以下、本発明について、適宜図面を参照しながら説明する。
なお、図面は本発明を説明するために模式化されたものであり、必ずしも実際の寸法比とは合致しない。また、本明細書では、便宜上、図面における上側を「上」、下側を「下」と記すこともある。
また、本明細書において、「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
≪積層体≫
まず、本実施形態の積層体について説明する。
本実施形態の積層体は、ポリイミドを含むポリイミド層と、ハードコート層とが積層されてなる積層体であって、
上記ポリイミドが以下の要件(1)〜(3)を満たす積層体である。
(1)黄色度が5以下
(2)JIS K 7162に準拠した引張試験にて測定される破断伸びが3%以上
(3)ガラス転移点以下における熱膨張係数が20ppm/K以下
図1は本実施形態にかかる積層体の概要を示す断面図である。
図1に示されるように、本実施形態の積層体100はポリイミド層10と、ハードコート層20とを備える。以下、各層について説明する。
<ポリイミド層10>
本実施形態におけるポリイミド層10は無色透明性が高く、具体的にはポリイミド層10に含まれるポリイミド(「ポリイミド樹脂」ともいう。)の黄色度が5以下であるという特徴を有し、本実施形態の積層体100をディスプレイデバイス(例えば、フレキシブルディスプレイデバイス)に適用した場合、ディスプレイのクリアな画像の表示性能に寄与し得る。
この黄色度は、イエローインデックス(Y.I.)とも称される値であり、JIS K 7361−1(1997年発行)に準拠した測定方法により求めることができる。
より具体的には、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて測定することができる。
よりクリアな画像を表示するデバイスを実現する観点からは、このポリイミド層10に含まれるポリイミドの黄色度が4.5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3.7以下であることがさらに好ましい。
なお、ポリイミド層10に含まれるポリイミドの黄色度の下限値は特に制限されるものではないが、たとえば0.2以上である。
また、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドは、JIS K 7162に準拠した引張試験にて測定される破断伸びが3%以上であるという特徴を有する。
本発明者らは、この破断伸びを特定の値以上とすることにより、ポリイミド層10が適度に柔軟性を持ち、フレキシブルデバイスを作製し、繰り返して折り曲げ使用した場合における、ポリイミド層10とハードコート層20との間の剥離し難さに寄与し得ることを見出した。
同様の観点から、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドは、破断伸びが4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが殊更に好ましい。
なお、本明細書において、破断伸びは、より具体的には、以下に示される方法にて測定することができる。
すなわち、フィルム状のポリイミドについて、SD型レバー式試料裁断器(株式会社ダンベル製の裁断器(型式SDL−200))に、株式会社ダンベル製の商品名「スーパーダンベルカッター(型:SDMK−1000−D、JIS K7139(2009年発行)のA22規格に準拠)」を取り付けて、フィルムの大きさが、全長:75mm、タブ部間距離:57mm、平行部の長さ:30mm、肩部の半径:30mm、端部の幅:10mm、長さ方向の中央の平行部の幅:5mm、厚み:13μmとなるように裁断して、ダンベル形状の試験片を測定試料として調製する。
次いで、テンシロン型万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製の型番「UCT−10T」)を用いて、測定試料を掴み具間の幅が57mm、掴み部分の幅が10mm(端部の全幅)となるようにして配置した後、荷重フルスケール:0.05kN、試験速度:5mm/分の条件で測定試料を引っ張る引張試験を行って、破断伸びの値を求める。
具体的に、破断伸びの値(%)は、試験片の平行部の長さ(=平行部の長さ:30mm)をL0とし、破断するまでの試験片の平行部の長さ(破断した際の試験片の平行部の長さ:30mm+α)をLとして、下記式:
[破断伸び(%)]={(L−L0)/L0}×100
を計算して求める。
なお、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドの、破断伸びの値の上限値は特に制限されるものではないが、例えば300%以下であり、100%以下とすることができ、50%以下であってもよい。
また、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドは、上述の引張試験において測定される引張強度が以下に示す値に設定されることが好ましい。
すなわち、ポリイミド層10に含まれるポリイミドとして、適切な機械的強度、耐衝撃性を実現する観点からは、引張強度が60MPa以上であることが好ましく、70MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましく、120MPa以上であることが殊更に好ましい。
なお、この引張強度の値の上限値は特に制限されるものではないが、例えば1.5GPa以下であり、500MPa以下とすることができ、300MPa以下であってもよく、250MPa以下であってもよい。
また、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドは、ガラス転移点以下における熱膨張係数が20ppm/K以下であることが好ましい。
このように熱膨張係数の値を設定することにより、本実施形態の積層体100をフレキシブルデバイスに適用した場合、デバイスの発熱によるハードコート層20とポリイミド層10との間の剥離の抑制に寄与し得る。
また、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドは、ガラス転移点以下における熱膨張係数が18ppm/K以下であることが好ましく、15ppm/K以下であることがより好ましく、13ppm/K以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドの、ガラス転移点以下における熱膨張係数の下限値は特に制限されるものではないが、たとえば、3ppm/K以上であり、7ppm/K以上とすることができ、10ppm/K以上であってもよい。
なお、ポリイミド層10に含まれるポリイミドの、ガラス転移点以下における熱膨張係数は以下に示す方法で測定することができる。
すなわち、先ず、測定対象としてのポリイミドに関して、そのポリイミドを形成する材料(ポリイミド)と同様の材料からなる、縦:76mm、横:52mm、厚み:13μmの大きさのフィルムを形成する。その後、該フィルムを真空乾燥(120℃で1時間)し、窒素雰囲気下、200℃で1時間熱処理し、乾燥フィルムを得る。そして、このようにして得られた乾燥フィルムを試料として用い、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における上記試料の縦方向の長さの変化を測定して、50℃〜200℃の温度範囲における1℃(1K)あたりの長さの変化の平均値を求める。そして、このようにして求められた上記平均値を、ポリイミドフィルムの熱膨張係数の値として採用する(本明細書中においては、厚みが13μmである場合のポリイミドフィルムの熱膨張係数の値を、ポリイミドの熱膨張係数の値として採用する。)。
また、本実施形態におけるポリイミド層10のJIS K 7361−1(1997年発行)に準拠した測定で求められる全光線透過率としては、特に制限はないが、80%以上であることが好ましく、85%以上であることが好ましい。また、この全光線透過率の上限値について、特に制限はないが、たとえば、99.5%以下である。
また、本実施形態におけるポリイミド層10に含まれるポリイミドのJIS K 7361−1(1997年発行)に準拠した測定で求められるヘイズ値としては特に制限はないが、1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましい。また、このヘイズ値の下限値は、特に制限されるものではないが、たとえば、0.01以上である。
なお、上述の黄色度、破断伸び、引張強度、熱膨張係数、全光線透過率、ヘイズの値は、たとえば、後述するポリイミド前駆体を含む樹脂組成物(I)(ポリイミド前駆体組成物(I)ともいう。)を用いることで達成しやすくなるものである。
また、これらのパラメータのうち、黄色度と熱膨張係数について所望の値とする観点からは、ポリイミド前駆体や添加剤の種類について適切なものを選択することが好ましい態様であり、破断伸びと引張強度について所望の値とする観点からは、たとえば、樹脂組成物中に特定のイミダゾール骨格を含む化合物を添加することが好ましい態様である。
ポリイミド層10の厚みは、作製するデバイスに応じ、適宜設定することができるが、下限値としては、たとえば50nm以上であり、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましい。一方、上限値としては、たとえば3mm以下であり、1mm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、各層の「厚み(膜厚)」はその層の平均厚みとして定義することができる。
≪樹脂組成物(I)(ポリイミド前駆体組成物(I))≫
続いて、ポリイミド層10に含まれるポリイミドを作製するために用いられる樹脂組成物(I)について説明する。
本実施形態における樹脂組成物(I)は、典型的にはポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有し、好ましくは、特定のイミダゾール化合物を含有する。
以下、樹脂組成物(I)に含まれる成分について説明する。
<ポリイミド前駆体>
本実施形態における樹脂組成物(I)に含まれるポリイミド前駆体としては、ポリイミドを誘導するポリアミド酸が挙げられる。
このポリイミド前駆体は、ポリイミドを与える公知の材料(またはその組合せ)の中から選択することができるが、生成するポリイミドの透明性を向上させる観点から、以下に示されるものであることが好ましい。
すなわち、本実施形態におけるポリイミド前駆体としては、所定のジアミン化合物と、下記式(b1)で表されるノルボルナン−2−スピロ−α−シクロアルカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物類とを含有するモノマー成分、及び下記式(b2)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
(式(b1)中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、mは0〜12の整数を示す。)
(式(b2)中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、R
b10は2価の基を示し、mは0〜12の整数を示す。)
以下、モノマー成分と、ポリアミド酸とについて説明する。
〔モノマー成分〕
ポリイミド前駆体が、モノマー成分を含有する場合、当該モノマー成分は、ジアミン化合物と、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロアルカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物類(以下、「テトラカルボン酸二無水物」とも記す。)とを含む。
以下、モノマー成分が含んでいてもよい成分について説明する。
(ジアミン化合物)
本実施形態におけるジアミン化合物としては、例えば炭素原子数6〜40の2価の有機基を母核とし、その両末端にアミノ基を合計2つ有する化合物を用いることができる。このような母核の化合物を用いると、耐熱性に優れる硬化膜を形成しやすくなる。
このような炭素原子数6〜40の2価の有機基としては、芳香族環又は脂肪族環を1〜4個有する有機基を採用することができる。
より具体的に、ジアミン化合物は、たとえば下記式(2)で表される化合物を用いることができる。このような式(2)で表されるジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
H2N−Rb10−NH2・・・(2)
(式中、Rb10は、炭素原子数6〜40のアリーレン基である。)
式(2)中のRb10として選択され得るアリーレン基は、炭素原子数が6〜40、好ましくは6〜30、より好ましくは12〜20であるアリーレン基である。
アリーレン基の炭素原子数を上記上限値以下とすることで、モノマー成分の溶媒に対する溶解性を向上させることができ、また、アリーレン基の炭素原子数を上記下限値以上とすることで得られるポリイミド樹脂の耐熱性を向上させることができる。
式(2)中のRb10としては、得られるポリイミド樹脂の耐熱性と、溶媒への溶解性とのバランスの観点から下記式(3)〜(6)で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
(式(3)〜(6)中、R
11は、水素原子、フッ素原子、クロロ原子、ブロモ原子、水酸基、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示す。式(6)中、Qは、9,9−フルオレニリデン基、式:−C
6H
4−、−CONH−C
6H
4−NHCO−、−NHCO−C
6H
4−CONH−、−O−C
6H
4−CO−C
6H
4−O−、−OCO−C
6H
4−COO−、−OCO−C
6H
4−C
6H
4−COO−、−OCO−、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−C(CH
3)
2−、−CH
2−、−O−C
6H
4−C(CH
3)
2−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−C(CF
3)
2−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−SO
2−C
6H
4−O−、−C(CH
3)
2−C
6H
4−C(CH
3)
2−、−O−C
6H
4−C
6H
4−O−及び−O−C
6H
4−O−で表される基よりなる群から選択される1種を示す。)
式(3)〜(6)中のR11としては、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の観点から、水素原子、フッ素原子、クロロ原子、トリフルオロメチル基、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子およびトリフルオロメチル基が特に好ましい。
また、トリフルオロメチル基を含む式(5)で表される基としては、たとえば、以下に示されるような、ビフェニルの結合部のオルト位にトリフルオロメチル基を2つ備えるものが好ましい。
式(6)中のQとしては、得られるポリイミド樹脂の耐熱性と、溶媒への溶解性とのバランスの観点から、9,9−フルオレニリデン基、−CONH−、−O−C6H4−O−、−O−、−C(CH3)2−、−CH2−、−O−C6H4−C(CH3)2−C6H4−O−が好ましく、−CONH−、−O−C6H4−O−又は−O−が特に好ましい。
式(3)〜(6)で表される基の中では、より耐熱性に優れるポリイミド樹脂を得やすい点から、式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
式(2)で表される芳香族ジアミンの好適な具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、p−ジアミノベンゼン、m−ジアミノベンゼン、o−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、o−トリジンスルホン、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル、1,4−ビス−N,N’−(4’−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノベンゾイル)−p−フェニレンジアミン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、ビス(4−アミノフェノキシ)テレフタレート、4,4’−ビフェノキシ−ビス(4−アミノベンゾエート)等が挙げられる。
また、得られるポリイミドの透明性と柔軟性をさらに向上させる観点から、ジアミン化合物としては、以下の式(Si−1)で表される化合物も好ましく用いることができる。
(式(Si−1)中、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、単結合又はメチレン基、炭素原子数2〜20のアルキレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数6〜20のアリーレン基等であり、R
14、R
15、R
16、及びR
17は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数20以下のアミノ基、−O−R
18で表される基(R
18は炭素原子数1〜20の炭化水素基)、炭素原子数2〜20の1以上のエポキシ基を含む有機基であり、lは、3〜50の整数である。)
式(Si−1)中のR12及びR13における、炭素原子数2〜20のアルキレン基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数2〜10のアルキレン基が好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
式(Si−1)中のR12及びR13における、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基が好ましく、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。
式(Si−1)中のR12及びR13における、炭素原子数6〜20のアリーレン基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数6〜12の芳香族基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
式(Si−1)中のR14、R15、R16、及びR17における炭素原子数1〜20のアルキル基としては、耐熱性と残留応力の観点から炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
式(Si−1)中のR13、R15、R16、及びR17における炭素原子数3〜20のシクロアルキル基としては、耐熱性と残留応力の観点から炭素原子数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
式(Si−1)中のR14、R15、R16、及びR17における炭素原子数6〜20のアリール基としては、耐熱性と残留応力の観点から炭素原子数6〜12のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
式(Si−1)中のR14、R15、R16、及びR17における炭素原子数20以下のアミノ基としては、アミノ基、置換したアミノ基(例えば、ビス(トリアルキルシリル)アミノ基)等が挙げられる。
式(Si−1)中のR14、R15、R16、及びR17における−O−R18で表される基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基、プロペニルオキシ基(例えば、アリルオキシ基)、及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
中でも、R14、R15、R16、及びR17として、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基である。
式(Si−1)で表される化合物の具体例としては、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(例えば信越化学社製の、X−22−1660B−3(数平均分子量4,400程度)及びX−22−9409(数平均分子量1,300程度))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(例えば信越化学社製の、X−22−161A(数平均分子量1,600程度)、X−22−161B(数平均分子量3,000程度)及びKF8012(数平均分子量4,400程度);東レダウコーニング製のBY16−835U(数平均分子量900程度);並びにJNC社製のサイラプレーンFM3311(数平均分子量1000程度))等が挙げられる。これらの中で、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルが、得られるポリイミドの耐薬品性向上及びTgの向上の観点から特に好ましい。
モノマー成分中のジアミン化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
モノマー成分中のジアミン化合物の含有量は、後述するテトラカルボン酸二無水物成分の量1モルに対して0.2〜2モルである量が好ましく、0.3〜1.2モルである量がより好ましい。
(テトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物としては、導かれるポリイミドとして特定の物性を発現できるもののなかから適宜選択することができる。
このテトラカルボン酸二無水物は母核として、芳香族基を有していても、脂環を有してもよい。
これらのなかでも、より高い透明性を発現しやすい点から、下記式(b1)で表されるノルボルナン−2−スピロ−α−シクロアルカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物類が好ましく用いられる。
(式(b1)中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、mは0〜12の整数を示す。)
式(b1)中のRb1として選択され得るアルキル基は、炭素原子数が1〜10のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素原子数が10以下であることで得られるポリイミド樹脂の耐熱性をより向上させることができる。Rb1がアルキル基である場合、その炭素原子数は、耐熱性と可とう性とのバランスに優れるポリイミド樹脂を得やすい点から、1〜6が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。
Rb1がアルキル基である場合、当該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
式(b1)中のRb1としては、得られるポリイミド樹脂が耐熱性に優れる点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましい。テトラカルボン酸二無水物成分の入手や精製が容易である点から、式(b1)中のRb1は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式(b1)中の複数のRb1は、テトラカルボン酸二無水物成分の精製が容易であることから、同一の基であるのが好ましい。
式(b1)中のmは0〜12の整数を示す。
テトラカルボン酸二無水物成分の精製が容易である点から、mの上限は5が好ましく、3がより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物成分の化学的安定性の点から、mの下限は1が好ましく、2がより好ましい。
式(b1)中のmは、2又は3が特に好ましい。
式(b1)中のRb2、及びRb3として選択され得るアルキル基の具体例及び好ましい例としては、Rb1として選択され得るアルキル基と同様である。
Rb2、及びRb3は、テトラカルボン酸二無水物成分の精製が容易である点から、水素原子、又は炭素原子数1〜10(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3)のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式(b1)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン−2−スピロ−2’−シクロペンタノン−5’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−(メチルノルボルナン)−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン−2−スピロ−2’−シクロヘキサノン−6’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α’−スピロ−2’’−(メチルノルボルナン)−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロプロパノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロブタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘプタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロオクタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロノナノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロウンデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロドデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロトリデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロテトラデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−(メチルシクロペンタノン)−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−(メチルシクロヘキサノン)−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、式(b1)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、フィルム特性、熱物性、機械物性、光学特性、電気特性の調整の観点から、下記式(b1−1):
(式(b1−1)中、R
b1、R
b2、R
b3、mは、式(b1)中のR
b1、R
b2、R
b3、mと同義である。)
で表される化合物及び下記式(b1−2):
(式(b1−2)中、R
b1、R
b2、R
b3、mは、式(b1)中のR
b1、R
b2、R
b3、mと同義である。)
で表される化合物のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、これら二種の化合物の総量が、テトラカルボン酸二無水物全量に対して、30モル%以上であるものが好ましい。
式(b1−1)で表される化合物は、2つのノルボルナン基がトランス配置し且つ該2つのノルボルナン基のそれぞれに対してシクロアルカノンのカルボニル基がエンドの立体配置となる式(b1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の異性体である。
式(b1−2)で表される化合物は、2つのノルボルナン基がシス配置し且つ該2つのノルボルナン基のそれぞれに対してシクロアルカノンのカルボニル基がエンドの立体配置となる式(b1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の異性体である。
なお、このような異性体を上記比率で含有するテトラカルボン酸二無水物の製造方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2014/034760号パンフレットに記載の方法等を適宜採用してもよい。
モノマー成分は、上記のテトラカルボン酸二無水物以外のその他のテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。
上記のテトラカルボン酸二無水物の量と、その他のテトラカルボン酸二無水物の量との合計であるテトラカルボン酸二無水物成分の総量に対する、上記のテトラカルボン酸二無水物の量の比率は、たとえば50質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物成分の総量と、ジアミン化合物との量関係は、前述の通りである。
(その他のテトラカルボン酸二無水物)
モノマー成分は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記のテトラカルボン酸二無水物とともに、テトラカルボン酸二無水物以外のその他のテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。
その他のテトラカルボン酸二無水物類の好適な例としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、(4H,8H)−デカハイドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]−ペンタデカン−5,6,12,13−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
なお、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用する場合は、形成される膜の着色を防止するため、その使用量は形成される膜が十分な透明性を有することが可能となるような範囲内で適宜変更されるのが好ましい。
〔ポリアミド酸〕
前述の式(b1)で表されるテトラカルボン酸二無水物類を用いた場合、下記式(b2)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸が得られる。
(式(b2)中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、R
b10は2価の基を示し、mは0〜12の整数を示す。)
上記式(b2)中、R
b1、R
b2、R
b3、及びmの具体例及び好ましい例としては、上記式(b1)におけるR
b1、R
b2、R
b3、及びmと同様のものを挙げることができる。
R
b10としては、上記式(2)におけるR
b10と同様のものであることが好ましい。
(ポリアミド酸の製造方法)
ポリアミド酸の製造方法は特に限定されない。ポリアミド酸は、典型的には前述のジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物成分との反応により製造され得る。
ポリアミド酸は、前述の化合物とジアミン化合物とから誘導される単位と、及び化合物とジアミン化合物とから誘導される単位とを、化合物及び化合物と同様のモル比率で含有するのが好ましい。
ポリアミド酸を合成する際の、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物成分の比率は、モノマー成分について説明したジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物成分の比率と同様である。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン化合物との反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン化合物との反応に使用される有機溶剤は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物成分を溶解させることができ、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物成分と反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に用いる有機溶剤としては、例えば、後述の有機溶剤(S)を好ましく用いることができる。
かかる有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の有機溶剤(S)への溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
ポリアミド酸合成時に、有機溶剤は、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分の質量とジアミン化合物の質量の合計が、反応液中0.1〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である量が用いられる。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン化合物とを反応させる際には、反応速度向上と高重合度のポリアミド酸を得るという観点から、有機溶媒中に塩基化合物をさらに添加してもよい。
このような塩基性化合物としては特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、テトラブチルアミン、テトラヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、ピリジン、イソキノリン、α−ピコリン、1−メチルピペリジン等が挙げられる。
このような塩基化合物の使用量は、テトラカルボン酸二無水物成分1当量に対して、0.001〜10当量が好ましく、0.01〜0.1当量がより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン化合物とを反応させる際の反応温度は、反応が良好に進行する限り、特に制限されないが、0〜100℃が好ましく、15〜30℃が更に好ましい。反応は、不活性ガス雰囲気下で行われるのが好ましい。反応時間も特に制限されないが、例えば、10〜48時間が好ましい。
<イミダゾール化合物>
本実施形態における樹脂組成物(I)は、ポリイミド前駆体成分のほか、イミダゾール化合物を含むことが好ましい。
このイミダゾール化合物としては、下記式(1)で表されるものを用いることが好ましい。定かなものではないが、この式(1)で表されるイミダゾール化合物を用いることにより、ポリイミド前駆体成分の重合反応と閉環反応について適切な反応速度とすることができ、破断伸び等の物性の向上を図ることができる。
(式(1)中、R
1は水素原子又はアルキル基であり、R
2は置換基を有してもよい芳香族基であり、R
3は置換基を有してもよいアルキレン基であり、R
4は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、nは0〜3の整数である。)
式(1)中、R1は水素原子又はアルキル基である。R1がアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜20が好ましく、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
R1として好適なアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチル−n−ヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基が挙げられる。
式(1)中、R2は、置換基を有してもよい芳香族基である。置換基を有してもよい芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基でもよく、置換基を有してもよい芳香族複素環基でもよい。
芳香族炭化水素基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族炭化水素基は、単環式の芳香族基であってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が縮合して形成されたものであってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が単結合により結合して形成されたものであってもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、フェナンスレニル基が好ましい。
芳香族複素環基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族複素環基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましい。
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、及び有機基が挙げられる。フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
芳香族基が有する置換基が有機基である場合、当該有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
芳香族基が隣接する炭素原子上に置換基を有する場合、隣接する炭素原子上に結合する2つの置換基はそれが結合して環状構造を形成してもよい。環状構造としては、脂肪族炭化水素環や、ヘテロ原子を含む脂肪族環が挙げられる。
芳香族基が有する置換基が有機基である場合に、当該有機基に含まれる結合は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(1)で表されるイミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(−NR−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、炭化水素基以外の置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。炭化水素基以外の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアルミ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有する置換基としては、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアリール基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数1〜12のアリールオキシ基、炭素原子数1〜12のアリールアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
R2としては、式(1)で表されるイミダゾール化合物を安価且つ容易に合成でき、イミダゾール化合物の水や有機溶剤に対する溶解性が良好であることから、それぞれ置換基を有してもよいフェニル基、フリル基、チエニル基が好ましい。
式(1)中、R3は、置換基を有してもよいアルキレン基である。アルキレン基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキレン基が有していてもよい置換基の具体例としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐鎖アルキレン基であってもよく、直鎖アルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜20が好ましく、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。なお、アルキレン基の炭素原子数には、アルキレン基に結合する置換基の炭素原子を含まない。
アルキレン基に結合する置換基としてのアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であっても、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
アルキレン基に結合する置換基としてのアミノ基は、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
式(1)中のR3として好適なアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、n−プロパン−1,3−ジイル基、n−プロパン−2,2−ジイル基、n−ブタン−1,4−ジイル基、n−ペンタン−1,5−ジイル基、n−ヘキサン−1,6−ジイル基、n−ヘプタン−1,7−ジイル基、n−オクタン−1,8−ジイル基、n−ノナン−1,9−ジイル基、n−デカン−1,10−ジイル基、n−ウンデカン−1,11−ジイル基、n−ドデカン−1,12−ジイル基、n−トリデカン−1,13−ジイル基、n−テトラデカン−1,14−ジイル基、n−ペンタデカン−1,15−ジイル基、n−ヘキサデカン−1,16−ジイル基、n−ヘプタデカン−1,17−ジイル基、n−オクタデカン−1,18−ジイル基、n−ノナデカン−1,19−ジイル基、及びn−イコサン−1,20−ジイル基が挙げられる。
式(1)中のR4は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、nは0〜3の整数である。nが2〜3の整数である場合、複数のR4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中のR4が有機基である場合、当該有機基は、R2について、芳香族基が置換基として有していてもよい有機基と同様である。
式(1)中のR4が有機基である場合、有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましく、フリル基、及びチエニル基がより好ましい。
式(1)中のR4がアルキル基である場合、アルキル基のイミダゾール環上での結合位置は、2位、4位、5位のいずれも好ましく、2位がより好ましい。R4が芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基である場合、これらの基のイミダゾール上での結合位置は、2位が好ましい。
上記式(1)で表されるイミダゾール化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、水や有機溶剤に対する溶解性に優れる点から、下記式(1−1)で表される化合物が好ましく、式(1−1)で表され、R3がメチレン基である化合物がより好ましい。
(式(1−1)中、R
1、R
3、R
4、及びnは、式(1)と同様であり、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。)
式(1−1)中のR5、R6、R7、R8、及びR9が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるR2が置換基として有する有機基と同様である。R5、R6、R7、及びR8は、イミダゾール化合物の溶剤(S)に対する溶解性の点から水素原子であるのが好ましい。
中でも、式(1)中のR5、R6、R7、R8、及びR9のうち少なくとも1つは、下記置換基であることが好ましく、R9が下記置換基であるのが特に好ましい。R9が下記置換基である場合、R5、R6、R7、及びR8は水素原子であるのが好ましい。
−O−R10
(R10は水素原子又は有機基である。)
R10が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるR2が置換基として有する有機基と同様である。R10としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
上記式(1−1)で表される化合物の中では、下記式(1−1−1)で表される化合物が好ましい。
(式(1−1−1)において、R
1、R
4、及びnは、式(1)と同様であり、R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。)
式(1−1−1)で表される化合物の中でも、R11、R12、R13、R14、及びR15のうち少なくとも1つが、前述の−O−R10で表される基であることが好ましく、R15が−O−R10で表される基であるのが特に好ましい。R15が−O−R10で表される基である場合、R11、R12、R13、及びR14は水素原子であるのが好ましい。
式(1)で表されるイミダゾール化合物の好適な具体例としては、以下のものが挙げられる。
樹脂組成物(I)における、イミダゾール化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。イミダゾール化合物の含有量は、前述のポリイミド前駆体成分100質量部に対して、例えば1質量部以上であり、上限は特に限定されないが、例えば60質量部以下である。5〜50質量部がより好ましく、10〜40質量部が特に好ましい。かかる範囲の量のイミダゾール化合物を用いることにより、耐熱性を損なうことなく、引張強度及び破断伸びに優れるポリイミド膜を形成しやすくなる。
<有機溶剤(S)>
本実施形態にかかるポリイミド前駆体組成物(I)は、典型的には、有機溶剤(S)を含有する。ポリイミド前駆体組成物(I)は、膜を形成可能である限り、固体を含むペーストであってもよく、溶液であってもよい。均質で平滑な膜を形成しやすい点で、ポリイミド前駆体組成物は溶液であるのが好ましい。溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で、特に限定されない。好適な溶剤(S)の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ピリジン、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;ヘキサメチルホスホリックトリアミド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート、グライム等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒が挙げられる。
有機溶剤(S)は、また、下記式(S1)で表される化合物を含むのが好ましい。
(式(S1)中、R
S1及びR
S2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基であり、R
S3は下記式(S1−1)又は下記式(S1−2):
で表される基である。式(S1−1)中、R
S4は、水素原子又は水酸基であり、R
S5及びR
S6は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。式(S1−2)中、R
S7及びR
S8は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
式(S1)で表される化合物のうち、RS3が式(S1−1)で表される基である場合の具体例としては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−エチル,N,2−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチル−2−メチルプロピオンアミド、N,N,2−トリメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、N−エチル−N,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、及びN,N−ジエチル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド等が挙げられる。
式(S1)で表される化合物のうち、RS3が式(S1−2)で表される基である場合の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N,N,N’,N’−テトラエチルウレア等が挙げられる。
式(S1)で表される化合物の例のうち、特に好ましいものとしては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアが好ましい。N,N,2−トリメチルプロピオンアミドの大気圧下での沸点は175℃であって、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアの大気圧下での沸点は177℃である。このように、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、モノマー成分及びポリアミド酸を溶解可能な溶媒の中では比較的沸点が低い。
このため、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアから選択される少なくとも1種を含む有機溶剤(S)を含有するポリイミド前駆体組成物を用いると、ポリイミド膜形成時の加熱において、生成するポリイミド膜中に溶剤が残存しにくく、得られるポリイミド膜の引張伸度の低下等を招きにくい。
さらに、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、EU(欧州連合)でのREACH規則において、有害性が懸念される物質であるSVHC(Substance of Very High Concern、高懸念物質)に指定されていないように、有害性が低い物質である点でも有用である。
有機溶剤(S)中の、式(S1)で表される化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。溶剤の質量に対する式(S1)で表される化合物の比率は、典型的には、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
ポリイミド前駆体組成物(I)中の有機溶剤(S)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ポリイミド前駆体組成物(I)中の有機溶剤(S)の含有量は、ポリイミド前駆体組成物中の固形分含有量に応じて適宜調整される。ポリイミド前駆体組成物(I)中の固形分含有量は、例えば、1〜80質量%であり、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
<ケイ素含有化合物>
本実施形態にかかるポリイミド前駆体組成物(I)は、上で説明した成分に加えて、ケイ素含有樹脂、ケイ素含有樹脂前駆体、及びシランカップリング剤からなる群より選択される1種以上のケイ素含有化合物を含んでいてもよい。ケイ素含有樹脂としては、例えばシロキサン樹脂又はポリシランが挙げられる。ケイ素含有樹脂前駆体としては、例えばシロキサン樹脂又はポリシランの原料モノマーとなるシラン化合物が挙げられる。
ポリイミド前駆体組成物(I)が、ケイ素含有化合物を含む場合、ポリイミド前駆体組成物(I)又はポリイミド前駆体組成物(I)を用いて形成されるポリイミド樹脂と、被塗布体との適度な密着性を達成し得る。この効果は、被塗布体の材質がガラスである場合に顕著である。被塗布体に密着させることができるので、ポリイミド膜形成のプロセスマージン(プロセス余裕度)が向上する。また、ポリイミド前駆体組成物(I)がケイ素含有化合物を含むと、後述のUVレーザーによる剥離工程の際、被塗布体からのポリイミド膜の剥離性を向上させるためにUVレーザーの露光量を高くした場合でも、剥離時の白濁が抑制されやすい。被塗布体としては、支持体であってもよい。
なお、ケイ素含有化合物をポリイミド前駆体組成物(I)に添加するか否か、ケイ素含有添加物を添加する場合のケイ素含有化合物の使用量等は、ポリイミド前駆体組成物(I)を用いて形成されるポリイミド膜の用途に応じて適宜決定される。
例えば、後述するレーザー剥離工程を設けない場合には、ポリイミド膜と、基板等の支持体との密着性が低いほうが、ポリイミド膜の支持体からの剥離が容易であるのが好ましい。この場合、ポリイミド前駆体組成物(I)にケイ素含有化合物を添加しないか、ポリイミド前駆体組成物(I)へのケイ素含有化合物の添加量が少量であるのが好ましい。
他方、レーザー剥離工程を設ける場合、加工プロセスの途中で、ポリイミド前駆体組成物(I)の膜やポリイミド膜が支持体から剥離しないことが望まれる。この場合、プロセスマージンを広げられる点から、ポリイミド前駆体組成物(I)に、ケイ素含有組成物を積極的に添加して、ポリイミド前駆体組成物(I)の膜やポリイミド膜の支持体への密着性を高めるのが好ましい。
以下、シロキサン樹脂、ポリシラン、及びシランカップリング剤について順に説明する。
[シロキサン樹脂]
シロキサン樹脂は、公知の材料の中から適宜選択すればよいが、たとえば、以下説明するシラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を加水分解及び縮合させることにより得られるシロキサン樹脂を用いることができる。シラン化合物はシラン化合物組成物に含有された状態で加水分解及び縮合されてもよい。
シロキサン樹脂としては、例えば下記式(c1)で表されるシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂が好適に使用される。
(Rc1)4−pSi(ORc2)p・・・(c1)
式(c1)において、Rc1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、Rc2はアルキル基又はフェニル基を表し、pは2〜4の整数を表す。Siに複数のRc1が結合している場合、該複数のRc1は同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(ORc2)基は同じであっても異なっていてもよい。
また、Rc1としてのアルキル基は、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
Rc1としてのアルケニル基は、好ましくは炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルケニル基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルケニル基である。
Rc1がアリール基、又はアラルキル基である場合、これらの基に含まれるアリール基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アリール基の好適な例としては、下記式の基が挙げられる。
上記式中、Rc3は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等の炭化水素基である。上記式中、Rc3’は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。
Rc1がアリール基又はアラルキル基である場合の好適な具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
アリール基又はアラルキル基に含まれるベンゼン環の数は1〜3個であることが好ましい。ベンゼン環の数が1〜3個であると、シロキサン樹脂の製造性が良好であり、シロキサン樹脂の重合度の上昇により焼成時の揮発が抑制され、ポリイミド膜の形成が容易である。アリール基又はアラルキル基は、置換基として水酸基を有していてもよい。
また、Rc2としてのアルキル基は好ましくは炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。Rc2としてのアルキル基の炭素原子数は、特に加水分解速度の点から1又は2が好ましい。
式(c1)におけるpが4の場合のシラン化合物(i)は下記式(c2)で表される。
Si(ORc4)a(ORc5)b(ORc6)c(ORc7)d・・・(c2)
式(c2)中、Rc4、Rc5、Rc6及びRc7は、それぞれ独立に上記Rc2と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、且つa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
式(c1)におけるpが3の場合のシラン化合物(ii)は下記式(c3)で表される。
Rc8Si(ORc9)e(ORc10)f(ORc11)g・・・(c3)
式(c3)中、Rc8は水素原子、上記Rc1と同じアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rc9、Rc10、及びRc11は、それぞれ独立に上記Rc2と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
e、f、及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、且つe+f+g=3の条件を満たす整数である。
式(c1)におけるpが2の場合のシラン化合物(iii)は下記式(c4)で表される。
Rc12Rc13Si(ORc14)h(ORc15)i・・・(c4)
式(c4)中、Rc12及びRc13は水素原子、上記Rc1と同じアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rc14、及びRc15は、それぞれ独立に上記Rc2と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、且つh+i=2の条件を満たす整数である。
シラン化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
シラン化合物(ii)の具体例としては、
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、及びモノフェニルオキシジエトキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びメチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のメチルシラン化合物;
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びエチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のエチルシラン化合物;
プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、及びプロピルトリフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びプロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のプロピルシラン化合物;
ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジブロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のブチルシラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリペンチルオキシシラン、フェニルトリフェニルオキシシラン、フェニルモノメトキシジエトキシシラン、フェニルモノメトキシジプロポキシシラン、フェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、フェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のフェニルシラン化合物;
ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシフェニルシラン化合物;
ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、ナフチルトリペンチルオキシシラン、ナフチルトリフェニルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジエトキシシラン、ナフチルモノメトキシジプロポキシシラン、ナフチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びナフチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のナフチルシラン化合物;
ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、ベンジルトリペンチルオキシシラン、ベンジルトリフェニルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のベンジルシラン化合物;
ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリエトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシベンジルシラン化合物;が挙げられる。
シラン化合物(iii)の具体例としては、
ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、及びエトキシフェニルオキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルエトキシプロポキシシラン、メチルジプロポキシシラン、メチルジペンチルオキシシラン、メチルジフェニルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン等のメチルヒドロシラン化合物;
エチルジメトキシシラン、エチルメトキシエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルメトキシペンチルオキシシラン、エチルエトキシプロポキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、エチルメトキシフェニルオキシシラン等のエチルヒドロシラン化合物;
プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルメトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシペンチルオキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジプロポキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシフェニルオキシシラン等のプロピルヒドロシラン化合物;
ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルメトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシペンチルオキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルジペンチルオキシシラン、ブチルジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシフェニルオキシシラン等のブチルヒドロシラン化合物;
フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フェニルエトキシプロポキシシラン、フェニルジプロポキシシラン、フェニルジペンチルオキシシラン、フェニルジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン等のフェニルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシフェニルジメトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシフェニルジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシフェニルヒドロシラン化合物;
ナフチルジメトキシシラン、ナフチルメトキシエトキシシラン、ナフチルジエトキシシラン、ナフチルメトキシプロポキシシラン、ナフチルメトキシペンチルオキシシラン、ナフチルエトキシプロポキシシラン、ナフチルジプロポキシシラン、ナフチルジペンチルオキシシラン、ナフチルジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシフェニルオキシシラン等のナフチルヒドロシラン化合物;
ベンジルジメトキシシラン、ベンジルメトキシエトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメトキシプロポキシシラン、ベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ベンジルエトキシプロポキシシラン、ベンジルジプロポキシシラン、ベンジルジペンチルオキシシラン、ベンジルジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のベンジルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシベンジルジメトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシベンジルジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシベンジルヒドロシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルメトキシプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン等のジメチルシラン化合物;
ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシエトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジペンチルオキシシラン、ジエチルジフェニルオキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン等のジエチルシラン化合物;
ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルメトキシプロポキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジプロピルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジプロポキシシラン化合物;
ジブチルジメトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジペンチルオキシシラン、ジブチルジフェニルオキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン等のジブチルシラン化合物;
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシエトキシシラン、ジフェニルメトキシプロポキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジペンチルオキシシラン、ジフェニルジフェニルオキシシラン、ジフェニルエトキシプロポキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン等のジフェニルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
ジナフチルジメトキシシラン、ジナフチルメトキシエトキシシラン、ジナフチルメトキシプロポキシシラン、ジナフチルジエトキシシラン、ジナフチルジペンチルオキシシラン、ジナフチルジフェニルオキシシラン、ジナフチルエトキシプロポキシシラン、ジナフチルジプロポキシシラン等のジナフチルシラン化合物;
ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルメトキシエトキシシラン、ジベンジルメトキシプロポキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ジベンジルジペンチルオキシシラン、ジベンジルジフェニルオキシシラン、ジベンジルエトキシプロポキシシラン、ジベンジルジプロポキシシラン等のジベンジルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシエトキシシラン、メチルエチルメトキシプロポキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン等のメチルエチルシラン化合物;
メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルメトキシエトキシシラン、メチルプロピルメトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジペンチルオキシシラン、メチルプロピルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルエトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジプロポキシシラン等のメチルプロピルシラン化合物;
メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルメトキシエトキシシラン、メチルブチルメトキシプロポキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジペンチルオキシシラン、メチルブチルジフェニルオキシシラン、メチルブチルエトキシプロポキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン等のメチルブチルシラン化合物;
メチル(フェニル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(フェニル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
メチル(ナフチル)ジメトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジエトキシシラン、メチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のメチル(ナフチル)シラン化合物;
メチル(ベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ベンジル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキベンジル)シラン化合物;
エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、エチルプロピルメトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルプロピルジペンチルオキシシラン、エチルプロピルジフェニルオキシシラン、エチルプロピルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジプロポキシシラン等のエチルプロピルシラン化合物;
エチルブチルジメトキシシラン、エチルブチルメトキシエトキシシラン、エチルブチルメトキシプロポキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、エチルブチルジペンチルオキシシラン、エチルブチルジフェニルオキシシラン、エチルブチルエトキシプロポキシシラン、エチルブチルジプロポキシシラン等のエチルブチルシラン化合物;
エチル(フェニル)ジメトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジエトキシシラン、エチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(フェニル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
エチル(ナフチル)ジメトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジエトキシシラン、エチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のエチル(ナフチル)シラン化合物;
エチル(ベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ベンジル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキベンジル)シラン化合物;
プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルメトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、プロピルブチルジペンチルオキシシラン、プロピルブチルジフェニルオキシシラン、プロピルブチルエトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジプロポキシシラン等のプロピルブチルシラン化合物;
プロピル(フェニル)ジメトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジエトキシシラン、プロピル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(フェニル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
プロピル(ナフチル)ジメトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジエトキシシラン、プロピル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ナフチル)シラン化合物;
プロピル(ベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ベンジル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
が挙げられる。
また、シラン化合物としては、例えば下記式(c5)で表されるシラン化合物であってもよい。
(Rc20O)qRc18 3−qSi−Rc17−Si(ORc21)rRc19 3−r・・・(c5)
Rc17は2価の多環式芳香族基を表す。
Rc18及びRc19は、ケイ素原子に直結した1価の基であり、前述の式(c1)中のRc1と同様に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Rc20及びRc21は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
q及びrはそれぞれ独立に1〜3の整数である。
多環式芳香族基は、2以上の芳香族環を含む2以上の環が縮合した基であっても、2以上の芳香族環を含む2以上の環が単結合又は2価の連結基により相互に結合した基であってもよい。
多環式芳香族基中の部分構造としては、非芳香族環が含まれていてもよい。
2価の連結基の具体例としては、炭素原子数1〜6のアルキレン基、−CO−、−CS−、−O−、−S−、−NH−、−N=N−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−S−、−CS−O−、−CS−S−、−CO−NH−CO−、−NH−CO−NH−、−SO−、及び−SO2−等が挙げられる。
多環式芳香族基は、炭化水素基であってもよく、1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子の例としては、N、S、O、及びP等が挙げられる。
多環式芳香族基に含まれる、環の数は、2〜5の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましい。
多環式芳香族基は、置換基を有してもよい。置換基の例としては、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、及び炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基等が挙げられる。
これらの置換基の中では、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基や、メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等のアルキル基が好ましい。
多環式芳香族基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は、典型的には、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。
2価の多環式芳香族基の具体例としては、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、アントラセン、フェナントレン、アントラキノン、ピレン、カルバゾール、N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−n−プロピルカルバゾール、N−n−ブチルカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、9,9−ジエチルフルオレン、9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、及びフルオレノンからなる群より選択される多環式芳香族化合物から、芳香族環に結合する2つの水素原子を除いた基が挙げられる。
式(c5)で表されるシラン化合物の好ましい具体例を下記に示す。
以上説明したシラン化合物を、常法に従って加水分解縮合することによりシロキサン樹脂が得られる。
シロキサン樹脂の重量平均分子量は、300〜30000が好ましく、500〜10000がより好ましい。かかる範囲内の重量平均分子量を有するシロキサン樹脂をポリイミド前駆体組成物に配合する場合、製膜性に優れ、且つ剥離工程において基板からのポリイミド膜の剥離性が向上し、白濁が抑制される。また、形成されるポリイミド膜をレーザー剥離する際に、より低エネルギーでポリイミド膜を良好に剥離させやすい。
なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
以上説明したシラン化合物を加水分解縮合させて得られるシロキサン樹脂の好適な例としては、下記式(C−1)で示される構造単位を有するシロキサン樹脂が挙げられる。当該シロキサン樹脂において、ケイ素原子1個に対する炭素原子の数は2個以上である。
(式(C−1)中、R
c22はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、R
c23は水素又はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、sは0又は1である。)
Rc22及びRc23におけるアルキル基、アリール基、又はアラルキル基は、前述の式(c1)におけるアルキル基、アリール基、又はアラルキル基と同様である。
アルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基としては、ベンジル基、フェニチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、フルオレニル基、及びピレニル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基としては、具体的には下記の構造を有する基が好ましい。
上記式中、Rc24は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等の炭化水素基であり、Rc25は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。なお、上記芳香族炭化水素基は、該芳香族炭化水素基における少なくとも1つの芳香環に、上記Rc24を有していればよく、複数有していてもよい。複数のRc24を有する場合には、これらのRc24は同一でもよく、異なっていてもよい。
特に好ましいR
c22としては、下記式(R
c22−a)、又は(R
c22−b)で表される構造を有する基が好ましく、特に下記式(R
22−b)が好ましい。
式(C−1)において、sは0であることが好ましく、その場合にはシロキサン樹脂は、シルセスキオキサン骨格を有する。さらに、シロキサン樹脂は、ラダー型のシルセスキオキサンであることがより好ましい。
さらに、式(C−1)で示される構造単位(単位骨格)において、ケイ素原子1個に対して、炭素原子が2個以上15個以下となる原子数比を有していることが好ましい。
シロキサン樹脂は、式(C−1)で示される構造単位を2種類以上有していてもよい。また、シロキサン樹脂においては、式(C−1)で示される異なる構造単位からなるシロキサン樹脂が混合されていてもよい。
式(C−1)で示される構造単位を2種類以上有するシロキサン樹脂としては、具体的には下記式(C−1−1)〜(C−1−3)で示される構造単位で表されるシロキサン樹脂が挙げられる。
[ポリシラン]
ポリシランは、有機溶剤(S)に可溶であれば特に限定されず、ポリシランの構造は特に限定されない。ポリシランは直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、網目状であっても、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造が好ましい。
好適なポリシランとしては、例えば、下記式(C−2)及び(C−3)で表される単位の少なくとも1つを必須に含み、下記式(C−4)、(C−5)及び(C−6)で表される単位から選択される少なくとも1つの単位を任意に含有するポリシランが挙げられる。かかるポリシランは、シラノール基、又はケイ素原子に結合するアルキル基を必須に有する。
下記式(C−2)で表される単位、下記式(C−4)で表される単位はいずれも2価の単位であり、下記式(C−3)で表される単位、下記式(C−5)で表される単位はいずれも3価の単位であり、下記式(C−6)で表される単位は4価の単位である。
式(C−2)、(C−4)、及び(C−5)中、R
c26及びR
c27は、水素原子、有機基又はシリル基を表す。R
c28は、水素原子又はアルキル基を表す。R
c28がアルキル基である場合、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましい。
Rc26及びRc27について、有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基や、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
これらの基の中では、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基が好ましい。アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の好適な例は、前述の式(c1)中のRc1がアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である場合の例と同様である。
Rc26及びRc27がシリル基である場合、シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi1−10シラニル基(Si1−6シラニル基等)が挙げられる。
ポリシランは、下記(C−7)〜(C−10)で表される少なくとも1つのユニットを含むことが好ましい。
((C−7)〜(C−10)中、R
c26及びR
c27は、(C−2)、(C−4)、及び(C−5)中におけるR
c26及びR
c27と同様である。a、b、及びcは、それぞれ、2〜1000の整数である)
a、b、及びcは、それぞれ、10〜500が好ましく、10〜100がより好ましい。各ユニット中の構成単位は、ユニット中に、ランダムに含まれていても、ブロック化された状態で含まれていてもよい。
以上説明したポリシランの中では、それぞれケイ素原子に結合している、シラノール基と、アルキル基と、アリール基又はアラルキル基とを組み合わせて含むポリシランが好ましい。より具体的には、それぞれケイ素原子に結合している、シラノール基と、メチル基と、ベンジル基とを組み合わせて含むポリシランや、それぞれケイ素原子に結合している、シラノール基と、メチル基と、フェニル基とを組み合わせて含むポリシランが好ましく使用される。
ポリシランの重量平均分子量は、100〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましく、1000〜30000が特に好ましい。
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、ケイ素原子に結合するアルコキシ基及び/又は反応性基を介して、ポリイミド前駆体組成物(I)に含まれる種々の成分と結合又は相互作用したり、基板等の支持体の表面と結合したりする。このため、ポリイミド前駆体組成物(I)にシランカップリング剤を配合することにより、形成されるポリイミド膜の基板等の支持体への適度な密着性を達成し得る。
シランカップリング剤としては、特に限定されない。シランカップリング剤の好適な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のモノビニルトリアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルモノアルキルジアルコキシシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有トリ(又はジ)アルコキシシラン;及びそれらのアミノ基をアルデヒド等で保護したケチミンシラン;;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等の非脂環式エポキシフルオレニリデン基含有アルキルトリ(又はジ)アルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の非脂環式エポキシ基含有アルキルモノアルキルジアルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジエトキシシラン等の脂環式エポキシ基含有アルキルトリ(又はジ)アルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等の脂環式エポキシ基含有アルキルモノアルキルジアルコキシシラン;〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン等のオキセタニル基含有アルキルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトアルキルモノアルキルジアルコキシシラン;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドアルキルトリアルコキシシラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートアルキルトリアルコキシシラン;トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス−(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート含有トリアルコキシシラン;3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、その他の酸無水物基(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸無水物基、4−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸無水物基、5−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸無水物基、ビシクロヘプタンジカルボン酸無水物基、7−オキサ−ビシクロヘプタンジカルボン酸無水物基、フタル酸無水物基等)を有するトリアルコキシシラン等の酸無水物基含有アルキルトリアルコキシシラン;カルボキシ基として、コハク酸基、又はそのハーフエステル基、シクロヘキサンジカルボン酸基、又はそのハーフエステル基、4−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸基、又はそのハーフエステル基、5−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸基、又はそのハーフエステル基、ビシクロヘプタンジカルボン酸基、又はそのハーフエステル基、7−オキサ−ビシクロヘプタンジカルボン酸基、又はそのハーフエステル基、フタル酸基、又はそのハーフエステル基を有するカルボキシ基含有アルキルトリアルコキシシラン;N−tert−ブチル−3−(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド等のイミド基含有アルキルトリアルコキシシラン;(3−トリメトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバメート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−tert−ブチルカルバメート等のカルバメート基含有アルキルトリアルコキシシラン;等が挙げられる。また、アミド基含有トリアルコキシシランも好適に挙げられる。
アミド基含有トリアルコキシシランは、アミノ基含有トリアルコキシシランとカルボン酸、酸クロライド、ジカルボン酸無水物、又はテトラカルボン酸無水物との反応、若しくはカルボキシル基、酸クロライド基、又は酸無水物基含有トリアルコキシシランとアミンとの反応によって得られる。中でも、アミド基含有トリアルコキシシランは、アミノ基含有トリアルコキシシランと、ジカルボン酸無水物又はテトラカルボン酸無水物との反応によって得られる、若しくは酸無水物基含有トリアルコキシシランと、アミンとの反応によって得られる、アミド基含有トリアルコキシシランであることが好ましい。
アミノ基含有トリアルコキシシランと酸無水物を反応させる場合、アミノ基含有トリ(又はジ)アルコキシシランとしては、先述したアミノ基含有トリ(又はジ)アルコキシシランと同様の化合物が挙げられる。ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、5−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ビシクロヘプタンジカルボン酸無水物、7−オキサビシクロヘプタンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、アジピン酸無水物、無水フタル酸、(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸無水物、(3−トリエトキシシリルプロピル)コハク酸無水物等の多塩基酸無水物が挙げられる。また、テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、及び、4,4’−オキシジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸無水物基含有トリアルコキシシランとアミンを反応させる場合、酸無水物基含有トリアルコキシシランとしては、先述した酸無水物基含有トリアルコキシシランと同様の化合物が挙げられる。アミンとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、1−アミノオクタデカン、アニリン、ベンジルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、2−アミノトルエン、3−アミノトルエン、4−アミノトルエン、2,4−ジメチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、3,4−ジメチルアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2,4,5−トリメチルアニリン、2,4,6−トリメチルアニリン、2,3,4,5−テトラメチルアニリン、2,3,5,6−テトラメチルアニリン、2,3,4,6−テトラメチルアニリン、2−エチル−3−ヘキシルアニリン、2−エチル−4−ヘキシルアニリン、2−エチル−5−ヘキシルアニリン、2−エチル−6−ヘキシルアニリン、3−エチル−4−ヘキシルアニリン、3−エチル−5−ヘキシルアニリン、3−エチル−2−ヘキシルアニリン、4−エチル−2−ヘキシルアニリン、5−エチル−2−ヘキシルアニリン、6−エチル−2−ヘキシルアニリン、4−エチル−3−ヘキシルアニリン、5−エチル−3−ヘキシルアニリン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、2−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、2−(4−アミノフェニル)エチルアミン、2−(3−アミノフェニル)エチルアミン、2−(2−アミノフェニル)エチルアミン、2,3−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、2,3−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−m−フェニレンジアミン、3,4−ジメチル−o−フェニレンジアミン、3,5−ジメチル−o−フェニレンジアミン、3,6−ジメチル−o−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラメチル−1,3−フェニレンジアミン、3,4,5,6−テトラメチル−1,2−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、2,3−ジアミノ−4,5−ジエチルトルエン、2,4−ジアミノ−4,6−ジエチルトルエン、2,3−ジアミノ−5,6−ジエチルトルエン、2,4−ジアミノ−3,6−ジエチルトルエン、2,5−ジアミノ−3,4−ジエチルトルエン、2,5−ジアミノ−3,6−ジエチルトルエン、2,5−ジアミノ−4,6−ジエチルトルエン、2,3−ジアミノ−4,5−ジエチルトルエン、2,3−ジアミノ−4,6−ジエチルトルエン、2,3−ジアミノ−4,5,6−トリエチルトルエン、2,4−ジアミノ−3,5,6−トリエチルトルエン、2,5−ジアミノ−3,4,6−トリエチルトルエン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン、4−メトキシアニリン、2−メトキシ−3−メチルアニリン、2−メトキシ−4−メチルアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2−メトキシ−6−メチルアニリン、3−メトキシ−2−メチルアニリン、3−メトキシ−4−メチルアニリン、3−メトキシ−5−メチルアニリン、3−メトキシ−6−メチルアニリン、4−メトキシ−2−メチルアニリン、4−メトキシ−3−メチルアニリン、2−エトキシアニリン、3−エトキシアニリン、4−エトキシアニリン、4−メトキシ−5−メチルアニリン、4−メトキシ−6−メチルアニリン、2−メトキシ−3−エチルアニリン、2−メトキシ−4−エチルアニリン、2−メトキシ−5−エチルアニリン、2−メトキシ−6−エチルアニリン、3−メトキシ−2−エチルアニリン、3−メトキシ−4−エチルアニリン、3−メトキシ−5−エチルアニリン、3−メトキシ−6−エチルアニリン、4−メトキシ−2−エチルアニリン、4−メトキシ−3−エチルアニリン、2−メトキシ−3,4,5−トリメチルアニリン、3−メトキシ−2,4,5−トリメチルアニリン、及び、4−メトキシ−2,3,5−トリメチルアニリンが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アミド基含有トリアルコキシシランとしては、酸二無水物とアミノ基含有トリアルコキシシランとを反応させて得られる化合物であってもよい。酸二無水物としては、下記式で示される酸二無水物が好ましい。
(式中、R
19は、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を示す。)
上記式で表される酸二無水物と反応させるアミノ基含有トリアルコキシシランは上記アミノ基含有トリアルコキシシランで挙げた化合物と同様である。反応物の好ましい具体例を以下に挙げる。
なお、以下に示される各化合物としては、酸無水物の開環した際に生じるアミド基の位置の異なる位置異性体を含んでいてもよい。
アミド基含有トリアルコキシシランとして好ましくは、2−(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸モノフェニルアミド、3−(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸モノフェニルアミド、2−(3−トリエトキシシリルプロピル)コハク酸モノフェニルアミド、3−(3−トリエトキシシリルプロピル)コハク酸モノフェニルアミド、2−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)コハク酸モノフェニルアミド、3−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)コハク酸モノフェニルアミド、次の式(R20O)3Si−X20−R21−Y20−COOH[ただし、R20は炭素原子数1〜12のアルキル基であり、X20は単結合、NH結合を介していてもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、炭素原子数6〜12のフルオレニリデンアリール基であり、R21は−NHCO−又は−CONH−であり、Y20は2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基である。]等のアミド結合含有トリアルコキシシラン、及び上記式(Am−1)〜(Am−3)で表される化合物が挙げられる。
これらのシランカップリング剤の中では、アミノ基含有トリアルコキシシラン及びそれらのアミノ基をアルデヒド等で保護したケチミンシラン又はアミド結合含有トリアルコキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、下記式(c6)で表される化合物も、シランカップリング剤として好適に使用される。
Rc29 dRc30 (3−d)Si−Rc31−NH−C(O)−Y−Rc32−X・・・(c6)
(式(c6)中、Rc29はアルコキシ基であり、Rc30はアルキル基であり、dは1〜3の整数であり、Rc31はアルキレン基であり、Yは−NH−、−O−、又は−S−であり、Rc32は単結合、又はアルキレン基であり、Xは、置換基を有していてもよく単環でも多環でもよい含窒素ヘテロアリール基であり、X中の−Y−Rc33−と結合する環は含窒素6員芳香環であり、−Y−Rc33−は上記含窒素6員芳香環中の炭素原子と結合する。)
式(c6)中、Rc29はアルコキシ基である。Rc29について、アルコキシ基の炭素原子数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、シランカップリング剤の反応性の観点から1又は2が特に好ましい。Rc29の好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、及びn−ヘキシルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましい。
アルコキシ基であるRc29が加水分解されて生成するシラノール基が基板の表面等と反応することで、ポリイミド前駆体組成物を用いて形成されるポリイミド膜の基板等の支持体の表面への密着性が向上されやすい。このため、ポリイミド膜の基板等の支持体の表面への密着性を向上させやすい点から、mは3であるのが好ましい。
式(c6)中、Rc30はアルキル基である。Rc30について、アルキル基の炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、シランカップリング剤の反応性の観点から1又は2が特に好ましい。Rc30の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、及びn−ドデシル基が挙げられる。
式(c6)中、Rc31はアルキレン基である。Rc31について、アルキレン基の炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜4が特に好ましい。Rc31の好ましい具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、及びヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、及びドデカン−1,12−ジイル基が挙げられる。これらのアルキレン基の中では、1,2−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、及びブタン−1,4−ジイル基が好ましい。
Yは−NH−、−O−、又は−S−であり、−NH−であるのが好ましい。−CO−O−、又は−CO−S−で表される結合よりも、−CO−NH−で表される結合のほうが加水分解を受けにくいため、Yが−NH−である化合物をシランカップリング剤として含むポリイミド前駆体組成物を用いると、基板等の支持体への密着性に優れるポリイミド膜を形成できる。
Rc32は単結合、又はアルキレン基であり、単結合であるのが好ましい。Rc32がアルキレン基である場合の好ましい例は、Rc31と同様である。
Xは、置換基を有していてもよく単環でも多環でもよい含窒素ヘテロアリール基であり、X中の−Y−Rc33−と結合する環は含窒素6員芳香環であり、−Y−Rc33−は該含窒素6員芳香環中の炭素原子と結合する。理由は不明であるが、このようなXを有する化合物をシランカップリング剤として含むポリイミド前駆体組成物を用いると、基板等の支持体への密着性に優れるポリイミド膜を形成できる。
Xが多環ヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基は、複数の単環が縮合した基であってもよく、複数の単環が単結合を介して結合した基であってもよい。Xが多環ヘテロアリール基である場合、多環ヘテロアリール基に含まれる環数は1〜3が好ましい。Xが多環ヘテロアリール基である場合、X中の含窒素6員芳香環に縮合又は結合する環は、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、芳香環であっても芳香環でなくてもよい。
含窒素ヘテロアリール基であるXが有していてもよい置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。Xが有する置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Xが有する置換基の数は、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。Xが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同じであっても、異なっていてもよい。
上記の基の中でも、下記式の基がXとしてより好ましい。
以上説明した、式(c6)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物1〜8が挙げられる。
以上説明したケイ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上説明したケイ素含有化合物のポリイミド前駆体組成物(I)中の含有量は、組成物の固形分に対して、たとえば0.01〜20質量%であり、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが好ましい。ポリイミド前駆体組成物におけるケイ素含有化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、ケイ素含有化合物の添加により期待される効果が十分に発現しやすい。
(その他の成分)
本実施形態にかかるポリイミド前駆体組成物(I)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記成分以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、塩基発生剤成分、モノマー等の重合性成分、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、消泡剤、及び着色剤等が挙げられる。
<ポリイミド前駆体組成物(I)の調製>
ポリイミド前駆体組成物を調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド前駆体成分として上述の各種モノマー成分、及びポリアミド酸よりなる群から選択される少なくとも1つと、有機溶剤(S)と、イミダゾール化合物と、必要に応じ上述のその他の成分とを配合することにより調製することができる。
ポリイミド前駆体成分としては、モノマー成分とポリアミド酸との両方を配合してもよい。通常、モノマー成分のみ又はポリアミド酸のみを配合することで十分である。イミダゾール化合物の存在下にポリアミド酸の高分子量化を進めることができる点で、成分として、モノマー成分を配合したうえで、環形成性ポリマーを合成することが好ましい。また、イミダゾール化合物の存在下に環形成性ポリマーの閉環効率を高めることができる点で、成分として、前駆体ポリマーを配合することが好ましい。
本実施形態にかかるポリイミド前駆体組成物(I)は、有機溶剤(S)に、ポリイミド前駆体成分としてモノマー成分を配合した後に、好ましくはイミダゾール化合物の存在下にポリアミド酸を生成させて得られた組成物であってもよい。
本実施形態にかかるポリイミド前駆体組成物(I)の調製において、各成分を配合(添加)する順序としては、特に限定されず、例えば、イミダゾール化合物の配合は、ポリイミド前駆体成分を配合する前であっても後であってもよく、同時に混合してもよい。
<ハードコート層20>
本実施形態の積層体はハードコート層20を備える。
ハードコート層20の厚みは、適宜設定することができるが、下限値としては、例えば1μm以上であり、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。一方、上限値としては、たとえば3mm以下であり、1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
上記ハードコート層20として、本発明の効果を損なわない限り、いかなるハードコート層であってもよいが、上記ハードコート層20の好ましい実施態様として、以下説明するハードコート層(ア)〜(ウ)が挙げられる。
1.ハードコート層(ア)
上記ハードコート層20の好ましい実施形態の1つであるハードコート層(ア)は、少なくともアクリル系共重合体(α)と感エネルギー硬化性化合物とを含有する感エネルギー硬化性樹脂組成物を硬化した層であり、上記アクリル系共重合体(α)が、好ましくは下記共重合体(β)の下記化合物(γ)付加物である。
共重合体(β):下記式(A)で表されるシリコーンモノマー(a)に由来する構造単位、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む共重合体化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物
(上記式(A)中、R
a1は水素原子又はメチル基、R
a2はアルキレン基、R
a3及びR
a4はそれぞれメチル基又はフェニル基、pは10〜100の整数を表し、R
a3及びR
a4は、相互に同一でも異なっていてもよい。また、R
a5はアルキル基を表す。)
上記ハードコート層(ア)の形成に用いる感エネルギー硬化性樹脂組成物は、上記アクリル系共重合体(α)を0.05質量%以上含有することが好ましく、硬化したハードコート層において表面易滑性が十分に発現し、滑り性及び耐摩耗性が良好である点から、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また、10質量%以下含有することが好ましく、上記アクリル系共重合体(α)と反応する感エネルギー硬化性化合物との相溶性が確保され硬化した層の透明性が良好であることと、上記感エネルギー硬化性化合物よりも比較的軟らかい上記アクリル系共重合体(α)が表面に偏在し過ぎず、硬度、耐擦傷性が確保できる点から、9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
上記アクリル系共重合体(α)と、上記感エネルギー硬化性化合物とについて説明する。
(アクリル系共重合体(α))
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物に含まれるアクリル系共重合体(α)は、好ましくは下記共重合体(β)の下記化合物(γ)付加物である。
[共重合体(β)]
上記共重合体(β)は、上記式(A)で表されるシリコーンモノマー(a)に由来する構造単位、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む共重合体である。
共重合体(β)は、上記式(A)で表されるシリコーンモノマー(a)に由来する構造単位を含む。
上記式(A)中、Ra1は水素原子又はメチル基であり、共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと略記することがある)が高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点から、メチル基であることが好ましい。
上記式(A)中、Ra2はアルキレン基であり、炭素数1以上のアルキレン基が挙げられ、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、炭素数2以上が好ましく、炭素数3以上が特に好ましい。また、炭素数の上限値としては本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、炭素数12以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数10以下がより好ましく、炭素数8以下が更に好ましい。
上記式(A)中、Ra3及びRa4はそれぞれメチル基又はフェニル基であり、原料の入手及び製造(反応)が比較的容易である点から、メチル基であることが好ましい。また、pは10以上の整数であり、硬化したハードコート層において表面易滑性が十分に発現し、滑り性が良好である点から、pは25以上が好ましく、pは50以上が特に好ましい。また、pは100以下の整数であり、原料及び上記アクリル系共重合体(α)の溶媒への溶解性および上記光硬化性化合物との相溶性が良好である点から、pは90以下が好ましく、pは80以下が特に好ましい。
Ra5はアルキル基であり、炭素数1以上のアルキル基が挙げられ、原料の入手及び製造(反応)が比較的容易である点から、炭素数2以上が好ましく、炭素数3以上が特に好ましい。また、炭素数12以下のアルキル基であり、炭素数10以下が好ましく、炭素数8以下が好ましい。
具体的な構造としては、所望の効果が得られるものであれば特に限定されないが、ポリジメチルシロキサンを持つものが好ましく、例えば片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えばJNC社製「サイラプレーン(登録商標)FM0711」、「サイラプレーン(登録商標)FM0721」、「サイラプレーン(登録商標)FM0725」)を他のラジカル重合性モノマーとラジカル重合した際に生起する構造が挙げられる。これらの化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。なお、本実施形態におけるシリコーンモノマー(a)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)とは、(a)を2種以上用いたときに最も数平均分子量が高いものの数平均分子量(g/mol)を意味する。
シリコーンモノマー(a)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)としては、特に限定されないが、通常1,000以上であり、硬化したハードコート層における表面滑り性が良好である(摩擦係数が低い)ことから、2,000以上が好ましく、3,000以上がさらに好ましい。また、通常50,000以下であり、溶媒や感エネルギー硬化性化合物との相溶性が良好であることから、20,000以下が好ましく、10,000以下がさらに好ましい。特に4,000以上、7,000以下であると防汚性が特異的に良好となるため特に好ましい。
共重合体(β)は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む。
上記「エポキシ基を有する(メタ)アクリレート」の例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを;3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等の脂環構造に直接エポキシ基が結合している(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中では、入手の容易さ、後述する分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(γ)による変性のしやすさから、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が特に好ましい。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレートの質量比(%)としては、特に限定されないが、通常1質量%以上であり、硬化膜の表面滑り性の耐久性が良好であることから、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また、上記アクリル系共重合体(α)の溶媒への溶解性が良好であり、共重合体(β)のエポキシ−酸反応時にゲル化が生起しづらい点から、通常99.9質量%以下であるが、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
共重合体(β)は、更に「その他共重合可能なモノマー(c)」に由来する構造単位を含んでいてもよい。
「その他共重合可能なモノマー(c)」としては、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されないが、好ましくはエポキシ基との反応性が低く、生成ポリマーの安定性を低下させないモノマー、または骨格が剛直で、硬度を下げないモノマー由来の構造である。上記モノマーの例としては、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキルを有する(メタ)アクリレート、スチレン、またはスチレンの低級アルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基)若しくは低級アルケニル基(例えば、炭素数2〜4のアルケニル基)の置換誘導体、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数5〜20の(ポリ)シクロアルキル側鎖を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができ、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
例えば、次のような化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリメトキシシラン、及び3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、及びシアノ化ビニリデン等のアクリロニトリル化合物、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物が挙げられる。
これらの中では、共重合体のTgが高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点、硬化表面の硬度が高くなる点から、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、つまりメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレートが好ましく、共重合体のTgが高くなり、硬化した層の表面の硬度が高くなる点から、メチル(メタ)アクリレート、共重合体の溶媒への溶解性が良好になる点から2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートまたはステアリルメタクリレートを用いた構造が特に好ましい。これらの構造は1種を単独で含有してもよく、2種以上が含有していてもよい。
また、その他共重合可能なモノマー(c)は、共重合体の溶媒への溶解性が良好になる点から、アクリル系共重合体(α)中のモル比が1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。また、ハードコート層の滑り性、耐摩耗性と上記アクリル系共重合体(α)の溶解性が良好である点から、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましく、70質量%以下が最も好ましい。
本実施形態においては、シリコーンモノマー(a)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)と、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の質量比(%)を乗じた値が250,000以上であることが好ましい。ここで、シリコーンモノマー(a)の数平均分子量は大きいほど硬化した層の滑り性が良好になり、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の共重合(β)中の質量比(%)が大きいほど硬化膜における共重合体(α)の脱落が抑制され滑り性の耐久性が良好になることから、250,000以上が好ましく、270,000以上がさらに好ましく、300,000以上が特に好ましい。また、シリコーンモノマー(a)の数平均分子量が小さく、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の共重合体(β)中の質量比(%)が小さいほど、合成時の酸−エポキシ反応におけるゲル化が抑制されることから、1,000,000以下が好ましく、900,000以下がさらに好ましく、700,000以下が特に好ましい。
なお、シリコーンモノマー(a)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)と、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の質量比(%)を乗じた値を調整するためには、シリコーンモノマー(a)の数平均分子量(g/mol)を選択したり、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の質量比(%)を選択することで、調整できる。
[化合物(γ)]
本実施形態に用い得る化合物(γ)は、分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸の他、水酸基含有多官能アクリレートと酸無水物との反応物が挙げられ、その具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。
上記アクリル系共重合体(α)と感エネルギー硬化性化合物との合計量(総質量)を100質量部としたとき、アクリル共重合体(α)の質量比率は、通常0.1質量%以上であるが、アクリル共重合体(α)の質量比率が大きくなると硬化膜表面の滑り性が良好となるため、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。また、通常10質量%以下であるが、アクリル共重合体(α)の質量比率が小さくなると表面近傍に偏在する共重合体(α)の量が少なくなるため、表面硬度が高くなり耐擦傷性が良好となるため、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。上記アクリル共重合体(α)の質量比率は、所望の物性を満足するのであれば特に限定されず、アクリル系共重合体(α)の構造、特にシリコーンモノマー(a)の分子量、含有量により適宜調整できる。
(感エネルギー硬化性化合物)
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物に含まれる感エネルギー硬化性化合物は、前述のアクリル系共重合体(α)以外の化合物であり、熱又は活性エネルギー線の照射によりアクリル系共重合体(α)と反応するものが挙げられる。より具体的には、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であることが好ましい。また、ハードコート層の硬度及び耐摩耗性が良好であり、またハードコート層硬化時の反応性も高い点から、上記感エネルギー硬化性化合物中の(メタ)アクリロイル基の官能基数は、3個以上が好ましく、4個以上が特に好ましい。また、硬化前の樹脂粘度が塗工するのに適する点から、9個以下が好ましく、6個以下が特に好ましい。
具体的には、多官能(メタ)アクリレート、及びそのウレタン変性体、エステル変性体、並びにカーボネート変性体、から選ばれる一以上からなる多官能(メタ)アクリレート誘導体である。より具体的には、以下のようなものを例示できるが、感エネルギー硬化性樹脂組成物を得ることができるものであればこれらに限定されるものではない。
例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、無水コハク酸へのペンタエリスリトールトリアクリレート付加物、無水コハク酸へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物などの多官能アクリレート類;側鎖又は側鎖と末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー(具体的には、東亞合成社製のM8030、M7100など)などのポリエステル(メタ)アクリレート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の反応物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアネート体とPTMG反応物へのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物などの多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ポリカーボネートジオールを用いたオリゴエステルとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物などのカーボネート結合を有するポリエステル(メタ)アクリレート類;IPDIとポリカーボネートジオールの反応物と、HEAの反応物などのカーボネート結合を有するポリウレタン(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAのアクリル酸付加物(具体的には、新中村化学社製のEA−1025)などのポリエポキシ(メタ)アクリレート類;トリエトキシイソシアヌル酸ジアクリレート、トリエトキシイソシアヌル酸トリアクリレート(具体的には、東亞合成社製のアロニックスM315、M313)などのイソシアヌレート環を有するトリエトキシ(メタ)アクリレート類;及びこれらのアルキレンオキサイド変性物;ポリカプロラクトン変性物;などがある。また、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、粘度と硬化性、得られるハードコート層表面の硬度などから、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのアルキレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体などが特に好ましい。
((光重合開始剤))
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物は更に光重合開始剤を含んでいてもよい。
上記光重合開始剤としては、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、α−ヒドロキシアセトフェノン(α−ヒドロキシフェニルケトン)系、α−アミノアセトフェノン系、ベンジルケタール系などのアルキルフェノン型化合物;アシルホスフィンオキシド型化合物;オキシムエステル化合物;オキシフェニル酢酸エステル類;ベンゾインエ−テル類;芳香族ケトン類(ベンゾフェノン類);ケトン/アミン化合物;ベンゾイルギ酸およびそのエステル誘導体等である。
具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジ
ルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチルが好ましい。これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
中でも、硬化性の低下を最小限に抑えることが可能であり、入手が容易であって、着色等を起こしにくいことから、光重合開始剤の少なくとも一部として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシフェニルケトン類を用いることが好ましい。
また、特に硬化性が良好な感エネルギー硬化性樹脂組成物を得るためには、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、などのα−アミノフェニルケトン類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、などのベンゾフェノン類;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸エチル、などのベンゾイルギ酸(エステル)類;CGI242(チバ製)、OXE01(チバ製)、などのオキシムエステル類が好ましい。更に、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いることがより好ましく、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾイルギ酸メチルが特に好ましい。
上記アクリル系共重合体と反応する感エネルギー硬化性化合物の合計量(総質量)を100質量部としたとき、光重合開始剤は2〜6.5質量部であり、好ましくは2.5質量部以上、5.5質量部以下である。2質量部未満では得られる感エネルギー硬化性樹脂組成物の硬化性に劣り、6.5質量部以上ではハードコート層の物性が低下したりする可能性がある。
なお、本実施形態における感エネルギー硬化性樹脂組成物に熱又は活性エネルギー線を照射して硬化した層を得る際、活性エネルギー線として紫外線や軟エックス線などを用いる場合には、上記のような光重合開始剤を含むことが好ましいが、比較的エネルギーが高い電子線や硬エックス線などを用いる場合には光重合開始剤を含んでいなくてもよい。
((無機粒子))
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物は、無機粒子を含有することができる。上記無機粒子と架橋密度の高い(メタ)アクリロイル共重合体とを含有させることで、より高い硬度を有するハードコート層を形成し得る感エネルギー硬化性樹脂組成物を提供できる。
無機粒子の平均一次粒子径は1nm〜200nmであることが好ましく、ハードコート層の透明性が良好である点から150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることがより好ましい。下限値は特段限定されないが、通常1nm以上が好ましく、原料の入手が容易である点から、さらに好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。
一方、上記範囲の無機粒子の運動は、重力による沈降よりも熱拡散が支配するため、ハードコート液中に安定に粒子を分散可能となり、さらにハードコート層を形成した際に効果的に表面に無機粒子を存在させることができる。また、無機粒子の平均一次粒子径が小さいほど、光学特性が良好になる傾向がある。
本明細書における無機粒子の平均一次粒子径は、TEMなどの電子顕微鏡により観察される粒子の大きさを平均した径をいう。
無機粒子の例としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモンなどが挙げられ、これらの無機粒子は1種のみ含有させることでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。中でもシリカ(オルガノシリカゾルを含む)は原料の入手が容易であること、粒子表面の修飾が容易であり、分散安定性を確保しやすい点から好適に使用される。
シリカを水に分散させたコロイド状シリカは、表面修飾されたコロイド状シリカであることが、塗膜の透明性、積層体の耐候性、及び積層体の観点から好ましい。
コロイド状シリカの修飾には、加水分解性ケイ素基を有する化合物又は水酸基が結合したケイ素基を有する化合物を用いることができる。これらの化合物は、それぞれ、1種でも2種以上でもよい。加水分解性ケイ素基を有する化合物では、加水分解によりシラノール基が生成し、それらのシラノール基がコロイド状シリカ表面に存在するシラノール基と反応して結合することにより表面修飾コロイド状シリカが生成する。
上記ケイ素基含有化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルオリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
または、メルカプト基を有するシランに、多官能(メタ)アクリレートまたは高分子量(メタ)アクリレートを付加した誘導体、イソシアネート基を有するシランに水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを付加した誘導体などの変性したケイ素基含有化合物を用いてもよい。
コロイド状シリカの表面修飾は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基を含有する化合物、触媒、水を20〜100℃にて1〜40時間反応させることにより行うことができる。
上記表面修飾反応に使用する触媒としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸;アルカリ;アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウム2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドエチルアセトアセテート、ホウ酸ブトキシド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテートが挙げられる。これらの触媒の使用量は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基含有化合物の合計量100質量部に対して0.0001〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。また、上記表面修飾反応における水の量は、加水分解性ケイ素基に対して0.5〜100当量であることが好ましく、1〜30当量であることがより好ましい。
また、上記コロイド状シリカは、酸性又は塩基性のコロイド状シリカのうち、酸性のコロイド状シリカであることが好ましい。
無機粒子は、上記感エネルギー硬化性樹脂組成物100質量部に対し、5質量部以上含有させることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが更に好ましい。また、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。
((感エネルギー硬化性樹脂組成物の調製方法))
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、必須の各成分を、必要に応じて、溶媒、重合開始剤、添加剤などと併せて混合することにより調製することができる。
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物の調製で用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリロイル共重合体、多官能(メタ)アクリレート、塗布の下地となる基材の材質、および組成物の塗布方法などを考慮して適宜選択される。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。
これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
上記感エネルギー硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、レベリング剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
上記レベリング剤としては、例えば、またはパーフルオロアルキル基あるいはパーフルオロアルキレン骨格を含有する化合物、ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物などが挙げられる。感エネルギー硬化性樹脂組成物における上記レベリング剤の含有量は、透明性、塗布外観、密着性、硬度の観点から0〜5質量部であることが好ましく、0〜2質量部であることがより好ましく、0〜1質量部であることがさらに好ましい。
2.ハードコート層(イ)
上記ハードコート層20のもう1つの好ましい実施形態であるハードコート層(イ)は、(E)光重合開始剤と、(F)シロキサン結合、芳香環、及び架橋飽和環からなる群より選択される少なくとも1種を含む多官能アクリレート化合物とを含有する硬化性組成物を硬化した層であり、上記(E)光重合開始剤が、好ましくは下記式(e−1)で表される化合物を含む。
この場合、ハードコート層(イ)は、屈曲性、靱性、表面硬度、及び透明性に優れるものとなる。
((E)光重合開始剤)
(R
e4は、水素原子、ニトロ基、又は1価の有機基であり、R
e5及びR
e6は、独立に鎖状アルキル基、環状炭化水素基、又はヘテロアリール基であり、R
e5とR
e6とは相互に結合してスピロ環を形成してもよい。)
で表される基、下記式(e−3):
(R
e7は、独立に1価の有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基であり、A
1はS又はOであり、n1は0〜4の整数である。)
で表される基、又は下記式(e−4):
(R
e8は1価の有機基であり、R
e9は水素原子、ニトロ基、又は1価の有機基である。)
で表される基であり、R
e2は1価の有機基であり、R
e3は水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、m1は0又は1である。)
上記(E)光重合開始剤としては、上記式(e−1)で表される化合物を含む限り、特に限定されない。上記硬化性組成物は、(E)光重合開始剤を含むため、感度が高く、より少ないエネルギー線量でも十分に硬化する。(E)光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記式(e−1)中、Re1は上記式(e−2)で表される基、上記式(e−3)で表される基、又は上記式(e−4)で表される基である。
Re2の好適な有機基の例としては、後述のRe4と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。
Re2がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、Re2がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Re2がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、R2がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
Re2がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、Re2がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Re2がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチオキシル基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Re2がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
Re2がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。Re2がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Re2がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
Re2が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2〜21が好ましく、2〜7がより好ましい。Re2が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Re2が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
Re2がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。Re2がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチオキシルカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
Re2がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。また、Re2がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。R2がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。Re2がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。Re2が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Re2は、フェニル基、又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
Re2がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。Re2がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
Re2がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Re2がヘテロシクリル基である場合と同様である。
Re2が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜21の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Re2と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
Re2に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Re2に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Re2に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
また、Re2としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Re2に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
有機基の中でも、Re2としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2−メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2−(4−クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
以上、R
e2について説明したが、R
e2としては、下記式(R2−1)又は(R2−2)で表される基が好ましい。
(式(R2−1)及び(R2−2)中、R
e10及びR
e11はそれぞれ有機基であり、tは0〜4の整数であり、R
e10及びR
e11がベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、R
e10とR
e11とが互いに結合して環を形成してもよく、qは1〜8の整数であり、rは1〜5の整数であり、sは0〜(r+3)の整数であり、R
e12はアルキル基である。)
式(R2−1)中のRe10及びRe11についての有機基の例は、Re2と同様である。Re10としては、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Re10がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。つまり、Re10はメチル基であるのが最も好ましい。Re10とRe11とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(R2−1)で表される基であって、Re10とRe11とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン−1−イル基や、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−5−イル基等が挙げられる。上記式(R2−1)中、tは0〜4の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
上記式(R2−2)中、Re12はアルキル基である。アルキル基の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。Re12としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
上記式(R2−2)中、rは1〜5の整数であり、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(R2−2)中、sは0〜(r+3)であり、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0が特に好ましい。上記式(R2−2)中、qは1〜8の整数であり、1〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
式(e−1)中、Re3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Re3がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Re3がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
式(e−1)中、Re3としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
式(e−2)中、Re4は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。Re4は、式(e−2)中のフルオレン環上で、式(e−1)中の−(CO)m1−で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。この条件を満たす限り、式(e−2)中、Re4のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。Re4のフルオレン環に対する結合位置は、Re1が式(e−2)で表される基である式(e−1)で表される化合物の合成が容易であること等から、フルオレン環中の2位であるのが好ましい。
Re4が有機基である場合、Re4は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Re4が有機基である場合の好適な例としては、Re2と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。これらの基の具体例は、Re2について説明したものと同様である。
以上説明した基の中でも、Re4としては、ニトロ基、又はRe13−CO−で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。Re13は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Re13として好適な基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Re13として、これらの基の中では、2−メチルフェニル基、チオフェン−2−イル基、及びα−ナフチル基が特に好ましい。
また、Re4が水素原子であると、透明性が良好となる傾向があり好ましい。なお、Re4が水素原子であり且つRe2が前述の(R2−2)であると透明性はより良好となる傾向がある。
式(e−1)中、Re5及びRe6は、それぞれ、鎖状アルキル基、環状炭化水素基、又はヘテロアリール基である。これらの基の中では、Re5及びRe6として、鎖状アルキル基が好ましい。
Re5及びRe6が鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。Re5及びRe6が鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。Re5及びRe6が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Re5及びRe6が鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有する鎖状アルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
Re5及びRe6が環状炭化水素基である場合、環状炭化水素基は、脂肪族環状炭化水素基であっても、芳香族環状炭化水素基であってもよい。
Re5及びRe6が芳香族環状炭化水素基である場合、芳香族環状炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素−炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族環状炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族環状炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族環状炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
Re5及びRe6が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
Re5及びRe6がヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロアリール基である。ヘテロアリール基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロアリール基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。
Re5とRe6とは相互に結合してスピロ環を形成してもよい。Re5とRe6とが形成するスピロ環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Re5とRe6とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成するスピロ環は、5員環〜6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
Re5とRe6とが結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
Re7が有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Re7が有機基である場合の好適な例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
Re7の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
また、n1は、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1であるのが特に好ましい。n1が1である場合、Re7の結合する位置は、Re7が結合するフェニル基が原子A1と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
AはSであることが好ましい。
Re8は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Re8の好適な例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
Re8の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
Re7又はRe8に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Re7又はRe8に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Re7又はRe8に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
Re9は、Re4と同様である。
式(e−1)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
(E)光重合開始剤の含有量は、ハードコート層(イ)に係る硬化性組成物の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜90質量部であり、より好ましくは1〜80質量部である。(E)光重合開始剤の含有量が上記範囲であると、上記硬化性組成物は、より感度に優れるものとなりやすい。
((F)多官能アクリレート化合物)
(F)多官能アクリレート化合物としては、シロキサン結合、芳香環、及び架橋飽和環からなる群より選択される少なくとも1種を含む限り、特に限定されない。(F)多官能アクリレート化合物は、上記硬化性組成物から得られるハードコート層(イ)の屈曲性、靱性、及び表面硬度の向上に寄与する。(F)多官能アクリレート化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(F)多官能アクリレート化合物は、低分子化合物でも、特定の繰り返し単位を有するオリゴマー及び/又はポリマーでも、これらの組み合わせでもよい。
(F)多官能アクリレート化合物としては、例えば、シロキサン結合含有多官能アクリレート化合物を含むもの;芳香環、及び架橋飽和環からなる群より選択される少なくとも1種を含む多官能アクリレート化合物を含むものが挙げられ、得られるハードコート層の特性が向上しやすいことから、シロキサン結合含有多官能アクリレート化合物と、芳香環、及び架橋飽和環からなる群より選択される少なくとも1種を含む多官能アクリレート化合物とを含むものが好ましい。
[シロキサン結合含有多官能アクリレート化合物]
シロキサン結合含有多官能アクリレート化合物は、得られるハードコート層(イ)の屈曲性向上や硬化収縮抑制(カール性低減)の効果に対する寄与は大きくないものの、当該ハードコート層の表面硬度上昇には大きく寄与する。シロキサン結合含有多官能アクリレート化合物としては、例えば、2個以上の(メタ)アクリロイル基を含むポリシルセスキオキサン化合物が挙げられる。特に、得られるハードコート層の表面硬度がより向上しやすいことから、上記ポリシルセスキオキサン化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を含むかご型のポリシルセスキオキサン化合物が好ましい。
上記ポリシルセスキオキサン化合物としては、例えば、下記式:
[RfSiO3/2]n2
(式中、Rfは独立に(メタ)アクリロイル基又はカルボキシル基含有基であり、n2は8、10、12、又は14であり、但し、2個以上のRfが(メタ)アクリロイル基である。)で表されるかご型ポリシルセスキオキサンが挙げられる。
上記カルボキシル基含有基としては、例えば、−X1−B1−Y1−COOHで表される1価基が挙げられる。
上記X1は、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、アリーレン基又は−Rx5−NH−Rx6−(式中、Rx5及びRx6は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。Rx5とRx6は同一でもよく、異なっていてもよい。)を表し、Y1は、芳香族環基又は脂環基から2個の環炭素原子のそれぞれ1個の水素原子を除去することにより生成する2価の基又は分岐鎖及び/若しくは二重結合を有していても良い炭素数1〜4の2価のアルキレン基を表し、B1は−NHCO−又は−CONH−を表す。ただし、X1及び/又はY1は、(メタ)アクリル基、ビニル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有していてもよい。
上記X1における炭素数1〜6のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を挙げることができる。上記X1におけるアリーレン基としては、炭素数6〜10のものが好ましい。このようなものとしては、例えば、フェニレン基(オルト、メタ又はパラ等)、ナフチレン基(1,4−、1,5−、2,6−等)等を挙げることができる。上記X1における−Rx5−NH−Rx6−としては、具体的には、例えば、−CH2−NH−CH2−、−(CH2)2−NH−(CH2)2−、−(CH2)3−NH−(CH2)3−、−CH2−NH−(CH2)2−、−(CH2)2−NH−CH2−、−(CH2)2−NH−(CH2)3−、−(CH2)3−NH−(CH2)2−、−CH2−NH−(CH2)3−、−(CH2)3−NH−CH2−等を挙げることができる。
上記Y1における芳香族環としては、炭素数1〜2の置換基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、トリル基、キシリル基等)を挙げることができる。上記Y1における脂環としては、炭素数5〜10の脂環(例えば、単環シクロアルキル基、単環シクロアルケニル基、2環式アルキル基、篭型アルキル基等が挙げられ、具体的には、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、ジシクロペンタジエン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、キュバン環、バスケタン環等)を挙げることができる。上記Y1における分岐鎖及び/若しくは二重結合を有していても良い炭素数1〜4のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ビニレン基、(2−オクテニル)エチレン基、(2,4,6−トリメチル−2−ノネニル)エチレン基等のアルキレン基、二重結合を有するアルキレン基又は炭素数1〜9の分岐鎖を有するアルキレン基を挙げることができる。
[芳香環、及び架橋飽和環からなる群より選択される少なくとも1種を含む多官能アクリレート化合物]
芳香環、及び架橋飽和環からなる群より選択される少なくとも1種を含む多官能アクリレート化合物は、得られるハードコート層の表面硬度上昇の効果に対する寄与は中程度であるものの、芳香環及び/又は架橋飽和環という剛直な部分骨格とアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基等)、エーテル結合、及び/又はウレタン結合等の柔軟な部分骨格との相乗的な作用により、当該ハードコート層の屈曲性向上や硬化収縮抑制(カール性低減)に大きく寄与する。
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、テトラジン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾホスホール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、イソシアヌレート環等が挙げられ、得られるハードコート層の屈曲性、耐カール性等の観点から、イソシアヌレート環、フルオレン環、及びトリアジン環が好ましい。
架橋飽和環としては、例えば、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環等が挙げられ、得られるハードコート層の屈曲性、耐カール性等の観点から、トリシクロデカン環が好ましい。
(F)多官能アクリレート化合物の含有量は、ハードコート層(イ)に係る硬化性組成物の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは10〜99.9質量部であり、より好ましくは20〜99質量部である。(F)多官能アクリレート化合物の含有量が上記範囲であると、上記硬化性組成物から得られるハードコート層(イ)は、更に優れた屈曲性、靱性、及び表面硬度を有するものとなりやすい。
(その他の成分)
ハードコート層(イ)に係る上記硬化性組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。具体的には、溶剤、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、光増感剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が例示される。
ハードコート層(イ)に係る上記硬化性組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記溶剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートは、上述の(E)成分及び(F)成分に対して優れた溶解性を示すため好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートを用いることが特に好ましい。溶剤の使用量は、硬化性組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、一例として、硬化性組成物の固形分の合計100質量部に対して、50〜900質量部程度が挙げられる。溶剤を使用すると、膜厚のコントロールが容易となる傾向がある。この傾向は、特に薄膜化が必要な場合に顕著である。また、(F)成分が室温において固体の場合には溶剤を用いることが好ましい。
ハードコート層(イ)に係る上記硬化性組成物に使用される熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等を挙げることができる。また、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系等の化合物を、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン等の化合物を、それぞれ例示できる。
((ハードコート層(イ)に係る硬化性組成物の調製方法))
ハードコート層(イ)に係る上記硬化性組成物は、例えば、上記の各成分を全て撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された硬化性組成物が充填剤等の不溶性の成分を含まない場合、硬化性組成物が均一なものとなるようフィルタを用いて濾過してもよい。
3.ハードコート層(ウ)
上記ハードコート層20の更にもう1つの好ましい実施形態であるハードコート層(ウ)は、(G)エポキシ化合物と、(H)酸発生剤とを含む硬化性組成物を硬化した層であり、上記(G)エポキシ化合物が、好ましくは、下記式(g1)で表される化合物である。
この場合、ハードコート層(ウ)は、透明性に優れ、反射率及び屈折率が低くなる。
(式(g1)中、X
2は単結合、−O−、−O−CO−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−CBr
2−、−C(CBr
3)
2−、−C(CF
3)
2−、及び−R
19g−O−CO−からなる群より選択される2価の基であり、R
19gは炭素数1〜8のアルキレン基であり、R
1g〜R
18gは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
ハードコート層(ウ)に係る上記硬化性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、(G)及び(H)の成分の他の成分を含んでいてもよく、後述する(J)シリカ又はシロキサン化合物を含むことが好ましい。
以下、ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物に含まれる成分について説明する。
((G)エポキシ化合物)
本実施形態における(G)エポキシ化合物は、典型的には上記式(g1)で示される化合物である。
上記式(g1)中、R1g〜R18gが有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
また、式(g1)中のR1g〜R18gとして、−R19g−O−CO−で示される2価の基が採用される場合、このR19gは、典型的には、炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロピルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロピルオキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロピルオキシ−n−プチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロピルオキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロピルオキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロピルオキシ基、3−エトキシ−n−プロピルオキシ基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピルオキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
R1g〜R18gは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、及び炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に硬化性組成物を用いて得られるハードコート層の硬度の観点からR1g〜R18gが全て水素原子であるのがより好ましい。
式(g1)で表されるエポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては以下の化合物G−1及びG−2が挙げられる。
ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物は、式(g1)で表されるエポキシ化合物とともに、あるいは、式(g1)で表されるエポキシ化合物に代えて、式(g1)で表されるエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含んでいてもよい。式(g1)で表されるエポキシ化合物ともに使用できるエポキシ化合物の例は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセニルカルボキシレート、リモネンジエポキシド、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセニルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス3−シクロヘキセニルメチルエステル、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス3−シクロヘキセニルメチルエステルのε−カプロラクトン付加物、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステル、及びエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステルのε−カプロラクトン付加物等の脂環式エポキシ樹脂である。
ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物が式(g1)で表されるエポキシ化合物とともに他のエポキシ化合物を含む場合、硬化性組成物中のエポキシ化合物中の総質量に対する式(g1)で表されるエポキシ化合物の量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
((H)酸発生剤)
酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤、又は加熱により酸を発生する熱酸発生剤が好適に使用される。
光酸発生剤としては、以下に説明する、第一〜第五の態様の酸発生剤が好ましい。以下、光酸発生剤のうち好適なものについて、第一〜第五の態様として説明する。
光酸発生剤における第一の態様としては、下記一般式(h1)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(h1)中、X1hは、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。fは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R1hは、X1hに結合している有機基であり、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、又は炭素数2〜30のアルキニル基を表し、R1hは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R1hの個数はg+f(g−1)+1であり、R1hはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR1hが互いに直接、又は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR2h−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、X1hを含む環構造を形成してもよい。R2hは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。
上記一般式(c2)中、X4hは炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又は炭素数8〜20の複素環化合物の2価の基を表し、X4hは炭素数1〜8のアルキル、炭素数1〜8のアルコキシ、炭素数6〜10のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X5hは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR2h−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。fは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。f+1個のX4h及びf個のX5hはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2hは前述の定義と同じである。
X3h−はオニウムの対イオンであり、下記式(h17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(h18)で表されるボレートアニオンが挙げられる。
上記式(h17)中、R3hは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。jはその個数を示し、1〜5の整数である。j個のR3hはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(h18)中、R4h〜R7hは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
上記一般式(h1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]4−ビフェニルルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]3−ビフェニルスルホニウム、[4−(4−アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、又は4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
上記一般式(h1)で表される化合物中のオニウムイオンのうち、好ましいオニウムイオンとしては下記一般式(h19)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
上記式(h19)中、R8hはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール、アリールカルボニル、からなる群より選ばれる基を表す。X2hは、上記一般式(h1)中のX2hと同じ意味を表す。
上記式(h19)で表されるスルホニウムイオンの具体例としては、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]4−ビフェニルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]3−ビフェニルスルホニウム、[4−(4−アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ジフェニル[4−(p−ターフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムが挙げられる。
上記一般式(h17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R3hはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜8、さらに好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記一般式(h1)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
特に好ましいR3hは、炭素数が1〜4、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF3、CF3CF2、(CF3)2CF、CF3CF2CF2、CF3CF2CF2CF2、(CF3)2CFCF2、CF3CF2(CF3)CF、(CF3)3Cが挙げられる。R3hの個数jは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4、特に好ましくは2又は3である。
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CF3CF2)2PF4]−、[(CF3CF2)3PF3]−、[((CF3)2CF)2PF4]−、[((CF3)2CF)3PF3]−、[(CF3CF2CF2)2PF4]−、[(CF3CF2CF2)3PF3]−、[((CF3)2CFCF2)2PF4]−、[((CF3)2CFCF2)3PF3]−、[(CF3CF2CF2CF2)2PF4]−、又は[(CF3CF2CF2)3PF3]−が挙げられ、これらのうち、[(CF3CF2)3PF3]−、[(CF3CF2CF2)3PF3]−、[((CF3)2CF)3PF3]−、[((CF3)2CF)2PF4]−、[((CF3)2CFCF2)3PF3]−、又は[((CF3)2CFCF2)2PF4]−が特に好ましい。
上記一般式(c18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]−)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(C6H4CF3)4]−)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)2BF2]−)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)BF3]−)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C6H3F2)4]−)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]−)が特に好ましい。
光酸発生剤における第二の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記一般式(h3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
上記一般式(h3)中、R9h、R10h、R11hは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
また、光酸発生剤における第三の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記一般式(c4)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(h4)中、R12hは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13hは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、n4は括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
上記一般式(h4)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13hは、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12hが芳香族性化合物基であり、R13hが炭素数1〜4のアルキル基である化合物が好ましい。
上記一般式(h4)で表される酸発生剤としては、n4=1のとき、R12hがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13hがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n4=2のとき、上記一般式(h4)で表される光酸発生剤としては、具体的には下記式で表される光酸発生剤が挙げられる。
また、光酸発生剤における第四の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1〜3が好ましい。
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記一般式(h5)で表される構造が好ましい。
上記一般式(h5)中、R14h、R15h、R16hのうち少なくとも1つは下記一般式(h6)で表される基を表し、残りは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R14h、R15h、R16hのうちの1つが下記一般式(h6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
上記一般式(h6)中、R17h、R18hは、それぞれ独立に水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R19hは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。l6及びm6は、それぞれ独立に0〜2の整数を表し、l6+m6は3以下である。ただし、R17hが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R18hが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
上記R14h、R15h、R16hのうち上記式(h6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3〜9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5〜6である。
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記式(h7)、(h8)で表されるもの等を挙げることができ、特に下記式(h8)で表される構造が好ましい。
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
従って、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記一般式(h9)で表されるものが挙げられる。
上記式(h9)において、R
20hは、下記式(h10)、(h11)で表される基や、下記式(h12)で表される基である。
上記式(h10)中、xは1〜4の整数を表す。また、上記式(h11)中、R21hは、水素原子、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1〜3の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
また、アニオン部としては、下記式(h13)、(h14)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
上記式(h13)、(h14)中、Xhは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Yh、Zhは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
Xhのアルキレン基の炭素数、又はYh、Zhのアルキル基の炭素数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
また、Xhのアルキレン基又はYh、Zhのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記式(h15)、(h16)で表される化合物が挙げられる。
また、光酸発生剤における第五の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸−2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸−2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
熱酸発生剤の好適な例としては、有機スルホン酸のオキシムエステル化合物、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、その他の有機スルホン酸のアルキルエステル等が挙げられる。また、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩等も熱酸発生剤として適宜使用することが可能である。これらの中では、加熱されない状態での安定性に優れることから、有機スルホン酸のオキシムエステル化合物が好ましい。
ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物中の酸発生剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物中の酸発生剤の含有量は、硬化性組成物中のエポキシ化合物の総量100質量に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
((J)シリカ又はシロキサン化合物)
シリカ又はシロキサン化合物は、特に限定されず種々使用することができる。本出願の明細書及び特許請求の範囲では、Si−O−Si結合を有するシロキサン化合物であってシリカ(二酸化ケイ素)以外の化合物を「シロキサン化合物」と称する。
シリカ又はシロキサン化合物の中では、内部に空間を有するものが好ましい。内部に空間を有するシリカ又はシロキサン化合物を用いることで、透過率に優れ、反射率が低く、硬度の高い硬化物を与える硬化性組成物を得やすい。内部に空間を有するシリカ又はシロキサン化合物の好適な例としては、中空シリカ、多孔質シリカ、及びかご型シルセスキオキサン等が挙げられる。
中空シリカは、市販されているものを用いても、合成したものを用いてもよい。中空シリカは、例えば以下に説明するような方法で合成することができる。
まず、無機酸化物の存在下に、ケイ酸塩水溶液中のケイ酸ナトリウムのようなケイ酸塩を反応させて無機酸化物とシリカとからなる核粒子を調製する。無機酸化物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、Ce2O3、P2O5、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。核粒子の分散液中で、水ガラスのようなケイ酸塩水溶液や、メチルシリケートやエチルシリケートのような加水分解性基を有するケイ素化合物を縮合させて、シリカ被覆層により被覆された核粒子を調製する。シリカ被覆層により被覆された核粒子を酸により処理し、核粒子中の無機酸化物成分を除去することにより、1又は複数の空洞を内部に有する中空シリカ粒子が得られる。表面にシリカ被覆層を備える中空のシリカ粒子を、さらにケイ酸塩水溶液や加水分解性基を有するケイ素化合物で、所望する回数処理することで、多層構造のシリカ被覆層を表面に備える中空シリカ粒子を調製することもできる。
多孔質シリカは、市販されているものを用いても、合成したものを用いてもよい。多孔質シリカは、例えば、メチルシリケートやエチルシリケートのような加水分解性基を有するケイ素化合物を、アンモニアのような塩基の存在下に加水分解重縮合させる方法や、ポリビニルアルコールやセルロースのような高分子の存在下に加水分解重縮合させる方法により合成することができる。
かご型シルセスキオキサンは、下記式(j1)で表される化合物であって、中空構造のかご型の分子構造を有する。例えば、オクタヘドラル構造を有するかご型シルセスキオキサンは下記式(j2)で表される。
(RjSiO3/2)p1・・・(j1)
(式(j1)中、Rjは、水酸基、水素原子、及び有機基からなる群より選択される基であり、p1は6以上の偶数である。)
かご型シルセスキオキサンがRjとして水酸基(シラノール基)を有する場合、かご型シルセスキオキサンは、その一部又は全部が、シラノール基の脱水縮合により生成する、例えば2〜5量体、好ましくは2〜3量体であるオリゴマーであってもよい。
(式(j2)中、R
19j〜R
26jはそれぞれ独立に、水酸基、水素原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
かご型シルセスキオキサンに含まれるケイ素原子数は、6、8、10、又は12が好ましい。ケイ素原子数が12より多いかご型シルセスキオキサンは、合成が困難であり入手が容易でない。ケイ素原子数が8であるかご型シルセスキオキサンについて、様々な置換基を有するものが合成されており、その合成方法は、Chem.Rev.,Vol.96,2205−2236(1996)に開示されており、工業的に入手することも可能である。
かご型シルセスキオキサンが有機基を有する場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。有機基としては炭化水素基が好ましく、フェニル基、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましい。
以上説明したかご型シルセスキオキサンの中では、透過率、屈折率、及び硬度等に優れる硬化物を与える硬化性組成物を得やすいことから、R19j〜R26jが全て水酸基である式(j2)で表されるかご型シルセスキオキサンが好ましい。また、R19j〜R26jが全て水酸基である式(j2)で表されるかご型シルセスキオキサンは、その一部又は全部が、シラノール基の脱水縮合により生成する、例えば2〜5量体、好ましくは2〜3量体であるオリゴマーであってもよい。
ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物中のシリカ又はシロキサン化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、硬化性組成物中のシリカ又はシロキサン化合物の含有量は、式(g1)で表されるエポキシ化合物100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましく、20〜50質量部が特に好ましい。
(その他の成分)
ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物には、必要に応じて各種の添加剤を加えてもよい。具体的には、溶剤、増感剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、密着増強剤、及び界面活性剤等が例示される。これらの添加剤の使用量は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、添加剤の種類に応じて適宜決定される。
(ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物の調製方法)
ハードコート層(ウ)に係る硬化性組成物の調製方法は特に限定されない。かかる硬化性組成物は、以上説明した、(G)エポキシ化合物、及び(H)酸発生剤と、必要に応じて(J)シリカ又はシロキサン化合物等のその他の成分とを、公知の混合装置により均一に混合することにより製造できる。
(中間層)
また、図1には、ポリイミド層10とハードコート層20とが互いに接するように積層された2層で構成される積層体が示されているが、本発明の目的を損なわない範囲において、積層体100は、上述のポリイミド層10、ハードコート層20以外の層を備えることもできる。
例えば、ポリイミド層10とハードコート層20との間に中間層(図示せず)等を設けることができ、この中間層を適切に選択することにより、耐衝撃性のさらなる向上、ポリイミド層10とハードコート層20との接着性の向上等に寄与し得る。
ポリイミド層10とハードコート層20との間に設けられる上記中間層としては、ポリイミド層10及びハードコート層20を構成する材料とは異なる材料により構成される中間層(例えば、接着層、プライマー層等)が挙げられる。
接着層、プライマー層等の中間層としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂を含有する層が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して1つの中間層に使用しても良い。
上記中間層としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む樹脂を含む中間層が好ましく挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル部分としては炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜3)の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。
上記樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を1種又は2種以上含んでいてもよい。
上記樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位以外の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸を含んでいてもよい。
上記樹脂としてはポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることが好ましい。
上記プライマー層としては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを50〜100質量%(固形分量)含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく挙げられる。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電子線硬化性樹脂組成物及び/又は紫外線硬化性樹脂組成物を示す。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物は、さらにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート以外の光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマー等を含有していてもよく、紫外線硬化性樹脂組成物である場合には開始剤を含有することが好ましい。
上記中間層の膜厚としては本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、例えば、0.5〜100μmが挙げられ、0.8〜20μmであることが好ましい。
(補強層)
積層体100において、ハードコート層20が設けられた側とは反対側のポリイミド層10の面や、ポリイミド層10が設けられた側とは反対側のハードコート層20の面に、各種機能性を持たせるための層を備えていてもよい。例えば、耐衝撃性、折り曲げ耐性を補強する観点から、ハードコート層20が設けられた側とは反対側のポリイミド層10の面に補強層を備えていることが挙げられる。
上記補強層としては、透明な樹脂、例えば、ポリカーボネート系樹脂、或いは、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のアクリル系樹脂を含む補強層等が挙げられる。
上記補強層としては、アクリル当量が100以上である樹脂を含有する下記樹脂組成物(II)の硬化物である補強層が好ましく挙げられる。
(樹脂組成物(II))
樹脂組成物(II)は、アクリル当量が100以上である樹脂を含有する樹脂組成物であり、塗膜の作製において、塗工方法、溶剤乾燥の有無、硬化工程の有無、硬化方法については特に限定されない。
本明細書において、アクリル当量とは、樹脂組成物(II)を構成する成分の分子量(g/mol)をその成分1分子内に存在するアクリロイル基の数で除した値である。尚、アクリル当量の上限値は用途に応じて適宜設定できるが、例えば5000以下である。混合物の場合は、各構成成分のアクリル当量に質量比を乗じた値の和とする。アクリル当量が大きいほど得られる塗膜の硬度は低くなる傾向にある。また、アクリル当量は110以上であることが好ましい。
樹脂組成物(II)の構成成分としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシレート、ポリシロキサン、パーフルオロポリエーテルなどのアクリル当量が100以上である樹脂が挙げられ、これら1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、これらの化合物にアクリロイル基を導入した化合物を用いてもよい。
これらの中でも、扱い易さの点から、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレートが好ましく、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の官能基数は、通常1個以上であるが、2個以上が好ましく、さらには3個以上が好ましく、4個以上が特に好ましい。また、これらは一種でも二種以上でもよい。
また、本発明の効果を奏するのであれば、かかる1分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては前述の化合物に特に限定されないが、中でも、粘度と硬化性、得られる硬化膜表面の硬度などから、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリス
リトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが好ましく、さらにはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
樹脂組成物(II)は、硬度や耐擦傷性の観点から、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシレート等の化合物にアクリロイル基を導入した化合物を含有することが好ましい。すなわち、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを含有することが好ましい。
さらには、樹脂組成物(II)として、入手や分子設計、合成のしやすさからポリウレタン、ウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、また、硬度や耐擦傷性の観点からウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
ポリウレタンとしては、イソホロンジイソシアネートや水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環骨格イソシアネート化合物、またはヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物やトリレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物と、それら化合物に、(ポリ)ブタジエンジオール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、1,4−(ポリ)ブタンジオール、1,6−(ポリ)ヘキサンジオール、(ポリ)エステルジオール、(ポリ)カプロラクトン変性ジオール、(ポリ)カーボネートジオール、(ポリ)スピログリコール等の一種又は二種以上の化合物を反応させ、その反応比率により水酸基あるいはイソシアネート基のどちらかを分子中に残すように合成された化合物、あるいは前述のポリウレタンのうち、水酸基を残したポリウレタンを主剤とし、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを硬化剤として別途配合した樹脂組成物の硬化物が挙げられる。加えて、同様にイソシアネート基にアミノ基を反応させて得られるウレア結合を含有する化合物、ウレタン結合にイソシアネート基が反応して生起するアロファネート結合を含有する化合物、ウレア結合にイソシアネート基が反応して生起するビュレット結合を含有する化合物、イソシアネート基が3量化したイソシアヌレート構造を含有する化合物も本発明ではポリウレタンとして使用できる。
前述のポリウレタンおよびウレタン(メタ)アクリレートのうち、特に単独膜あるいは単独硬化膜における破断伸びが高いものが、本発明の積層体における耐衝撃性を向上させるために好ましい。上記破断伸び率は10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、40%以上が最も好ましい。また、塗膜の硬度の低下を抑制できることから、300%以下が好ましく、200%以下がより好ましく、150%以下が更に好ましく、100%以下が最も好ましい。
また、かかるウレタン(メタ)アクリレートは市販品を用いてもよく、例えばU−108A、U−200AX、UA−511、U−412A、UA−4200、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−6100、U−108、UA−4000、UA−122P、UA−5201、UA−512、UA−W2A、UA−W2、UA−7000、UA−7100(新中村化学社製)などが例として挙げられる。
樹脂組成物(II)は、硬度や耐擦傷性と耐衝撃性の観点から分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの混合物が好ましく、それぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの合計(質量)を100質量部としたとき、ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は通常0.1質量部以上であるが、耐落球衝撃性が良好となることから、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましく、40質量部以上が最も好ましい。また、通常99.9質量部以下であるが、硬度と耐擦傷性が良好となることから、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下が更に好ましく、60質量部以下が最も好ましい。
((光重合開始剤))
樹脂組成物(II)に含まれる光重合開始剤としては、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、α−ヒドロキシアセトフェノン(α−ヒドロキシフェニルケトン)系、α−アミノアセトフェノン系、ベンジルケタール系などのアルキルフェノン型化合物;アシルホスフィンオキシド型化合物;オキシムエステル化合物;オキシフェニル酢酸エステル類;ベンゾインエ−テル類;芳香族ケトン類(ベンゾフェノン類);ケトン/アミン化合物;ベンゾイルギ酸およびそのエステル誘導体等である。
中でも、硬化性の低下を最小限に抑えることが可能であり、入手が容易であって、着色等を起こしにくいことから、光重合開始剤の少なくとも一部として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシフェニルケトン類を用いることが好ましい。
また、特に硬化性が良好な樹脂組成物(II)を得るためには、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、などのα−アミノフェニルケトン類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、などのベンゾフェノン類;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸エチル、などのベンゾイルギ酸(エステル)類;CGI242(チバ製)、OXE01(チバ製)、などのオキシムエステル類が好ましい。更に、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いることがより好ましく、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾイルギ酸メチルが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体と反応する光硬化性化合物の成分の合計量(総質量)を100質量部としたとき、光重合開始剤は0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5質量部以上、7質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以上、6質量部以下である。0.1質量部未満では得られる樹脂組成物(II)の硬化性に劣り、10質量部以上では硬化膜の物性が低下したりする可能性がある。
なお、樹脂組成物(II)に活性エネルギー線を照射して硬化膜を得る際、活性エネルギー線として紫外線や軟エックス線などを用いる場合には、組成物中に上記のような光重合開始剤を含むことが好ましいが、比較的エネルギーが高い電子線や硬エックス線などを用いる場合には光重合開始剤を含んでいなくてもよい。
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、前述した成分以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えばコロイド状シリカ、滑り剤又はレベリング剤、及び溶剤が挙げられる。
上記活性エネルギー線硬化性組成物における上記溶剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の取り扱い上の観点から適宜に決めることができる。溶剤は一種でも二種以上でもよい。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシプロピルアセタート等のエーテルエステル類;トルエン、キシレン
等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;が挙げられる。
樹脂組成物(II)の塗布方法としては、特に限定されないが、スピンコート、デイップコート、フローコート、スプレーコート、バーコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート、エアナイフコート等を好ましく挙げることができる。
硬化膜を得る際に活性エネルギー線を用いる場合、その照射法としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、または通常20〜2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線(エレクトロンビーム、EB)が挙げられる。
上記補強層の厚さとしては本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、耐衝撃性の観点から、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが最も好ましい。また、100μm以下であることが、透明性を重視するという点から好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。
≪積層体及びフレキシブルデバイスの製造方法≫
続いて、本実施形態にかかる積層体及びフレキシブルデバイスの製造方法について説明する。
本実施形態の積層体の製造方法は、上記要件(1)〜(3)を満たすポリイミドを用いて上記ポリイミド層を形成する工程を含み、フレキシブルデバイスの製造方法はこの積層体の製造方法を工程中に含むものである。
本実施形態の積層体の製造方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
(工程1):支持体に対し、ポリイミド前駆体と有機溶剤とを含む樹脂組成物(I)を適用する適用工程
(工程2):適用された上記樹脂組成物(I)を加熱硬化し、上記支持体の面上にポリイミドを含むポリイミド層を形成する工程
(工程3):上記ポリイミド層の前記支持体とは反対側の面側にハードコート層を形成し、上記ポリイミド層と、前記ハードコート層とが積層されてなる上記積層体を得る工程
(工程4):上記積層体を上記支持体から剥離する工程
以下、各工程について図2を参照しながら説明する。
図2は本実施形態にかかる積層体の製造方法の例を示す工程断面図である。
図2(a)に示したように、前工程として支持体30を準備することが好ましい。本実施形態においては、図2(b)に示したように、支持体30上にポリイミド層10が形成されるが、ポリイミド10を後に剥離しやすくし、また、プロセス中の視認性を高める観点から、この支持体30としてはガラスを用いることが好ましい。
<工程1>
適用工程である工程1では、支持体30の表面に対し、上記樹脂組成物(I)を適用(例えば、塗布)して、ポリイミド前駆体組成物により構成される塗膜を形成する。適用方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、ダイコート等の塗布方法が挙げられる。塗膜の厚さは、特に限定されない。塗膜の厚さは、例えば、0.1〜1000μmであり、2〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。塗膜の厚さは、塗布方法や樹脂組成物(I)の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
塗膜の形成後、続く工程2に移行する前に、塗膜中の有機溶剤を除去する目的で、塗膜を加熱してもよい。加熱温度や加熱時間は、樹脂組成物に含まれる成分に熱劣化や熱分解が生じない限り特に限定されない。塗膜中の有機溶剤の沸点が高い場合、減圧下に塗膜を加熱してもよい。
<工程2>
本工程では、工程2で形成された塗膜を加熱することにより、塗膜中のポリイミド前駆体成分に由来するポリアミド酸を閉環させる。具体的には、ポリイミド前駆体成分としてモノマー成分を配合する場合、加熱により、下記式(b2)で表される繰り返し単位を主成分とするポリアミド酸が形成され、高分子量化が進行する。
(式(b2)中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、R
b10は2価の基を示し、mは0〜12の整数を示す。)
かかるモノマー成分から形成されるポリアミド酸は、引き続き閉環してポリイミド樹脂に変化する。ポリイミド前駆体成分としてポリアミド酸を配合した場合、同様に閉環してポリイミド樹脂に変化する。
図2(b)に示したように、本工程において、ポリイミド前駆体成分に由来するポリアミド酸がポリイミド樹脂に変化する。その結果、ポリイミド樹脂を含む膜が形成される。
上記塗膜を加熱する際、加熱温度は、例えば、100〜500℃、好ましくは120〜380℃、より好ましくは150〜380℃に設定される。このような範囲の温度でポリイミド前駆体成分を加熱することにより、ポリイミド前駆体成分や生成するポリイミド樹脂の熱劣化や熱分解を抑制しつつ、ポリイミド膜を生成させることができる。
また、ポリイミド前駆体成分の加熱を高温で行う場合、多量のエネルギーの消費や、高温での処理設備の経時劣化が促進される場合があるため、適宜ポリイミド前駆体成分の加熱を低めの温度(「低温ベーク」ということがある。)で行うこともできる。
具体的には、ポリイミド前駆体成分を加熱する温度の上限を、例えば220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下、さらにより好ましくは150℃以下にすることができる。このような比較的低温で加熱する場合であっても、本実施形態の樹脂組成物においては、比較的短時間の加熱で十分にポリイミド樹脂を生成させることができる。
加熱時間は、塗膜の組成、厚さ等にもよるが、下限値として、例えば0.5時間、好ましくは1時間、より好ましくは1.5時間、上限値として、例えば4時間、好ましくは3時間、より好ましくは2.5時間とすることができ、かかる加熱時間は、例えば130〜150℃、代表的には140℃で加熱する場合にも適用することができる。
低温ベークにより、ポリアミド酸の高分子量化を進めることができ、好ましくは分子量分布をあまり広げることなく高分子量化を進めることができる。低温ベークによるポリアミド酸の高分子量化は、特に、ポリイミド前駆体成分としてモノマー成分を配合する場合に、形成されるポリアミド酸の高分子量化を進める点で、好適である。低温ベークを行う際、イミダゾール化合物が通常残存しており、ポリアミド酸は、イミダゾール化合物の作用により反応速度を制御し、得られるポリイミド膜の引張強度、及び破断伸びを向上させることができると考えられる。
塗膜の加熱としては、また、低温ベークを行った後に、低温ベークにおける加熱温度よりも高温による加熱(「高温ベーク」ということがある。)を行う段階的加熱(「ステップベーク」ともいう。)を行ってもよい。
高温ベークは、加熱温度の上限として、例えば500℃以下、好ましくは450℃以下、より好ましくは420℃以下、さらに好ましくは400℃以下にすることができ、加熱温度の下限として、例えば220℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上、さらにより好ましくは380℃以上にすることができる。
高温ベークにおける加熱時間は、塗膜の組成、厚さ等にもよるが、下限値として、例えば10分以上、好ましくは20分程度以上、必要に応じて1時間以上としてもよく、上限値として、例えば4時間、好ましくは3時間、より好ましくは2.5時間とすることができ、かかる加熱時間は、例えば390〜410℃、代表的には400℃で加熱する場合にも適用することができる。
また、段階的に加熱温度を上昇させることもできる。この場合、低温ベークは省略してもよい。特に、ポリイミド前駆体成分としてモノマー成分を配合する場合、イミダゾール化合物の存在下に予めポリアミド酸の高分子量化を進めることができるので、低温ベークを行わなくても十分に高分子量のポリイミド樹脂を得ることができる。
ポリイミド樹脂への変換は、例えば、未閉環構造を実質的になくして閉環反応を実質的に完結することもできるが、低温ベーク後に未閉環構造が一部残存してもよい。高温ベークを長時間行うことにより、閉環反応を実質的に完結することができる。
(中間層形成工程)
また、図2(f)に示したように、本実施形態に係る製造方法は、上記工程2の後であって、下記工程3の前に、ポリイミド層10の支持体30とは反対側の面上に中間層40を形成する工程を含んでいてもよい。この中間層40の形成は、公知の手法のなかから適切なものを選択して行うことができる。
<工程3>
前述の工程2により、支持体30上にポリイミド層10が形成されるが(図2(b))、続く工程3においては、図2(c)に示したように、このポリイミド層10の面上にハードコート層20を形成する。
また、上述のように、本工程3の前に、ポリイミド層10の支持体30とは反対側の面上に中間層40を形成した場合には、図2(g)に示したように、この中間層40の面上にハードコート層20を形成する。
このハードコート層20の形成は、公知の手法のなかから適切なものを選択して行うことができる。例えば、ロールコータ、リバースコータ、バーコーター、アプリケーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて、ポリイミド層10又は中間層40の面上に組成物を塗布する方法が挙げられる。更に必要に応じて、形成された上記硬化性組成物膜を乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されず、例えば、ホットプレートにて、例えば、80〜120℃の温度にて60〜120秒間乾燥させる方法等が挙げられる。
次いで、形成された組成物膜に、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して露光してもよい。露光は、例えば、マスクを介して露光を行う方法等により、位置選択的に行ってもよいし、全面露光によって行ってもよい。光源は特に限定されず、例えば、高圧水銀灯、LED等が挙げられる。
<工程4>
図2(d)、(h)に示したように、積層体、あるいは作製されたフレキシブルデバイスを、支持体から剥離する。
支持体30としてガラス基板を使用した場合、UVレーザー等を用いて、又は加熱することで、積層体100を支持体30から剥離することができる。
なお、前述したように、樹脂組成物(I)に特定のケイ素化合物を含ませた場合は、この剥離工程をより円滑に進めることができる。
加熱する際の温度条件は、ポリイミド層10の特性に応じて適宜設定できるが、例えば80℃以上であり、好ましくは120℃以上である。また、加熱する際の温度条件は例えば、300℃以下である。なお、このとき、剥離工程を円滑化するために、たとえば積層体等を水蒸気雰囲気下等に曝すこともできる。
(補強層形成工程)
また、図2(e)及び(i)に示したように、本実施形態に係る製造方法は、上記剥離工程4の後、ポリイミド層10のハードコート層20又は中間層40が設けられた側とは反対側に補強層50を設け、補強層50を含む積層体を得る工程を含んでいてもよい。
上記補強層としては、上述した、アクリル当量が100以上である樹脂を含有する樹脂組成物(II)を適用(例えば、塗布)し、樹脂組成物(II)を硬化させた層であることが好ましい。
この補強層の形成は、公知の手法のなかから適切なものを選択して行うことができる。
なお、上記実施形態は、積層体100及びフレキシブルデバイスの製造方法の一例に過ぎず、フレキシブルデバイスの構造等に応じ、ここで示した以外の工程を含ませてもよい。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
〔合成例A〕
<イミダゾール化合物の合成>
本合成例Aにおいて、下記構造のイミダゾール化合物(A1)を合成した。
まず、下記式の構造の桂皮酸誘導体30gをメタノール200gに溶解させた後、メタノール中に水酸化カリウム7gを添加した。次いで、メタノール溶液を40℃で撹拌した。メタノールを留去し、残渣を水200gに懸濁させた。得られた懸濁液にテトラヒドロフラン200gを混合、撹拌し、水相を分液した。氷冷下、塩酸4gを添加、撹拌した後に酢酸エチル100gを混合、撹拌した。混合液を静置した後、油相を分取した。油相から目的物を晶析させ、析出物を回収して、上記構造のイミダゾール化合物(A1)を得た。
上記構造のイミダゾール化合物(A1)の1H−NMRの測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(DMSO):11.724(s,1H),7.838(s,1H),7.340(d,2H,J=4.3Hz),7.321(d,1H,J=7.2Hz),6.893(d,2H,J=4.3Hz),6.876(d,1H,J=6.1Hz),5.695(dd,1H,J=4.3Hz,3.2Hz),3.720(s,3H),3.250(m,2H)
〔調製例1〕
<テトラカルボン酸二無水物の調製>
国際公開第2011/099518号パンフレットの合成例1、実施例1及び実施例2に記載された方法に従って、下記式で表されるテトラカルボン酸二無水物(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物)を調製した。
<ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の調製>
先ず、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱して十分に乾燥させた。次に、三口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換し、三口フラスコ内を窒素雰囲気とした。三口フラスコ内に、4,4’−ジアミノベンズアニリド0.2045g(0.90mmol:日本純良薬品株式会社製:DABAN)を添加した後、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)を3.12g添加した。三口フラスコの内容物を撹拌して、TMU中に芳香族ジアミン(DABAN)が分散したスラリー液を得た。
次に、三口フラスコ内に上記式のテトラカルボン酸二無水物0.3459g(0.90mmol)添加した後、窒素雰囲気下に、室温(25℃)で12時間フラスコの内容物を撹拌して反応液を得た。このようにして反応液中にポリアミド酸が15質量%(TMU溶剤:85質量部)となる反応液を形成した。
<イミダゾール化合物(A1)の添加工程>
上述のようにして得られた反応液に、合成例Aで得たイミダゾール化合物(A1)(0.206g、反応液を100質量部とした場合に対して5.6質量部)を窒素雰囲気下にて加えた。次いで、反応液を、25℃で12時間撹拌して、イミダゾール化合物(A1)と上記で得たポリアミド酸とを含む液状のポリイミド前駆体組成物を得た。
<ポリイミドフィルムの調製>
ガラス基板(大型スライドグラス、松浪硝子工業株式会社製の商品名「S9213」、縦:76mm、横52mm、厚み1.3mm)上に、上述のようにして得られたポリイミド前駆体組成物を、加熱硬化後の塗膜の厚みが13μmとなるようにスピンコートして、塗膜を形成した。次いで、塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置して、上記塗膜から溶媒を蒸発させて除去した。
溶媒の除去後、塗膜の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入した。イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、さらに300℃の温度条件(最終加熱温度)で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、上記ガラス基板上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたポリイミドコートガラスを得た。
得られたポリイミドコートガラスを、90℃の湯の中に浸漬して、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離させて、ポリイミドフィルム(縦76mm、横52mm、厚み13μmの大きさのフィルム)を得た。
得られたポリイミドフィルムの材質である樹脂の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、ポリイミドフィルムの試料のIRスペクトルを測定した。
測定の結果、ポリイミドフィルムの材質である樹脂のIRスペクトルでは、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1696.2cm−1に観察されることが分かった。このような結果等に基づいて同定された分子構造から、得られたポリイミドフィルムは、確かにポリイミド樹脂からなるものであることが確認された。
得られたポリイミドフィルムについて、以下の方法に従って、熱膨張係数(CTE)の測定と、引張強度及び破断伸びの測定と、ポリイミド樹脂のガラス転移温度と、全光線透過率と、ヘイズ値(濁度)と、黄色度(YI)を測定した。これらの評価結果を表1に記す。
<熱膨張係数の測定>
すなわち、先ず、測定対象としてのポリイミドフィルムに関して、そのポリイミドフィルムを形成する材料(ポリイミド)と同様の材料からなる、縦:76mm、横:52mm、厚み:13μmの大きさのフィルムを形成する。その後、該フィルムを真空乾燥(120℃で1時間)し、窒素雰囲気下200℃で1時間熱処理し、乾燥フィルムを得た。そして、このようにして得られた乾燥フィルムを試料として用い、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における上記試料の縦方向の長さの変化を測定して、50℃〜200℃の温度範囲における1℃(1K)あたりの長さの変化の平均値を求めた。そして、このようにして求められた上記平均値を、ポリイミドフィルムの熱膨張係数の値として採用した(厚みが13μmである場合のポリイミドフィルムの熱膨張係数の値を、ポリイミドフィルムの熱膨張係数の値として採用した。)。
<引張強度及び破断伸びの測定>
ポリイミドフィルム(厚み:13μm)の引張強度(単位:MPa)及び破断伸び(単位:%)を、以下の方法に従って測定した。
先ず、SD型レバー式試料裁断器(株式会社ダンベル製の裁断器(型式SDL−200))に、株式会社ダンベル製の商品名「スーパーダンベルカッター(型:SDMK−1000−D、JIS K7139(2009年発行)のA22規格に準拠)」を取り付けて、ポリイミドフィルムの大きさが、全長:75mm、タブ部間距離:57mm、平行部の長さ:30mm、肩部の半径:30mm、端部の幅:10mm、長さ方向の中央の平行部の幅:5mm、厚み:13μmとなるように裁断して、ダンベル形状の試験片(厚みを13μmにした以外はJIS K7139 タイプA22(縮尺試験片)の規格に沿った試験片)を、測定試料として調製した。
次いで、テンシロン型万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製の型番「UCT−10T」)を用いて、測定試料を掴み具間の幅が57mm、掴み部分の幅が10mm(端部の全幅)となるようにして配置した後、荷重フルスケール:0.05kN、試験速度:5mm/分の条件で測定試料を引っ張る引張試験を行って、引張強度及び破断伸びの値を求めた。
なお、上記の試験は、JIS K 7162(1994年発行)に準拠した試験である。
また、破断伸びの値(%)は、試験片の平行部の長さ(=平行部の長さ:30mm)をL0とし、破断するまでの試験片の平行部の長さ(破断した際の試験片の平行部の長さ:30mm+α)をLとして、下記式:
[破断伸び(%)]={(L−L0)/L0}×100
を計算して求めた。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ポリイミドフィルムの材質であるポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分、30℃〜550℃の温度範囲(走査温度)の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を500mN圧で針入れすることにより測定した(いわゆるペネトレーション(針入れ)法による測定)。
<全光線透過率、ヘイズ値(濁度)及び黄色度(YI)の測定>
上記ポリイミドフィルムについて、全光線透過率の値(単位:%)、ヘイズ値(濁度:HAZE)及び黄色度(YI)は、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて、JIS K 7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
〔調製例2〜10〕
イミダゾール化合物(A1)の量を表1に記載の量に変えること、有機溶剤として表1に記載の種類の溶剤を用いることの他は、調製例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を得た。すなわち、上記ポリアミド酸の調製により得られるポリアミド酸と表1に記載の有機溶剤による溶液の合計100質量部に対して、イミダゾール化合物(A1)を表1に記載の質量部、添加した。
なお、調製例7ではポリアミド酸の調製の途中で、反応液に対してイミダゾール化合物(A1)を添加した。すなわち、ポリアミック酸(分子量8000程度)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、及び表1に記載の溶剤という混合液100質量部に対し、イミダゾール化合物(A1)を4.5質量部添加した。
また、調製例8では、塗膜の硬化条件として80℃×30分、300℃×30分及び380℃×30分の順でおこなった。
各調製例2〜10のポリイミド前駆体組成物を用いて、調製例1と同様にしてポリイミドフィルムを形成した。得られたポリイミドフィルムについて、調製例1と同様に、熱膨張率、引張強度及び破断伸びの測定と、ポリイミド樹脂のガラス転移温度と、全光線透過率と、ヘイズ値(濁度)と、黄色度(YI)を測定した。これらの評価結果を表1に記す。
〔合成例1〕
<共重合体(F1)の合成>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、数平均分子量10,000の片末端メタクリロイル基置換ポリジメチルシロキサン(JNC社製「サイラプレーン(登録商標)FM−0725」)20質量部、グリシジルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルG」)30質量部、メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルM」)40質量部、ステアリルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルS」)10質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)150質量部を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)0.06質量部、1−ドデカンチオール(和光純薬社製)0.09質量部を添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間撹拌した後、さらにV−65を0.06質量部を添加して65℃で3時間撹拌した。系内を100℃まで昇温し、30分間撹拌した後、MIBK68.8質量部を加え、再度系内を100℃まで昇温する。p−メトキシフェノール(和光純薬工業社製)0.05質量部とトリフェニルホスフィン(和光純薬工業社製)2.3質量部を添加した後、アクリル酸(三菱化学社製)15.5質量部を加え、110℃まで昇温し6時間撹拌した。冷却後、MIBK253部を添加し、共重合体(F1)の溶液を得た。反応液の組成は(F1)/MIBK=20/80(質量比)であった。
〔配合例I〕
<ハードコート層形成用組成物(配合液I)の調製>
合成例1で得られた共重合体(F1)の溶液、及び硬化性モノマーDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;KAYARAD(登録商標) DPHA(日本化薬株式会社製))およびトリエトキシイソシアヌル酸トリアクリレート(アロニックスM313(東亞合成社製))を固形分比で2:86:12になるように配合し、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を4.0質量部、α−アミノフェニルケトン系光重合開始剤(BASF社製「Irgacure907」)を0.5質量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルイソブチルケトン=1/1(質量比)の溶液で固形分が40%になるように希釈し、配合液Iを得た。この液のアクリル当量は115g/molであった。
〔配合例II〕
<補強層形成用組成物(配合液II)の調製>
硬化性モノマーDPHAおよびウレタンアクリレートUA122P(新中村化学工業株式会社)を固形分比40:60になるように配合し、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を4.5質量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルイソブチルケトン=1/1(質量比)の溶液で固形分が40%になるように希釈し、配合液IIを得た。この液のアクリル当量は370g/molであった。
〔配合例III〕
<プライマー層形成用組成物の調製>
トリエチレングリコールジメタアクリレート(共栄社化学株式会社製、「ライトエステル3EG」、分子量:270)100質量部、及び開始剤(BASF社製、「Irg184」)4質量部を、メチルイソブチルケトン150質量部に溶解させ、プライマー層形成用組成物を調製した。
<積層体の作製>
〔実施例1〜8並びに比較例1及び2〕
以下、積層体の作製は、上記の調製例1〜10で得られたガラス基板からポリイミド層を剥離する前のポリイミドコートガラスを用いて作製した。
上記の調製例1〜10で得られたポリイミドコートガラスにおけるポリイミド層上に、配合液Iを乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm2、500mJ/cm2の紫外線を照射しハードコート層を形成した。
ハードコート形成後のガラス基板上の積層体を、90℃の湯の中に浸漬して、ガラス基板を剥離して、実施例1〜8、比較例1及び2の積層体を得た。
〔実施例9〕
実施例1の積層体の形成における配合液Iを塗布する前に、調製例1で得られたポリイミドフィルム上に、ダイコート法により上記プライマー層形成用組成物を塗工し、70℃にて1分間乾燥させて溶剤を蒸発させ、乾燥後の塗布量が4g/m2(乾燥膜厚3.5μm)となるようにプライマー層を形成し、得られた塗膜に、照射量70mJ/cm2で紫外線を照射して塗膜を半硬化(ハーフキュアー状態)した後のプライマー層上に配合液Iをバーコーターにて塗布する以外は実施例1と同様にして実施例9の積層体を得た。
〔実施例10〕
ガラス基板から剥離した後の実施例4の積層体について、ポリイミド層のハードコート層が設けられた側とは反対側の面上に、配合液IIを乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm2、500mJ/cm2の紫外線を照射し補強層を形成し実施例10の積層体を得た。
〔実施例11〕
ガラス基板から剥離した後の実施例9の積層体について、ポリイミド層のプライマー層が設けられた側とは反対側の面上に、配合液IIを乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm2、500mJ/cm2の紫外線を照射し補強層を形成し実施例10の積層体を得た。
〔実施例12〕
実施例1の積層体の形成における配合液Iの代わりに下記硬化性組成物(イ−1)を、調製例1で得られたポリイミドフィルム上に滴下し、アプリケーターで塗布し塗膜を得、高圧水銀灯露光機(ORC社)で露光を行い、厚み50μmの硬化膜(ハードコート層)を形成すること以外は実施例1と同様にして実施例12の積層体を得た。
硬化性組成物(イ−1):下記式で表される光重合開始剤2質量部、
下記式で表され、R
19j〜R
26jの全てがアクリロイルオキシ基であるシルセスキオキサン49質量部、及び
下記式で表されるイソシアヌル酸化合物49質量部を均一に混合した無溶剤系の硬化性組成物
(耐衝撃試験)
ハードコート層を表面に、ポリイミド層(実施例10、11については補強層)を裏面にした幅12.6cm、長さ22.4cm、厚さ0.85mmの試験片に、50gの鋼球を50cmの高さから表面中心部に向かって自然落下させる剛球落下試験により耐衝撃性を目視にて評価した。
なお、評価として◎は落球により傷が全く付かなかったことを示し、〇は落球による傷が軽微であったことを示し、×は落球により大きな傷が付いたことを示す。
(折り曲げ試験)
直径5mmを有する棒を、各実施例及び比較例の積層体のハードコート層の面を当ててハードコート層が内側になるようにセットした後、フィルムを半分に折り込んだり広げたりする動作を20万回繰り返し実施した。折り曲げ後のフィルムの折り込まれる部分のクラック発生の有無を目視確認した。
○:クラック発生無し。
×:クラック発生有り。
表2に示した結果から明らかなように、調製例9、10のポリイミドフィルムを用いた比較例1、2の積層体はいずれも、耐衝撃試験において落球により大きな傷が付き、折り曲げ試験においてクラックが発生した。
一方、調製例1〜8のポリイミドフィルムを用いた実施例1〜12の積層体はいずれも、耐衝撃試験において落球により大きな傷は発生せず、折り曲げ試験においてもクラックは発生しなかった。
また、実施例1〜8及び12の積層体は、中間層及び補強層よりなる群から選択されるすくなくともいずれかを設けた実施例9〜11の積層体と同様の耐衝撃試験及び折り曲げ試験の結果となった。
特に、破断伸びが5%以上である調製例1〜3、6〜8のポリイミドフィルムを用いた実施例1〜3、6〜12の積層体は耐衝撃試験において落球により全く傷が付かず耐衝撃性に優れていることが分かった。