JP2005015314A - 単結晶の製造方法及び単結晶 - Google Patents

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Abstract

【課題】CZ法により単結晶を育成する際に、単結晶の直径制御とV/Gの制御とを安定して行うことができ、所定の結晶直径と所望の欠陥領域を有する単結晶を簡便にかつ高歩留まりで製造することのできる単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】チョクラルスキー法によりチャンバ内で単結晶を原料融液から引上げて製造する方法において、前記単結晶を育成する際に、前記単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度をV、固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配をGで表したとき、前記単結晶の直胴部の直径が所定値となるように前記引上げ速度Vを制御・変更しながら単結晶を引上げるとともに、該引上げ速度Vの変動に応じて前記結晶温度勾配Gを単結晶引上げ条件を変更することにより制御して、引上げ速度Vと結晶温度勾配Gの比V/Gを所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように制御することを特徴とする単結晶の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法による単結晶の製造方法に関し、特に所定の結晶直径及び所望の欠陥領域を有する単結晶を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの基板として用いられる単結晶には、例えばシリコン単結晶等があり、主にチョクラルスキー法(Czochralski Method、以下CZ法と略称する)により製造されている。近年、半導体デバイスでは高集積化が促進され、素子の微細化が進んでいる。それに伴い、単結晶の結晶成長中に導入されるグローンイン(Grown−in)欠陥の問題がより重要となっている。
【0003】
ここで、グローンイン欠陥について図10を参照しながら説明する。
一般に、シリコン単結晶を成長させるときに、結晶成長速度V(結晶引上げ速度)が比較的高速の場合には、空孔型の点欠陥が集合したボイド起因とされているFPD(Flow Pattern Defect)やCOP(Crystal Originated Particle)等のグローンイン欠陥が結晶径方向全域に高密度に存在する。これらのボイド起因の欠陥が存在する領域はV(Vacancy)領域と呼ばれている。
【0004】
また、結晶成長速度を低くしていくと成長速度の低下に伴いOSF(酸化誘起積層欠陥、Oxidation Induced Stacking Fault)領域が結晶の周辺からリング状に発生し、さらに成長速度を低速にすると、OSFリングがウエーハの中心に収縮して消滅する。一方、さらに成長速度を低速にすると格子間シリコンが集合した転位ループ起因と考えられているLSEPD(Large Secco Etch Pit Defect)、LFPD(Large Flow Pattern Defect)等の欠陥が低密度に存在し、これらの欠陥が存在する領域はI(Interstitial)領域と呼ばれている。
【0005】
近年、V領域とI領域の中間でOSFリングの外側に、ボイド起因のFPD、COP等の欠陥も、格子間シリコン起因のLSEPD、LFPD等の欠陥も存在しない領域の存在が発見されている。この領域はN(ニュートラル、Neutral)領域と呼ばれる。また、このN領域をさらに分類すると、OSFリングの外側に隣接するNv領域(空孔の多い領域)とI領域に隣接するNi領域(格子間シリコンが多い領域)とがあり、Nv領域では、熱酸化処理をした際に酸素析出量が多く、Ni領域では酸素析出が殆ど無いことがわかっている。
【0006】
さらに、熱酸化処理後、酸素析出が発生し易いNv領域の一部に、Cuデポジション処理で検出される欠陥が著しく発生する領域(以下、Cuデポ欠陥領域という)があることが見出されており、これは酸化膜耐圧特性のような電気特性を劣化させる原因になることがわかっている。
【0007】
これらのグローンイン欠陥は、単結晶を成長させるときの引上げ速度V(mm/min)と固液界面近傍のシリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶温度勾配G(℃/mm)の比であるV/G(mm/℃・min)というパラメーターにより、その導入量が決定されると考えられている(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、V/Gを所定の値で一定に制御しながら単結晶の育成を行うことにより、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有する単結晶を製造することが可能となる。
【0008】
例えば特許文献1では、シリコン単結晶を育成する際に、結晶中心でV/G値を所定の範囲内(例えば、0.112〜0.142mm/℃・min)に制御して単結晶を引上げることによって、ボイド起因の欠陥及び転位ループ起因の欠陥が存在しないシリコン単結晶ウエーハを得ることができることが示されている。また、近年では、Cuデポ欠陥領域を含まないN領域の無欠陥結晶に対する要求が高まりつつあり、V/Gを所定の無欠陥領域に高精度に制御しながら単結晶を引上げる単結晶の製造が要求されてきている。
【0009】
一般的に、引上げ軸方向の結晶温度勾配Gは、単結晶の育成が行われる単結晶引上げ装置のHZ(ホットゾーン:炉内構造)により一義的に決まるものとされていた。しかしながら、単結晶引上げ中にHZを変更することは極めて困難であることから、上記のようにV/Gを制御して単結晶の育成を行う場合、結晶温度勾配Gを単結晶引上げ中に制御することは行われず、引上げ速度Vを調節することによってV/G値を制御して所望の欠陥領域を有する単結晶を製造することが行われている。
【0010】
また、従来の単結晶の製造では、育成する単結晶の直径を制御するために、単結晶の引上げ速度を調節したり、原料融液を加熱するヒーターのパワーを変化させて原料融液の温度を調節することが行われている。しかしながら、上記のようにしてV/G値を制御して所望の欠陥領域を有する単結晶を育成する場合では、引上げ速度を調節することによりV/Gの制御を行うと同時に単結晶の直径制御も行われなければならないが、このとき結晶直径を所望の大きさにするために引上げ速度を大きく変化させてしまうと、引上げている単結晶の欠陥領域が変化してしまい単結晶を所望の欠陥領域で育成することができず、歩留まりの低下を招くといった問題があった。
【0011】
そこで従来は、このような問題を少しでも改善するために、結晶引上げ速度の変動を小さく抑えて単結晶を所望欠陥領域で育成できるようにするとともに、結晶直径を所望値に制御するためにヒーターパワーを変化させて原料融液の温度を調節することを行っていた。しかしながら、このようにして単結晶の育成を行っても、単結晶直胴部の全体を所定の直径で育成するとともに所望の欠陥領域を有するようにすることは非常に困難であり、またこのように結晶直径を制御するために原料融液の温度を調節する場合、単結晶の引上げ装置毎や単結晶の製造バッチ毎に原料融液の設定温度パターンを変更していかなければならなかった。そのため、単結晶引上げ装置毎や製造バッチ毎に温度パターンの合わせ込みを行わなければならず、直径を制御しながら所望の欠陥領域で単結晶を製造するためには大変な手間が必要とされ、作業における負担が非常に大きかった。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−147786号公報
【非特許文献1】
V.V.Voronkov,Journal of Crystal
Growth,59(1982),625〜643
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、CZ法により単結晶を育成する際に、単結晶の直径制御とV/Gの制御とを安定して行うことができ、所定の結晶直径と所望の欠陥領域を有する単結晶を容易にかつ高歩留まりで製造することのできる単結晶の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、チョクラルスキー法によりチャンバ内で単結晶を原料融液から引上げて製造する方法において、前記単結晶を育成する際に、前記単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度をV(mm/min)、固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配をG(℃/mm)で表したとき、前記単結晶の直胴部の直径が所定値となるように前記引上げ速度Vを制御・変更しながら単結晶を引上げるとともに、該引上げ速度Vの変動に応じて前記結晶温度勾配Gを単結晶引上げ条件を変更することにより制御して、引上げ速度Vと結晶温度勾配Gの比V/G(mm/℃・min)を所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように制御することを特徴とする単結晶の製造方法が提供される(請求項1)。
【0015】
このように、CZ法によって単結晶を育成する際に、引上げ速度Vを制御・変更することにより結晶直径を安定して制御することができ、またそれと同時にVの変動に応じて他の単結晶引上げ条件を変更して結晶温度勾配Gを制御することにより、V/Gを所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように安定して制御することができる。そして、このようにして直径制御とV/Gの制御とを行いながら単結晶を育成することによって、単結晶の直胴部全体に渡って所定の結晶直径を有し、かつ所望の欠陥領域を有する高品質の単結晶を容易にかつ高い歩留まりで製造することができる。
【0016】
このとき、前記単結晶を育成する際に変更する単結晶引上げ条件を、前記原料融液の融液面と前記チャンバ内で原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離、前記単結晶を引上げる際の単結晶の回転速度、前記原料融液を収容するルツボの回転速度、前記チャンバに導入する不活性ガスの流量、前記原料融液を加熱するヒーターの位置、前記チャンバ内の圧力、前記原料融液に印加する磁場の磁場強度、及び前記原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離のうちの少なくとも1つとすることが好ましい(請求項2)。
【0017】
このように、単結晶を育成する際に、上記に示した単結晶引上げ条件のうちの少なくとも1つを変更することによって、引上げ速度Vの変動に応じて結晶温度勾配Gを容易に制御することが可能となり、それによってV/Gを所望欠陥領域を有する単結晶が育成できるように高精度に安定して制御することができる。
【0018】
この場合、前記V/Gを、前記育成する単結晶の欠陥領域が径方向の全面にわたってN領域となるように制御することが好ましい(請求項3)。
このように、V/Gを単結晶の欠陥領域が径方向全面でN領域となるように制御することによって、単結晶直胴部においてFPDやCOP等のボイド起因の欠陥も、またLSEPD、LFPD等の転位ループ起因の欠陥も存在せず、かつ結晶直径も高精度に制御された非常に高品質の単結晶を高歩留まりで製造することができる。
【0019】
また、前記単結晶の直胴部の直径を、200mm以上とすることができる(請求項4)。
本発明の単結晶の製造方法は、直径が200mm以上となる大口径の単結晶を製造する場合にも非常に有効に適用することができ、従来では製造が困難であった単結晶直胴部の全域で所望の欠陥領域となる直径200mm以上の大口径の単結晶を容易にかつ非常に安定して製造することができる。
【0020】
さらに、前記製造する単結晶をシリコン単結晶とすることができる(請求項5)。
このように、本発明の単結晶の製造方法は、シリコン単結晶を製造する場合に特に好適に用いることができ、本発明によりシリコン単結晶を製造することによって、シリコン単結晶の育成中に直径の制御とV/Gの制御とを安定して行うことが可能となり、直胴部全体に渡って所定の結晶直径を有し、かつ所望の欠陥領域を有する高品質のシリコン単結晶を簡便にかつ高い歩留まりで製造することができる。
【0021】
そして、本発明によれば、前記単結晶の製造方法により製造された単結晶が提供される(請求項6)。
本発明により製造された単結晶は、単結晶直胴部全域に渡って所定の結晶直径を均一に有し、かつ所望の欠陥領域を有する非常に高品質の単結晶とすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者等は、CZ法により所定の結晶直径を有するとともに所望の欠陥領域を有する単結晶を容易にかつ高歩留まりで製造できる方法について検討を重ね、単結晶を引上げる際に引上げ速度Vを制御・変更することにより直径の制御を行い、また一方で固液界面近傍のシリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gを単結晶引上げ中に制御することができれば、直径制御のため引上げ速度Vを大きく変動させてもV/Gの制御が可能となり、所定の結晶直径及び所望の欠陥領域を有する単結晶を高歩留まりで簡便に育成することができると考えた。
【0023】
そこで、本発明者等はさらに実験及び検討を重ねた結果、CZ法により単結晶を育成する際の原料融液の融液面と原料融液面に対向するように配置された遮熱部材との距離、単結晶を回転させる単結晶の回転速度、原料融液を収容しているルツボの回転速度、チャンバに導入する不活性ガスの流量、原料融液を加熱するヒーターの位置、チャンバ内の圧力、原料融液に印加する磁場の磁場強度、及び原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離といった単結晶引上げ条件に注目し、これらの各単結晶引上げ条件を単結晶引上げ中に故意に変化させることによって固液界面近傍のシリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gを制御することができることを見出し、単結晶引上げ中に直径制御のために引上げ速度Vを変動させても結晶温度勾配Gを変更・制御することによってV/Gを所望欠陥領域に高精度に制御できることがわかった。
【0024】
また、本発明者等は総合伝熱解析ソフトFEMAG(F.Dupret, P.Nicodeme, Y.Ryckmans, P.Wouters, and M.J.Crochet, Int.J.Heat Mass Transfer,33,1849(1990))を用いて、単結晶を育成する際に上記に示した各単結晶引上げ条件を変化させた場合の結晶温度勾配Gの変化についてシミュレーション解析を行った。図1〜図8に、単結晶の引上げ中に原料融液面と遮熱部材間の距離L1を変化させた場合のGの変化、単結晶の回転速度を変化させた場合のGの変化、ルツボの回転速度を変化させた場合のGの変化、不活性ガスの流量を変化させた場合のGの変化、ヒーターの位置を変化させた場合のヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2に対するGの変化、チャンバ内の圧力を変化させた場合のGの変化、原料融液に印加する磁場強度を変化させた場合のGの変化、原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離L3を変化させた場合のGの変化についてそれぞれシミュレーション解析した結果の一例を示す。
【0025】
図1〜図8に示したように、シミュレーション解析の結果、上記に示した各引上げ条件を変化させることによって結晶温度勾配Gが変化することが明らかとなり、例えば単結晶引上げ中に、原料融液面と遮熱部材間の距離L1を減少させる、単結晶の回転速度を速くする、ルツボの回転速度を遅くする、不活性ガスの流量を増加させる、ヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2が大きくなるようにヒーターの位置を変化させる、チャンバ内の圧力を低下させる、磁場強度を強める、または原料融液面と磁場中心との相対距離L3を減少させることによって結晶温度勾配Gを大きくすることができ、また一方、それぞれの単結晶引上げ条件を上記と増減を反対にして変化させることによって結晶温度勾配Gを小さくできることがわかった。
【0026】
さらに、単結晶引上げ中に上記の各単結晶引上げ条件を変化させたときの結晶温度勾配Gが変化するまでの時間(応答性)について調査したところ、単結晶の引上げ中に原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、不活性ガスの流量を変化させた場合には、それらの引上げ条件の変化に応じて結晶温度勾配Gもすぐに変化して迅速な応答性を示すことが明らかとなり、比較的短周期の引上げ速度Vの変動に対して結晶温度勾配Gを制御する際に非常に好適であることがわかった。また、ルツボの回転速度、ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3を変化させた場合には、結晶温度勾配Gは緩やかに変化するため、比較的長周期の引上げ速度Vの変動に対して結晶温度勾配Gを制御する際に好適であることがわかった。そして、これらを組合せて制御すれば、引上げ速度Vの種々の変動に対して高精度でV/Gを所定値内に制御することができることが判った。
【0027】
本発明は、上記のような単結晶引上げ中の単結晶引上げ条件と結晶温度勾配Gとの関係を利用することにより、単結晶を育成する際に単結晶の直径制御とV/Gの制御を非常に安定して行うことができるようにしたものである。
すなわち、本発明の単結晶の製造方法は、CZ法によって単結晶を育成する際に、単結晶直胴部の直径が所定値となるように引上げ速度Vを制御・変更しながら単結晶を引上げるとともに、その引上げ速度Vの変動に応じて結晶温度勾配Gを単結晶引上げ条件を変更することにより制御して、所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるようにV/Gを所望値に制御することに特徴を有するものである。
【0028】
以下、本発明の単結晶の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の単結晶の製造方法で用いられる単結晶引上げ装置は、単結晶の引上げ中に原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、ルツボの回転速度、不活性ガスの流量、ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、原料融液に印加する磁場の磁場強度、原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離L3のうちの少なくとも一つの単結晶引上げ条件を変更できるものであれば特に限定されないが、例えば図9に示すような単結晶引上げ装置を用いることができる。先ず、図9を参照しながら、本発明の単結晶の製造方法を実施する際に使用することのできる単結晶引上げ装置について説明する。
【0029】
図9に示した単結晶引上げ装置20は、メインチャンバ1内に、原料融液4を収容する石英ルツボ5と、この石英ルツボ5を保護する黒鉛ルツボ6とがルツボ駆動機構21によって回転・昇降自在に保持軸13で支持されており、またこれらのルツボ5、6を取り囲むように加熱ヒーター7と断熱材8が配置され、さらに加熱ヒーター7の位置を調節できるようにヒーター駆動手段22が設けられている。
【0030】
メインチャンバ1の上部には育成した単結晶3を収容し、取り出すための引上げチャンバ2が連接されており、引上げチャンバ2の上部には単結晶3をワイヤー14で回転させながら引上げる引上げ機構17が設けられている。
【0031】
さらに、メインチャンバ1の内部にはガス整流筒11が設けられており、このガス整流筒11の下部には原料融液4と対向するように遮熱部材12を設置して、原料融液4の表面からの輻射をカットするとともに原料融液4の表面を保温するようにしている。また、ガス整流筒11の上部には、ガス整流筒11を昇降させて遮熱部材12の位置を上下に調整できる遮熱部材駆動手段23が設置されている。尚、本発明において、遮熱部材12の形状や材質等は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。さらに、本発明の遮熱部材12は、融液面に対向配置されたものであれば良く、必ずしも上記のようにガス整流筒の下部に設置されているものに限定されない。
【0032】
また、引上げチャンバ2の上部に設けられたガス導入口10からはバルブ24で流量を調節しながらアルゴンガス等の不活性ガスを導入でき、引上げ中の単結晶3とガス整流筒11との間を通過させた後、遮熱部材12と原料融液4の融液面との間を通過させ、ガス流出口9から排出することができる。さらに、ガス流出口9は真空ポンプ(不図示)に接続されており、バルブ26を調節することによってメインチャンバ1及び引上げチャンバ2内の圧力を調節できるようになっている。
【0033】
さらに、メインチャンバ1の外側には原料融液4に磁場を所望の磁場強度で印加することができる超伝導マグネットからなる磁場発生装置25が設置されており、さらに磁場発生装置25の位置を上下に調節できるように磁場発生装置駆動手段27が設けられている。
【0034】
そして、上記の引上げ機構17、ルツボ駆動機構21、ヒーター駆動手段22、遮熱部材駆動手段23、バルブ24,26、磁場発生装置25、及び磁場発生装置駆動手段27はそれぞれ引上げ条件制御手段18に接続されており、この引上げ条件制御手段18に、例えばCCDカメラ19で測定した原料融液面の位置及び単結晶3の直径や、遮熱部材12の位置、単結晶3の回転速度、ルツボ5,6の位置及び回転速度、不活性ガスの流量、加熱ヒーター7の位置、磁場発生装置25から原料融液4に印加している磁場の磁場強度や磁場中心、チャンバ内に設けられた圧力計(不図示)で測定したチャンバ内の圧力、さらに引上げ機構17から得られる単結晶の引上げ長さ等の情報がフィードバックされることにより、引上げ機構17、ルツボ駆動機構21、ヒーター駆動手段22、遮熱部材駆動手段23、バルブ24,26、磁場発生装置25、及び磁場発生装置駆動手段27を引上げ条件制御手段18でそれぞれ調節して、単結晶の引上げ中に原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、ルツボの回転速度、不活性ガスの流量、ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3等をそれぞれ精度良く制御・変更することができるようになっている。
【0035】
尚、本発明で使用することのできる単結晶引上げ装置は、上記に示した装置に限定されるものではなく、その他にガス整流筒11の代わりに単結晶3を冷却する冷却ジャケットを設置したり、さらに冷却ジャケットの先端に吸熱フィンを設けたりすることも可能である。
【0036】
このような単結晶引上げ装置20を用いて、CZ法により例えばシリコン単結晶を育成する場合、ガス導入口10から引上げチャンバ2及びメインチャンバ1に不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入しながら、種ホルダー15に固定された種結晶16を石英ルツボ5中の原料融液4に浸漬し、その後回転させながら静かに引上げて種絞りを形成した後結晶直径が所定の値、例えば200mm以上となるまで拡径し、略円柱形状の直胴部を有するシリコン単結晶3を成長させることができる。
【0037】
本発明は、このようにしてシリコン単結晶3の直胴部を成長させる際に、単結晶の直胴部の直径が所定値となるように引上げ速度Vを制御・変更しながら単結晶3を引上げるとともに、その引上げ速度Vの変動に応じて原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶3の回転速度、ルツボ5,6の回転速度、チャンバに導入する不活性ガスの流量、加熱ヒーター7の位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3のうちの少なくとも1つの単結晶引上げ条件を変更することによって、固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gを制御することができる。そしてそれによって、育成する単結晶の直径制御を高精度に行うことができるとともにV/Gの制御も非常に安定して行うことができるので、所定の結晶直径及び所望の欠陥領域を有する高品質の単結晶を容易にかつ安定して育成することができる。
【0038】
以下、具体的に説明すると、例えばシリコン単結晶を欠陥領域が径方向の全面にわたってN領域となるように育成する場合、前述のように種絞りを形成してから直径が所定値となるまで拡径した後、単結晶の直胴部をN領域で育成できるように引上げ速度Vを単結晶の製造が行われる製造環境(例えば、単結晶引上げ装置のHZ等)に応じて調節する。
【0039】
そして、単結晶直胴部の直径を成長させる際には、単結晶直胴部の直径が所定値で維持されるように引上げ速度Vを制御・変更するとともに、その引上げ速度Vの変動に応じて原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、ルツボの回転速度、チャンバに導入する不活性ガスの流量、加熱ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3のうちの少なくとも1つの単結晶引上げ条件を変更することによって結晶温度勾配Gを制御する。このとき、結晶温度勾配Gを変化させることができる他の因子を同時に制御・変更しても良い。
【0040】
例えば、直胴部の直径を所定値で維持するために引上げ速度を速くした場合、引上げ速度Vの増加に応じて結晶温度勾配Gを大きくするために、原料融液面と遮熱部材間の距離L1を減少させる、引上げ機構17により単結晶の回転速度を速くする、ルツボ駆動機構21によりルツボ5,6の回転速度を遅くする、バルブ24を開いてチャンバに導入する不活性ガスの流量を増加させる、加熱ヒーター7の発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2が大きくなるように加熱ヒーター7の位置をヒーター駆動手段22によって変更する(ヒーターの位置を下げる)、バルブ26を調節してチャンバ内の圧力を低下させる、磁場発生装置25で原料融液に印加する磁場の磁場強度を大きくする、及び原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離L3を減少させるといった各単結晶引上げ条件の変更のうちの少なくとも1つを行う。
【0041】
尚、原料融液面と遮熱部材間の距離L1は、ルツボ駆動機構21で石英ルツボ5及び黒鉛ルツボ6を結晶成長による融液面低下分とは異なる速度で押し上げることによって原料融液面の高さを結晶成長軸方向で上昇・下降させたり、また遮熱部材駆動手段23でガス整流筒11を昇降させて遮熱部材12の位置を上下に移動させたりすることによって容易にかつ高精度で変更させることができる。また原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離L3は、原料融液面の高さを上記と同様にして結晶成長軸方向で上昇・下降させたり、また磁場発生装置駆動手段27で磁場発生装置25の位置を上下に移動させたりすることによって、容易にかつ高精度で変更させることができる。さらに、上記では、原料融液面の位置よりヒーター発熱中心及び磁場中心が下となる場合を例として説明しているが、もちろんヒーター発熱中心や磁場中心を融液面より上となるように制御することも可能である。
【0042】
また一方、直胴部の直径を制御するために引上げ速度を遅くした場合では、引上げ速度Vの減少に応じて結晶温度勾配Gを小さくするために、原料融液面と遮熱部材間の距離L1を増大させる、単結晶の回転速度を遅くする、ルツボの回転速度を速くする、不活性ガスの流量を減少させる、加熱ヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2が小さくなるように加熱ヒーター7の位置を上昇させる、チャンバ内の圧力を高める、磁場強度を小さくする、及び原料融液面と磁場中心との相対距離L3を増大させるといった各単結晶引上げ条件の変更のうちの少なくとも1つを行う。
【0043】
尚、前述したように、上記に示した単結晶引上げ条件のうち、原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、不活性ガスの流量については、それらを変化させたときに結晶温度勾配Gもすぐに変化して素早い応答性を示し、また、ルツボの回転速度、加熱ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3は、結晶温度勾配Gを緩やかに変化させる。さらに、磁場強度、及び原料融液面と磁場中心との相対距離L3については、例えば上記磁場発生装置25で磁場強度を調節したり、また磁場発生装置駆動手段27で磁場発生装置25の位置を上下に調節した際に、実際に原料融液に印加している磁場の磁場強度や磁場中心が所望されたように変化するまでに若干の時間が必要となる場合がある。
【0044】
したがって、上記のような各単結晶引上げ条件の特徴を考慮すると、例えばGの応答性が優れている原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、不活性ガスの流量は比較的短い周期の引上げ速度Vの変動に対して変更することが好ましく、例えば数分程度の比較的短い時間で引上げ速度Vの平均を求め、その短時間の引上げ速度の平均値の変動に基づいて原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、不活性ガスの流量を変更することによって、V/Gの制御を高精度に行うことができる。
【0045】
また、Gを緩やかに変化させるルツボの回転速度、加熱ヒーターの位置、チャンバ内の圧力は短周期から長周期の引上げ速度の変動に対して変更することが好ましく、例えば数分〜数十分程度の比較的長時間で求めた引上げ速度の平均値の変動に基づいてそれらの引上げ条件を変更することによって結晶温度勾配Gの制御を行えば良い。さらに磁場強度、及び原料融液面と磁場中心との相対距離L3を変更する場合であれば、Gの変化が緩やかであるとともに、実際に原料融液に印加される磁場強度や磁場中心が変化するまでには時間がかかるために、引上げ速度の平均値を例えば5分以上の非常に長い時間で求めて、その引上げ速度の平均値の変動、つまり長周期の引上げ速度Vの変動に基づいて磁場強度、及び原料融液面と磁場中心との相対距離L3を変更することが好ましい。このように変更する単結晶引上げ条件によって異なる時間間隔で引上げ速度の平均値を求め、その求めた引上げ速度の平均値の変動に基づいて各単結晶引上げ条件を変更することによって、様々な周期の引上げ速度の変動に応じて結晶温度勾配Gを精度良く制御することが可能となり、それによりV/Gの制御を非常に高精度に行って、所望の欠陥領域で単結晶を安定して育成することができる。
【0046】
さらに、本発明では、単結晶を育成する際に、引上げ速度Vの変動に応じて上記に示した単結晶引上げ条件のうちの2つ以上の条件を変更することによって、結晶温度勾配Gの制御を行うこともできる。通常、上記の各単結晶引上げ条件は、単結晶を育成する際に結晶品質等その他の様々な製造条件にも作用している。そのため、単結晶の製造環境によっては、一つの引上げ条件のみを大きく変更すると種々の不都合が生じることが懸念される場合がある。例えば、原料融液面と遮熱部材間の距離L1を大きく広げ過ぎたり、不活性ガスの流量を増加させ過ぎたりすると単結晶育成の際の操業性が悪化する場合があったり、さらに単結晶の回転速度やルツボの回転速度が余りに速くなり過ぎたり、また遅くなり過ぎたりすると単結晶直胴部の形状が変形したり、結晶面内の品質分布の悪化が生じて歩留まりの低下を招くといった不都合が生じる可能性があることが考えられる。
【0047】
しかしながら、上記のように単結晶を育成する際に、単結晶引上げ条件のうちの2つ以上の条件を変更することによって、1つの引上げ条件を変更させるときに比べて結晶温度勾配Gをより広範囲で制御することができるようになるし、また引上げ条件の変更による結晶温度勾配Gの制御精度や応答性も向上させることができるようになる。また、例えば結晶温度勾配Gを大きくする場合には原料融液面と遮熱部材間の距離L1を縮小させ、一方結晶温度勾配Gを小さくする場合には不活性ガスの流量を減少させるといったようにすれば、操業性を悪化させず、またその他の様々な製造条件への影響を小さくして結晶温度勾配Gの制御を行うことが可能となる。さらに、例えば原料融液面と遮熱部材間の距離L1等のような比較的短い周期の引上げ速度の変動に対して変更する単結晶引上げ条件と、短周期から長周期の引上げ速度の変動や長周期の引上げ速度の変動に対して変更する単結晶引上げ条件と組み合わせて単結晶引上げ中に変更すれば、様々な引上げ速度Vの変動に対して結晶温度勾配Gを一層高精度に制御することが可能となり、所望の欠陥領域を有する単結晶を非常に安定して製造することができる。
【0048】
尚、本発明は、単結晶育成中に原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、ルツボの回転速度、不活性ガスの流量、加熱ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3のうちの少なくとも1つを変更すれば良く、実際に単結晶の製造が行われる製造環境(例えばHZの構造)等に応じて、変更させる引上げ条件の数やパラメータを適宜選択することができる。また、上記以外の因子を同時に制御・変更するようにすることも可能である。
【0049】
また、上記引上げ条件を変更する際の各引上げ条件の制御範囲についても、単結晶の製造環境等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではないが、例えば単結晶育成中に1つの引上げ条件を過剰に変更させ過ぎてしまうと上記に示したような不都合を生じる恐れがある。したがって、単結晶引上げ中は、各単結晶引上げ条件を単結晶が安定して育成することができる範囲で変更することが好ましい。
【0050】
例えば、単結晶育成中に原料融液面と遮熱部材間の距離L1を変更する場合は、引上げる単結晶の直径にもよるが、距離L1を1〜500mm、好ましくは10〜300mm、さらに好ましくは20〜200mmの範囲で変更することが望ましく、以下同様に、単結晶の回転速度の場合は0.1〜40rpm、好ましくは5〜20rpmの範囲で変更し、ルツボの回転速度の場合は0.1〜40rpmの範囲で変更し、不活性ガスの流量の場合は10〜2000L/min、好ましくは60〜300L/minの範囲で変更し、加熱ヒーターの位置については加熱ヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2が0〜500mm、好ましくは10〜200mm、さらに好ましくは30〜100mmの範囲で変化するようにヒーター位置を変更し、チャンバ内の圧力の場合は5〜300mbar、好ましくは10〜200mbarの範囲で変更し、磁場強度は100〜10000G、好ましくは500〜6000Gの範囲で変更し、原料融液面と磁場中心との相対距離L3の場合は0〜1000mm、好ましくは5〜500mmの範囲で変更することが望ましい。
【0051】
さらに、本発明では、図9に示した引上げ条件制御手段18を用いることにより、単結晶の引上げ中に単結晶の直径が所定値となるように引上げ速度Vを自動的に制御・変更するとともに、引上げ速度Vの変動に応じて結晶温度勾配Gも自動的に制御することが可能となる。具体的に説明すると、例えば単結晶引上げ中に、CCDカメラ19で測定した原料融液面の位置及び単結晶3の直径や、遮熱部材12の位置、単結晶3の回転速度、ルツボ5,6の位置及び回転速度、不活性ガスの流量、加熱ヒーター7の位置、磁場発生装置25から原料融液4に印加している磁場の磁場強度や磁場中心、チャンバ内の圧力、さらに引上げ機構17から得られる単結晶の引上げ長さ等の情報を引上げ条件制御手段18にフィードバックすることによって、引上げ条件制御手段18で引上げ機構17の駆動を調節して単結晶3が所定の直径で育成できるように引上げ速度Vを自動的に制御・変更する。そして、このように引上げ速度Vを制御・変更すると同時に、変更した引上げ速度Vの変動に応じて引上げ条件制御手段18で引上げ機構17、ルツボ駆動機構21、ヒーター駆動手段22、遮熱部材駆動手段23、バルブ24,26、磁場発生装置25、及び磁場発生装置駆動手段27を調節して、原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、ルツボの回転速度、チャンバに導入する不活性ガスの流量、加熱ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3のうちの少なくとも1つ変更するようにすれば、結晶温度勾配Gを自動的に制御してV/Gを所望欠陥領域を有する単結晶が育成できるように高精度に制御することができる。
【0052】
このように、本発明によれば、単結晶引上げ中に単結晶直胴部の直径が所定値となるように引上げ速度Vを制御・変更するとともに、その引上げ速度Vの変動に応じて原料融液面と遮熱部材間の距離L1、単結晶の回転速度、ルツボの回転速度、チャンバに導入する不活性ガスの流量、加熱ヒーターの位置、チャンバ内の圧力、磁場強度、原料融液面と磁場中心との相対距離L3のうちの少なくとも1つを変更して結晶温度勾配Gを制御することにより、V/Gを所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように安定して制御することができる。したがって、従来のように単結晶引上げ装置毎や製造バッチ毎に温度パターンの合わせ込み等を行わなくても、単結晶引上げ中に単結晶の直径制御とV/Gの制御とを安定して行うことができるため、例えば直径が200mm以上となる大口径の単結晶であっても、単結晶の直胴部全体に渡って所定の結晶直径を有し、かつ所望の欠陥領域を有する非常に高品質の単結晶を従来よりも非常に簡便にかつ高い歩留まりで製造することができる。
【0053】
さらに、単結晶を育成する際に本発明のように引上げ速度Vの変動に応じて結晶温度勾配Gを制御することによって、V/Gの制御性を向上させることができる。そのため、例えば図10に示すような、Cuデポ欠陥領域を含まないN領域中のNv領域やNi領域といった狭い領域にV/Gを高精度に制御して単結晶を製造することが可能となり、所望の欠陥領域を有する高品質の単結晶を非常に安定して得ることができる。
【0054】
尚、本発明では、前述のようにガス整流筒11の代わりに単結晶3を冷却する冷却ジャケットを設置したり、さらに冷却ジャケットの先端に吸熱フィンを設けたりすることも可能であり、その場合、引上げ速度Vの変動に応じて原料融液面と冷却ジャケット間の距離、また原料融液面と吸熱フィン間の距離を変更することによって、V/Gを所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように制御することも可能となる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1:原料融液面と遮熱部材間の距離L1の変更)
図9に示した単結晶引き上げ装置20を用いて、CZ法により直径24インチ(600mm)の石英ルツボに原料多結晶シリコンを150kgチャージし、ガス導入口10からアルゴンガスを流しながら、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0056】
また、シリコン単結晶の直胴部を育成している間は、CCDカメラ19で単結晶直胴部の直径を測定し、その情報を引上げ条件制御手段18にフィードバックして引上げ機構17を調節することによって、シリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行った。またそれと同時に、引上げ速度Vの変動に応じて原料融液面と遮熱部材間の距離L1を変更するために、2分間の引上げ速度の平均値を求め、その引上げ速度の平均値が0.02mm/min増加した場合には原料融液面と遮熱部材間の距離L1が5mm縮小するような割合で、また引上げ速度の平均値が0.02mm/min減少した場合には距離L1が5mm拡大するような割合で引上げ条件制御手段18でルツボ駆動機構21及び遮熱部材駆動手段23を調節した。
【0057】
このようにして単結晶育成中に変化させた引上げ速度V及び原料融液面と遮熱部材間の距離L1の変化の割合をそれぞれ図11の(a)、(b)に示す。尚、図11(a)に示したように、直胴部10cm以内の範囲で引上げ速度が高速であるのは、拡径部から直胴部に入るためのいわゆる肩部の引上げであるためで、肩部を形成することで直胴部の引上げに移行し、直胴部の直径を安定して制御することが可能となる。
【0058】
次に、上記のようにして育成した単結晶の成長軸方向の各部位から検査用のウエーハを切り出した後、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製し、以下に示すような結晶品質特性の検査を行った。
【0059】
(1)FPD(V領域)及びLSEPD(I領域)の検査
検査用のサンプルに30分間のセコエッチングを無攪拌で施した後、ウエーハ面内を顕微鏡で観察することにより結晶欠陥の有無を確認した。
(2)OSFの検査
検査用のサンプルにウエット酸素雰囲気下、1100℃で100分間の熱処理を行った後、ウエーハ面内を顕微鏡で観察することによりOSFの有無を確認した。
(3)Cuデポジション処理による欠陥の検査
検査用のサンプルの表面に酸化膜を形成した後、Cuデポジション処理を行って酸化膜欠陥の有無を確認した。その際の評価条件は以下の通りである。
酸化膜:25nm
電解強度:6MV/cm
電圧印加時間:5分間
【0060】
(比較例)
上記実施例と同様の単結晶引上げ装置20を用いて、直径24インチ(600mm)の石英ルツボに原料多結晶シリコンを150kgチャージし、CZ法により、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0061】
また、シリコン単結晶の直胴部を育成している間は、CCDカメラ19で単結晶直胴部の直径を測定して引上げ条件制御手段18で引上げ機構17を調節することによって、シリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行った。尚、このときの引上げ速度Vの変化の割合は上記実施例1とほぼ同様であった。一方、その他の単結晶引上げ条件については、単結晶直胴部の引上げ中に常に一定となるようにした。
【0062】
この比較例における引上げ速度Vの変化の割合を図11(a)に重ねて示し(実施例1の引上げ速度Vとほぼ同じ値)、また実施例1と比較するために比較例における単結晶直胴部育成中の原料融液面と遮熱部材間の距離L1の値(単結晶育成中は一定)を図11(b)に示す。
そして、上記で得られた単結晶の成長軸方向の各部位から検査用のウエーハを切り出した後、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製し、実施例1と同様の結晶品質特性の検査を行った。
【0063】
上記のようにして実施例1及び比較例で作製したシリコン単結晶にそれぞれ結晶品質特性の検査を行った結果、実施例1で作製したシリコン単結晶には単結晶直胴部10cmから直胴部終端までの領域において、FPD、LSEPD、OSFの何れの欠陥も検出されず、またCuデポジション処理による欠陥も観察されなかった。したがって、実施例1のシリコン単結晶は、単結晶直胴部の直胴部10cm以内の範囲を除く全ての領域において、Cuデポジション欠陥が検出されないN領域となっていることが確認できた。
【0064】
それに対して、比較例で作製したシリコン単結晶では、引上げ速度Vが大きく変動した直胴部の40〜55cmの領域でOSFが観察され、また直胴部の65〜75cmの領域ではLSEPD(I領域)が観察された。ここで、実施例1及び比較例で作製したシリコン単結晶に結晶品質特性の検査を行った結果を比較しやすくするために、それぞれの単結晶の欠陥領域を模式的に示した図を図11(c)に示す。
【0065】
(実施例2:単結晶の回転速度の変更、実施例3:不活性ガスの流量の変更)
図9に示した単結晶引き上げ装置20を用いて、上記実施例1と同様にしてCZ法により、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0066】
また、シリコン単結晶の直胴部を育成している間、実施例2では、上記実施例1と同様にシリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、引上げ速度Vの変動に応じて単結晶の回転速度を変更するために、2分間の引上げ速度の平均値を求め、その引上げ速度の平均値が0.02mm/min増加した場合には単結晶の回転速度が3.0rpm速くなるような割合で、また引上げ速度の平均値が0.02mm/min減少した場合には単結晶の回転速度が3.0rpm遅くなるような割合で引上げ条件制御手段18で引上げ機構17を調節した。
【0067】
さらに、実施例3では、シリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、引上げ速度Vの変動に応じて不活性ガス(アルゴンガス)の流量を変更するために、2分間の引上げ速度の平均値が0.02mm/min増加した場合にはアルゴンガスの流量が50L/min増加するような割合で、また引上げ速度の平均値が0.02mm/min減少した場合にはアルゴンガスの流量が50L/min減少するような割合で引上げ条件制御手段18でバルブ24を調節した。
【0068】
ここで、実施例2において上記のようにして単結晶育成中に変化させた引上げ速度V及び単結晶の回転速度の変化の割合をそれぞれ図12の(a)、(b)に示し、また実施例3において単結晶育成中に変化させた引上げ速度V及びアルゴンガスの流量の変化の割合をそれぞれ図13の(a)、(b)に示す。
【0069】
そして、上記実施例2及び実施例3のそれぞれで得られた単結晶の成長軸方向の各部位から検査用のウエーハを切り出した後、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製し、実施例1と同様の結晶品質特性の検査を行った。その結果、実施例2及び実施例3で作製した両シリコン単結晶とも、単結晶直胴部の直胴部10cm以内の範囲を除く全ての領域において、Cuデポジション欠陥が検出されないN領域となっていることが確認できた。
【0070】
(実施例4:ルツボの回転速度の変更、実施例5:チャンバ内の圧力の変更)
図9に示した単結晶引き上げ装置20を用いて、上記実施例1と同様にしてCZ法により、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0071】
また、シリコン単結晶の直胴部を育成している間、実施例4では、上記実施例1と同様にシリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、引上げ速度Vの変動に応じてルツボの回転速度を変更するために、10分間の引上げ速度の平均値を求め、その引上げ速度の平均値が0.01mm/min増加した場合にはルツボの回転速度が0.5rpm遅くなるような割合で、また引上げ速度の平均値が0.01mm/min減少した場合にはルツボの回転速度が0.5rpm速くなるような割合で引上げ条件制御手段18でルツボ駆動機構21を調節した。
【0072】
さらに、実施例5では、シリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、引上げ速度Vの変動に応じてチャンバ内の圧力を変更するために、10分間の引上げ速度の平均値が0.01mm/min増加した場合にはチャンバ内の圧力が25mbar低下させるような割合で、また引上げ速度の平均値が0.01mm/min減少した場合にはチャンバ内の圧力が25mbar高まるような割合で引上げ条件制御手段18でバルブ26を調節した。
【0073】
ここで、実施例4において上記のようにして単結晶育成中に変化させた引上げ速度V及びルツボの回転速度の変化の割合をそれぞれ図14の(a)、(b)に示し、また実施例5において単結晶育成中に変化させた引上げ速度V及びチャンバ内の圧力の変化の割合をそれぞれ図15の(a)、(b)に示す。
【0074】
そして、上記実施例4及び実施例5のそれぞれで得られた単結晶の成長軸方向の各部位から検査用のウエーハを切り出した後、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製し、実施例1と同様の結晶品質特性の検査を行った。その結果、実施例4及び実施例5で作製した両シリコン単結晶とも、一部の極わずかな結晶部位で結晶欠陥が観察されたものの、単結晶直胴部の直胴部10cm以内の範囲を除く95%以上の領域で、Cuデポジション欠陥が検出されないN領域となっていることがわかった。したがって、実施例4及び実施例5のシリコン単結晶は、上記の比較例や従来行われていた単結晶の引上げ装置毎や単結晶の製造バッチ毎に原料融液の設定温度パターンを変更して所定の結晶直径で単結晶を製造する方法と比較しても、同等以上の歩留まりを確保できることが確認できた。
【0075】
尚、実施例4及び実施例5のシリコン単結晶の一部で結晶欠陥が観察された原因としては、ルツボの回転速度やチャンバ内の圧力を引上げ速度の変動に応じて変更しても、実際に結晶温度勾配Gが変化するまでに多少のタイムラグが生じたためと考えられる。
【0076】
(実施例6:原料融液面と遮熱部材間の距離L1及び不活性ガスの流量の変更)図9に示した単結晶引き上げ装置20を用いて、上記実施例1と同様にしてCZ法により、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0077】
また、シリコン単結晶の直胴部を育成している間、上記実施例1と同様にシリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、2分間の引上げ速度の平均値を求めて、その引上げ速度の平均値が0.02mm/min増加した場合には原料融液面と遮熱部材間の距離L1が5mm縮小するような割合で引上げ条件制御手段18でルツボ駆動機構21を調節し、一方引上げ速度の平均値が0.02mm/min減少した場合にはアルゴンガスの流量が50L/min減少するような割合で引上げ条件制御手段18でバルブ24を調節した。
【0078】
そして、得られた単結晶の成長軸方向の各部位から検査用のウエーハを切り出した後、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製し、実施例1と同様の結晶品質特性の検査を行った。その結果、実施例6で作製したシリコン単結晶は、単結晶直胴部の直胴部10cm以内の範囲を除く全ての領域において、Cuデポジション欠陥が検出されないN領域となっていることが確認できた。
【0079】
(実施例7)
図9に示した単結晶引き上げ装置20とは遮熱部材の形状及び材質の異なる別の単結晶引き上げ装置を用いて、CZ法により、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で複数バッチ連続して育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0080】
尚、シリコン単結晶を複数バッチ連続して製造する際、各製造バッチで単結晶直胴部を育成するときに、上記実施例6と同様に単結晶の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、その引上げ速度の変動に応じて原料融液面と遮熱部材間の距離L1及び不活性ガスの流量を変更した。
【0081】
そして、連続して得られた複数の単結晶について実施例1と同様の結晶品質特性の検査を各単結晶に行った結果、全てのシリコン単結晶が、単結晶直胴部の直胴部10cm以内の範囲を除く全ての領域において、Cuデポジション欠陥が検出されないN領域となっていることが確認できた。
【0082】
(実施例8:加熱ヒーターの位置の変更)
図9に示した単結晶引き上げ装置20を用いて、上記実施例1と同様にしてCZ法により、方位<100>、直径200mm、酸素濃度が22〜23ppma(ASTM’79)となるシリコン単結晶をCuデポジション欠陥が検出されないN領域で育成した(単結晶直胴部の長さは約100cm)。
【0083】
また、シリコン単結晶の直胴部を育成している間、実施例8では、上記実施例1と同様にシリコン単結晶の直胴部の直径が200mmとなるように引上げ速度Vの制御・変更を行うとともに、引上げ速度Vの変動に応じて加熱ヒーターの位置を変更するために、10分間の引上げ速度の平均値を求め、その引上げ速度の平均値が0.01mm/min増加した場合には加熱ヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2が15mm大きくなるような割合で、また引上げ速度の平均値が0.01mm/min減少した場合には加熱ヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2が15mm小さくなるような割合で引上げ条件制御手段18でヒーター駆動手段22を調節して加熱ヒーターの位置を変更した。
【0084】
ここで、実施例8において上記のようにして単結晶育成中に変化させた引上げ速度V及び加熱ヒーターの発熱中心位置と原料融液面との相対距離L2の変化の割合をそれぞれ図16の(a)、(b)に示す。
【0085】
そして、上記実施例8で得られた単結晶の成長軸方向の各部位から検査用のウエーハを切り出した後、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製し、実施例1と同様の結晶品質特性の検査を行った。その結果、実施例8で作製したシリコン単結晶は、一部の極わずかな結晶部位で結晶欠陥が観察されたものの、単結晶直胴部の直胴部10cm以内の範囲を除く95%以上の領域で、Cuデポジション欠陥が検出されないN領域となっていることがわかった。したがって、実施例8のシリコン単結晶は、上記の比較例や従来行われていた単結晶の引上げ装置毎や単結晶の製造バッチ毎に原料融液の設定温度パターンを変更して所定の結晶直径で単結晶を製造する方法と比較しても、同等以上の歩留まりを確保できることが確認できた。
【0086】
尚、実施例8のシリコン単結晶の一部で結晶欠陥が観察された原因としては、加熱ヒーターの位置を引上げ速度の変動に応じて変更しても、実際に結晶温度勾配Gが変化するまでに多少のタイムラグが生じたためと考えられる。
【0087】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0088】
例えば、上記実施の形態では単結晶をN領域で育成する場合を例に挙げて説明を行っているが、本発明はこれに限定されず、V領域またはI領域、あるいはOSF領域といった所望の欠陥領域で単結晶を育成することもできる。また、本発明は、シリコン単結晶を製造する場合に好適に用いることができるが、これに限定されるものではなく、化合物半導体単結晶等を製造する場合にも同様に適用することができる。さらに、本発明は、磁場を原料融液に印加せずに単結晶を育成する場合や、磁場及び電流を原料融液に印加しながら単結晶を育成する場合(EMCZ法)にも同様に適用できる。
【0089】
尚、本発明の単結晶の製造方法は、必ずしも単結晶直胴部の全長で実施する場合に限られず、一部の長さに渡って引上げ速度Vで直径制御を行うとともに、その引上げ速度Vの変動に応じて結晶温度勾配Gを制御して、所望の欠陥領域とする場合を含む。特に上記のように、直胴部の前半である肩部から10cmの領域は、結晶品質が安定しないことがあるので、これが定常状態となり易い直胴部の5cm以降あるいは10cm以降で行うのが好ましい。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、単結晶を育成する際に、引上げ速度Vを制御・変更することにより結晶直径を安定して制御することができ、またそれと同時に引上げ速度Vの変動に応じて単結晶引上げ条件を変更して結晶温度勾配Gを制御することにより、V/Gを所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように安定して制御することができる。そして、このようにして直径制御とV/Gの制御とを行いながら単結晶を育成することによって、単結晶の直胴部全体に渡って所定の結晶直径を有し、かつ所望の欠陥領域を有する高品質の単結晶を容易にかつ高い歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】原料融液面と遮熱部材間の距離L1と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図2】単結晶の回転速度と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図3】ルツボの回転速度と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図4】不活性ガスの流量と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図5】ヒーターの発熱中心位置から原料融液面までの相対距離L2と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図6】チャンバ内の圧力と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図7】原料融液に印加する磁場の磁場強度と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図8】原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心間の相対距離L3と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の単結晶の製造方法を実施する際に使用することのできる単結晶引上げ装置の一例を説明する構成概略図である。
【図10】V/Gと結晶欠陥分布の関係を表す説明図である。
【図11】(a)は、実施例1及び比較例において単結晶を育成するときの単結晶直胴部の成長軸方向の長さと引上げ速度との関係を示したグラフであり、(b)は、単結晶直胴部の成長軸方向の長さと原料融液面と遮熱部材間の距離L1との関係を示したグラフであり、(c)は、実施例1及び比較例で作製したシリコン単結晶の欠陥領域を模式的に示した図である。
【図12】(a)は、実施例2における単結晶直胴部の成長軸方向の長さと引上げ速度との関係を示したグラフであり、(b)は、単結晶直胴部の成長軸方向の長さと単結晶の回転速度との関係を示したグラフである。
【図13】(a)は、実施例3における単結晶直胴部の成長軸方向の長さと引上げ速度との関係を示したグラフであり、(b)は、単結晶直胴部の成長軸方向の長さとアルゴンガスの流量との関係を示したグラフである。
【図14】(a)は、実施例4における単結晶直胴部の成長軸方向の長さと引上げ速度との関係を示したグラフであり、(b)は、単結晶直胴部の成長軸方向の長さとルツボの回転速度との関係を示したグラフである。
【図15】(a)は、実施例5における単結晶直胴部の成長軸方向の長さと引上げ速度との関係を示したグラフであり、(b)は、単結晶直胴部の成長軸方向の長さとチャンバ内の圧力との関係を示したグラフである。
【図16】(a)は、実施例8における単結晶直胴部の成長軸方向の長さと引上げ速度との関係を示したグラフであり、(b)は、単結晶直胴部の成長軸方向の長さと加熱ヒーターの発熱中心位置と原料融液面間の相対距離L2との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1…メインチャンバ、 2…引上げチャンバ、
3…単結晶(シリコン単結晶)、 4…原料融液、 5…石英ルツボ、
6…黒鉛ルツボ、 7…加熱ヒーター、 8…断熱材、
9…ガス流出口、 10…ガス導入口、 11…ガス整流筒、
12…遮熱部材、 13…保持軸、 14…ワイヤー、
15…種ホルダー、 16…種結晶、 17…引上げ機構、
18…引上げ条件制御手段、 19…CCDカメラ、
20…単結晶引上げ装置、 21…ルツボ駆動機構、
22…ヒーター駆動手段、 23…遮熱部材駆動手段、
24,26…バルブ、 25…磁場発生装置、
27…磁場発生装置駆動手段。

Claims (6)

  1. チョクラルスキー法によりチャンバ内で単結晶を原料融液から引上げて製造する方法において、前記単結晶を育成する際に、前記単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度をV(mm/min)、固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配をG(℃/mm)で表したとき、前記単結晶の直胴部の直径が所定値となるように前記引上げ速度Vを制御・変更しながら単結晶を引上げるとともに、該引上げ速度Vの変動に応じて前記結晶温度勾配Gを単結晶引上げ条件を変更することにより制御して、引上げ速度Vと結晶温度勾配Gの比V/G(mm/℃・min)を所望の欠陥領域を有する単結晶が育成できるように制御することを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 前記単結晶を育成する際に変更する単結晶引上げ条件を、前記原料融液の融液面と前記チャンバ内で原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離、前記単結晶を引上げる際の単結晶の回転速度、前記原料融液を収容するルツボの回転速度、前記チャンバに導入する不活性ガスの流量、前記原料融液を加熱するヒーターの位置、前記チャンバ内の圧力、前記原料融液に印加する磁場の磁場強度、及び前記原料融液面と原料融液に印加する磁場の磁場中心との相対距離のうちの少なくとも1つとすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
  3. 前記V/Gを、前記育成する単結晶の欠陥領域が径方向の全面にわたってN領域となるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単結晶の製造方法。
  4. 前記単結晶の直胴部の直径を、200mm以上とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法。
  5. 前記製造する単結晶をシリコン単結晶とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法により製造された単結晶。
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