JP2004292288A - シリコン単結晶原料の溶解方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】CZ法によりシリコン単結晶を製造する際に、その製造原料である多結晶シリコンをルツボ内で溶解して、シリコン融液を生成するシリコン単結晶原料の溶解方法に関する。石英ルツボがヒーターから受ける熱量を低減させ、石英ルツボ内面のクリストバライト化を抑制できるシリコン単結晶原料の溶解方法を提供する。
【解決手段】ルツボ内のシリコン単結晶原料を溶解するにあたり、輻射スクリーン内への放熱を抑制するための輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内に吊下させた状態でシリコン単結晶原料を溶解する。下面の表面積が、輻射スクリーン下端開口部面積の50%〜80%の範囲にある輻射熱遮蔽部材を使用して単結晶原料を溶解する。
【選択図】 図1
【解決手段】ルツボ内のシリコン単結晶原料を溶解するにあたり、輻射スクリーン内への放熱を抑制するための輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内に吊下させた状態でシリコン単結晶原料を溶解する。下面の表面積が、輻射スクリーン下端開口部面積の50%〜80%の範囲にある輻射熱遮蔽部材を使用して単結晶原料を溶解する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CZ法によりシリコン単結晶を製造する際に、その製造原料である多結晶シリコンをルツボ内で溶解して、シリコン融液を生成するシリコン単結晶原料の溶解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン単結晶を成長させるには種々の方法があるが、その一つにチョクラルスキー法(以下、CZ法と記す)と呼ばれる単結晶育成方法がある。図3は、CZ法に用いられる単結晶引き上げ装置を模式的に示した断面図であり、図中1はルツボを示している。
【0003】
このルツボ1は、石英ルツボ1aと、この石英ルツボの外側に嵌合された黒鉛ルツボ1bとから構成されており、ルツボ1は所定の速度で回転昇降する支持軸2に支持されている。このルツボ1の外側には抵抗加熱式のヒータ3が配置されており、石英ルツボ1a内には、このヒータ3により溶融させた単結晶用原料の融液4が充填されるようになっている。また、ルツボ1の中心軸上には、引き上げ棒あるいはワイヤー等からなる引き上げ軸5が吊設されており、この引き上げ軸5の先端に保持具6を介して種結晶が取り付けられるようになっている。図中8は輻射スクリーンであり、引き上げ軸方向に適度な温度勾配が単結晶7に付与されるように、育成中の単結晶7の外周囲を囲繞するように設けられている。また、これら部材は、圧力の制御が可能な水冷式のメインチャンバ9内に納められ、その上部には育成した単結晶を収容するプルチャンバ10が設けられている。
【0004】
上記した単結晶引き上げ装置を用いて単結晶7を引き上げる方法について説明する。まず、プルチャンバ10の上方からメインチャンバ9内に不活性ガスを導入してチャンバ内を減圧の不活性ガス雰囲気とし、その後ヒータ3により石英ルツボ1a内の単結晶用シリコン原料を溶融させる。次に、支持軸2と同一軸心で逆方向に所定の速度で引き上げ軸5を回転させながら、保持具6に取り付けられた種結晶を降下させて融液4に着液させ、種結晶を融液3に馴染ませた後、種結晶の下端に単結晶7を成長させていく。
【0005】
その後、所定のシード絞り、ショルダー部形成、直胴部形成、テール絞りの各工程を経た後、単結晶7を溶融液4から切り離して所定の条件で冷却する。このようにして得られた単結晶7から加工製造されたウエーハは、種々の半導体デバイスの基板材料として用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリコン単結晶の育成に先立つ、シリコン単結晶原料である多結晶シリコンの溶解時は原料を溶解しなければならないため、引上げ工程時に比してシリコン融液の温度が高くなる。この高温化したシリコン融液と石英ルツボが接触すると、石英ルツボ表面の結晶化(クリストバライト化)が促進される。このクリストバライト化した石英ルツボ表面の一部が引上げ工程中に剥がれ落ちてシリコン融液に混入し、これが単結晶中に取り込まれて有転位化を生じることになる。
【0007】
従って、単結晶歩留りを向上させるには、石英ルツボ表面のクリストバライト化を抑制することが最重要であり、特にシリコン融液温度が高くなる原料溶解時にクリストバライト化が顕著であることから、これを防止する必要がある。
【0008】
直径200mm程度の単結晶育成では、原料溶解時のヒータパワーをある程度低くしても、ルツボ内の原料全てを溶解することができ、石英ルツボ内表面のクリストバライト化を抑制することができる。
【0009】
ところが、近年、育成されるシリコン単結晶の直径は300mm以上にもなり、大口径化および大重量化の一途を辿り、これにともない使用するルツボのサイズも大きくなり、一回当たりのルツボへの原料装填量も増大化している。このため、ルツボ内の全ての原料、特にルツボ内中央部の原料を溶解するためにはヒータパワー量を増加させなければならず、その結果、石英ルツボがヒーターから受ける熱量が増加し、石英ルツボ内表面の溶解(クリストバライト化)が促進され、その後の単結晶育成の過程において単結晶の有転位化を生じ、製品歩留まりが低下する問題が顕在化してきた。
【0010】
本発明の目的は、石英ルツボがヒーターから受ける熱量を低減させ、石英ルツボ内面のクリストバライト化を抑制できるシリコン単結晶原料の溶解方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、育成中の単結晶の周囲を囲繞するように輻射スクリーンが配置された単結晶引き上げ装置を使用してルツボ内のシリコン単結晶原料を溶解するにあたり、輻射スクリーン内への放熱を抑制するための輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内周面とは接触させずに輻射スクリーン内に吊下させた状態でシリコン単結晶原料を溶解することを特徴とするものである。
【0012】
すなわち、シリコン単結晶原料の溶解時には、ルツボ中央付近から輻射スクリーン内に向かう放熱量が多く、これを抑制するように輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内に配置せしめることにより、ルツボ中央付近の高温保持状態が維持されることとなる。その結果、ヒーターパワーの電力値を低くすることができ、石英ルツボがヒーターから受ける熱量が低減し、石英ルツボ内面のクリストバライト化を抑制することができる。
【0013】
また、通常、ルツボ内の融液表面から蒸発するSiOなどを装置外に排出するために、引き上げ装置上方から輻射スクリーン内を通じて融液表面に向けて不活性ガス(Arガスなど)を流通させることが実施される。本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、輻射熱遮蔽部材の設置により輻射スクリーンと輻射熱遮蔽部材との間隔が狭められることにより、輻射スクリーン下端から排出される不活性ガスの流速が速められ、SiOなどの蒸発物を効果的に排出する効果も達成することができる。
【0014】
本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、使用する輻射熱遮蔽部材の下面の表面積を、輻射スクリーン下端開口部面積の50%〜80%の範囲に調整したものを使用する。
【0015】
輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が輻射スクリーン下端開口部面積の50%よりも小さいと、十分な保温効果を得ることができない。一方、輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が輻射スクリーン下端開口部面積の80%を超える場合には、先に述べた引き上げ装置上方から融液表面に向かうArガスの流れが阻害され、ルツボ内の融液表面から蒸発するSiOなどが引き上げ装置内の構造部品に付着するという問題を生じる。加えて、輻射熱遮蔽部材を引き上げ軸ワイヤーで吊持する場合には、輻射スクリーンと輻射熱遮蔽部材との間隔が狭すぎることから、輻射熱遮蔽部材に揺れを生じ、輻射スクリーン内面と接触してこれら部材を構成するカーボン等が脱落し融液内に混入する恐れがある。
【0016】
本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、輻射熱遮蔽部材を石英ルツボ内の多結晶シリコンにできるだけ近づけるように配置することが原料の溶解促進の観点から望ましい。しかしながら、輻射スクリーン下端部よりも下方位置に輻射熱遮蔽部材を配置した場合には、引き上げ装置上方から融液表面に向かうArガスの流れが乱れ、上述したSiO蒸発物付着の弊害が発生することから、輻射熱遮蔽部材は輻射スクリーン内に配置することが必要であり、好ましくは輻射スクリーン下端部から上方に10cmまでの範囲内の高さ位置に配置することが望ましい。
【0017】
本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法を実施後、すなわち単結晶の引上げ時には輻射熱遮蔽部材をルツボの上方から実質的に退避させることが必要である。このため、輻射熱遮蔽部材の移動を行う専用の移動機構を引き上げ装置内に新たに設けてもよいが、輻射熱遮蔽部材を単結晶引き上げ軸下端に取り付け、単結晶引き上げ軸の駆動によって輻射熱遮蔽部材を昇降・退避させることがコスト的に有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態を示す図であり、引き上げ軸5の下端に輻射熱遮蔽部材12を取り付けた以外は、図3で説明した従来の単結晶引き上げ装置と同じ装置構成、同じ符号であり、各部材の符号説明を省略する。
【0020】
本実施形態では、引き上げ軸の下端に取り付けられた種結晶保持具に支持部材11を介してグラファイト製の輻射熱遮蔽部材12が取り付けられている。なお、本実施例では円板形状の輻射熱遮蔽部材12を使用したがこの形状に限られるものではなく、例えばルツボ内の原料中央部に輻射熱が集中するように輻射熱遮蔽部材12の下面を凹状の曲面形状としてもよい。また、本取り付け形態に限られるものではなく、直接、引き上げ軸5に輻射熱遮蔽部材12を取り付けてもよい。
【0021】
次に、石英ルツボ1a内にシリコン単結晶原料である多結晶シリコン13を装填後、引き上げ軸駆動手段を駆動し、輻射熱遮蔽部材12を降下させてルツボ直上近傍の輻射スクリーン8内の所定位置に配置する。このとき、輻射熱遮蔽部材12の下面の表面積は輻射スクリーン8下端開口部面積の50%〜80%の範囲に維持されるように構成されている。
【0022】
その後、プルチャンバー10上部からメンイチャンバー9内にアルゴンガスを供給し、メインチャンバー9の下部に設けた排出口よりアルゴンガスを排出する真空引きを行い、プルチャンバー10内およびメインチャンバー9内を所定圧力のアルゴンガス雰囲気に設定する。この減圧操作は輻射熱遮蔽部材12を所定位置に配置する前から実施してもよい。
【0023】
次に、ヒータ3に通電して石英ルツボ1a内の多結晶シリコン13を加熱する。この結果、輻射熱遮蔽部材12によって、ルツボ中央付近から輻射スクリーン8内に向かう放熱量が抑制され、ルツボ内中央付近の高温保持状態が維持されることにより、ヒータパワーの電力値を低くすることができる。
【0024】
多結晶シリコン13の溶解終了後、引き上げ軸駆動手段を駆動して輻射熱遮蔽部材12をプルチャンバー10内に上昇させた後、輻射熱遮蔽部材12および支持部材11を取り出し、種結晶への付け替え操作を実施する。その後、引き上げ軸5を降下させて所定の単結晶の育成操作を実施する。
【0025】
図2は、輻射熱遮蔽部材の下面表面積を種々変更して原料多結晶シリコンを溶解した場合の電力低減率を示すグラフである。具体的には、図1に示す単結晶引き上げ装置を使用し、石英ルツボ内に装填した200kgの原料多結晶シリコンの溶解を実施した。ヒータへの電力出力値を同条件として、輻射熱遮蔽部材を使用せずに原料溶解した場合と、輻射熱遮蔽部材の下面表面積を種々変更して原料溶解した場合のそれぞれについて、全ての原料溶解に要した時間を求め、輻射熱遮蔽部材を使用せずに原料溶解したときの溶解時間に対する溶解時間の短縮量から電力低減率を算出した。また、グラフ中、d2は輻射熱遮蔽部材の下面表面積を示し、D2は輻射スクリーン下端部開口面積を示す。
【0026】
図2から明らかなように、d2/D2の比が小さくなるほど、すなわち、輻射熱遮蔽部材の下面表面積が小さくなるほど電力低減率が低下することが分かる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示し、従来例と対比することにより、本発明の効果を明らかにする。
【0028】
図1に示すシリコン単結晶の製造装置を用い、輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が輻射スクリーン下端開口部面積の70%である輻射熱遮蔽部材を用いて、溶解中のヒータ電力を90kWとして石英ルツボ内に装填した200kgの多結晶シリコンを溶解し、単結晶の引き上げ試験を行った。
【0029】
試験条件を下記に示す。
【0030】
石英ルツボ内径:26インチ、単結晶の目標抵抗率:10Ω・cm、単結晶の引き上げ直径:12インチ、単結晶の引き上げ長さ:900mm、単結晶の引き上げ本数:10本。
【0031】
従来例として輻射熱遮蔽部材を使用せずに溶解する方法も同様の条件で行ったが、多結晶シリコン原料の溶け残りを生じたため、溶解中のヒータ電力を100kWに変更して原料を溶解した。
【0032】
その結果、原料溶解時に輻射熱遮蔽部材を使用した本発明例では、引きけ上げたシリコン単結晶10本の無転位単結晶収率の平均は80%であったの対し、原料溶解時に輻射熱遮蔽部材を使用しなかった従来例では67%であった。
【0033】
【本発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリコン単結晶原料の溶解方法によれば、原料溶解時に輻射スクリーン内に輻射熱遮蔽部材を配置せしめたことにより、ルツボ中央付近の高温保持状態が維持され、ヒーターパワーの電力値を低くすることができ、石英ルツボがヒーターから受ける熱量を低減させることができる。これにより、石英ルツボ内面のクリストバライト化が抑制され、無転位単結晶の収率が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る輻射熱遮蔽部材を用いた原料溶解方法の実施の形態を説明するために示した単結晶引き上げ装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る輻射熱遮蔽部材の下面表面積を変更して原料多結晶シリコンを溶解したときの電力低減率を示すグラフである。
【図3】従来のCZ法で使用する単結晶引き上げ装置を示した模式的断面図である。
【符号の説明】
1 ルツボ
2 ルツボ昇降軸
3 ヒータ
4 溶融液
5 引き上げ軸
6 種結晶保持具
7 単結晶
8 輻射スクリーン
9 メインチャンバー
10 プルチャンバー
11 支持具
12 輻射熱遮蔽部材
13 多結晶シリコン
【発明の属する技術分野】
本発明は、CZ法によりシリコン単結晶を製造する際に、その製造原料である多結晶シリコンをルツボ内で溶解して、シリコン融液を生成するシリコン単結晶原料の溶解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン単結晶を成長させるには種々の方法があるが、その一つにチョクラルスキー法(以下、CZ法と記す)と呼ばれる単結晶育成方法がある。図3は、CZ法に用いられる単結晶引き上げ装置を模式的に示した断面図であり、図中1はルツボを示している。
【0003】
このルツボ1は、石英ルツボ1aと、この石英ルツボの外側に嵌合された黒鉛ルツボ1bとから構成されており、ルツボ1は所定の速度で回転昇降する支持軸2に支持されている。このルツボ1の外側には抵抗加熱式のヒータ3が配置されており、石英ルツボ1a内には、このヒータ3により溶融させた単結晶用原料の融液4が充填されるようになっている。また、ルツボ1の中心軸上には、引き上げ棒あるいはワイヤー等からなる引き上げ軸5が吊設されており、この引き上げ軸5の先端に保持具6を介して種結晶が取り付けられるようになっている。図中8は輻射スクリーンであり、引き上げ軸方向に適度な温度勾配が単結晶7に付与されるように、育成中の単結晶7の外周囲を囲繞するように設けられている。また、これら部材は、圧力の制御が可能な水冷式のメインチャンバ9内に納められ、その上部には育成した単結晶を収容するプルチャンバ10が設けられている。
【0004】
上記した単結晶引き上げ装置を用いて単結晶7を引き上げる方法について説明する。まず、プルチャンバ10の上方からメインチャンバ9内に不活性ガスを導入してチャンバ内を減圧の不活性ガス雰囲気とし、その後ヒータ3により石英ルツボ1a内の単結晶用シリコン原料を溶融させる。次に、支持軸2と同一軸心で逆方向に所定の速度で引き上げ軸5を回転させながら、保持具6に取り付けられた種結晶を降下させて融液4に着液させ、種結晶を融液3に馴染ませた後、種結晶の下端に単結晶7を成長させていく。
【0005】
その後、所定のシード絞り、ショルダー部形成、直胴部形成、テール絞りの各工程を経た後、単結晶7を溶融液4から切り離して所定の条件で冷却する。このようにして得られた単結晶7から加工製造されたウエーハは、種々の半導体デバイスの基板材料として用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリコン単結晶の育成に先立つ、シリコン単結晶原料である多結晶シリコンの溶解時は原料を溶解しなければならないため、引上げ工程時に比してシリコン融液の温度が高くなる。この高温化したシリコン融液と石英ルツボが接触すると、石英ルツボ表面の結晶化(クリストバライト化)が促進される。このクリストバライト化した石英ルツボ表面の一部が引上げ工程中に剥がれ落ちてシリコン融液に混入し、これが単結晶中に取り込まれて有転位化を生じることになる。
【0007】
従って、単結晶歩留りを向上させるには、石英ルツボ表面のクリストバライト化を抑制することが最重要であり、特にシリコン融液温度が高くなる原料溶解時にクリストバライト化が顕著であることから、これを防止する必要がある。
【0008】
直径200mm程度の単結晶育成では、原料溶解時のヒータパワーをある程度低くしても、ルツボ内の原料全てを溶解することができ、石英ルツボ内表面のクリストバライト化を抑制することができる。
【0009】
ところが、近年、育成されるシリコン単結晶の直径は300mm以上にもなり、大口径化および大重量化の一途を辿り、これにともない使用するルツボのサイズも大きくなり、一回当たりのルツボへの原料装填量も増大化している。このため、ルツボ内の全ての原料、特にルツボ内中央部の原料を溶解するためにはヒータパワー量を増加させなければならず、その結果、石英ルツボがヒーターから受ける熱量が増加し、石英ルツボ内表面の溶解(クリストバライト化)が促進され、その後の単結晶育成の過程において単結晶の有転位化を生じ、製品歩留まりが低下する問題が顕在化してきた。
【0010】
本発明の目的は、石英ルツボがヒーターから受ける熱量を低減させ、石英ルツボ内面のクリストバライト化を抑制できるシリコン単結晶原料の溶解方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、育成中の単結晶の周囲を囲繞するように輻射スクリーンが配置された単結晶引き上げ装置を使用してルツボ内のシリコン単結晶原料を溶解するにあたり、輻射スクリーン内への放熱を抑制するための輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内周面とは接触させずに輻射スクリーン内に吊下させた状態でシリコン単結晶原料を溶解することを特徴とするものである。
【0012】
すなわち、シリコン単結晶原料の溶解時には、ルツボ中央付近から輻射スクリーン内に向かう放熱量が多く、これを抑制するように輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内に配置せしめることにより、ルツボ中央付近の高温保持状態が維持されることとなる。その結果、ヒーターパワーの電力値を低くすることができ、石英ルツボがヒーターから受ける熱量が低減し、石英ルツボ内面のクリストバライト化を抑制することができる。
【0013】
また、通常、ルツボ内の融液表面から蒸発するSiOなどを装置外に排出するために、引き上げ装置上方から輻射スクリーン内を通じて融液表面に向けて不活性ガス(Arガスなど)を流通させることが実施される。本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、輻射熱遮蔽部材の設置により輻射スクリーンと輻射熱遮蔽部材との間隔が狭められることにより、輻射スクリーン下端から排出される不活性ガスの流速が速められ、SiOなどの蒸発物を効果的に排出する効果も達成することができる。
【0014】
本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、使用する輻射熱遮蔽部材の下面の表面積を、輻射スクリーン下端開口部面積の50%〜80%の範囲に調整したものを使用する。
【0015】
輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が輻射スクリーン下端開口部面積の50%よりも小さいと、十分な保温効果を得ることができない。一方、輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が輻射スクリーン下端開口部面積の80%を超える場合には、先に述べた引き上げ装置上方から融液表面に向かうArガスの流れが阻害され、ルツボ内の融液表面から蒸発するSiOなどが引き上げ装置内の構造部品に付着するという問題を生じる。加えて、輻射熱遮蔽部材を引き上げ軸ワイヤーで吊持する場合には、輻射スクリーンと輻射熱遮蔽部材との間隔が狭すぎることから、輻射熱遮蔽部材に揺れを生じ、輻射スクリーン内面と接触してこれら部材を構成するカーボン等が脱落し融液内に混入する恐れがある。
【0016】
本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法では、輻射熱遮蔽部材を石英ルツボ内の多結晶シリコンにできるだけ近づけるように配置することが原料の溶解促進の観点から望ましい。しかしながら、輻射スクリーン下端部よりも下方位置に輻射熱遮蔽部材を配置した場合には、引き上げ装置上方から融液表面に向かうArガスの流れが乱れ、上述したSiO蒸発物付着の弊害が発生することから、輻射熱遮蔽部材は輻射スクリーン内に配置することが必要であり、好ましくは輻射スクリーン下端部から上方に10cmまでの範囲内の高さ位置に配置することが望ましい。
【0017】
本発明に係るシリコン単結晶原料の溶解方法を実施後、すなわち単結晶の引上げ時には輻射熱遮蔽部材をルツボの上方から実質的に退避させることが必要である。このため、輻射熱遮蔽部材の移動を行う専用の移動機構を引き上げ装置内に新たに設けてもよいが、輻射熱遮蔽部材を単結晶引き上げ軸下端に取り付け、単結晶引き上げ軸の駆動によって輻射熱遮蔽部材を昇降・退避させることがコスト的に有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態を示す図であり、引き上げ軸5の下端に輻射熱遮蔽部材12を取り付けた以外は、図3で説明した従来の単結晶引き上げ装置と同じ装置構成、同じ符号であり、各部材の符号説明を省略する。
【0020】
本実施形態では、引き上げ軸の下端に取り付けられた種結晶保持具に支持部材11を介してグラファイト製の輻射熱遮蔽部材12が取り付けられている。なお、本実施例では円板形状の輻射熱遮蔽部材12を使用したがこの形状に限られるものではなく、例えばルツボ内の原料中央部に輻射熱が集中するように輻射熱遮蔽部材12の下面を凹状の曲面形状としてもよい。また、本取り付け形態に限られるものではなく、直接、引き上げ軸5に輻射熱遮蔽部材12を取り付けてもよい。
【0021】
次に、石英ルツボ1a内にシリコン単結晶原料である多結晶シリコン13を装填後、引き上げ軸駆動手段を駆動し、輻射熱遮蔽部材12を降下させてルツボ直上近傍の輻射スクリーン8内の所定位置に配置する。このとき、輻射熱遮蔽部材12の下面の表面積は輻射スクリーン8下端開口部面積の50%〜80%の範囲に維持されるように構成されている。
【0022】
その後、プルチャンバー10上部からメンイチャンバー9内にアルゴンガスを供給し、メインチャンバー9の下部に設けた排出口よりアルゴンガスを排出する真空引きを行い、プルチャンバー10内およびメインチャンバー9内を所定圧力のアルゴンガス雰囲気に設定する。この減圧操作は輻射熱遮蔽部材12を所定位置に配置する前から実施してもよい。
【0023】
次に、ヒータ3に通電して石英ルツボ1a内の多結晶シリコン13を加熱する。この結果、輻射熱遮蔽部材12によって、ルツボ中央付近から輻射スクリーン8内に向かう放熱量が抑制され、ルツボ内中央付近の高温保持状態が維持されることにより、ヒータパワーの電力値を低くすることができる。
【0024】
多結晶シリコン13の溶解終了後、引き上げ軸駆動手段を駆動して輻射熱遮蔽部材12をプルチャンバー10内に上昇させた後、輻射熱遮蔽部材12および支持部材11を取り出し、種結晶への付け替え操作を実施する。その後、引き上げ軸5を降下させて所定の単結晶の育成操作を実施する。
【0025】
図2は、輻射熱遮蔽部材の下面表面積を種々変更して原料多結晶シリコンを溶解した場合の電力低減率を示すグラフである。具体的には、図1に示す単結晶引き上げ装置を使用し、石英ルツボ内に装填した200kgの原料多結晶シリコンの溶解を実施した。ヒータへの電力出力値を同条件として、輻射熱遮蔽部材を使用せずに原料溶解した場合と、輻射熱遮蔽部材の下面表面積を種々変更して原料溶解した場合のそれぞれについて、全ての原料溶解に要した時間を求め、輻射熱遮蔽部材を使用せずに原料溶解したときの溶解時間に対する溶解時間の短縮量から電力低減率を算出した。また、グラフ中、d2は輻射熱遮蔽部材の下面表面積を示し、D2は輻射スクリーン下端部開口面積を示す。
【0026】
図2から明らかなように、d2/D2の比が小さくなるほど、すなわち、輻射熱遮蔽部材の下面表面積が小さくなるほど電力低減率が低下することが分かる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示し、従来例と対比することにより、本発明の効果を明らかにする。
【0028】
図1に示すシリコン単結晶の製造装置を用い、輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が輻射スクリーン下端開口部面積の70%である輻射熱遮蔽部材を用いて、溶解中のヒータ電力を90kWとして石英ルツボ内に装填した200kgの多結晶シリコンを溶解し、単結晶の引き上げ試験を行った。
【0029】
試験条件を下記に示す。
【0030】
石英ルツボ内径:26インチ、単結晶の目標抵抗率:10Ω・cm、単結晶の引き上げ直径:12インチ、単結晶の引き上げ長さ:900mm、単結晶の引き上げ本数:10本。
【0031】
従来例として輻射熱遮蔽部材を使用せずに溶解する方法も同様の条件で行ったが、多結晶シリコン原料の溶け残りを生じたため、溶解中のヒータ電力を100kWに変更して原料を溶解した。
【0032】
その結果、原料溶解時に輻射熱遮蔽部材を使用した本発明例では、引きけ上げたシリコン単結晶10本の無転位単結晶収率の平均は80%であったの対し、原料溶解時に輻射熱遮蔽部材を使用しなかった従来例では67%であった。
【0033】
【本発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリコン単結晶原料の溶解方法によれば、原料溶解時に輻射スクリーン内に輻射熱遮蔽部材を配置せしめたことにより、ルツボ中央付近の高温保持状態が維持され、ヒーターパワーの電力値を低くすることができ、石英ルツボがヒーターから受ける熱量を低減させることができる。これにより、石英ルツボ内面のクリストバライト化が抑制され、無転位単結晶の収率が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る輻射熱遮蔽部材を用いた原料溶解方法の実施の形態を説明するために示した単結晶引き上げ装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る輻射熱遮蔽部材の下面表面積を変更して原料多結晶シリコンを溶解したときの電力低減率を示すグラフである。
【図3】従来のCZ法で使用する単結晶引き上げ装置を示した模式的断面図である。
【符号の説明】
1 ルツボ
2 ルツボ昇降軸
3 ヒータ
4 溶融液
5 引き上げ軸
6 種結晶保持具
7 単結晶
8 輻射スクリーン
9 メインチャンバー
10 プルチャンバー
11 支持具
12 輻射熱遮蔽部材
13 多結晶シリコン
Claims (2)
- 育成中の単結晶の周囲を囲繞するように輻射スクリーンが配置された単結晶引き上げ装置を使用してルツボ内のシリコン単結晶原料を溶解するにあたり、輻射スクリーン内への放熱を抑制するための輻射熱遮蔽部材を輻射スクリーン内周面とは接触させずに輻射スクリーン内に吊下させた状態でシリコン単結晶原料を溶解することを特徴とするシリコン単結晶原料の溶解方法
- 前記輻射熱遮蔽部材の下面の表面積が、輻射スクリーン下端開口部面積の50%〜80%であることを特徴とする請求項1記載のシリコン単結晶原料の溶解方法。
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KR101193662B1 (ko) | 2010-01-26 | 2012-10-22 | 주식회사 엘지실트론 | 단열 부재 및 이를 포함하는 실리콘 단결정 잉곳 제조 장치 |
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- 2003-03-28 JP JP2003090357A patent/JP2004292288A/ja active Pending
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