JP7148489B2 - リチウムイオン電池用集電体、リチウムイオン電池用集電体の製造方法及びリチウムイオン電池用電極 - Google Patents
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Description
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、リチウムイオン電池内において一方の主面を電極活物質と接触させて使用するリチウムイオン電池用集電体であって、上記リチウムイオン電池用集電体は、上記電極活物質と接触する主面に表面層を有し、上記表面層が網状構造を有することを特徴とする。
リチウムイオン電池用集電体は表面層の他に集電体基板を備えていることが好ましく、集電体基板の上に表面層が設けられていることが好ましい。
とくに、集電体基板として樹脂集電体基板を使用することが好ましく、樹脂集電体基板が高分子材料(A3)と導電性フィラーを含む樹脂集電体基板であることが好ましい。
集電体基板及び表面層の詳細については以下に示す集電体の各実施形態の説明の中で述べる。
本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体は、樹脂集電体基板と、樹脂集電体基板上に設けられた表面層からなる。
図1に示すリチウムイオン電池用集電体1は、樹脂集電体基板10と、樹脂集電体基板10上に設けられた表面層20とを有する。
表面層20は網状構造を有する層であり、電極活物質と接触する主面となる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
本明細書における高分子材料のSP値は、溶解度パラメータ[単位は(cal/cm3)1/2である]であり、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,February,1974,Vol.14,No.2,Robert F. Fedors(147~154頁)」
軟化点が100~200℃の材料として好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンである。
これらの材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。
樹脂集電体基板の厚さが100μm以下、特に40~80μmであると、集電体としての厚さが薄く、薄膜化された集電体とすることができる。このような集電体は電池内における体積が小さいため、電池の電池容量を高くするために適している。
具体的には、金属メッシュ(SUSメッシュ、Cuメッシュ等)、樹脂メッシュ(ニトリルメッシュ等)等のメッシュ構造であることが好ましい。
網状構造として金属メッシュ又は樹脂メッシュを使用する場合、平織、綾織、畳織等の任意の形状を使用することができる。
表面粗さRaはJIS B 0601(2013)に準拠して測定することができる。
表面層の網状構造の部分の表面粗さRaが上記範囲であると、網状構造と電極活物質が接触する面積が充分に大きくなり、表面層と電極活物質との間の抵抗をより低下させることができる。
本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体は、集電体基板と、集電体基板上に設けられた表面層からなる。
表面層は2層からなり、表面層のうち第1層が高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなり、高分子材料(A2)は35℃以下のガラス転移温度を有し、第1層の上に積層された第2層が網状構造を有する。
図3に示すリチウムイオン電池用集電体2は、樹脂集電体基板10と、樹脂集電体基板10上に設けられた表面層30とを有する。
表面層30は、第1層31と第2層32からなる。
第1層31は高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる層である。
第2層32は網状構造を有する。
これらの材料のうち、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、正極集電体として用いる金属集電体基板はアルミニウムであることが好ましく、負極集電体として用いる金属集電体基板は銅であることが好ましい。
高分子材料(A2)は、そのガラス転移温度が35℃以下の材料である。
本明細書における高分子材料のガラス転移温度は、JIS K 6240:2011 原料ゴム-示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度の求め方に準拠して測定される。
高分子材料(A2)がそのガラス転移温度が35℃以下の材料であると、高分子材料(A2)が常温で変形しやすく、高分子材料(A2)と、網状構造を有する部材を接着しやすくなる。また、第1層が集電体基板と第2層(網状構造を有する部材)を接着する接着剤として機能しやすくなる。
側鎖の炭素数が8~13である(メタ)アクリル酸エステルとしては、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
高分子材料(A2)に占める、側鎖の炭素数が8~13である(メタ)アクリル酸エステルの割合としては50~95重量%であることが好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸、側鎖の炭素数が7以下である(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
高分子材料(A2)がSP値が9~10のビニル樹脂であると、樹脂集電体基板と物性が類似するので、第1層と樹脂集電体基板の密着性が向上する。
好ましくは、樹脂集電体基板を構成する高分子材料(A3)と、表面層のうち第1層を構成する高分子材料(A2)のSP値の差が1.0以下であることが好ましい。
本明細書における高分子材料の分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
装置:「HLC-8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「TSKgel GMHXL」(2本)、「TSKgel Multipore HXL-M」(1本)を連結したもの[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μL
流量:0.6mL/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン[東ソー(株)製]
第1層に占める導電性フィラーの重量割合は、第1層の重量を基準として20~40重量%であることが好ましい。
第1層の厚さが3~10μmであると、樹脂集電体基板がカールすることを防ぐことができる。
第1実施形態のリチウムイオン電池用集電体において設けられる表面層の網状構造と同様に、電極活物質と接触する主面に網状構造の表面層が設けられていると当該主面の表面積が増加する。すると、当該主面と電極活物質が接触する面積が充分に大きくなり、集電体と活物質層の間の接触抵抗が低い集電体とすることができる。
網状構造の形態は、第1実施形態のリチウムイオン電池用集電体において設けられる表面層の網状構造と同様にすることができる。
電極活物質としては、正極活物質又は負極活物質を使用することができ、電極活物質は粒子状の電極活物質粒子として使用することが好ましい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
電極活物質粒子が、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆されている被覆電極活物質粒子であると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
また、高分子化合物としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
これらの中では電解液への濡れ性及び吸液の観点からフッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物が好ましく、ビニル樹脂がより好ましい。
ここで、非結着体とは、電極活物質が結着材(バインダともいう)により位置を固定されておらず、電極活物質同士及び電極活物質と集電体が不可逆的に固定されていないことを意味する。
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。
なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着材として用いられる溶液乾燥型の電極バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。
従って、溶液乾燥型の電極バインダ(結着材)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体の製造方法は、樹脂集電体基板と、上記樹脂集電体基板の上に設けられた網状構造を有する表面層とを備えるリチウムイオン電池用集電体の製造方法であって、上記樹脂集電体基板が、軟化点が100~200℃である高分子材料(A3)と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなり、上記樹脂集電体基板を加熱治具を用いて100~200℃に加熱しながら上記表面層と圧着する工程を有することを特徴とする。
混合の方法としては、導電性フィラーのマスターバッチを得てからさらに高分子材料(A3)と混合する方法、高分子材料(A3)、導電性フィラー、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
また、樹脂集電体基板の一方の主面(表面層を形成しない予定の主面)に金属層を形成してもよい。
上記網状構造を有する材料は、表面層となる材料である。
具体的には、金属メッシュ(SUSメッシュ、Cuメッシュ等)、樹脂メッシュ(ニトリルメッシュ等)等のメッシュ構造を有する材料であることが好ましい。
そして、樹脂集電体基板を加熱治具を用いて100~200℃に加熱しながら表面層と圧着する。
樹脂集電体基板を構成する高分子材料(A3)の軟化点が100~200℃であるので、樹脂集電体基板を加熱治具を用いて100~200℃に加熱することで樹脂集電体基板が軟化する。網状構造を有する材料からなる表面層を樹脂集電体基板に載せて圧着することで網状構造を有する材料が樹脂集電体基板に食い込んで網状構造が樹脂集電体基板に固定される。
上記工程により、本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体が得られる。
樹脂集電体基板10の一方の主面11に対してメッシュ40を載置し、100~200℃に加熱しながらプレスすることによってメッシュ40が樹脂集電体基板10の主面11に食い込んで固定され、表面層が形成される。
また、プレス温度が低すぎると表面層の形成が不充分になることがある。また、樹脂集電体基板にしわが生じることがある。
荷重が適切であると樹脂集電体基板にしわが生じることを防止することができる。
荷重が大きすぎると網状構造が樹脂集電体基板に食い込み過ぎてしまうことがある。
一方で、荷重が小さすぎると表面層の形成が不充分になる。また、樹脂集電体基板にしわが生じることがある。
本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体の製造方法は、集電体基板と、記集電体基板の上に設けられた網状構造を有する表面層とを備えるリチウムイオン電池用集電体の製造方法であって、上記集電体基板に、35℃以下のガラス転移温度を有する高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む溶液を塗工して乾燥して第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の上に網状構造を有する第2層を載せて圧着する工程とを有することを特徴とする。
集電体基板は樹脂集電体基板であってもよく、金属集電体基板であってもよい。
第1層用組成物は、高分子材料(A2)及び導電性フィラーを溶媒中に分散させたスラリーであることが好ましい。溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
また、分散剤としてジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等を配合してもよい。
第1層用組成物を集電体基板の一方の主面に塗布し、乾燥することによって集電体基板の上に第1層を形成することができる。塗布方法は特に限定されるものではない。
第1層の塗布厚さは3~10μmであることが好ましい。
高分子材料(A2)は常温で変形しやすいので、第1層上に網状構造を有する第2層を載せて圧着することにより第2層を第1層に接着させることができる。
第1層と第2層の圧着は常温(15~30℃程度)で行うことができる。
上記工程により、本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体が得られる。
集電体基板10の一方の主面11に第1層31を形成し、第2層となるメッシュ40を載置し、常温でプレスすることによってメッシュ40が第1層31に食い込んで固定されて第2層32となり、表面層30が形成される。
荷重が適切であると集電体基板にしわが生じることを防止することができる。
荷重が大きすぎると網状構造が集電体基板に食い込み過ぎてしまうことがある。
一方で、荷重が小さすぎると表面層の形成が不充分になる。また、集電体基板にしわが生じることがある。
本発明の第3実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体の製造方法は、集電体基板と、上記集電体基板の上に設けられた網状構造を有する表面層とを備えるリチウムイオン電池用集電体の製造方法であって、支持体に、35℃以下のガラス転移温度を有する高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む溶液を塗工して乾燥して第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の上に網状構造を有する第2層を載せて圧着して表面層を形成する表面層形成工程と、上記表面層から上記支持体を剥がして、上記表面層の上記第1層を上記集電体基板上に載せて、上記表面層を上記集電体基板と圧着する工程とを有することを特徴とする。
まず、図7Aに示すように、支持体50を準備し、支持体50の上に高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む溶液を塗工して乾燥して第1層31を形成する第1層形成工程を行う。
支持体としては、樹脂フィルムを使用することができ、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルム等を使用することができる。
また、金属板を支持体として使用することもできる。
第1層を形成するための溶液としてはリチウムイオン電池用集電体の製造方法の第2実施形態の第1層の形成の項目で説明した第1層用組成物と同様のものを使用することができる。
メッシュの圧着はリチウムイオン電池用集電体の製造方法の第2実施形態の第2層の形成の項目で説明した方法と同様にして行うことができる。
そして、図7Cに示すように、表面層30の第1層31側を集電体基板10に載せて、表面層30を集電体基板10と圧着する。
表面層30の圧着はリチウムイオン電池用集電体の製造方法の第2実施形態の第2層の形成の項目で説明した方法と同様にして行うことができる。
上記工程により、本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体が得られる。
すなわち、リチウムイオン電池用集電体の製造方法の第2実施形態及び第3実施形態は、いずれも本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン電池用集電体を得ることのできる方法である。
電極活物質粒子は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆した被覆電極活物質粒子とすることが好ましい。
リチウムイオン電池は、対極となる電極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することにより得られる。
電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4及びLiN(FSO2)2等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiN(FSO2)2である。
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンにトルエン65部を仕込み75℃に昇温した。次いで、2-エチルヘキシルアクリレート27部、イソブチルメタクリレート1.5部及びメタクリル酸1.4部及び1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート0.1部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.03部をトルエン5部に溶解した開始剤溶液とを4つ口コルベン内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃に昇温し反応を1時間継続した。次いで2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.01部をトルエン1部に溶解した開始剤溶液を滴下ロートで投入しさらに反応を3時間継続して共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液をテフロン(登録商標)製のバットに移した。80℃、0.09MPaで3時間、減圧乾燥でトルエンを留去した。次いで、100℃に昇温し1時間、更に120℃、0.01MPaで1時間、減圧乾燥機で加熱を行い共重合体を得た。この共重合体10部をアセトン40部で溶解させて樹脂濃度20%の高分子材料(A2-1)の溶液を得た。
これらの物性をまとめて表1に示した。
2軸押出機にて、高分子材料(A3)としてのポリプロピレン樹脂75部、導電性フィラーとしてのアセチレンブラック20部、分散剤[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂集電体基板用組成物を得た。
得られた樹脂集電体基板用組成物をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、樹脂集電体基板(L-1)を得た。得られた樹脂集電体基板の厚さは50μmであった。
なお、(L-4)については金属層を形成していない面の表面粗さを測定した。
樹脂集電体基板の厚さは膜厚計[ミツトヨ社製]を用いて測定した。
貫通抵抗値の測定方法は下記の通りである。
これらの物性をまとめて表2に示した。
樹脂集電体基板をΦ15mmに打ち抜き、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体基板の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体基板の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体基板の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(1.77cm2)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm2)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×1.77(cm2)
樹脂集電体基板をJIS K 7127に準拠したダンベル打ち抜き器で成型し、オートグラフ[(株)島津製作所製AGS-X10kN]に固定した1kNのロードセルおよび引張試験用のつかみ具にサンプルを固定し、100mm/minの速度で引っ張った破断点の試験力を破断面の断面積で割った値を破断応力(MPa)とした。
破断応力(MPa)=試験力(N)/(フィルム厚み(mm)×10(mm))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、ラウリルメタクリレート95部、メタクリル酸4.6部、1、6-ヘキサンジオールジメタクリレート0.4部及びトルエン390部を仕込み75℃に昇温した。トルエン10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.200部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.200部を混合した。得られた単量体混合液をコルベン内に窒素を吹き込みながら、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.800部をトルエン12.4部に溶解した溶液を滴下ロートを用いて、重合を開始してから6~8時間目にかけて連続的に追加した。さらに重合を2時間継続し、トルエンを488部加えて樹脂固形分濃度30重量%の高分子化合物(B-1)の溶液を得た。
これらの物性をまとめて表3に示した。
(実施例1)
PETフィルムの上に樹脂集電体基板(L-1)を置き、その上に目開き77μm、線径50μm、平織りのSUS316製メッシュを置きさらにPETフィルムを載せたものを、上側テーブルを170℃、下側テーブルを160℃に温調した卓上型テストプレス機[SA-302、テスター産業(株)製]にセットし、樹脂集電体基板への荷重が25MPaになるように圧力を調整して20秒間プレスを行った。
プレス終了後、プレス機から取り出し室温雰囲気で10分間放冷した。放冷後に両面のPETフィルムを剥がして、表面層としてのSUSメッシュが樹脂集電体基板上に融着された集電体を得た。得られた集電体の厚みは105μmであった。
得られたリチウムイオン電池用集電体を(D-1)とした。
樹脂集電体基板及びメッシュについて表4に示すように変更して、リチウムイオン電池用集電体(D-2)~(D-5)を得た。
樹脂集電体基板として樹脂集電体基板(L-4)を使用した場合は、Pt膜を形成していない面に表面層を形成した。
表5に示す構成で、高分子材料(A2)と導電性フィラーを混合して第1層用組成物を作製した。
第1層用組成物を樹脂集電体基板(L-1)の一方の主面に塗布し、乾燥することによって第1層を形成した。
PETフィルムの上に樹脂集電体基板の第1層を形成していない面を置き、その上に目開き77μm、線径50μm、平織りのSUS316製メッシュを置きさらにPETフィルムを載せたものを、上側テーブルを25℃、下側テーブルを25℃に温調した卓上型テストプレス機[SA-302、テスター産業(株)製]にセットし、樹脂集電体基板への荷重が250MPaになるように圧力を調整して60秒間プレスを行った。
プレス終了後、プレス機から取り出し両面のPETフィルムを剥がして、表面層としてのSUSメッシュが樹脂集電体基板上に接着された集電体を得た。得られた集電体の厚みは161μmであった。
得られたリチウムイオン電池用集電体を(T-1)とした。
なお、表5におけるCNFはカーボンナノファイバー(商品名「VGCF-H」、昭和電工株式会社製)、Ni粒子は商品名「Nickel Powder Type255(Vale社製)」である。
樹脂集電体基板、第1層用組成物及びメッシュについて表5に示すように変更して、リチウムイオン電池用集電体(T-2)~(T-5)を得た。
樹脂集電体基板として樹脂集電体基板(L-4)を使用した場合は、Pt膜を形成していない面に表面層を形成した。
比較例1のリチウムイオン電池用集電体(T-5)はメッシュが第1層と接着されておらず、メッシュは第1層の上に載っているだけの状態であった。
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率でEC:PC=1:1)にLiN(FSO2)2(LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させ、リチウムイオン電池用電解液を調製した。
<正極での評価試験>
[被覆正極活物質の作製]
樹脂溶液として高分子化合物(B-1)の溶液を用いたリチウムイオン電池用被覆正極活物質を以下の方法で作製した。
正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05O2[戸田工業社製、体積平均粒子径6.4μm]96.9部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記樹脂溶液を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤としてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を150℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質を得た。
リチウムイオン電池用集電体(D-1)、(D-2)、(D-4)、(D-5)、(T-1)、(T-5)の表面層上に正極活物質層を形成して正極を作製した。
また、樹脂集電体基板(L-1)の表面上に正極活物質層を形成して正極を作製した。
具体的には、電解液42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液30部と上記の被覆正極活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に電解液2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間混合して、正極スラリーを作製した。得られた正極スラリーを活物質目付量が80mg/cm2となるよう、リチウムイオン電池用集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、実施例10~14、比較例2~3に係る正極ハーフセル(15mmφ)を作製した。
得られた正極ハーフセルを、セパレータ(セルガード製#3501)を介し、対極Li金属と組み合わせ、電解液を注入して、ラミネートセルを作製した。
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法によりリチウムイオン電池につき充放電試験を行った。結果を表6に示す。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.6Vまで放電した。
このとき放電した容量を[放電容量(mAh)]とした。
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により正極ハーフセルの評価を行った。結果を表6に示す。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.6Vまで放電した。定電流定電圧方式(CCCVモードともいう)で0.1Cにおける放電0秒後の電圧及び電流並びに0.1Cにおける放電10秒後の電圧及び電流を測定し、以下の式で内部抵抗を算出した。内部抵抗が小さいほど優れた電池特性を有することを意味する。
なお、放電0秒後の電圧とは、放電したと同時に計測される電圧(放電時電圧ともいう)である。
[内部抵抗(Ω・cm2)]=[(0.1Cにおける放電0秒後の電圧)-(0.1Cにおける放電10秒後の電圧)]÷[(0.1Cにおける放電0秒後の電流)-(0.1Cにおける放電10秒後の電流)]×[電極の対向面積(cm2)]
比較例2は、リチウムイオン電池用集電体が樹脂集電体基板(L-1)であり、表面層が設けられていない樹脂集電体を使用した例に相当する。
内部抵抗が比較例2より明らかに低く(14.0(Ω・cm2)未満)、放電容量が比較例2より高いか同程度である場合を高評価と判断した。
実施例10~14に係る正極ハーフセルはいずれも内部抵抗が比較例2より低く、放電容量は比較例2と同程度であった。
比較例3に係る正極ハーフセルは実施例10~14よりも内部抵抗が高く、放電容量は比較例2よりも低くなっていた。また、10サイクル容量維持率が低くなっていた。
すなわち、各実施例の正極ハーフセルは放電容量を低下させることなく内部抵抗を低下させることができることが分かった。
<負極での評価試験>
[被覆負極活物質の作製]
樹脂溶液として高分子化合物(B-2)の溶液を用いたリチウムイオン電池用被覆負極活物質を以下の方法で作製した。
負極活物質として難黒鉛化性炭素[(株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F)]100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[アーステクニカ社製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記樹脂溶液を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤としてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]5.1部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を150℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質を得た。
リチウムイオン電池用集電体(D-1)、(D-3)、(T-2)、(T-3)、(T-4)、(T-5)の表面層上に負極活物質層を形成して負極を作製した。
また、樹脂集電体基板(L-1)の表面上に負極活物質層を形成して負極を作製した。
具体的には、電解液150部と炭素繊維4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液50部と上記の被覆負極活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に電解液2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間混合して、負極スラリーを作製した。得られた負極スラリーを活物質目付量が30.0mg/cm2となるよう、リチウムイオン電池用集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、実施例15~19、比較例4、5に係る負極ハーフセル(16mmφ)を作製した。
得られた負極を、セパレータ(セルガード製#3501)を介し、対極Li金属と組み合わせ、電解液を注入して、ラミネートセルを作製した。
比較例4は、リチウムイオン電池用集電体が樹脂集電体基板(L-1)であり、表面層が設けられていない樹脂集電体を使用した例に相当する。
内部抵抗が比較例4より明らかに低く(16.0(Ω・cm2)未満)、放電容量が比較例4より高いか同程度である場合を高評価と判断した。
実施例15~19に係る負極ハーフセルはいずれも内部抵抗が比較例4より低く、放電容量は比較例4より高かった。
比較例5に係る正極ハーフセルは実施例15~19よりも内部抵抗が高く、放電容量は比較例4よりも低くなっていた。また、10サイクル容量維持率が低くなっていた。
すなわち、各実施例の負極ハーフセルは内部抵抗を低下させることができ、さらに放電容量を高くできることが分かった。
10 樹脂集電体基板(集電体基板)
11 一方の主面
20 表面層
30 表面層
31 第1層
32 第2層
40 メッシュ
50 支持体
Claims (8)
- リチウムイオン電池内において一方の主面を電極活物質と接触させて使用するリチウムイオン電池用集電体であって、
前記リチウムイオン電池用集電体は、前記電極活物質と接触する主面に表面層を有し、
前記表面層が網状構造を有し、
前記網状構造が、目開き20~200μm、厚み30~80μmの金属メッシュであることを特徴とするリチウムイオン電池用集電体。 - 前記集電体が、高分子材料(A3)と導電性フィラーとを含む樹脂集電体基板を有し、前記表面層が前記樹脂集電体基板上に設けられており、
前記高分子材料(A3)の軟化点が100~200℃である請求項1に記載のリチウムイオン電池用集電体。 - 前記表面層が2層からなり、前記表面層のうち第1層が高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなり、前記高分子材料(A2)は35℃以下のガラス転移温度を有し、前記第1層の上に積層された第2層が網状構造を有する請求項1に記載のリチウムイオン電池用集電体。
- 前記集電体が、高分子材料(A3)と導電性フィラーとを含む樹脂集電体基板を有し、前記表面層が前記樹脂集電体基板上に設けられている請求項3に記載のリチウムイオン電池用集電体。
- 樹脂集電体基板と、前記樹脂集電体基板の上に設けられた網状構造を有する表面層とを備えるリチウムイオン電池用集電体の製造方法であって、
前記樹脂集電体基板が、軟化点が100~200℃である高分子材料(A3)と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂集電体基板を加熱治具を用いて100~200℃に加熱しながら前記表面層と圧着する工程を有し、
前記網状構造が金属メッシュであることを特徴とするリチウムイオン電池用集電体の製造方法。 - 集電体基板と、前記集電体基板の上に設けられた網状構造を有する表面層とを備えるリチウムイオン電池用集電体の製造方法であって、
前記集電体基板に、35℃以下のガラス転移温度を有する高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む溶液を塗工して乾燥して第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の上に網状構造を有する第2層を載せて圧着する工程とを有し、
前記網状構造が金属メッシュであることを特徴とするリチウムイオン電池用集電体の製造方法。 - 集電体基板と、前記集電体基板の上に設けられた網状構造を有する表面層とを備えるリチウムイオン電池用集電体の製造方法であって、
支持体に、35℃以下のガラス転移温度を有する高分子材料(A2)と導電性フィラーとを含む溶液を塗工して乾燥して第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の上に網状構造を有する第2層を載せて圧着して表面層を形成する表面層形成工程と、
前記表面層から前記支持体を剥がして、前記表面層の前記第1層を前記集電体基板上に載せて、前記表面層を前記集電体基板と圧着する工程とを有し、
前記網状構造が金属メッシュであることを特徴とするリチウムイオン電池用集電体の製造方法。 - 請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用集電体と電極活物質粒子を有し、
前記電極活物質粒子の表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆されていることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
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