JP2023150668A - 電極材料の浸出方法、コバルトおよびニッケルの分離方法 - Google Patents

電極材料の浸出方法、コバルトおよびニッケルの分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池に含まれる電極材料を、過剰な量の酸を用いることなく、短時間で効率的に酸浸出することが可能な電極材料の浸出方法、およびこの浸出方法を含むコバルトおよびニッケルの分離方法を提供する。【解決手段】リチウムイオン二次電池の電極材料を酸浸出させる電極材料の浸出方法であって、リチウムイオン二次電池の電極材料と硫酸とを反応させて、前記電極材料に含まれる金属を浸出させた浸出液を得る浸出工程、を有し、前記浸出工程は、前記硫酸と前記電極材料とを混錬して浸出ペーストを形成する混練過程と、前記浸出ペーストに水を加えて希釈して、pHが2.0以下の前記浸出液を形成する希釈過程と、を含む工程であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の電極材料を浸出する電極材料の浸出方法、およびこれを用いたコバルトおよびニッケルの分離方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、各種電子機器等の小型の物から電気自動車等の大型の物まで、幅広い分野の電源として利用されている。こうしたリチウムイオン二次電池が廃棄された際には、有用な金属を回収して再利用することが求められている。
リチウムイオン二次電池は、負極材と正極材とを、多孔質のポリプロピレン等のセパレータで分画し層状に重ね、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質および電解液と共にアルミニウムやステンレス等のケースに封入して形成されている。
リチウムイオン二次電池の負極材は銅箔などからなる負極集電体にバインダーが混合された黒鉛などの負極活物質を塗布して形成されている。また、正極材はアルミニウム箔などからなる正極集電体にバインダーが混合されたマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムなどの正極活物質を塗布して形成されている。
このようにリチウムイオン二次電池の正極活物質にはコバルトおよびニッケルが多く含まれているが、リサイクル過程で予め粉砕分離された正極活物質には、コバルト、ニッケル以外にも、マンガン、銅、アルミニウム、リチウムなどが含まれている。このため、リチウムイオン二次電池からコバルトおよびニッケルを高い収率で分離、回収するためには、これら以外の金属を正確に取り除く必要がある。
従来、リチウムイオン二次電池に含まれるコバルトおよびニッケルを分離、回収する方法として、例えば、特許文献1には、リチウムイオン二次電池の電極材料を、硫酸を用いて酸浸出を行って浸出液を生成し、この浸出液に硫化物を加えて硫化銅を沈殿させ、更に、水酸化アルミニウムおよびマンガン酸化物を沈殿させた後の溶液からコバルトおよびニッケルを回収するコバルトおよびニッケルの回収方法が開示されている。
特開2015-183292号公報
しかしながら、特許文献1に開示された回収方法では、電極材料を酸浸出して浸出液を生成する浸出工程において、電極材料の主成分が負極材料に由来する疎水性のカーボンであるため、硫酸および水と混和しにくく、更に、酸浸出を行う際に発生するガスによって、電極材料の一部が硬い泡状物となって浮き上がるために、電極材料と硫酸の反応が緩慢になり、反応時間が長くなる。その結果、浸出工程が長くなり、また、反応を進行させるために反応等量以上の過剰の硫酸を添加する必要が生じるといった課題があった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、リチウムイオン二次電池に含まれる電極材料を、過剰な量の酸を用いることなく、短時間で効率的に酸浸出することが可能な電極材料の浸出方法、およびこの浸出方法を含むコバルトおよびニッケルの分離方法を提供することを目的とする。
上述の背景から、本発明者は、電極材料を酸浸出する浸出工程において、電極材料を予め少量の硫酸と混錬してペースト状の浸出物である浸出ペーストを形成し、この浸出ペーストを水で希釈するという、2段階の過程を経ることにより、過剰の硫酸を使用せず、短時間で効率的に電極材料を酸浸出できることを見出した。
即ち、上記の課題を解決するために、本発明の電極材料の浸出方法は、リチウムイオン二次電池の電極材料を酸浸出させる電極材料の浸出方法であって、リチウムイオン二次電池の電極材料と硫酸とを反応させて、前記電極材料に含まれる金属を浸出させた浸出液を得る浸出工程、を有し、前記浸出工程は、前記硫酸と前記電極材料とを混錬して浸出ペーストを形成する混練過程と、前記浸出ペーストに水を加えて希釈する希釈過程と、を含む工程であることを特徴とする。
本発明によれば、浸出工程として、混練過程と希釈過程の2段階の過程を経ることによって、電極材料を、過剰な量の酸を用いることなく、短時間で効率的に酸浸出することが可能になる。
また、本発明は、前記混練過程では、前記電極材料の質量(g)をEA、前記硫酸の容量(mL)をSV、前記硫酸の濃度(mol/L)をSCとした時に、1≦(SV/EA)≦2、かつ、5.5EA≦(SC×SV)≦10.3EA、を満たすように混練を行ってもよい。
また、本発明は、前記混練過程、または前記希釈過程のうち、少なくとも何れか一方において、過酸化水素を更に添加してもよい。
また、本発明は、前記希釈過程では、pHを2.0以下、液温を50℃以上にした後、過酸化水素を添加してもよい。
また、本発明は、前記希釈過程では、希釈後の浸出液のpHが2.0以下の範囲になるように、更に硫酸を添加してもよい。
また、本発明は、前記混練過程、または前記希釈過程のうち、少なくとも何れか一方において、更にアルコールを添加してもよい。
本発明のコバルトおよびニッケルの分離方法は、リチウムイオン二次電池からコバルトおよびニッケルを分離する、コバルトおよびニッケルの分離方法であって、前記リチウムイオン二次電池を粉砕および分級し、少なくともコバルト、ニッケル、銅、およびリチウムを含む電極材料を得る粉砕選別工程、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極材料の浸出方法によって浸出液を生成する浸出工程、前記浸出液に硫化水素化合物を加えて撹拌し、硫化銅として銅を沈殿させる銅沈殿工程、前記銅沈殿工程で得られた沈殿を含む混合液にアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整を行い、第1中和液を得る第1中和過程と、前記第1中和液の固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む第1溶出液と硫化銅を含む残渣を得る第1濾過過程と、を順に含む第1処理工程、または、前記銅沈殿工程で得られた沈殿を含む混合液の固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む第2溶出液と硫化銅を含む残渣を得る第2濾過過程と、前記第2溶出液にアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整を行い、第2中和液を得る第2中和過程と、を順に含む第2処理工程、のうちいずれか一方、前記第1処理工程で得た前記第1溶出液、または第2処理工程で得た前記第2中和液に硫化水素化合物を加えて撹拌、固液分離を行い、硫化コバルトおよび硫化ニッケルを含む沈殿物と、リチウムを含む残液とを得るコバルト・ニッケル分離工程、を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記銅沈殿工程の後工程として、前記第1処理工程を行ってもよい。
また、本発明は、前記粉砕選別工程の前工程として、前記リチウムイオン二次電池を加熱して熱処理を行う熱処理工程を備えていてもよい。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池に含まれる電極材料を、過剰な量の酸を用いることなく、短時間で効率的に酸浸出することが可能な電極材料の浸出方法、およびこの浸出方法を含むコバルトおよびニッケルの分離方法を提供することができる。
本発明の一実施形態の電極材料の浸出方法を含むコバルトおよびニッケルの分離方法を段階的に示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態の浸出方法を含むコバルトおよびニッケルの分離方法を段階的に示したフローチャートである。 式1、式2に基づく添加した硫酸容量と濃度との適切な範囲を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の電極材料の浸出方法、およびこれを含むコバルトおよびニッケルの分離方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電極材料の浸出方法を含むコバルトおよびニッケルの分離方法を段階的に示したフローチャートである。
(熱処理工程S1)
廃棄されたリチウムイオン二次電池(以下、廃LIBと称する)を構成する電極材料を分離する前処理工程として、加熱炉を用いて、廃LIBを過熱水蒸気によって例えば約500℃程度まで加熱して熱処理を行う。
熱処理は、真空でも常圧でもよいが、酸素を含まない不活性雰囲気中の加熱が好ましい。廃LIBは、バインダー及び電解液の存在により正極活物質や負極活物質と、集電体であるアルミニウム箔や銅箔との付着力が大きい。このため、400℃以上の熱処理工程を行うことによって、これら活物質と集電体との分離を容易にする。廃LIBの加熱温度を650℃以下にすることにより、アルミニウムが溶融して活物質を巻き込んで冷却固化して、活物質だけを取り出すことが困難になることを防止できる。
(粉砕選別工程S2)
次に、熱処理後の廃LIBを粉砕した後、篩分けによって電極材料を選別分離する。廃LIBの粉砕は、例えば、二軸剪断破砕機やハンマーミルを用いて行う。
そして、粉砕した廃LIBを、適切な目開きの篩を用いて分級し,電池容器,アルミニウム箔,銅箔,ニッケル端子を篩の上産物として、正極活物質(LiCoOなど)および負極活物質(グラファイト)を含む電極材料を篩の下産物として回収する。こうした電極材料は、例えば、目開きが0.5mm程度の篩を通過したものであればよい。
分離された電極材料は、主に正極活物質の構成材料および不純物であるコバルト、ニッケル、マンガン、銅、鉄、アルミニウム、リチウム、カルシウム等、および負極活物質の構成材料である炭素等を含んでいる。
(浸出工程S3)
次に、本実施形態の電極材料の浸出方法を構成する浸出工程S3として、粉砕選別工程S2で分離された電極材料を硫酸を含む処理液によって酸浸出を行って浸出液を得る。
浸出工程S3は、電極材料を少量の硫酸(処理液)と混錬して浸出ペーストを形成する混練過程S3-1と、得られた浸出ペーストを水で希釈して浸出液を形成する希釈工程S3-2の、2段階の過程を経て行われる。
混練過程S3-1では、例えば、濃度が45~47質量%程度の少量の硫酸と、電極材料とを混錬する。具体的には、例えば、電極材料を容器に入れて、少量の硫酸を加えた後、ゴムへら、ガラス棒などを用いて、電極材料と硫酸とがペースト状になるまで混錬する。この時、電極材料が硫酸によって溶解する際に生じるガスにより、混練物が発泡するが、生じた泡を物理的に砕くように練り混ぜることが好ましい。なお、混練は、脱泡機能のある混練機、例えば、減圧式混練機などを用いることもできる。
混練過程S3-1において、ペースト状態で混錬することにより、従来の液状での撹拌よりも電極材料と硫酸との接触が容易になる。また、浸出による気泡が混錬で砕かれて、電極材料と硫酸とがなじみやすくなる。これにより、電極材料を短時間で効率的に酸浸出できる。
混練過程S3-1で用いる電極材料と、これに加える硫酸との混合比率は、電極材料の質量(g)をEA、硫酸の容量(mL)をSV、硫酸の濃度(mol/L)をSCとした時に、下記の式1、および式2を満たすようにすることが好ましい。
1≦(SV/EA)≦2・・・(1)
5.5EA≦(SC×SV)≦10.3EA・・・(2)
式1のSV/EAが1未満である場合、混練物が硬すぎてペースト状の混練物(浸出ペースト)にすることが困難である。一方、SV/EAが2を超える場合、流動性が大きくなりすぎて、液状物になってしまう。
また、式2のSC×SVが5.5EA未満である場合、電極材料に含まれる活物質を充分に浸出させるだけの硫酸イオンが不足する。一方、SC×SVが10.3EAを超える場合、硫酸イオンが過剰になる、即ち、浸出に寄与しない硫酸が多くなりすぎて、無駄な処理コストが生じる懸念がある。
こうした式1、式2に基づく硫酸の添加量と濃度との適切な範囲を示すグラフを図3に示す。図3では、EA=1としている。図3によれば、硫酸の添加量と濃度とを、適正範囲とされる領域内にすることで、浸出ペーストを形成することができ、かつ、電極材料に含まれる活物質を充分に浸出させ、反応に不要な硫酸を低減することができる。
混練過程S3-1では、電極材料に硫酸を加えるとともに、更に過酸化水素を添加することもできる。
電極材料に含まれるCo,Niは、硫酸に溶解しにくい3価,4価の状態も含まれるため、過酸化水素を還元剤として添加することで、より硫酸に溶解しやすい2価のCo,Niに還元された状態にすることができる。過酸化水素は、濃度が30~35質量%の過酸化水素水の状態で添加されればよい。
混練過程S3-1において過酸化水素を添加する場合、過酸化水素の還元性を発揮させるために、混練物の温度を50℃以上にすることが好ましい。50℃未満であると反応時間が長くなってしまい、60℃を超えると必要以上の熱を加えていることになり熱エネルギーが無駄となる。
混練過程S3-1では、電極材料に硫酸を加える際に、正の反応熱によって混練物が室温よりも昇温していることが多いので、条件によっては特に外部から加熱操作を行わなくてもよい。
更に、混練過程S3-1において、アルコールを添加することもできる。添加するアルコールとしては、例えば、エタノール、ブタノールに代表される炭素原子数が8以下の飽和直鎖状アルコールを挙げることができる。こうしたアルコールは、疎水基および親水基が存在するため、疎水性の電極活物質と水を含む硫酸との親和性を高めて混錬を容易にするとともに、消泡性が有るために、混練中に発泡を低減して、混練ペーストの形成を容易にする。
希釈工程S3-2では、混練過程S3-1で得られた浸出ペーストに対して水、例えば蒸留水を加えて攪拌し、浸出液を生成させる。この時、浸出液のpHが2.0以下になるように希釈すれば、硫酸で溶解可能な電極材料の成分は、ほぼ溶解された状態になる。
なお、希釈工程S3-2で浸出ペーストを水で希釈した際に、浸出液のpHが2を超える場合、更に硫酸を添加してpHが2.0以下になるようにpH調整を行うことが好ましい。浸出液のpHを2以下にしておけば、後工程である銅分離工程S4でpH調整を行う必要が無い。
希釈過程S3-2においても、更に過酸化水素を添加することもできる。希釈過程S3-2において過酸化水素を添加する場合、過酸化水素の還元性を発揮させるために、浸出液の温度を50℃以上、60℃以下の範囲にすることが好ましい。50℃未満であると反応時間が長くなってしまい、60℃を超えると必要以上の熱を加えていることになり熱エネルギーが無駄となる。また、浸出液のpHが2.0以下になるようにしてから過酸化水素を添加することが好ましい。
希釈過程S3-2において過酸化水素を添加することにより、電極材料に含まれる3価,4価の状態のCo,Niなどを硫酸に溶解しやすい2価のCo,Niに還元された状態にして、Co,Niの溶解性を高めることができる。過酸化水素は、水溶液の状態、即ち、濃度が30~35質量%の過酸化水素水の状態で添加されればよい。
以上のような浸出工程S3によって、電極材料の活物質を浸出させた、pHが2.0以下の浸出液を得ることができる。なお、電極材料に含まれる炭素は浸出されないので、炭素残渣として固体状態で残留している。
以上のように、本実施形態の電極材料の浸出方法によれば、浸出工程S3として、混練過程S3-1と希釈過程S3-2の2段階の過程を経ることによって、電極材料を、過剰な量の硫酸を用いることなく、短時間で効率的に酸浸出することができる。
(銅沈殿工程S4)
次に、浸出工程S3で得られた浸出液に、硫化水素化合物を加えて撹拌し、コバルトおよびニッケルを含む溶出液と、硫化銅(CuS)を含む沈殿が混合した混合液を得る。
本発明において硫化水素化合物とは、硫黄分を含み、水に溶解させたときにその硫黄分がHS、HSまたはS2-の形態をとる化合物を意味する。
銅分離工程S4で用いる硫化水素化合物としては、水溶性のアルカリ金属硫化水素化物、本実施形態では硫化水素ナトリウム(NaSH)の水溶液を用いている。銅分離工程S4の具体例としては、浸出液をイオン交換水で希釈した後、硫化水素ナトリウムの水溶液を、この希釈した浸出液に添加して攪拌する。
硫化水素ナトリウムの水溶液の添加は、例えば、酸化・還元電位(vs Ag/AgCl)が0mV以下になるまで行う。酸化・還元電位が0mV以下になるまで硫化水素ナトリウムを添加することで、浸出液に含まれる銅をほぼ全量沈殿させることができる。
硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの浸出液のpHを2.0以下に維持することが好ましい。浸出液のpHが2.0を超えると、コバルト、ニッケルの硫化物が生じて、これらの溶出液への回収率が低下するおそれがある。
なお、硫化水素化合物としては、硫化水素ナトリウム以外にも、例えば、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、または亜ジチオン酸ナトリウムであってもよい。
浸出液に硫化水素化合物を加えることにより、浸出液に溶解している金属成分のうち、銅と硫黄とが反応し、硫化銅(CuS)が生成して沈殿する。一方、銅を除いた金属成分(コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、アルミニウム、リチウム、カルシウム等)は、液相に残留し、コバルトおよびニッケルを含む溶出液が得られる。
(第1処理工程S5A)
次に、第1処理工程S5Aとして、第1中和過程S5A-1と、第1濾過過程S5A-2と、を順に行う。
第1中和過程S5A-1は、銅沈殿工程S4で得られた沈殿を含む混合液に対してアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整を行い、第1中和液を得る。
前工程である銅沈殿工程S4では、硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの浸出液のpHを2.0以下に維持しているため、このままでは、後工程のコバルト・ニッケル分離工程S6において、硫化水素化合物とコバルト、ニッケルが反応しにくくなる虞があるが、硫化水素化合物の添加に伴って、溶出液のpHは低下していく。pH調整後、硫化水素化合物の添加開始時のpHが3.0未満であると、硫化水素化合物の添加終了に至る前に過度のpH低下が生じ、再度のpH調整が必要になる。このため、コバルト・ニッケル分離工程S6の前工程においてpHを3.0以上にした方が効率的である。
また、pH調整時にpHを4.0を超える値にすると、pH調整に時間がかかるが、硫化水素化合物を添加するとすぐにpH4.0以下となるため、非効率である。そのため、pH調整範囲としては3.0~4.0の範囲が望ましい。
また、この第1中和過程S5A-1では、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、銅沈殿工程S5で得られた沈殿を含む混合液のpHを3.0~4.0程度にすることで、この混合液に含まれるアルミニウムを水酸化アルミニウム(Al(OH))にして沈殿させることができる。
こうしたコバルト・ニッケル分離工程S6の前処理のpH調整である第1中和過程S5A-1においては、pH調整液として、水酸化ナトリウム(NaOH)以外にも、水酸化カリウム(KOH)、pH4.0越えであれば更に酸、例えば、硫酸を用いることができる。本実施形態では、溶出液のpHを3.0~4.0の範囲内、例えば3.5に調整した。
次に、第1濾過過程S5A-2では、第1中和過程S5A-1で得られた第1中和液の固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む第1溶出液と硫化銅(CuS)を含む残渣とを分離する。これにより、浸出工程S3で生じた炭素残渣、銅沈殿工程S4で生じた硫化銅(CuS)を含む沈殿残渣、および第1中和過程S5A-1において生じた水酸化アルミニウム(Al(OH))を含む固相と、第1溶出液(液相)とが分離される。第1溶出液には、浸出工程S3で用いた消泡剤に含まれる炭素原子数が8以下の飽和直鎖状アルコールが移行する。
なお、本実施形態では、第1濾過過程S5A-2での固液分離によって、浸出工程S3で生成した炭素残渣も濾別しているが、浸出工程S3においても固液分離を行うことで、第1濾過過程S5A-2を行う前に、予め炭素残渣を分離しておくこともできる。
第1濾過過程S5A-2で分離された固相は、リパルプ(固相に水を加えて再懸濁させた後、脱水することにより精製)、またはケーキ洗浄してから廃棄物として処理されればよい。
(コバルト・ニッケル分離工程S6)
次に、第1処理工程S5Aで得られた第1溶出液に水溶性の硫化水素化合物を添加することによって、溶出液に含まれるコバルトおよびニッケルは、それぞれ水に不溶性の硫化コバルト(CoS)および硫化ニッケル(NiS)になり沈殿する。
コバルト・ニッケルを硫化するための硫化水素化合物としては、例えば、水溶性のアルカリ金属硫化水素化物が挙げられる。硫化水素化合物は、銅沈殿工程S4で用いるものと同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態では、濃度が200g/Lの硫化水素ナトリウムの水溶液を用いた。
硫化水素ナトリウムの水溶液の添加は、例えば、酸化・還元電位(vs Ag/AgCl)が-400mV以下になるまで行う。酸化・還元電位が-400mV以下になるまで硫化水素ナトリウムを添加することで、溶出液に含まれるコバルト、ニッケルをほぼ全量沈殿させることができる。
硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの間の浸出液のpHは2.0~5.0、好ましくは2.0~3.5の範囲内に維持することが好ましい。浸出液のpHが2.0未満となった場合、硫化水素ナトリウムと硫酸との反応(NaSH+HSO→HS+NaSO)が生じ、硫化水素ナトリウムが消費されてコバルト、ニッケルの硫化が進みにくくなる。一方、浸出液のpHが5.0を超えると、他の金属の水酸化物が生じて沈殿物の純度が低下するおそれがある。また、高い領域でpHをコントロールすることは困難である。
なお、ここでいう硫化コバルトには、硫化コバルト(II)、二硫化コバルト(CoS)、八硫化九コバルト(Co)など、各種組成の硫化コバルト化合物が含まれていてもよい。同様に、硫化ニッケル(NiS)には、硫化ニッケル(II)、二硫化ニッケル(NiS)、四硫化三ニッケル(Ni)、二硫化三ニッケル(Ni)など、各種組成の硫化ニッケル化合物が含まれていてもよい。
一方、硫化水素化合物を添加後の液相(残液)には、コバルトおよびニッケルを除いた金属成分(マンガン、鉄、アルミニウム、リチウム、カルシウム等)が残留する。ここで得られた液相は、その後、pH調整による溶媒抽出等によって、含有するマンガン、鉄、アルミニウム、リチウム、カルシウム等をそれぞれ分離、回収することができる。
(再溶解工程S7)
次に、コバルト・ニッケル分離工程S6で得られた沈殿物に硫酸を含む再溶解液を加えて攪拌した後、固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含むコバルト・ニッケル溶液を得る。
再溶解液としては、例えば、硫酸と酸化剤として過酸化水素とを混合したものを用いる。再溶解液の一例としては、濃度が1.5mol/Lの希硫酸100mlに対し、濃度が30wt%の過酸化水素水を20mlの比率で混合したものが挙げられる。
再溶解工程S7の具体例としては、例えば60℃以上に加熱した再溶解液に、沈殿物を加え、4時間以上浸漬する。この時、更に攪拌することが好ましい。また、再溶解液に過酸化水素水を入れずに、沈殿物を浸漬する際にエアバブリングを行うこともできる。
この時、処理液温度を60℃以上、浸出時間を1時間以上とすることで、コバルトおよびニッケルの溶解率を高めることができる。特に制限はないが、それ以上にしても溶解率のさらなる向上は望めないため、処理液温度の上限は90℃、浸出時間の上限は15時間である。
こうした再溶解液を用いた沈殿物の処理によって、コバルトおよびニッケルが再溶解液に溶解する。また、再溶解液に溶解しない不純物、コバルト・ニッケル分離工程S6で生成する単体硫黄などが固相として残る。この後、濾材などを用いて固液分離を行うことにより、コバルトおよびニッケルの純度が高められた(精製された)コバルト・ニッケル溶液が得られる。
こうして得られた、コバルト・ニッケル溶液は、コバルトおよびニッケル以外の電極材料の他の成分(銅、鉄、アルミニウム、リチウム、カルシウム等)は殆ど含まれておらず、コバルトおよびニッケルの高純度な回収原料として好適である。
なお、再溶解工程S7の前工程として、沈殿物をリパルプすることにより、コバルト硫化物、ニッケル硫化物以外の不純物を取り除いておくことも好ましい。
銅沈殿工程S4において、固液分離を行う前にアルミニウムを除去する手順について上述したが、そのような手順を実施していない場合、沈殿物にはアルミニウム化合物が含まれている場合がある。この場合、沈殿物をリパルプすることにより、アルミニウム化合物を除去することができる。
(溶媒抽出工程S8)
次に、再溶解工程S7で得られたコバルト・ニッケル溶液に抽出剤溶液を添加して、コバルト抽出液と、ニッケル抽出液とを得る。
抽出剤溶液としては、金属抽出剤と希釈剤を混合した混合溶液を用いることができる。例えば、2-エチルヘキシル2-エチルヘキシルホスホネート(PC88A:大八化学株式会社製)を20vol%、ケロシン(希釈剤)を80vol%の割合で混合した混合溶液を用いることができる。
上述した抽出剤溶液を用いて、ミキサーセトラーによりコバルト・ニッケル溶液から硫酸コバルト(CoSO)溶液と、硫酸ニッケル(NiSO)溶液として分離回収する。
以上の工程により、廃LIBからコバルトとニッケルとを高収率で回収することができる。例えば、廃LIBから取り出した電極材料中のコバルト、ニッケルの量をそれぞれ100%とした時、本実施形態のコバルトおよびニッケルの分離方法によって、コバルトとニッケルを90質量%以上の高収率で回収することができる。
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態のコバルトおよびニッケルの分離方法を段階的に示したフローチャートである。
なお、以下に説明する第2実施形態では、第1実施形態と同様の工程については説明を省略する。
第2実施形態では、銅沈殿工程S4と、コバルト・ニッケル分離工程S6との間に、第1処理工程に代えて、第2処理工程S5Bを行う。
第2処理工程S5Bとしては、第2濾過過程S5B-1と、第2中和過程S5B-2と、を順に行う。
第2濾過過程S5B-1では、銅沈殿工程S4で得られた沈殿を含む混合液の固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む第1溶出液と硫化銅(CuS)を含む残渣とを分離する。これにより、浸出工程S3で生じた炭素残渣、銅沈殿工程S4で生じた硫化銅(CuS)を含む沈殿残渣を含む固相と、第2溶出液(液相)とが分離される。
第2濾過過程S5B-1で分離された固相は、リパルプ(固相に水を加えて再懸濁させた後、脱水することにより精製)、またはケーキ洗浄してから廃棄物として処理されればよい。
第2中和過程S5B-2は、第2濾過過程S5B-1で得られた第2溶出液に対して、アルカリ金属水酸化物を加えてpH調整を行い、第2中和液を得る。
前工程である銅沈殿工程S4では、硫化水素化合物の添加開始から終了に至るまでの浸出液のpHを2.0以下に維持しているため、このままでは、後工程のコバルト・ニッケル分離工程S6において、硫化水素化合物とコバルト、ニッケルが反応しにくくなる虞があるが、硫化水素化合物の添加に伴って、溶出液のpHは低下していく。pH調整後、硫化水素化合物の添加開始時のpHが3.0未満であると、硫化水素化合物の添加終了に至る前に過度のpH低下が生じ、再度のpH調整が必要になる。このため、コバルト・ニッケル分離工程S6の前工程においてpHを3.0以上にした方が効率的である。
また、pH調整時にpHを4.0を超える値にすると、pH調整に時間がかかるが、硫化水素化合物を添加するとすぐにpH4.0以下となるため、非効率である。そのため、pH調整範囲としては3.0~4.0の範囲が望ましい。
また、この第2中和過程S5B-2では、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、第2濾過過程S5B-1で得られた第2溶出液のpHを3.0~4.0程度にすることで、この第2溶出液に含まれるアルミニウムを水酸化アルミニウム(Al(OH))にして沈殿させることができる。
こうしたコバルト・ニッケル分離工程S6の前処理のpH調整である第2中和過程S5B-2において、溶出液をpH3.0~4.0にするためのpH調整液としては、pH3.0未満であれば水酸化ナトリウム(NaOH)以外にも、水酸化カリウム(KOH)、pH4.0越えであれば更に酸、例えば、硫酸を用いることができる。本実施形態では、濃度が25wt%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、第2溶出液のpHを3.0~4.0の範囲内、例えば3.5に調整した。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本発明の電極材料の浸出方法を備えたコバルトおよびニッケルの分離方法の効果を検証した。
(実施例1)
廃LIBから取り出した電極材料(電極活物質)72.5gに濃度47wt%の硫酸を85mL加え、15分間、ゴムへらによって混錬を行い、浸出ペーストを得た(混練過程)。表1に混練過程以後の電極材料(電極活物質)の浸出試験結果を示す。表1における時間(min)は、過酸化水素添加開始時からの経過時間を示す。また、表中のpH、温度、ORP(酸化還元電位)は、それぞれの時点での値、累積添加量(硫酸、過酸化水素、NaSH、NaOH)は、それぞれの時点での合計添加量、濃度はそれぞれの時点での金属濃度の値を示す。
その後、得られた浸出ペーストに蒸留水415mLを加えて希釈した後(希釈工程)、撹拌しつつ液温50℃付近となるよう調整した(実験例A1)。
実験例A1に対して、30wt%過酸化水素を添加開始時からの経時変化を確認し、濃度47wt%の硫酸を適宜加えpH2.0以下を維持しつつ、75分かけて30wt%過酸化水素を25mL添加した(実験例A2)。
実験例A2に対して、200g/L水硫化ナトリウム溶液をORPが0mV以下となるまで添加した(銅分離工程、実験例A3)。
実験例A3に対して、濃度25wt%の水酸化ナトリウム溶液を浸出液に加え中和を行い、pH3.0~4.0に安定させた(中和工程、実験例A4)。
実験例A4に対して、硫酸浸出時に不溶である廃LIBの負極材のカーボンおよび、生成した残渣(硫化銅)を濾過により固液分離を行い、浸出液462mLを得た。残渣(硫化銅)36.96gの組成は表2の通りである。
Figure 2023150668000002
Figure 2023150668000003
実験例1の結果、廃LIBから取り出した電極材料中のコバルト、ニッケルを100%とした時の浸出率を計算するとコバルトが95%、ニッケル95%浸出されているため、活物質からコバルト、ニッケルは十分に浸出されており、かつ、従来の方法と比較して浸出に必要な時間や硫酸量の削減が可能であることが確認できた。
次に、黒色の沈殿物(硫化コバルト、硫化ニッケル)が十分生成したことを確認後、固液分離を行うことにより、沈殿物を回収した(コバルト・ニッケル分離工程)。一方、残液にはマンガン、アルミニウム、鉄、リチウム、カルシウムなどの不純物が残留しており、金属含有廃液として処分した。
沈殿物を、濃度が1.5mol/Lの硫酸100mLおよび濃度が30wt%の過酸化水素水20mLの再溶解液中に加え、液温60℃で加熱、撹拌を1時間行った(再溶解工程)。その後、室温下まで放冷後、未溶解分および前工程での反応で生成した単体硫黄を濾過によって除去した。
このようにして得られたコバルト・ニッケル溶液から、金属抽出剤であるPC88A(大八化学株式会社製)が20vol%、ケロシンが80vol%の割合で混合された抽出剤溶液を用いて、ミキサーセトラーにより硫酸コバルト溶液と、硫酸ニッケル溶液として分離回収した(溶媒抽出工程)。
以上の実施例1の手順では、廃LIBから取り出した電極材料中のコバルト、ニッケルを100%とした時に、溶媒抽出で逆抽出液中に得られたコバルトは93%、ニッケルは93%であった。よって、本実施形態の電極材料の浸出方法を備えたコバルトおよびニッケルの分離方法によれば、廃LIBから高い歩留まりでコバルト、ニッケルを回収できることが確認された。
なお、金属濃度はICP-AES、pHはpH計、ORPはORP計によって測定した。%の数値は質量基準である。
(実施例2)
廃LIBから取り出した電極材料(電極活物質)29.0gに濃度47wt%の硫酸を40mL加え、15分間、ゴムへらによって混錬を行い、浸出ペーストを得た(混練過程)。この浸出ペーストに、30wt%過酸化水素を10mL加え、5分間、ゴムへらによって混錬を行った(実施例2の混練過程)。
表3に実施例2の混練過程以後の電極材料(電極活物質)の浸出試験結果を示す。表3における時間(min)は、希釈工程の蒸留水添加時からの経過時間を示す。また、表中のpH、温度、ORPは各時点での値、累積添加量(硫酸、過酸化水素、NaSH、NaOH)は各時点での合計添加量、濃度は各時点での金属濃度の値を示す。
その後、得られた浸出ペーストに蒸留水160mLを加えて希釈した後(希釈工程)、撹拌を開始した(実験例B1)。
実験例B1に対して、pH2.0以下を確認しつつ、液温50℃付近で30分間撹拌を行った(実験例B2)。
実験例B2に対して、200g/L水硫化ナトリウム溶液をORPが0mV以下となるまで添加した(銅分離工程、実験例B3)。
実験例B3に対して、濃度25wt%の水酸化ナトリウム溶液を浸出液に加え中和を行い、pH3.0~4.0に安定させた(中和工程、実験例B4)。
実験例B4に対して、硫酸浸出時に不溶である廃LIBの負極材のカーボンおよび、生成した残渣(硫化銅)を濾過により固液分離を行い、浸出液175mLを得た。残渣(硫化銅)14.41gの組成は表4の通りである。廃LIBから取り出した電極材料中のコバルト、ニッケルを100%とした時の浸出率を計算するとコバルトが95%、ニッケル95%浸出されているため、活物質からコバルト、ニッケルは十分に浸出されている。
Figure 2023150668000004
Figure 2023150668000005
(比較例)
廃LIBから取り出した電極材料(電極活物質)14.5gに濃度47wt%の硫酸31mLを含む硫酸溶液100mLを加えて撹拌を行った。そして、液温を60℃、濃度30wt%の過酸化水素を10mL加え、4時間浸出を行った後、ろ過により固液分離を行い、浸出液を得た。浸出率はコバルト、ニッケルともに98%以上であった。
4時間かけて浸出を行った比較例に対し、実施例1では75分(実験例A2)、実施例2では30分という短時間で、従来の比較例と同程度のコバルト、ニッケル浸出率を達成できることが確認された。
本発明の電極材料の浸出方法を備えたコバルトおよびニッケルの分離方法は、使用済みのリチウムウムイオン二次電池に含まれる有価金属のうち、特にコバルトおよびニッケルを、他の金属から正確に分離、回収することを可能にし、これにより、リチウムウムイオン二次電池から純度の高いリサイクル資源を効率的に得ることができる。従って、産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. リチウムイオン二次電池の電極材料を酸浸出させる電極材料の浸出方法であって、
    リチウムイオン二次電池の電極材料と硫酸とを反応させて、前記電極材料に含まれる金属を浸出させた浸出液を得る浸出工程、を有し、
    前記浸出工程は、前記硫酸と前記電極材料とを混錬して浸出ペーストを形成する混練過程と、前記浸出ペーストに水を加えて希釈する希釈過程と、を含む工程であることを特徴とする電極材料の浸出方法。
  2. 前記混練過程では、前記電極材料の質量(g)をEA、前記硫酸の容量(mL)をSV、前記硫酸の濃度(mol/L)をSCとした時に、1≦(SV/EA)≦2、かつ、5.5EA≦(SC×SV)≦10.3EA、を満たすように混練を行うことを特徴とする請求項1に記載の電極材料の浸出方法。
  3. 前記混練過程、または前記希釈過程のうち、少なくとも何れか一方において、過酸化水素を更に添加することを特徴とする請求項1または2に記載の電極材料の浸出方法。
  4. 前記希釈過程では、希釈後の液温を50℃以上、60℃以下の範囲、pHを2.0以下にした後、過酸化水素を添加することを特徴とする請求項1または2に記載の電極材料の浸出方法。
  5. 前記希釈過程では、希釈後の前記浸出液のpHが2.0以下になるように、更に硫酸を添加する過程を更に含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電極材料の浸出方法。
  6. 前記混練過程、または前記希釈過程のうち、少なくとも何れか一方において、更にアルコールを添加することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電極材料の浸出方法。
  7. リチウムイオン二次電池からコバルトおよびニッケルを分離する、コバルトおよびニッケルの分離方法であって、
    前記リチウムイオン二次電池を粉砕および分級し、少なくともコバルト、ニッケル、銅、およびリチウムを含む電極材料を得る粉砕選別工程、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の電極材料の浸出方法によって浸出液を生成する浸出工程、
    前記浸出液に硫化水素化合物を加えて撹拌し、硫化銅として銅を沈殿させる銅沈殿工程、
    前記銅沈殿工程で得られた沈殿を含む混合液にアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整を行い、第1中和液を得る第1中和過程と、前記第1中和液の固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む第1溶出液と硫化銅を含む残渣を得る第1濾過過程と、を順に含む第1処理工程、または、
    前記銅沈殿工程で得られた沈殿を含む混合液の固液分離を行い、コバルトおよびニッケルを含む第2溶出液と硫化銅を含む残渣を得る第2濾過過程と、前記第2溶出液にアルカリ金属水酸化物を加えてpH調整を行い、第2中和液を得る第2中和過程と、を順に含む第2処理工程、のうちいずれか一方、
    前記第1処理工程で得た前記第1溶出液、または第2処理工程で得た前記第2中和液に硫化水素化合物を加えて撹拌、固液分離を行い、硫化コバルトおよび硫化ニッケルを含む沈殿物と、リチウムを含む残液とを得るコバルト・ニッケル分離工程、
    を備えることを特徴とするコバルトおよびニッケルの分離方法。
  8. 前記銅沈殿工程の後工程として、前記第1処理工程を行うことを特徴とする請求項7に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
  9. 前記粉砕選別工程の前工程として、前記リチウムイオン二次電池を加熱して熱処理を行う熱処理工程を備えることを特徴とする請求項7または8に記載のコバルトおよびニッケルの分離方法。
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