JP7121885B2 - コバルトおよびニッケルの分離方法 - Google Patents
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さらに前記コバルト・ニッケル分離工程で分離した前記沈殿物に硫酸を含む再溶解液を加えて攪拌した後、固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含むコバルト・ニッケル溶液を得る再溶解工程と、前記コバルト・ニッケル溶液に抽出剤溶液を添加して、コバルト抽出液と、ニッケル抽出液とを得る溶媒抽出工程を備えていてもよい。
廃棄されたリチウムイオン二次電池(以下、廃LIBと称する)を構成する電極材料を分離する前処理工程として、廃LIBを加熱炉で例えば過熱水蒸気で約500℃程度まで加熱して熱処理を行う。
次に、熱処理後の廃LIBを粉砕した後、篩分けによって電極材料を選別分離する。廃LIBの粉砕は、例えば、二軸剪断破砕機やハンマーミルを用いて行う。
次に、粉砕選別工程S2で分離された電極材料を処理液に浸漬して浸出液を得る。処理液としては、硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)とを混合したものを用いる。
処理液の一例としては、濃度が2mol/L以上の希硫酸100mlに対し、濃度が30wt%の過酸化水素水を5ml以上の比率で混合したものが挙げられる。希硫酸の濃度を2mol/L以上、過酸化水素水の添加量を5ml以上とすることで、コバルトおよびニッケルの浸出率を高めることができる。特に制限はないが、それ以上にしても浸出率のさらなる向上は望めないため、硫酸濃度の上限は18mol/L、過酸化水素水の添加量の上限は30mlである。
処理液温度を60℃以上、浸出(浸漬)時間を4時間以上とすることで、コバルトおよびニッケルの浸出率を高めることができる。特に制限はないが、それ以上にしても浸出率のさらなる向上は望めないため、処理液温度の上限は90℃、浸出時間の上限は15時間である。
こうした浸出工程S3によって、電極材料のうち、正極活物質由来の金属成分(コバルト、ニッケル、マンガン、銅、鉄、アルミニウム、リチウム、カルシウム等)は処理液に溶解し、負極活物質由来の炭素は、溶解せずに炭素残渣として残る。
次に、浸出工程S3で得られた浸出液に、硫化水素化合物を加えて撹拌した後、固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む溶出液と、硫化銅(CuS)を含む残渣とを得る。
銅分離工程S4で用いる硫化水素化合物としては、水溶性のアルカリ金属硫化水素化物、本実施形態では硫化水素ナトリウム(NaSH)の水溶液を用いている。銅分離工程S4の具体例としては、浸出液をイオン交換水で希釈した後、硫化水素ナトリウムの水溶液を、この希釈した浸出液に添加して攪拌する。
硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの浸出液のpHを1.0以下に維持することが好ましい。浸出液のpHが1.0を超えると、コバルト、ニッケルの硫化物が生じて、これらの溶出液への回収率が低下するおそれがある。
硫化水素化合物としては、硫化水素ナトリウム以外にも、例えば、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、または亜ジチオン酸ナトリウムであってもよい。
次に、溶出液にアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整をした後、硫化水素化合物を加えて撹拌、固液分離を行い、硫化コバルトおよび硫化ニッケルを含む沈殿物と、リチウムを含む残液とを得る。
こうしたpH調整によって、溶出液のpHを3.0~4.0の範囲内、例えば3.5にする。
また、pH調整時にpHを4.0を超える値にすると、pH調整に時間がかかるが、硫化水素化合物を添加するとすぐにpH4.0以下となるため、非効率である。そのため、pH調整範囲としては3.0~4.0の範囲が望ましい。
硫化水素ナトリウムの水溶液の添加は、例えば、酸化・還元電位(vs Ag/AgCl)が-400mV以下になるまで行う。酸化・還元電位が-400mV以下になるまで硫化水素ナトリウムを添加することで、溶出液に含まれるコバルト、ニッケルをほぼ全量沈殿させることができる。
次に、コバルト・ニッケル分離工程S5で得られた沈殿物に硫酸を含む再溶解液を加えて攪拌した後、固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含むコバルト・ニッケル溶液を得る。
この時、処理液温度を60℃以上、浸出時間を1時間以上とすることで、コバルトおよびニッケルの溶解率を高めることができる。特に制限はないが、それ以上にしても溶解率のさらなる向上は望めないため、処理液温度の上限は90℃、浸出時間の上限は15時間である。
銅分離工程S4において、固液分離を行う前にアルミニウムを除去する手順について上述したが、そのような手順を実施していない場合、沈殿物にはアルミニウム化合物が含まれている場合がある。この場合、沈殿物をリパルプすることにより、アルミニウム化合物を除去することができる。
次に、再溶解工程S6で得られたコバルト・ニッケル溶液に抽出剤溶液を添加して、コバルト抽出液と、ニッケル抽出液とを得る。
抽出剤溶液としては、金属抽出剤と希釈剤を混合した混合溶液を用いることができる。例えば、2-エチルヘキシル2-エチルヘキシルホスホネート(PC88A:大八化学株式会社製)を20vol%、ケロシン(希釈剤)を80vol%の割合で混合した混合溶液を用いることができる。
(本発明例の手順)
廃LIBから取り出した電極材料14.5gを、濃度2mol/Lの硫酸100mLおよび濃度30%の過酸化水素水5mLの処理液に加え、液温60℃で加熱撹拌を4時間行った(浸出工程)。その後、室温まで放冷し、浸出液に対して、250g/Lになるようイオン交換水に撹拌溶解した硫化水素ナトリウム水溶液を、浸出液の酸化・還元電位(ORP)が0mV(vs Ag/AgCl)以下になるまで添加し撹拌した(銅分離工程)。
なお、金属濃度はICP-AES、pHはpH計、ORPはORP計によって測定した。%の数値は質量基準である。
上述した本発明例の浸出工程に関して、処理液の濃度、過酸化水素水の液量、温度、浸出時間を互いに変化させた実験例1~9について、コバルトおよびニッケルの液相への浸出率を測定した。この結果を表1に示す。
次に、上述した本発明例の銅分離工程に関して、実験例5で得られた浸出液に硫化水素ナトリウム水溶液を添加し、それに伴うpH、ORP、浸出液中の金属濃度の変化を調べた。実験例10では、添加前の浸出液について測定を実施した。硫化水素ナトリウム水溶液の添加と測定を繰り返し、ORPが0mV以下となったところで工程終了とした(実験例11~13)。なお、pH測定は、硫化水素ナトリウム水溶液の添加開始から継続して実施し、各回の添加後にpHが安定した段階で、その時点のpHと、初回の添加開始からの経過時間とを記録するとともに、その他の項目の測定を実施した。
この結果を表2に示す。
次に上述した本発明例のコバルト・ニッケル分離工程に関して、硫化水素化合物の添加中の溶出液のpHによる反応への影響を調べた。
[pH2.0~3.0]
実験例14では、溶出液として実験例13で得られたものを用い、添加前の溶出液について測定を実施した。次に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH調整した溶解液について測定を実施した(実験例15)。その後、硫化水素ナトリウム水溶液の添加と測定を繰り返した(実験例16~23)。添加中のpHを2.0~3.0の範囲内に維持するため、硫化水素ナトリウム水溶液とあわせて、水酸化ナトリウム水溶液と硫酸も適宜、添加した。
硫化水素ナトリウム水溶液の添加開始以降の、各種水溶液の累積添加量と、その時点の溶解液の液量、pH、ORP、金属濃度を表3に示す。
なお、pH測定は、硫化水素ナトリウム水溶液の添加開始から継続して実施し、各回の添加後にpHが安定した段階で、その時点のpHと、初回の添加開始からの経過時間とを記録するとともに、その他の項目の測定を実施した。
pHを変更した以外は、実験例14~23と同様の水溶液添加、測定を実施した。実験例24が添加前の溶出液、実験例25がpH調整後の溶解液、実験例26~33が添加の各段階の溶出液である。測定の結果を表4に示す。
pHを変更した以外は、実験例14~23と同様の水溶液添加、測定を実施した。実験例34がpH調整後の溶解液、実験例35~38が添加の各段階の溶出液である。測定の結果を表5に示す。
なお、pHが3.5~5.0の領域ではpHをコントロールすることが容易ではなく、各回の硫化水素ナトリウム水溶液の添加後、pHが安定までの時間が、他の実験例に比べて長い。また、pHが3.5以上になるとニッケル、コバルト以外の溶解度の低い水酸化物が生成し始める可能性がある。
pHを変更した以外は、実験例14~23と同様の水溶液添加、測定を実施した。実験例39がpH調整後の溶解液、実験例40~43が添加の各段階の溶出液である。測定の結果を表6に示す。
本発明例の手順と同様に、浸出工程と銅分離工程を実施して溶出液を得た。続いて、コバルト・ニッケル分離工程にかえて、従来技術で実施されていたマンガン分離工程、アルミニウム分離工程を実施した。
上述した従来例のマンガン分離工程に関して、溶出液に濃度5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液と、濃度25%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、それに伴う溶出液中の金属濃度の変化を測定した。従来実験例1で添加前の溶出液を測定した後、従来実験例2~6で各水溶液の添加と測定を繰り返した。この結果を表7に示す。
次に、上述した従来例のアルミニウム分離工程に関して、濾液に加える水酸化ナトリウム水溶液の添加量を変化させた従来実験例7~10について、濾液に残る金属(コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム)の濃度とpHとを測定した。従来実験例7は、水酸化ナトリウム水溶液の添加前である。従来実験例10では、硫酸も添加した。この結果を表8に示す。
Claims (10)
- リチウムイオン二次電池からコバルトおよびニッケルを分離する、コバルトおよびニッケルの分離方法であって、
前記リチウムイオン二次電池を粉砕および分級し、少なくともコバルト、ニッケル、銅、およびリチウムを含む電極材料を得る粉砕選別工程、
硫酸および過酸化水素を含む処理液に前記電極材料を浸漬して浸出液を得る浸出工程、
前記浸出液に硫化水素化合物を加えて撹拌した後、固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む溶出液と、硫化銅を含む残渣とを得る銅分離工程、
前記溶出液にアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整をした後、硫化水素化合物を加えて撹拌、固液分離を行い、硫化コバルトおよび硫化ニッケルを含む沈殿物と、リチウムを含む残液とを得るコバルト・ニッケル分離工程、
を備え、
前記コバルト・ニッケル分離工程では、前記硫化水素化合物として硫化水素ナトリウム水溶液を用い、前記硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの間の前記溶出液のpHを2.0~5.0の範囲内に維持し、酸化・還元電位(vs Ag/AgCl)が-400mV以下になるまで、前記溶出液に前記硫化水素化合物を加えることを特徴とするコバルトおよびニッケルの分離方法。 - 前記コバルト・ニッケル分離工程で分離した前記沈殿物に硫酸を含む再溶解液を加えて攪拌した後、固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含むコバルト・ニッケル溶液を得る再溶解工程と、
前記コバルト・ニッケル溶液に抽出剤溶液を添加して、コバルト抽出液と、ニッケル抽出液とを得る溶媒抽出工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。 - 前記再溶解工程では、前記沈殿物の前記再溶解液に対する浸漬時間が1時間以上であることを特徴とする請求項2に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
- 前記浸出工程では、前記処理液の液温が60℃以上、硫酸濃度が2mol/L以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
- 前記銅分離工程では、
前記硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの間の前記浸出液のpHを1.0以下に維持し、
酸化・還元電位(vs Ag/AgCl)が0mV以下になるまで、前記硫化水素化合物として硫化水素ナトリウム水溶液を加えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。 - 前記硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの間の前記溶出液のpHを2.0~3.5の範囲内に維持することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
- 前記コバルト・ニッケル分離工程におけるpH調整では、前記溶出液のpHを3.0~4.0の範囲内に調整することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
- 前記再溶解工程では、硫酸及び過酸化水素水を含む前記再溶解液で前記沈殿物を溶解させるか、または硫酸を含む前記再溶解液に前記沈殿物を加えた後、エアバブリングを行うことによって溶解させることを特徴とする請求項2または3に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
- 前記再溶解工程では、前記再溶解液の液温が60℃以上、硫酸濃度が0.5mol/L以上であることを特徴とする請求項2、3および8のいずれか一項に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
- 前記粉砕選別工程の前工程として、前記リチウムイオン二次電池を加熱して熱処理を行う熱処理工程を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
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