JP6964399B2 - 配管部材劣化診断方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、合成樹脂製配管部材の劣化を診断する配管部材劣化診断方法及び装置に関する。
合成樹脂製配管部材は、耐腐食性や耐薬品性に優れることから、化学工場、上下水道、食品分野などで広く使用されている。しかしながら、合成樹脂製配管部材でも、配管部材の内部を流れる流体の浸透などによる劣化のみならず、屋外屋内を問わず紫外線や熱など外部環境の影響による劣化が生じることがある。特に、配管部材には、配管部材同士の接続による外部からの力やウォーターハンマー現象による衝撃など様々な力が作用するため、引張強さ、引張伸び率、衝撃強さなどの物性の低下でクラックが生じると、漏れなどのトラブルの原因となりやすい。このようなトラブルを防止するために、定期的に、劣化が認められる配管部材の交換などの保全が行われている。合成樹脂製配管部材は金属製配管部材のような腐食による厚さの変化などが生じにくく、合成樹脂製配管部材の劣化の診断は、使用中の配管部材の一部をサンプリングして試験片を作成し、作成した試験片を用いて、未使用品に対する使用品の引張強さ、引張伸び、衝撃強度、落錘衝撃強度(耐衝撃性)、扁平性などの保持率を測定する破壊試験により行われることが一般的であった。また、特許文献1に開示されているように、合成樹脂管の酸化誘導時間を測定することによって、合成樹脂管の残存寿命の評価を行う方法も提案されている。
特開2002−257819号公報
しかしながら、合成樹脂製の配管部材の劣化の診断に際し、配管部材のサンプリングを行うためには、設備を停止させる必要が生じるという問題がある。また、診断の結果、配管部材の交換の必要がなかったとしても、破壊試験を行うと、サンプリングした配管部材については、部分的に交換の必要が生じてしまう。
したがって、本発明の目的は、合成樹脂製の配管部材について、サンプリングを必要としない非破壊による劣化診断を可能とさせることにある。
上記目的に鑑み、本発明は、第1の態様として、合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率と色空間における合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差との相関関係を予め求める工程と、測色計を用いて、合成樹脂製の配管部材の外側表面に照射した光の反射光に基づいて前記配管部材の外側表面の色を測定する工程と、前記配管部材の外側表面の基準色と前記測色計によって測定された前記配管部材の外側表面の色との前記色空間における色差を求める工程と、予め求められた前記相関関係に基づいて、前記色差から測定時における前記配管部材の物性保持率を推測して、前記配管部材の劣化度を診断する工程とを含み、前記評価対象物性が引張伸び率、耐衝撃性及び扁平性の中から選択される配管部材劣化診断方法を提供する。
上記配管部材劣化診断方法では、合成樹脂製の配管部材の評価対象物性(詳細には、引張伸び率、耐衝撃性又は扁平性)の基準値に対する物性保持率と、色空間における合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差との相関関係を用いて、合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色と測色計によって測定した合成樹脂製の配管部材の外側表面の色との色空間における色差から合成樹脂製の配管部材の物性保持率を推測して、配管部材の劣化度を診断する。したがって、配管部材のサンプリングや破壊試験が不要となる。
上記配管部材劣化診断方法では、前記色空間がL*a*b*表色系の色空間であることが好ましい。
例えば、前記評価対象物性は引張伸び率とすることができる。
前記配管部材は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデンから成る群から選択される合成樹脂材料によって形成された配管部材とすることが好ましい。
前記測色計は、前記配管部材の外側表面での正反射光を含めた反射光を用いるSCI方式で色を測定してもよく、前記配管部材の外側表面での反射光から正反射光を除去するSCE方式で色を測定してもよい。
さらに、本発明は、第2の態様として、合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率と色空間における合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差との相関関係を表す関数を予め記憶する関数記憶部と、前記配管部材の外側表面の基準色と測定された前記配管部材の外側表面の色との前記色空間における色差を求め、求められた前記色差と前記関数記憶部に記憶される前記関数とに基づいて、測定時における前記配管部材の物性保持率を求める物性保持率演算部とを備え、前記評価対象物性が引張伸び率、耐衝撃性及び扁平性の中から選択される配管部材劣化診断装置を提供する。
上記配管部材劣化診断装置では、前記配管部材の外側表面の色は、照射した光の反射光に基づいて色を測定する測色計によって測定されることが好ましい。
また、上記配管部材劣化診断装置では、前記色空間がL*a*b*表色系の色空間であることが好ましい。
例えば、前記評価対象物性は引張伸び率とすることができる。
前記配管部材が、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデンから成る群から選択される合成樹脂材料によって形成されている配管部材であることが好ましい。
好ましい実施形態では、前物性保持率演算部が、求められた物性保持率に基づいて前記配管部材の劣化度を決定する。
本発明によれば、合成樹脂製の配管部材の物性保持率(詳細には、引張伸び率、耐衝撃性又は扁平性の保持率)と、合成樹脂製配管部材の基準色に対する色差との相関関係を用いて、配管部材の外側表面の基準色と測定時の配管部材の外側表面の色との色差から測定時における合成樹脂製配管部材の物性保持率を推測し、配管部材の劣化診断ができるため、配管部材のサンプリングや破壊試験が不要となる。
本発明による配管部材劣化診断装置の全体構成を示すブロック図である。 物性の低下と合成樹脂材料の色の変化との相関性に関連するポリ塩化ビニル(PVC)のポリエン化の機構を説明するための説明図である。 物性の低下と合成樹脂材料の色の変化との相関性に関連するポリフッ化ビニリデン(PVDF)のポリエン化の機構を説明するための説明図である。 物性の低下と合成樹脂材料の色の変化との相関性に関連する顔料や添加剤の粒子の離脱による微細孔(ポーラス)の生成を説明するための説明図である。 物性の低下と合成樹脂材料の色の変化との相関性に関連する合成樹脂製配管部材の表面の微小クラックの成長を説明するための説明図である。 第一の例の配管部材について、SCI方式での色の測定による色差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第一の例の配管部材について、SCE方式での色の測定による色差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第一の例の配管部材について、SCI方式での色の測定による明度の差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第一の例の配管部材について、SCE方式での色の測定による明度の差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第一の例の配管部材について、SCI方式での色の測定による明度と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第一の例の配管部材について、SCE方式での色の測定による明度と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第二の例の配管部材について、SCI方式での色の測定による色差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第二の例の配管部材について、SCE方式での色の測定による色差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第二の例の配管部材について、SCI方式での色の測定による明度の差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第二の例の配管部材について、SCE方式での色の測定による明度の差と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第二の例の配管部材について、SCI方式での色の測定による明度と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 第二の例の配管部材について、SCE方式での色の測定による明度と引張伸び保持率との相関を示すグラフである。 図1に示されている配管部材劣化診断装置を用いて、色差に基づいて、合成樹脂製配管部材の劣化を診断する手順を示すフローチャートである。 図1に示されている配管部材劣化診断装置を用いて、明度の差に基づいて、合成樹脂製配管部材の劣化を診断する手順を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明による配管部材劣化診断装置及び配管部材劣化診断方法の実施の形態を説明する。
最初に、図1を参照して、配管部材劣化診断装置11の全体構成を説明する。
配管部材劣化診断装置11は、関数記憶部13と、入力部15と、物性保持率演算部17と、表示部19とを備え、物性保持率演算部17が、入力部15を通じて入力された合成樹脂製の配管部材の外側表面の色に関する情報に基づいて、基準時における配管部材の評価対象物性に対する物性保持率を推測し、推測された物性保持率に基づいて合成樹脂製配管部材の劣化度を求めて、表示部19に表示する。配管部材は、配管を構成する部材であり、管、継手、バルブ、タンクなどを含む。
関数記憶部13は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなど、データを記憶することができる記憶装置によって構成することができる。関数記憶部13には、合成樹脂製の配管部材の外側表面の色に関する指標と合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率との相関関係を表す関数が記憶される。ここで、物性保持率とは、基準となる合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の値(例えば、未使用状態の合成樹脂製の配管部材の評価物性の値や規格上の値)に対する測定対象の配管部材の評価対象物性の測定値の割合を意味する。本実施形態では、合成樹脂製の配管部材の外側表面の色に関する指標として、合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色(例えば、未使用状態の合成樹脂製の配管部材の色や当該配管部材の規格上の色)に対する色空間における色差が使用され、合成樹脂製配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における色差と合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率との相関関係を表す関数が関数記憶部13に記憶される。しかしながら、合成樹脂製の配管部材の外側表面の色に関する指標として、他の指標を使用することも可能である。例えば、合成樹脂製の配管部材の外側表面の色に関する指標として、合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における色差に代えて又は色差に加えて、合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における明度の差を使用し、色空間における未使用状態の合成樹脂製の配管部材の外側表面の色の明度を基準とした明度の差と合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率との相関関係を表す関数を関数記憶部13に記憶してもよい。
なお、異なる種類の配管部材(使用材料や製造販売会社などが異なる配管部材)に対して配管部材劣化診断装置11を適用する場合、種類ごとに配管部材の基準色を設定してもよく、概ね同じ色の異なる種類の配管部材にまたがって共通の基準色を設定してもよい。また、評価対象物性の基準値についても、同様に、種類ごとに配管部材の評価対象物性の基準値を設定してもよく、概ね共通する材料から形成された異なる種類の配管部材にまたがって共通の評価対象物性の基準値を設定してもよい。
評価対象物性としては、例えば、引張強さ(引張降伏強さ)、引張伸び率(引張破断伸び率、引張破壊伸び率)、耐衝撃性(シャルピー衝撃強度、落錘衝撃強度)、扁平性などが用いられ、関数記憶部13に記憶される関数は、これらの評価対象物性の何れか一つ又は複数についてそれぞれ記憶される。上述の評価対象物性は、JISなどの規格に定められた適宜の試験方法を共通して採用して測定すればよい。例えば、引張伸び率については、JIS K 6741:1999に定められる硬質ポリ塩化ビニル管に関する引張試験の規格に従って測定し、シャルピー衝撃強さについては、JIS K 7111−1:2012に定められる「プラスチック−シャルピー衝撃特性の求め方」に定められる試験方法に従って測定すればよい。
なお、関数記憶部13に記憶される関数は、様々な使用条件及び使用年数の複数のサンプルについて、合成樹脂製配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における色差と合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率、又は、合成樹脂製配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における明度の差と合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率の測定を行うことによって予め求められる。
色空間としては、色差を表すことができるものであれば、任意の表色系に基づく色空間を採用することが可能である。本実施形態では、色空間の2点間の距離と肉眼での色差間との一致性が高いことから、好ましい色空間として、L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)表色系に基づく色空間を採用している。L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)によって規格化された表色系(CIE S 014−4/E:2007)であり、明度をL*で、色相と彩度を表す色度をa*とb*で表している。L*a*b*表色系では、L*の数値が高いほど白く、低いほど黒くなる。また、+a*が赤方向、−a*が緑方向、+b*が黄色方向、−b*が青方向を示しており、数値の絶対値が大きくなるほど鮮やかな色に、ゼロに近くなるほどくすんだ色になる。L*a*b*表色系は日本工業規格では、JIS Z8781−4:2013に規定されている。L*a*b*表色系以外では、例えば、L*C*h表色系、JIS Z8781−5:2013に規定されているL*u*v*表色系(CIE S 014−5/E:2009)などを色空間として採用することが可能である。なお、L*C*h表色系では、明度をL*、彩度をC*、色相角をhで表している。
入力部15は、測色計21によって測定された色に関する情報を入力するために設けられており、測色計21によって測定された色に関するデータを手作業で入力するためのキーボードなどの入力装置によって構成されてもよく、測色計21によって測定されたデータをケーブル(図示せず)などを介して直接的に取り込むための接続インターフェースによって構成されてもよい。測色計21は、配管部材劣化診断装置11の一部として形成されていてもよく、別体の装置として形成されていてもよい。
なお、測色計21は、合成樹脂製の配管部材の外側表面に照射した光の反射光に基づいて、配管部材の外側表面の色を測定する。測色計21による色の測定は、SCI方式で行ってもよく、SCE方式で行ってもよいが、SCI方式とSCE方式とを切り換えられるようになっていることが好ましい。SCI方式では、配管部材の外側表面での正反射光を含めた反射光に基づいて色の測定が行われ、SCE方式では、配管部材の外側表面での反射光から正反射光を除去して色の測定が行われる。また、測色計21は、色空間(好ましくはL*a*b*表色系に基づく色空間)における座標値として、測定された色に関する情報を出力するように構成されている。
物性保持率演算部17は、中央演算装置(CPU)とROMやRAMなどの記憶装置とによって構成されることができ、記憶装置に記憶された演算プログラムに従い、関数記憶部13に記憶された、評価対象物性に関する物性保持率と色差との相関関係を表す関数及び評価対象物性に関する物性保持率と明度の差との相関関係を表す関数の一方又は両方を用いて、測色計21によって測定されて入力部15から入力された配管部材の色に関する情報から、評価対象物性に関する物性保持率を推測する。物性保持率演算部17は、配管部材の色に関する情報から、複数の評価対象物性について物性保持率を推測することもでき、この場合には、例えば、推測した複数の評価対象物性のうち物性保持率が最も低い値のものについて、予め定められた数値以下となったときに、劣化して更新時期が到来したと判断することができる。物性保持率演算部17は、さらに、推測された物性保持率に基づいて、配管部材の劣化度又は交換時期を決定することが好ましい。
色空間としてL*a*b*表色系が採用されており、関数記憶部13に色差と物性保持率との相関関係を表す関数が記憶されている場合、基準時における合成樹脂製配管部材の外側表面の色の色空間での座標がR(L,a,b)、測定された合成樹脂製配管部材の外側表面の色の色空間での座標がM(L,a,b)とすると、物性保持率演算部17は、まず、以下の式により色差ΔE*abを求める。
Figure 0006964399
(ただし、ΔL=L−L、Δa=a−a、Δb=b−b
さらに、物性保持率演算部17は、関数記憶部13に記憶された関数を用いて、このようにして求めた色差ΔE*abに対応する物性保持率を求め、これを評価対象物性の物性保持率の推定値として、表示部19に表示する。また、物性保持率演算部17は、必要に応じて、推定された物性保持率に基づいて、合成樹脂製配管部材の劣化度又は交換時期を決定し、これを表示部19に表示してもよい。表示部19は、液晶画面やモニターによって構成することができる。
関数記憶部13に明度の差と物性保持率との相関関係を表す関数が記憶されている場合、物性保持率演算部17は、式ΔL*=L−Lにより明度の差ΔL*を求めた後、関数記憶部13に記憶された関数を用いて、求めた明度の差ΔLに対応する物性保持率を求め、これを評価対象物性の物性保持率の推定値として、表示部19に表示する。また、物性保持率演算部17は、必要に応じて、推定された物性保持率に基づいて、合成樹脂製配管部材の劣化度又は交換時期を決定し、これを表示部19に表示する。
次に、図2から図5を用いて、関数記憶部13に記憶される相関関係を表す関数について説明する。
合成樹脂は、耐腐食性や耐薬品性に優れており、配管部材材料として使用されるが、紫外線や熱による劣化や管表面の荒れや微小クラックの発生などによって、物性の低下を起こすことが知られている。本出願人は、合成樹脂によって形成される配管部材について、未使用状態時の色、製造販売会社、内部を流通させる流体の種類、使用場所(屋外か屋内か)、使用年数などに関わらず、合成樹脂製の配管部材の外側表面の色の変化と物性の低下の程度(物性保持率)との間に相関関係があることを見出した。樹脂製配管部材の色の変化が物性の低下に影響を与える原因としては以下が考えられる。
(1)ポリエン化
例えば、耐食性や耐薬品性に優れている硬質ポリ塩化ビニル(PVC)は、熱や紫外線の影響により、いわゆるポリエン化を起こすことが分かっている。このようなポリ塩化ビニルのポリエン化は、紫外線や熱などによって、図2に示されているように、塩酸が脱離して、ポリエンと呼ばれる共役二重結合連鎖構造を生じることによって起こる。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)でも、熱などによって、図3に示されているように、フッ化水素が離脱して、ポリエン(共役二重結合連鎖)構造を生じることが知られている。このように、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系ポリマーでは、脱ハロゲン化水素反応によって、ポリエン化が生じる。さらに、鉛系安定剤(硫酸鉛)がポリ塩化ビニルに配合されている場合、安定剤が消費されて硫化鉛になると、ポリエンとキレートが形成されることが知られている。
このようにして生じるポリエン構造の連鎖は、長いほど長波長の光を吸収することが一般的に知られており、ポリエンの連鎖が8個以下の場合には、紫外線が吸収されるが、ポリエンの連鎖が8個以上になると可視光を吸収するようになる性質を有する。詳細には、ポリエンの連鎖が8個になると、400nmの波長の光(青紫)を吸収して、赤と緑を反射するようになるので、黄色(青紫の補色)が強まって見えるようになり、さらに8〜12個のポリエンの連鎖が混在するようになると、400〜500nmの波長(紫〜緑)を吸収するために、黄色〜赤色が強まって見えるようになり、さらに長いポリエンの連鎖が混ざった状態になると、ほぼ全ての可視光波長が吸収されるようになり、黒色に見えるようになる。すなわち、ポリエン化の進行に伴って色が変化する。
一方、ポリエン構造になることで、樹脂は、例えばポリ塩化ビニルの構造に比べると硬いが脆い性質を有するようになるので、ポリエン構造が生成されると、引張伸び保持率やシャルピー衝撃強さなどの物性が低下する。したがって、ポリエン構造の生成により配管部材の外側表面の変色が生じると、引張伸び保持率やシャルピー衝撃強さなどの物性が低下していると予測することができる。
(2)酸化
また、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の汎用樹脂は、熱や紫外線によって酸化することも一般的に知られている。樹脂製品表面は、酸化すると、荒れて光を散乱させることで白っぽく見えるようになる。この状態では、樹脂製品は、元の構造のときと比べて硬いが脆い性質を有するようになるとともに、表面に生じた凹凸によるノッチ効果によって破損しやすくなる。したがって、酸化により配管部材の外側表面の変色が生じると、引張伸び保持率やシャルピー衝撃強さなどの物性が低下していると予測することができる。
(3)着色剤や添加剤の脱離
図4(a)に示されているように、配管部材23に使用される合成樹脂材料中には、着色剤として用いられる顔料や添加剤が粒子25として存在している。これら着色剤や添加剤の粒子25が配管部材23の外側表面への紫外線や雨風などによって脱離すると、図4(b)に示されているように、微細孔(ポーラス)27が発生する。この結果、着色剤の離脱による色抜けが起こる。また、微細孔27の発生により、配管部材23の外側表面に微細な凹凸が形成され、光が散乱することにより、白っぽく見えるようになる。一方、配管部材23の外側表面に凹凸が形成されると、これがノッチとして機能し、引張力が作用したときに破断が生じやすくなる。よって、着色剤や添加剤の離脱により配管部材23の外側表面の変色が生じると、引張伸び率などの物性が低下していると予測することができる。
(4)微小クラックの成長
合成樹脂材料からの配管部材23の成形時には、表面に微小な凹凸が形成される。図5(a)に示されているように、この凹凸に水滴が入り込み、光が照射されると、レンズ効果で、その部分だけ劣化が進行し、図5(b)に示されているように、凹凸が深く成長して微小クラックが形成されることとなる。また、凹凸の成長により、上述の着色剤や添加剤の脱離も促進される。この結果、凹凸の成長で光が散乱して白っぽく見えるようなったり、着色剤の離脱により色抜けが生じたりする。一方、配管部材23の外側表面に微小クラックが形成されると、これがノッチとして機能し、引張力が作用したときに破断が生じやすくなる。よって、微小クラックの成長により配管部材23の外側表面の変色が生じると、引張伸び率などの物性が低下していると予測することができる。
上記のような考察に基づいて、樹脂製の配管部材の第一の例としての約40サンプルのポリ塩化ビニル製の管について、基準色からの変化の程度と評価対象物性の低下の程度(物性保持率)との相関を調べたところ、図6から図9に示されているように、優れた相関があることが確認された。なお、図6から図9に示されている相関関係では、異なる製造会社から販売されている、ポリ塩化ビニル製の呼び径20mm、25mm、40mm、50mm、75mm、100mm、125mm、150mm、200mmの一般管と呼び径150mm、300mmの薄肉管について、使用された流体が空気、純水、一般排水、硫酸、硝酸、フッ酸、酸性塩素水、ポリ塩化アルミニウム、酸性排水、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、使用場所が屋外、屋内、使用年数が0(未使用)から30年の範囲のものをサンプルとした。
図6及び図7は、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の基準色に対する色差ΔE*abとポリ塩化ビニル製の管(パイプ)の引張伸び率(引張破壊伸び率、引張破断伸び率)の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表すグラフであり、管の外側表面の色の変化の程度の指標としてL*a*b*表色系における色差ΔE*abが使用され、評価対象物性として引張伸び率が使用されている。ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の基準色としては未使用状態の製品の色を用い、引張伸び率の基準値としては未使用状態の製品の引張伸び率の値を用いた。また、図6では、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色が測色計12によってSCI方式で測定されており、図7では、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色が測色計12によってSCE方式で測定されている。なお、引張伸び率(引張破壊伸び率、引張破断伸び率)は、JIS K 6741:1999に定められる引張試験方法を採用した。
図6に示されているように、色差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCI方式でのポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色差と引張伸び保持率との相関係数R=0.9以上の近似関数が得られた。また、図7に示されているように、色差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCE方式でのポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色差と引張伸び保持率との相関係数R=0.8以上の近似関数が得られた。
例えば、合成樹脂製の管の表面状態に関係なく素材そのものの色から物性保持率を推測する場合には、図6に示されている相関関係から得られる近似関数を、合成樹脂製の管の表面状態も加味した目視に近い色から物性保持率を推測する場合には、図7に示されている相関関係から得られる近似関数を関数記憶部13に記憶すればよい。
図8及び図9は、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の基準色に対する明度の差ΔL*とポリ塩化ビニル製の管の引張伸び率の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表すグラフであり、管の外側表面の色の変化の程度の指標としてL*a*b*表色系における明度の差ΔL*が使用され、評価対象物性として引張伸び率が使用されている。ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の基準色としては未使用状態の製品の色を用い、引張伸び率の基準値としては未使用状態の製品の引張伸び率の値を用いた。また、図8では、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色の明度が測色計12によってSCI方式で測定されており、図9では、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色の明度が測色計12によってSCE方式で測定されている。
図8に示されているように、明度の差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCI方式でのポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色の明度の差と引張伸び保持率との相関係数R=0.8以上の近似関数が得られた。また、図9に示されているように、明度の差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCE方式でのポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色の明度の差と引張伸び保持率との相関係数R=0.8以上の近似関数が得られた。
この場合も色差の場合と同様に、例えば、合成樹脂製の管の表面状態に関係なく素材そのものの色から物性保持率を推測する場合には、図8に示されている相関関係から得られる近似関数を、合成樹脂製の管の表面状態も加味した目視に近い色から物性保持率を推測する場合には、図9に示されている相関関係から得られる近似関数を関数記憶部13に記憶すればよい。
また、本出願人は、ポリ塩化ビニル製の管について、外側表面の色の明度L*と引張伸び率の基準値に対する引張伸び率(引張破壊伸び率、引張破断伸び率)との相関関係を検討したところ、図10及び図11に示されるように相関関係があることを見出した。図10及び図11に示されている相関関係は、図6から図9と同様に、異なる製造会社から販売されている、ポリ塩化ビニル製の呼び径20mm、25mm、40mm、50mm、75mm、100mm、125mm、150mm、200mmの一般管と呼び径150mm、300mmの薄肉管について、使用された流体が空気、純水、一般排水、硫酸、硝酸、フッ酸、酸性塩素水、ポリ塩化アルミニウム、酸性排水、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、使用場所が屋外、屋内、使用年数が0(未使用)から30年の範囲のものをサンプルとしたものである。また、引張伸び率の基準値としては同じ製品の未使用品の引張伸び率の値を用いた。図10では、ポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色の明度が測色計12によってSCI方式で測定されており、図11では、ポリ塩化ビニル製の管の外画側表面の色の明度が測色計12によってSCE方式で測定されている。
図10に示されているように、明度をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCI方式でのポリ塩化ビニル製の管の外側表面の色の明度と引張伸び保持率との相関係数R=0.8以上の近似関数が得られた。また、図11に示されているように、明度をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCE方式でのポリ塩化ビニル製の管の色の明度と引張伸び保持率との相関係数R=0.8以上の近似関数が得られた。したがって、このようにして求めた近似関数を関数記憶部13に記憶すれば、色の変化の程度ではなく、ポリ塩化ビニル製の管の明度の絶対値から測定時の引張伸び保持率を推測することも可能となる。
同様に、樹脂製の配管部材の第二の例としてのポリプロピレン製のバルブでも、図12から図17に示されているように、基準色からの変化の程度と評価対象物性の低下の程度(物性保持率)との間に相関があることが確認された。なお、図12から図17に示されている相関関係では、紫外線照射機による促進試験で得られた異なる紫外線照射時間のポリプロピレン製のバルブをサンプルとした。
図12及び図13は、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の基準色に対する色差ΔE*abとポリプロピレン製のバルブの引張伸び率(引張破壊伸び率、引張破断伸び率)の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表すグラフであり、バルブの外側表面の色の変化の程度の指標としてL*a*b*表色系における色差ΔE*abが使用され、評価対象物性として引張伸び率が使用されている。ポリプロピレン製のバルブの外側表面の基準色としては未使用状態の製品の色を用い、引張伸び率の基準値としては未使用状態の製品の引張伸び率の値を用いた。また、図12では、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の色が測色計12によってSCI方式で測定されており、図13では、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の色が測色計12によってSCE方式で測定されている。なお、引張伸び率(引張破壊伸び率、引張破断伸び率)は、JIS K 6741:1999に定められる引張試験方法を採用した。
図12に示されているように、色差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCI方式でのポリプロピレン製のバルブの外側表面の色差と引張伸び保持率との間に良好な相関関係が得られた。また、図13に示されているように、色差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCE方式でのポリプロピレン製のバルブの外側表面の色差と引張伸び保持率との間に良好な相関関係が得られた。
例えば、合成樹脂製のバルブの表面状態に関係なく素材そのものの色から物性保持率を推測する場合には、図12に示されている相関関係から得られる近似関数を、合成樹脂製のバルブの表面状態も加味した目視に近い色から物性保持率を推測する場合には、図13に示されている相関関係から得られる近似関数を関数記憶部13に記憶すればよい。
図14及び図15は、プリプロピレン製のバルブの外側表面の基準色に対する明度の差ΔL*とポリプロピレン製のバルブの引張伸び率の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表すグラフであり、バルブの外側表面の色の変化の程度の指標としてL*a*b*表色系における明度の差ΔL*が使用され、評価対象物性として引張伸び率が使用されている。ポリプロピレン製のバルブの外側表面の基準色としては未使用状態の製品の色を用い、引張伸び率の基準値としては未使用状態の製品の引張伸び率の値を用いた。また、図14では、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度が測色計12によってSCI方式で測定されており、図15では、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度が測色計12によってSCE方式で測定されている。
図14に示されているように、明度の差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCI方式でのポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度の差と引張伸び保持率との間に良好な相関関係が得られた。また、図15に示されているように、明度の差をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCE方式でのポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度の差と引張伸び保持率との間に良好な相関関係が得られた。
この場合も色差の場合と同様に、例えば、合成樹脂製のバルブの表面状態に関係なく素材そのものの色から物性保持率を推測する場合には、図14に示されている相関関係から得られる近似関数を、合成樹脂製のバルブの表面状態も加味した目視に近い色から物性保持率を推測する場合には、図15に示されている相関関係から得られる近似関数を関数記憶部13に記憶すればよい。
図16及び図17は、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度L*とポリプロピレン製のバルブの引張伸び率の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表すグラフであり、バルブの外側表面の色の変化の指標に代えて色の明度が使用され、評価対象物性として引張伸び率が使用されている。ポリプロピレン製のバルブの引張伸び率の基準値としては未使用状態の製品の引張伸び率の値を用いた。また、図16では、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度が測色計12によってSCI方式で測定されており、図17では、ポリプロピレン製のバルブの外側表面の明度が測色計12によってSCE方式で測定されている。
図16に示されているように、明度をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCI方式でのポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度と引張伸び保持率との間に良好な相関関係が得られた。また、図17に示されているように、明度をx、引張伸び保持率をyとしたとき、SCE方式でのポリプロピレン製のバルブの外側表面の色の明度と引張伸び保持率との間に良好な相関関係が得られた。したがって、管の場合と同様に、このようにして求めた相関関係から得られた近似関数を関数記憶部13に記憶すれば、色の変化の程度ではなく、ポリプロピレン製のバルブの明度の絶対値から測定時の引張伸び保持率などの物性保持率を推測することも可能となる。
なお、図6から図11の説明に関連して記載した上記近似関数は、一例であり、例えばサンプル数を増やした場合、特定の条件下の配管部材、例えば特定の合成樹脂材料によって形成された配管部材に限定した場合、引張伸び保持率以外を物性保持率とした場合などには、異なる近似関数が得られる可能性がある。その場合には、得られた近似関数を関数記憶部13に記憶して使用することができる。すなわち、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン以外の樹脂材料から形成された管やバルブ以外の配管部材、引張伸び保持率以外の物性保持率でも、サンプル等から相関関係を表す近似関数を得られれば、物性保持率を推測することができる。
上述したように、評価対象物性の低下の原因と考えられるポリエン化が生じて、ポリエンの連鎖が8個になると、400nmの波長(青紫)の光を吸収して赤と緑の光を反射するようになる。その結果、黄色(青紫の補色)が強まって見えるようになり、L*a*b*表色系のb*軸がプラスになる方向に色が変化する。さらに、8〜12個のポリエンの連鎖が混在するようになると、400〜500nmの波長(紫〜緑)の光を吸収する。この結果、黄色〜赤色が強まって見えるようになり、b*軸の変化に加えてL*a*b*表色系のa*軸がプラスになる方向に色が変化する。さらに長いポリエン構造の連鎖が混在した状態になると、ほぼ全ての可視光波長が吸収されるようになって、黒色に見えるようになり、L*a*b*表色系のL*軸がゼロに近づく方向に色が変化する。その他のものは、白く見える方向に変化するので、L*軸が100に近づく方向に変化する。また、同様に評価対象物性の低下の原因と考えられる酸化が生じたり、着色剤や添加剤の脱離、微小クラックの成長の結果、配管部材の外側表面に凹凸が形成されて光が拡散されやすくなったり、着色剤が離脱したりすると、白っぽく見えるようになる。その結果、合成樹脂製配管部材の外側表面の色は、L*a*b*表色系においてL*軸が100に近づく方向に変化する。
このように、L*a*b*表色系を用いると、物性の変化に影響を与える色の変化を検出しやすくなることから、関数記憶部13に記憶される相関関係を表す関数の色に関する情報は、L*a*b*表色系で表現することが好ましい。
次に、図18を参照して、SCI方式で測定した、合成樹脂製配管部材の外側表面の基準色に対する色差ΔE*abと、合成樹脂製配管部材の引張伸び率の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表す関数を関数記憶部13に記憶する場合を例にして、図1に示されている配管部材劣化診断装置11を用いた劣化診断の手順を説明する。なお、色空間として、L*a*b*表色系に基づく色空間を用いるものとする。
最初に、複数の合成樹脂製の配管部材のサンプルについて、測色計21を用いて、外側表面の色をSCI方式で測定し、L*a*b*表色系の色空間における合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差ΔE*abを求めると共に、引張伸び率を測定し、合成樹脂製配管部材の引張伸び率の基準値に対する引張伸び保持率を求めて、相関関係を表す近似関数を求め、関数記憶部13に記憶する(ステップS1)。このとき、劣化診断の対象の配管部材の材料が特に限定されない場合には、診断対象となり得る全ての種類の材料の配管部材を含むサンプルについて、色と引張伸び率を測定して、色差と引張伸び保持率との相関関係を表す近似関数を求める。劣化診断の対象を例えばポリ塩化ビニル製又はポリプロピレン製の配管部材に限定する場合には、ポリ塩化ビニル製又はポリプロピレン製の配管部材のサンプルのみについて、色と引張伸び率を測定して色差と引張伸び保持率との相関関係を表す近似関数を求めてもよい。また、例えば図6又は図12に示されているような近似関数が予め判明している場合には、それを用いてもよい。
なお、評価対象物性として引張伸び率以外のものを使用する場合には、引張伸び率に代えて又はこれに加えて、当該評価対象物性について各サンプルの測定を行って近似関数を求めればよい。また、劣化診断に用いる測色計21による色の測定をSCE方式で行う場合には、測色計21による各サンプルの色の測定をSCI方式に代えてSCE方式で行えばよい。
次に、測色計21でSCI方式で劣化診断の対象の配管部材の外側表面の色を測定し(ステップS2)、物性保持率演算部17によって、配管部材の外側表面の基準色(例えば未使用状態の配管部材の色など)と測定した配管部材の外側表面の色とからL*a*b*表色系の色空間における色差を求める(ステップS3)。関数記憶部13に記憶されている近似関数がSCE方式による測定に基づいて求められている場合には、ここで、測色計21を用いて、SCI方式に代えて、SCE方式で配管部材の外側表面の色の測定を行えばよい。
さらに、物性保持率演算部17は、関数記憶部13に記憶された近似関数と、求められた配管部材の外側表面の色差とに基づいて、引張伸び保持率を推測する(ステップS4)。評価対象物性として引張伸び率以外のものを使用する場合には、引張伸び率に代えて又はこれに加えて、対応する評価対象物性について関数記憶部13に記憶された近似関数を用いて、同様に、当該評価対象物性の物性保持率を推測すればよい。
物性保持率演算部17は、推測された引張伸び保持率に基づいて、配管部材の劣化度を決定し(ステップS5)、表示部19に表示する(ステップS6)。劣化度は、例えば、劣化の進行度合いを段階分けして、各段階と引張伸び保持率の範囲とを対応付けた対応表に基づいて、判断される。物性保持率演算部17は、劣化の進行度合いにさらに交換が必要となるまでの予測期間をさらに対応付けた上記の対応表を用いて、交換時期を予測し、これを表示部19に表示してもよい。また、物性保持率演算部17は、複数の評価対象物性の物性保持率に基づいて、配管部材の劣化度を決定することも可能である。この場合、例えば、推測した複数の評価対象物性のうち物性保持率が最も低い値のものについての劣化度を採用して、表示部19に表示したり、最も低い値の物性保持率の評価対象物性に基づいて、交換時期を予測するようにしたりすることができる。
合成樹脂製配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における明度の差ΔL*と、合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率との相関関係を表す関数を用いる場合も、図19に示されているように、ステップS1において、合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差ΔE*abと合成樹脂製の配管部材の引張伸び率の基準値に対する引張伸び保持率との相関関係を表す近似関数に代えて、合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色空間における明度の差ΔL*と合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率との相関関係を表す近似関数を関数記憶部13に記憶し(ステップS11)、ステップS3において、色差に代えて、配管部材の基準色と測色計21によって測定した合成樹脂製の配管部材の外側表面の色との明度の差を求め(ステップS13)、ステップS4において、色差に代えて、基準色に対する明度の差を使用して、関数記憶部13に記憶された相関関係を表す関数と求めた明度の差とに基づいて物性保持率を推測すれば(ステップS14)、他の点は、同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
このように、配管部材劣化診断装置11では、特定の原因に基づいた劣化の進行を劣化度に対応する色見本との対比で判断するのではなく、様々な原因に基づいて劣化の進行と共に色が変化することに着目し、色差によって特定の原因に限定されない様々な原因による「総合的」な劣化の進行を判断することができる。また、配管部材劣化診断装置11は、測色計21によって配管部材の外側表面の色の測定を行うことができれば、配管部材の評価対象物性を推測でき、劣化度を判断できるので、配管部材のサンプリングや破壊試験が不要になる。
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明による配管部材劣化診断方法及び装置を説明したが、本発明は、図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明では、合成樹脂材製の配管部材としてポリ塩化ビニル製の管やポリプロピレン製のバルブを、物性保持率として引張伸び保持率を例にしているが、他の種類の合成樹脂製の配管部材や他の種類の物性保持率、例えば引張強さ(引張降伏強さ)、耐衝撃性(シャルピー衝撃強度、落錘衝撃強度)、扁平性などの場合でも、同様に、配管部材の色差と物性保持率との相関関係に基づいて、物性保持率を推定して、劣化の診断を行うことが可能である。さらに、管以外にも、継手、バルブ、タンクなどにも適用可能である。また、関数記憶部13に、配管部材の物性保持率と配管部材の外側表面の色の基準色に対する色差との相関関係を表す関数と配管部材の物性保持率と配管部材の外側表面の色の基準色に対する明度の差との相関関係を表す関数とを記憶しておき、測定された配管部材の外側表面の色から求めた配管部材の外側表面の基準色に対する色差と明度の差の両方を用いて、それぞれ物性保持率を推測し、推測した両方の物性保持率から総合的に配管部材の劣化度を決定するようにすることも可能である。
11 配管部材劣化診断装置
13 関数記憶部
15 入力部
17 物性保持率演算部
19 表示部
21 測色計

Claims (12)

  1. 合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率と色空間における合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差との相関関係を予め求める工程と、
    測色計を用いて、合成樹脂製の配管部材の外側表面に照射した光の反射光に基づいて前記配管部材の外側表面の色を測定する工程と、
    前記配管部材の外側表面の基準色と前記測色計によって測定された前記配管部材の外側表面の色との前記色空間における色差を求める工程と、
    予め求められた前記相関関係に基づいて、前記色差から測定時における前記配管部材の物性保持率を推測して、前記配管部材の劣化度を診断する工程と、
    を含み、前記評価対象物性が引張伸び率、耐衝撃性及び扁平性の中から選択されることを特徴とする配管部材劣化診断方法。
  2. 前記色空間がL*a*b*表色系の色空間である、請求項1に記載の配管部材劣化診断方法。
  3. 前記評価対象物性が引張伸び率である、請求項1又は請求項2に記載の配管部材劣化診断方法。
  4. 前記配管部材が、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデンから成る群から選択される材料によって形成された配管部材である、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の配管部材劣化診断方法。
  5. 前記測色計は、前記配管部材の外側表面での正反射光を含めた反射光を用いるSCI方式で色を測定する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の配管部材劣化診断方法。
  6. 前記測色計は、前記配管部材の外側表面での反射光から正反射光を除去するSCE方式で色を測定する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の配管部材劣化診断方法。
  7. 合成樹脂製の配管部材の評価対象物性の基準値に対する物性保持率と色空間における合成樹脂製の配管部材の外側表面の基準色に対する色差との相関関係を表す関数を予め記憶する関数記憶部と、
    前記配管部材の外側表面の基準色と測定された前記配管部材の外側表面の色との前記色空間における色差を求め、求められた前記色差と前記関数記憶部に記憶される前記関数とに基づいて、測定時における前記配管部材の物性保持率を求める物性保持率演算部と、
    を備え、前記評価対象物性が引張伸び率、耐衝撃性及び扁平性の中から選択されることを特徴とする配管部材劣化診断装置。
  8. 前記配管部材の外側表面の色は、照射した光の反射光に基づいて色を測定する測色計によって測定される、請求項7に記載の配管部材劣化診断装置。
  9. 前記色空間がL*a*b*表色系の色空間である、請求項7又は請求項8に記載の配管部材劣化診断装置。
  10. 前記評価対象物性が引張伸び率である、請求項7から請求項9の何れか一項に記載の配管部材劣化診断装置。
  11. 前記配管部材が、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデンから成る群から選択される材料によって形成されている配管部材である、請求項7から請求項10の何れか一項に記載の配管部材劣化診断装置。
  12. 前記物性保持率演算部が、求められた物性保持率に基づいて前記配管部材の劣化度を決定する、請求項7から請求項11の何れか一項に記載の配管部材劣化診断装置。
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