JP4440290B2 - 建築用配管材 - Google Patents
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Description
上記防火区画に、配管等を貫通させる貫通孔(以下、「区画貫通部」と記す)を設けた場合、火災が発生すると、この区画貫通部を介して、火災が発生した部屋から防火区画を挟んだ隣の部屋に、炎や煙がすぐに入り込み、短時間で大きな火災事故を招く恐れがある。
そのため、建物内の区画貫通部を貫通する配管材は、区画貫通耐火試験に合格し、国土交通省認定または消防評定を受けたものしか設置できないと建築基準法に定められている。
そこで、この区画貫通部には、配管を貫通させた後、前記区画貫通部と配管との間に隙間が生じないように、隙間を不燃材料であるモルタルなどにより閉塞する防火措置工法が行われている。
一方、配管材が、合成樹脂製である場合は、金属製のものに比べて、軽量で取り扱い性に優れ、接合が簡単であるなどのメリットが大きいが、耐熱性、耐火性に劣る。そのため、火災時に、配管材が、燃焼によって消失したり、熱変形して、区画貫通部と配管材との間に隙間が生じて、防火区画の一方の側で発生した熱、火炎、煙等が他方側へ到達してしまう恐れがある。
また、樹脂に配合される熱膨張性黒鉛の製造方法として、原料黒鉛を硫酸及び酸化剤の混合物で処理した後、アルカリ水溶液で洗浄したものに、固体中和剤を混合する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、ポリ塩化ビニル系樹脂は、ルイス酸や塩化水素などの酸存在下で、塩化水素の脱離反応を繰り返して、二重結合を生成する。塩化水素が脱離すると、それ自身が触媒になって、次の脱離反応を引き起こしやすい状態になる。その上、生成した二重結合の隣では、元の状態に比べて脱塩化水素が起こりやすい状態になり、二重結合が次々に生成される。これは、通称ジッパー反応と呼ばれる脱離連鎖反応であり、反応の程度が小さいうちは、着色、やけなどの変色が生じ、反応が進行すると炭化する。
そこで、本願発明者らは、燃焼時の耐火性能を向上させるためには、ある特定の高温条件下で、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化反応をむしろ促進させ、樹脂として燃焼する前に、炭化構造を作って燃えにくくしてしまうことが有効であると考え、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化を促進させるために、pH1.5〜4.0に調整された熱膨張性黒鉛を配合したのである。
したがって、請求項1記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の平均粒径は、好ましくは100〜400μmであり、さらに好ましくは120〜350μmである。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジー2―エチルヘキシルフタレート、ジー2―エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
すなわち、本発明の建築用配管材は、pH1.5〜4.0に調整された熱膨張性黒鉛が配合されているので、燃焼時には、熱膨張性黒鉛の層間に挿入されている酸だけでなく、熱膨張性黒鉛の表面に残っている酸も放出される。したがって、中和処理された熱膨張性黒鉛に比べて、酸の放出量が多く、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩化水素脱離反応が活発になり、燃焼時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の炭化を効果的に進めることができる。その結果、燃焼時には、膨張した熱膨張性黒鉛とポリ塩化ビニル系樹脂の炭化物とが強力に絡み合ってできた残渣によって、管の加熱側端部を確実に閉塞することができる。
その上、熱膨張性黒鉛のpHが1.5〜4.0の範囲であるので、配管材を成形するための成形装置を傷める恐れもない。
また、熱膨張性黒鉛は、それ自体が燃えにくく、かつ、熱により膨張して断熱効果を発現するので、燃焼速度の遅延が効果的に行われる。その上、熱膨張性黒鉛は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対して適度な割合で配合されているので、燃焼後の残渣の形状保持性に優れている。
また、ベース樹脂として、自己消火性を有するポリ塩化ビニル系樹脂が用いられているため、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われ、燃焼時の火炎の伝播速度を抑えることができる。さらに、ポリ塩化ビニル系樹脂は、燃焼初期に発泡する性質があるため、熱膨張性黒鉛が膨張しやすいという利点がある。
1)塩化水素の捕捉、中和
2)塩素原子との置換
3)ラジカルの捕捉、失活
4)共役二重結合の孤立
また、鉛系安定剤、有機スズ系安定剤、高級脂肪酸金属塩は、成形時の熱安定性を付与する他の添加剤に比べて、より一層、成形時の熱安定性に優れているため、製品の歩留まりがよい上、押出成形時のロングラン性にも優れている。
また、鉛系安定剤、有機スズ系安定剤、高級脂肪酸金属塩は、少量でも成形安定性を発揮するため、成形時の熱安定性を付与する他の添加剤に比べて、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する添加割合が少なくて済み、管の引張強度や耐火性が低下しにくい。
その結果、区画貫通部に配管材を貫通施工するときに、従来のように、配管材の周囲に他の耐火部材を設ける必要がない上、施工時の仮配管時に、位置確認のためにマーキングするなどの作業も不要であり、単に、区画貫通部に本発明の建築用配管材を挿通させるだけでよいので、作業負担を大幅に軽減でき、現場施工性を飛躍的に向上させることができる。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製 商品名「TS1000R」)
熱膨張性黒鉛(中越黒鉛工業社製、商品名「SFF」)
鉛系安定剤:ステアリン酸鉛(水澤化学社製、商品名「StabinexNC18」)
有機スズ系安定剤:オクチル錫メルカプト(三共有機社製、商品名「ONE−100F」)
高級脂肪酸金属塩:Ca/Zn系複合安定剤(堺化学社製、商品名「NWP-6000」)
塩基性化合物:炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「ホワイトンSB」)
:水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、商品名「KISUMA5A」)
ハイドロタルサイト(協和化学工業社製、商品名「DHT-4A」)
エポキシ化大豆油(ADEKA社製、商品名「アデカサイザー O130P」)
滑剤:(三井化学株式会社製 商品名ハイワックス4202E)
1)熱膨張性黒鉛の試料5gにイオン交換水25mlを添加して黒鉛混合液を作成する。
2)作製した黒鉛混合液をガラス棒で30秒間混ぜる。
3)20分放置した後、pH測定器(株式会社堀場製作所製、商品名「pH/ION METER F-23」
)によって、黒鉛混合液のpHを測定する。
すなわち、上記熱膨張性黒鉛をビーカーに入れ、イオン交換水を加えて攪拌し、上記pH測定器で黒鉛混合液のpHを確認しながら、熱膨張性黒鉛の表面に残存する酸を洗浄除去した後、黒鉛混合液をろ過し、恒温槽に入れて乾燥させて、所望のpHの熱膨張性黒鉛を得た。一回の洗浄で所望のpHとならない場合は、洗浄、乾燥工程を繰り返し行った。
また、この建築用配管材Pから、性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して厚さ3mmのプレス板を1cm角に切り作製した。
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法 ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yは、100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。建築用配管材Pは、床材Yに設けられた区画貫通部Rに貫通させ、加熱室Z内に300mm露出させ、床材Yの外部に800mm露出させた。
なお、加熱室Zの側壁にはバーナーV,Vが設置されている。また、建築用配管材Pの先端部近傍に温度測定用の熱電対Qが設置されている。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)、120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。煙の発生の有無については、目視で判断した。
得られた試験片について、管としての性能を満たしているかを判定するため、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上を◎(優秀)、30(MPa)以上を○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
装置腐食性と押出成形安定性の2点について評価した。
装置腐食性:3時間製造した後、そのまま3日間放置して、原料投入部の金属ホッパー部の腐食度合いを目視で観察した。異常なしの場合は○(合格)、赤錆が確認された場合は×(不合格)とした。
押出成形安定性:3時間連続運転中、押出成形機先端より吐出される樹脂組成物を目視により確認した。そして、炭化物なし、ヤケ(黄変)なしの場合は◎(優秀)、炭化物なしの場合は○(合格)、炭化物ありの場合は×(不合格)とした。
(表1)において、(比較例1)(比較例2)は、熱膨張性黒鉛の酸性が強すぎるため、装置の腐食が見られた。(比較例3)(比較例4)は、熱膨張性黒鉛の酸性が弱すぎるため、燃焼時における塩化ビニル樹脂の炭化が促進されにくく、耐火性評価において発煙時間120分を達成できず、不合格であった。
この結果から、装置の腐食の心配がなく、かつ、優れた耐火性を発揮するためには、熱膨張性黒鉛のpHは1.5〜4.0の範囲であることが必要であることがわかった。
(表2)において、(比較例5)(比較例6)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が少なすぎたため、耐火性評価において発煙時間120分を達成できず、不合格であった。また、(比較例7)(比較例8)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が多すぎたため、耐火性評価において発煙時間120分を達成できず、不合格であった。
この結果から、管として必要な強度を有し、かつ、優れた耐火性を発揮するためには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部配合する必要があることがわかった。なお、熱膨張性黒鉛が10重量部を超えると、図2に示すように、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣2が脱落してしまった。
(表3)において、(実施例15)は、安定剤の添加割合が多すぎたため、(実施例10)〜(実施例14)に比べて、引張強度が低下した。
(表4)において、(実施例18)は、成形時の熱安定性を付与するための添加剤として、エポキシ化大豆油を配合したものである。しかし、エポキシ化大豆油は、成形時の熱安定性を付与する能力があまり高くなく、可塑効果が高い。その結果、(実施例18)は、押出成形安定性が不合格であった上、(表4)に示す他の実施例に比べて、引張強度と耐火性がやや低下してしまった。
この結果から、引張強度と耐火性に優れ、かつ、成形安定性に優れた管を得るには、成形時の熱安定性を付与するための添加剤として、鉛系安定剤、有機スズ系安定剤、高級脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくともいずれか一種を含み、その総添加割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜5.0重量部であることが好適であることがわかった。
(表5)において、(実施例19)は、塩基性化合物が添加されていないため、(表5)に示す他の実施例に比べて、押出成形安定性がやや低かった。また、(実施例23)は、塩基性化合物の添加割合が多すぎたため、(表5)に示す他の実施例に比べて、引張強度がやや低かった。
(表6)において、(実施例25)は、成形時の熱安定性を付与するための添加剤として、安定剤は配合せず、ハイドロタルサイトだけを配合したものである。ハイドロタルサイトには、熱安定性を付与する能力があるものの、単独では十分な熱安定性が得られないため、押出成形安定性については不合格であった。
この結果から、引張強度と耐火性に優れ、かつ、成形安定性に優れた管を得るには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、上記の安定剤を0.3〜5.0重量部配合し、さらに、塩基性化合物を0.3〜5.0重量部配合することがより好適であることがわかった。
以上、実施例を提示して詳述したとおり、本実施形態の建築用配管材Pは、成形性、管としての機械的強度、耐火性のいずれの面においても優れており、燃焼時には、耐火性樹脂組成物で構成された層が膨張して、図3に示すように、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの隙間を残渣2で閉塞することができ、床材Yで仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。
また、本発明は、本発明にかかる耐火性樹脂組成物からなる耐火膨張層を管の厚さ方向に備えた複層管であっても構わない。
Claims (4)
- ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、pH1.5〜4.0に調整された熱膨張性黒鉛1〜10重量部を含有させてなる耐火性樹脂組成物からなる耐火膨張層を備えることを特徴とする建築用配管材。
- 請求項1記載の耐火性樹脂組成物が、成形時の熱安定性を付与するための添加剤を含むことを特徴とする請求項1記載の建築用配管材。
- 成形時の熱安定性を付与するための添加剤として、鉛系安定剤、有機スズ系安定剤、高級脂肪酸金属塩からなる群から選ばれた少なくともいずれか一種を含み、その総添加割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜5.0重量部であることを特徴とする請求項2記載の建築用配管材。
- 成形時の熱安定性を付与するための添加剤として、さらに、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉄からなる群より選ばれた塩基性化合物を含み、その総添加割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.3〜5.0重量部であることを特徴とする請求項3記載の建築用配管材。
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