JP7136982B2 - 配管構造体及び配管構造体用の管継手の製造方法 - Google Patents
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Description
床スラブの区画貫通部に通される配管構造体としては、例えば、床スラブに対して下階にて鉛直方向に設置された第1の立管用パイプ(配管材)と、床スラブに対して上階に鉛直方向に設置された第2の立管用パイプ(配管材)と、床スラブの上側に設置された横枝管用パイプ(配管材)と、各パイプを接続する受口が設けられた三方管継手とを備えるものが挙げられる。このような配管構造体においては、第1の立管用パイプの上端部が、床スラブに形成された区画貫通部内にて管継手の受口に接続される。また、区画貫通部の内側面と管継手との間にはモルタル等のシーリング材が充填されて、区画貫通部の内側面と管継手との間の隙間が埋められている。
配管構造体における耐火対策としては、区画貫通部に挿入される配管材に熱膨張性黒鉛を含有させる方法が知られている(特許文献1)。配管材に熱膨張性黒鉛を含有させると、火災が発生して熱が上昇した際に、その熱によって配管材が膨張して区画貫通部を閉塞させることができる。そのため、炎、熱及び煙が区画貫通部を通して上昇すること防ぐことができる。
本発明は、配管材の熱膨張開始温度が高く、配管材を作製しやすいにもかかわらず、火災発生の際には管継手の変形を抑制でき、配管材膨張によって区画貫通部を確実に閉塞できる配管構造体を提供することを目的とする。
<1>
受口を備えた透明な管継手と、配管材とを備え、床スラブの区画貫通部内で前記受口と前記配管材とが接続されている配管構造体であって、
前記管継手は、ポリ塩化ビニル系樹脂と吸熱剤とスズ系安定剤を含む樹脂組成物(A)を含有し(ただし、炭酸カルシウムを含むものを除く)、
前記樹脂組成物(A)における前記吸熱剤の含有量が、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
前記樹脂組成物(A)における前記吸熱剤が、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物及びハイドロタルサイトから選択される1種以上の加熱脱水型化合物であり、
前記配管材は、少なくとも表層と中間層と内層とを有する複層構造とされ、
前記表層及び前記内層はポリ塩化ビニル系樹脂を含有し、
前記中間層は、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張開始温度が240℃以上である熱膨張性黒鉛とを含む樹脂組成物(B)を含有する、配管構造体。
<2>
前記管継手と前記配管材とは、発光剤が添加された接着剤で接合されている、<1>に記載の配管構造体。
<3>
前記中間層における前記熱膨張性黒鉛の含有量が、前記中間層のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して10.0質量部超28.0質量部以下であり、
前記熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が20未満である、<1>又は<2>に記載の配管構造体。
<4>
請求項1に記載の管継手を製造する方法であって、
ポリ塩化ビニル系樹脂と、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物及びハイドロタルサイトから選択される1種以上の加熱脱水型化合物であり、体積平均粒子径が0.01μm以上20μm以下である吸熱剤と、スズ系安定剤と、を含む樹脂組成物を射出成形して製造され、
前記樹脂組成物における前記吸熱剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
前記樹脂組成物における前記スズ系安定剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5.0質量部以下である、管継手の製造方法。
図1に示すように、本実施形態の配管構造体1は、排水路として使用され、管継手10と配管材20とを備える。本実施形態の配管構造体1は、隣接する上下の階を区画する床スラブ2に形成された区画貫通部2aに通されて設置される。配管構造体1と区画貫通部2aの内側面との間にはモルタル3が充填されて、区画貫通部2aの内側面と管継手10との間の隙間が埋められていると共に、配管構造体1を固定している。
本実施形態における管継手10は、本管部11と、本管部11に設けられた横枝管接続部12とを備える。
本管部11の両端には、配管材20(後述する第1の立管用パイプ21及び第2の立管用パイプ22)を接続するための受口11a,11bが設けられ、横枝管接続部12の端部には、配管材20(後述する横枝管用パイプ23)を接続するための受口12aが設けられている。受口11aの内周面は、配管材20(第1の立管用パイプ21)の外周面が密着する内径とされており、受口11bの内周面は、配管材20(第2の立管用パイプ22)の外周面が密着する内径とされており、受口12aの内周面は、配管材20(横枝管用パイプ23)の外周面が密着する内径とされている。
本実施形態において、本管部11は直線状の管からなる。横枝管接続部12は、その内部を流れる排水の流れを円滑にするために、本管部11の近傍が受口11a側に湾曲した形状にされている。
各受口11a,11b,12aの内周面には、パイプ21,22,23の外周面に密着して水密にするパッキンが取り付けられてもよい。
管継手10は、管継手10の全体が樹脂組成物(A)からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物(A)から形成されていればよい。例えば、管継手10が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が樹脂組成物(A)から形成されたものが挙げられる。
管継手10を構成する樹脂組成物(A)は熱膨張性黒鉛を含有しないことが好ましい。
樹脂組成物(A)に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂はさらに塩素化されてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が前記下限値以上であれば、機械的強度を充分に高めることができ、前記上限値以下であれば、充分な成形性を確保できる。
加熱された際に脱水反応が生じる化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物(カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト)やハイドロタルサルサイト等の無機水酸化物、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト等の吸水作用のある無機化合物が挙げられる。以下、加熱された際に脱水反応が生じる無機水酸化物や無機化合物のことを総称して「加熱脱水型化合物」と表記する。加熱脱水型化合物では、脱水反応によって生じた水の蒸発潜熱によっても温度上昇を抑制することができる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化マグネシウムは、脱水反応が300℃以上で生じるため、吸熱剤として水酸化マグネシウムを用いた場合には、樹脂組成物(A)を成形して管継手10を作製する際に脱水反応が生じることを抑制できる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化アルミニウムは、脱水反応が200℃程度で生じるため、吸熱剤として水酸化アルミニウムを用いた場合には、火災の際に管継手10に伝わった熱を早めに吸熱することができる。そのため、配管材20(第1の立管用パイプ21)が熱膨張する前に管継手10が変形して耐火性を損なうことをより抑制できる。
[M2+ 1-xM3+ x(OH)2]x+[An- x/n・mH2O]x-
M2+:Mg2+, Zn2+等の2価金属イオン
M3+:Al3+, Fe3+等の3価金属イオン
An- :CO3 2-, Cl-, NO3 -等のn価アニオン
X:0<X≦0.33
ハイドロタルサイトは、分子間に有している結晶水が約180℃から脱水を開始し、その結晶水は約300℃で完全に脱離する。この状態までは合成ハイドロタルサイトは結晶構造を保持しているが、約350℃を超えると結晶構造が崩壊し始め、水と二酸化炭素を放出する。そして、合成ハイドロタルサイトは、塩化ビニル系樹脂の熱分解温度である約200℃以上300℃以下よりも60℃以上75℃以下低い温度で吸熱分解を開始するため、塩化ビニル系樹脂の熱分解をハイドロタルサイトの吸熱分解で効率的に抑制することができる。
吸熱剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物又はハイドロタルサイトの少なくとも2種を併用してもよい。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径は0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.05μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上1μm以下がさらに好ましい。加熱脱水型化合物の体積平均粒子径をこの範囲とすることで、管継手10に透明性を付与したり、加熱脱水型化合物の分散性を向上させることができる。体積平均粒子径は、レーザ回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
加熱脱水型化合物のBET比表面積は1m2/g以上40m2/gであることが好ましく、1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。ここで、BET比表面積は、窒素吸着を利用して求めた値である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径及びBET比表面積が前記範囲であれば、吸熱剤としての効果を充分に発揮でき、また、管継手10を作製する際の樹脂組成物(A)の成形性及び管継手10の機械的物性を充分に確保できる。
加熱脱水型化合物を表面処理剤により表面処理する場合、表面処理剤の量は加熱脱水型化合物100質量部に対して0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。表面処理剤の量が前記下限値以上であれば、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する加熱脱水型化合物の分散性を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、経済性の低下を抑制できる。
他の難燃剤としては、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン;三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物;トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物;ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等のホウ酸系化合物が挙げられる。前記他の難燃剤のなかでも、ポリ塩化ビニルの燃焼抑制効果が高いことから、三酸化アンチモンが好ましい。
後述する各添加剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
内部滑剤としては、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。
外部滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。
耐熱向上剤としては、例えばα-メチルスチレン系樹脂、N-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca-Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2-エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
これらの中でも、管継手10を透明にする場合にはスズ系安定剤又はCa-Zn系安定剤が好ましく、スズ系安定剤としてはマレート類、カルボキシレート類等の硫黄を含まないものが硫化汚染を防止するために特に好ましく、Ca-Zn系安定剤としては成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩であるものが特に好ましい。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
本実施形態における配管材20は、第1の立管用パイプ21、第2の立管用パイプ22及び横枝管用パイプ23である。
第1の立管用パイプ21は、床スラブ2に対して下方に向って鉛直方向に配置され、その上端部が管継手10の下側の受口11aに接続されている。第1の立管用パイプ21の上端部は区画貫通部2a内に挿入されている。
第2の立管用パイプ22は、床スラブ2に対して上方に向って鉛直方向に配置され、その下端部が管継手10の上側の受口11bに接続されている。
横枝管用パイプ23は、その一端部が横枝管接続部12の受口12aに接続され、受口12aから離間するにつれて漸次高くなるように傾斜して配置されている。但し、横枝管用パイプ23の設置スペースは限られているから、横枝管用パイプ23の傾斜は僅かな傾斜角とされ、例えば、水平方向に対して10°以下の傾斜角である。
配管材20は、配管材20の全体が樹脂組成物(B)からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物(B)から形成されていればよい。例えば、配管材20が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が樹脂組成物(B)から形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は前記吸熱剤を含有していてもよい。
中間層は熱膨張性黒鉛を含有するため黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
中間層の厚みとしては、例えば呼び径100A(外径114mm)の場合、1.8mm以上7.6mm以下であることが好ましく、2.0mm以上6.0mm以下がより好ましく、2.5mm以上5.0mm以下がさらに好ましい。また、中間層の厚みは、配管材の厚みの85%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がより好ましい。中間層の厚みが上記範囲であれば、耐火性と配管材自体の強度を両立することができる。
表層及び内層の厚みとしては、例えば呼び径100A(外径114mm)の場合、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下がより好ましい。被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
また、配管材20は、JIS K6741に記載の性能を満たすものであることが好ましい。
樹脂組成物(B)に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂としては、樹脂組成物(A)に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂と同様のものを使用できる。
また、樹脂組成物(B)には、各種添加剤が含まれてもよい。添加剤は、樹脂組成物(A)に含まれてもよい添加剤と同様のものを使用できる。
前記下限値以上の熱膨張開始温度は、樹脂組成物(B)を成形して配管材20を作製する際の成形温度よりも充分に高くなる。そのため、熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度が前記下限値以上であることにより、樹脂組成物(B)を成形する際に熱膨張性黒鉛が膨張することを防止できる。
一方、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、400℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましい。熱膨張性黒鉛の膨張開始温度が前記上限値以下であれば、熱膨張性黒鉛を工業的に製造しやすく、また、熱膨張性黒鉛の膨張前に管継手10が加熱されて変形又は溶融することを防止できる。
熱膨張性黒鉛の膨張度が前記下限値以上であれば、充分に膨張するから、火災の際に区画貫通部2aをより確実に閉塞できる。
熱膨張性黒鉛は1000℃における膨張度は、熱膨張性黒鉛の製造が容易になる点から、240cm3/g以下であることが好ましい。
前記グラファイトとしては、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等が挙げられる。
前記無機酸としては、例えば、濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。
前記酸化剤としては、例えば、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
グラファイト粉末を前記無機酸と前記酸化剤とで処理した後には、酸性度を低下させるために中和処理を施してもよい。
熱膨張性黒鉛のpHの調整方法としては特に限定されない。例えば、熱膨張性黒鉛を製造する際に、グラファイトの粉末を無機酸と酸化剤とで処理した後、水洗と乾燥とを繰り返して、熱膨張性黒鉛のpHを調整する方法が挙げられる。
なお、配管材を構成する硬質ポリ塩化ビニル樹脂の線膨張係数はJIS K 7197で規定される熱機械分析法(TMA法)により測定された値で7.0×10-5/℃であるが、本実施の形態の配管材は4.5×10-5/℃以上7.0×10-5/℃未満であり、5.0×10-5/℃以上7.0×10-5/℃未満が好ましく、5.5×10-5/℃以上6.8×10-5/℃未満がより好ましい。また、表層及び内層と中間層との線膨張係数の差は2.5×10-5/℃以下であり、2.0×10-5/℃以下が好ましく、1.0×10-5/℃以下がより好ましい。
さらに、配管材の表層及び内層と中間層との融着強度は、0.8MPa以上であり、1.0MPa以上が好ましく、1.5MPa以上がより好ましく、2.0MPa以上がさらに好ましい。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca-Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2-エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
無機充填剤としては、前記吸熱剤以外の無機化合物、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、リン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。前記無機充填剤のうち、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉄等の塩基性無機充填剤が好ましい。
前記無機充填剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に、熱膨張性黒鉛としてpHが1.5以上4.0以下に調整されたものを用いる場合には、樹脂組成物(B)には、前記塩基性無機充填剤が、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5.0質量部以下の割合で含まれることが好ましい。塩基性無機充填剤の含有割合が前記下限値以上であれば、樹脂組成物(B)を成形して配管材20を作製する熱安定性が高くなり、成形時の炭化物発生を防止でき、前記上限値以下であれば、火災発生時のポリ塩化ビニル系樹脂を充分に炭化させることができ、耐火性をより向上させることができる。
表層と中間層と内層とからなる3層構造の配管材は、例えば図2に示す製造装置60を用いて製造される。
この例の製造装置60は、第1押出成形機61と、第2押出成形機62と、真空サイジング装置63と、引取機64と、切断機65とを備える。
成形温度が170℃未満であると、熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物(B-1)の混練状態が悪く金型70内での流動性が低下して成型しにくくなる。成形温度が240℃を超えると、金型70内で樹脂組成物(B-1)に含まれる熱膨性張黒鉛が膨張してしまう。
なお、第1押出機68における樹脂温度と第2押出機69における樹脂温度とが異なる場合、熱安定性の向上のため、温度が高い方の樹脂には熱安定剤を多く配合しておくことが好ましい。
なお、この真空サイジング装置63に替えて、冷却水が溜められた冷却水槽を用いてもよく、冷却水槽の入口にはサイジングスリーブが設けられたものを用いることができる。
本実施形態の配管構造体1では、区画貫通部2aの内部に、管継手10を構成する本管部11の一方の受口11aが配置され、その受口11aに第1の立管用パイプ21の上端部が接続されている。
また、本実施形態の配管構造体1では、区画貫通部2aの外部且つ床スラブ2の上側に、本管部11の他方の受口11bが配置され、その受口11bに第2の立管用パイプ22の下端部が接続されている。また、区画貫通部2aの外部且つ床スラブ2の上側に、横枝管接続部12の受口12aが配置され、その受口12aに横枝管用パイプ23の一端部が接続されている。
各受口11a,11b,12aと各パイプ21,22,23との接続方法は特に制限されず、公知の方法を適宜適用でき、各受口の内部に設けられたパッキンにより各パイプの外面と各受口の内面との間の隙間を止水したり、各パイプの外面に接着剤を塗布し、各受口の内面と各パイプの外面とが止水されるよう接続してもよい。接着剤を用いて接合する場合、接着剤としては、着色剤が添加された有色接着剤や、紫外線により蛍光・燐光を発する発光剤が添加されている接着剤を用いることができる。ただし、区画貫通部2aの内部に位置する受口11aとパイプ21とは、パイプ21が加熱され熱膨張した際にも受口11aから脱落しない様、互いに接着剤で接続する必要がある。
管継手10の各受口11a,11b,12aに挿入される各パイプ21,22,23の端部の外面は全周にわたってテーパ面とされている。なお、ここでいうテーパ面とは、管軸に沿った配管材20の端部20aが、例えば図5(a)に示すように直線で切り取られた形状でもよい。また、配管材20の端部20aが、例えば図5(b)に示すように円弧で切り取られた形状でもよい。なお、図5(a),(b)は、内層26、中間層27及び表層28の3層構造の配管材20の端部20aにおける部分断面図である。
パイプ21,22,23が内層、中間層及び表層の3層構造で中間層が樹脂組成物(B)から構成される場合、パイプ21,22,23を管継手10に挿入する際に、中間層が露出するまで表層を切削してもよく、中間層が露出しない程度に切削してもよい。中間層が露出していれば、管継手10が透明な場合、露出した配管材20端面の中間層は黒色であるため外部から端面の位置が視認でき、受口の奥まで挿入しているか否かが視認できる。特に、継手が透明の場合、受口に設けられたパッキンを外部から視認できるため、配管材20の端部がパッキンよりも所定の長さ挿入されているかが判断できる。中間層が露出していなければ、中間層や中間層と表層との界面に接着剤成分が侵入せず、接着剤成分により表層と中間層の界面剥離や割れ等を防止したり、酸性である熱膨張性黒鉛により接着剤成分が劣化することを防止することができる。
本実施形態において使用される熱膨張性黒鉛は、熱膨張開始温度が240℃以上であり、配管材を作製するときの成形温度(140℃以上240℃未満)よりも高い。そのため、配管材20を作製する際に、熱膨張性黒鉛が膨張することが防止されている。したがって、本実施形態における配管材20は作製しやすい。
特に、表層と、熱膨張性黒鉛を含む中間層と、内層とからなる3層構造の配管材を製造する際には、成形温度(成形時の樹脂温度)は175℃以上240℃未満が好ましく、180℃以上235℃以下がより好ましく、185℃以上230℃以下がさらに好ましく、190℃以上225℃以下が特に好ましい。成形温度を上記範囲内とすることで、良好な混練状態となった熱膨張性黒鉛を含む中間層と、表層及び内層との密着性を向上させることができる。
また、成形温度を高めることにより、樹脂の流動性を高め、熱膨張性黒鉛を含む樹脂であっても混練や合流、押出が容易であり成形性を向上させることができる。
したがって、本実施形態の配管構造体1によれば、配管材20の熱膨張開始温度が高く、配管材20を作製しやすいにもかかわらず、火災発生の際には配管材20が熱膨張する前に管継手10が変形することを抑制でき、区画貫通部2aを確実に閉塞できる。よって、本実施形態の配管構造体1は区画貫通部2aの耐火性に優れる。
本管部11の区画貫通部2a内への挿入を深くすると、管継手10の下側の受口11aが下階に近づくことになる。本実施形態では、受口11aの下面が床スラブ2の下面と同一面になるまで本管部11が区画貫通部2a内に挿入されている。
管継手10の下側の受口11aが下階に近い場合、下階で火災が生じたときに管継手10が炎及び熱に速やかに晒されることになる。また、熱膨張性黒鉛が配合された立管用パイプ21の区画貫通部2a内における長さが短く、膨張したパイプ21による閉塞長さが短くなる。しかし、そのような場合であっても、吸熱剤を含有する管継手10を使用する本実施形態では、管継手10の温度上昇を遅らせることができるため、管継手10の変形を抑制できる。さらに、本実施形態では、熱膨張性黒鉛の配合量が充分に多いので、区画貫通部2aの閉塞長さが短くても区画貫通部2aを充分に閉塞できる。
したがって、本実施形態によれば、床スラブ2と床材4との間の空間S内における横枝管用パイプ23の配置の自由度を高めながらも、区画貫通部2aにおける耐火性を確保できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、本発明において、管継手の下側の受口の下面が床スラブの下面と同一面にされた状態で、管継手と第1の立管用パイプの上端部とが接続される必要はない。すなわち、管継手の下側の受口と第1の立管用パイプの上端部とは、区画貫通部内のいずれかの部分で接続されていればよい。
本発明において、管継手は、上記実施形態に記載の形状の三方管継手に限定されず、管継手の本管部に対して横枝管接続部が垂直に設けられたT型のものでもよい。また、管継手は、2本の立管用パイプと2本以上の横枝管用パイプとを接続するものでもよいし、1本の立管用パイプと2本以上の横枝管用パイプとを接続するものでもよい。
配管材においては、少なくとも立管用パイプが前記樹脂組成物(B)から構成されていればよく、横枝管用パイプは前記樹脂組成物(B)以外の樹脂組成物、すなわち熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物から構成されてもよい。
また、本発明において、配管材は、一端部に受口を備えたものであってもよい。この場合、管継手は配管材の受口に挿入される差口を備えた構成とされ、管継手の差口を配管材の受口に挿入して接続することにより配管構造体とされる。
また、本発明の配管構造体は、壁に形成された区画貫通部に通されるものであってもよい。配管構造体が、壁に形成された区画貫通部に通されるものである場合には、管継手は、受口が2つ設けられたものでもよいし、受口が3つ以上設けられたものでもよい。
また、本発明の配管構造体は、給水路にも使用できる。
この場合の配管構造体1は、例えば図7に示すように、上部管継手10aと、下部管継手10bと、配管材20とを備える。
上部管継手10aは、配管材20を接続可能な受口13aと、上階から伸びる第2の立管用パイプ122を接続可能な受口11bと、上階から伸びる横枝管用パイプ123を接続可能な受口12aとを備える。
下部管継手10bは、配管材20を接続可能な受口13bと、下階から伸びる第1の立管用パイプ121を接続可能な受口11aとを備える。
配管材20の上端は、上部管継手10aの受口13aと接続されている。配管材20の下端は、下部管継手10bの受口13bと接続されている。
上部管継手10a及び下部管継手10bは前記樹脂組成物(A)から構成される。配管材20は前記樹脂組成物(B)から構成される。第1の立管用パイプ121、第2の立管用パイプ122及び横枝管用パイプ123は、前記樹脂組成物(A)から構成されていてもよいし、前記樹脂組成物(B)から構成されていてもよいし、前記樹脂組成物(A)及び前記樹脂組成物(B)以外の材料で構成されていてもよい。
図7に示す配管構造体1は、配管材20が床スラブ2の区画貫通部2aに配置されるように建物内に設置される。また、配管構造体1と区画貫通部2aの内側面との間にはモルタル3が充填され、区画貫通部2aの内側面と配管材20との間の隙間が埋められていると共に、配管構造体1を固定している。
ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ株式会社製、TH700)100質量部と、吸熱剤として水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、キスマ5A、体積平均粒子径:0.9μm、BET比表面積:4.8m2/g)1質量部と、スズ系安定剤(日東化成株式会社製、AT-6300)2質量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学株式会社製、ハイワックス4202E)0.5質量部を配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業株式会社製)を用い、攪拌混合して樹脂組成物(A-1)を得た。
前記樹脂組成物(A-1)を、射出成形機を用いて成形温度190℃で射出成形して、上記実施形態と同様の形状の管継手を作製した。
中間層を構成する樹脂組成物は、以下のように得た。
ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ株式会社製、TH1000)100質量部と、熱膨張性黒鉛(エア・ウォーター株式会社製、MZ-260、膨張開始温度260℃以上、平均アスペクト比25.3)18質量部と、鉛系安定剤(堺化学株式会社製、SL-1000)2質量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学株式会社製、ハイワックス4202E)0.5質量部、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、H-42S)3質量部とを配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業株式会社製)を用い、攪拌混合して樹脂組成物(B-1)を得た。
表層及び内層を構成する樹脂組成物は、以下のようにして得た。
ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ株式会社製TH1000)100質量部に、鉛系安定剤(堺化学株式会社製、SL-1000)2質量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学株式会社製、ハイワックス4202E)0.5質量部、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ホワイトンSB)3質量部を配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業株式会社製)で攪拌混合して樹脂組成物(B-2)を得た。
図2に示す製造装置を用いて、第1押出成形機61のホッパ66に前記樹脂組成物(B-2)を供給し、第2押出成形機62のホッパ67に前記樹脂組成物(B-1)を供給した。第1押出機68及び第2押出機69における樹脂温度を180℃に設定して、第1押出機68及び第2押出機69から金型70へ各樹脂を供給した。金型70における成形温度を190℃に設定して管状に押出成形し、外径114mm、樹脂組成物(B-2)で構成され、厚さがそれぞれ0.8mmの表層と内層と、樹脂組成物(B-1)で構成され、表層と内層の間に形成された厚さが4mmの中間層と、を備えた配管材を作製した。この配管材を切断して3本のパイプ21、22、23を作製した。
JIS K 7197で規定される熱機械分析法(TMA法)に準拠して測定した。結果を表1に示す。
図8に示す万能試験機50を用意した。万能試験機50は、抜き打ち治具51と図示略の2枚の圧縮板とを備える。抜き打ち治具51は、台座部51aと台座部51aの上方に配置された押込部51bとを備える。そして抜き打ち治具51は、図示略の2枚の圧縮板に挟まれている。
次に、配管材を管軸方向20mm幅の管状に切り取ったものを試験片25とした。試験片25は、内層26と中間層27と図示略の表層とを有する。
温度が23℃±2℃、湿度が常湿(45~85%)の条件下、試験片25を万能試験機50の台座部51aと押込部51bとの間にセットし、2枚の圧縮板により管軸の方向に毎分10mm/min±2mm/minの速さで試験片25を圧縮し、内層26と中間層27との融着面が剥離する際の最大荷重を求め、下記式(1)及び(2)で融着強度を算出した。結果を表1に示す。
F=W/S ・・・(1)
S=3.14×d×L ・・・(2)
[式(1)及び(2)中、Fは融着強度(MPa)であり、Wは最大荷重(N)であり、Sは融着面積(cm2)であり、dは内層26の平均外径(cm)であり、Lは管軸方向の試験片長さ(cm)である]
得られた配管材の外観を観察し、反りや中間層と表層との剥離のいずれかがあり、その程度が著しいものを「×」とし、反りや中間層と表層との剥離のいずれかがあるが、その程度が許容できるものを「△」とし、いずれもないものを「○」とした。結果を表1に示す。
図9に示す耐火試験炉100を用意した。耐火試験炉100は、上方以外は密閉された加熱室110と、加熱室110の上に設置された試験用の床スラブ120と、加熱室110内に設けられて火炎を生じさせるバーナー130と、加熱室110内の温度を測定する熱電対140とを備える。床スラブ120としては、直径260mmの区画貫通部120aが形成された100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。熱電対140は、加熱室110内の配管材20(第1の立管用パイプ21)の下端付近の温度を測定できるように配置した。また、管継手10と区画貫通部120aの内側面との間にはモルタル3を充填して区画貫通部120aを密閉した。
この耐火試験炉100に、上記のように作製した管継手10及び配管材20を用い、上記実施形態と同様の配置で配管構造体1を設置した。
そして、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)をおこなった。この耐火試験では、加熱開始後、管継手10と区画貫通部120aとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従い、発煙時間が120分以上の場合を耐火性有りとし、120分未満の場合を耐火性無しとする。
実施例1の配管構造体について前記耐火試験をおこなったところ、加熱開始から120分を超えても、管継手10と区画貫通部120aとの間から煙が流出することがなく、耐火性を有していた。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛の量を16質量部とし、表層及び内層を構成する樹脂組成物(B-2)に配合する安定剤をスズ系安定剤(日東化成株式会社製、AT-6300)2質量部とし、吸熱剤として水酸化アルミニウムを3質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例2の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例2の配管材は、成形性に優れ、耐火性を有していた。結果を表1に示す。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛の量を20質量部とし、表層と内層の厚さをそれぞれ1.3mmとしたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例3の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例3の配管材は、成形性に優れ、耐火性を有していた。結果を表1に示す。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛として、特許第5130295号の実施例2に記載の方法により作成した熱膨張性黒鉛A(膨張開始温度280℃、平均アスペクト比17.9)を18質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例4の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例4の配管材は、成形性に優れ、耐火性を有していた。結果を表2に示す。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛として、特許第5084930号の実施例2に記載の方法により作成した熱膨張性黒鉛B(膨張開始温度290℃、平均アスペクト比14.1)を18質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例5の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例5の配管材は、成形性に優れ、耐火性を有していた。結果を表2に示す。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛の量を20質量部とし、鉛系安定剤の量を4質量部とし、表層と内層の厚さをそれぞれ1.3mmとし、配管材を作製する際の第2押出機における樹脂温度を200℃とし、金型における成形温度を225℃としたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例6の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例6の配管材は、成形性に優れ、耐火性を有していた。結果を表2に示す。
管継手を構成する樹脂組成物(A-1)に配合する吸熱剤の量を0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして管継手を作製した。さらに、配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する水酸化アルミニウムの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。この管継手と配管材を用いたこと以外は実施例1と同様にして耐火性評価を実施した。実施例7の管継手は、変形しにくく、耐火性を有していた。結果を表3に示す。
また、実施例7の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価を実施した。実施例7の配管材は、成形性に優れていた。結果を表3に示す。
管継手を構成する樹脂組成物(A-1)に配合する吸熱剤として水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、キスマ8、体積平均粒子径:1.5μm、BET比表面積:3.1m2/g)を2質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして管継手を作製した。さらに、配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する水酸化アルミニウムの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。この管継手と配管材を用いたこと以外は実施例1と同様にして耐火性評価を実施した。実施例8の管継手は、変形しにくく、耐火性を有していた。結果を表3に示す。
また、実施例8の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価を実施した。実施例8の配管材は、成形性に優れていた。結果を表3に示す。
管継手を構成する樹脂組成物(A-1)に配合する吸熱剤としてカオリナイト(BASF社製、ASP-900、体積平均粒子径:1.5μm、BET比表面積:12.2m2/g)3質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして管継手を作製した。さらに、配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する水酸化アルミニウムの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。この管継手と配管材を用いたこと以外は実施例1と同様にして耐火性評価を実施した。実施例9の管継手は、変形しにくく、耐火性を有していた。結果を表3に示す。
また、実施例9の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価を実施した。実施例9の配管材は、成形性に優れていた。結果を表3に示す。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛として、特許第5130295号の実施例5に記載の方法により作成した熱膨張性黒鉛C(膨張開始温度275℃、平均アスペクト比33.1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例10の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例10の配管材は、耐火性を有していた。結果を表4に示す。
配管材を作製する際の第2押出機における樹脂温度を145℃とし、金型における成形温度を170℃としたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。実施例11の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。実施例11の配管材は、耐火性を有していた。結果を表4に示す。
樹脂組成物(A)に水酸化マグネシウムを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして管継手を作製した。この管継手を用いたこと以外は実施例1と同様にして耐火性評価を実施したところ、加熱開始から120分未満で管継手が変形し、管継手10と区画貫通部120aとの間に隙間が形成され、その隙間から煙が流出した。すなわち、比較例1の配管構造体では耐火性を充分に発揮することができなかった。
また、比較例1の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価を実施した。比較例1の配管材は、成形性に優れていた。結果を表5に示す。
配管材の中間層を構成する樹脂組成物(B-1)に配合する熱膨張性黒鉛として、熱膨張性黒鉛D(東ソ一株式会社製、GREP-EG、膨張開始温度220℃、アスペクト比18.2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして配管材を作製した。比較例2の配管材について、上記の方法で実施例1と同様にして線膨張係数を測定し、融着強度を算出し、成形性評価及び耐火性評価を実施した。比較例2の配管材は、耐火性及び成形性を充分に発揮することができなかった。結果を表5に示す。
2 床スラブ
2a 区画貫通部
3 モルタル
4 床材
10 管継手
10a 上部管継手
10b 下部管継手
11 本管部
11a,11b 受口
12 横枝管接続部
12a 受口
13a,13b 受口
20 配管材
21 第1の立管用パイプ(配管材)
22 第2の立管用パイプ(配管材)
23 横枝管用パイプ(配管材)
Claims (4)
- 受口を備えた透明な管継手と、配管材とを備え、床スラブの区画貫通部内で前記受口と前記配管材とが接続されている配管構造体であって、
前記管継手は、ポリ塩化ビニル系樹脂と吸熱剤とスズ系安定剤を含む樹脂組成物(A)を含有し(ただし、炭酸カルシウムを含むものを除く)、
前記樹脂組成物(A)における前記吸熱剤の含有量が、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
前記樹脂組成物(A)における前記吸熱剤が、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物及びハイドロタルサイトから選択される1種以上の加熱脱水型化合物であり、
前記配管材は、少なくとも表層と中間層と内層とを有する複層構造とされ、
前記表層及び前記内層はポリ塩化ビニル系樹脂を含有し、
前記中間層は、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張開始温度が240℃以上である熱膨張性黒鉛とを含む樹脂組成物(B)を含有する、配管構造体。 - 前記管継手と前記配管材とは、発光剤が添加された接着剤で接合されている、請求項1に記載の配管構造体。
- 前記中間層における前記熱膨張性黒鉛の含有量が、前記中間層のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して10.0質量部超28.0質量部以下であり、
前記熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が20未満である、請求項1又は2に記載の配管構造体。 - 請求項1に記載の配管構造体用の管継手を製造する方法であって、
ポリ塩化ビニル系樹脂と、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物及びハイドロタルサイトから選択される1種以上の加熱脱水型化合物であり、体積平均粒子径が0.01μm以上20μm以下である吸熱剤と、スズ系安定剤と、を含む樹脂組成物を射出成形して製造され、
前記樹脂組成物における前記吸熱剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
前記樹脂組成物における前記スズ系安定剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5.0質量部以下である、配管構造体用の管継手の製造方法。
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