調製される反応液(C1)は、溶液(A1b)と溶液(B1b)とを含む反応液(C1b)である。また、反応終了後の反応液(D1)は、ビスフェノール、メシチルオキシド、芳香族アルコール及び芳香族炭化水素を含む反応液(D1b)である。
上記の通り、溶液(A1b)及び溶液(B1b)は、芳香族炭化水素以外の有機溶媒やチオール助触媒などをさらに含んでよい。各条件等は、工程(S1)と同様である。
(工程(S2-1b)~工程(S2-3b))
工程(S2-1b)は、反応液(D1b)から水相(E1b)を除去し、ビスフェノール、芳香族アルコール、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む有機相(F1b)を得る工程である。
工程(S2-2b)は、有機相(F1b)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1b)を得る工程である。
工程(S2-3b)は、スラリー液(G1b)を、ビスフェノールと、芳香族アルコール、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む溶液(H1b)とに固液分離する工程である。
工程(S2-1b)~工程(S2-3b)は、工程(S2-1)~工程(S2-3)の態様のひとつであり、各条件等は上記と同様である。
(工程(S3b))
工程(S3b)は、工程(S2-3b)で分離された溶液(H1b)を蒸留し、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む回収溶剤(J1b)を得る工程である。
蒸留は、常圧で行っても、減圧で行ってもよい。例えば、200~800hPaの減圧下、70~120℃で溶剤を回収することができる。
工程(S3b)で回収した回収溶剤(JIb)は、溶液(A1b)及び溶液(B1b)の少なくとも一部として再利用する。回収溶剤(JIb)は、溶液(A1b)及び溶液(B1b)の有機溶媒として、工程(S1b)を行う反応装置に循環させたり、次の反応の工程(S1b)に再利用する。
溶液(A1b)は、回収溶剤(J1b)と酸触媒と芳香族アルコールとを混合したものとしてもよいが、芳香族炭化水素とは異なる有機溶媒や未使用の芳香族アルコール、未使用のメシチルオキシドなどを適宜加えて調製してもよい。溶液(B1b)は、回収溶剤(J1b)とアセトンとを混合したものとしてもよいが、芳香族炭化水素とは異なる有機溶媒やチオール助触媒などを適宜加えて調製してもよい。
回収溶剤(J1b)中の芳香族炭化水素やメシチルオキシドの量や溶液(A1b)と溶液(B1b)との混合比などを考慮して、反応液(C1b)中のメシチルオキシドの量が上記好適な範囲となるように調製することが好ましい。
なお、図4は、溶液(A1)及び溶液(B1)にメシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含む例であるが、回収溶剤(J1b)を繰り返し再利用する場合、メシチルオキシド及び芳香族炭化水素は、溶液(A1)及び溶液(B1)のうち少なくとも一方に含まれればよく、溶液(A1)のみがメシチルオキシド及び芳香族炭化水を含むものとしたり、溶液(B1)のみがメシチルオキシド及び芳香族炭化水素を含むものとしてもよい。
[ビスフェノールの製造方法(III)]
図5は、工程(S2)で排出される液体成分から、芳香族アルコール及びメシチルオキシドと、芳香族炭化水素及びメシチルオキシドとをそれぞれ回収し、溶液(A1)及び溶液(B1)の調製原料として再利用するビスフェノールの製造方法(III)を示すフローチャートである。
また、芳香族アルコール及びメシチルオキシドと、芳香族炭化水素及びメシチルオキシドとをそれぞれ回収する方法であるため、ビスフェノールの製造方法(III)で用いられる芳香族アルコールは、170℃~220℃の沸点を有することが好ましく、芳香族炭化水素は、100℃~150℃の沸点を有することが好ましい。
図5に示すように、ビスフェノールの製造方法(III)は、工程(S1b)と工程(S2-1b)と、工程(S2-2b)と、工程(S2-3b)と、工程(S3b)と、工程(S3a-1)とを有する方法である。また、ビスフェノールの製造方法(III)では、工程(S3b)で回収した回収溶剤(JIb)を、溶液(A1)及び溶液(B1)の少なくとも一部として再利用し、工程(S3a-1)で回収した回収溶剤(J1a)を、溶液(A1)の少なくとも一部として再利用する。
工程(S1b)と、工程(S2-1b)と、工程(S2-2b)と、工程(S2-3b)と、工程(S3b)は、ビスフェノールの製造方法(II)と同様である。
ビスフェノールの製造方法(III)では、ビスフェノールの製造方法(II)の各工程に加えて、工程(S3a-1)を有し、工程(S3a-1)で回収した回収溶剤(J1a)を溶液(A1)の少なくとも一部として再利用する。
(工程(S3a-1))
工程(S3a-1)は、工程(S2-3b)で分離された溶液(H1b)を蒸留し、メシチルオキシド及び芳香族アルコールを含む回収溶剤(J1a-1)を得る工程である。
蒸留は、常圧で行っても、減圧で行ってもよい。例えば、200~800hPaの減圧下、70~200℃で溶剤を回収することができる。
工程(S3a-1)は、工程(S3b)に引き続き行うことが好ましく、工程(S3b)及び工程(S3a-1)では、工程(S2-3b)で分離された溶液(H1b)を蒸留し回収溶剤(J1b)を回収した後、回収溶剤(J1a-1)を回収することが好ましい。例えば、70~120℃で回収溶剤(J1b)を回収した後、温度を150~200℃に昇温することで、回収溶剤(J1a-1)を回収することができる。
なお、ビスフェノールの製造方法(I)~(III)は、工程(S2)が、工程(S2-1)~工程(S2-3)を有するものであるが、上記の通り、工程(S2)は、ビスフェノールを含む反応液(D1)を固液分離し、ビスフェノールを得る工程としてもよい。この場合、反応液(D1)を固液分離することで得られる液体成分から、芳香族アルコールや芳香族炭化水素を回収し、工程(S1)の反応液(C1)の調製原料として再利用できる。反応液(D1)を固液分離した後の液体成分は水相と有機相の2相系であるから、油水分離し水相を除去し、得られた有機相を塩基性水溶液や水で適宜洗浄した後、メシチルオキシドを含む芳香族アルコールやメシチルオキシドを含む芳香族炭化水素を蒸留回収することが好ましい。
[ビスフェノールの用途]
本発明のビスフェノールの製造方法で得られるビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることから、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のビスフェノールの製造方法にて得られたビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と記載する場合がある)を原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法にて得られるポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
上記のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、本発明のビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール1molに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001mol以上、好ましくは1.002mol以上であり、また、通常1.3mol以下、好ましくは1.2mol以下である。
原料の供給方法としては、本発明のビスフェノール及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール又は炭酸ジフェニル1molに対して用いられる触媒量は、通常0.05μmol以上、好ましくは0.08μmol以上、さらに好ましくは0.10μmol以上であり、また、通常100μmol以下、好ましくは50μmol以下、さらに好ましくは20μmol以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[原料及び試薬]
オルトクレゾール、アセトン、トルエン、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メシチルオキシド、ビフェニル、炭酸セシウムは、和光純薬株式会社の試薬を使用した。炭酸ジフェニルは三菱ケミカル社製を用いた。
[評価]
<ビスフェノールの反応生成液の組成分析>
ビスフェノールの反応生成液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A
Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 250mm×3.0mmID
・方式:低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1ミリリットル:900ミリリットルの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~42分は溶離液組成をA液:B液=10:90へ徐々に変化させ、
分析時間42~50分はA液:B液=10:90に維持、
・流速0.34ミリリットル/分
・検出波長は280nm
<溶媒回収蒸留の留分の組成分析>
溶媒回収蒸留の留分の組成分析は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製 GC-2014
Agilent DB-1 0.530mm×30m 1.50μm
・方式:FID
・気化室温度:230℃
・検出器温度:300℃
・分析時間0分から5分ではカラム温度を50℃に保ち、分析時間5~30分はカラム温度を280℃まで徐々に昇温し、分析時間30分から40分はカラム温度を280℃に保った。
・定量:内部標準法。内部標準物質にはビフェニルを用いた。
<ビスフェノールの色調評価>
ビスフェノールの色調の評価は以下の方法で実施した。
・装置:日本電色工業社製 SE6000
アルミブロックヒーター
・器具:日電理化硝子製の試験管(24mm×200m/m P-24)
試験管に製品ビスフェノールを20g計り取り、アルミブロックヒーターを用いて190℃に加温・溶融し、加温開始から30分経過時点のハーゼン色数を測定した。
<ペレットYI>
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計「CM-5」を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラス「CM-A212」を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス「CM-A124」をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板「CM-A210」を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
YIは、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
[参考例]
(アセトンに代えてメシチルオキシドを用いたビスフェノールC(BPC)反応)
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4gを入れ、内温を10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、混合液Aとした。次に、前記滴下ロートに、メシチルオキシド51.5g(物質量0.53mol)、ドデカンチオール5.4g、回収トルエン50.0gを入れ、混合液Bとした。混合液Aを10℃以下に維持した状態で、該滴下ロート内の混合液Bを撹拌しながら45分かけて混合液Aへ滴下し、反応液を得た。この反応液を10℃に維持した状態で更に1時間撹拌し、その後、25%水酸化ナトリウム溶液120gを加えて撹拌し75℃まで昇温した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、反応液617gを得た。この反応液を、高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCの生成量を確認したところ、ビスフェノールCに相当するピークは検出下限以下であった。
[実施例1]
(1-1)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエンを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4g、メシチルオキシド0.034gを入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A1」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、トルエン50.0g、メシチルオキシド0.006gを入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B1」という)とした。
アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は0.0004((0.034g+0.006g)÷メシチルオキシドの分子量98.15g÷仕込んだアセトンの物質量1.05mol)であった。
<工程(S1)>
混合液B1を10℃以下に維持した状態で、該滴下ロート内の混合液B1を撹拌しながら45分かけて混合液A1へ滴下し、ビスフェノールCの反応液を得た。ビスフェノールCの反応液を10℃に維持した状態で更に1時間撹拌した。
<工程(S2-1)>
工程(S1)後の反応液(D1)に25%水酸化ナトリウム溶液120gを加えて撹拌し75℃まで昇温した後、静置させて油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去した。得られた有機相に、3重量%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて撹拌して中和し、油水分離した。油水分離後、水相をセパラブルフラスコの底から除去し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F1」という)618.8gを得た。
<工程(S2-2)>
工程(S2-2)で得た有機相(F1)を、80℃から5℃まで徐々に冷却し、ビスフェノールCの結晶を析出させ、スラリー液(G1)を得た。
<工程(S2-3)>
得られたスラリー液(G1)(ビスフェノールの結晶を含む液)を、遠心分離機を用いて固液分離を行い、ビスフェノールの粗ウェットケーキ220gと、溶液(H1)(晶析ろ液)284gとをそれぞれ得た。
この粗ウェットケーキにトルエンを175g供給し、ケーキをほぐしながら懸濁洗浄を実施し、再度遠心分離機を用いて固液分離を行った。この作業を更に2回繰り返し、精ケーキを得た。
オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、白色のビスフェノールC190gを得た。
(1-2)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液F1の組成を分析したところ、ビスフェノールCが35.9質量%生成していた。
アセトン基準のビスフェノールCの反応収率(mol%)は、「生成したビスフェノールCのアセトン換算の物質量/原料のアセトンの物質量×100(%)」より求めた。また、アセトン基準のビスフェノールCの選択率(mol%)は、「生成したビスフェノールCのアセトン換算の物質量/((原料のアセトンの物質量)-(未反応のアセトンの物質量))×100(%)」より求めた。
その結果、ビスフェノールCの反応収率は、82.6mol%(35.9[質量%]×有機相(F1)の質量618.8[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol])であった。
また、ビスフェノールCの選択率は、94.3mol%)であった。
(1-3)アセトン基準のビスフェノールC収率(ビスフェノールCの歩留まり)
アセトン基準のビスフェノールCの収率は、70.7mol%((得られたビスフェノールCの質量190[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=70.7mol%)だった。
(1-4)ビスフェノールの色調評価
(1-1)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA20であった。
(1-5)ポリカーボネート樹脂の評価
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、(1-1)で得られた製品ビスフェノールCを100.00g(0.39mol)、炭酸ジフェニル86.49g(0.4mol)及び、400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶融した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは7.23であった。
[実施例2]
(2-1)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエンを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4g、メシチルオキシド0.067gを入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A2」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、トルエン50.0g、メシチルオキシド0.012gを入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B2」という)とした。
アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は0.0008((0.067g+0.012g)÷メシチルオキシドの分子量98.15g÷仕込んだアセトンの物質量1.05mol)であった。
実施例1の混合液A1の代わりに混合液A2を用い、混合液B1の代わりに混合液B2を用いた以外は実施例1と同様の手順で工程(S1)と工程(S2-1)を実施し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F2」という)607.4gを得た。
また、得られたビスフェノールCを含む反応生成液F2を用いて、実施例1と同様の手順で工程(S2-2)、工程(S2-3)を実施し、白色のビスフェノールC191gを得た。
(2-2)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液F2の組成を分析したところ、ビスフェノールCが35.8質量%生成していた。アセトン基準のビスフェノールCの反応収率は、80.9mol%であった。また、アセトン基準の選択率は、95.4mol%であった。
(2-3)アセトン基準のビスフェノールCの収率
アセトン基準のビスフェノールCの収率は、71.1mol%((得られたビスフェノールCの質量191[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=71.1mol%)だった。
(2-4)ビスフェノールの色調評価
(2-1)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA25であった。
(2-5)ポリカーボネート樹脂
(2-1)で得られた製品を用いて、実施例1と同様の手順でポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは7.66であった。
[実施例3]
(3-1)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエンを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4g、メシチルオキシド0.073gを入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A3」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、トルエン50.0g、メシチルオキシド0.013gを入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B3」という)とした。
アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は0.0008((0.073g+0.013g)÷メシチルオキシドの分子量98.15g÷仕込んだアセトンの物質量1.05mol)であった。
実施例1の混合液A1の代わりに混合液A3を用い、混合液B1の代わりに混合液B3を用いた以外は実施例1と同様の手順で工程(S1)と工程(S2-1)を実施し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F3」という)620.2gを得た。
また、得られたビスフェノールCを含む反応生成液を用いて、実施例1と同様の手順で工程(S2-2)、工程(S2-3)を実施し、白色のビスフェノールC192gを得た。
(3-2)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液の組成を分析したところ、ビスフェノールCが35.9質量%生成していた。アセトン基準のビスフェノールCの反応収率は、82.8mol%であった。また、アセトン基準の選択率は、97.7mol%であった。
(3-3)アセトン基準のビスフェノールCの収率
アセトン基準のビスフェノールCの収率は、71.4mol%((得られたビスフェノールCの質量192[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=71.4mol%)だった。
(3-4)ビスフェノールの色調評価
(3-1)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA21であった。
(3-5)ポリカーボネート樹脂
(3-1)で得られた製品を用いて、実施例1と同様の手順でポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは7.34であった。
[実施例4]
(4-1)回収蒸留
<工程(S3b)>
実施例1~3の工程(S2-3)で得た溶液(H1)(晶析ろ液)を混合し、温度計、スルザーラボラトリーパッキンを備えた留出管、リービッヒ冷却管、撹拌翼及びオイルバスを備えた1Lの蒸留フラスコに、520.1g入れ、撹拌しながら90℃に加温し、真空ポンプで647hPaに減圧しつつ、単蒸留で留出させた。留出率4.8%(留出量25.0g/仕込み量520.1g×100)までを初留として廃棄し、オイルバスの温度を110℃まで徐々に昇温しながら留出率68.7%(留出量357.0g/仕込み量520.1g×100)まで蒸発させ、メシチルオキシド及びトルエンを含む回収溶剤(以下、「混合液C」という)を332.0g得た。
ガスクロマトグラフィーを用いて混合液Cの組成分析を行ったところ、メシチルオキシドを0.032質量%濃度含有していた。
(4-2)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で(4-1)で得た混合液Cを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4gを入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A4」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、(4-1)で得た混合液Cを50.0g入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B4」という)とした。
反応に供給したメシチルオキシドは0.106g((混合液C280.0g+50.0g)×混合液C中のメシチルオキシド濃度0.032質量%÷100)であり、アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は0.0010(0.106g÷メシチルオキシドの分子量98.15g÷仕込んだアセトンの物質量1.05mol)であった。
実施例1の混合液A1の代わりに混合液A4を用い、混合液B1の代わりに混合液B4を用いた以外は実施例1と同様の手順で工程(S1)と工程(S2-1)を実施し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F4」という)614.1gを得た。
また、得られたビスフェノールCを含む反応生成液F4を用いて、実施例1と同様の手順で工程(S2-2)、工程(S2-3)を実施し、白色のビスフェノールC190gを得た。
(4-3)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液F4の組成を分析したところ、ビスフェノールCが34.6質量%生成していた。アセトン基準のビスフェノールCの反応収率は、79.0mol%であった。また、アセトン基準の選択率は95.4mol%であった。
(4-4)アセトン基準のビスフェノールCの収率
アセトン基準のビスフェノールCの収率は、70.7mol%((得られたビスフェノールCの質量190[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=70.7mol%)だった。
(4-5)ビスフェノールの色調評価
(4-2)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA27であった。
(4-6)ポリカーボネート樹脂
(4-2)で得られた製品を用いて、実施例1と同様の手順でポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは7.42であった。
[実施例5]
(5-1)回収蒸留
<工程(S3a-1)>
実施例4の(4-1)で混合液Cを得たのち、オイルバスの温度を170℃まで徐々に昇温しながら留出率81.7%(留出量425.0g/仕込み量520.1g×100)まで更に蒸発させ、メシチルオキシド及びオルトクレゾールを含む回収溶剤(以下、「混合液D」という)を68.0g得た。
ガスクロマトグラフィーを用いて混合液Dの組成分析を行ったところ、メシチルオキシドを0.736質量パーセント濃度含有していた。
(5-2)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエンを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール203.5g、混合液Dを26.9g入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A5」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、トルエン50.0gを入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B5」という)とした。
反応に供給したメシチルオキシドは0.198g(混合液D26.9g×混合液D中のメシチルオキシド濃度0.736質量%÷100)であり、アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は0.0019(0.198g÷メシチルオキシドの分子量98.15g÷仕込んだアセトンの物質量1.05mol)であった。
実施例1の混合液A1の代わりに混合液A5を用い、混合液B1の代わりに混合液B5を用いた以外は実施例1と同様の手順で工程(S1)と工程(S2-1)を実施し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F5」という)617.8gを得た。
また、得られたビスフェノールCを含む反応生成液F5を用いて、実施例1と同様の手順で工程(S2-2)、工程(S2-3)を実施し、白色のビスフェノールC192gを得た。
(5-3)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液F5の組成を分析したところ、ビスフェノールCが34.7質量%生成していた。アセトン基準のビスフェノールCの反応収率は、79.8mol%であった。また、アセトン基準の選択率は92.0mol%であった。
(5-4)アセトン基準のビスフェノールCの収率
アセトン基準のビスフェノールCの収率は71.4mol%((得られたビスフェノールCの質量192[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=71.4mol%)だった。
(5-5)ビスフェノールの色調評価
(5-2)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA28であった。
(5-6)ポリカーボネート樹脂
(5-2)で得られた製品を用いて、実施例1と同様の手順でポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは7.97であった。
[実施例6]
(6-1)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエンを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4g、メシチルオキシド0.280gを入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A6」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、トルエン50.0g、メシチルオキシド0.050gを入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B6」という)とした。
アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比は0.0032((0.280g+0.050g)÷メシチルオキシドの分子量98.15g÷仕込んだアセトンの物質量1.05mol)であった。
実施例1の混合液A1の代わりに混合液A6を用い、混合液B1の代わりに混合液B6を用いた以外は実施例1と同様の手順で工程(S1)と工程(S2-1)を実施し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F6」という)621.8gを得た。
また、得られたビスフェノールCを含む反応生成液F6を用いて、実施例1と同様の手順で工程(S2-2)、工程(S2-3)を実施し、白色のビスフェノールC190gを得た。
(6-2)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液F6の組成を分析したところ、ビスフェノールCが34.2質量%生成していた。アセトン基準のビスフェノールCの反応収率は、79.1mol%であった。また、アセトン基準の選択率は92.3mol%であった。
(6-3)アセトン基準のビスフェノールCの収率
アセトン基準のビスフェノールCの収率は70.7mol%((得られたビスフェノールCの質量190[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=70.7mol%)だった。
(6-4)ビスフェノールの色調評価
(6-1)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA46であった。
(6-5)ポリカーボネート樹脂
(6-1)で得られた製品を用いて、実施例1と同様の手順でポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは12.85であった。
[比較例1]
(比1-1)ビスフェノールを生成する反応
温度計、滴下ロート、ジャケット及びイカリ型撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエンを280.0g、メタノール15.0g、オルトクレゾール230.4gを入れ、内温を10℃以下とした。これを10℃以下に維持しつつ、撹拌しながら98質量%の硫酸95.0gを入れ、溶液(A1)(以下、「混合液A7」という)とした。
次に、前記滴下ロートに、アセトン61.0g(物質量1.05mol)、ドデカンチオール5.4g、トルエン50.0gを入れ、溶液(B1)(以下、「混合液B7」という)とした。
実施例1の混合液A1の代わりに混合液A7を用い、混合液B1の代わりに混合液B7を用いた以外は実施例1の工程(S1)及び工程(S2-1)と同様の手順を実施し、有機相(F1)(以下、「ビスフェノールCを含む反応生成液F7」という)620.1gを得た。
また、得られたビスフェノールCを含む反応生成液F7を用いて、実施例1の工程(S2-2)、工程(S2-3)と同様の手順を実施し、白色のビスフェノールC185gを得た。
(比1-2)ビスフェノール反応液の組成分析
高速液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールCを含む反応生成液の組成を分析したところ、ビスフェノールCが33.5質量%生成していた。アセトン基準のビスフェノールCの反応収率は、77.3mol%であった。また、アセトン基準の選択率は87.2mol%であった。
(比1-3)アセトン基準のビスフェノールCの収率
アセトン基準のビスフェノールCの収率は68.8mol%((得られたビスフェノールCの質量185[g]/ビスフェノールCの分子量256[g/mol])/仕込んだアセトンの物質量1.05[mol]×100(%)=68.8mol%)だった。
(比1-4)ビスフェノールの色調評価
(比1-1)で得た製品ビスフェノールCを試験管に20g計り取り、190℃に加熱したアルミブロックヒーターを用いて溶融した。溶融開始から30分時点でのハーゼン色数を測定したところ、APHA21であった。
(比1-5)ポリカーボネート樹脂
(比1-1)で得られた製品を用いて、実施例1と同様の手順でポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットYIは6.90であった。
実施例1~6、比較例1における、アセトンに対するメシチルオキシドの物質量比、有機相(F1)中のビスフェノールCの量(有機相(F1)中のBPC)、ビスフェノールCの反応収率(BPC反応収率)、ビスフェノールCの選択率(BPC選択率)、及びビスフェノールCの歩留まり(BPC歩留まり)を表1に示す。
表1の結果から、メシチルオキシドを添加することで、アセトン基準のBPC収率やBPC選択率が向上することがわかる。また、所定量のメシチルオキシドを、ビスフェノールCを生成する反応へ供給することで、高収率・高選択率で色調に優れた品質の製品ビスフェノールC、及びポリカーボネート樹脂を得られることが分かる。
本発明の方法で製造されたビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。

Claims (8)

  1. 芳香族アルコール及び酸触媒を含む溶液(A1)と、アセトンを含む溶液(B1)とを含み、かつ、前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)がメシチルオキシドを含む反応液(C1)中で、前記芳香族アルコールと前記アセトンとを反応させ、ビスフェノールを含む反応液(D1)を得る工程(S1)と、
    前記ビスフェノールを含む反応液(D1)からビスフェノールを単離する工程(S2)とを有し、
    前記アセトンに対する前記メシチルオキシドの物質量比が、0.0001以上、0.003以下であるビスフェノールの製造方法。
  2. 前記反応液(D1)が、前記ビスフェノール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む反応液(D1a)であり、
    前記工程(S2)が、
    前記反応液(D1a)から水相(E1a)を除去し、前記ビスフェノール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む有機相(F1a)を得る工程(S2-1a)と、
    前記有機相(F1a)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1a)を得る工程(S2-2a)と、
    前記スラリー液(G1a)を、前記ビスフェノールと、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む溶液(H1a)とに固液分離する工程(S2-3a)と、
    を有し、
    更に、前記工程(S2-3a)で分離された溶液(H1a)を蒸留し、前記メシチルオキシド及び前記芳香族アルコールを含む回収溶剤(J1a)を得る工程(S3a)を有し、
    前記回収溶剤(J1a)を、前記溶液(A1)の少なくとも一部に再利用する請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  3. 前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)が、芳香族炭化水素を含む請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記反応液(D1)が、前記ビスフェノール、前記メシチルオキシド、前記芳香族アルコール及び芳香族炭化水素を含む反応液(D1b)であり、
    前記工程(S2)が、
    前記反応液(D1b)から水相(E1b)を除去し、前記ビスフェノール、前記芳香族アルコール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む有機相(F1b)を得る工程(S2-1b)と、
    前記有機相(F1b)からビスフェノールを析出させてスラリー液(G1b)を得る工程(S2-2b)と、
    前記スラリー液(G1b)を、前記ビスフェノールと、前記芳香族アルコール、前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む溶液(H1b)とに固液分離する工程(S2-3b)と、
    を有し、
    更に、前記工程(S2-3b)で分離された溶液(H1b)を蒸留し、前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む回収溶剤(J1b)を得る工程(S3b)を有し、
    前記メシチルオキシド及び前記芳香族炭化水素を含む回収溶剤(J1b)を、前記溶液(A1)及び/又は前記溶液(B1)の少なくとも一部に再利用する請求項に記載のビスフェノールの製造方法。
  5. 前記酸触媒が、硫酸又は塩化水素ガスである請求項1乃至のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  6. 前記芳香族炭化水素が、トルエンである請求項又はに記載のビスフェノールの製造方法。
  7. 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-メチルフェニル)プロパンからなる群から選択されるいずれかである請求項1乃至のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
  8. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法で製造したビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法。
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