JP7049119B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
シリコン単結晶に取り込まれる炭素は、シリコン原料由来の含有炭素及び表面付着物に由来し、それらがシリコン融液に溶け込むことで育成する結晶中に取り込まれる。
即ち、シリコン原料を溶融中に、ルツボ内のシリコン融液からSiOガスが蒸発し、SiOが炭素製部材(C)と反応してCOガスを発生する。このCOガスがシリコン融液中に溶け込むことにより育成する結晶中に炭素が取り込まれる。
そのため、シリコン単結晶中の炭素濃度をより低減するため、発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果、炉内加熱中において、炭素製部材の表面から多量のCOガス、CO2ガスが発生することを知見した。原因は定かではないが、原因としては、例えば、炉内に残存する空気中の水分(H2O)と炭素製部材(C)との反応により発生すると推察される。
特に、CO2ガスに比べて、COガスは比較的低温(250℃~750℃)でより多く発生するため、溶解される前のシリコン原料と反応し、シリコン原料の表面に、SiC結合を有する膜を形成し、その膜がシリコン融液に溶融されることにより、結晶中の炭素濃度が高くなることを知見し、本発明を想到したものである。
また、炭素製部材からCOガスを出しきることで、COガスがシリコン融液に混入することによる炭素濃度の上昇を抑制することができる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法は、チョクラルスキー法によりルツボから引き上げられるシリコン単結晶において、従来課題を解決しつつ、結晶中の炭素濃度をより低減するための方法である。
また、ヒータ4の周囲には、ヒータ4の熱を効果的にルツボ3に与えるために、メインチャンバ2aの内壁に沿って保温部材13が設けられている。
このガス供給口15には、バルブ16を介してArガス供給源17が接続されており、バルブ16が開かれるとArガスがプルチャンバ2b上部からルツボ3内に供給されるようになされている。
この構成において、排気ポンプ19が駆動し、前記バルブ16が開かれることにより、ガス供給口15からArガスが炉体2内に供給され、ガス流を形成して排気口18から排気されるようになされている。
尚、ガス供給口15からのガス流量の調整は、バルブ16の開閉度及び排気ポンプ19の吸引速度を制御することによってなされる。
この輻射シールド6は、外側が水平環状部6a、内側が傾斜環状部6bにより形成され、傾斜環状部6bは図示するように中心方向下方に向け直線状に傾斜している。尚、この輻射シールド6は、図示しない昇降機構により上下移動可能に設けられている。
また、石英ガラスルツボ3の高さを制御する昇降装置11と、昇降装置11を制御する昇降制御部11aと、成長結晶の引上速度と回転数とを制御するワイヤリール回転装置制御部12とを備えている。
また、この単結晶引上装置1は、単結晶引き上げの制御を行うためのプログラムを記憶した記憶装置8aと、前記プログラムを実行するための演算制御装置であるCPU8bとを有するコンピュータ8を備えている。
前記各制御部9、10a、11a、12及びガス分析装置7は、前記CPU8bに接続されている。
先ず、ルツボ3内に初期投入量として所定量のシリコン原料Mを装填する(図2のステップS1)。この初期投入量は、1本のシリコン単結晶を育成するのに必要なシリコン原料全体量の30%以下とされる。これは、後述するようにルツボ加熱の初期段階において炉内にCOガスが発生するため、それによるシリコン原料Mへの汚染を極力少なくするためである。
これにより、炉内の空気が炉外に排気され、炉内雰囲気中の水分(H2O)及び炭素製部材の水分(H2O)の除去がなされる。
この溶融作業開始から所定時間の間、ヒータ4の出力(W)は、シリコン原料Mを全溶解させるのに必要なヒータ出力(100%)に対して、15%以上50%以下の範囲のヒータ出力とされる。この低いヒータ出力ではシリコン原料Mは溶融しないが、比較的低温(250℃以上750℃以下の範囲含む)で加熱されることによって、炉内の炭素製部材(ヒータ4、ルツボ3、保温部材13等)からCOガスが発生し、これが排気される(Arガスに置換される)。
尚、ヒータ出力を低く保持する時間が3時間未満の場合、炉内の炭素製部材からのCOガスの排出が不完全となるため、好ましくない。また、20時間以上の場合には、それ以上の効果が望めないため、好ましくない。
しかしながら、流量が200L/min未満では、COガスの排出効果が小さいため、好ましくない。一方、流量が400L/min以上の場合は、COガスの排出効果が飽和し、大量のArガスを排出するポンプの負荷が大きく、ポンプが停止するトラブルが発生しやすくなる。また、Arガスの流量が多いと、コストが高くなるため、好ましくない。
これにより、ルツボ3内のシリコン原料Mが全て溶融される。シリコン原料Mが溶融され、生成されたシリコン融液からはSiOガスが発生し、炉内の炭素部材(ヒータ4、ルツボ3、保温部材13等)との反応でCOガスが発生するが、ガス流れの経路的にシリコン原料Mよりも排気ポンプ19側の下流側での発生であるため影響は少ないものとなる。
即ち、ステップS2の後、ヒータ4の出力(W)は、シリコン原料Mを全溶解させるのに必要なヒータ出力(100%)に対して、15%以上50%以下の範囲のヒータ出力とされる(図2のステップS6)。
尚、COガス量ピーク値の濃度の30%以上減少した時点としたのは、COガス量が増加から減少に転じた後、再びCOガス量が約20%程度増加する場合があること、また分析のばらつき等を考慮したためである。
前記ステップS7の条件が満たされると、CPU8bはヒータ制御部9を制御し、ヒータ4の出力(W)を、シリコン原料Mを全溶解させるのに必要なヒータ出力に切り替える(図2のステップS4)。
このようにすることで、ステップS3の保持時間を予め決められた3時間以上20時間以下の時間に設定する必要がなく適切な保持時間となるため、無駄な加熱時間が無くなり製造効率を向上させることができる。
このように、シリコン原料Mの充填量を少なくすることにより、シリコン原料表面に形成されるSiC結合を有する膜の形成を抑制することができ、シリコン融液の炭素濃度の増加を抑制することができる。
そのため、シリコン原料Mを追加投入するタイミングは、シリコン原料MとCOガスとの反応を減少させるために、前記ヒータ出力を、シリコン原料を全溶融するために必要な出力の15%以上50%以下とし、かつ、3時間以上20時間以下保持するステップ(S3,S7)の後であって、前記ヒータ出力を、シリコン原料を全溶融するために必要な出力とし、シリコン原料を溶融し、シリコン融液を形成するステップ(S4)の前に、前記シリコン原料を前記ルツボに追加投入するステップが実行されることが望ましい。
即ち、CPU8bの指令により昇降装置制御部11aと、ワイヤリール回転装置制御部12とが作動し、回転するルツボ3の高さ位置が調整されるとともに、巻き取り機構5aが作動してワイヤ5bが降ろされる。
しかる後、CPU8bの指令によりヒータ4への電力供給や、単結晶引上速度(通常、毎分数ミリの速度)などをパラメータとして引き上げ条件が調整され、直胴部直径まで結晶径を拡げるクラウン工程、製品となる単結晶を育成する直胴工程、直胴工程後の単結晶直径を縮径するテール部工程の単結晶引上工程が順に行われる。
これにより、炭素製部材から発生するCOガスとシリコン原料表面の反応が抑制され、シリコン原料M表面におけるSiC結合を有する膜の形成を抑制することができる。即ち、前記SiC結合を有する膜がシリコン融液に取り入れられることを原因とする、シリコン融液中の炭素濃度の上昇を抑制することができる。
実験1では、炉内において炭素製部材から発生するCOガス量について検証した。
サンプルとしては、炉内において使用されているものを用いた。サンプル1は10×10×5mmの断熱材とし、サンプル2は10×10×5mmのCIP材とした。
炉内を昇温速度10℃/minで1000℃まで加熱し、大気圧で、Heガスを流量50mL/min流した。
そして、炉内に発生するガスの重量を、TPD-MS(Temperature Programmed Desorption-Mass Spectrometry)を用いて分析した。その結果を図3に示す。
尚、サンプル1の結果を図3(a)のグラフに示し、サンプル2の結果を図3(b)のグラフに示す。図3(a)、(b)のグラフにおいて、縦軸は炭素製部材から発生した脱ガスの重量(μg)であり、横軸は炉内温度(℃)である。
そのため、本発明では、ヒータ出力を、ヒータから離れた炭素製部材の温度を250~750℃に維持可能なヒータ出力とし、3時間以上20時間以下維持することした。この炭素製部材の温度を250~750℃に維持可能なヒータ出力は、シリコン原料を全溶融するために必要なヒータ出力の15%以上50%以下に相当する。
実験2では、32インチの石英ルツボに初期投入量として100kgのシリコン原料を装填し、原料溶融工程の初期のヒータ出力保持時間と、炉内のAr流量とを表1に示す条件とし、原料溶融を実施した。
そして、引き上げた結晶の固化率85%の位置の炭素濃度をFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で測定した。各実施例の条件、及び結果を表1に示す。
一方、比較例1では、炭素濃度が1.7×1015atoms/cm3と高い値となった。これは、ヒータ出力が10%と低く、炉内の炭素製部材の温度が上昇せず、COガスが完全に放出されなかったためと考えられる。
また、比較例2では、炭素濃度が2.0×1015atoms/cm3と高い値となった。これは、ヒータ出力が60%と高く、炉内の炭素製部材の温度が上昇する前に、シリコン原料の温度が上昇し、シリコン原料表面とCOガスとの反応が促進され、シリコン融液の炭素濃度が増加したものと考えられる。
また、比較例4では、炭素濃度が1.8×1015atoms/cm3と高い値となった。これは、Ar流量が100L/minと少なすぎ、COガスの排出効果が小さいために、炉内でのCOガスの反応により炭素濃度が増加したものと考えられる。
実験3では、本実施の形態のように、ルツボ加熱初期段階でのヒータ出力の制御が効果を有するか否かについて検証した。
実施例7、8では、φ150mm結晶を育成するために必要なシリコン原料を溶解する際のヒータ出力(100kW)に対しヒータ出力を30kWとし、3時間、その状態を保持した後、ヒータ出力を100kWとしてシリコン融液を形成した。
実施例7では、炉内のAr流量を150L/minとし、実施例8では120L/minとした。
その他の条件は、実施例7、8、比較例5、6において同一条件とした。
このグラフに示すように、加熱初期段階でのヒータ出力を低く保持することにより、結晶中の炭素濃度が従来よりも大きく低減(約58%)できることを確認できた。
2 炉体
3 ルツボ
4 ヒータ
5 引上機構
7 ガス分析装置
8 コンピュータ
8a 記憶装置
8b CPU
9 ヒータ制御部
10 ルツボ回転機構
Claims (4)
- チョクラルスキー法により育成されるシリコン単結晶の製造方法であって、
ルツボにシリコン原料を装填するステップと、
ルツボ内のシリコン原料を溶融する初期段階において、シリコン原料を全溶融するために必要な出力の15%以上50%以下の範囲のヒータ出力であるシリコン原料が溶融しない低出力の状態を、予め設定された3時間以上20時間以下の間、保持するステップと、
前記低出力の状態を3時間以上20時間以下の間保持した後に、前記ヒータ出力を、シリコン原料を全溶融するために必要な出力に切り替えて、シリコン原料を溶融し、シリコン融液を形成するステップと、
前記シリコン融液が形成された前記ルツボからシリコン単結晶を引き上げるステップと、
を含み、
前記ルツボ内のシリコン原料を溶融する初期段階において、シリコン原料を全溶融するために必要な出力の15%以上50%以下の範囲のヒータ出力であるシリコン原料が溶融しない低出力の状態を、予め設定された3時間以上20時間以下の間、保持するステップにおいて、
炉内のCOガス量を検出し、COガス濃度がピーク値から減少に転じ、前記ピーク時の濃度から30%以上減少した後、
前記ヒータ出力を、シリコン原料を全溶融するために必要な出力に切り替えて、シリコン融液を形成するステップを実行することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 前記ルツボ内のシリコン原料を溶融する初期段階において、シリコン原料を全溶融するために必要な出力の15%以上50%以下の範囲のヒータ出力であるシリコン原料が溶融しない低出力の状態を、予め設定された3時間以上20時間以下の間、保持するステップにおいて、
炉内の不活性ガスの流量を200L/min以上400L/min以下とすることを特徴とする請求項1に記載されたシリコン単結晶の製造方法。 - 前記ルツボにシリコン原料を装填するステップにおいて、
前記ルツボに装填されるシリコン原料の重量は、1本のシリコン単結晶を育成するのに必要なシリコン原料全体量の30%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシリコン単結晶の製造方法。 - 前記シリコン原料を全溶融するために必要な出力の15%以上50%以下の範囲のヒータ出力であるシリコン原料が溶融しない低出力の状態を、予め設定された3時間以上20時間以下の間、保持するステップの後に、
前記ヒータ出力を、シリコン原料を全溶融するために必要な出力に切り替えて、前記シリコン原料を前記ルツボに追加投入するステップが実行されることを特徴とする請求項3に記載されたシリコン単結晶の製造方法。
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JP2007112658A (ja) | 半導体単結晶の製造方法 |
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