JP3601328B2 - シリコン単結晶の製造方法およびこの方法で製造されたシリコン単結晶とシリコンウエーハ - Google Patents

シリコン単結晶の製造方法およびこの方法で製造されたシリコン単結晶とシリコンウエーハ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶欠陥が少ないシリコン単結晶を製造するために、炉内構造を調節し、この炉内構造を調節するための計算方法あるいは適切な炉内構造を探索する方法に関し、これを用いてシリコン単結晶を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、DRAM等の半導体回路の高集積化に伴う素子の微細化に伴い、その基板となるチョクラルスキー法(以下、CZ法と略記する)で作製されたシリコン単結晶に対する品質要求が高まってきている。特に、FPD、LSTD、COP等のグローンイン(Grown−in)欠陥と呼ばれる酸化膜耐圧特性やデバイスの特性を悪化させる、単結晶成長起因の欠陥が存在しその密度とサイズの低減が重要視されている。
【0003】
これらの欠陥を説明するに当たって、先ず、シリコン単結晶に取り込まれるベイカンシイ(Vacancy、以下Vと略記することがある)と呼ばれる空孔型の点欠陥と、インタースティシアル−シリコン(Interstitial−Si、以下Iと略記することがある)と呼ばれる格子間型シリコン点欠陥のそれぞれの取り込まれる濃度を決定する因子について、一般的に知られていることを説明する。
【0004】
シリコン単結晶において、V領域とは、Vacancy、つまりシリコン原子の不足から発生する凹部、穴のようなものが多い領域であり、I領域とは、シリコン原子が余分に存在することにより発生する転位や余分なシリコン原子の塊が多い領域のことであり、そしてV領域とI領域の間には、原子の不足や余分が無い(少ない)ニュートラル(Neutral、以下Nと略記することがある)領域が存在していることになる。そして、前記グローンイン欠陥(FPD、LSTD、COP等)というのは、あくまでもVやIが過飽和な状態の時に発生するものであり、多少の原子の偏りがあっても、飽和以下であれば、欠陥としては存在しないことが判ってきた。
【0005】
この両点欠陥の濃度は、CZ法における結晶の引上げ速度(成長速度)と結晶中の固液界面近傍の温度勾配Gとの関係から決まり、V領域とI領域との境界近辺にはOSF(酸化誘起積層欠陥、Oxidation Indused Stacking Fault)と呼ばれる欠陥が、結晶成長軸に対する垂直方向の断面で見た時に、リング状に分布(以下、OSFリングということがある)していることが確認されている。
【0006】
これら結晶成長起因の欠陥は、例えば、通常の結晶中固液界面近傍の△G(結晶中心部分の温度勾配Gc[℃/mm]と結晶周辺部分の温度勾配Ge[℃/mm]との差を△G=|Ge〜Gc|で表す)が大きい炉内構造(ホットゾーン:HZということがある)を使用したCZ引上げ機で結晶軸方向に成長速度を高速から低速に変化させた場合、図6に示したような欠陥分布図として得られる。
【0007】
そしてこれらを結晶径方向(面)で分類すると、図7に示したように、例えば成長速度が0.6mm/min前後以上と比較的高速の場合には、空孔タイプの点欠陥が集合したボイド起因とされているFPD、LSTD、COP等のグローンイン欠陥が結晶径方向全域に高密度に存在し、これら欠陥が存在する領域はV−リッチ領域と呼ばれている(図6のライン(A)、図7(A)参照)。 また、成長速度が0.6mm/min以下の場合は、成長速度の低下に伴い、OSFリングが結晶の周辺から発生し、このリングの外側に転位ループ起因と考えられているL/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号、LSEPD、LFPD等)の欠陥が低密度に存在し、これら欠陥が存在する領域はI−リッチ領域(L/D領域ということがある)と呼ばれている。さらに、成長速度を0.4mm/min前後以下と低速にすると、OSFリングがウエーハの中心に凝集して消滅し、全面がI−リッチ領域となる(図6のライン(C)、図7(C))。
【0008】
また、最近V−リッチ領域とI−リッチ領域の中間でOSFリングの外側に、N領域と呼ばれる、空孔起因のFPD、LSTD、COPも、転位ループ起因のLSEPD、LFPDも存在しない領域の存在が発見されている。この領域はOSFリングの外側にあり、そして、酸素析出熱処理を施し、X−ray観察等で析出のコントラストを確認した場合に、酸素析出がほとんどなく、かつ、LSEPD、LFPDが形成されるほどリッチではないI−リッチ領域側であると報告している(図6のライン(B)、図7(B)参照)。
【0009】
すなわち、このN−領域は、通常の方法では、引上げ速度を高速から低速に下げた時に成長軸方向に対して斜めに存在するため、ウエーハ面内では一部分にしか存在しなかった。
この欠陥に関して、ボロンコフ理論(V.V.Voronkov;Journal of Crystal Growth,59(1982)625〜643)では、引上げ速度(V)と結晶固液界面軸方向温度勾配(G)の比であるV/Gというパラメータが点欠陥のタイプとトータルな濃度を決定すると唱えている。このことから考えると、面内(結晶の径方向)で引上げ速度はほぼ一定のはずであるから、面内でGが径方向に分布を持つために、例えば、ある引上げ速度では中心がV−リッチ領域でN−領域を挟んで周辺でI−リッチ領域となるような結晶しか得られなかった。
【0010】
そこで最近、面内のGの分布を改良して、この斜めでしか存在しなかったN−領域を、例えば、引上げ速度Vを徐々に下げながら引上げた時に、ある引上げ速度でN−領域が横全面に広がった結晶が製造できるようになった。また、この全面N−領域の結晶を長さ方向へ拡大するには、このN−領域が横に広がった時の引上げ速度を維持して引上げればある程度達成できる。また、結晶が成長するに従ってGが変化することを考慮し、それを補正して、あくまでもV/Gが一定になるように、引上げ速度を調節すれば、それなりに成長方向にも、全面N−領域となる結晶が拡大できるようになった。この全面N−領域結晶にはグローンイン欠陥が全く存在せず、酸化膜耐圧特性も良好である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
通常、引上げ炉の熱(温度)分布を考える時に、炉内構造(HZ:ホットゾーンということがある)を主にして熱計算を行う。従って、今までの上記欠陥分布を検討する場合には、HZが同一であれば、他の引上げ条件を多少変更しても影響は殆どなく、目的とした品質の結晶が得られると考えていた。しかし、結晶回転速度やMCZ法の磁場強度等、特にシリコン融液の対流に影響を与えると思われるパラメータを変更すると、例えば、引上げ速度を下げながら引上げた際に、同一HZを使用しているにも関わらず、径方向に真直ぐに存在したN−領域が、上記条件を変更した引上げでは、斜めに存在する場合があることが判明した。これらのパラメータは、ウエーハの酸素濃度その他の仕様や操業条件に応じて変更しなければならない場合もあり、その許容限界が大きな問題となってきた。
【0012】
また、このN−領域を結晶軸方向に拡大する場合、実際の操業においては、引上げ速度を、例えば結晶の直径制御のため、意図的に変化させる必要がある。さらに、結晶回転用モーターの回転速度はその仕様の範囲内ではあるが微小な変化を起こしていることが多い。そして、これらが原因となって引上げ速度が目標値から外れた場合、すなわち、V/G値が適正範囲から外れた場合に、その部分に突然グローンイン欠陥が大量に発生していることがあった。これでは単結晶の歩留りが低下し、さらに欠陥発生部分は結晶の外見からは判別できず、ほぼ全品検査に近い方法で対処しており、品質保証を極めて困難にするという問題もあった。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、例えば外乱により引上げ速度が設定値から外れた場合等のどのような単結晶製造条件の変動に対しても対応可能な適切な修正方法や炉内構造を見出す方法を開発し、極低欠陥結晶を安定した条件下で生産することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために為されたもので、本発明、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、少なくとも成長方向の一部分で、結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、引上げ炉の炉内構造以外の製造条件が変動して、結晶中の固液界面近傍の融点から1400℃の間の温度勾配G(温度変化量/結晶軸方向長さ)[℃/mm]の径方向分布が傾斜し、そのため結晶引上げ速度をV[mm/min]とした時のV/G[mm2 /℃・min]値がN−領域となる範囲から外れて、径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合に、引上げ炉の炉内構造を調節してGの径方向の傾斜を小さくしV/G値を径方向の全面でN−領域となるような値にすることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0015】
このように、少なくとも成長方向の一部分で結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、引上げ炉の炉内構造以外の製造条件が変動してGの径方向分布が傾斜し、そのためV/G値が径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合に、その修正方法として引上げ炉の炉内構造を調節してGの径方向傾斜を小さくすれば、V/G値を径方向の全面でN−領域となるようにすることができ、極低欠陥のシリコン単結晶を安定して製造することができる。
【0016】
この場合前記引上げ炉の炉内構造の調節は、結晶の固液界面の外周に環状の固液界面断熱材を設けて、該断熱材下端と融液面との間隔S[mm]を調節することにより行うことが望ましい。
【0017】
本発明、磁場を印加するチョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、磁場強度の変動に対して前記炉内構造を調節することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
このように、MCZ法においては、磁場強度を変動させる場合があり、この変動に対して炉内構造を適切に調節すれば径方向の全面でN−領域となるシリコン単結晶を製造することができる。
【0018】
そして本発明、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、結晶回転速度の変動に対して前記炉内構造を調節することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
このように、結晶回転速度は、面内分布の改善等のため変動させる必要があり、この変動に対して炉内構造を適切に調節すれば径方向の全面でN−領域となるシリコン単結晶を製造することができる。
【0019】
本発明、炉内構造以外の製造条件の変動に伴いGの径方向分布が変化した時に、その製造条件で少なくとも2種類以上の炉内構造を用いて、引上げ速度を漸増させる引上げあるいは引上げ速度を漸減させる引上げを実施して、ある引上げ速度のときに径方向の全面でN−領域となるような炉内構造を見出すことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
このように、炉内構造以外の製造条件を固定し、複数の炉内構造を用いて引上げ実験を行い、欠陥分布図を作成して比較すれば、実際のG値が径方向の全面でフラットとなるような炉内構造を容易に選択することができる。
【0020】
さらに、本発明、炉内構造以外の製造条件の変動に伴いGの径方向分布が変化した時に、その影響を正確に計算できるシュミレータを使用して解析し、径方向の全面でN−領域となる炉内構造を見出すことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0021】
このように、製造条件の変動に伴うGの径方向分布の変化を正確に計算できるシュミレータを使用して解析するならば、変動した製造条件下での径方向の全面でN−領域となる炉内構造を多数の引上げ実験を行わなくても容易に見出すことができる。
【0022】
そして、本発明、炉内構造以外の製造条件の変動に伴いGの径方向分布が変化した時に、その影響を正確に計算できない、あるいはそのような比較を行わないシュミレータを使用する場合、そのシュミレータを製造条件が変動する前に得られた実験結果に合わせ込むか、または解析結果に合うような条件を探しておいて、その条件で引き上げた結晶の引上げ速度Vを、解析から求まるGで割った値、V/G値を比較して、欠陥分布の各境界のV/G値を定量化しておいて、次に炉内構造以外の条件が変わり、欠陥分布が変化した場合に、先に求めたV/G値と、変化した条件で新たに引上げた結晶の引上げ速度及び欠陥分布を比較して、Gの値を逆算して求め、計算G値からその条件での実際G値への補正量を計算しておいて、次に様々な炉内構造の解析を行い、その結果にこの補正を行った上で、△Gが最小となる炉内構造を探すことにより、径方向の全面がN−領域となる炉内構造を見出すことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0023】
このように、不十分な解析しか出来ないシュミレータの場合は、上記のような手順で引上げ実験結果を折り込んで計算すれば、径方向の全面がN−領域となる炉内構造を見出すことができる。
これにより、全て実験により見出すよりは効率的に適切な炉内構造を見出すことが可能となる。
【0024】
次に本発明は、引上げ速度を高速から低速に漸減する、あるいは引上げ速度を低速から高速に漸増、OSFリングの内側ライン、OSFリングの外側ライン、V−リッチ領域側N−領域とI−リッチ領域側N−領域の境界ラインおよび転位ループが発生し始めるラインの中の少なくとも1つ以上をV/G値により定量化しておいて、炉内構造以外の製造条件が変わった場合には、同様な引上げを行い、欠陥分布が変化した場合に、先に求めたV/G値と引上げ速度を利用して結晶径方向に各境界位置でのGの値を逆算し、計算G値からその条件での実際G値への補正量を計算しておいて、次に様々な炉内構造の解析を行い、その結果にこの補正を行った上で、△Gが最小となる炉内構造を探すことにより、径方向の全面がN−領域となる炉内構造を見出すことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
このような解析と実験的手法によっても変動した製造条件下での径方向の全面がN−領域となる炉内構造を比較的容易に見出すことができる。
【0025】
本発明、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する場合において、引上げ炉内の温度分布と引上げ速度を調節して、少なくとも結晶の径方向全面に形成されるN−領域を結晶の軸方向に拡大する場合に、各引上げ炉固有の最小引上げ速度変動幅△V[mm/min]に対応した最大の△G以下となる炉内構造により結晶を引上げることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
このようにすれば、各引上げ炉固有の引上げ速度変動幅に対応した炉内構造が特定され、結晶の径方向に形成されたN−領域を結晶の軸方向に拡大することができ、単結晶棒全域でN−領域である極低欠陥のシリコン単結晶を得ることができる。
【0026】
この場合前記各引上げ炉固有の△V[mm/min]に対し、
△G=―6.5△V+0.1785
の関係で求まる△G[℃/mm]値以下になるように炉内構造を調節して結晶を引上げれば、より一層安定して軸方向にN−領域を拡大した高品質のシリコン単結晶を製造することができる。
【0027】
次に、本発明、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、少なくとも成長方向の一部分で、結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、引上げ炉の炉内構造が変動して、温度勾配Gの径方向分布が傾斜し、そのためV/G値が、N−領域となる範囲から外れて、径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合に、引上げ炉の炉内構造以外の製造条件を調節してGの径方向傾斜を小さくし、V/G値を径方向の全面でN−領域となるような値にすることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0028】
このように、炉内構造の変動が原因となって径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合には、炉内構造以外の製造条件を調節してGの径方向傾斜を小さくし、V/G値を径方向の全面でN−領域となるようにすれば、径方向の全面でN−領域となるシリコン単結晶を形成することができる。
【0029】
この場合、前記調節する製造条件が磁場強度とすることができ結晶回転速度とすることができる。
これらにより、シリコン融液の対流が影響され、欠陥分布を変更することができるので、これを修正に用いることができるし、またその変更、調整が容易である。
【0030】
さらに、本発明、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、少なくとも成長方向の一部分で、結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、ルツボの回転速度を変更したため、N−領域を得るための結晶引上げ速度が変化した場合には、それに応じてN−領域を得るための結晶引上げ速度を変更することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0031】
このように、炉内構造以外の製造条件としてルツボの回転速度を変更した場合には、磁場強度や結晶回転速度の変更が温度勾配Gに与える影響とは異なり、Gの絶対値そのものが変更する、あるいは酸素濃度が変化するため、そのままの引上げ速度ではN−領域から外れてしまうので、引上げ速度を変更すれば、径方向の全面でN−領域となるシリコン単結晶を形成することができる。
【0032】
この場合ルツボの回転速度を変更して全面N−領域となる結晶を引上げる場合に、先ず、引上げ速度漸減実験を行って、N−領域となる結晶引上げ速度を実験で確認し、次いで、その確認した引上げ速度を基準にして、結晶を育成するようにすれば、より一層安定して軸方向にN−領域を拡大した高品質のシリコン単結晶を製造することができる。
【0033】
そして、本発明は、前記に記載した方法で製造されたシリコン単結晶である。
このように、前記記載した方法によってシリコン単結晶を製造すれば、たとえ外乱によって製造条件が変動し、あるいは意図的に変動を与えても、容易にかつ速やかに正常値に修復することができ、結晶の径方向の全面でN−領域となり、結晶の軸方向の広範囲でN−領域となる極低欠陥のシリコン単結晶を製造することができる。
【0034】
さらに、本発明上記に記載されたシリコン単結晶から製造されたシリコン単結晶ウエーハである。
このように、本発明によって製造されたシリコン単結晶から作製されるシリコン単結晶ウエーハは、結晶の全面でN−領域であり、極低欠陥であるので、極めて有用なシリコンウエーハとすることができる。
【0035】
以下、本発明につき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。説明に先立ち各用語につき予め解説しておく。
1)FPD(Flow Pattern Defect)とは、成長後のシリコン単結晶棒からウェーハを切り出し、表面の歪み層を弗酸と硝酸の混合液でエッチングして取り除いた後、K Cr と弗酸と水の混合液で表面をエッチング(Seccoエッチング)することによりピットおよびさざ波模様が生じる。このさざ波模様をFPDと称し、ウェーハ面内のFPD密度が高いほど酸化膜耐圧の不良が増える(特開平4−192345号公報参照)。
【0036】
2)SEPD(Secco Etch Pit Defect)とは、FPDと同一のSeccoエッチングを施した時に、流れ模様(flow pattern)を伴うものをFPDと呼び、流れ模様を伴わないものをSEPDと呼ぶ。この中で10μm以上の大きいSEPD(LSEPD)は転位クラスターに起因すると考えられ、デバイスに転位クラスターが存在する場合、この転位を通じて電流がリークし、P−Nジャンクションとしての機能を果たさなくなる。
【0037】
3)LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)とは、成長後のシリコン単結晶棒からウエーハを切り出し、表面の歪み層を弗酸と硝酸の混合液でエッチングして取り除いた後、ウエーハを劈開する。この劈開面より赤外光を入射し、ウエーハ表面から出た光を検出することでウエーハ内に存在する欠陥による散乱光を検出することができる。ここで観察される散乱体については学会等ですでに報告があり、酸素析出物とみなされている(Jpn.J.Appl.Phys. Vol.32,P3679,1993参照)。また、最近の研究では、八面体のボイド(穴)であるという結果も報告されている。
【0038】
4)COP(Crystal Originated Particle)とは、ウエーハの中心部の酸化膜耐圧を劣化させる原因となる欠陥で、Secco エッチではFPDになる欠陥が、SC−1洗浄(NH OH:H :H O=1:1:10の混合液による洗浄)では選択エッチング液として働き、COPになる。このピットの直径は1μm以下で光散乱法で調べる。
【0039】
5)L/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号)には、LSEPD、LFPD等があり、転位ループ起因と考えられている欠陥である。LSEPDは、上記したようにSEPDの中でも10μm以上の大きいものをいう。また、LFPDは、上記したFPDの中でも先端ピットの大きさが10μm以上の大きいものをいい、こちらも転位ループ起因と考えられている。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし図4は、結晶引上げ製造条件の変動に伴う欠陥分布を、パラメータとして結晶引上げ速度V[mm/min]を縦軸に、結晶直径を横軸として示した欠陥分布図である。図5は本発明で使用した引上げ炉の慨略図である。
【0041】
本発明者らは、先に特願平9−199415号で提案したように、CZ法によるシリコン単結晶成長に関し、V領域とI領域の境界近辺について、詳細に調査したところ、この境界近辺の極く狭い領域にFPD、LSTD、COPの数が著しく少なく、L/Dも存在しないニュートラルな領域があることを発見した。
【0042】
そこで、このニュートラルな領域をウエーハ全面に広げることができれば、点欠陥を大幅に減らせると発想し、成長(引上げ)速度と温度勾配の関係の中で、結晶のウエーハ面内では、引上げ速度はほぼ一定であるから、面内の点欠陥の濃度分布を決定する主な因子は温度勾配である。つまり、ウエーハ面内で、軸方向の温度勾配に差があることが問題で、この差を減らすことが出来れば、ウエーハ面内の点欠陥の濃度差も減らせることを見出し、結晶中心部の温度勾配Gcと結晶周辺部分の温度勾配Geとの差△G[℃/mm]=|Ge−Gc|を出来るだけ小さくなるように炉内構造を設定し、炉内温度を制御して引上げ速度を調節すれば、ウエーハ全面がN領域からなる欠陥のないウエーハが得られるようになった。
【0043】
しかしながら、前述したように、△Gに影響するのは炉内構造のみならず、その他の製造条件の変動でも欠陥の発生やその分布に対する影響が極めて大きいことが判った。そこで、本発明者らは、先ず炉内構造以外のパラメータを変化させて、欠陥分布に与える影響を調査した。その結果、数あるパラメータの中で、特に印加する横磁場の強度と引上げ中の結晶回転速度を変化させた時に、欠陥分布が大きく変化していることを発見した。
【0044】
具体的な調査として、引上−1は、ある炉内構造(HZ−1とする)を使用して、横磁場強度3000Gauss、結晶回転速度15rpmという条件で、引上げ速度を高速から低速に漸減する引上げ実験を行った。
図5の本発明に使用した引上げ炉の慨略図に示したように、引上げ炉30で、18インチ石英ルツボ32に原料多結晶シリコンを40Kgチャージし、直径6インチ、方位<100>、直胴長さ約60cmのシリコン単結晶棒1を引上げた。
炉内構造HZ−1は、結晶の固液界面4の外周に環状の固液界面断熱材8を設置し、該断熱材下端と融液面3との間に間隔S[mm]を設けたもので、Sを調節することによりGおよび△Gを制御することができる。HZ−1では、S=30mmに設定し、結晶中心温度勾配Gc=3.551℃/mm、結晶周辺温度勾配Ge=3.552℃/mm、△G=0.001℃/mmとした。なお、これらの値はFEMAG(総合伝熱解析ソフト)による計算値である。
【0045】
この結果は図1の欠陥分布図に示したように、N−領域がほぼ径方向に広がって存在していた。このとき、N−領域の限界は平坦となっており、最大限に拡大されたもので、N−領域の結晶軸方向への拡大も容易であることが判る。
ここで言う、N−領域とは、OSF領域(OSFリング)を含むV−リッチ領域境界線とI−リッチ領域境界線との間の領域を指している。
尚、製造条件と炉内構造およびその結果の関係を表1にまとめておいた。
また、欠陥分布もフラットであり、Gの面内分布もフラットであるので、このとき、計算によるG分布と実際のGが少なくとも相対的に合っていることを示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003601328
【0047】
次に引上−2として、HZ−1を使用し、横磁場強度0Gauss、結晶回転速度15rpmという条件で、引上げ速度漸減実験を行った。この結果は、図2に示したように、OSFリングが斜めに閉じるような分布になっていた。この場合、全面N−領域となるウエーハは1枚取れるか取れないかであり、このままでは結晶軸方向への拡大も大変困難であることが判る。また、この現象をV/Gから推測すると、引上げ速度Vは一定であるから、結晶中心の温度勾配Gcを減少させ、周辺のGeを増加させていることが判る。つまり、磁場強度を下げれば下げる程、Gcは小さくなり、Geは大きくなることを示唆している。逆に言えば磁場強度を上げれば上げる程、Gcは大きくなり、Geは小さくなることを意味している。
【0048】
次いで、引上−3の実験を行った。HZ−1を使用し、横磁場強度3000Gauss、結晶回転速度5rpmという条件で、引上げ速度漸減実験を行った。この結果は、図3に示したように、引上−2と同様にOSFリングが斜めに閉じるような分布になっていた。この場合、特に全面N−領域となる部分は無く、これでは全面N−領域となる結晶は作れないことになる。Gの変化の傾向は、結晶回転速度を下げれば下げる程、Gcが下がり、Geが大きくなっていた。
【0049】
磁場強度は結晶の酸素濃度等に関係し、結晶回転速度は結晶の変形や面内均一性等に関係するパラメータであるので、操業条件によっては、変更せざるを得ない場合がある。このような場合には、同一炉内構造(HZ)を使用して全面N−領域となる結晶を製造することは困難である。縦方向への安定成長は、引上−2でも困難で、引上−3では全く製造できない。
【0050】
そこで、条件を変更した時のN−領域結晶の安定成長のための対策を考えた。外乱や意図的な操業条件の変化によりGが変動するのであれば、それに連動してHZを変更し、Gを調節すればよい。逆にHZを固定して操業条件を変更しGを調節することも可能である。
【0051】
先ずは、実験的手法により、HZを求めることにした。いずれの場合も、△Gを小さくする方向に補正すればよいので、△Gを変化させるのに有効な図5に示されている間隔Sを変更してHZ−2、HZ−3の2種類の炉内構造を準備し、引上げを行った。
HZ−2では、S=40mmに設定し、HZ−3では、S=50mmに設定した。
【0052】
引上−4は、HZ−2を使用した以外は引上−2(磁場強度:0Gauss)と同じ条件で、引上−5は、HZ−3を使用した以外は引上−2と同じ条件で、引上げ速度漸減実験を行った。
引上−4の場合は、図1に近い、OSFリングがフラットになるような結晶が得られた。また、引上−5の場合は、逆にOSFが僅か逆M字型に閉じるような図4のような分布となった。引上−5の場合は、全面N−領域の範囲は狭くなってしまう。この比較実験ではHZ−2を使用して引上げるのが、N−領域の限界も広く良いことが判った。すなわち、磁場の印加を中止するという製造条件の変動を間隔Sを変えるという炉内構造の調節により、再び図1のような理想的な欠陥分布を得ることができる。
【0053】
次に、引上−6は、HZ−2を使用した以外は引上−3(結晶回転速度:5rpm)と同じ条件で、引上−7は、HZ−3を使用した以外は引上−3と同じ条件で、引上げ速度漸減実験を行った。
引上−6の場合は、図2に近い、全面N−領域があるが、まだOSFリングが真横に閉じないような分布になった。引上−7の場合は、図1に近いOSFリングが真横に閉じるような分布となった。この比較実験では、HZ−3を選択するのが良いということになる。
【0054】
また、引上−8、引上−9として、引上−1の条件(横磁場強度3000Gauss)でHZ−2、HZ−3を使用して引上げると、双方とも図4のような逆M字型に閉じるような分布になった。
つまり、この場合は、逆にも言える。すなわち、ある条件で引上げたら図4のような分布になった場合は、△Gが0またはマイナスになっているので、HZ−3からHZ−1の方向、すなわち、△Gを大きくする方向に炉内構造を調節すればよい。
【0055】
以上説明したように、炉内構造以外の製造条件が変化した場合に、炉内構造を追随させて行けば、どのような条件でも径方向の全面でN−領域であるシリコン単結晶ウエーハを製造することが可能となった。
【0056】
以上の説明とは逆に、炉内構造の変動が原因となって径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合には、炉内構造以外の製造条件を調節してGの径方向傾斜を小さくし、V/G値を径方向の全面でN−領域となるようにすれば、径方向の全面でN−領域となるシリコン単結晶を形成することができる。
【0057】
前記したように、径方向の全面でN−領域となる適切な炉内構造や製造条件を求めるのに実験的手法を用いてきたが、トライアンドエラー的な要素が強く、無駄な実験を数多く強いられる可能性も高く、能率が悪い。そこで、計算を用いて、磁場強度等の炉内構造以外の製造条件が変動した場合の、炉内構造の調節方法を見出す方法を検討した。
【0058】
先ず、炉内構造以外の磁場強度や結晶回転速度等の製造条件のGに対する影響を、相対的に正確に求められるCZ法引上げ炉内の総合伝熱解析ツールがあればそれで計算すればよい。しかし、現状のツールでは、対流を加味した状態で二次元の伝熱解析では、様々な状態のGを相対的に正確に求めることは困難であり、比較ができない場合もある。そこで、理想的な三次元シュミレータがない状況での計算方法を検討した。
【0059】
先ず、ある一つの条件で引上げた結果と、シュミレーションの結果を合わせこむ必要がある。或はシュミレーションの結果と合う条件を実験で見つけてもよい。ここでは、前記引上−1の条件でシュミレーションの解析結果が合うようになっている。この合う合わないの基準は、例えば、引上げ速度漸減実験時のOSF等の各欠陥分布の境界と、解析で求めたGから割り出したV/G値の分布を比較して、例えば、OSF内側のラインがV/Gのある一つの値で示されていれば、少なくとも相対的には合っていることになる。
【0060】
計算方法は、先ず、合っている条件(引上−1)で引上げ速度漸減実験を行い、OSF内側、OSF外側、N(V)/N(I)境界、I−リッチ境界等の各境界および各位置での引上げ速度Vを明確にしておく。次に結晶の長さを次々と変化させた熱解析を行ってGを算出し、この各欠陥境界と計算で求まるV/Gを比較して各境界をV/Gにより定量化しておく。
【0061】
このV/Gを使って別の実験のGを逆算して求める。例えば、引上−2の場合、OSFリングやN(V)/N(I)境界、I−リッチ境界等をまたぐような径方向の一つの線を使用して、この時の引上げ速度と先に求めたV/Gから、各境界との交点のGを逆算して求めた。この場合、Gの値が解析値と比較して、結晶中心で―3.7%、V/Gの有効範囲の周辺(外方拡散の影響のない内側)で+1.4%となっており、引上−2の条件のGの分布が求められたことになる。
【0062】
このようにして求めた補正値を使用して、今度は炉内構造の予測を行う。数種類の熱解析を行い、最後の先程求めた補正をかければほぼ正確にGの分布を求めることができる。
以上のような方法で、あくまでもGがフラットになるような、すなわち△Gが0に近くなるような炉内構造を見出し、その炉内構造を設定して引上げれば、炉内構造以外の製造条件が変化しても全面N−領域の結晶を安定して製造できるようになった。続いて以上の方法でHZ−2の解析を行ったところ、Gは間違いなくフラットになった。
【0063】
以上と同様な方法で、結晶回転速度変更時のGの補正量を算出し、その補正を加味した解析を行えば、この条件でも最適な炉内構造を見出すことが出来る。
この実験にシュミレーションを合わせこむ方法もまた、どのような状況変化に対する欠陥分布の変化にも使用可能である。
【0064】
次に、この径方向全面N−領域結晶の成長方向への拡大の難易性について検討した。 図1の場合は全く問題は無く、軸方向への拡大は容易であり、図2のような場合は、拡大は極めて困難である。従って、出来るだけ図1のようにOSFリングが真横に閉じるような条件で操業を行うことが望ましい。
【0065】
ところで、引上げ炉には、直径制御のための意図的な引上げ速度Vの制御からモーター起因の固有の引上げ速度Vの変動があり、この変動によってN−領域となるV/Gの範囲から外れた時にグローンイン欠陥が発生する。つまり、引上げ炉の△Vに対するV/Gの範囲から計算される最大許容△G以下にすれば、N−領域が確保される。この△Vと最大許容△Gとの関係をN−領域境界のV/Gから求めたところ、引上げ炉固有の△V[mm/min]に対し、△G[℃/mm]が、 △G=―6.5△V+0.1785 の関係式から求まる値以下にすれば、N−領域の成長方向への拡大が安定することを発見した。
【0066】
具体的には引上げ炉の△Vが0.02[mm/min]の時、最大許容△Gが0.0485[℃/mm]以下になれば安定することになる。そこで、△Gが0.1[℃/mm]の炉内構造および操業条件(引上−8)と0.02[℃/mm]の炉内構造および操業条件(引上−9)で、成長軸方向のGの変化を考慮して、引上げ速度を少しづつ下げながら引上げを行ったところ、引上−8では所どころでFPDやLFPD、LSEP等が発生したが、引上−9では、結晶の直胴部10cm以降はグローンイン欠陥の存在しない結晶の育成に成功した。
【0067】
以下、本発明で使用するCZ法による単結晶引上げ炉の構成例を図5により説明する。
図5に示すように、この単結晶引上げ装置30は、引上げ室31と、引上げ室31中に設けられたルツボ32と、ルツボ32の周囲に配置されたヒータ34と、ルツボ32を回転させるルツボ保持軸33及びその回転機構(図示せず)と、シリコンの種結晶5を保持するシードチャック6と、シードチャック6を引上げるワイヤ7と、ワイヤ7を回転又は巻き取る巻取機構(図示せず)を備えて構成されている。ルツボ32は、その内側のシリコン融液(湯)2を収容する側には石英ルツボが設けられ、その外側には黒鉛ルツボが設けられている。また、ヒータ34の外側周囲には断熱材35が配置されている。
【0068】
また、本発明の製造方法に関わる製造条件を設定するために、炉内構造の例として結晶の固液界面4の外周に環状の固液界面断熱材8を設けている。この固液界面断熱材8は、その下端とシリコン融液2の湯面3との間に1〜10cmの間隔Sを設けて設置される。この間隔Sは、結晶引上げ開始時のルツボの位置、原料の量によって調節することができるし、別に固液界面断絶材8自体を昇降可能に構成し、間隔Sを制御するようにしてもよい。さらに、冷却ガスを吹き付けたり、輻射熱を遮って単結晶を冷却する筒状の冷却装置(不図示)を設けることもある。
別に、引上げ室31の水平方向の外側には、磁石36を設置し、シリコン融液2に水平方向の磁場を印加することによって、融液の対流を抑制し、単結晶の安定成長をはかるようにしている。
【0069】
次に、上記の単結晶引上げ装置30による単結晶育成方法について説明する。まず、ルツボ32内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420°C)以上に加熱して融解する。次に、ワイヤ7を巻き出すことにより融液2の表面略中心部に種結晶5の先端を接触又は浸漬させる。その後、ルツボ保持軸33を適宜の方向に回転させるとともに、ワイヤ7を回転させながら巻き取り、種結晶5を引上げることにより、単結晶育成が開始される。以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状の単結晶棒1を得ることができる。
【0070】
この場合、本発明では、本発明の目的を達成するために特に重要であるのは、炉内構造として引上げ室31の湯面3上の単結晶棒1中の液状部分の外周空間において、湯面近傍の結晶の融点から1400℃までの温度域が制御できるように環状の固液界面断熱材8を設けたことである。
【0071】
すなわち、この炉内温度を制御するために、引上げ室31内に環状固液界面断熱材8を設け、この下端と融液表面3との間隔Sを例えば1〜10cmの範囲で調節すればよい。こうすれば、上記結晶中心部分の温度勾配Gc[℃/mm]と結晶周辺部分の温度勾配Ge[℃/mm]との差△G=|Ge〜Gc|を制御することができる。
【0072】
以上述べたシリコン単結晶の製造方法で製造されたシリコン単結晶およびこのシリコン単結晶をスライスして得られるシリコン単結晶ウエーハは、結晶の径方向で全面N−領域であり、軸方向にも拡大しているので結晶全域でN−領域であり、従ってFPD、COP等のグローンイン欠陥やLSEP,LFPD等の転位クラスターがウエーハ全面内に存在しない極低欠陥品である。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0074】
例えば、上記実施形態においては、直径6インチのシリコン単結晶を育成する場合につき例を挙げて説明したが、本発明はこれには限定されず、直径8〜16インチあるいはそれ以上のシリコン単結晶にも適用できる。また、本発明は、シリコン融液に水平磁場、縦磁場、カスプ磁場等を印加するいわゆるMCZ法にも適用できることは言うまでもない。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ある炉内構造の下で正常な欠陥分布を有するシリコン単結晶の引上げが行われている時、外乱あるいは意図的な製造条件の変動により欠陥分布に異常を来した場合に、炉内構造を適切に調節することによって修復可能となり、どのような条件下でも安定して全面N−領域となる結晶を引上げることができ、極低欠陥シリコン単結晶の歩留りと生産性の向上を図ることができる。また、各引上げ炉固有の最小引上げ速度振れ幅に対する△Gが得られたので、炉内構造を適切に調節することによって成長方向にも安定して全面N−領域となる結晶を引上げることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】最適引上げ条件で製造した場合の、シリコン単結晶軸方向における、結晶の径方向位置を横軸とし、引上げ速度Vを縦軸として表した諸欠陥分布図である。
【図2】図1の引上げ条件からある一条件が変動した場合の例を示す諸欠陥分布図である。
【図3】図1の引上げ条件から別のある一条件が変動した場合の例を示す諸欠陥分布図である。
【図4】図1の引上げ条件から他のある一条件が変動した場合の例を示す諸欠陥分布図である。
【図5】本発明で使用したCZ法による単結晶引上げ装置の概略説明図である。
【図6】従来の引上げ方法による単結晶軸方向における結晶の径方向位置を横軸とし、成長速度を縦軸とした場合の諸欠陥分布図である。
【図7】従来の引上げ方法における引上げ速度と結晶面内欠陥分布との関係を表した説明図である。
(A)高速引上げの場合、(B)中速引上げの場合、(C)低速引上げの場合。
【符号の説明】
1…成長単結晶棒、2…シリコン融液、3…湯面、4…固液界面、
5…種結晶、6…シードチャック、7…ワイヤ、8…環状固液界面断熱材、
30…単結晶引上げ炉、31…引上げ室、32…ルツボ、
33…ルツボ保持軸、34…ヒータ、35…断熱材、36…磁石。
S…湯面と固液界面断熱材下端との間隔、V…V−リッチ領域、
N…N−領域、OR…OSF領域、 I…I−リッチ領域(L/D領域)。

Claims (11)

  1. チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、少なくとも成長方向の一部分で、結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、引上げ炉の炉内構造以外の製造条件が変動して、結晶中の固液界面近傍の融点から1400℃の間の温度勾配G(温度変化量/結晶軸方向長さ)[℃/mm]の径方向分布が傾斜し、そのため結晶引上げ速度をV[mm/min]とした時のV/G[mm2 /℃・min]値がN−領域となる範囲から外れて、径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合に、結晶の固液界面の外周に設けた環状の固液界面断熱材の下端と融液面との間隔S[mm]を調節することにより引上げ炉の炉内構造を調節してGの径方向の傾斜を小さくし、V/G値を径方向の全面でN−領域となるような値にすることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 磁場を印加するチョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、磁場強度の変動に対して前記炉内構造を調節することを特徴とする請求項1記載したシリコン単結晶の製造方法。
  3. チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、結晶回転速度の変動に対して前記炉内構造を調節することを特徴とする請求項1または請求項2に記載したシリコン単結晶の製造方法。
  4. 炉内構造以外の製造条件の変動に伴いGの径方向分布が変化した時に、その製造条件で少なくとも2種類以上の炉内構造を用いて、引上げ速度を漸増させる引上げあるいは引上げ速度を漸減させる引上げを実施して、ある引上げ速度の時に、径方向の全面でN−領域となるような炉内構造を見出すことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載したシリコン単結晶の製造方法。
  5. 炉内構造以外の製造条件の変動に伴いGの径方向分布が変化した時に、その影響を正確に計算できるシュミレータを使用して解析し、径方向の全面でN−領域となる炉内構造を見出すことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載したシリコン単結晶の製造方法。
  6. 炉内構造以外の製造条件の変動に伴いGの径方向分布が変化した時に、その影響を正確に計算できない、あるいはそのような比較を行わないシュミレータを使用する場合、そのシュミレータを製造条件が変動する前に得られた実験結果に合わせ込むか、または解析結果に合うような条件を探しておいて、その条件で引き上げた結晶の引上げ速度Vを、解析から求まるGで割った値、V/G値を比較して、欠陥分布の各境界のV/G値を定量化しておいて、次に炉内構造以外の条件が変わり、欠陥分布が変化した場合に、先に求めたV/G値と、変化した条件で新たに引上げた結晶の引上げ速度及び欠陥分布を比較して、Gの値を逆算して求め、計算G値からその条件での実際G値への補正量を計算しておいて、次に様々な炉内構造の解析を行い、その結果にこの補正を行った上で、△Gが最小となる炉内構造を探すことにより、径方向の全面がN−領域となる炉内構造を見出すことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載したシリコン単結晶の製造方法。
  7. 引上げ速度を高速から低速に漸減する、あるいは引上げ速度を低速から高速に漸増し、OSFリングの内側ライン、OSFリングの外側ライン、V−リッチ領域側N−領域とI−リッチ領域側N−領域の境界ラインおよび転位ループが発生し始めるラインの中の少なくとも1つ以上をV/G値により定量化しておいて、炉内構造以外の製造条件が変わった場合には、同様な引上げを行い、欠陥分布が変化した場合に、先に求めたV/G値と引上げ速度を利用して結晶径方向に各境界位置でのGの値を逆算し、計算G値からその条件での実際G値への補正量を計算しておいて、次に様々な炉内構造の解析を行い、その結果にこの補正を行った上で、△Gが最小となる炉内構造を探すことにより、径方向の全面がN−領域となる炉内構造を見出すことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載したシリコン単結晶の製造方法。
  8. チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する場合において、引上げ炉内の温度分布と引上げ速度を調節して、少なくとも結晶の径方向に形成されるN−領域を結晶の軸方向に拡大する場合に、各引上げ炉固有の最小引上げ速度変動幅△V[mm/min]に対応した最大の△G以下となる炉内構造により結晶を引上げ、前記各引上げ炉固有の△V[mm/min]に対し、
    △G=―6.5△V+0.1785
    の関係で求まる△G[℃/mm]値以下になるように炉内構造を調節して結晶を引上げることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  9. チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、少なくとも成長方向の一部分で、結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、引上げ炉の炉内構造が変化して、温度勾配Gの径方向分布が傾斜し、そのためV/G値が、N−領域となる範囲から外れて、径方向の全面でN−領域とはならなくなった場合に、引上げ炉の炉内構造以外の製造条件である磁場強度および/または結晶回転速度を調節して、Gの径方向傾斜を小さくし、V/G値を径方向の全面でN−領域となるような値にすることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  10. チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造する場合において、少なくとも成長方向の一部分で、結晶の径方向の全面がN−領域となるようにして結晶を引上げる場合に、ルツボの回転速度を変更したため、N−領域を得るための結晶引上げ速度が変化した場合には、それに応じてN−領域を得るための結晶引上げ速度を変更することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  11. 前記ルツボの回転速度を変更して全面N−領域となる結晶を引上げる場合に、先ず、引上げ速度漸減実験を行って、N−領域となる結晶引上げ速度を実験で確認し、次いで、その確認した引上げ速度を基準にして、結晶を育成することを特徴とする請求項10に記載したシリコン単結晶の製造方法。
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