JP7151904B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
[1]イエローインデックスが10以下、波長400nmにおける光線透過率が70%以上、全光線透過率が85%以上、MD方向およびTD方向の両方のCTEが-5ppm/℃~+55ppm/℃であるポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に貼り合された保護フィルムとを含む積層体であって、前記積層体から剥がした前記保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%であることを特徴とする積層体。
[2] 前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、前記積層体から剥がした前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.5~50mg/平方mであることを特徴とする[1]に記載の積層体。
[3] 前記積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による初期剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の積層体。
[4] 前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 前記ポリイミドフィルムのMD方向およびTD方向の両方の引張弾性率が3GPa以上、20GPa以下であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記保護フィルムが重縮合系樹脂フィルムと粘着剤からなる、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
なお、ここにMD方向とはフィルムの流れ方向であり、TD方向とはフィルムの幅方向である。
本発明の積層体、あるいは保護フィルム、ポリイミドフィルム、積層体から剥離した保護フィルム、積層体から剥離したポリイミドフィルムに、後に述べるソックスレー抽出操作を行うと、積層体に含有されていた低分子量成分を抽出できる。本発明ではこのようにして抽出される成分を溶媒抽出低分子量成分と呼ぶ。
本発明では、積層体から剥がした後の保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%である。さらに、本発明における積層体から剥がした後の保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分は0.06~1.5質量%の範囲が好ましく、0.1~0.8質量%の範囲がなお好ましい。
溶媒抽出低分子量成分がこの範囲であれば、保護フィルムからポリイミドフィルムへの過度の溶媒抽出低分子量成分の移行が抑制され、長期、高温下での保管後も、剥離強度が大きく変化することなく、易剥離なレベルの剥離強度が均一に維持され、またポリイミドフィルムの白化やガラス転移温度の低下などの物性上の問題を生じることなく、さらに後工程におけるポリイミドフィルムと他素材との接着性を阻害すること無く、良好な状態が維持される。
本発明では、この積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から剥離した前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分を接触移行量とも呼ぶ。
保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分は、保護フィルムとポリイミドフィルムとが接触することで、経過時間に応じてポリイミドフィルム表面に移行する。かかる溶媒抽出低分子量成分の移行は、ポリイミドフィルの白化やガラス転移温度の低下などの物性上の問題を引き起こし、また後工程において他素材と接着することが求められる場合に接着性を阻害するなどの問題を引き起こすことがある。接触移行量を所定の範囲に抑えることによりこのような問題を解消することができる。
90度剥離強度の測定方法は、実施例に記載の方法による。
高分子濃度が0.2g/dlとなるようにN-メチル-2-ピロリドン(又は、N,N-ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドの場合は、N,N-ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
カラーメーター(ZE6000、日本電色社製)およびC2光源を使用して、ASTM D1925に準じてポリイミドフィルムの三刺激値XYZ値を測定し、下記式により黄色度指数(YI)を算出した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
YI=100×(1.28X-1.06Z)/Y
積層体から剥離したポリイミドフィルについて、分光光度計(日立製作所製「U-2001」)を用いて波長400nmにおける光線透過率を測定し、得られた値をランベルト・ベールの法則に従うものとして20μmの厚みに換算し、得られた値をポリイミドフィルムの400nm光線透過率とした。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
積層体から剥離したポリイミドフィルについて、HAZEMETER(NDH5000、日本電色社製)を用いてポリイミドフィルムの全光線透過率(TT)を測定した。光源としてはD65ランプを使用した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
積層体から剥離したポリイミドフィルについて、ポリイミドフィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃~45℃、45℃~60℃のように15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 : MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ : 20mm
試料幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
積層体から剥離した保護フィルムを幅5mm、長さ20mmに裁断し、約1,000mgを精秤し、抽出溶媒としてクロロホルム100gを用い、抽出時間10時間の条件で、ソックスレー抽出を行った。成分量は抽出乾燥後の保護フィルムを精秤して、下記式から溶媒抽出低分子量成分量(質量%)を求めた。
保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分量(質量%)={抽出前質量(mg)-抽出後質量(mg)}/抽出前質量(mg)×100
さらに、上記で得られた抽出溶液を用いて、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した各成分のピーク位置、ピーク面積とマススペクトル分析(装置:日立製M-1200H)による各成分の分子量を求めた。
幅100mm、長さ100mmに裁断した積層体を20枚重ね合わせて、100g/平方cmとなるように荷重をかけ、40℃で7日間保管した。保管後の積層体からポリイミドフィルムを剥離し、剥離したポリイミドフィルムを幅5mm、長さ20mmに裁断し約1,000mgを精秤し、抽出溶媒としてクロロホルム100gを用い、抽出時間10時間の条件で、ソックスレー抽出を行った。得られた抽出溶液を用いて、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した各成分のピークを得て、前述の「保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分の量および分子量」測定結果からと、あらかじめ求めた検量線から、保護フィルム中に含まれていたと考えられる各成分のピーク位置に該当するピークの面積を求め、面積比から各成分の質量に換算し、各成分の質量の合計を接触移行量とし、ポリイミドフィルム1平方mあたりのmg量に換算した。
ポリイミドフィルムと保護フィルムを貼り合わせて積層体を得たのちに、1日経過した積層体を用いて、90度剥離法により初期剥離強度を以下の方法で求めた。
積層体の幅方向の中央部、左右の端部、端部と中央のさらに中間部から幅100mm、長さ100mmに切り出した積層体を、さらに25mm×100mmの長方形4本に裁断し試料とした。
今田製作所製の90度剥離治具「GT-40」の試料台に積層体の保護フィルム側を両面粘着テープで接着し、積層体(ポリイミドフィルム)から保護フィルムを90度の角度で引き剥がす際の剥離力を島津製作所製の引張試験機「オートグラフAG-IS」により測定した。
測定装置 : 島津製作所社製 オートグラフAG-IS
測定治具 : 今田製作所 剥離治具 GT-40
測定温度 : 室温(25℃)
剥離速度 : 100mm/min
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 25mm
幅100mm、長さ100mmに裁断した積層体を20枚重ね合わせて、100g/平方cmとなるように荷重をかけ、40℃で7日間保管した。保管後の積層体を25mm×100mmの長方形4本に裁断し、各長方形の長手方向について、初期剥離強度と同様に積層体から保護フィルムを剥離する際の剥離強度を測定し合計4点についての平均値を求めた。
ポリイミドフィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。試験片は、幅方向中央部分から切り出した。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R)、機種名AG-5000A)を用い、温度25℃、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率を測定した。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、176.5g(0.900 mol)の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、31.0g(0.100mol)の4,4’-オキシジフタル酸(ODPA)、160.1g(0.500 mol)の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、113.6g(0.500mol)の4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド(DABAN)、2000gのN,N-ジメチルアセトアミドを仕込んで溶解させた後、室温で24時間攪拌した。その後、1000gのN,N-ジメチルアセトアミドで希釈し、還元粘度4.50dl/gのポリアミド酸溶液Aを得た。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、461gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)と64.0g(0.200mol)の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を入れて攪拌し、TFMBをDMAC中に溶解させた。次いで、反応容器内を攪拌しながら、窒素気流下で、89.737g(0.202mol)の4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)を10分程度かけて投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
次に、得られたポリアミド酸溶液に410gのDMACを加えて希釈した後、イミド化促進剤として25.83gのイソキノリンを加えて、ポリアミド酸溶液を攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、122.5g(1.20モル)の無水酢酸を約10分間かけてゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
次に、得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液1000gを、攪拌装置と攪拌翼を備えた反応容器に移し変え、120rpmの速度で攪拌しながら15~25℃の温度に保ち、そこに1500gのメタノールを10g/分の速度で滴下させた。約800gのメタノールを投入したところでポリイミド溶液の濁りが確認され、粉体状のポリイミドの析出が確認された。引き続き1500g全量のメタノールを投入し、ポリイミドの析出を完了させた。続いて、反応容器の内容物を、吸引濾過装置により濾別し、更に1000gのメタノールを用いて洗浄・濾別した。その後、濾別したポリイミド粉体50gを局所排気装置のついた乾燥機を用いて、50℃で24時間乾燥させ、更に260℃で2時間乾燥させて、残りの揮発成分を除去して、ポリイミド粉体を得た。得られたポリイミド粉体の還元粘度は5.40dl/gであった。次に、得られたポリイミド粉体40gを300gのDMACに溶解させて、ポリイミド溶液Bを得た。
ポリアミド酸溶液Aを、ダイコーターを用いて、ポリイミドフィルム作製支持体である鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布し(塗工幅1240mm)、90~115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、グリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムをピンテンターによって、最終ピンシート間隔が1140mmとなるように搬送し、1段目170℃で2分間、2段目230℃で2分間、3段目350℃で6分間として熱処理を施し、その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、表1に示すポリイミドフィルム1Aを得た。以下同様にポリアミド酸溶液Aをポリイミド溶液Bに変え、また支持体への塗布厚さを変えて、表1に示すポリイミドフィルム1Bを得た。
ポリアミド酸溶液Aを、ポリイミドフィルム作製支持体であるところの、領域表面粗さ(Sa)が1nm、最大突起高さ(Sp)が7nm、山頂点密度(Spd)が20/平方μm以下であり、表面にコート層を有しないポリエステルフイルムにコンマコーターを用いて、塗布し(塗工幅1240mm)、90~115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリイミドフィルム(溶媒を10質量%含む)を支持体から剥離して両端をカットし、グリーンフィルムを得た。 得られたグリーンフィルムをピンテンターによって、最終ピンシート間隔が1140mmとなるように搬送し、1段目170℃で2分間、2段目230℃で2分間、3段目350℃で6分間として熱処理を施し、溶媒を除去した。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、表1に示すポリイミドフィルム2Aを得た。以下同様にポリアミド酸溶液Aをポリイミド溶液Cに変え、また支持体への塗布厚さを変えて、表1に示すポリイミドフィルム2Cを得た。
ポリイミド溶液Bを、ポリイミドフィルム作製支持体であるところの、領域表面粗さ(Sa)が3nm、最大突起高さ(Sp)が12nm、山頂点密度(Spd)が25/平方μm以下である未延伸ポリプロピレンフイルムにコンマコーターを用いて、塗布し(塗工幅450mm)、85~105℃にて30分間乾燥して、支持体とポリイミドフィルム(溶剤約8%質量を含む)の二層フィルムを得た。次いで、この二層フィルムを、二層同時にロールの周速度差を利用してMD方向に2.8倍に延伸した。なお、周速度差のあるロールとロールの間では二層フィルムのポリイミドフィルム側の面にロールが接触しないように配置した。MD方向への延伸の後に、クリップテンターにて二層フィルムの両端を把持し、最終ピンシート間隔が1140mm、すなわちTD方向に2.5倍延伸となるように150℃で熱処理しながら搬送し、その後に二層フィルムの支持体からポリイミドフィルムを剥離し、さらに350℃3分間の熱処理を行うことにより溶媒を除去した。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、表1に示すポリイミドフィルム3Bを得た。以下同様にポリイミド溶液Bをポリイミド溶液Cに変え、また支持体への塗布厚さを変えて、表1に示すポリイミドフィルム3Cを得た。
<積層体の作製>
作製例1で得たポリイミドフィルム1A全面に、保護フィルム(リンテック(株)社製CLEAR-PET50-06-50)の粘着面が向くように重ね合わせて、シリコンゴムローラーを装備したロールラミネータにセットした。使用したラミネータは、MCK社製の有効ロール幅1350mmのラミネータであり、貼合条件は、エアー元圧力:0.5MPa、ラミネート速度:50mm/秒、ロール温度:22℃、環境温度22℃、湿度55%RHであった。得られた積層体の評価結果を表3に示す。
以下同様に表1に示すポリイミドフィルムと表2に示す保護フィルムを用いて積層体を作製し、積層体の特性および積層体から剥離した保護フィルム、積層体から剥離したポリイミドフィルムの各特性を評価した。結果を表3と表4に示す。
以下同様に表1に示すポリイミドフィルムと表2に示す保護フィルムを用いて積層体を作製し、積層体の特性を評価した。結果を表3に示す。
Claims (5)
- イエローインデックスが10以下、波長400nmにおける光線透過率が70%以上、全光線透過率が85%以上、MD方向およびTD方向の両方のCTEが-5ppm/℃~+55ppm/℃であるポリイミドフィルム(表面活性化処理されたものを除く)と、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に貼り合された保護フィルムとを含む積層体であって、前記積層体から剥がした前記保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%であり、
前記保護フィルムは、基材フィルムおよび粘着剤層を有しており、
前記基材フィルムは、ポリエステル系樹脂フィルムであり、
前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤またはアクリル系粘着剤であることを特徴とする積層体。 - 前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、前記積層体から剥がした前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.5~50mg/平方mであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による初期剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
- 前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
- 前記ポリイミドフィルムのMD方向およびTD方向の両方の引張弾性率が3GPa以上、20GPa以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
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