<印刷システム1の概要>
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。印刷システム1は、熱転写型の印刷を行うためのシステムである。印刷システム1は、外部機器8(図3参照)によって搬送される印刷媒体P(図2参照)に対して印刷を行う。外部機器8の具体例として、包材を搬送する包装機が挙げられる。この場合、例えば印刷システム1は、包装機によって印刷媒体Pが搬送される搬送ラインの一部に組み込まれて使用される。
図1に示すように、印刷システム1は、印刷装置2、ブラケット6、コントローラ7(図3参照)、及びプラテンローラQを有する。以下、図の説明の理解を助けるため、印刷システム1に含まれる各構成の上方、下方、左方、右方、前方、及び後方を定義する。印刷装置2及びブラケット6の上方、下方、左方、右方、前方、及び後方は、それぞれ、図1の上方、下方、左斜め上方、右斜め下方、左斜め下方、及び右斜め上方にそれぞれ対応する。図1において、印刷媒体Pの搬送方向は、左右方向と一致する。印刷媒体Pは、外部機器8によって左方(矢印Y1の方向)に搬送される。
<カセット9>
印刷システム1では、印刷装置2のカセット装着部20にカセット9が装着された状態で、印刷媒体Pに対する印刷が行われる。印刷装置2は、カセット9のインクリボン9A(図2参照)を加熱することで印刷を実行する。図2に示すように、カセット9は、蓋91、シャフト92A~92F、供給ロール90A、及び巻取ロール90Bを有する。シャフト92A~92Fは、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能なスピンドルである。シャフト92A~92Fは、蓋91の後面から後方に延びる。
シャフト92A、92Fは、蓋91の上下方向の中心よりも上方において左右方向に並ぶ。シャフト92Aには、長尺状のインクリボン9Aの一端が接続されたスプール921が装着される。シャフト92Fには、インクリボン9Aの他端が接続されたスプール922が装着される。スプール921、922は、それぞれ、インクリボン9Aがロール状に巻回される。スプール921にインクリボン9Aが巻回されることにより、供給ロール90Aが構成される。スプール922にインクリボン9Aが巻回されることにより、巻取ロール90Bが構成される。
インクリボン9Aは、印刷装置2によって供給ロール90Aから繰り出され、巻取ロール90Bに巻き取られる。シャフト92Bは、蓋91の右上の隅に設けられる。シャフト92Cは、蓋91の右下の隅に設けられる。シャフト92Dは、蓋91の左下の隅に設けられる。シャフト92Eは、蓋91の左上の隅に設けられる。シャフト92B~92Eのそれぞれの周面の一部に、供給ロール90Aと巻取ロール90Bとの間に張り渡されるインクリボン9Aが接触する。
<プラテンローラQ>
図1及び図2に示すように、プラテンローラQは円柱状である。プラテンローラQは、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。プラテンローラQの上方に、印刷装置2が配置される。プラテンローラQは、印刷装置2のサーマルヘッド24との間に、印刷媒体P及びインクリボン9Aを挟む。プラテンローラQは、外部機器8により搬送される印刷媒体Pに対して下方から接触し、インクリボン9Aに印刷媒体Pを押し付ける。
<印刷装置2>
印刷装置2は、熱転写型のサーマルプリンタである。図2及び図3に示すように、印刷装置2は、供給部22、巻取部23、サーマルヘッド24、非図示の制御基板、第一モータ26、27、第三モータ28等を備える。図2に示すカセット9が印刷装置2のカセット装着部20に装着された場合、シャフト92Aは供給部22に接続され、シャフト92Fは巻取部23に接続される。シャフト92Aのスプール921に巻回された供給ロール90Aは、供給部22に装着される。シャフト92Fのスプール922に巻回された巻取ロール90Bは、巻取部23に装着される。
第一モータ26、27は、ステッピングモータである。第一モータ26は、供給部22を回転駆動することで、供給部22に装着された供給ロール90Aを回転可能である。第一モータ27は、巻取部23を回転駆動することで、巻取部23に装着された巻取ロール90Bを回転可能である。印刷装置2にカセット9が装着された状態で第一モータ26、27が回転した場合、インクリボン9Aは供給ロール90A及び巻取ロール90B間で、シャフト92B~92Eに接触して案内されながら、印刷装置2内を搬送される。
詳細には、供給ロール90A及び巻取ロール90Bが、図2における印刷装置2を前方から見た状態で反時計回り方向である正転方向に回転するとき、インクリボン9Aは供給ロール90Aから繰り出され、巻取ロール90Bに巻き取られる。供給ロール90A及び巻取ロール90Bが、図2における印刷装置2を前方から見た状態で時計回り方向である反転方向に回転するとき、インクリボン9Aは巻取ロール90Bから繰り出され、供給ロール90Aに巻き取られる。
サーマルヘッド24は、前後方向に直線状に並んだ複数の発熱体を有するラインサーマルヘッドである。サーマルヘッド24は、供給部22から繰り出されてから、巻取部23で巻き取られるまでのインクリボン9Aの搬送経路Fに隣接する。サーマルヘッド24は、カセット9の供給ロール90Aから巻取ロール90Bに向けて搬送されるインクリボン9Aのうち、シャフト92C、92D間に張り渡された部分に上側から接触する。サーマルヘッド24は、印刷装置2の下方に配置されたプラテンローラQとの間に、印刷媒体P及びインクリボン9Aを挟む。サーマルヘッド24は、印刷媒体Pにインクリボン9Aを押し付けながらインクリボン9Aを加熱することによって、印刷媒体Pに対する印刷を行う。
第三モータ28は、ステッピングモータである。第三モータ28は、ギアを介して、サーマルヘッド24をヘッド位置24A、24B間で上下方向に移動させる。サーマルヘッド24は、下方に移動することによってプラテンローラQに接近し、上方に移動することによってプラテンローラQから離れる。サーマルヘッド24の移動方向(上下方向)は、シャフト92C、92D間で搬送されるインクリボン9Aの搬送方向(左右方向)と直交する。ヘッド位置24Bは、サーマルヘッド24がインクリボン9Aから接触して、インクリボン9AをプラテンローラQに向けて付勢する位置である。ヘッド位置24Aは、サーマルヘッド24がヘッド位置24Bよりも上方に配置され、プラテンローラQに対するインクリボン9Aの付勢を解除する位置である。
<ブラケット6>
図1に示すように、ブラケット6は、インクリボン9Aの幅方向Y2、即ち、印刷媒体P(図2参照)の搬送方向である左右方向と直交する前後方向に印刷装置2を移動させる。ブラケット6は、第二モータ62、第一センサ63、第二センサ64、及びスイッチ65を有する。支持部61は、前後方向に長い略箱状を有する。リードスクリューは、支持部61の内部に配置され、前後方向に延びる。支持部61は其の内部に、非図示のリードスクリュー及びボールねじを有する。ボールねじは、リードスクリューに螺合し、リードスクリューの回転に応じて前後方向に移動する。ボールねじは、印刷装置2の右端に設けられた連結部21に接続する。第二モータ62は、ステッピングモータであり、回転軸は、リードスクリューの後端部と連結する。印刷装置2は、第二モータ62を駆動源とするリードスクリューの回転によってボールねじが前後方向に移動することに応じ、前後方向に移動する。第一センサ63は、印刷装置2の可動範囲Rの一端部(前端部)に設けられたアブソリュートセンサである。第一センサ63の出力値は、基準となる原点Bから、第二モータ62の回転量に基づき、印刷装置2の現在位置を検出する処理に用いられる。第二センサ64は印刷装置2の可動範囲Rの他端部(後端部)に設けられた近接センサである。スイッチ65は、ブラケット6の前面に設けられた、ブラケット6に対する指示が入力される押しボタンスイッチである。
<コントローラ7>
図3に示すように、コントローラ7は印刷装置2及び外部機器8の間のデータの送受信を仲介する。コントローラ7は、印刷装置2が印刷を実行するために必要なデータを、印刷装置2に出力する。コントローラ7から印刷装置2に出力されるデータの具体例として、印刷イメージ(画像)のデータが挙げられる。コントローラ7は、外部機器8から出力される信号を印刷装置2に伝達する。外部機器8から出力される信号として、印刷媒体Pの搬送開始信号/搬送停止信号、印刷媒体Pの搬送速度を示す速度信号、印刷媒体Pに対する印刷時期を通知するための印刷信号が挙げられる。
<電気的構成>
図3を参照し、印刷システム1の電気的構成について説明する。印刷装置2は、制御部2A、記憶部2B、通信インタフェース2C、サーマルヘッド24、第一モータ26、27、及び第三モータ28を有する。制御部2A、記憶部2B、及び通信インタフェース2Cは、非図示の制御基板に実装される。制御部2Aは、記憶部2B、通信インタフェース2C、サーマルヘッド24、第一モータ26、27、第三モータ28と電気的に接続する。
制御部2Aは、記憶部2Bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、メイン処理(図4参照)を実行する。記憶部2Bには、制御部2Aがメイン処理を実行するためのプログラムが記憶される。通信インタフェース2Cは、印刷装置2とコントローラ7との間で通信を行うためのインタフェース素子である。通信インタフェース2Cは、通信ケーブルを介してコントローラ7に接続される。
サーマルヘッド24は、制御部2Aからの制御信号に応じて、発熱体に通電して発熱させる。第一モータ26は、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転することで、供給部22を回転させる。第一モータ27は、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転することで、巻取部23を回転させる。第三モータ28は、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転することで、サーマルヘッド24を上下方向に移動させる。
ブラケット6の第二モータ62、センサ63、64は及びスイッチ65は、制御部2Aと電気的に接続する。第二モータ62は、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転することで、印刷装置2を前後方向に移動させる。センサ63、64は各々、制御部2Aに、検出結果を入力する。スイッチ65は、ブラケット6に対する指示を制御部2Aに入力する。
コントローラ7は、制御部2A、記憶部7B、通信インタフェース7C、7Dを有する。通信インタフェース7Cは、印刷装置2とコントローラ7との間で通信を行うためのインタフェース素子である。通信インタフェース7Cは、通信ケーブルを介して印刷装置2に接続される。通信インタフェース7Dは、外部機器8とコントローラ7との間で通信を行うためのインタフェース素子である。通信インタフェース7Dは、通信ケーブルを介して外部機器8に接続される。記憶部7Bには、印刷装置2が印刷を実行するために必要なデータが記憶される。制御部2Aは、記憶部7B及び通信インタフェース7C、7Dと電気的に接続する。制御部2Aは、印刷装置2が印刷を実行するために必要なデータを記憶部7Bから読み出し、通信インタフェース7Cを介して印刷装置2に出力する。制御部2Aは、通信インタフェース7Dを介して外部機器8から取得された信号を検出し、通信インタフェース7Cを介して印刷装置2に出力する。
外部機器8は、制御部8A、操作パネル8B、通信インタフェース8Cを有する。操作パネル8Bは、外部機器8に対する指示が入力される。通信インタフェース8Cは、外部機器8とコントローラ7との間で通信を行うためのインタフェース素子である。通信インタフェース8Cは、通信ケーブルを介してコントローラ7に接続する。制御部8Aは、操作パネル8B及び通信インタフェース8Cと電気的に接続する。制御部8Aは、操作パネル8Bに対して入力された指示を受け付ける。制御部8Aは、通信インタフェース8Cを介して各種信号をコントローラ7に出力する。
図4に示す具体例を用いて、制御部2Aによって実行される図5に示すメイン処理を説明する。図4に示すように、具体例は、アルファベット文字「A」と、該文字を囲う矩形とを含む画像Gを、インクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ最大4つの領域を使用して順に印刷する場合である。メイン処理では、印刷装置2は印刷準備期間中にブラケット6により、印刷媒体Pに対してインクリボン9Aの幅方向Y2に移動され、各画像Gが印刷媒体Pの同じ位置に順に印刷される。具体例ではメイン処理の途中で、作業者の指示に応じてインクリボン9Aの幅方向Y2における印刷媒体Pの印刷位置の変更が受け付けられる。以下の説明では、搬送方向Y1の画像Gの並びを行、幅方向のY2の画像Gの並びを列ともいい。Y行、X列の領域を領域(Y,X)とも表記する。メイン処理を実行するための指示を含むプログラムは記憶部2Bに記憶されている。制御部2Aは、印刷装置2の起動後、該プログラムを記憶部2BのRAM上で展開し、以下の処理を実行する。制御部2Aは、印刷装置2を、準備モードM1、設定モードM2及び印刷モードM3の3つの運転モードの何れかで駆動し、処理を実行する。画像Gの印刷に使用できるインクリボン9Aの幅方向Y2の長さW_pは、インクリボン9Aの幅方向Y2の長さ(端部の余白を除く)、サーマルヘッド24の幅方向Y2の長さ、及び幅方向Y2におけるインクリボン9A及びサーマルヘッド24の相対位置によって規定される。説明を簡単にするために、以下の説明では、インクリボン9Aの使用可能範囲Nは、インクリボン9Aの幅方向Y2の延設範囲全体とし、インクリボン9Aの使用可能範囲Nの幅方向Y2の長さを長さW_pとする。
図5に示すように、制御部2Aは、電源がONになった後、準備モードM1で駆動し、インクリボン9Aの幅方向Y2において、印刷装置2の原点Bが検出済みであるかを判断する(S1)。制御部2Aは例えば原点検出フラグがOFFである時に、原点Bが検出済みでないと判断する。原点検出フラグの初期値はOFFである。印刷装置2の原点Bが検出済みではない時(S1:NO)、制御部2Aは、原点検出処理を実行する(S2)。具体的には、制御部2Aは、第二モータ62を制御して、印刷装置2を可動範囲Rの一端部(前端部)に向けて移動させる。図6(A)に示すように、制御部2Aは、第一センサ63が検出された場合に、原点B(前側可動限界)を検出し、第二モータ62を制御して、印刷装置2の移動を停止する。制御部2Aは原点検出フラグをONに設定する。
原点検出済みである場合(S1:YES)、又はS2の次に、制御部2Aはインクリボン9Aの幅方向Y2における、印刷装置2の可動範囲Rが検出済みであるかを判断する(S3)。制御部2Aは例えば可動範囲検出フラグがOFFである時に、可動範囲Rが検出済みでないと判断する。可動範囲検出フラグの初期値はOFFである。印刷装置2の可動範囲Rが検出済みではない場合(S3:NO)、制御部2Aは可動範囲検出処理を実行する(S4)。具体的には、制御部2Aは、第二モータ62を制御して、印刷装置2を印刷装置2の可動範囲Rの他端部(後側可動限界、可動限界W)に向けて移動させる。図6(B)に示すように、制御部2Aは、第二センサ64が検出された場合に、印刷装置2の可動範囲Rを検出し、第二モータ62を制御して、印刷装置2の移動を停止する。制御部2Aは、S4で検出された原点Bからの、第二モータ62の駆動量を可動範囲Rの長さとして取得する。制御部2Aは可動範囲検出フラグをONに設定し、可動範囲Rの長さR_maxを記憶する。
制御部2Aは、記憶部2Bに記憶された印刷装置2の現在位置及び印刷装置2のホームポジションDの設定情報を参照し、印刷装置2がホームポジションDに位置するかを判断する(S5)。ホームポジションDは、インクリボン9Aの幅方向Y2における印刷装置2の可動範囲R内に設定された、可動範囲R内よりも狭く、且つ、連続した使用可能範囲Jの一端部(後端部)である。ホームポジションDは、予め設定され記憶部2Bに記憶されてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。可動範囲R検出後は、印刷装置2は可動限界Wにあり、ホームポジションDには位置しない(S5:NO)。この場合制御部2Aは、図6(C)に示すように、第二モータ62を制御して、印刷装置2をホームポジションDに向けて移動させる(S6)。制御部2Aは、印刷装置2の現在位置を第二モータ62の駆動量に応じて更新し、更新された現在位置が、印刷装置2がホームポジションDの位置を示すR_homeに達した場合に、第二モータ62を制御して、印刷装置2の移動を停止する。
印刷装置2がホームポジションDにいる場合(S5:YES)、又はS6の次に、制御部2Aは、運転モードを準備モードM1から設定モードM2に切り替える。制御部2Aは、ホームポジションDの設定を変更する指示が検出されたかを判断する(S7)。作業者はホームポジションDを設定変更したい場合に、スイッチ65又は外部機器8を操作して、ホームポジションDの設定を変更する指示を入力する。ホームポジションDの設定を変更する指示が検出された場合(S7:YES)、制御部2Aは、検出された指示に従って、ホームポジションDの設定を変更し、処理をS6に移行させて、運転モードを設定モードM2から準備モードM1に切り替える。ホームポジションDを変更する指示が検出されていない場合(S7:NO)、制御部2Aは、インクリボン9Aを交換する指示が入力されたかを判断する(S9)。作業者は、インクリボン9Aの残量が規定値より少ない場合に、カセット9をカセット装着部20から取り外し、使用中のインクリボン9Aを取り外すことでインクリボン9Aを交換する指示を入力する。
インクリボン9Aを交換する指示が検出された場合(S9:YES)、制御部2Aは、インクリボン交換処理を実行する。制御部2Aは、作業者が、カセット9をカセット装着部20に装着後、インクリボン9Aの残量を確認し、インクリボン交換処理を終了させる。制御部2Aは、インクリボン9Aの交換処理が終了した後に、処理をS1に戻し、運転モードを設定モードM2から準備モードM1に切り替える。S1では、原点検出フラグに基づき原点Bが検出済みと判断され(S1:YES)、前述の原点検出処理は実行されずにS3の処理が実行される。S3では、可動範囲検出フラグに基づき可動範囲Rが検出済みであると判断され(S3:YES)、前述の可動範囲検出処理は実行されずに、S5の処理が実行される。
インクリボン9Aを交換する指示が検出されない場合(S9:NO)、制御部2Aは、位置校正が必要かを判断する(S11)。制御部2Aは、電源の一時的なOFF等により、現在位置が消失した場合に、位置校正が必要であると判断し、原点検出フラグをOFFに設定する。位置校正が必要である場合(S11:YES)、制御部2Aは、処理をS1に戻し、運転モードを設定モードM2から準備モードM1に切り替える。S1では、原点検出フラグに基づき原点Bが検出済みでないと判断され(S1:NO)、前述の原点検出処理が実行される(S2)。S3では、可動範囲検出フラグに基づき可動範囲Rが検出済みであると判断され(S3:YES)、前述の可動範囲検出処理は実行されずに、S5の処理が実行され、新たにS2で検出された原点Bを基準として現在位置が取得される。
位置校正が必要ではない場合(S11:NO)、制御部2Aは、印刷開始指示を取得したかを判断する(S12)。外部機器8は、印刷媒体Pの搬送を開始する搬送開始信号、及び印刷媒体Pの搬送速度を示す速度信号をコントローラ7に出力する。印刷装置2は、コントローラ7を介して、搬送開始信号を印刷開始指示として取得して記憶部2Bに記憶する。印刷開始指示が取得されていない場合(S12:NO)、制御部2Aは、処理をS7に戻す。印刷開始指示が取得された場合(S12:YES)、制御部2Aは、運転モードを設定モードM2から印刷モードM3に切り替えて、印刷モード処理を実行する(S13)。
図7に示すように、印刷モード処理では、制御部2Aはインクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ領域数を規定する所定値Cを更新する(S20)。具体例では、コントローラ7から取得されたデータに基づき、所定値Cとして4が設定される。制御部2Aは、領域数に1を設定する(S21)。制御部2Aは、印刷装置2の移動方向に前方を設定する(S22)。制御部2Aは、印刷指示を取得したか否かを判断する(S23)。外部機器8は、印刷媒体Pに対する印刷時期を通知する印刷指示をコントローラ7に繰り返し出力する。印刷装置2は、コントローラ7を介して印刷指示を繰り返し取得する。コントローラ7を介して印刷指示が取得された場合(S23:YES)、制御部2Aはコントローラ7から取得されたデータに基づき画像Gを印刷する(S24)。
具体的には、制御部2Aは、印刷指示の取得に応じて、速度信号で示される搬送速度と同じ速度でインクリボン9Aが搬送されるように、第一モータ26、27を回転駆動して供給ロール90A及び巻取ロール90Bを正転方向に回転させる。制御部2Aは、第三モータ28を制御して、サーマルヘッド24を、ヘッド位置24Aからヘッド位置24Bに移動する。同時に、制御部2Aは、印刷データに基づきサーマルヘッド24を加熱し、インクリボン9Aの使用領域Eのインクを印刷媒体Pの印刷面に転写する。図6(C)に示すように、印刷順序が最初の画像Gの印刷は、印刷装置2がホームポジションDに位置する状態で、インクリボン9Aの内の最も前側に位置する使用領域E(1,1)が使用されて実行される。図8では、インクリボン9Aにおける今回の使用領域Eを黒色で示し、使用済領域を斜線、縦線及び格子状の網掛けされた実線で囲まれた領域で示し、未使用領域を点線で囲まれた白色の領域で示す。図8に示す具体例では、一の画像Gの印刷で加熱使用されるインクリボン9Aの使用領域(画像領域)Eは矩形状であり、使用領域Eの幅方向Y2長さは、インクリボン9Aの幅方向Y2長さの四分の一よりも小さい。画像Gの印刷は、S23で印刷装置2において印刷指示が取得される毎に繰り返し実行される。印刷が終了した場合、制御部2Aは、サーマルヘッド24の加熱を停止し、第三モータ28を制御して、サーマルヘッド24を、ヘッド位置24Bからヘッド位置24Aに移動する。制御部2Aは、第一モータ26、27の回転駆動を停止させる。
本実施形態の印刷システム1は、インクリボン9Aの幅方向Y2の未使用領域を減らして印刷することが可能なラジアルリボンセーブ(RRS)機能を有する。印刷システム1では、一の画像Gの印刷後、次の画像Gの印刷開始までに、印刷装置2がインクリボン9Aの幅方向Y2(前後方向)に移動されることで、印刷装置2はインクリボン9Aの幅方向Y2の未使用領域を使用して次の画像Gの印刷を行う。具体的には、制御部2Aは現在の移動方向が前方に設定されているかを判断する(S25)。状態(a)に示す、印刷順序が最初の画像Gが印刷された後の移動方向は前方である(S25:YES)。制御部2Aは領域数を1だけインクリメントする(S26)。制御部2AはS26でインクリメントされた領域数がS20で更新された所定値Cよりも大きいかを判断する(S27)。具体例の所定値Cは4であり、状態(a)で印刷後の領域数は2であり、S24で一の画像Gが印刷された後、インクリボン9A上にインクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ、画像Gの印刷に使用した領域数が所定値Cより小さい(S27:NO)。この場合制御部2Aは、図6(D)に示すように、第二モータ62を制御して、印刷装置2を移動方向に距離K移動させる(S28)。S28の処理は、制御部2Aが第二モータ62を制御して、次の画像Gの印刷で使用される領域と、一の画像Gの印刷で使用された領域とが重ならない位置に、インクリボン9Aの幅方向Y2の長さより小さい距離K、インクリボン9Aの幅方向Y2に沿って印刷装置2を移動させる処理である。距離Kは、使用領域Eの前後方向長さと、所定の余白分の前後方向長さとを加えた距離である。使用領域E間の余白を考慮しない場合、距離Kは長さW_pをCで除した商で表される。状態(a)で印刷後、制御部2Aは、S28の処理により状態(b)に示すように、印刷媒体Pに対するインクリボン9Aの位置が、距離Kだけ前方に相対移動する。制御部2Aは、現在位置R_pを更新する。現在位置R_pは、例えば式(1)に基づき算出される。
現在位置R_p=R_home-距離K×(領域数-1) ・・・式(1)
制御部2Aは、第一モータ26、27を回転駆動して供給ロール90A及び巻取ロール90Bを反転方向に回転させることで、インクリボン9Aを使用領域Eの搬送方向長さ、及びインクリボン9Aの加速、減速分だけ供給ロール90A側に巻き戻す(S29)。
制御部2Aは、印刷停止指示を取得したかを判断する(S49)。印刷停止指示が取得されていない場合(S49:NO)、制御部2Aは、処理をS23に戻す。状態(b)において、印刷指示が取得されると(S23:YES)、制御部2Aは状態(a)で印刷媒体Pに印刷された一の画像Gと同じ前後方向位置で、画像Gの印刷を実行する。制御部2Aは、印刷装置2が図6(D)に示す位置にある状態(b)において、使用済領域(1,1)の後方にある未使用領域(1,2)を使用して、画像Gの印刷を実行する(S24)。その後、制御部2Aは、図6(E)に示すように、S28の処理によって印刷媒体Pに対するインクリボン9Aの位置が距離Kだけ前方に相対移動する。以下同様に、制御部2Aは、印刷装置2が図6(E)に示す位置にある状態(c)において、使用済領域(1,2)の後方にある未使用領域(1,3)を使用して、画像Gの印刷を実行する。制御部2Aは、印刷装置2が図6(F)に示す位置にある状態(d)において、使用済領域(1,3)の後方にある未使用領域(1,4)を使用して、画像Gの印刷を実行する。これにより制御部2Aは、図4の領域(1,1)、領域(1,2)、領域(1,3)、及び領域(1,4)のインクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ4つの領域を使用して、4つの画像Gを順に印刷できる。
印刷装置2が図6(F)に示す位置にある状態(d)で画像Gが印刷された後(S24)、更新された領域数は5であり、所定値Cである4よりも大きいと判断される(S26、S27:YES)。この場合制御部2Aは、印刷装置2をインクリボン9Aの幅方向Y2には移動せず、移動方向に後方を設定する(S30)。制御部2Aは第一モータ26、27を回転駆動して供給ロール90A及び巻取ロール90Bを反転方向に回転させることで、インクリボン9Aの加速、減速分から使用領域の搬送方向の余白分を差し引いた分だけ供給ロール90A側に巻き戻す(S31)。
状態(e)において、印刷停止指示が取得されず(S49:NO)、印刷指示が取得された場合(S23:YES)、制御部2Aは、印刷媒体Pに対する位置が、状態(a)での使用領域(1,1)と同じ前後方向位置で、画像Gの印刷を実行する。制御部2Aは、印刷装置2が図6(F)に示す位置にある状態(e)において、使用済領域(1,4)の右方(搬送方向上流側)にある未使用領域(2,4)を使用して、画像Gの印刷を実行する(S24)。以下同様に、印刷装置2の移動方向が後方に設定された条件で、印刷媒体Pに対してインクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ領域が使用され、4つの画像Gの印刷が順に実行される。具体的には、移動方向は後方であり(S25:NO)、制御部2Aは領域数を1だけデクリメントする(S32)。制御部2Aは、領域数が1であるかを判断し(S33)、領域数が1ではない場合(S33:NO)、第二モータ62を制御して、印刷装置2を移動方向(後方)に距離Kだけ移動する(S34)。制御部2Aは、S29と同様に、インクリボン9Aを巻き戻す(S35)。領域数が1である場合(S33:YES)、制御部2Aは、印刷装置2をインクリボン9Aの幅方向Y2には移動せず、移動方向に前方を設定する(S36)。制御部2AはS31と同様に、インクリボン9Aを巻き戻す(S37)。これにより制御部2Aは、図4のインクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ4つの領域(2,4)、領域(2,3)、領域(2,2)及び領域(2,1)を使用して、4つの画像Gを順に印刷を実行できる。S35又はS37の次に、制御部2AはS49の処理を実行する。
印刷指示が取得されていない場合(S23:NO)、制御部2Aは、スイッチ65の押下が検出されたかを判断する(S38)。作業者は、例えば、印刷準備期間にインクリボン9Aの幅方向Y2における、印刷媒体Pへの印刷位置を調整する場合に、スイッチ65を押下して、印刷装置2をインクリボン9Aの幅方向Y2に移動する移動指示を入力する。スイッチ65の押下が検出されない場合(S38:NO)、制御部2AはS49の処理を実行する。図4の領域(3,2)を使用して画像Gが印刷された後の、印刷装置2が図6(E)に示す位置にある状態(c)において作業者がスイッチ65を押下した場合、制御部2Aは、スイッチ65の押下を検出し、移動指示を取得する(S38:YES)。この場合制御部2Aは、取得された移動指示に応じて第二モータ62を制御して、印刷装置2のインクリボン9Aの幅方向Y2の移動を開始させる(S39)。S39での印刷装置2の移動方向は、スイッチ65によって出力される信号によって規定されてもよいし、現在設定されている印刷装置2の移動方向としてもよい。具体例では、一例として、印刷装置2の移動方向は、スイッチ65によって出力される信号によって前方と規定される。制御部2Aは、S39で移動を開始してからの印刷装置2の幅方向Y2の移動量Uをカウントする。移動量Uは、移動前後の印刷装置2の現在位置の差分から計算されてもよい。
制御部2Aは、現在位置R_pからの可動長さを計算する(S40)。印刷装置2をスイッチ65の指示により前方に移動させる場合であって、印刷時の移動方向が後方に設定されている時、現在位置が原点Bである時、又はC_maxが1である時は、前方への可動長さR_fはR_pである。C_maxは、S20で更新された所定値C以下の自然数(小数点以下切り捨て)であり、式(2)に従って算出される。式(2)で算出されるC_maxがS20で更新された所定値Cを超える場合には、S20で更新された所定値CがC_maxに設定される。
C_max=R_home/距離K+1 ・・・式(2)
具体例のように、印刷装置2をスイッチ65の指示により前方に移動させる場合であって、印刷時の移動方向が前方であり、現在位置R_pが距離Kよりも大きい時、前方への可動長さR_fは現在位置R_pから距離Kを差し引いた値である。距離Kを現在位置R_pから差し引くのは、1回前方に印刷装置2を移動させる分の可動長さを確保し、移動方向の設定を変更する処理を複雑化することを回避するためである。印刷装置2をスイッチ65の指示により前方に移動させる場合であって、印刷時の移動方向が前方であり、現在位置R_pが距離Kよりも大きくはない時、前方への可動長さR_fは0である。印刷装置2をスイッチ65の指示により後方に移動させる場合、後方への可動長さR_bは式(3)で算出される。
R_b=(R_max-R_p)-距離K×(領域数-1)
=R_max-R_home ・・・式(3)
制御部2Aは、スイッチ65の押下解除を検出したかを判断する(S41)。スイッチ65の押下解除が検出された場合(S41:YES)、制御部2Aは、第二モータ62を制御して、印刷装置2の移動を停止する(S45)。スイッチ65の押下解除が検出されていない場合(S41:NO)、制御部2Aは、印刷停止指示を取得したかを判断する(S42)。外部機器8による印刷媒体Pの搬送が停止されることに応じ、印刷媒体Pの搬送を停止する搬送停止信号が外部機器8から出力される。印刷装置2は、コントローラ7を介して搬送停止信号を印刷停止信号として取得する。印刷停止指示が取得された場合(S42:YES)、制御部2Aは、S45の処理を実行する。印刷停止指示が取得されていない場合(S42:NO)、制御部2Aは、印刷指示が取得されたかを判断する(S43)。印刷指示が取得された場合(S43:YES)、制御部2Aは、S45の処理を実行する。印刷指示が取得されていない場合(S43:NO)、制御部2Aは、S39で移動を開始してからの印刷装置2の移動量Uが、S40で計算された可動範囲の長さに達したかを判断する(S44)。移動量Uが可動長さに達していない場合(S44:NO)、制御部2Aは、処理をS41に戻す。移動量Uが可動範囲の長さに達した場合(S44:YES)、制御部2AはS45の処理を実行後、現在位置を取得する(S46)。
制御部2Aは、S39で移動が開始されてから、S45で移動を停止されるまでの印刷装置2の移動量Uに応じて、ホームポジションDを更新する(S47)。具体例では、ホームポジションDがS6で移動された位置から、移動量U1だけ前方に移動した位置に更新される。制御部2Aは、印刷装置2の移動量Uに応じて、所定値Cを更新する(S48)。制御部2Aは、印刷装置2の移動量Uと、インクリボン9Aの幅方向Y2における、インクリボン9Aの使用可能範囲Nの長さ、印刷装置2の可動範囲Rの長さ、及び印刷装置2の現在位置R_pとに応じて、所定値Cを更新する。具体例のインクリボン9Aの使用可能範囲Nの長さは、インクリボン9Aの幅方向Y2の長さである。印刷装置2の可動範囲Rの長さはS4の処理で検出された値である。印刷装置2の現在位置R_pは、式(1)で取得される。式(2)に従い、S8で設定され、S47で更新された印刷装置2の使用可能範囲Jの長さに対応するホームポジションDの位置R_homeを用いて、C_maxが3と算出され、所定値Cが3に更新される。S48の後、印刷停止指示が取得されず(S49:NO)、印刷指示が取得された場合(S23:YES)、図4の領域(3,3)を使用して画像Gが印刷され(S24)、更新後の領域数は4でありS48で更新された所定値Cよりも大きいと判断される(S26、S27:YES)。これにより制御部2Aは、インクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ3つの領域(3,1)、領域(3,2)、及び領域(3,3)を使用して、印刷媒体Pの幅方向Y2の同じ位置に3つの画像Gを順に印刷を実行できる。同様に制御部2Aは、移動方向が後方に設定された条件で、インクリボン9Aの幅方向Y2に並ぶ2つの領域(4,3)、及び領域(4,2)を使用して、印刷媒体Pの幅方向Y2の同じ位置に2つの画像Gを順に印刷できる。
領域(4,2)を使用して画像Gが印刷された後、スイッチ65の押下が検出され(S38:YES)、印刷装置2が移動量U2だけ前方に移動された場合(S39~S45)、制御部2Aは、ホームポジションDを更新し(S47)、所定値Cに1を設定する(S48)。S48の後、印刷停止指示が取得されず(S49:NO)、印刷指示が取得された場合(S23:YES)、図4の領域(4,1)を使用して画像Gが印刷され(S24)、更新後の領域数は1であると判断される(S33:YES)。領域(4,1)を使用して画像Gが印刷された後、制御部2Aは、移動方向が前方に設定された条件で、領域(5,1)を使用して、画像Gを印刷する(S24)。同様に制御部2Aは、移動方向が後方に設定された条件で、領域(6,1)を使用して、画像Gを印刷できる。
領域(6,1)を使用して画像Gが印刷された後、スイッチ65の押下が検出され(S38:YES)、印刷装置2が移動量U3だけ後方に移動された場合(S39~S45)、制御部2Aは、ホームポジションDを更新し(S47)、所定値Cに4を設定する(S48)。S48の後、印刷停止指示が取得されず(S49:NO)、印刷指示が取得された場合(S23:YES)、図4の領域(7,1)を使用して画像Gが印刷される(S24)。制御部2Aは以下一行目と同様に、領域(7,1)、領域(7,2)、領域(7,3)、及び領域(7,4)を使用して、印刷媒体Pの幅方向Y2の同じ位置に4つの画像Gを順に印刷できる。
印刷停止指示が取得された場合(S49:YES)、制御部2Aは以上で印刷モード処理を終了し、処理を図5のメイン処理に戻す。図5のS13の処理の後、制御部2Aは、処理をS7に戻して、運転モードを印刷モードM3から設定モードM2に切り替える。メイン処理は、電源をOFFにする指示が取得される場合に終了する。
上記実施形態の印刷システム1において、供給部22、巻取部23、サーマルヘッド24、及び印刷装置2は各々、本発明の第一装着部、第二装着部、サーマルヘッド、及び印刷装置の一例である。供給ロール90A、及び巻取ロール90Bは各々、本発明の第一ロール、及び第二ロールの一例である。第一モータ26、27は、本発明の第一モータの一例である。第二モータ62、ブラケット6、制御部2A、第一センサ63、及び第二センサ64は各々、本発明の第二モータ、移動機構、制御部、第一センサ、及び第二センサの一例である。図7のS24の処理を実行する制御部2Aは、本発明の印刷制御部の一例である。S29、S31、S35、S37の処理を実行する制御部2Aは、本発明の第一搬送制御部の一例である。S28、S34の処理を実行する制御部2Aは、本発明の第一移動制御部の一例である。S38の処理を実行する制御部2Aは、本発明の指示取得部の一例である。S39の処理を実行する制御部2Aは、本発明の第二移動制御部の一例である。S48の処理を実行する制御部2Aは、本発明の更新部の一例である。図5のS2、S4の処理を実行する制御部2Aは、本発明の範囲取得部の一例である。S10、又はS11の後に、S2の処理を実行する制御部2Aは、本発明の現在位置取得部の一例である。S8の処理を実行する制御部2Aは、本発明の範囲設定部の一例である。S6の処理を実行する制御部2Aは、本発明の第三移動制御部の一例である。
上記実施形態の印刷システム1は、S39からS45の処理で、印刷装置2がインクリボン9Aの幅方向Y2に移動された場合に、S48の処理によって所定値Cが更新される(S48)。故に印刷システム1は、印刷装置2がインクリボン9Aの幅方向Y2に移動されることに起因して、印刷が一時停止されることを回避できる。従来の印刷システムでは、印刷装置2がインクリボン9Aの幅方向Y2に移動されることに起因してエラーを発さないために、印刷位置の調整範囲を可動範囲ではなく、領域数だけ印刷装置が移動できる範囲に制限することが想定される。この場合、印刷装置2が可動範囲内にあるにもかかわらず、印刷位置を変更できない不具合が生じる場合がある、その結果、作業者は印刷媒体Pに対する印刷位置を所望の位置に変更するために、印刷を一時停止する必要があり煩雑である。これに対し、本印刷システム1はS39で開始される印刷装置2の幅方向Y2の位置の変更に際し、S40で算出された可動長さがS20で設定された所定値Cによって制限されることを回避できる。
制御部2Aは、S39~S45によって印刷装置2がインクリボン9Aの幅方向Y2に移動された場合に、印刷装置2の移動量Uと、インクリボン9Aの幅方向Y2における、インクリボン9Aの使用可能範囲の長さ、印刷装置2の可動範囲Rの長さ、及び印刷装置2の現在位置とに応じて、所定値Cを更新する(S48)。故に、印刷システム1は、印刷装置2の移動量Uと、インクリボン9Aの幅方向における、インクリボン9Aの使用可能範囲の長さN、印刷装置2の可動範囲Rの長さR_max、及び印刷装置2の現在位置R_pとに応じて、所定値Cを適切に更新できる。
印刷システム1のブラケット6は、印刷装置2の可動範囲Rの一端部に設けた第一センサ63と、印刷装置2の可動範囲Rの他端部に設けた第二センサ64とを更に備える。制御部2Aは、印刷装置2の電源が投入されたとき、印刷装置2を一端部に移動して第一センサ63を検出した後、他端部の第二センサ64を検出するまでの第二モータ62の駆動量によって、印刷装置2の可動範囲Rを取得する(S2、S4)。制御部2Aは、可動範囲R内で印刷装置2を移動する。制御部2Aは、S39によって印刷装置2が移動された場合に、印刷装置2の移動量と、インクリボン9Aの幅方向における、インクリボン9Aの使用可能範囲Nの長さ、S4で取得された可動範囲Rの長さ、及び印刷装置2の現在位置とに応じて、所定値Cを更新する(S48)。故に印刷システム1は、第一センサ63と第二センサ64との検出結果に基づき取得された可動範囲Rに応じて所定値Cを適切に更新できる。
制御部2Aは、可動範囲Rが取得された後、現在位置の校正を行う場合、第一センサ63の検出結果を新たに取得し(S1:NO、S2)、第二センサ64の検出結果は新たに取得せずに(S3:YES)、現在位置を取得する(S46)。故に、印刷システム1は、第一センサ63と第二センサ64の検出結果を新たに取得して現在位置を取得する場合に比べ、現在位置を取得する処理を簡単にできる。
制御部2Aは、印刷装置2の幅方向の可動範囲R内に可動範囲R内よりも狭く、且つ、連続した使用可能範囲Jを設定する(S8)。制御部2Aは、使用可能範囲J内で印刷装置2を移動する(S28、S34)。制御部2Aは、S39~S45の処理で印刷装置2がインクリボン9Aの幅方向Y2に移動された場合に、印刷装置2の移動量Uと、インクリボン9Aの幅方向における、インクリボン9Aの使用可能範囲Nの長さ、画像Gの長さ、範囲設定部によって設定された使用可能範囲Jの長さ、及び印刷装置2の現在位置とに応じて、所定値Cを更新する(S48)。故に、印刷システム1は、インクリボン9Aの幅方向における、インクリボン9Aの使用可能範囲Nの長さ、画像Gの長さ、及び印刷媒体の長さ等に応じて、可動範囲R内に使用可能範囲Jを設定できる。印刷システム1は、印刷装置2を使用可能範囲J内で移動させるように制御できる。
制御部2Aは、S39~S45の処理で印刷装置2が移動された場合に、所定値Cに加え使用可能範囲Jを規定するホームポジションDを更新する(S47、S48)。故に印刷システム1は、印刷装置2を使用可能範囲J内で移動させて、インクリボン9Aの幅方向において所定値Cの領域を使用して印刷を実行するように制御できる。
制御部2Aは、印刷開始前に、印刷装置2を使用可能範囲Jの一端部であるホームポジションDへ移動する(S6)。制御部2Aは、印刷装置2がホームポジションDに位置する状態で印刷順序が最初の画像Gの印刷を行う。故に印刷システム1は、印刷装置2を使用可能範囲J内で移動させて、インクリボン9Aの幅方向において所定値Cの領域を使用して印刷を実行するように制御できる。
本発明の印刷システムは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
印刷システムは、印刷装置、移動機構、及び制御部を備えればよく、適宜構成を変更されてもよい。例えば、印刷装置2は印刷媒体Pを搬送する包装機を備えてもよいし、プラテンローラQを備えてもよい。印刷装置2は、コントローラ7及びブラケット6の少なくとも何れかを備えてもよい。印刷装置2の構成は適宜変更されてよい。例えば、印刷装置2に装着されるインクリボン9Aの搬送経路は適宜変更されてよい。第一装着部及び第二装着部は各々、インクリボンが巻回された第一ロール及び第一ロールから繰り出されたインクリボンが巻き取られる第二ロールを装着可能であればよい。印刷装置は、印刷時にインクリボン9A及び印刷媒体Pの搬送が停止され、サーマルヘッド24をインクリボン9Aに沿って移動させることで印刷するタイプの印刷装置であってもよい。移動機構は印刷装置をインクリボンの幅方向に移動可能であればよい。移動機構は、第一センサ、第二センサの少なくとも一方を備えなくてもよいし、移動機構は、機械式のセンサ等により可動範囲Rを取得してもよい。各部材を移動させる駆動源は適宜変更されてよい。印刷システムと通信可能な外部機器は、例えばPC、携帯端末等であってもよい。
印刷システムは、メイン処理を実行させるプロセッサとして、CPU、マイクロコンピュータ、ASIC (Application Specific Integrated Circuits)、FPGA (Field Programmable Gate Array)などを備えてもよい。メイン処理は、印刷システム内の複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。上記実施形態のメイン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。
インクリボン9Aの使用領域(画像領域)は、印刷毎に異なっていてもよい。インクリボン9Aの使用領域の形状は、C状、三角形状等適宜変更されてよい。一の画像Gの印刷の使用領域と、次の画像Gの使用領域とは、互いに重ならない位置であればよく、両者の延設範囲は、インクリボン9Aの幅方向Y2において部分的に重なってもよい。インクリボン9Aに対する画像G及び使用領域間の幅方向の距離は適宜変更されてよい。インクリボンの使用領域のインクリボン上の配置は、図4に示すように格子状に並ぶ場合に限らず、隣合う領域に対するインクリボンの搬送方向及び幅方向の少なくとも何れかの位置は適宜変更されてよい。この場合、インクリボン上にインクリボンの幅方向に並ぶ領域の数は、インクリボンの幅方向に並ぶ領域の内、インクリボンの搬送方向における領域の延設範囲が所定割合(例えば、50%)以上一致する条件を満たす領域の数とすればよい。インクリボンの使用領域がインクリボン上にチェック状に配置される場合等には、制御部は、S22、S30、S36で設定される移動方向に応じた所定数を設定してもよい。制御部は、領域数が所定値よりも大きくなった場合に(S27:YES)、S30の処理に変えて、領域数を1に設定し、第二モータ62を制御して、印刷装置2を後方にホームポジションDまで移動させてもよい。この場合、S25、S32~S37は省略されてよい。印刷装置の初期位置(ホームポジションD)は、原点B、可動限界W等適宜変更されてよい。ホームポジションDは、印刷装置2の使用可能範囲Jの他端側(後端側)に設けられてもよい。その場合例えば、S22において移動方向が使用可能範囲Jの他端側に設定され、インクリボン9Aの内の、最も後ろ側に配置された領域を使用して、印刷順序が最初の画像が印刷されればよい。S40の可動長さの算出方法は適宜変更されてよい。制御部2Aは、インクリボンの幅方向の領域の使用率を優先させる場合に、例えば、インクリボンの幅方向の使用領域数の下限値を設定し、設定された下限値を下回らないように、可動長さを計算してもよい。印刷装置2をスイッチ65の指示により前方に移動させる場合であって、印刷時の移動方向が前方である時、制御部2Aは、現在位置によらず、前方への可動長さR_fを現在位置R_pとしてもよい。この場合、制御部2Aは印刷装置2を停止させた後(S45)、現在位置及び移動量Uに応じて、移動方向を切り替える処理を実行すればよい。
S38で取得される指示は、スイッチ65の押下により入力される例に限らず、例えば、外部機器8からコントローラ7を介して取得されてもよい。S38で取得される指示は、タッチパネル、ダイヤル等のスイッチ65以外の操作部の操作に応じて入力されてもよい。スイッチ等の操作部の配置は、適宜変更されてよい。印刷システムが撮影装置を備える場合、印刷システムは、印刷媒体に印刷済み画像の撮影画像の解析結果に基づき、インクリボンの幅方向における印刷媒体に対する画像の位置を変更する指示を自動的に入力するフィードバック制御を行ってもよい。その場合、該指示には、インクリボンの幅方向における印刷装置の移動方向及び移動量が含まれればよい。制御部2Aは、S38において該指示に基づき、指示に含まれる移動量だけ、移動方向に印刷装置2を移動させればよい(S39)。同様に印刷システムは、印刷前の印刷媒体のインクリボンの幅方向の端部の撮影画像の解析結果に基づき、インクリボンの幅方向における印刷媒体に対する画像の位置を変更する指示を自動的に入力するフィードバック制御を行ってもよい。
S48における所定値の更新は、印刷装置2がS38で取得された指示に応じて移動される毎に実行される場合に限定されず所定数を更新する必要があるときのみに実行されてもよい。例えば、制御部2Aは移動量Uに応じてホームポジションDを変更後、以下の式(4)を満たした場合に、所定数を更新してもよい。
0>R_home-距離K×(C-1) ・・・式(4)