JP2020045258A - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、近年、量産性に優れ、低コストのCZ法を用いて製造されたシリコン単結晶の転換が望まれている。
その結果、CZ法を用いて製造されたシリコン単結晶では、酸素析出核の成長が進み、FZ法によるシリコン結晶と同等の結晶特性を有するシリコン単結晶を得ることができないという問題があった。
具体的には、石英るつぼ内のシリコン融液を融点より高い温度に昇温して30分間以上保持した後に融点まで降温し、該融液中にシリコンの種結晶を浸漬し引き上げることによって結晶成長を開始する低炭素シリコン結晶成長方法が提案されている。
通常、石英るつぼ(SiO2 )は、その中のシリコン融液(Si)と反応してSiOを発生する。SiO2+Si→2SiO・・・(2)
このSiOは、グラファイト製のヒータや断熱材とさらに反応することによってCOを発生する。SiO+C→CO+Si・・・(3)
しかしながら、前記特許文献1に記載されたシリコン単結晶の成長方法にあっては、この平衡を、ヒータパワーを増大することによって破り、(1)の反応によるCOの放出量が、シリコン融液へのCOの溶け込み量より優勢になるようにして、シリコン融液からCOを除去するものである。
これは、シリコンの融液を高温に保つことによって、融液中のCOガスの蒸発は促進される一方、同時に融液からのSiOガスの蒸発量が増加する。また、融液を高温に保つことにより、石英るつぼの周囲に配置された、グラファイト製のヒータや断熱材等の部材が高温になるため、前記した蒸発したSiOガスと前記部材との反応も促進され、COガスが多量に発生する。
その結果、融液からのCOガスの蒸発量よりも、融液に取り込まれるCOガスが多くなり、低炭素濃度の融液にすることができず、結局、低炭素濃度のシリコン単結晶を製造することができないという課題があった。
その結果、シリコン原料が特定量溶けた後、ヒータの出力を低出力とし、その低出力の状態で溶融を完了させることによって、融液から蒸発するSiOガスの蒸発量を抑制できることを知見した。
即ち、SiOガスの蒸発量が抑制されることにより、融液に取り込まれるCOガスも抑制でき、低炭素濃度の融液とすることができる。そして、低炭素濃度の融液からシリコン単結晶を引き上げることで、低炭素濃度のシリコン単結晶を製造することができることを想到するに至り本発明を完成した。
その結果、融液に取り込まれるCOガスを抑制でき、低炭素濃度の融液にすることができ、低炭素濃度のシリコン単結晶を製造することができる。
融液表面に浮遊するシリコン原料の量を体積で特定することも考えられるが、その体積を求めることは困難である。一方、シリコン原料の量を面積で特定する場合には、撮像カメラ等で容易に測定することができる。
尚、ヒータ出力を低下するタイミングが、前記基準とした面積の15%未満が融液表面に浮遊するシリコン原料となる時点では、既に大量のSiOが蒸発した後のため、炭素濃度を十分に低下したシリコン結晶を得ることが難しい。一方、前記基準とした面積の35%超える時点では、サイクルタイムが悪化するため好ましくない。
尚、ヒータ出力の低下率が5%未満である場合、融液から蒸発するSiOガスの蒸発量を抑制できないため、好ましくない。一方、低下率が15%超える場合、サイクルタイムが悪化する、もしくは浮遊するシリコン原料が溶融しない虞があり、好ましくない。
このように、ヒータ出力を130〜170KWの場合には、融液表面に浮遊するシリコン原料の表面積が、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面を基準とした表面積の15〜35%となった時点で、前記ヒータ出力を5〜15%低下させ、前記低下させたヒータ出力で、浮遊する全てのシリコン原料の溶融を完了するため、従来の場合のように、ヒータ出力が高い状態で、全てのシリコン原料を溶融する場合に比べて、融液から蒸発するSiOガスの蒸発量を抑制することができる。
その結果、融液に取り込まれるCOガスを抑制でき、低炭素濃度の融液にすることができ、低炭素濃度のシリコン単結晶を製造することができる。
即ち、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面の面積は予め記憶部2cに記憶されているおり、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面の面積を基準とした、固体の状態のシリコン原料の面積の割合が算出されるように構成されている。
尚、撮像カメラ2(CCDカメラ)は、炉体11の斜め上方向(シリコン融液Mの液面から45度以上75度以下)から撮像するために、炉体11には監視窓11Aが設けられている。
具体的に説明すると、シリコン単結晶引き上げ装置10は、炉体11と、炉体11内に配置され、シリコン原料(主に、ポリシリコン)を保持するルツボ1と、ルツボ1の外周囲に設けられ、ルツボ1を加熱し、ルツボ1内に保持されたシリコン原料を溶融してシリコン融液Mとするヒータ12と、シリコン融液Mの上方に配置され、CZ法によりシリコン融液Mから引上げたシリコン単結晶(図示せず)への輻射熱を遮断する円筒形状の熱遮蔽体13を備える。
尚、前記ヒータ12はヒータ制御部12aによってヒータ出力が制御可能に構成されている。
また、熱遮蔽体13の上方には、熱遮蔽体13の内周側、熱遮蔽体13とシリコン融液Mとの間を通って、ルツボ1の下方に位置する排出口16から炉体11外に排出されるキャリアガスG1を供給するキャリアガス供給口17が設けられている。
前記ルツボ1の上方には、図示しないが、シリコン単結晶を育成するために用いられる種結晶を保持するシードチャックが取り付けられた引上用ワイヤ(図示せず)が設けられている。引上用ワイヤは、炉体外に設けられた回転昇降自在なワイヤ回転昇降機構に取り付けられている。
前記キャリアガス供給口17には、マスフローコントローラ20を介して、炉体11内にキャリアガスG1を供給するキャリアガス供給部21が接続されている。また、排出口16には、バタフライ弁22を介して、熱遮蔽体13の内周側、熱遮蔽体13とシリコン融液Mとの間を通ったキャリアガスG1を排出するキャリアガス排出部23が接続されている。
そして、マスフローコントローラ20を調整することで炉体11内に供給するキャリアガスG1の供給量を、バタフライ弁22を調整することで炉体11内から排出する排出ガス(キャリアガスG1及びシリコン融液Mから発生したSiOxガス等も含む)の排出量をそれぞれ制御する。
図1、図3に示すように、チョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造方法において、ヒータ12により、ルツボ1内に収容したシリコン原料を加熱し溶融を行い、シリコン融液表面に浮遊するシリコン原料の量と、ヒータ12の出力の低下率と、溶融後に引き上げたシリコン単結晶の炭素濃度との関係を予め調べる第1工程S1と、シリコン単結晶の炭素濃度から浮遊するシリコン原料の量と、ヒータ12の出力の低下率を決定する第2工程S2とを含む、準備工程を備えている。
この実施工程は、ヒータ12により、ルツボ1内に収容したシリコン原料を加熱し溶融を行い、シリコン融液表面に浮遊するシリコン原料の量を測定する第3工程S3と、シリコン融液表面に浮遊するシリコン原料が特定量にとなったタイミングで、ヒータ出力を特定の低下率で出力を低下させ、前記低下させたヒータ出力で、シリコン原料の溶融を完了する第4工程S4と、第4工程の後、シリコン結晶育成を行う第5工程S5と、を含んでいる。
第1工程S1において、ルツボ1内の融液表面に浮遊するシリコン原料の量とヒータ12出力の低下率を種々変えて作成した、シリコン融液を用いてシリコン単結晶を引き上げ、得られたシリコン単結晶の炭素濃度を測定する。
この融液表面に浮遊するシリコン原料の量は、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面の面積を基準とした、固体の状態のシリコン原料の面積の割合を意味する。
このとき、ルツボ1内に収容されるシリコン原料PSの量に応じて、シリコン原料PSの融点より高い温度に昇温するように、ヒータ出力130〜170KWの範囲内において調整される。尚、図2(b)の溶融終盤時、融液の温度は、融点〜1450℃、浮遊する原料は1300℃〜融点付近の温度となる。
即ち、図2(d)のルツボ1の平面図に示す融液表面の面積を1として、残存する(浮遊する)固体の状態のシリコン原料PSの面積の割合を測定する。
また、演算処理・制御部2bでは、シリコン原料PSが全て溶融状態を上方から撮像カメラ2で撮像し、求められた融液Mの表面の面積を記憶部2cから呼び出し、シリコン原料PSが全て溶融した場合の融液表面の面積に対する、残存する固体の状態のシリコン原料の面積の割合を算出する。
尚、全て溶融した場合の融液表面の面積に対する、残存する固体の状態のシリコン原料の面積の割合を算出する方法については、一般的に知られている画像処理装置、方法を用いることができる。また、本発明では撮像カメラを用いているが、残存する固体の状態のシリコン原料はルツボの回転により表面中心部に円状にまとまる様に浮遊するため、結晶径を測定する機構でも代用可能である。
このヒータ出力の低下率は、融液の温度がシリコンの融点近傍の温度になされる必要がある。シリコンの融点以下の温度になる場合には、融液が凝固し、シリコン単結晶の引き上げを行うことができないためである。
尚、炭素濃度測定は、フォトルミネッセンス(PL)法を用いることにより、測定できる(S. Nakagawa, K. Kashima, M. Tajima, Proceedings of the Forum on the Science and Technology of Silicon Materials 2010 (2010) 326 参照)。
具体的には、融液表面に浮遊するシリコン原料の面積が、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面を基準として、15〜35%となった時点(タイミング)で、ヒータ制御部12aによって、ヒータ出力の低下させるのが好ましい。即ち、15〜35%の範囲内で選択するのが好ましい。
ヒータ出力を低下するタイミングが、融液表面に浮遊するシリコン原料の面積が、前記基準とした面積の15%未満となった時点では、既に大量のSiOが蒸発した後のため低出力の効果が得られず、炭素濃度を十分に低下した結晶を得ることが難しい。
一方、前記基準とした面積の35%超える時点では、サイクルタイムが悪化するため好ましくない。
ヒータ出力の低下率が5%未満である場合、ヒータの出力の下げ幅が小さく低出力の効果が得られず、炭素濃度を十分に低下した結晶を得ることが困難である。一方、低下率が15%超える場合、サイクルタイムが悪化する、もしくはシリコン原料が溶融しない虞があるため、好ましくない。
即ち、過剰なSiOの蒸発を防ぐためには、可能な限り融点付近の温度を維持した状態で、シリコン原料の溶融を完了することが重要となる。そのため、ある程度シリコン原料が溶けた後、低出力で溶融を完了させることで、融液に取り込まれるCOガスを抑制し、低炭素濃度の融液に形成することができる。
このとき、準備工程S1で行ったヒータ出力と同一のヒータ出力で、シリコン原料を加熱し溶融を行う。尚、ルツボ、ヒータ等は準備工程で用いたものと同一の装置、同一部材を用い、シリコン原料も同量とした。即ち、実施工程と準備工程は同一の条件のもと行われる。
この測定は、準備工程と同様に、撮像カメラ2を用いて行い、シリコン融液の浮遊するシリコン原料PSの面積を測定する。
そして、シリコン原料が全て溶融した場合の融液の表面の面積を基準として、その面積の15〜35%が浮遊するシリコン原料となった時点で、ヒータ出力を低出力に切り換える。
前記ヒータ出力の低下率は、5〜15%の範囲内の準備工程S2で決定した特定の低下率である。尚、ヒータを低出力にすることで、サイクルタイムの悪化も懸念されるが、融点に近い状態で溶融が完了することで、その後ネック開始温度までの調整時間が短縮されるため、大幅な時間ロスには繋がらない。
準備工程における引上げと同一の条件で、シリコン単結晶の引上げを行うことにより、準備工程におけるシリコン単結晶と同等の炭素濃度を有するシリコン単結晶を得ることができる。
シリコン単結晶引き上げ装置として、図3に示すような浮遊するシリコン原料の面積を測定するための装置を含むシリコン単結晶引き上げ装置を用いた。そして、ルツボ内(内径:Φ790mm)に収容したシリコン原料(350kgチャージ)を準備し、溶融終盤時において、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面の面積を基準として、融液表面に浮遊するシリコン原料の面積が15%となった時点で、ヒータ12の出力を5%低下させ、シリコン原料の溶融を行い、溶融後にシリコン単結晶を引き上げ、炭素濃度との関係を調べた(実施例1)。
同様に、表1に示すように、融液表面に浮遊するシリコン原料の面積とヒータ出力を種々変えて、融液表面に浮遊するシリコン原料の量と、ヒータ出力の低下率と、溶融後に引き上げたシリコン単結晶の炭素濃度との関係を調べた(実施例1〜実施例9)。
この結果を表1に示す。
尚、従来のシリコン単結晶の炭素濃度2.1×1015atoms/cm3(比較例5)に比べて炭素濃度の低減効果が大きい場合には「○」を付し、炭素濃度の低減効果が小さいもしくは効果があるもののサイクルタイムが悪化する場合には、「△」を付した。
表2に示すように、シリコン融液表面に浮遊するシリコン原料の量を10%、25%、45%、ヒータ出力の低下率を3%、10%、20%とした以外は、実施例1〜9と同様とし、融液表面に浮遊するシリコン原料の量と、ヒータ出力の低下率と、溶融後に引き上げたシリコン単結晶の炭素濃度との関係を調べた(比較例1〜4)。この結果を表2に示す。
また、比較例5として、ルツボ内に収容したシリコン原料を準備し、ヒータ出力を低下させることなくシリコン原料の溶融を完了し、その後の結晶育成を行った。この結果を表2に示す。
例えば、製品用結晶において所望する炭素濃度が5.0×1014atoms/cm3である場合、ヒータ出力を低下するタイミングを、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面を基準として、その表面積の25%が融液表面に浮遊するシリコン原料となる時点とし、その時点におけるヒータ出力の低下率を10%と決定する。
その結果、得られた製品用結晶の炭素濃度は、4.6×1014atoms/cm3であり、低炭素濃度のシリコン単結晶を得ることができた。
2 撮像カメラ
12 ヒータ
PS シリコン原料
M 融液
Claims (5)
- チョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造方法において、
ヒータにより、ルツボ内に収容したシリコン原料を加熱し溶融を行い、融液表面に浮遊するシリコン原料の量と、ヒータ出力の低下率と、溶融後に引き上げたシリコン単結晶の炭素濃度との関係を予め調べる第1工程と、
シリコン単結晶の炭素濃度から浮遊するシリコン原料の量と、ヒータ出力の低下率を決定する第2工程と、
ヒータにより、ルツボ内に収容したシリコン原料を加熱し溶融を行い、融液表面に浮遊するシリコン原料の量を測定する第3工程と、
融液表面に浮遊するシリコン原料が特定量にとなったタイミングで、ヒータ出力を特定の低下率で出力を低下させ、前記低下させたヒータ出力で、シリコン原料の溶融を完了する第4工程と、
第4工程の後、シリコン結晶育成を行う第5工程と、
を含むことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 融液表面に浮遊するシリコン原料の量は、融液表面に浮遊するシリコン原料の面積により、特定されることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
- 融液表面に浮遊するシリコン原料が特定量にとなったタイミングは、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面の面積を基準として、その面積の15〜35%が浮遊するシリコン原料となった時点であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
- 前記ヒータ出力の低下率は、5〜15%であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシリコン単結晶の製造方法。
- チョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造方法において、
ヒータ出力を130〜170KWとし、ルツボ内に収容したシリコン原料を加熱し溶融を行い、
融液表面に浮遊するシリコン原料の表面積が、シリコン原料が全て溶融した場合の融液表面を基準とした表面積の15〜35%となった時点で、
前記ヒータ出力を5〜15%低下させ、前記低下させたヒータ出力で、浮遊する全てのシリコン原料の溶融を完了し、
その後、シリコン結晶を育成、引き上げを行うことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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