JP2021167659A - 配管材、配管構造体及び配管材の製造方法 - Google Patents

配管材、配管構造体及び配管材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021167659A
JP2021167659A JP2020082170A JP2020082170A JP2021167659A JP 2021167659 A JP2021167659 A JP 2021167659A JP 2020082170 A JP2020082170 A JP 2020082170A JP 2020082170 A JP2020082170 A JP 2020082170A JP 2021167659 A JP2021167659 A JP 2021167659A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piping material
layer
piping
pipe
heat
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020082170A
Other languages
English (en)
Inventor
総 齋藤
Satoshi Saito
英治 木村
Eiji Kimura
斉太 渕上
Saita Fuchigami
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sekisui Chemical Co Ltd filed Critical Sekisui Chemical Co Ltd
Publication of JP2021167659A publication Critical patent/JP2021167659A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Rigid Pipes And Flexible Pipes (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Sink And Installation For Waste Water (AREA)

Abstract

【課題】耐火性能に優れ、かつ破損しにくい、配管材。【解決手段】管状の周壁を備え、前記周壁は、熱可塑性樹脂100質量部と、鱗片状の熱膨張性黒鉛3質量部以上20質量部以下とを含有する管状の耐火層を有し、JIS K 6741:2016で規定する偏平試験に基づいて測定される圧縮率が20%以上であることよりなる。前記耐火層の内周面及び外周面の少なくとも一方に位置し、前記耐火層を被覆する被覆層を備えることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、集合住宅等の建物の内部に設置される配管材、配管構造体及び配管材の製造方法に関する。
集合住宅等の建物においては、隣接する上下の階が床スラブによって仕切られ、各階では隣接する2つの部屋が壁によって仕切られて区画化されている。建物の内部には、排水又は給水するための配管構造体が設置され、床スラブ及び壁には配管構造体が通される貫通孔(本明細書では、この貫通孔のことを区画貫通部という。)が形成されている。
床スラブの区画貫通部に通される配管構造体としては、例えば、床スラブに対して下階にて鉛直方向に設置された第1の立管用パイプ(配管材)と、床スラブに対して上階に鉛直方向に設置された第2の立管用パイプ(配管材)と、床スラブの上側に設置された横枝管用パイプ(配管材)と、各パイプを接続する受口が設けられた三方管継手とを備えるものが挙げられる。このような配管構造体においては、第1の立管用パイプの上端部が、床スラブに形成された区画貫通部内にて管継手の受口に接続される。また、区画貫通部の内側面と管継手との間にはモルタル等のシーリング材が充填されて、区画貫通部の内側面と管継手との間の隙間が埋められている。
火災が発生している階から、区画貫通部を通して、上の階に炎、熱及び煙が上昇するのを防ぐために、通常、配管構造体においては、火災の際に区画貫通部にて遮炎、遮熱及び遮煙する耐火対策が施されている。消防法、建築基準法において、耐火対策が施された区画(防火区画)を貫通する配管には、耐火性を付与することが求められている。
配管構造体における耐火対策としては、区画貫通部に挿入される配管材に熱膨張性黒鉛を含有させる方法が知られている。
例えば、特定の膨張温度の熱膨張性黒鉛を特定量含有する耐火層と、耐火層の内周面及び外周面に位置する被覆層とを有する配管材が提案されている(特許文献1)。特許文献1の発明によれば、火災が発生して熱が上昇した際に、その熱によって配管材が膨張して区画貫通部を閉塞させることができる。そのため、炎、熱及び煙が区画貫通部を通して上昇することを防ぐことができる。
また、特定量の熱膨張性黒鉛と特定量のリン酸亜鉛とを含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の耐火層を有する単層又は複層の配管材が提案されている(特許文献2)。特許文献2の発明によれば、耐火性能のさらなる向上が図られている。
特許第4960806号公報 特開2018−54045号公報
しかしながら、耐火層が熱膨張性黒鉛を含有すると、配管材の圧縮強度が低下して、破損しやすいという問題があった。この問題は、耐火層の内周面及び外周面の少なくとも一方に被覆層を有する場合に、より顕著である。
そこで、本発明は、耐火性能に優れ、かつ破損しにくい配管材を目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
<1>管状の周壁を備え、
前記周壁は、熱可塑性樹脂100質量部と、鱗片状の熱膨張性黒鉛3質量部以上20質量部以下とを含有する管状の耐火層を有し、
JIS K 6741:2016で規定する偏平試験に基づいて測定される圧縮率が20%以上である、配管材。
<2>前記耐火層の内周面及び外周面の少なくとも一方に位置し、前記耐火層を被覆する被覆層を備える、<1>に記載の配管材。
<3>前記耐火層と、前記被覆層との融着強度が1.5MPa以上である、<2>に記載の配管材。
<4>前記耐火層は、管軸方向に延びるウェルドラインを有する、<1>〜<3>のいずれかに記載の配管材。
<5>前記周壁の熱伝導率が0.3W/m・K以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載の配管材。
<6>前記耐火層が難燃剤を含有する、<1>〜<5>のいずれかに記載の配管材。
<7><1>〜<6>のいずれかに記載の配管材と、上部管継手及び下部管継手とが予め接合された配管構造体であって、
前記上部管継手は、前記配管材の上端と接続される接続部を備え、
前記下部管継手は、前記配管材の下端と接続される接続部を備え、
前記配管構造体を設置したとき、少なくとも前記配管材が床スラブの区画貫通部内に位置し、かつ、前記配管材は、床スラブから下方に突出している、配管構造体。
<8>管状の耐火層と、前記耐火層の内周面に位置する内側被覆層とを少なくとも有する複層構造とされた配管材の製造方法であって、
前記内側被覆層はポリ塩化ビニル樹脂を含み、
前記耐火層は、ポリ塩化ビニル樹脂と鱗片状の熱膨張性黒鉛とを含み、
前記耐火層及び前記内側被覆層を押出用金型で積層して押出した後、サイジングスリーブへ導入して外面を賦形する、配管材の製造方法。
本発明の配管材は、耐火性能に優れ、かつ破損しにくい。
本発明の配管構造体の一実施形態を示す断面図である。 三層構造の配管材を製造する製造装置の一例を示す概略構成図である。 図2の製造装置に備わる金型の一例を示す断面図である。 図3の金型の端面図である。 図2の製造装置に備わる真空サイジング装置の一例を示す模式図である。 (a)は管継手の受口に挿入される配管材(パイプ)の端部の状態の一例を模式的に示す部分断面図であり、(b)は管継手の受口に挿入される配管材(パイプ)の端部の状態の他の例を模式的に示す部分断面図である。 図1の配管構造体において、建物内に火災が発生したときの状態を示す断面図である。 本発明の配管構造体の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の配管構造体の他の実施形態を示す断面図である。 実施例及び比較例の評価で使用した万能試験機を示す断面図である。 実施例及び比較例の評価で使用した耐火試験炉を示す断面図である。
本発明の配管構造体の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の配管構造体1は、排水路として使用され、管継手10と配管材20とを備える。本実施形態の配管構造体1は、隣接する上下の階を区画する床スラブ2に形成された区画貫通部2aに通されて設置される。配管構造体1と区画貫通部2aの内側面との間にはモルタル3が充填されて、区画貫通部2aの内側面と管継手10との間の隙間が埋められていると共に、配管構造体1を固定している。
(管継手)
本実施形態における管継手10は、本管部11と、本管部11に設けられた横枝管接続部12とを備える。
本管部11の両端には、配管材20(後述する第1の立管用パイプ21及び第2の立管用パイプ22)を接続するための受口11a,11bが設けられ、横枝管接続部12の端部には、配管材20(後述する横枝管用パイプ23)を接続するための受口12aが設けられている。受口11aの内周面は、配管材20(第1の立管用パイプ21)の外周面が密着する内径とされており、受口11bの内周面は、配管材20(第2の立管用パイプ22)の外周面が密着する内径とされており、受口12aの内周面は、配管材20(横枝管用パイプ23)の外周面が密着する内径とされている。
本実施形態において、本管部11は直線状の管からなる。横枝管接続部12は、その内部を流れる排水の流れを円滑にするために、本管部11の近傍が受口11a側に湾曲した形状にされている。
各受口11a,11b,12aの内周面には、パイプ21,22,23の外周面に密着して水密にするパッキンが取り付けられてもよい。
管継手10は、熱可塑性樹脂と難燃剤とを含む樹脂組成物(A)を含有する。即ち、管継手10は、樹脂組成物(A)を成形することによって作製される。通常、管継手10は、樹脂組成物(A)を射出成形することによって作製される。
管継手10は、管継手10の全体が樹脂組成物(A)からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物(A)から形成されていればよい。例えば、管継手10が、表層と中間層と内層とからなる三層構造である場合には、中間層が樹脂組成物(A)から形成されたものが挙げられる。
管継手10を構成する樹脂組成物(A)は熱膨張性黒鉛を含有しないことが好ましい。
[樹脂組成物(A)]
樹脂組成物(A)に含まれる熱可塑性樹脂としては、結晶性樹脂、非晶性樹脂が挙げられる。結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。非晶性樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。接着剤による接合が可能なことから、熱可塑性樹脂としては、非晶性樹脂が好ましい。加えて、難燃性の観点から、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂がより好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂はさらに塩素化されてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩化ビニルモノマーをグラフト共重合する重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらの重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は架橋されていてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋方法としては、例えば、架橋剤及び過酸化物を添加する方法、電子線を照射する方法、水架橋性材料を使用する方法等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上1600以下であることが好ましく、600以上1400以下であることがより好ましい。ここで、平均重合度は、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721:1999「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度である。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が前記下限値以上であれば、機械的強度を充分に高めることができ、前記上限値以下であれば、充分な成形性を確保できる。
樹脂組成物(A)に含まれる難燃剤は、加熱された際に吸熱作用を有して温度上昇を抑制する化合物や、加熱により融解して酸素の供給や燃焼性ガスの発生を抑える化合物である。例えば、加熱された際に脱水反応等の吸熱反応が生じる化合物を難燃剤として吸熱剤を使用できる。
吸熱剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物(カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト)やハイドロタルサルサイト等の無機水酸化物、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト等の吸水作用のある無機化合物が挙げられる。以下、加熱された際に脱水反応が生じる無機水酸化物や無機化合物のことを総称して「加熱脱水型化合物」と表記する。加熱脱水型化合物では、脱水反応によって生じた水の蒸発潜熱によっても温度上昇を抑制することができる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化マグネシウムは、脱水反応が300℃以上で生じるため、難燃剤として水酸化マグネシウムを用いた場合には、樹脂組成物(A)を成形して管継手10を作製する際に脱水反応が生じることを抑制できる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化アルミニウムは、脱水反応が200℃程度で生じるため、難燃剤として水酸化アルミニウムを用いた場合には、火災の際に管継手10に伝わった熱を早めに吸熱することができる。そのため、配管材20(第1の立管用パイプ21)が熱膨張する前に管継手10が変形して耐火性を損なうことをより抑制できる。
加熱脱水型化合物のうちハイドロタルサイトは化学名をマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレートと言い、MgAl(OH)16CO・4HO等に代表される鉱物の一種であり、正に帯電した基本層[Mg1−xAl(OH)x+と負に帯電した中間層[(COx/2・mHO]x−からなる層状の無機化合物である。多くの2価、3価の金属がこれと同様の層状構造をとり、これらは次のような一般式で表される。
[M2+ 1−x3+ (OH)x+[An− x/n・mHO]x−
2+:Mg2+, Zn2+等の2価金属イオン
3+:Al3+, Fe3+等の3価金属イオン
n− :CO 2−, Cl, NO 等のn価アニオン
X:0<X≦0.33
ハイドロタルサイトは、分子間に有している結晶水が約180℃から脱水を開始し、その結晶水は約300℃で完全に脱離する。この状態までは合成ハイドロタルサイトは結晶構造を保持しているが、約350℃を超えると結晶構造が崩壊し始め、水と二酸化炭素を放出する。そして、合成ハイドロタルサイトは、塩化ビニル系樹脂の熱分解温度である約200℃以上300℃以下よりも60℃以上75℃以下低い温度で吸熱分解を開始するため、塩化ビニル系樹脂の熱分解をハイドロタルサイトの吸熱分解で効率的に抑制することができる。
難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物又はハイドロタルサイトの少なくとも2種を併用してもよい。
前記加熱脱水型化合物は、通常、粒子状である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径は0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.05μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上1μm以下がさらに好ましい。加熱脱水型化合物の体積平均粒子径をこの範囲とすることで、管継手10に透明性を付与したり、加熱脱水型化合物の分散性を向上させることができる。体積平均粒子径は、レーザ回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
加熱脱水型化合物のBET比表面積は1m/g以上40m/g以下であることが好ましく、1m/g以上20m/g以下であることが好ましい。ここで、BET比表面積は、窒素吸着を利用して求めた値である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径及びBET比表面積が前記範囲であれば、難燃剤としての効果を充分に発揮でき、また、管継手10を作製する際の樹脂組成物(A)の成形性及び管継手10の機械的物性を充分に確保できる。
加熱脱水型化合物は、その粒子表面がステアリン酸等の高級脂肪酸や、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤により表面処理された加熱脱水型化合物は、熱可塑性樹脂に対する分散性が高くなり、吸熱性の効果をより発揮しやすくなる。また、加熱脱水型化合物が塩基性の場合には、熱可塑性樹脂をヤケにくくし、黄変を防止することができる。
加熱脱水型化合物を表面処理剤により表面処理する場合、表面処理剤の量は加熱脱水型化合物100質量部に対して0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。表面処理剤の量が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂に対する加熱脱水型化合物の分散性を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、経済性の低下を抑制できる。
吸熱剤以外の難燃剤としては、ハイドロタルサイト、酸化アンチモン、モリブデン化合物、臭素系化合物、リン系化合物、ホウ酸系化合物が挙げられる。
酸化アンチモンとしては、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。
モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等が挙げられる。
臭素性化合物としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等が挙げられる。
リン系化合物としては、赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ酸系化合物としては、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。
難燃剤の中でも、ポリ塩化ビニル樹脂の燃焼抑制効果が高いことから、リン化合物、三酸化アンチモンが好ましい。
これらの難燃剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
樹脂組成物(A)における難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物(A)における難燃剤の含有量が前記下限値以上であれば、火災発生の際に管継手10の変形をより抑制できる。難燃剤の含有量が前記上限値以下であれば、管継手10を作製する際の成形性を充分に高くでき、また、管継手10の機械的物性を良好にできる。
また、樹脂組成物(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、熱安定化助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が含まれてもよい。
後述する各添加剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
内部滑剤としては、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。
外部滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。
加工助剤としては、例えば、質量平均分子量10万以上200万以下のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体が挙げられる。前記アルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体としては、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
衝撃改質剤としては、例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム等が挙げられる。
耐熱向上剤としては、例えばα−メチルスチレン系樹脂、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
熱安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、スズ系安定剤、Ca−Zn系安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。熱安定剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca−Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2−エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
これらの中でも、管継手10を透明にする場合にはスズ系安定剤又はCa−Zn系安定剤が好ましく、スズ系安定剤としてはマレート類、カルボキシレート類等の硫黄を含まないものが硫化汚染を防止するために特に好ましく、Ca−Zn系安定剤としては成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩であるものが特に好ましい。
熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。熱安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、成形時における熱可塑性樹脂の熱安定性を向上させることができ、前記上限値以下であれば、燃焼時において熱可塑性樹脂を充分に炭化させることができ、充分な耐火性能を得ることができる。
熱安定化助剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系顔料、クロム酸モリブデン系顔料、硫化物・セレン化物系顔料、フェロシアニン化物系顔料等の無機顔料が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。ただし、可塑剤は成形品の耐熱性及び耐火性を低下させる傾向があるため、可塑剤の使用量は少ないことが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
[管継手の製造方法]
管継手10の製造方法としては、従来公知の方法が挙げられ、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形が挙げられる。
(配管材)
本実施形態における配管材20は、第1の立管用パイプ21、第2の立管用パイプ22及び横枝管用パイプ23である。
第1の立管用パイプ21は、床スラブ2に対して下方に向って鉛直方向に配置され、その上端部が管継手10の下側の受口11aに接続されている。第1の立管用パイプ21の上端部は区画貫通部2a内に挿入されている。
第2の立管用パイプ22は、床スラブ2に対して上方に向って鉛直方向に配置され、その下端部が管継手10の上側の受口11bに接続されている。
横枝管用パイプ23は、その一端部が横枝管接続部12の受口12aに接続され、受口12aから離間するにつれて漸次高くなるように傾斜して配置されている。但し、横枝管用パイプ23の設置スペースは限られているから、横枝管用パイプ23の傾斜は僅かな傾斜角とされ、例えば、水平方向に対して10°以下の傾斜角である。
配管材20は、熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物(B)を含有する。即ち、配管材20は、樹脂組成物(B)を成形することによって作製され、熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する。通常、配管材20は、樹脂組成物(B)を押出成形することによって作製される。
配管材20は、配管材20の全体が樹脂組成物(B)からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。即ち、配管材20は、単層構造又は複層構造の管状の周壁からなる。
配管材20が複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物(B)から形成されていればよい。例えば、配管材20が、表層と中間層と内層とからなる三層構造である場合には、中間層が樹脂組成物(B)から形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は難燃剤を含有していてもよい。なお、表層は管状の中間層の外周面に位置し、内層は中間層の内周面に位置する。
中間層は熱膨張性黒鉛を含有するため黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
本実施形態において、中間層が耐火層である。また、本実施形態において、表層及び内層が被覆層であり、内層が内側被覆層である。
配管材20の大きさは、例えば、呼び径40(外径48mm)以上、呼び径300(外径318mm)以下とされる。本発明は、圧縮強度が高いので、破損しやすい中口径(呼び径65(外径76mm)以上、呼び径125(外径140mm)以下)の配管材で効果が顕著であり、大口径(呼び径150(外径165mm)以上、呼び径300(外径318mm)以下)の配管材での効果が特に顕著である。
SDR(外径/配管材の厚さ(肉厚))は、例えば、13以上35以下が好ましく、15以上33以下がより好ましく、17以上30以下がさらに好ましい。SDRが上記下限値以上であれば、熱膨張性黒鉛が配管材20の周方向に配向しやすくなり、圧縮強度をより高め、熱伝導率をより低められる。SDRが上記上限値以下であれば、肉厚が薄くなりすぎず、圧縮強度をより高め、耐火性をより高められる。
複層構造の場合、中間層は、発泡層でもよいし、非発泡層でもよい。中間層を発泡層とすることで、熱伝導率をより低められる。
中間層の厚さとしては、例えば呼び径100A(外径114mm)の場合、1.8mm以上7.6mm以下であることが好ましく、2.0mm以上6.0mm以下がより好ましく、2.5mm以上5.0mm以下がさらに好ましい。また、中間層の厚さは、配管材の厚さの85%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がより好ましい。中間層の厚さが上記範囲であれば、耐火性をより高め、圧縮強度をより高められる。
複層構造の場合、表層及び内層は、発泡層でもよいし、非発泡層でもよい。表層及び内層を非発泡層とすることで、配管材の強度をより高められる。
表層及び内層の厚さとしては、例えば呼び径100A(外径114mm)の場合、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下がより好ましい。被覆層の厚さが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
配管材20の圧縮率は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。圧縮率が上記下限値以上であれば、輸送時や配管時等に押しつぶされる力を受けても、破損しにくい。また、熱膨張性黒鉛が配管材20の周方向に配向しており、熱伝導率を低められる。配管材20の圧縮率の上限は、実質的に90%以下である。
配管材20の圧縮率は、JIS K 6741:2007の偏平試験によって測定される。配管材から50mm以上の環状試験片を切り取り、23℃下で1時間放置し、その後2枚の平板間に挟んで管軸に直角の方向に10mm/minの速さで管の外径を圧縮する。3つの環状試験片について、破壊された際の径方向の圧縮の程度を測定し、その平均値を圧縮率とする。例えば、外径が2/3になった時点で配管材が破壊されれば、外径の1/3の圧縮、即ち外径の33%が圧縮されたことになるので、圧縮率が33%となる。
配管材20の圧縮率は、熱膨張性黒鉛の量及びアスペクト比、難燃剤の種類等の組成面と、配管材におけるSDR、ウェルドラインの位置、配管材の層構成、各層の厚さ等の構造面の組み合わせにより調節できる。
配管材20の熱伝導率は、0.3W/m・K以下が好ましく、0.28W/m・K以下がより好ましく、0.25W/m・K以下がさらに好ましい。熱伝導率が上記上限値以下であれば、配管材20が結露しにくい。
なお、配管材20の熱伝導率は、JIS A1412−2:1999に従い、23℃の条件下で、配管材20の3か所の厚さ方向について測定した値である。
また、配管材20の熱抵抗値(厚さを熱伝導率で除した値)は、0.03mK/W以上が好ましく、0.04mK/W以上がより好ましい。
[樹脂組成物(B)]
樹脂組成物(B)に含まれる熱可塑性樹脂としては、樹脂組成物(A)に含まれる熱可塑性樹脂と同様のものを使用でき、難燃性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。
また、樹脂組成物(B)には、各種添加剤が含まれてもよい。添加剤は、樹脂組成物(A)に含まれてもよい添加剤と同様のものを使用できる。
樹脂組成物(B)に含まれる熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度は、200℃以上285℃以下が好ましく、210℃以上285℃以下がより好ましく、240℃以上285℃以下がさらに好ましい。後述するように、配管材20の製造方法は、樹脂組成物を金型で押し出して、管状に成形する。この際、樹脂組成物は、金型内で周方向に回り込むように流れる。このため、樹脂組成物が回り込んで、樹脂組成物同士が突き当たる位置には、配管材20の管軸方向に延びるウェルドラインが形成される。熱膨張開始温度が上記下限値以上であれば、配管材20の製造時に、金型で押し出す際の温度を高くできるため、ウェルドラインで密着して圧縮強度をより高められる。加えて、熱膨張開始温度が上記下限値以上であれば、配管材20の製造時において、熱膨張性黒鉛の膨張によるガス発生を抑制して、ウェルドラインで良好に密着して、圧縮強度をより高められる。
なお、熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度は、熱膨張性黒鉛を150℃から5℃/分の昇温速度で昇温させたときに、昇温開始前の体積の1.1倍以上に膨張したときの温度のことである。熱膨張性黒鉛の体積を計測する温度の間隔は特に制限されず、例えば、5℃温度上昇する毎に体積を計測すればよい。
前記下限値以上の熱膨張開始温度は、樹脂組成物(B)を成形して配管材20を作製する際の成形温度よりも充分に高くなる。そのため、熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度が前記下限値以上であることにより、樹脂組成物(B)を成形する際に熱膨張性黒鉛が膨張することを防止できる。
熱膨張性黒鉛は、鱗片状の黒鉛であり、偏平な平板状である。熱膨張性黒鉛が鱗片状であることで、加熱により充分に膨張できる。なお、鱗片状とは、薄片又は平板状であり、例えば、後述するアスペクト比が5以上である。
また、熱膨張性黒鉛は、1000℃における膨張度が180cm/g以上であることが好ましく、185cm/g以上であることがより好ましい。ここで、熱膨張性黒鉛の1000℃における膨張度は、熱膨張性黒鉛を1000℃で10秒間保持した後の、単位質量(g)あたりの体積(cm)のことである。
熱膨張性黒鉛の膨張度が前記下限値以上であれば、充分に膨張するから、火災の際に区画貫通部2aをより確実に閉塞できる。
熱膨張性黒鉛は1000℃における膨張度は、熱膨張性黒鉛の製造が容易になる点から、240cm/g以下であることが好ましい。
上記のような熱膨張性黒鉛は、グラファイトの粉末を無機酸と酸化剤とで処理することで得られる。この処理によって、グラファイトの層間に無機酸を挿入した結晶化合物を得ることができる。グラファイトの層間に無機酸を挿入した結晶化合物は熱膨張性を有する。
前記グラファイトとしては、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等が挙げられる。
前記無機酸としては、例えば、濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。
前記酸化剤としては、例えば、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
グラファイト粉末を前記無機酸と前記酸化剤とで処理した後には、酸性度を低下させるために中和処理を施してもよい。
熱膨張性黒鉛のpHは、2以上10以下が好ましく、2.5以上8以下がより好ましい。樹脂組成物(B)が、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の水酸化物イオンを有する吸熱剤を難燃剤として含有する場合、難燃剤の水酸化物イオンは、酸性物質と中和して水(中和水)を生じる。吸熱反応である水酸化物イオンの縮合反応に用いられる水酸化物イオンが成形時の中和反応により減少するため、火災時の吸熱量が低下する。加えて、中和水の気化により気泡を生じる場合がある。このため、熱膨張性黒鉛のpHが上記下限値以上とすることで、難燃剤との中和を抑制できる。熱膨張性黒鉛のpHが上記上限値以下であれば、熱膨張性黒鉛が中和されにくくなって、より良好に膨張する。
熱膨張性黒鉛のpHの調整方法としては特に限定されない。例えば、熱膨張性黒鉛を製造する際に、グラファイトの粉末を無機酸と酸化剤とで処理した後、水洗と乾燥とを繰り返して、熱膨張性黒鉛のpHを調整する方法が挙げられる。
熱膨張性黒鉛のpHは、以下の方法で測定される値である。
ビーカー中に、採取した5gの熱膨張性黒鉛とイオン交換水25mlとを入れて、黒鉛混合液を調製する。調製した黒鉛混合液を30秒間撹拌し、20分間放置した後、pH測定器(堀場製作所製「pH/ION METER F−23」)によって黒鉛混合液のpHを測定する。
熱膨張性黒鉛の平均粒子径は10μm以上1000μm以下であることが好ましく、100μm以上700μm以下であることがより好ましい。また、平均厚さが100μm以下であることが好ましい。
熱膨張性黒鉛の平均粒子径は、JIS Z8801−1の試験用篩により熱膨張性黒鉛を篩分けて求められる、体積基準の累積粒度分布における50%粒子径である。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、5以上40以下であり、10以上35以下が好ましく、20以上35以下がより好ましい。即ち、熱膨張性黒鉛は、平板状の薄片である。アスペクト比が上記下限値以上あれば、膨張度が低くなりやすい。アスペクト比が上記上限値以下であれば、熱伝導率をより低められる。加えて、アスペクト比が上記上限値以下であれば、配管材を多層構造とする場合に熱膨張性黒鉛を含む層と含まない層との線膨張係数の差を小さくすることができ、配管材内部の洗浄や高温排水の熱による収縮差等の影響により中間層と表層が剥離したり、成形後の表層と中間層の収縮の差が大きくなり配管材が反るといった成形上の不具合を抑制できる。
平板状の薄片である熱膨張性黒鉛は、配管材20の周方向に沿って配向する。ウェルドラインの位置では、熱膨張性黒鉛は、配管材20の径方向に配向しやすくなる。このため、ウェルドラインの位置では、熱膨張性黒鉛の平面同士が対向して、亀裂を生じやすくなる。アスペクト比が上記上限値以下であれば、ウェルドラインの位置で対抗する熱膨張性黒鉛の面積が小さくなり、圧縮強度を高められる。
なお、配管材20を構成する硬質ポリ塩化ビニル樹脂の線膨張係数はJIS K 7197:2012で規定される熱機械分析法(TMA法)により測定された値で7.0×10−5/℃であるが、本実施の形態の配管材は4.5×10−5/℃以上7.0×10−5/℃未満であり、5.0×10−5/℃以上7.0×10−5/℃未満が好ましく、5.5×10−5/℃以上6.8×10−5/℃未満がより好ましい。また、表層及び内層と中間層との線膨張係数の差は2.5×10−5/℃以下であり、2.0×10−5/℃以下が好ましく、1.0×10−5/℃以下がより好ましい。
さらに、配管材の表層及び内層と中間層との融着強度は、1.5MPa以上が好ましく、2.0MPa以上がより好ましい。融着強度が高いほど、配管材の圧縮強度を高めやすい。表層及び内層と中間層との融着強度は、熱膨張性黒鉛のアスペクト比、熱膨張性黒鉛の量、後述する製造方法におけるサイジング装置内の真空度の組み合わせにより、調節できる。
平均アスペクト比は、厚さに対する平面視最長部長さの割合である。本発明に使用する熱膨張性黒鉛は概ね平板状をしているため、厚さ方向を鉛直方向とし、径方向を水平方向と見なした場合、水平方向の最大寸法を鉛直方向の厚さで除した値をアスペクト比とする。
そして、充分大きな数、即ち少なくとも10個以上の黒鉛片につきアスペクト比を測定し、その平均値を平均アスペクト比とする。より具体的には、FE−SEMを用いて熱膨張性黒鉛を観察し、その画像を画像処理ソフトウェア(アドビシステムズインコーポレーテッド社製「Photoshop(登録商標)」)に読み込み、測長ツールにて最大寸法及び厚さを測長する。最大寸法については、樹脂組成物に添加する前の黒鉛粒子を測定する場合には、黒鉛粒子に外接する四角形の最大辺とする。樹脂組成物に添加した後の黒鉛粒子の最大寸法を測定する場合には、配管材20を切断して断面を観察して長辺を最大寸法とするか、配管材20から黒鉛粒子を抽出し、抽出された黒鉛粒子に外接する四角形の最大辺とする。なお、FE−SEM画像中のスケールバーを同様にして測長することで具体的な寸法を測定することができる。
熱膨張性黒鉛の水平方向における最大寸法及び薄片化黒鉛の厚さは、例えば電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定することができる。
樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して3.0質量部以上20.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以上18.0質量部以下がより好ましく、4.0質量部以上15.0質量部以下がさらに好ましく、4.0質量部以上10.0質量部未満が特に好ましい。樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量が前記下限値以上であれば、火災発生の際に配管材20(特に第1の立管用パイプ21)を充分に膨張させることができ、区画貫通部2aにおける耐火性をより向上させることができる。一方、樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量が前記上限値以下であれば、配管材20が過度に膨張することによって配管材20が壊れて耐火性が低下することを防止できる。加えて、樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量が上記上限値以下であれば、配管材20の熱伝導率を低くし、耐圧強度及び圧縮強度をより高められる。
また、樹脂組成物(B)は、熱膨張性黒鉛に加えて、難燃剤を含有することが好ましい。樹脂組成物(B)における難燃剤は、樹脂組成物(A)における難燃剤と同様のものを用いることができる。樹脂組成物(B)における難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の加熱脱水型化合物や、モリブデン化合物、臭素系化合物、リン系化合物、ホウ酸系化合物が好ましい。これらの難燃剤が含まれる場合には、配管材20の耐火性能をより向上させることができる。
樹脂組成物(B)中の難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下より好ましい。
また、難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂に含まれる熱膨張性黒鉛100質量部に対して、13質量部以上215質量部以下が好ましく、13質量部以上190質量部以下がより好ましく、17質量部以上130質量部以下がさらに好ましく、40質量部以上120質量部以下が最も好ましい。
難燃剤の含有量が前記下限値以上であれば、耐火性をより高められ、前記上限値以下であれば、配管材20の機械的強度を充分に高くできる。
特に、難燃剤の一部又は全部がリン系化合物である場合、機械的強度が低下しやすいため、リン系化合物の含有量は、熱可塑性樹脂に含まれる熱膨張性黒鉛100質量部に対して、1質量部以上200質量部未満が好ましく、13質量部以上150質量部以下がより好ましい。
難燃剤の体積平均粒子径は、0.2μm以上100μm以下が好ましく、0.4μm以上50μm以下がより好ましい。難燃剤の体積平均粒子径は、光散乱粒度計(光散乱粒度計DLS−7000:大塚電子(株)製)にて測定した値である。
樹脂組成物(B)が難燃剤を含有する場合、熱膨張性黒鉛の平均粒子径αと難燃剤の体積平均粒子径βとの比(β/α比)は、0.0015以上0.0065以下が好ましく、0.002以上0.006以下がより好ましい。難燃剤は、熱膨張性黒鉛同士における熱的な橋渡しをする。β/α比が上記範囲内であれば、上記の熱的な橋渡しを防ぎ、熱伝導率をより低められる。
樹脂組成物(B)は、熱安定剤を含有してもよい。熱安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、スズ系安定剤、Ca−Zn系安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。熱安定剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca−Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2−エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。熱安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、成形時における熱可塑性樹脂の熱安定性を向上させることができ、前記下限値以下であれば、燃焼時において熱可塑性樹脂を充分に炭化させることができ、充分な耐火性能を得ることができる。
樹脂組成物(B)には、熱膨張性黒鉛に加えて、無機充填剤が含まれることが好ましい。
無機充填剤としては、前記難燃剤以外の無機化合物、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、リン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。前記無機充填剤のうち、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉄等の塩基性無機充填剤が好ましい。
前記無機充填剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機充填剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.3質量部以上50.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。無機充填剤の含有量が前記下限値以上であれば、耐火性をより高めることができ、前記上限値以下であれば、配管材20の機械的強度を充分に高いものにすることができる。
特に、熱膨張性黒鉛としてpHが1.5以上4.0以下に調整されたものを用いる場合には、樹脂組成物(B)には、前記塩基性無機充填剤が、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5.0質量部以下の割合で含まれることが好ましい。塩基性無機充填剤の含有割合が前記下限値以上であれば、樹脂組成物(B)を成形して配管材20を作製する熱安定性が高くなり、成形時の炭化物発生を防止でき、前記上限値以下であれば、火災発生時の熱可塑性樹脂を充分に炭化させることができ、耐火性をより向上させることができる。
[配管材の製造方法]
表層と中間層と内層とからなる三層構造の配管材は、例えば図2に示す製造装置60を用いて製造される。
この例の製造装置60は、第1押出成形機61と、第2押出成形機62と、真空サイジング装置63と、引取機64と、切断機65とを備える。
第1押出成形機61は、ホッパ66から供給された樹脂組成物を混練・加熱溶融して押し出すための第1押出機68を備える。第2押出成形機62は、ホッパ67から供給された樹脂組成物を混練・加熱溶融して押し出すための第2押出機69を備える。第1押出機68及び第2押出機69の出口には金型70が取り付けられている。第1押出成形機61のホッパ66には、配管材の表層及び内層を構成する樹脂組成物(B−2)が供給される。第2押出成形機62のホッパ67には、中間層を構成する樹脂組成物(B−1)が供給される。少なくとも樹脂組成物(B−1)には、熱可塑性樹脂及び熱膨張性黒鉛が含まれていることが好ましい。
図3に示すように、金型70は三層押出用金型であり、合流部71及び成形部72を含む。合流部71において、第1押出機68から導入された溶融樹脂(溶融した樹脂組成物(B−2))73と、第2押出機69から導入された溶融樹脂(溶融した樹脂組成物(B−1))74とが合流し、これらが合流部71の出口近傍で積層される。
金型70内での溶融樹脂73,74の挙動について、説明する。
図4の(a)〜(g)は、それぞれ図3の(a)〜(g)の位置での端面図である。
図3に示すように溶融樹脂73は、金型70の内部で溶融樹脂73a,73bに分岐する。図4(a)〜(e)のように、中間層を形成する溶融樹脂74は、内層を形成する溶融樹脂73aを囲むように、U字状(図4(a))、C字状(図4(b)〜(d))、O字状(図4(e))に徐々に変化して、断面円環状に成形される。図4(e)のように、溶融樹脂74は、溶融樹脂74の端部が突き合わされる位置L1で、中間層のウェルドラインが形成される。中間層のウェルドラインは、配管材20の管軸方向に延びる。
図4(c)〜(f)のように、溶融樹脂73aは、円環状の溶融樹脂74の内側で、円形(図4(c))、U字状(図4(e))、C字状(図4(f))、O字状(図4(g))に徐々に変化して、断面円環状に成形される。また、溶融樹脂73bは、円環状の溶融樹脂74の外側でU字状(図4(e))、C字状(図4(f))、O字状(図4(g))に徐々に変化して、溶融樹脂74を囲む断面円環状に成形される。図4(g)のように、溶融樹脂73aの端部が突き合わされた位置L2で、内層のウェルドラインが形成される。また、図4(g)のように、溶融樹脂73bの端部が突き合わされた位置L3で、表層のウェルドラインが形成される。内層及び表層のウェルドラインは、配管材20の管軸方向に延びる。
本実施形態において、中間層のウェルドラインと、内層及び表層のウェルドラインとは、管軸O1に対して反対側に形成される。このように、中間層のウェルドラインと、内層及び表層のウェルドラインとが異なる位置に形成されることで、配管材の圧縮強度をより高められる。配管材20の断面(管軸に直交する断面)において、中間層のウェルドラインと、内層又は表層のウェルドラインとが、管軸を回転中心として45°回転した範囲内の領域に位置していないことが好ましい。即ち、図4(g)中の領域q1及び領域q2に位置L2及びL3が位置しないことが好ましい。図4(g)中、領域q1は、中間層のウェルドラインの位置L1と管軸O1とを結ぶ線Qに対し、管軸O1を回転軸として半時計回りに45°回転した直線Q1までの領域である。図4(g)中、領域q2は、中間層のウェルドラインの位置L1と管軸O1とを結ぶ線Qに対し、管軸O1を回転軸として時計回りに45°回転した直線Q2までの領域である。
図4(g)のように積層された溶融樹脂73,74は、成形部72において積層された状態で拡径されて管状となる。そして、成形部72の先端部に設けられたダイリング75及びマンドレル76によって、外周及び内周がある程度適切なサイズに規制され、連続された配管材(以下、「連続管」という。)77として押し出される。
このとき、金型70は成形温度(成形時の樹脂温度)が175℃以上240℃未満となるように調整されることが好ましい。成形温度は、180℃以上235℃以下がより好ましく、185℃以上230℃以下がさらに好ましく、190℃以上225℃以下が特に好ましい。成形温度を上記範囲内とすることで、良好な混練状態となった熱膨張性黒鉛を含む中間層と、表層及び内層との密着性を向上させることができる。
成形温度が170℃未満であると、熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物(B−1)の混練状態が悪く金型70内での流動性が低下して成型しにくくなる。成形温度が240℃を超えると、金型70内で樹脂組成物(B−1)に含まれる熱膨性張黒鉛が膨張してしまう。
また、成形温度は、第1押出成形機61及び第2押出成形機62から金型70にかけて徐々に高温になるように調整されることが好ましい。具体的には、第1押出機68及び第2押出機69と金型70の接続部分における樹脂温度は一般的な配管材の樹脂温度よりも高く設定され、150℃以上、金型温度以下が好ましく、170℃以上、金型温度以下がより好ましい。第1押出機68と第2押出機69における樹脂温度は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物(B−1)を混練する第2押出成形機62における樹脂温度を、第1押出成形機61における樹脂温度よりも高くすることで、樹脂の流動性を高めて混練しやすくなり、金型70における合流部71への樹脂の供給が容易となる。
なお、第1押出機68における樹脂温度と第2押出機69における樹脂温度とが異なる場合、熱安定性の向上のため、温度が高い方の樹脂には熱安定剤を多く配合しておくことが好ましい。
次に、金型70から押し出された連続管77は真空サイジング装置63へと導入される。真空サイジング装置63は、連続管77の外面を賦形すると共に、これを冷却するためのものである。図5に示すように、真空サイジング装置63は、連続管77の押出方向に延びる本体78を備える。本体78の長手方向の一端及び他端には本体78の入口79及び出口80が形成されている。本体78内の入口79側には真空ポンプ81が接続された真空室82が設けられている。真空室82内にはサイジングスリーブ83が配置されている。サイジングスリーブ83の一端は入口79に接続されている。また、真空室82と出口80との間に冷却室84が設けられ、真空室82及び冷却室84の全長にわたって散水パイプ85が配置される。
連続管77が真空サイジング装置63に供給されると、真空ポンプ81の負圧により連続管77が膨張し、その外面がサイジングスリーブ83の内面に密着されることにより賦形され、連続管77の表層及び内層と中間層とが密着される。また、サイジングされた連続管77は、散水パイプ85から散水される冷却水により冷却されて硬化される。
真空サイジング装置63の内部は、−1KPa(ゲージ圧)以下の真空度とすることが好ましく、−10KPa(ゲージ圧)以下の真空度とすることがより好ましく、−20KPa(ゲージ圧)以下の真空度とすることがさらに好ましい。真空度が上記上限値以下であれば、配管材に対する厚さ方向及び周方向の押圧力が高まり、中間層と、内層及び表層との融着強度をさらに高められる。
なお、この真空サイジング装置63に替えて、冷却水が溜められた冷却水槽を用いてもよく、冷却水槽の入口にはサイジングスリーブが設けられたものを用いることができる。
引取機64は、連続管77を一定の速さで引き取るためのものである。引取機64は、連続管77の下部及び上部に押圧される複数の引取ローラ86を備える。引取ローラ86の少なくとも一つには図示しないモータが接続され、モータの回転数を制御することによって連続管77の引き取り速度が調整される。
切断機65は、連続管77を所定長さに切断するためのものである。切断機65は、連続管77の先端位置を検出するセンサ87と、センサ87に連動して駆動される切断刃88とを備える。連続管77の先端がセンサ87を押すと、切断刃88が駆動されて連続管77が切断され、所定の長さの配管材が得られる。
(配管構造体の設置例及び作用効果)
本実施形態の配管構造体1では、区画貫通部2aの内部に、管継手10を構成する本管部11の一方の受口11aが配置され、その受口11aに第1の立管用パイプ21の上端部が接続されている。
また、本実施形態の配管構造体1では、区画貫通部2aの外部且つ床スラブ2の上側に、本管部11の他方の受口11bが配置され、その受口11bに第2の立管用パイプ22の下端部が接続されている。また、区画貫通部2aの外部且つ床スラブ2の上側に、横枝管接続部12の受口12aが配置され、その受口12aに横枝管用パイプ23の一端部が接続されている。
各受口11a,11b,12aと各パイプ21,22,23との接続方法は特に制限されず、公知の方法を適宜適用でき、各受口の内部に設けられたパッキンにより各パイプの外面と各受口の内面との間の隙間を止水したり、各パイプの外面に接着剤を塗布し、各受口の内面と各パイプの外面とが止水されるよう接続してもよい。接着剤を用いて接合する場合、接着剤としては、着色剤が添加された有色接着剤や、紫外線により蛍光・燐光を発する発光剤が添加されている接着剤を用いることができる。ただし、区画貫通部2aの内部に位置する受口11aとパイプ21とは、パイプ21が加熱され熱膨張した際にも受口11aから脱落しない様、互いに接着剤で接続する必要がある。
管継手10の各受口11a,11b,12aに挿入される各パイプ21,22,23の端部の外面は全周にわたってテーパ面とされている。なお、ここでいうテーパ面とは、管軸に沿った配管材20の端部20aが、例えば図6(a)に示すように直線で切り取られた形状でもよい。また、配管材20の端部20aが、例えば図6(b)に示すように円弧で切り取られた形状でもよい。なお、図6(a),(b)は、内層26、中間層27及び表層28の三層構造の配管材20の端部20aにおける部分断面図である。
パイプ21,22,23が内層、中間層及び表層の三層構造で中間層が樹脂組成物(B)から構成される場合、パイプ21,22,23を管継手10に挿入する際に、中間層が露出するまで表層を切削してもよく、中間層が露出しない程度に切削してもよい。中間層が露出していれば、管継手10が透明な場合、露出した配管材20端面の中間層は黒色であるため外部から端面の位置が視認でき、受口の奥まで挿入しているか否かが視認できる。特に、継手が透明の場合、受口に設けられたパッキンを外部から視認できるため、配管材20の端部がパッキンよりも所定の長さ挿入されているかが判断できる。中間層が露出していなければ、中間層や中間層と表層との界面に接着剤成分が侵入せず、接着剤成分により表層と中間層の界面剥離や割れ等を防止したり、酸性である熱膨張性黒鉛により接着剤成分が劣化することを防止することができる。
上述したように、本実施形態の配管構造体1において使用されている配管材20は、火災が発生して加熱された際に膨張する熱膨張性黒鉛を含有している。そのため、例えば、図7に示すように、床スラブ2よりも下の階で火災が発生した際には、火災の熱によって、第1の立管用パイプ21の区画貫通部2a内の部分が膨張して区画貫通部2aを閉塞させることができる。これにより、炎、熱及び煙が区画貫通部2aを通って床スラブ2より上の階に上昇することを防止できるため、耐火性を発揮することができる。
本実施形態の配管材20は、特定のアスペクト比の熱膨張性黒鉛を含有する中間層(耐火層)を有する。このため、良好な耐火性を発揮し、圧縮強度を高め、熱伝導率を低められる。
建物においては、通常、隣接する上下の階を区画する床スラブ2の上方に居住部の床材4が別途設置されている。床スラブ2と床材4との間には空間Sが形成され、この空間S内に横枝管用パイプ23が配置される。そのため、横枝管用パイプ23の設置空間は限られているが、通常、排水性を高めるために、横枝管用パイプ23は横枝管接続部12の受口12aから離間するにつれて漸次高くなるように傾斜している。このような事情から、管継手10においては、横枝管接続部12をできるだけ床スラブ2に近接させて、横枝管用パイプ23の接続位置を可能な限り低くし、空間S内での横枝管用パイプ23の配置の自由度を高めることが求められる。特に、建物が集合住宅であり、同一階に多数の部屋がある場合には、横枝管用パイプ23が長くなるが、その場合、横枝管用パイプ23においては、横枝管接続部12側と反対側の端部の位置が高くなってしまう。そのため、床スラブ2と床材4との間の間隔をできるだけ有効利用することが求められる。このことから、管継手10においては、本管部11を区画貫通部2a内にできるだけ深く挿入し、横枝管接続部12を床スラブ2に近接させて、できるだけ下の位置にて横枝管用パイプ23を接続することが好ましい。また、少なくとも受口11aの上端が床スラブ2の上面を超えない、即ち、立管用パイプ21の上端が床スラブ2の上面を超えない位置とすることが好ましい。この場合、配管材20は、床スラブ2から下方に突出している。
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
本発明において、配管材は、一端部に受口を備えたものであってもよい。この場合、管継手は配管材の受口に挿入される差口を備えた構成とされ、管継手の差口を配管材の受口に挿入して接続することにより配管構造体とされる。
また、上述の実施形態の配管材は、三層構造であるが、本発明の配管材は、中間層(耐火層)を有すればよい。本発明の配管材は、中間層のみからなる単層構造でもよいし、内層及び表層のいずれか一方のみを有する2層構造でもよい。本発明の配管材は、中間層と、内層及び表層の少なくとも一方とを有する複層構造が好ましい。
あるいは、配管材は、表層及び内層の少なくとも一方が耐火層(即ち、熱膨張性黒鉛を含有する層)で、中間層が熱膨張性黒鉛を含有しない層でもよい。
例えば、本発明において、管継手の下側の受口の下面が床スラブの下面と同一面にされた状態で、管継手と第1の立管用パイプの上端部とが接続される必要はない。即ち、管継手の下側の受口と第1の立管用パイプの上端部とは、区画貫通部内のいずれかの部分で接続されていればよい。
本発明において、管継手は、上記実施形態に記載の形状の三方管継手に限定されず、管継手の本管部に対して横枝管接続部が垂直に設けられたT型のものでもよい。また、管継手は、2本の立管用パイプと2本以上の横枝管用パイプとを接続するものでもよいし、1本の立管用パイプと2本以上の横枝管用パイプとを接続するものでもよい。
配管材においては、少なくとも立管用パイプが前記樹脂組成物(B)から構成されていればよく、横枝管用パイプは前記樹脂組成物(B)以外の樹脂組成物、即ち熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物から構成されてもよい。
また、本発明の配管構造体は、壁に形成された区画貫通部に通されるものであってもよい。配管構造体が、壁に形成された区画貫通部に通されるものである場合には、管継手は、受口が2つ設けられたものでもよいし、受口が3つ以上設けられたものでもよい。
また、本発明の配管構造体は、給水路にも使用できる。
さらに、樹脂組成物(A)に非熱膨張黒鉛を添加することで耐火性を付与してもよい。非熱膨張黒鉛としては特許第4829847号公報に記載のものを用いることができ、粒子径が10μm以上1000μm以下、好ましくは粒子径10μm以上100μm以下の非熱膨張黒鉛を用いることで半透明又は透明な継手とすることができる。
さらに、本発明の配管構造体は、予め工場等で配管材と管継手とが接着剤で接合された状態(いわゆる排水集合継手)とされていてもよい。
この場合の配管構造体1は、例えば図8に示すように、上部管継手10aと、下部管継手10bと、配管材20とを備える。
上部管継手10aは、配管材20を接続可能な受口13aと、上階から伸びる第2の立管用パイプ122を接続可能な受口11bと、上階から伸びる横枝管用パイプ123を接続可能な受口12aとを備える。
下部管継手10bは、配管材20を接続可能な受口13bと、下階から伸びる第1の立管用パイプ121を接続可能な受口11aとを備える。
上部管継手10a及び下部管継手10bは、前記樹脂組成物(A)から構成されていてもよいし、樹脂組成物(A)以外の樹脂で構成されていてもよい。例えば、上部管継手10a及び下部管継手10bは、難燃剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂で構成されていてもよい。
配管材20の上端は、上部管継手10aの受口13aと接続されている。配管材20の下端は、下部管継手10bの受口13bと接続されている。
配管材20は前記樹脂組成物(B)から構成される。樹脂組成物(B)が含む樹脂は、樹脂組成物(A)が含む樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。例えば、樹脂組成物(A)がポリ塩化ビニル系樹脂を含有する場合に、樹脂組成物(B)は、ポリエチレン樹脂を含んでもよい。
配管材20には、上階から伸びる第2の立管用パイプ122からの排水に加えて、横枝管用パイプ123からの排水も流れる。このため、配管材20の呼び径は、立管用パイプ122及び横枝管用パイプ123の呼び径以上とされている。立管用パイプ122や横枝管用パイプ123の一般的なサイズは最大でも呼び径125程度であり、配管構造体1として少ない品種に抑えつつ設置自由度を高めるために、配管材20は呼び径125以上とすることが好ましく、呼び径200以下とすることが好ましい。
第1の立管用パイプ121、第2の立管用パイプ122及び横枝管用パイプ123は、前記樹脂組成物(A)から構成されていてもよいし、前記樹脂組成物(B)から構成されていてもよいし、前記樹脂組成物(A)及び前記樹脂組成物(B)以外の材料で構成されていてもよい。但し、樹脂製である場合には金属製である場合に比べて線膨張係数が大きく熱による伸縮量が大きくなり、後述する配管材20とモルタル3の上下面との接点に応力が集中しやすい。
図8に示す配管構造体1は、配管材20が床スラブ2の区画貫通部2aに配置されるように建物内に設置される。本実施形態において、配管材20は、床スラブ2から下方に突出している。また、配管構造体1と区画貫通部2aの内側面との間にはモルタル3が充填され、区画貫通部2aの内側面と配管材20との間の隙間が埋められていると共に、配管構造体1を固定している。この場合、配管材20は、床スラブ2から下方に突出している。
本実施形態においては、立管用パイプ121が熱収縮したり、立管用パイプ121に対する施工時の物理力が加わると、配管材20とモルタル3の下面との接点Pに応力が集中する。本発明の配管材20は、圧縮率が高いため、接点Pに応力が集中しても、破損しにくい。
また、あるいは、図9に示すように、下部管継手10bの受口13bと配管材20とが床スラブ2の区画貫通部2a内で接続されていてもよい。本実施形態において、配管材20は、床スラブ2から上方に突出している。
本実施形態においては、立管用パイプ122及び横枝管用パイプ123が熱収縮したり、立管用パイプ122及び横枝管用パイプ123に対する施工時の物理力が加わると、配管材20とモルタル3の上面との接点P1に応力が集中する。本発明の配管材20は、圧縮率が高いため、接点P1に応力が集中しても、破損しにくい。
下部管継手10bの受口13bと配管材20とが、それぞれ床スラブ2の区画貫通部2a内で接続されていてもよい。
さらに、下部管継手10bの受口13b及び上部管継手10aの受口13aの両方と配管材20とが床スラブ2の区画貫通部2a内で接続されていてもよい。特に、配管材20の圧縮率が50%以下である場合には、下部管継手10bの受口13b及び上部管継手10aの受口13aの両方と配管材20とが床スラブ2の区画貫通部2a内で接続されていることが好ましい。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(配管材の使用原料)
・熱膨張性黒鉛I :エア・ウォーター株式会社製、MZ−260、膨張開始温度260℃以上、平均アスペクト比25.3。
・熱膨張性黒鉛II :東ソー株式会社製、GREP−EG、膨張開始温度220℃、平均アスペクト比18。
・熱膨張性黒鉛III:日本黒鉛工業株式会社製、EXP50T、平均アスペクト比31。
・熱膨張性黒鉛IV :東ソー株式会社製、GREP−EG(150メッシュを通過したもの)、膨張開始温度220℃、平均アスペクト比1.3。
・熱膨張性黒鉛V :東ソー株式会社製、GREP−EG(5メッシュを通過しなかったもの)、膨張開始温度220℃、平均アスペクト比45。
・ポリ塩化ビニル系樹脂:大洋塩ビ株式会社製、TH1000。
・ポリエチレン樹脂:旭化成株式会社製、サンテックB770。
・鉛系安定剤:堺化学株式会社製、SL−1000。
・ポリエチレン系滑剤:三井化学株式会社製、ハイワックス4202E。
・難燃剤(水酸化アルミニウム):昭和電工株式会社製、H−31、平均粒子径18μm。
・難燃剤(リン酸亜鉛):鈴裕化学社製、ZPO−3。
(実施例1〜6、9、10、12〜14、比較例1〜5)
配管材は、表層、耐火層である中間層及び内層からなるものとした。
中間層を構成する樹脂組成物は、以下のように得た。
表1〜3の耐火層の配合に従い、ポリ塩化ビニル系樹脂と、熱膨張性黒鉛と、鉛系安定剤、ポリエチレン系滑剤、水酸化アルミニウムとを配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業株式会社製)を用い、攪拌混合して樹脂組成物(B−1)を得た。
表層及び内層を構成する樹脂組成物は、以下のように得た。
ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ株式会社製TH1000)100質量部に、錫系安定剤(大協化成工業社製、商品名「STX−80」)2質量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学株式会社製、ハイワックス4202E)0.5質量部、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、ホワイトンSB)3質量部を配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業株式会社製)で攪拌混合して樹脂組成物(B−2)を得た。
図2に示す製造装置を用いて、第1押出成形機61のホッパ66に前記樹脂組成物(B−2)を供給し、第2押出成形機62のホッパ67に前記樹脂組成物(B−1)を供給した。第1押出機68及び第2押出機69における樹脂温度を180℃に設定して、第1押出機68及び第2押出機69から金型70へ各樹脂を供給した。金型70における成形温度を190℃に設定して管状に押出成形し、外径216mm、樹脂組成物(B−2)で構成され、厚さがそれぞれ2.0mmの表層と内層と、樹脂組成物(B−1)で構成され、表層と内層の間に形成された厚さが8.0mmの中間層と、を備えた配管材を作製した。
得られた配管材において、中間層のウェルドラインと、内層及び表層のウェルドラインとの位置関係は、図4(g)と同様とした。
得られた配管材について、熱伝導率、熱抵抗値、融着強度、圧縮率、耐火性を評価した。その結果を表中に示す。以下、融着強度については、得られた配管材が多層である場合についてのみ評価した。
(実施例7)
表層及び内層を設けなかった(即ち、耐火層のみの単層構造とした)以外は、実施例1と同様にして配管材を作製した。
得られた配管材について、熱伝導率、熱抵抗値、圧縮率、耐火性を評価し、その結果を表中に示す。
(比較例6)
耐火層の配合を表3に示すように変更した以外は、実施例7と同様にして、耐火層のみの単層構造の配管材を作製した。
得られた配管材について、熱伝導率、熱抵抗値、圧縮率、耐火性を評価した。その結果を表中に示す。
(実施例8)
中間層のウェルドラインと、内層及び表層のウェルドラインとを同じ位置に形成した以外は、実施例1と同様にして配管材を作製した。
得られた配管材について、熱伝導率、熱抵抗値、融着強度、圧縮率、耐火性を評価した。その結果を表中に示す。
(実施例11)
耐火層の配合を表2に示すように変更した以外は、実施例7と同様にして、耐火層のみの単層構造の配管材を作製した。
得られた配管材について、熱伝導率、熱抵抗値、圧縮率、耐火性を評価した。その結果を表中に示す。
(測定方法)
[融着強度]
図10に示す万能試験機50を用意した。万能試験機50は、抜き打ち治具51と図示略の2枚の圧縮板とを備える。抜き打ち治具51は、台座部51aと台座部51aの上方に配置された押込部51bとを備える。そして抜き打ち治具51は、図示略の2枚の圧縮板に挟まれている。
次に、配管材を管軸方向20mm幅の管状に切り取ったものを試験片25とした。試験片25は、内層26と中間層27と図示略の表層とを有する。
温度が23℃±2℃、湿度が常湿(45〜85%)の条件下、試験片25を万能試験機50の台座部51aと押込部51bとの間にセットし、2枚の圧縮板により管軸の方向に毎分10mm/min±2mm/minの速さで試験片25を圧縮し、内層26と中間層27との融着面が剥離する際の最大荷重を求め、下記式(1)及び(2)で融着強度を算出した。
F=W/S ・・・(1)
S=3.14×d×L ・・・(2)
[式(1)及び(2)中、Fは融着強度(MPa)であり、Wは最大荷重(N)であり、Sは融着面積(cm)であり、dは内層26の平均外径(cm)であり、Lは管軸方向の試験片長さ(cm)である]
[耐火性評価]
図11に示す耐火試験炉100を用意した。耐火試験炉100は、上方以外は密閉された加熱室110と、加熱室110の上に設置された試験用の床スラブ120と、加熱室110内に設けられて火炎を生じさせるバーナー130と、加熱室110内の温度を測定する熱電対140とを備える。床スラブ120としては、直径260mmの区画貫通部120aが形成された100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。熱電対140は、加熱室110内の配管材20(第1の立管用パイプ21)の下端付近の温度を測定できるように配置した。また、管継手10と区画貫通部120aの内側面との間にはモルタル3を充填して区画貫通部120aを密閉した。
この耐火試験炉100に、上記のように作製した管継手10及び各実施例と比較例の配管材を切断して作製したパイプ21,22,23(配管材20)を用い、上記実施形態と同様の配置で配管構造体1を設置した。
そして、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834−1に従う)を行った。この耐火試験では、加熱開始後、管継手10と区画貫通部120aとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従い、発煙時間が120分以上の場合を耐火性有りとし、120分未満の場合を耐火性無しとする。
実施例1の配管構造体について前記耐火試験を行ったところ、加熱開始から120分を超えても、管継手10と区画貫通部120aとの間から煙が流出することがなく、耐火性を有していた。
Figure 2021167659
Figure 2021167659
Figure 2021167659
表1〜2に示すように、実施例1〜14は、圧縮率が20%以上であるため破損しにくく、耐火性120分以上であり、耐火性に優れていた。
表3に示すように、熱膨張性黒鉛の含有量が1質量部である比較例1、球状の黒鉛を用いた比較例3は、耐火性が90分以下であった。圧縮率が5〜19%である比較例2、4〜6は、強度が不十分であった。
以上のことから、本発明を適用することで、配管材を耐火性能に優れかつ破損しにくくできることが判った。
1 配管構造体
2 床スラブ
2a 区画貫通部
3 モルタル
4 床材
10 管継手
10a 上部管継手
10b 下部管継手
11 本管部
11a,11b 受口
12 横枝管接続部
12a 受口
13a,13b 受口
20 配管材
21 第1の立管用パイプ(配管材)
22 第2の立管用パイプ(配管材)
23 横枝管用パイプ(配管材)
O1 管軸

Claims (8)

  1. 管状の周壁を備え、
    前記周壁は、熱可塑性樹脂100質量部と、鱗片状の熱膨張性黒鉛3質量部以上20質量部以下とを含有する管状の耐火層を有し、
    JIS K 6741:2016で規定する偏平試験に基づいて測定される圧縮率が20%以上である、配管材。
  2. 前記耐火層の内周面及び外周面の少なくとも一方に位置し、前記耐火層を被覆する被覆層を備える、請求項1に記載の配管材。
  3. 前記耐火層と、前記被覆層との融着強度が1.5MPa以上である、請求項2に記載の配管材。
  4. 前記耐火層は、管軸方向に延びるウェルドラインを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の配管材。
  5. 前記周壁の熱伝導率が0.3W/m・K以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の配管材。
  6. 前記耐火層が難燃剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の配管材。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の配管材と、上部管継手及び下部管継手とが予め接合された配管構造体であって、
    前記上部管継手は、前記配管材の上端と接続される接続部を備え、
    前記下部管継手は、前記配管材の下端と接続される接続部を備え、
    前記配管構造体を設置したとき、少なくとも前記配管材が床スラブの区画貫通部内に位置し、かつ、前記配管材は、床スラブから下方に突出している、配管構造体。
  8. 管状の耐火層と、前記耐火層の内周面に位置する内側被覆層とを少なくとも有する複層構造とされた配管材の製造方法であって、
    前記内側被覆層はポリ塩化ビニル樹脂を含み、
    前記耐火層は、ポリ塩化ビニル樹脂と鱗片状の熱膨張性黒鉛とを含み、
    前記耐火層及び前記内側被覆層を押出用金型で積層して押出した後、サイジングスリーブへ導入して外面を賦形する、配管材の製造方法。
JP2020082170A 2019-05-07 2020-05-07 配管材、配管構造体及び配管材の製造方法 Pending JP2021167659A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019087856 2019-05-07
JP2019087856 2019-05-07
JP2020070546 2020-04-09
JP2020070546 2020-04-09

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021167659A true JP2021167659A (ja) 2021-10-21

Family

ID=78079558

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020082170A Pending JP2021167659A (ja) 2019-05-07 2020-05-07 配管材、配管構造体及び配管材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021167659A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8962115B2 (en) Fire-resistant piping material
JP4960806B2 (ja) 複層耐火配管材およびその製造方法
JP7136982B2 (ja) 配管構造体及び配管構造体用の管継手の製造方法
JP4886632B2 (ja) 排水集合継手
JP4440287B2 (ja) 建築用配管材およびこの建築用配管材の成形方法
JP4829847B2 (ja) 建物内配管路
JP5508048B2 (ja) 耐火排水集合継手
EP3575348A1 (en) Thermally expandable fire-resistant sheet
JP5175505B2 (ja) 脚部継手
WO2011136245A1 (ja) 耐火用配管材
JP2009057995A (ja) 樹脂ライニング鋼管およびこの樹脂ライニング鋼管を用いた排水配管構造
JP4833267B2 (ja) 給排水用配管材
JP4440290B2 (ja) 建築用配管材
JP7136608B2 (ja) 配管構造体
JP2021167659A (ja) 配管材、配管構造体及び配管材の製造方法
JP7474163B2 (ja) 透明耐火継手
JP5150170B2 (ja) 排水管継手
JP2011226581A (ja) 耐火用管継手
JP4440288B2 (ja) 建築用配管材
JP5238383B2 (ja) 排水配管構造
JP7449201B2 (ja) 多層管
JP7449202B2 (ja) 多層管
JP2023150910A (ja) 継手
JP2023150903A (ja) 継手
JP2011247414A (ja) 耐火用配管材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230324

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240109

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20240304

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240508