JP7065191B2 - ワックス組成物及び電子写真用トナー - Google Patents
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Description
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献2]特開2013-015673号公報
[特許文献3]特開2004-287218号公報
本発明のトナー用ワックス組成物をトナーと混合することによって、トナーに含有される着色剤の分散性に優れ、トナーに優れた低温定着性及び耐熱保管性を付与することができる。
本発明において、直鎖モノカルボン酸と直鎖モノアルコールとのモノエステルを含むワックス(a)は、水酸基価が30以下であることが望ましい。ワックス(a)の水酸基価はモノエステル中の水酸基だけでなく、遊離アルコールや樹脂分等に由来する。そのため水酸基価が30を超えると耐熱安定性が低下し、帯電性が低下する事により画質が低下する恐れがある。また水酸基価が30を超えるとエステル(b)との相溶性が低くなり、ワックス組成物の水酸基価を高めてもワックス(a)のみが凝集し、分散性が低下する。また、当該モノエステルは、炭素数42以上の直鎖状モノエステルであることが望ましい。炭素鎖が分岐構造を有すると、トナーに含まれる結着樹脂との相溶性が上がってしまい定着離型効果が小さくなるので、直鎖状モノエステルを用いる必要がある。更に、ワックス(a)は、直鎖モノカルボン酸と直鎖モノアルコールとのモノエステルとして、直鎖状飽和モノエステルを含むことが望ましい。モノエステルが飽和していることにより、酸化を受けにくく、耐熱安定性も向上する。ワックス(a)は、直鎖状飽和モノエステルに代えて/加えて、直鎖状不飽和モノエステルを含んでいてもよい。
ライスワックスは、コメヌカから抽出されたコメヌカ油(コメ原油)の精製工程で副生する粗ワックスを精蝋(精製)することにより得られるものである。この粗ワックス中にはワックス分(エステルワックス)が55~65質量%程度、遊離脂肪酸が20~30質量%程度、トリグリセリドが5~15質量%程度含まれている。粗ワックス中の遊離脂肪酸及びトリグリセリドからなるソフトワックスを除去する事により、炭素数22~24程度の飽和直鎖モノカルボン酸と炭素数24~38程度の飽和直鎖モノアルコールからなる脂肪酸アルコールエステルを主成分とするライスワックスが得られる。主成分とは、ライスワックス組成物中に占める飽和直鎖エステルワックスの配合比が高いことを示し、例えば、ライスワックス100質量部における飽和直鎖エステルの含有量が60質量部以上、99質量部以下、さらには、75質量部以上、98質量部以下ということができる。また、ライスワックスは樹脂等の極性物質が少ない為、水酸基価は30以下である。粗ワックス中の遊離脂肪酸やトリグリセリドからなるソフトワックスを除去する方法としては、有機溶媒を使用し再結晶法で得る方法や精製時にエステル化を促進させる方法、ライスワックスに多価アルコールを添加してエステル化せしめる方法、ライスワックスを加熱減圧下で融解させる方法等、公知のライスワックスの精製方法を繰り返すこと、精製方法を組み合わせること等によって遊離脂肪酸と不純物の低融点のトリグリセリド類及び脂肪族炭化水素を除去、低減することで得ることができる。また、米ぬかから抽出される粗ワックスとエタノールとの混合物を加温下で攪拌することにより、ワックスを含むコロイド粒子と、ソフトワックスを含むエタノール分とに分離した後、上記コロイド含有液からワックスを含むコロイド粒子を回収する精製方法なども好適に適用できる。
本発明のトナー用ワックス組成物を構成する水酸基1個を有する炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸および炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸からなる混合カルボン酸と、グリセリンとのエステル(b)は、その調製方法に限定はなく、上記の要件を満たせばよい。水酸基1個を有する炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸は、飽和直鎖モノカルボン酸であってよく、炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸も飽和直鎖モノカルボン酸であってよい。これにより、ワックス組成物が酸化を受けにくく、耐熱安定性も向上する。なお、エステル(b)を構成する直鎖モノカルボン酸のうち少なくとも一部は、不飽和であってもよい。
CH3-[CH2]x-CHOH-[CH2]y-COOH
(式中、上式のx、yは、9≦x+y≦21(すなわち、x+y=(炭素数)-3である)を満足する0以上の整数である。)
で示されるものであってよく、例えばヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキジン酸、ヒドロキシベヘニン酸等が挙げられ、これらの中でも炭素数18であるヒドロキシステアリン酸がより好ましい。水酸基の位置は特に限定されないが、水酸基が12位についた12-ヒドロキシステアリン酸が好ましい。
CH3-[CH2]z-COOH
(式中、上式のzは、10≦z≦22(すなわち、z=(炭素数)-2である)を満足する整数である。)で示されるものであってよく、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、テトラコサン酸等が挙げられる。
本発明のワックス組成物は、直鎖モノカルボン酸と直鎖モノアルコールのモノエステルを含むワックス(a)と水酸基1個を有する炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸および炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸からなる混合カルボン酸と、グリセリンとのエステル(b)が質量比1:4~4:1であることが好ましく、より好ましくは2:3~3:2である。水酸基1個を有する炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸および炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸からなる混合カルボン酸と、グリセリンとのエステル(b)の含有量を上記下限値以上とすることが、着色剤の分散性及び保存安定性の観点から好ましい。一方、水酸基1個を有する炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸および炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸からなる混合カルボン酸と、グリセリンとのエステル(b)の含有量を上記上限値以下とすることが、離形性及び耐揮発性の観点から好ましい。
発明のワックス組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、直鎖モノカルボン酸と直鎖モノアルコールのモノエステルを含むワックス(a)を製造後、水酸基1個を有する炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸および炭素数12~24の直鎖モノカルボン酸からなる混合カルボン酸と、グリセリンとのエステル(b)を配合して、更に後述する結着樹脂等を配合することで製造しても良い。
結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα-オレフィン樹脂など)、ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリ乳酸樹脂、水添ロジン、環化ゴム、シクロオレフィン共重合体樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、トナーの画質特性、耐久性、生産性などの要求をバランスよく満たすことができるという観点から、ポリエステル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂が好ましい。
着色剤は、ブラック用顔料、マゼンダ用顔料、シアン用顔料、イエロー用顔料、又はその他の色の顔料であってよい。ブラック用顔料としてはランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、ニグロシン染料等が、マゼンタ用顔料としてはローズベンガル、デュポンオイルレッド、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バイオレット1、2、10、13、15、23、29、35等が、シアン用顔料としてはアニリンブルー、カルコオイルブルー、ウルトラマリンブルー、メチレンブルークロールイド、フタロシアニンブルー、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45等が、イエロー用顔料としてはクロムイエロー、キノリンイエロー、C.I.ピグメントイエロ-1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、128、155、180が単独もしくは混合されて用いられる。特に混色性が良く色の再現性に優れているためにフルカラー用として好ましい着色剤としては、マゼンタはC.I.ピグメントレッド57、122、シアンはC .I.ピグメントブルー15 、イエローはC.I.ピグメントイエロー17、93、155、180が挙げられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート;ピリジウム塩、アジン、トリフェニルメタン系化合物、カチオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。これらの正帯電性の帯電制御剤は、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの正帯電性の帯電制御剤の中でも、ニグロシン系化合物、第四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。負帯電性の帯電制御剤としては、例えば、アセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩等の有機金属化合物、キレート化合物、アニオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。
以下に示す処方にてトナー用ワックス組成物(C-1)~(C-5)および比較用のワックス組成物を調製し、得られたワックス組成物の着色剤の分散性を表1に示した。なお、(C-1)~(C-5)は、実施例1~5に対応する。
温度計、窒素導入管、攪拌羽および冷却管を取り付けた4つ口フラスコにライスワックス(直鎖状モノエステル含有率90%)を480g、硬化ヒマシ油を120g[(a):(b)=4:1]採取し、窒素下、100℃で加熱溶融して、内容物が均一になるように30分間加熱攪拌した。この混合物を室温で放冷して固化させて、ワックス組成物(C-1)を得た。ライスワックスの水酸基価は8であった。
ライスワックス:硬化ヒマシ油の質量比を1:1[(a):(b)=1:1]に調整した以外は(C-1)と同様の方法でトナー用ワックス組成物(C-2)を得た。ワックス組成中のライスワックスの水酸基価は8であった。
ライスワックス:硬化ヒマシ油の質量比を1:4[(a):(b)=1:4]に調整した以外は(C-1)と同様の方法でトナー用ワックス組成物(C-3)を得た。ワックス組成中のライスワックスの水酸基価は8であった。
ライスワックスとして水酸基価が25で直鎖モノエステル含有率78%のものを使用した以外は(C-2)と同様の方法でトナー用ワックス組成物(C-4)を得た。
トナー用ワックス組成物(D-1~D-5)において以下の変更点以外は、(C-1)と同様の方法にてトナー用ワックス組成物を得た。なお、(D-1)~(D-5)は、比較例1~5に対応する。
〔ワックス組成物(D-1)の調製〕
(D-1)では、(C-1)の硬化ヒマシ油の代わりにポリエチレンワックス(三井化学社製 三井ハイワックス320P)を使用した。ワックス組成中のライスワックスの水酸基価は8であった。
(D-2)では、硬化ヒマシ油を使用せず、ライスワックス単体を用いた。ワックス組成中のライスワックスの水酸基価は8であった。
(D-3)では(C-3)の硬化ヒマシ油の代わりにモノカルボン酸単体を用いた。ワックス組成中のライスワックスの水酸基価は8であった。
(D-4)ではライスワックスを使用せず、硬化ヒマシ油単体を用いた。。
(D-5)では(C-2)のライスワックスの代わりにカルナウバワックスを使用した。ワックス組成中のエステルワックスの水酸基価は38であった。
(C-1)~(C-5)及び(D-1)~(D-5)のワックス組成物の酸価、ヨウ素価、及び、水酸基価を下記の方法により評価した。
(1)ワックス組成物の酸価;JOCS(日本油化学会)2.3.1-2013に準拠した。
(C-1)~(C-4)及び(D-1)~(D-5)のワックス組成物の熱特性を評価した。ワックス組成物の熱特性の測定には、島津サイエンス社製の「DSC-50」を使用した。測定は、約20mgのワックス組成物C-1~C-3及びD-1~D-3をそれぞれアルミ製の試料ホルダーに入れ、リファレンス材料としてアルミナを用いて行い、窒素雰囲気下(200ml/min)、5℃/minで常温℃から120℃まで昇温後、再度-5℃/minで0℃まで冷却後、再度5℃/minで120℃まで昇温した際の熱特性を確認した。その結果を後述する表2~3に示す。
[実施例1]
実施例1において(C-1)に係るワックス組成物をそれぞれ樹脂(ポリエステル、着色剤(ピグメントレッド)、電荷調整剤(カチオン性官能基を有する低分子量ポリマー)等とミキサーにて十分撹拌混合した後、二軸の溶融押し出し式混練機で130~140℃の温度で加熱混練をした。混練物は分散状態を評価した。混練後、冷却し、カッター粉砕機で粗粉砕後、ジェットミルにて微粉砕を行い、分級をして各色相のトナーを得た。なお、トナーにおけるワックス組成物の添加量(含有量)を10質量%とした。
○:着色剤粒子が凝集することなく均一に分散している。
△:僅かな凝集が認められる。
×:凝集して空隙がみられる。
実施例及び比較例に係るワックス組成物を含有したトナーの凝集度を、以下の方法で測定し、トナーの耐熱保管性を評価した。詳しくは、トナー20gを、容量200mLのポリ容器に投入し、50℃に設定された恒温恒湿器(エスペック株式会社製「PH-3KT」)に48時間静置させ取り出した。次に、目開き150μm、目開き75μm、目開き45μmの3種類の篩を順にパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製 PT-S )に取り付けた。目開き150μmの篩上に耐熱保存性評価用のトナー2gを投入した。レオスタッド目盛り2、時間10秒の条件で、耐熱保存性評価用のトナーを篩別した。篩上に残留したトナーの質量を測定した。測定したトナーの質量から下記式に従い、トナーの凝集度(質量%)を算出した。凝集度が20質量%未満であるトナーを、トナーの耐熱保存性が良好であると評価した。
a=(目開き150μmの篩上の残存トナー重量/2)×100
b=(目開き75μmの篩上の残存トナー重量/2)×100×(3/5)
c=(目開き45μmの篩上の残存トナー重量/2)×100×(1/5)
実施例及び比較例で得たトナーを測定対象とし、市販の複写機(ミノルタ社製 商品名;EP-870Z)の熱定着ロールの設定温度を120℃に設定し、未定着画像を有した転写紙のトナー像の定着を行った。そして、形成された定着画像に対して綿パッドによる摺擦を施し、下記式によって定着強度を算出し低エネルギー定着性の指標とした。
定着強度=(摺擦後の定着画像の画像濃度/摺擦前の定着画像の画像濃度)×100(%)定着強度が80%以上、70%以上80%未満、60%以上~70%未満、60%未満の場合、それぞれ、低温定着性が◎、○、△、×と評価した。
(C-1)の代わりに(C-2)~(C-4)に係るワックス組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを得た。ただし、実施例5ではポリエステルの代わりにスチレン-アクリル酸系共重合体を用いた。実施例2~5においても、実施例1と同様に、分散性、耐熱保管性、低温定着性の評価を行った。
(C-1)の代わりに(D-1)~(D-5)に係るワックス組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを得た。比較例1~5においても、実施例1と同様に、分散性、耐熱保管性、低温定着性の評価を行った。実施例1~5及び比較例1~5の評価の結果を表1に示す。
Claims (6)
- 飽和直鎖モノカルボン酸と飽和直鎖モノアルコールとのモノエステルを含むワックス(a)、並びに
水酸基1個を有する炭素数12~24の飽和直鎖モノカルボン酸及び炭素数12~24の飽和直鎖モノカルボン酸からなる混合カルボン酸と、グリセリンとのエステル(b)を含み、
前記飽和直鎖モノカルボン酸と飽和直鎖モノアルコールとのモノエステルを含むワックス(a)は、水酸基価が30以下であり、直鎖状モノエステルを80重量%以上含む、
ワックス組成物。 - 前記飽和直鎖モノカルボン酸と飽和直鎖モノアルコールとのモノエステルにおいて、
前記飽和直鎖モノカルボン酸の炭素数が20~24であり、前記飽和直鎖モノアルコールの炭素数が22~38である、
請求項1に記載のワックス組成物。 - 前記ワックス(a)、並びに、前記エステル(b)を、質量比1:4~4:1で含有する、請求項1又は2に記載のワックス組成物。
- 水酸基価が30以上かつヨウ素価が13以下である、請求項1から3の何れか1項に記載のワックス組成物。
- 請求項1から4の何れか1項に記載のワックス組成物を含有する、電子写真用トナー。
- 前記ワックス組成物の添加量が2~20質量%である、請求項5に記載の電子写真用トナー。
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