JP2014040376A - ビスフェノール化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】下記2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン誘導体において、従来法よりも反応での危険性を低減し、かつ効率よく、高品質の目的物を得る方法を提供する。
【解決手段】フェノール誘導体とアセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら常温下で反応させる製造方法。R〜Rは、水素原子、メチル基又はメトキシ基。

【選択図】なし

Description

本発明は、ビスフェノール化合物の製造方法に関し、詳細にはフェノール誘導体とアセトンとの脱水縮合反応により得られるビスフェノール化合物の製造方法に関する。
ビスフェノール化合物は、高分子材料、たとえばポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチックの原料として重要な化合物である。ビスフェノール化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンなどに代表される4,4−イソプロピリデンビスフェノール化合物が知られている。その製造方法としては、例えば、非特許文献1には、フェノール誘導体であるo−クレゾールと、アセトンを混ぜ合わせ、触媒として3−メルカプトプロピオン酸を添加し、これに塩化水素ガスを吹き込んで脱水縮合させる方法が挙げられている。また、非特許文献2では、塩酸の替わりに硫酸を使用して合成されている。ただし、非特許文献1において、硫酸単独の使用は、脱水作用が強すぎて副成生物を多く生成することが示唆されている。
特許文献1、特許文献2においても、酸性触媒として塩酸ガスを吹き込み、反応させている。さらには、特許文献3において、塩酸ガスの替わりに塩酸を使用して反応し、高収率、高純度で目的物の単離に成功している事が報告されている。また、目的物は異なるが、特許文献4のように、アセトンの替わりにアルデヒド(35%ホルマリン)と、o-フルオロフェノールの縮合反応を、85%リン酸触媒を使用して実施されている。
ところで、これらの従来の製造方法として、以下に挙げるような種々の問題点がある。
まず、酸性触媒として塩酸ガスを使用する場合、容積率を高くすることが出来るので、一度に原料の仕込量を多くして製造できるビスフェノールの量を大きくすることが出来る反面、塩酸ガスの取り扱いが困難であり、設備を腐食しやすく、劣化を早めることとなる。また、安全性の側面からも問題であり、収量的にもあまり良いとは言えない。また、硫酸を単独で使用する場合、非特許文献1で記載されているように、副成生物が多くなり、反応の制御が極めて困難であり、満足できる収量も得ることが出来ない。特許文献3のように塩酸と第2触媒の3−メルカプトプロピオン酸を混ぜ合わせた中に、o−クレゾール、アセトン、トルエンの混合物を滴下しながら反応させる方法は、工業的見地から優れた方法ではあるが、2系列の混合物を調製するための設備が必要である。かつ、後反応として40℃を超えるまで加温する必要があり、低沸点で引火点の低いアセトンの蒸気を外部に逃がしにくいための特別な設備が必要になる。
日本化学会誌, 1982, (8), p, 1363 - 1370. Journal of Lanzhou University(Nature Science), Feb. 2004, Vol. 40, No. 1.
特開昭62−178534 特開昭62−138443 特開2008−214248 特開平6−135875
本発明は、ビスフェノール製造におけるこれらの種々問題点を克服し、安全に効率良く製造するための製造方法を提供することである。
本発明者は、作業上の安全性確保と効率的な製造方法を確立することにより、汎用設備を使用して、ビスフェノールを誰でも安全に、かつ、低コストで容易に製造できることを目指し、鋭意工夫を重ねた結果、o−クレゾール等のフェノール誘導体、アセトン、塩酸、3−メルカプトプロピオン酸とトルエンを混ぜ合わせ、濃硫酸を滴下しながら反応させることで、安定して高収率、かつ高品質で目的のビスフェノールを得ることを見出した。
すなわち本発明は、フェノール誘導体と、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら反応させて、下記一般式(I)で示される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはその誘導体を得ることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法である。
式中、R〜Rは、それぞれに独立して、水素原子、またはメチル基もしくはメトキシ基を示す。
(I)
詳しくは本発明の一態様として、フェノール誘導体と、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら常温下で反応させて、前記一般式(I)で示される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはその誘導体を得るビスフェノール化合物の製造方法である。
さらに詳細には本発明の一態様として、o-クレゾール、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら常温下で反応させて、下記一般式(I)で示される2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを得るビスフェノール化合物の製造方法である。
式中、R〜Rは、それぞれに独立して、水素原子、またはメチル基もしくはメトキシ基を示す。
さらに詳しくは、1.0モルのフェノール誘導体、例えばo−クレゾールと、0.75モルのアセトン、1.1モルの塩酸(35〜37%)、触媒量の3−メルカプトプロピオン酸、及び少量のトルエンを常温で混ぜ合わせ、約1〜2時間をかけて0.5〜1.0モルの濃硫酸を発熱で40℃を超えないようにして滴下する。滴下終了後、約20℃で5〜15時間撹拌し、水と目的物を抽出するためのトルエンを加え、75〜80℃に加温して静置し、下層の廃酸を分液し、炭酸水素ナトリウムで油層を中和後、温水洗浄を2回行い、濾過、晶析、結晶単離、乾燥の工程を経て目的の化合物を得るものである。
本発明により、安全に効率良く特別な専用設備を必要とせずに反応と再結晶操作により、ビスフェノール化合物を製造することができる。
以下、本発明に関わる一般式(I)で示されるビスフェノール誘導体化合物の製造方法について、好適な方法について詳細に記載する。なお、本発明において「常温」とは10〜40℃を示している。
式中、R〜Rは、それぞれに独立して、水素原子、またはメチル基もしくはメトキシ基を示す。
(I)
まず、次の一般式(II)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または、メチル基もしくはメトキシ基を示す。
(II)
例えば、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール等のフェノール誘導体が挙げられる。
酸性触媒として使用する塩酸としては、35〜37%工業用塩酸、あるいは特級塩酸の使用が望ましい。使用量としては、例えばフェノール誘導体としてo−クレゾールを使用する場合、重量比で、0.8〜1.2、望ましくは、1.0〜1.1である。第2触媒として、チオール化合物を使用することが望ましい。チオール化合物としてはたとえば、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸、メルカプト酢酸等が挙げられるが、3−メルカプトプロピオン酸が、最も望ましい。3−メルカプトプロピオン酸の使用量としては、o−クレゾールに対して重量比で、0.001〜0.07、望ましくは、0.022〜0.045である。使用するケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるが、ポリカーボネート樹脂の原料として重要である、アセトンを使用した反応物が望ましい。アセトンの使用量としては、o−クレゾールに対してモル比で、0.5〜1.0、望ましくは、0.75である。さらに、反応を促進させるための第2酸触媒として硫酸を徐々に滴下する。滴下量は、塩酸と濃硫酸の重量比率が、1:0.1〜1:1、好ましくは、1:0.2〜1:0.6であり、滴下時間としては、0.5〜3.0時間、好ましくは、1.0〜2.0時間である。具体的には35〜37%塩酸と、95%含量以上(好ましくは96〜98含量%)の濃硫酸が挙げられる。
反応は、次の反応式で示すスキームで行われる。
(スキーム1)
スキーム1において、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または、メチル基もしくはメトキシ基を、R5、R6は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等を示す。該縮合反応は、反応温度が常温下、10〜40℃の範囲内で、さらに好ましくは、20〜30℃の範囲で実施される。ここに、ビスクレゾール−Cの製造条件を例としてあげるが、下記の条件で好適に実施することができる。
はじめに、o−クレゾール等のフェノール誘導体、アセトン、塩酸、反応溶媒として少量のトルエン、第2触媒である3−メルカプトプロピオン酸を混ぜ合わせ、撹拌しながら先に記載した常温下で硫酸を滴下する。硫酸の滴下時間は、0.5時間から1時間以上かけて実施されるが、好ましくは発熱による温度上昇を氷水で冷却しながら、2時間程度をかけて行うことが望ましい。硫酸の滴下が終了し、さらに撹拌を続けると縮合により生成した結晶が析出するが、撹拌速度を速くすることで顆粒状の結晶が生成し、反応を進行させることが出来る。さらに2〜15時間、好ましくは5時間程度、常温下で撹拌を続けた後、所定量の水と生成したビスフェノール−Cを抽出するためのトルエンを加え、常温下で1〜2時間撹拌し、全体が微黄白色のスラリーとなったことを確認してから約80℃まで加熱してトルエン層に抽出させる。下層の廃酸層を分離した後、炭酸水素ナトリウムなどの弱アルカリ塩でpHを7〜8程度に調製し、温水で2回洗浄を繰り返し、油層を濾過して異物を取り除き、冷却して生成した白色の結晶を濾取、60℃の恒温乾燥器で乾燥して目的物を収率良く得ることが出来る。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。最終目的物は、HPLCによる純度、融点、透過率について測定し、評価した。
また、実施例1の化合物については、プロトンNMR、FT−IR、C、H、N元素分析値を測定し、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの構造であることを確認した。
実施例2以降においては、HPLC、融点測定により、実施例1の化合物と同一の化合物であることを確認した。分析、測定に使用した機器は以下の通りである。
<融点測定>
メトラー MP−35(株式会社メトラートレド社製)
測定値を補正。
<透過率測定条件>
測定装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
試料濃度:15% /メタノール
<HPLC面百純度測定条件>
測定装置:LC−6A((株)島津製作所製)
カラム:SUMIPAX ODS−A−212 6μm、6mm×15cm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル:水 =8:2、 リン酸0.3%添加(対水)
測定使用波長:254nm
<FTIR測定条件>
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製))
検体:1/200(KBr)
<プロトンNMR測定条件>
装置:Varian Mercury-300 (300 MHz) SC-NMR spectrometer
共振周波数:300MHz(H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
H−NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、ddはdoublet doublet、br sはbroad singlet、mはmultipletの略とする。
<CHN元素分析>
パーキンエルマー社製 2400 II の装置を用いて測定した。
[実施例1]
500mLの四つ口フラスコに温度計と玉付コンデンサーを備え、o−クレゾール45.0g(0.42mol)、アセトン18.0g(0.31mol)、トルエン6g、3−メルカプトプロピオン酸(3−MPA)2.0gを加えて混ぜ合わせ、25℃の常温下で35%塩酸47.0gを加えて撹拌した。25〜32℃の範囲で95含量%以上の硫酸(濃硫酸)(和光純薬工業株式会社製)10.0g(0.10mol)を0.7時間かけて滴下し、その後、20〜25℃で6.5時間、撹拌を継続した。水40gとトルエン85gを加えて乳白色のスラリー状となるまで撹拌してから、加熱して80℃でトルエン層に抽出し、静置後、下層の水層を分離除去した。炭酸水素ナトリウム約1.4gで中和し、温水を加えて洗浄し、静置後、下層水層を分離した。さらに温水洗浄を行った後、ブフナーロートで油層を濾過して、異物を取り除き、その後冷却して析出した結晶を、ブフナーロートで濾過し取った。トルエンで洗浄し、乾燥機で乾燥させて目的物である2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの白色結晶40.15gを得た。
Mp: 138.5 - 139.2 °C ; HPLC 99.22%; white powder; yield: 75.30% (based on o-Cresol).
1H-NMR (300MHz,CDCl3) δ:8.98,(s,2H,OH),6.84(d,2H,J=2Hz,Ph -H2,Ph -H2’),
6.77(dd,2H,J=8.4Hz,J=2Hz, Ph -H5, Ph -H5’),6.61(d,2H,J=8.4Hz,Ph -H6,Ph -H6’),
2.03 (s,6H,Ph-CH3 -H3,Ph-CH3 - 3’),1.49(s,6H,C(CH3)2-H),.
FT-IR(KBr)cm-1;3400-3280(OH),2970 (C-H),1620,1600,1500,1460,(C=C),1400(CH3),1260(Ph-O),.
Anal. Calcd for C17H20O2: C, 79.65; H, 7.86, N -. Found: C, 79.70; H, 7.92, N, 0.
[実施例2]
前記硫酸の滴下温度を25〜30℃において0.5時間で滴下し、6時間反応後、さらに20〜25℃で15時間撹拌したこと以外は、実施例1と同様に行った。白色粉末状結晶39.65gを得た。
Mp: 138.9 - 139.2 °C ; HPLC 99.33%; yield: 74.34% (based on o-Cresol).
[実施例3]
実施例2の条件で、前記硫酸の使用量を20.0g(0.20mol)にて実施した。また、前記硫酸の滴下温度を30〜32℃において0.5時間で滴下し6時間反応後、さらに25〜26℃で15時間撹拌し、反応後に加える水の量を70g、トルエンを60gにて実施した。白色粉末状結晶43.9gを得た。
Mp: 138.7 - 139.1 °C ; HPLC 99.22%; yield: 82.31% (based on o-Cresol).
[実施例4]
実施例1の条件で、前記硫酸滴下後、6時間反応後、さらに20〜25℃で15時間撹拌し、処理を行った。白色粉末状結晶42.53gを得た。
Mp: 137.6 - 138.6 °C ; HPLC 99.46%; yield: 79.74% (based on o-Cresol).
[実施例5]
実施例4の条件で、前記硫酸の使用量を20.0g(0.20mol)にて実施した。白色粉末状結晶43.67gを得た。
Mp: 139.0 - 139.7 °C ; HPLC 99.10%; yield: 81.88% (based on o-Cresol).
[実施例6〜12]
実施例6〜8は、同様に温度と反応時間を替えて実施し、実施例9〜12は、トルエンの替わりにキシレンを使用した。キシレンを使用する場合、トルエン使用時に比べて約1.5倍量を必要とし、製造時の容積率を低下させる。これらの結果を〈表1〜表2〉にまとめて記す。表1中、反応は上段の温度範囲において前記硫酸の滴下時間を示し、時間は反応時間を示している。そしてさらに下段の温度範囲において撹拌時間(反応)を示している。表2中、wet時とは、晶析に使用した溶媒のトルエンと、微量に含まれる水を含んだ状態の濾別結晶体重量であり、乾燥時とは、60℃の恒温乾燥機で、それらの揮発分を飛ばし、揮発分含量が、0.01%未満まで乾燥させた結晶体重量を示している。
[比較例]
従来の反応において行われている、硫酸もしくは塩酸を単独で使用した場合における反応について実施し、実施例1〜12での合成例と比較を行ったが、収量、品質共に本願発明である塩酸と硫酸の混酸による反応には及ばなかった。また、o−クレゾールとアセトンの使用比率、第2触媒の3−メルカプトプロピオン酸の使用量等についても種々検討したが、これら原料比率は、特開2008−214248の実施例1に記載されている比率が好適であった。
[比較例1]
500mLの四つ口フラスコに温度計と玉付コンデンサーを備え、o−クレゾール29.16g(0.27mol)、アセトン5.22g(0.09mol)、前記硫酸1.0g(0.01mol)を加えて混ぜ合わせ、32〜40℃で7時間撹拌した。さらに70〜80℃で14時間撹拌し、水30g、トルエン60gを加えて1時間撹拌後、75℃まで加熱して、静置後、下層水層を分離した。微褐色を帯びた赤色オイルであり、冷蔵庫で1週間保存したが結晶は析出しなかった。
[比較例2]
o−クレゾール64.9g(0.60mol)、アセトン5.22g(0.09mol)、3−メルカプトプロピオン酸0.03gを加えて混ぜ合わせ、38〜42℃の範囲で17時間撹拌した後、水300mLを加えたところ、白色の結晶が析出したので、これをブフナーロートで濾過し取り、水洗して乾燥させ、目的物である2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンの微黄白色結晶11.5gを得た。収率は、14.4%、HPLC純度は94.94%であった。
[比較例3]
o−クレゾール48.66g(0.45mol)、アセトン8.71g(0.15mol)、3−メルカプトプロピオン酸0.20gを加えて混ぜ合わせ、濃硫酸使用を省略し、反応温度を68〜72℃で3時間、さらに35℃で15時間実施した後、実施例1と同様の条件で処理、晶析、結晶単離、乾燥して白色粉末である目的物24.80gを得た。収率は、43.0%、HPLC純度は、99.42%、融点138.7-139.7℃であった。
[比較例4]
塩酸を使用せず、前記硫酸19.30g(0.20mol)使用したこと以外は、比較例3と同様に実施した。微赤味を帯びた白色結晶が、5g程度得られたが、HPLC純度が90%以下であり、副生物の混入が多いことが認められた。
[比較例5〜11]
酸触媒として硫酸使用を省略し、塩酸単独で、実施例と同様の条件で、反応温度、時間、トルエンの使用量等を種々変えて実施した。これらの結果を〈表3〉、〈表4〉にまとめて記す。表3中、反応は上段の温度範囲において塩酸との反応時間を示し、そしてさらに下段の温度範囲において撹拌時間(反応)を示している。表4中、wet時とは、晶析に使用した溶媒のトルエンと、微量に含まれる水を含んだ状態の濾別結晶体重量であり、乾燥時とは、60℃の恒温乾燥器で、それらの揮発分を飛ばし、揮発分含量が、0.01%未満まで乾燥させた結晶体重量を示している。
前記実施例ならびに前記比較例で合成した主な化合物の350nm、400nm、450nmにおける透過率を測定した。結果をまとめて〈表5〉に示す。
これらの結果より、本願発明の製造方法は、酸性触媒として塩酸と硫酸の混酸を使用し、好ましくは硫酸を滴下しながら使用する事で、塩酸単独で使用する従来の方法に比べて大幅な収率の向上、ならびに反応選択性の向上からなるHPLC純度の向上、外観色の向上などが認められることがわかる。また、常温下で反応することで、反応時において特別な加熱設備を必要としないこと、従来法のように加熱して反応する場合、発生するアセトンガスの危険性を防御する必要があるが、常温下では、その危険性をある程度低減させることが出来る。また、塩酸ガスを使用しないので、設備の劣化を起こしにくいこと、作業上の安全性が格段に向上することが明確になった。
以上のことから、本願発明は、塩酸を酸性触媒とし、硫酸を徐々に滴下することで、生成する水による希釈に伴う反応の停止を防ぎ、さらには塩酸中の脱水により塩酸濃度を高めることで、従来よりも安全で縮合反応の効率を高め、収量の向上、ならびに反応の選択性を向上させ、低コストで製造することが可能となった。

Claims (7)

  1. フェノール誘導体、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながらで反応させて、下記一般式(I)で示される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはその誘導体を得ることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法。
    式中、R〜Rは、それぞれに独立して、水素原子、またはメチル基もしくはメトキシ基を示す。
    (I)
  2. フェノール誘導体、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら常温下で反応させて、前記一般式(I)で示される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはその誘導体を得る請求項1記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  3. o-クレゾール、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら常温下で反応させて、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを得る請求項1又は2記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  4. 請求項1において、R=CH、R〜R=Hで示される2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを得る請求項1乃至3のいずれかの項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  5. o−クレゾール、アセトン、塩酸を混ぜ合わせ、さらに硫酸を滴下しながら反応させて、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを得る請求項4記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  6. 反応温度20〜30℃の範囲で、35〜37%塩酸と濃硫酸の容積比率が1:0.1〜1:1である、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを得る請求項2記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  7. 反応温度15〜30℃の範囲で、35〜37%塩酸と濃硫酸の容積比率が1:0.1〜1:1である、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを得る請求項3記載のビスフェノール化合物の製造方法。
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