JP3634133B2 - 結晶欠陥の少ないシリコン単結晶の製造方法及びシリコン単結晶ウエーハ - Google Patents
結晶欠陥の少ないシリコン単結晶の製造方法及びシリコン単結晶ウエーハ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶欠陥が少ないシリコン単結晶の製造方法及びシリコン単結晶ウエーハに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年は、半導体回路の高集積化に伴う素子の微細化に伴い、その基板となるチョクラルスキー法(以下、CZ法と略記する)で作製されたシリコン単結晶に対する品質要求が高まってきている。特に、FPD、LSTD、COP等のグローンイン(Grown−in)欠陥と呼ばれる酸化膜耐圧特性やデバイスの特性を悪化させる単結晶成長起因の欠陥が存在し、その密度とサイズの低減が重要視されている。
【0003】
これらの欠陥を説明するに当たって、先ず、シリコン単結晶に取り込まれるベイカンシイ(Vacancy、以下Vと略記することがある)と呼ばれる空孔型の点欠陥と、インタースティシアル−シリコン(Interstitial−Si、以下Iと略記することがある)と呼ばれる格子間型シリコン点欠陥のそれぞれの取り込まれる濃度を決定する因子について、一般的に知られていることを説明する。
【0004】
シリコン単結晶において、V領域とは、Vacancy、つまりシリコン原子の不足から発生する凹部、穴のようなものが多い領域であり、I領域とは、シリコン原子が余分に存在することにより発生する転位や余分なシリコン原子の塊が多い領域のことであり、そしてV領域とI領域の間には、原子の不足や余分が無い(少ない)ニュートラル(Neutral、以下Nと略記することがある)領域が存在していることになる。そして、前記グローンイン欠陥(FPD、LSTD、COP等)というのは、あくまでもVやIが過飽和な状態の時に発生するものであり、多少の原子の偏りがあっても、飽和以下であれば、欠陥としては存在しないことが判ってきた。
【0005】
この両点欠陥の濃度は、CZ法における結晶の引上げ速度(成長速度)と結晶中の固液界面近傍の温度勾配Gとの関係から決まり、V領域とI領域との境界近辺にはOSF(酸化誘起積層欠陥、Oxidation Indused Stacking Fault)と呼ばれるリング状の欠陥の存在が確認されている。
【0006】
これら結晶成長起因の欠陥を分類すると、成長速度が0.6mm/min前後以上と比較的高速の場合には、空孔タイプの点欠陥が集合したボイド起因とされているFPD、LSTD、COP等のグローンイン欠陥が結晶径方向全域に高密度に存在し、これら欠陥が存在する領域はV−リッチ領域と呼ばれている(図4(a)参照)。 また、成長速度が0.6mm/min以下の場合は、成長速度の低下に伴い、上記したOSFリングが結晶の周辺から発生し、このリングの外側に転位ループ起因と考えられているL/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号、LSEPD、LFPD等)の欠陥が低密度に存在し、これら欠陥が存在する領域はI−リッチ領域と呼ばれている(図4(b)参照)。さらに、成長速度を0.4mm/min前後と低速にすると、OSFリングがウエーハの中心に凝集して消滅し、全面がI−リッチ領域となる(図4(c))。
【0007】
また、最近V−リッチ領域とI−リッチ領域の中間でOSFリングの外側に、N(ニュートラル)領域と呼ばれる、空孔起因のFPD、LSTD、COPも、転位ループ起因のLSEPD、LFPDも存在しない領域の存在が発見されている(特開平8−330316号参照)。この領域はOSFリングの外側にあり、そして、酸素析出熱処理を施し、X−ray観察等で析出のコントラストを確認した場合に、酸素析出がほとんどなく、かつ、LSEPD、LFPDが形成されるほどリッチではないI−Si側であると報告している(図3(a)参照)。そして、従来のCZ引上げ機ではウエーハの極一部にしか存在しないニュートラル(N)領域を、引上げ機の炉内温度分布を改良し、引上げ速度を調節して、F/G値(単結晶引上げ速度をF[mm/min]とし、シリコンの融点から1300℃の間の引上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値をG[℃/mm]とするとき、F/Gで表わされる比)をウエーハ全面で0.20〜0.22mm2 /℃・minに制御すれば、N領域をウエーハ全面に広げることが可能であると提案している(図3(b)参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この発明に開示されていた欠陥分布図は、本発明者らが実験・調査して求めたデータや、データを基にした作成した欠陥分布図(図1参照)とは大幅に異なることが判明した。
また、OSFリングの外側に分布するN領域には、酸素析出量が多い領域と少ない領域があることが判明した。従って、従来法のように、単にOSFリング外側のN領域でウエーハを製造すると、酸素析出量の多いN2 (V)領域と少ないN(I)領域がウエーハ内に混在し、ゲッタリング能力の相違からデバイス歩留りを低下させる原因となった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、V−リッチ領域およびI−リッチ領域のいずれも存在せず、熱酸化処理をした際にリング状に発生するOSFリングあるいはOSFリングの核が存在せず、かつ、FPDおよびL/Dがウエーハ全面内に存在しない、結晶全面に亙って極低欠陥密度であると共に、酸素析出によるゲッタリング能力のあるCZ法によるシリコン単結晶ウエーハを、高生産性を維持しながら得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために為されたもので、本発明の請求項1に記載した発明は、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を育成する際に、引上げ速度をF[mm/min]とし、シリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値をG[℃/mm]で表した時、結晶中心から結晶周辺までの距離D[mm]を横軸とし、F/G[mm2 /℃・min]の値を縦軸として欠陥分布を示した欠陥分布図(図1参照)において、V−リッチ領域とN1 (V)領域の境界線、ならびにN1 (V)領域とOSFリング領域の境界線で囲繞されたN1 (V)領域内で結晶を引上げることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
さらに具体的な条件としては、前記欠陥分布図において、前記F/Gの値を結晶中心で、0.130〜0.142mm2 /℃・minとして引上げることとした(請求項2)。
【0011】
このように、N1 (V)領域内での結晶の引上げは、図1の欠陥分布図に示したように領域幅が狭く、しかも結晶中心から外周にかけて急傾斜しているので結晶全面に亙って同じ領域を確保するように引上げ条件を制御するのは難しいが、OSFリング領域の外側のN領域で引上げるよりも引上げ速度を速くすることができ、生産性が向上する。品質的には図2(b)に示したようにN1 (V)領域のみをウエーハ全面に拡大した極低欠陥密度のシリコン単結晶ウエーハを得ることができる。
【0012】
そして、本発明の請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2の製造方法により製造されたシリコン単結晶から作製された、N 1 (V)領域のみから成ることを特徴とするシリコン単結晶ウエーハである。
【0013】
このようにして作製されたシリコン単結晶ウエーハは、チョクラルスキー法により育成されたシリコン単結晶ウエーハにおいて、該ウエーハ全面に熱酸化処理をした際にリング状に発生するOSFリングあるいはOSFリングの核が存在せず、かつ、FPD及びL/D(LSEPD、LFPD)もウエーハ全面内に存在しないというウエーハで、いわゆるウエーハ全面にV−リッチ領域とI−リッチ領域は存在せず、中性(ニュートラル)であると共に、析出酸素濃度(Oi)が高く、ゲッタリング能力が大きくて均一なN1 (V)領域のみから成る、ほぼ完全無欠陥なシリコン単結晶ウエーハであり、デバイス歩留りを著しく向上させることができる。
【0014】
以下、本発明につき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。説明に先立ち各用語につき予め解説しておく。
1)FPD(Flow Pattern Defect)とは、成長後のシリコン単結晶棒からウェーハを切り出し、表面の歪み層を弗酸と硝酸の混合液でエッチングして取り除いた後、K2 Cr2 O7 と弗酸と水の混合液で表面をエッチング(Seccoエッチング)することによりピットおよびさざ波模様が生じる。このさざ波模様をFPDと称し、ウェーハ面内のFPD密度が高いほど酸化膜耐圧の不良が増える(特開平4−192345号公報参照)。
【0015】
2)SEPD(Secco Etch Pit Defect)とは、FPDと同一のSeccoエッチングを施した時に、流れ模様(flow pattern)を伴うものをFPDと呼び、流れ模様を伴わないものをSEPDと呼ぶ。この中で10μm以上の大きいSEPD(LSEPD)は転位クラスターに起因すると考えられ、デバイスに転位クラスターが存在する場合、この転位を通じて電流がリークし、P−Nジャンクションとしての機能を果たさなくなる。
【0016】
3)LSTD(Laser Scattering Tomography Defect)とは、成長後のシリコン単結晶棒からウエーハを切り出し、表面の歪み層を弗酸と硝酸の混合液でエッチングして取り除いた後、ウエーハを劈開する。この劈開面より赤外光を入射し、ウエーハ表面から出た光を検出することでウエーハ内に存在する欠陥による散乱光を検出することができる。ここで観察される散乱体については学会等ですでに報告があり、酸素析出物とみなされている(J.J.A.P. Vol.32,P3679,1993参照)。また、最近の研究では、八面体のボイド(穴)であるという結果も報告されている。
【0017】
4)COP(Crystal Originated Particle)とは、ウエーハの中心部の酸化膜耐圧を劣化させる原因となる欠陥で、Secco エッチではFPDになる欠陥が、アンモニア過酸化水素水洗浄(NH4 OH:H2 O2 :H2 O=1:1:10の混合液による洗浄)では選択エッチング液として働き、COPになる。このピットの直径は1μm以下で光散乱法で調べる。
【0018】
5)L/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号)には、LSEPD、LFPD等があり、転位ループ起因と考えられている欠陥である。LSEPDは、上記したようにSEPDの中でも10μm以上の大きいものをいう。また、LFPDは、上記したFPDの中でも10μm以上の大きいものをいい、こちらも転位ループ起因と考えられている。
【0019】
本発明者らは、先に特願平9−199415号で提案したように、CZ法によるシリコン単結晶成長に関し、V領域とI領域の境界近辺について、詳細に調査したところ、この境界近辺の極く狭い領域にFPD、LSTD、COPの数が著しく少なく、LSEPDも存在しないニュートラルな領域があることを発見した。
【0020】
そこで、このニュートラルな領域をウエーハ全面に広げることができれば、点欠陥を大幅に減らせると発想した。すなわち成長(引上げ)速度と温度勾配の関係の中で、結晶の水平方向、すなわちウエーハ面内では、引上げ速度はほぼ一定であるから、面内の点欠陥の濃度分布を決定する主な因子は温度勾配である。つまり、ウエーハ面内で、軸方向の温度勾配に差があることが問題で、この差を減らすことが出来れば、ウエーハ面内の点欠陥の濃度差も減らせることを見出し、結晶中心部の温度勾配Gcと結晶周辺部分の温度勾配Geとの差を△G=(Ge−Gc)≦5℃/cmとなるように炉内温度を制御して引上げ速度を調節すれば、ウエーハ全面がN領域からなる欠陥のないウエーハが得られるようになった。
【0021】
本発明では、上記のような温度勾配の差△Gが小さいCZ法による結晶引上げ装置を使用し、引上げ速度を変えて結晶面内を調査した結果、新たに次のような二つの知見を得た。
本発明者らが実験・調査した結果、V−リッチ領域とI−リッチ領域の間に存在するN領域は、従来はOSFリング(核)の外側[以下、N(I)領域という。図2(a)参照]のみと考えられていたが、OSFリングの内側にもN領域が存在することを確認した[以下、N1 (V)領域という。図2(a)参照]。すなわち、上記特願平9−199415号の場合、OSFリングは、V−リッチ領域とN領域の境界領域となっていた(図3(a)参照)が、この二つは必ずしも一致しないことがわかった。
【0022】
もう一つの発見は、OSFリング領域の外側のN領域に酸素析出の多い領域と少ない領域が存在し、OSFリング領域に隣接する内側の方が酸素析出が多いことが判ってきた。すなわち、OSFリングの外側に隣接するIがリッチではないV側のN領域[以下、N2 (V)領域という]が存在することが判ってきた[図1、図2(a)参照]。
【0023】
従って、上記特開平8−330316号公報に開示された方法のように、単にOSFリング外側のN領域のみでウエーハを作製すると、ウエーハ全面がN領域であることは確かではあるが、ウエーハの内側と外側では酸素析出に差が生じ、面内でゲッタリング能力が異なるウエーハができてしまうことになる。ちなみに、OSFリング領域に隣接する内側のN2 (V)領域は、酸素析出が多く十分にゲッタリング能力があり、I−リッチ領域側のN(I)領域は酸素析出が少なく、ゲッタリング能力が低い。
【0024】
そこで、図1の欠陥分布図に示したように、全面N領域でかつOSFリング領域の内側に隣接するN1 (V)領域だけのウエーハを作製するのが理想的であり、ほぼ完全無欠陥のシリコン単結晶を得ることができる[図2(a)、(b)参照]。しかし、その領域は非常に狭く、かつ、結晶の径方向に急上昇している領域なので、引上げ速度Fや温度勾配Gを調整してF/Gの値をこの領域に収まるように制御するにはかなりの困難を伴うが、結晶の引上げは可能であり、OSFリング領域の外側のN領域で引上げるよりも引上げ速度を速くすることができるので生産性が向上する。
【0025】
この調査における引上げ装置の炉内温度を、総合伝熱解析ソフトFEMAG(F.Dupret,P.Nicodeme,Y.Ryckmans,P.Wouters,and M.J.Crochet,Int.J.Heat MassTransfer,33,1849(1990))を使用して鋭意解析を行った。その結果、引上げ速度をF[mm/min]とし、シリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値をG[℃/mm]で表した時、N1 (V)領域内の引上げは、F/Gの値を結晶中心で0.130〜0.142mm2 /℃・minの範囲内となるように引上げ速度Fと温度勾配平均値Gとを制御して結晶を引上げれば、結晶欠陥のないシリコン単結晶が得られる。
【0026】
図1は、結晶の径(直径6インチ)方向位置を横軸とし、F/G値を縦軸とした場合の諸欠陥分布を表している。図1から明らかなように、V−リッチ領域/N1 (V)領域の境界は、結晶中心位置と中心から約50mmまでの位置との間で0.142mm2 /℃・minから緩やかに上昇し、この位置から外周にかけては急激にF/G値を増大した線上にある。OSFリング領域の中心は、約0.125mm2 /℃・minで、結晶外周にかけては、N1 (V)領域/OSFリング領域の境界線もOSFリング領域/N2 (V)領域の境界線もほぼ平行して緩やかに上昇し、結晶中心位置から約65mmから外周にかけては急激にF/G値を増大した線上にある。
また、N(I)領域/I−リッチ領域との境界線は、結晶中心位置と中心から約60mmまでの位置との間で約0.112〜0.117mm2 /℃・minとなり、その後、結晶外周に向けて急激に落ち込んでいる。
従って、ウエーハ内のV−リッチ領域とOSFリング領域の外側の領域を除いたN1 (V)領域を最大限に利用するには、結晶中心位置でF/G値が0.130〜0.142mm2 /℃・minとなるようにFとGを制御すればよい。
【0027】
これをウエーハの面で説明すると、従来は、図3(a)に示したように、通常の引上げ速度と結晶引上げ装置におけるOSFリングの外側に存在するN領域を結晶全面に拡大すべく[図3(b)参照]、特別な結晶引上げ装置を用いて引上げ速度と△Gを制御し、無欠陥結晶を製造しようとしていたが、引上げ速度、温度勾配等製造条件の制御幅が極めて狭く、制御が困難で生産性に難点があり、実用的でなかった。その上、OSFリングの外側に存在するN領域には、OSFリング領域に隣接する内側に酸素析出の多い領域(N2 (V)領域)があり、その外側に酸素析出の少ない領域(N(I)領域)が存在するので、単にOSFリング外側のN領域のみでウエーハを作製すると、ウエーハ全面がN領域であることは確かではあるが、ウエーハの内側と外側では酸素析出に差が生じ、面内でゲッタリング能力が異なるウエーハができてしまうことになる。
【0028】
本発明では、今回発見したOSFリングの内側のN1 (V)領域だけに限定した場合[図2(a)、(b)参照]、狭い領域内で引上げることになり、引上げ条件の制御は容易ではないが結晶の引上げは可能であり、前述したようにゲッタリング能力をもった極低欠陥密度で全面N領域の極めて高品質のウエーハを作製することができる。
この場合、上記のように、本発明では制御範囲が狭いため、引上げ単結晶棒の周辺部でOSFが発生する可能性がある。しかし、引上げ単結晶棒の周辺部のOSFは、その後、単結晶棒を円筒研削、スライスしてウエーハに加工する際になくなるので問題はない。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明で使用するCZ法による単結晶引上げ装置の構成例を図5により説明する。図5に示すように、この単結晶引上げ装置30は、引上げ室31と、引上げ室31中に設けられたルツボ32と、ルツボ32の周囲に配置されたヒータ34と、ルツボ32を回転させるルツボ保持軸33及びその回転機構(図示せず)と、シリコンの種結晶5を保持するシードチャック6と、シードチャック6を引上げるケーブル7と、ケーブル7を回転又は巻き取る巻取機構(図示せず)を備えて構成されている。ルツボ32は、その内側のシリコン融液(湯)2を収容する側には石英ルツボが設けられ、その外側には黒鉛ルツボが設けられている。また、ヒータ34の外側周囲には断熱材35が配置されている。
【0030】
また、本発明の製造方法に関わる製造条件を設定するために、結晶の固液界面の外周に環状の固液界面断熱材8を設け、その上に上部囲繞断熱材9が配置されている。この固液界面断熱材8は、その下端とシリコン融液2の湯面との間に3〜5cmの隙間10を設けて設置されている。上部囲繞断熱材9は条件によっては使用しないこともある。さらに、冷却ガスを吹き付けたり、輻射熱を遮って単結晶を冷却する筒状の冷却装置36を設けている。
別に、最近では引上げ室31の水平方向の外側に、図示しない磁石を設置し、シリコン融液2に水平方向あるいは垂直方向等の磁場を印加することによって、融液の対流を抑制し、単結晶の安定成長をはかる、いわゆるMCZ法が用いられることも多い。
【0031】
次に、上記の単結晶引上げ装置30による単結晶育成方法について説明する。まず、ルツボ32内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420°C)以上に加熱して融解する。次に、ケーブル7を巻き出すことにより融液2の表面略中心部に種結晶5の先端を接触又は浸漬させる。その後、ルツボ保持軸33を適宜の方向に回転させるとともに、ケーブル7を回転させながら巻き取り種結晶5を引上げることにより、単結晶育成が開始される。以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状の単結晶棒1を得ることができる。
【0032】
この場合、本発明では、本発明の目的を達成するために特に重要であるのは、図5に示したように、引上げ室31の湯面上の単結晶棒1中の液状部分の外周空間において、湯面近傍の結晶の温度が1420℃から1400℃までの温度域に環状の固液界面断熱材8を設けたことと、その上に上部囲繞断熱材9を配置したことである。さらに、必要に応じてこの断熱材の上部に結晶を冷却する装置、例えば冷却装置36を設けて、これに上部より冷却ガスを吹きつけて結晶を冷却できるものとし、筒下部に輻射熱反射板を取り付けた構造としてもよい。
【0033】
このように液面の直上の位置に所定の隙間を設けて断熱材を配置し、さらにこの断熱材の上部に結晶を冷却する装置を設けた構造とすることによって、結晶成長界面近傍では輻射熱により保温効果が得られ、結晶の上部ではヒータ等からの輻射熱をカットできるので、本発明の製造条件を満足させることができる。
この結晶の冷却装置としては、前記筒状の冷却装置36とは別に、結晶の周囲を囲繞する空冷ダクトや水冷蛇管等を設けて所望の温度勾配を確保するようにしても良い。
【0034】
本発明で使用した単結晶引上げ装置と比較のために従来の装置を図6に示した。 基本的な構造については、本発明で使用した引上げ装置と同じであるが、固液界面断熱材8、上部囲繞断熱材9や冷却装置36は装備していない。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図5に示した引上げ装置30で、20インチ石英ルツボに原料多結晶シリコンを60Kgチャージし、直径6インチ、方位<100>のシリコン単結晶棒を平均引上げ速度を0.88〜0.50mm/minに変化させて引上げた(単結晶棒の直胴長さ約85cm)。
シリコン融液の湯温は約1420℃、湯面から環状の固液界面断熱材の下端までは、4cmの空間とし、その上に10cm高さの環状固液界面断熱材を配置し、湯面から引上げ室天井までの高さをルツボ保持軸を調整して30cmに設定し、上部囲繞断熱材を配備した。
そして、結晶中心部でのF/G値を0.22〜0.10mm2 ・℃/minに変化させて引上げた。
【0036】
ここで得られた単結晶棒から、ウエーハを切り出し、鏡面加工を施してシリコン単結晶の鏡面ウエーハを作製し、グローンイン欠陥の測定を行った。また、熱酸化処理を施してOSFリング発生の有無を確認した。
その結果、結晶中心でF/G値が0.130〜0.142mm2 /℃・minの範囲内において、N1 (V)領域を最大限拡大した極低欠陥ウエーハを得た。なお、このウエーハの酸化膜耐圧特性は、C−モード良品率100%となった。
なお、C−モード測定条件は、次の通りである。
1)酸化膜厚:25nm、 2)測定電極:りんドープ・ポリシリコン、
3)電極面積:8mm2 、 4)判定電流:1mA/cm2 、
5)良品判定:絶縁破壊電界が8MV/cm以上のものを良品と判定した。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0038】
例えば、上記実施形態においては、直径6インチのシリコン単結晶を育成する場合につき例を挙げて説明したが、本発明はこれには限定されず、引上げ速度をF[mm/min]とし、シリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値をG[℃/mm]で表した時、前記欠陥分布図においてOSFリング領域の内側に存在するN1 (V)領域内で結晶を引上げるようにすれば、直径にかかわりなく、例えば直径8〜16インチあるいはそれ以上のシリコン単結晶にも適用できる。
また、本発明は、シリコン融液に水平磁場、縦磁場、カスプ磁場等を印加するいわゆるMCZ法にも適用できることは言うまでもない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、全面N1 (V)領域で、V−リッチ領域およびI−リッチ領域のいずれも存在せず、熱酸化処理をした際にリング状に発生するOSFリングあるいはOSFリングの核が存在せず、かつ、FPDおよびL/Dがウエーハ全面内に存在しない、結晶全面に亙って極低欠陥密度であると共に、酸素析出によるゲッタリング能力のあるCZ法によるシリコン単結晶ウエーハを、高生産性を維持しながら製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で発見したシリコン単結晶ウエーハ面内における、結晶の径方向位置を横軸とし、F/G値を縦軸とした場合の諸欠陥分布図である。
【図2】本発明で発見した結晶面内諸欠陥分布を表した説明図である。(a)通常の引上げ条件で引上げた場合、(b)本発明の特定引上げ条件で引上げた場合。
【図3】従来の引上げ方法における結晶面内諸欠陥分布を表した説明図である。(a)通常の引上げ条件で引上げた場合、(b)引上げ速度と結晶内温度勾配を精密制御して引上げた場合。
【図4】従来の引上げ方法における引上げ速度と結晶面内欠陥分布との関係を表した説明図である。(a)高速引上げの場合、(b)中速引上げの場合、(c)低速引上げの場合。
【図5】本発明で使用したCZ法による単結晶引上げ装置の概略説明図である。
【図6】CZ法による従来の単結晶引上げ装置の概略説明図である。
【符号の説明】
1…成長単結晶棒、
2…シリコン融液、
3…湯面、
4…固液界面、
5…種結晶、
6…シードチャック、
7…ケーブル、
8…固液界面断熱材、
9…上部囲繞断熱材、
10…湯面と固液界面断熱材下端との隙間、
30…単結晶引上げ装置、
31…引上げ室、
32…ルツボ、
33…ルツボ保持軸、
34…ヒータ、
35…断熱材、
36…冷却装置。
V …V−リッチ領域、
N …N−領域、
N1 (V)…N1 (V)領域、
N2 (V)…N2 (V)領域、
N(I) …N(I)領域、
I …I−リッチ領域、
OR…OSFリング。
Claims (4)
- チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を育成する際に、引上げ速度をF[mm/min]とし、シリコンの融点から1400℃の間の引上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値をG[℃/mm]で表した時、結晶中心から結晶周辺までの距離D[mm]を横軸とし、F/G[mm2 /℃・min]の値を縦軸として欠陥分布を示した欠陥分布図において、V−リッチ領域とN1 (V)領域の境界線、ならびにN1 (V)領域とOSFリング領域の境界線で囲繞されたN1 (V)領域内で結晶を引上げることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
- 前記F/Gの値を結晶中心で、0.130〜0.142mm2 /℃・minとして引上げることを特徴とする請求項1に記載したシリコン単結晶の製造方法。
- 請求項1または請求項2の製造方法により製造されたシリコン単結晶から作製された、N 1 (V)領域のみから成ることを特徴とするシリコン単結晶ウエーハ。
- CZ法によるシリコン単結晶ウエーハであって、N 1 (V)領域のみから成ることを特徴とするシリコン単結晶ウエーハ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36414397A JP3634133B2 (ja) | 1997-12-17 | 1997-12-17 | 結晶欠陥の少ないシリコン単結晶の製造方法及びシリコン単結晶ウエーハ |
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