図1aは、未酸化アルギネートへのクリック試薬のコンジュゲーションを示す概略図である。
図1bは、さらなる共有結合クリックの架橋に悪影響をもたらす不安定な(加水分解可能な)イミン結合の形成を例示している、酸化アルギネートへのクリック試薬のコンジュゲーションを示す概略図である。
図1cは、クリックコンジュゲーションに利用可能である、生成された追加のカルボン酸基を例示している、高酸化アルギネートへのクリック試薬のコンジュゲーションを示す概略図である。
図2aは、酸化アルギネートへの曝露の関数として、ELISAにより決定されたVEGF生体活性の損失を示す棒グラフである。
図2bは、酸化アルギネート中のアルデヒドの存在により、クリックコンジュゲートにおける明らかな変化を例示している、インキュベーション後にTzおよびNbにコンジュゲートした酸化アルギネートを含有するバイアルの写真である。
図3aは、反応性アルデヒドを含有する酸化アルギネートを生成するアルギネートの酸化、および反応性アルデヒドを排除するための酸化アルギネートのその後の選択的還元または酸化を示す化学的スキームである。
図3bは、アンモニアボランまたは水素化ホウ素ナトリウムでさらに還元した、または亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化した、酸化アルギネート中に残留する酸化の%を示す棒グラフである。
図4aは、酸化または還元アルギネートへの曝露の関数として、VEGF生体活性の損失を例示している、EBM中での5日間のインキュベーション後、ELISAで測定したVEGF生体活性における%変化を示す棒グラフである。
図4bは、酸化アルギネートに曝露された関数として、VEGF生体活性の損失を例示している、1%BSA溶液中での5日間のインキュベーション後、ELISAで測定したVEGF生体活性における%変化を示す棒グラフである。
図5aは、酸化アルギネート中のアルデヒドの存在ならびにアルゴキシノールおよびアルゴキサラートを含有するコンジュゲートにおける変化の欠如による、クリックコンジュゲートにおける明らかな変化を例示している、TzおよびNbにコンジュゲートした、0日目でのHighOxアルギネート(上側パネル)およびTzおよびNbにコンジュゲートした、0日目でのHighOx Scアルギネート(下側パネル)を含有するバイアルの2つの写真のパネルである。
図5bは、追加のカルボン酸部分を介した、アルゴキサラート含有アルギネートのクリックコンジュゲーションに対する追加的可能性を例示している、NMRにより測定されたHighOxおよびHighOx SCアルギネート中に存在するTzの相対量を示す棒グラフである。
図6aは、28日目における、20~50%酸化を有するTzコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質のUV-Visスペクトル(上側パネル)、および14日目における、20%および30%コンジュゲーションを含有する、亜塩素酸ナトリウムで処理した、TzコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質のUV-Visスペクトルである。図6aは、クリック部分と、酸化アルギネート物質中に存在するアルギネートアルデヒドとの反応により引き起こされた、Tz UV-Visスペクトルにおける変化を例示している。
図6bは、アンモニアボランで処理したTzコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質および亜塩素酸ナトリウムで処理したHighOxアルギネート物質を含有するバイアルの2つの写真のパネルである。図6bは、クリック部分と、酸化アルギネート物質中に存在するアルギネートアルデヒドとの反応により引き起こされた、Tz溶液の色の変化を例示している。
図6cは、28日目における、20~50%酸化を有するNbコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質のUV-Visスペクトル(上側パネル)、および14日目における、20%~50%コンジュゲーションを含有する、亜塩素酸ナトリウムで処理した、NbコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質のUV-Visスペクトルである。図6cは、クリック部分と、酸化アルギネート物質中に存在するアルギネートアルデヒドとの反応により引き起こされた、Nb UV-Visスペクトルにおける変化を例示している。
図6dは、28日目における、20~50%酸化を有する、NbコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質(上側パネル)および14日目における、20%~50%コンジュゲーションを含有する、亜塩素酸ナトリウムで処理したNbコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質(下側パネル)を含有するバイアルの2つの写真のパネルである。図6dは、クリック部分と、酸化アルギネート物質中に存在するアルギネート(ainate)アルデヒドとの反応により引き起こされた、Nb溶液の色の変化を例示している。
図6eは、Nbピークの幅の広がり、ならびにアルデヒドピークの存在を示す、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化したNbコンジュゲートしたアルギネート物質のNMRスペクトルである。
図6fは、Nbピークの幅の広がり、およびアルデヒドピークの存在を示す、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化したTzコンジュゲートしたアルギネート物質のNMRスペクトルである。
図6gは、Nbピークの幅が広くなることがなく、アルデヒドピークが存在しないことを示す、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、次いで亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化したNbコンジュゲートしたアルギネート物質のNMRスペクトルである。
図6hは、Nbピークの幅が広くなることがなく、アルデヒドピークが存在しないことを示す、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、次いで亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化したTzコンジュゲートしたアルギネート物質のNMRスペクトルである。
図6iは、亜塩素酸ナトリウムで処理後の、カルボン酸ピークの生成を実証している、アルギネート物質の代表的なFTIRスペクトルである。
図6jは、アルゴキシノールおよびアルゴキサラートを含有するクリックコンジュゲートしたアルギネートに対して色の変化がないことを示している、15日目における、TzコンジュゲートおよびNbコンジュゲートしたアルギネート物質に対するUV-Visスペクトルである。
図6kは、アルデヒドに伴うピーク(約≧5.1ppm)が存在しないことを示している、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化したアルギネート物質に対するNMRスペクトルである。
図6kは、アルデヒドに伴うピーク(約≧5.1ppm)が存在しないことを示している、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化したアルギネート物質に対するNMRスペクトルである。
図7aは、時間の関数としてアルギネートポリマー骨格の加水分解を示している、20%酸化(左のパネル)および50%酸化(右のパネル)を有する、TzコンジュゲートおよびNbコンジュゲートしたMVGアルギネート(約250kDaで開始するMW)の分解を示す2つのグラフのパネルである。
図7bは、時間の関数としてアルギネートポリマー骨格の加水分解を示している、未処理のアルギネート(上側の左のパネル)、アンモニアボランで還元処理したアルギネート(上側の右のパネル)、水素化ホウ素ナトリウムで還元処理したアルギネート(下側の左のパネル)、およびアンモニアボランで還元処理したアルギネート(下側の右のパネル)に対する、37℃での、0%~50%酸化を含有するVLVG(30kDaで開始するMW)アルギネートの分解を示す4つのグラフのパネルである。
図7cは、20%酸化を有するMVGおよびVLVG物質の50%w/v溶液および比較用の50%w/vで未酸化VLVGを含有する、バイアルの写真である。親アルギネートとは異なり、アルゴキシノールおよびアルゴキサラート含有アルギネート物質は、増加した溶解度を示している。
図8は、Tzコンジュゲートしたアルギネート物質対コンジュゲーション同等物の515nmでのUV-Vis吸収を示すグラフである。
図9は、インキュベーションの2日後の、0~50%酸化を含有する酸化アルギネートの存在下での、相対的細胞生存度を示す棒グラフである。
図10は、分子量250kDaを有する未酸化アルギネート(MVG、左のバー);分子量30kDaを有する未酸化アルギネート(VLVG、中央のバー)に対する;ならびに20%に酸化し、次いで、亜塩素酸ナトリウムを使用してさらに酸化し、クリックとコンジュゲートしたVLVG物質(TzまたはNb、右のバー)に対する溶解度(%w/v)の上限を示す棒グラフである。図10は、未酸化のアルギネートとは対照的に、酸化したVLVG物質が少なくとも50%w/vまで溶解することを例示している。
図11aは、TzおよびNbを使用して、MVGおよびVLVG物質に対して達成したコンジュゲーションの可能性を示す棒グラフである。
図11bは、モル当量のTzの関数としての、VLVG物質の515nmでのUV-Vis吸光度を示すグラフである。
図12aは、異なる置換度および一定のアルギネート濃度(%w/v)でのVLVG物質に対する貯蔵弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。
図12bは、一定のアルギネート濃度(%w/v)での異なる置換度における、VLVG物質に対する貯蔵弾性率(G’)の最大値(図13aから)を示す棒グラフである。
図12cは、図13bに示されている最大貯蔵弾性率(G’)から誘導される、一定のアルギネート濃度(%w/v)での異なる置換度でのVLVG物質に対するメッシュサイズの値を示す棒グラフである。
図12dは、10%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元し、次いで250モル当量のNbおよびTzを、還元アルギネート濃度、5%w/v、10%w/vまたは15%w/vで使用して、NbまたはTzとコンジュゲートしたMVG物質に対する、貯蔵弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。
図12eは、20%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元し、次いで250モル当量のNbおよびTzを、還元アルギネート濃度、5%w/v、10%w/v、15%w/vまたは20%w/vで使用して、NbまたはTzとコンジュゲートしたMVG物質に対する、貯蔵弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。
図12fは、20%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元し、次いで1000モル当量のNbおよびTzを、還元アルギネート濃度、5%w/v、10%w/v、15%w/vまたは20%w/vで使用して、NbまたはTzとコンジュゲートしたLF20/40物質に対する、貯蔵弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。
図13aは、異なるクリックコンジュゲーション度および一定のアルギネート濃度(%w/v)で、クリックコンジュゲートしたVLVG物質を使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリンの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図13bは、ヒドロゲル形成(2500当量の5%VLVG)および線形フィット中、2500モル当量のNbまたはTzおよび5%濃度のAlg-NおよびAlg-Tに対応する、図14aにおける非水平領域曲線を示すグラフである。
図13cは、異なるクリックコンジュゲーション度および一定のアルギネート濃度(%w/v)で、クリックコンジュゲートしたVLVG物質を使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたBSAの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図13dは、ヒドロゲル形成(2500当量の5%VLVG)および線形フィット中、2500モル当量のNbまたはTzおよび5%濃度のAlg-NおよびAlg-Tに対応する、図14cにおける非水平領域曲線を示すグラフである。
図13eは、異なるクリックコンジュゲーション度および一定のアルギネート濃度(%w/v)で、クリックコンジュゲートしたVLVG物質を使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図13fは、ヒドロゲル形成(2500当量の5%VLVG)および線形フィット中、2500モル当量のNbまたはTzおよび5%濃度のAlg-NおよびAlg-Tに対応する、図14eにおける非水平領域曲線を示すグラフである。
図13gは、最初の1~3日間にわたり完全ではないとしても、有意なバースト放出を示している、Ca2+で媒介された架橋により生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリン、BSAおよびIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14aは、5%または10%に酸化させ、次いで、ABで還元処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリンの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14bは、5%または10%に酸化させ、次いで、SCで酸化処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリンの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14cは、5%または10%に酸化させ、次いで、ABで還元処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14dは、5%または10%に酸化させ、次いで、SCで酸化処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図15aは、クリック部分の改変を示す、有意な色の変化を示している、2.3%グルタルアルデヒドの存在下、0分後、40分後、21.5時間後および67.5時間後に採取された、Nb(左バイアル)およびTz(右のバイアル)へコンジュゲートした、4%MVG物質を含有するガラスバイアルの一連の写真である。
図15bは、クリック部分の改変を示す有意な色の変化を示している、0分後、40分後、20時間後および69時間後に採取した、対照としての水(左バイアル)またはDBCO(中央バイアル)もしくはアジド(右のバイアル)へコンジュゲートした、2%MVG物質を含有するガラスバイアルの一連の写真である。
図16aはPBS++(Ca2+およびMg2+イオンを含有するPBS緩衝液)中での、50日間にわたるCa2+架橋アルギネートからの、および非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートからの中性リポソーム(DOPC:コレステロール)の累積放出(%負荷)を示すグラフである。
図16bは、PBS++(Ca2+およびMg2+イオンを含有するPBS緩衝液)中のCa2+架橋アルギネートヒドロゲル、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルおよびクリックゼラチンヒドロゲルからの中性リポソーム(DOPC:コレステロール)の累積放出(%負荷)を示すグラフである。
図16cは、28日間の期間にわたる、Ca2+架橋アルギネートからの、および5%w/vのアルギネート濃度で調製した非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからの中性リポソーム(DOPC:コレステロール)の累積放出(%負荷)を示すグラフである。リポソーム放出プロファイルは、in vitroで、PBS--(Ca2+またはMg2+イオンを含有しないPBS緩衝液)中で測定したものであり、リポソームはカルシウム架橋したゲルから拡散することができる一方で、クリック架橋したゲルは、封入されたリポソームを保持することができる(拡散は限定される)ことを実証している。
図16dは、8日間の期間にわたる、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルおよびクリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルからの中性リポソーム(DOPC:コレステロール)の累積放出(%負荷)を示すグラフである。ゲルは、回収率および質量平衡を示すために、8日目にアルギネートリアーゼまたはコラゲナーゼでそれぞれ消化した。
図17aは、図17dに示されているゲルの中に封入されたリポソームストック物質の動的光散乱(DLS)トレースである。
図17bは、ストック溶液中に存在するリポソームの平均直径からの最小差異を示している、図17dに示されているような、アルギネートリアーゼにより8日後消化された非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルから放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17cは、ストック溶液中存在するリポソームの平均直径からの最小差異を示している、PBS--緩衝液中5%w/vのアルギネート濃度で調製した非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルから28日後放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17dは、8日後コラゲナーゼで消化されたクリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルから放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17eは、放出されたリポソームが、リポソーム標準より多分散系であり、より大きな直径を有することを示している、PBS--緩衝液中で調製したカルシウム架橋アルギネートから3日後放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17fは、放出されたリポソームが、リポソーム標準より多分散系であり、より大きな直径を有することを示している、PBS--緩衝液中5%w/vのアルギネート濃度で調製したカルシウム架橋ヒドロゲルから28日後放出された、リポソームのDLSトレースである。
図18は、0%、5%および10%の全酸化まで酸化させ、クリックコンジュゲーション前にABで還元処理したクリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからの、PBS中での75日にわたるリポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。
図19aは、リポソームおよび上清を封入するアルギネートヒドロゲルを含有する、0日目のチューブの写真である。アルギネートヒドロゲルを調製するために、アルギネートを20%まで酸化させ、次いで続いてアンモニアボランで還元した。ゲルは、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5;左側の2つのバイアル)またはナトリウムボラン(pH9;右側の2つのバイアル)のいずれかの中で、37℃でインキュベートした。
図19bは、リポソームおよび上清を封入するアルギネートヒドロゲルを含有する、1日目のチューブの写真である。アルギネートヒドロゲルを調製するために、アルギネートを20%まで酸化させ、次いで続いてアンモニアボランで還元した。ゲルは、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5;左側の2つのバイアル)またはナトリウムボラン(pH9;右側の2つのバイアル)のいずれかの中で、37℃でインキュベートした。
図19cは、リポソームおよび上清を封入するアルギネートヒドロゲルを含有する、7日目のチューブの写真である。アルギネートヒドロゲルを調製するために、アルギネートを20%まで酸化させ、次いで続いてアンモニアボランで還元した。ゲルは、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5;左側の2つのバイアル)またはナトリウムボラン(pH9;右側の2つのバイアル)のいずれかの中で、37℃でインキュベートした。写真は、pH9の試料は7日後に分解したのに対して、pH5の試料は依然としていくらかインタクトであったことを示している。
図19dは、リポソームおよび上清を封入するアルギネートヒドロゲルの、14日目のチューブの写真である。アルギネートヒドロゲルを調製するために、アルギネートを20%まで酸化させ、次いで続いてアンモニアボランで還元した。ゲルは、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5;左側の2つのバイアル)またはナトリウムボラン(pH9;右側の2つのバイアル)のいずれかの中で、37℃でインキュベートした。画像は、試料が、pH5およびpH9の両方において14日後に分解したことを示している。
図19eは、アルギネートを20%まで酸化させ、続いてこれをアンモニアボランで還元することによって生成されたアルギネートヒドロゲルからの、中性リポソーム(DOPC:コレステロール)の分解ベースの放出を示すグラフである。試料は、腫瘍周囲の微細環境を模倣するためにMES緩衝液pH6.5中で放出された。
図20aは、押出し前のDOTAP:Hydro Soy PCリポソームのDLSトレースである。
図20bは、押出し後のDOTAP:Hydro Soy PCリポソームのDLSトレースである。
図20cは、Ca2+架橋アルギネートからの、および非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからの17日間にわたるカチオン性リポソーム(図20a)の累積放出(%負荷)を示すグラフである。図21bは、リポソームはカルシウム架橋したゲルから拡散することができる一方で、クリック架橋したゲルは、封入されたリポソームを保持する(拡散が限定される)ことができることを示している。
図21aは、様々なアルギネート組成物を使用して調製したクリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからのIGF-1の放出を示すグラフである。
図21bは、様々なアルギネート組成物を使用して調製したクリックアルギネートヒドロゲルからのVEGF165の放出を示すグラフである。
図22は、異なるアルギネート濃度(%w/v)、酸化度、亜塩素酸ナトリウムまたはアンモニアボランのいずれかでの処理における、様々なアルギネート溶液の相対粘度を示す棒グラフである。粘度は、アルゴキシノールまたはアルゴキサラートのいずれかを含有するアルギネートへのクリックコンジュゲーションにより実質的に減少し、水の粘度と同等である(25℃で0.890cPa)のに対して、酸化なしでの、MVGへのクリックコンジュゲーションは粘度における実質的な差異をもたらさないことをデータは示している。
発明の詳細な説明
I.本発明の還元、高酸化多糖
本発明は、還元多糖を含む組成物であって、前記還元多糖が、2%未満の残留アルデヒドを含む、組成物を目的とする。本発明は、還元多糖を含む組成物であって、前記還元多糖が、3%未満の残留アルデヒドを含み、前記還元多糖が、多糖をジオール特異的な酸化剤と反応させることにより、モルベースで15%またはそれよりも多い酸化を含む酸化多糖を生成すること、続いて、前記酸化多糖を水溶性のアルデヒド特異的な還元剤と反応させて、前記還元多糖を生成することによって生成される、組成物も目的とする。
本発明の組成物中に含まれる還元多糖を使用して、ヒドロゲルを調製することができる。これらの多糖は、2ステップ処理により生成される。第1のステップは、多糖、例えば、アルギネートをジオール特異的な酸化剤と反応させて、アルデヒド含有酸化多糖、例えば、アルデヒド含有酸化アルギネートを生成することを含む。第2のステップは、アルデヒド含有酸化多糖をさらに還元処理して、還元多糖を生成することを含む。還元処理は、酸化多糖中に存在するアルデヒド部分を還元して、アルコール部分を生成することを含む。したがって、本明細書で使用されている「還元多糖」という用語は、アルコール部分を含む多糖を含む。一部の実施形態では、還元多糖は、ジオール特異的な酸化剤を使用して多糖を酸化して、アルデヒドを含有する多糖を生成し、次いで、例えば、水溶性のアルデヒド特異的な還元剤を使用して酸化多糖を還元処理して、還元多糖を生成することによって生成される。ある特定の例では、還元多糖は、以下の構造:
を有する開環アルコールを有するモノマーサブユニットを含む。
本明細書で使用されている「多糖」という用語は、グリコシド連結により一緒に結合している単糖単位の鎖で構成された任意のポリマー性炭水化物分子を指す。例えば、アルギネートは、2つの異なるモノマーサブユニット、β-D-マンヌロネート(M)およびそのC-5エピマーα-L-グルロネート(G)((1-4)連結している)を含む多糖である。
多糖鎖は直鎖または分枝であってよい。「多糖」という用語はまた、オリゴ糖を包含することを意図する。多糖は、単に1種類だけのモノマー単位を含有するホモ多糖(例えば、グルコース)、または異なる種類のモノマー単位を含有するヘテロ多糖(例えば、グルコースおよびフルクトース)であることができる。一実施形態では、「多糖」という用語は、ジオール、すなわち、隣接する炭素上に存在する2つのヒドロキシル基を含有するポリマー性炭水化物分子を指す。ジオール含有多糖の非限定的な例として、アルギネート、アガロース、プルラン、スクレログルカン、キトサン、エルシナン、キサンタンガム、デキストラン、マンノース、ゲラン、レバン、セルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸Eおよびβ-d-グルカンが挙げられる。
具体的な一実施形態では、ジオール含有多糖はアルギネートポリマーである。アルギネートポリマーは、2つの異なるモノマー単位、(1-4)-連結したβ-D-マンヌロン酸(M単位)およびαL-グルロン酸(G単位)モノマーで構成され、これらのモノマー単位は、異なる割合で、ポリマー鎖に沿って連続的に分布することができる。アルギネートポリマーは、二価カチオン(例えば、Ca+2、Mg+2、Ba+2)に対して強い親和性を有し、これらの分子に曝露された場合、安定したヒドロゲルを形成する高分子電解質系である。Martinsen A.ら、Biotech. & Bioeng.、33巻(1989年)79~89頁を参照されたい。例えば、カルシウム架橋したアルギネートヒドロゲルは、歯の用途、外傷用包帯、軟骨細胞移植および他の細胞型に対するマトリックスとして有用である。理論に制約されることを望むことなく、G単位は、カルシウム架橋を使用して優先的に架橋されるのに対して、クリック反応ベースの架橋は、G単位またはM単位に関してより無差別である(すなわち、G単位とM単位の両方がクリック化学反応により架橋され得る)と考えられている。
「アルギネートポリマー」という用語と交換可能なように使用される「アルギネート」という用語は、未修飾アルギネート、酸化アルギネート(例えば、1つまたは複数のアルゴキサラートモノマー単位を含む)および/または還元アルギネート(例えば、1つまたは複数のアルゴキシノールモノマー単位を含む)を含む。一部の実施形態では、酸化アルギネートは、1つもしくは複数のアルデヒド基を含むアルギネート、または1つもしくは複数のカルボキシル基を含むアルギネートを含む。他の実施形態では、酸化アルギネートは、例えば、1つもしくは複数のアルゴキサラート単位を含む、高酸化アルギネートを含む。酸化アルギネートはまた、比較的少数のアルデヒド基(例えば、15%未満、例えば、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%またはそれ未満のアルデヒド基またはモルベースでの酸化)を含み得る。「アルギネート」または「アルギネートポリマー」という用語はまた、アルギネート、例えば、以下に記載されているような少なくとも1つのクリック試薬とコンジュゲートした、未修飾アルギネート、酸化アルギネートまたは還元アルギネート、を含み得る。
本発明の文脈において有用なアルギネートポリマーは、約20kDa~約500kDa、例えば、約20kDa~約40kDa、約30kDa~約70kDa、約50kDa~約150kDa、約130kDa~約300kDa、約230kDa~約400kDa、約300kDa~約450kDaまたは約320kDa~約500kDaの平均分子量を有し得る。1つの例では、本発明において有用なアルギネートポリマーは、約32kDaの平均分子量を有し得る。別の例では、本発明において有用なアルギネートポリマーは、約265kDaの平均分子量を有し得る。一部の実施形態では、アルギネートポリマーは、約1000kDa未満、例えば、約900Kda未満、約800kDa未満、約700kDa未満、約600kDa未満、約500kDa未満、約400kDa未満、約300kDa未満、約200kDa未満、約100kDa未満、約50kDa未満、約40kDa未満、約30kDa未満または約25kDa未満の分子量を有する。一部の実施形態では、アルギネートポリマーは、約1000kDa、例えば、約900Kda、約800kDa、約700kDa、約600kDa、約500kDa、約400kDa、約300kDa、約200kDa、約100kDa、約50kDa、約40kDa、約30kDaまたは約25kDaの分子量を有する。一実施形態では、アルギネートポリマーの分子量は、約20kDaである。
「GGGGRGDSP」は、配列番号12として開示された。
多糖、例えば、ジオール含有多糖、例えば、アルギネートなどは、第1のステップで、ジオール特異的な酸化剤と反応させることができる。「ジオール特異的な酸化剤」という用語は、ジオール部分、例えば、多糖中に存在するジオール部分に特異的に反応し、また多糖中に存在し得る他の官能基、例えば、アルコールを酸化しない酸化剤を指す。ジオール特異的な酸化剤の非限定的例として、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、過ヨウ素酸(HIO4)、四酢酸鉛(PB(OAc)4)、パラ過ヨウ素酸ナトリウム(Na3H2IO6)および過ヨウ素酸カリウム(KIO4)が挙げられる。具体的な実施形態では、ジオール特異的な酸化剤は過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)である。
ジオール特異的な酸化剤は、ジオールと反応して、炭素-炭素結合を開裂し、2つのアルデヒド部分を生成する。ある特定の実施形態では、この反応は、少なくとも約0.1%、0.5%、1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%酸化されている酸化多糖を生成する。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。例えば、ある特定の実施形態では、この反応は、約1%~約5%、約3%~約10%、約5%~約20%、約10%~約15%、約12%~約25%、約15%~約30%、約20%~約25%、約25%~約45%、約30%~約50%、約45%~約60%、約50%~約70%、約55%~約75%、約60%~約80%、約65%~約80%、約70%~約90%または約85%~約100%酸化されている酸化多糖を生成する。
本明細書全体にわたり使用されている「酸化多糖」という用語、例えば、「酸化アルギネート」は、酸化された、例えば、ジオール特異的な酸化剤などの酸化剤と反応させた多糖を指す。酸化多糖、例えば、アルギネートは、多糖の酸化に起因するアルデヒド部分を含む。酸化多糖は、約0.1%~約100%酸化されていてもよく、例えば、約0.1%~約5%、約1%~約10%、約5%~約20%、約15%~約40%、約25%~約60%、約40%~約70%、約55%~約90%または約75%~約100%酸化されていてもよい。一部の実施形態では、酸化多糖は、約15%未満酸化されていてもよく、例えば、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、約0.5%未満、約0.4%未満、約0.3%未満、約0.2%未満または約0.1%未満酸化されていてもよい。
「%酸化」または「%酸化された」、「酸化レベル」または「%酸化レベル」という用語は、「モルベースの%酸化」という用語と交換可能なように使用され、酸化の結果環開される、ジオール含有多糖、例えば、アルギネートにおけるモノマーサブユニットのモル分率の%を指す。場合によっては、多糖は、過ヨウ素酸ナトリウムなどのジオール特異的な酸化剤との反応を受けたジオール含有多糖である。多糖の%酸化を測定するのに有用となり得る方法は、当業者には公知であり、例えば、qNMRを挙げることができる。
例えば、「%酸化」という用語は、例えば、ジオール特異的な酸化剤により酸化され、アルデヒド部分を含む開環したモノマーサブユニットを含有する多糖を参照して使用することができる。例えば、アルギネート中のこのようなモノマーサブユニットの1つの例を以下に示す:
「%酸化」という用語はまた、例えば、ジオール特異的な酸化剤により酸化され、続いて、例えば、水溶性のアルデヒド特異的な還元剤で還元され、アルコール部分を含む開環したモノマーサブユニットを含有する多糖を参照して使用することができる。このようなモノマーサブユニットの1つの例、例えばアルゴキシノールを以下に示す:
「%酸化」という用語はまた、例えば、ジオール特異的な酸化剤により酸化され,続いて、例えば、第2の酸化剤によりさらに酸化され、カルボン酸部分を含む開環したモノマーサブユニットを含有する多糖を参照して使用することができる。このようなモノマーサブユニットの1つの例、例えば、アルゴキサラートを以下に示す:
本明細書で使用される「%アルデヒド」という用語は、多糖、例えば、アルギネートなどのジオール含有多糖の開環したモノマーサブユニット中に存在するアルデヒドの%モル分率を指す。
「%残留酸化」、「残留酸化レベル」、「%残留酸化レベル」、「モルベースの%残留酸化」または「%残留アルデヒド」という用語は、残留アルデヒド、すなわち、ジオール特異的な酸化剤と反応し、次いで、例えば、アルデヒド特異的な水溶性の還元剤で還元されて、以下に記載されている還元多糖を生成した後、多糖中に残留するアルデヒド部分の%モル分率を指す。一部の実施形態では、還元多糖、例えば、還元アルギネートは、約0.01%~約3%の残留アルデヒド、例えば、約0.01%~約1%、約0.05~約1.5%または約1%~約3%の残留アルデヒドを含むことができる。例えば、還元多糖は、約2%の残留アルデヒドまたは約3%の残留アルデヒドを含むことができる。この用語はまた、残留アルデヒド、すなわち、ジオール特異的な酸化剤と反応し、次いで、例えば、第2の酸化剤でさらに酸化されて、以下に記載されている高酸化多糖を生成した後、多糖中に残留するアルデヒド部分の%モル分率を指す。一部の実施形態では、高酸化多糖、例えば、高酸化アルギネートは、約0.01%~約3%の残留アルデヒド、例えば、約0.01%~約1%、約0.05~約1.5%または約1%~約3%の残留アルデヒドを含むことができる。例えば、高酸化多糖は、約2%の残留アルデヒドまたは約3%の残留アルデヒドを含むことができる。
多糖のモノマー単位間の例示的な反応は、アルギネートと、過ヨウ素酸ナトリウム、すなわちジオール特異的な酸化剤との間の反応であり、スキーム1に例示されている:
本発明の方法の第2のステップにおいて、アルデヒド含有酸化多糖のさらなる還元処理は、アルデヒド含有酸化多糖と、アルデヒド特異的な水溶性の還元剤との反応を含む。「アルデヒド特異的な水溶性の還元剤」という用語は、アルデヒド、例えば、ジオール特異的な酸化剤による酸化の結果として多糖中に存在するアルデヒドを特異的に酸化し、これらをアルコールに変換する還元剤を指す。ある特定の実施形態では、アルデヒド特異的な水溶性試薬は無毒性であり、および/またはグリーン試薬である。アルデヒド特異的な水溶性の還元剤の非限定的な例として、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4);シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3);例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pl)またはパラジウム(Pd)触媒などの触媒の存在下での水素ガス(H2);アンモニアボラン(H3NBH3);またはボラン錯体、例えば、ビス-カーボネートボラン錯体([(BH3)2CO2]2-・2Na+)、ボランジメチルアミン錯体[(CH3)2NH・BH3];ボランtert-ブチルアミン錯体[(CH3)3CNH2・BH3];もしくはボラン-ピリミジン錯体が挙げられる。具体例では、アルデヒド特異的な水溶性の還元剤はアンモニアボランである。一実施形態では、アルデヒド特異的な水溶性の還元剤は水素化ホウ素ナトリウムではない。
スキーム1に例示された反応の生成物である、酸化グルクロン酸の、水溶性のアルデヒド特異的な還元剤であるアンモニアボランとの例示的な反応がスキーム2に例示されている。
本発明との関連で、「残留アルデヒド」という用語は、酸化多糖、例えば、酸化アルギネートの、アルデヒド特異的な水溶性の還元剤、例えば、アンモニアボランによる還元が完了した後、還元多糖中に残留するアルデヒドを指す。多糖中に存在するアルデヒドの量、例えば、水溶性の、アルデヒド特異的な還元剤による還元後、多糖中に存在する残留アルデヒドの量は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例えば、多糖中に存在する残留アルデヒドの量は、定量的NMRにより測定することができ、定量的NMRでは、アルギネート(1.5%w/v)のアルデヒドピーク(>5.1ppm)の積分が内部標準ジメチルマロン酸(2.5mg/mL)と比較され、残留アルデヒドの%として表現され得る。
水溶性のアルデヒド特異的な還元剤、例えば、アンモニアボランが特に、酸化多糖、例えば、アルギネートポリマー中に存在するアルデヒドを還元し、これらをアルコールに変換するのに有効であることが本発明の発明者により驚くことに発見された。したがって、水溶性のアルデヒド特異的な還元剤、例えば、アンモニアボランとの反応を介して酸化多糖をさらなる還元処理の対象とすることによって得られた還元多糖は、驚くほど低レベルの残留アルデヒドを含有する。一部の実施形態では、還元多糖は、2%未満の残留アルデヒド、例えば、1.5%未満、1%未満または0.5%未満の残留アルデヒドを含有する。他の実施形態では、還元多糖は、3%未満の残留アルデヒド、例えば、3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、または0.5%未満の残留アルデヒドを含有する。
ヒドロゲルを調製するために使用される多糖、例えば、アルギネート中に低レベルのアルデヒドを有することが望ましい。なぜなら、アルデヒドは、タンパク質、および多糖の近くに存在する他の分子の損傷を引き起こし、これによって、ヒドロゲルの毒性を増加させる可能性があるからである。さらに、水溶性のアルデヒド特異的な還元剤の使用は特に有利である。なぜなら、これらの試薬は毒性副産物を生成せず、多糖物質のさらなる処理を必要としないからである。水溶性のアルデヒド特異的な還元剤、例えば、アンモニアボランはまた無毒性であり、および/または「グリーン試薬」であると考えられる。
本発明はまた、高酸化多糖、例えば、高酸化アルギネートポリマーを利用する。これらの高度に荷電した酸化多糖は、酸化多糖よりも水に溶解性があり、これらの操作を簡単にする。高酸化多糖は2ステップで調製することができる。第1のステップは、多糖、例えば、アルギネートポリマーをジオール特異的な酸化剤と反応させて、アルデヒド含有酸化多糖、例えば、上に記載されているようなアルデヒド含有酸化アルギネートポリマーを生成することを含む。第2のステップは、アルデヒド含有酸化多糖のさらなる酸化処理により、高酸化多糖を生成することを含む。酸化多糖のさらなる酸化処理は、酸化多糖中に存在するアルデヒド部分を、カルボン酸部分に変換することを含む。したがって、本明細書で使用されている「高酸化多糖」という用語は、モノマーサブユニット1つ当たり少なくとも1つの、例えば、2つの追加のカルボン酸部分を含む多糖を含む。例えば、高酸化多糖は、開環したカルボン酸を含有するアルギネート、または以下の構造を有するアルゴキサラートであるモノマーサブユニットを含むことができる:
アルデヒド含有酸化多糖、例えば、アルギネートポリマーのさらなる酸化処理は、アルデヒド含有酸化多糖と、第2の酸化剤との反応を含む。本明細書に使用されている「第2の酸化剤」という用語は、アルデヒド部分をカルボン酸部分に特異的に変換し、これによって、高酸化多糖を生成する任意の酸化剤を指す。第2の酸化剤の非限定的例として、亜塩素酸ナトリウム;臭素;希硝酸(NHO3);酸化銀、例えば、トレンス試薬([Ag(NH3)2]+またはAgNO3);銅(II)錯体、例えば、フェーリング試薬(酒石酸銅(II)溶液)、またはベネジクト液(クエン酸銅(II)溶液);過マンガン酸カリウム(KMnO4);および過酸化水素(H2O2)が挙げられる。具体的な実施形態では、第2の酸化剤は亜塩素酸ナトリウムである。
多糖の酸化モノマー単位の例示的な反応は、酸化アルギネート、すなわちスキーム1に例示された反応の生成物と、亜塩素酸ナトリウム、すなわち第2の酸化剤との反応であり、スキーム3に例示されている。
還元多糖、例えば、酸化多糖と、水溶性のアルデヒド特異的な還元剤(例えば、アンモニアボラン)との反応によって生成した還元多糖、例えば、アルゴキシノールを含む多糖など、ならびに高酸化多糖、例えば、酸化多糖と、第2の酸化剤との反応から生成した多糖、例えば、アルゴキサラートを含む多糖などの両方が、ヒドロゲルを調製するのに特に有用であることが驚くことに発見された。還元多糖および高酸化多糖から調製したヒドロゲル、例えば、還元アルギネートおよび高酸化アルギネートポリマーは、生分解性であり、ドラッグデリバリービヒクルとして有用である。
一部の実施形態では、還元多糖および/または高酸化多糖、例えば、還元アルギネートおよび/または高酸化アルギネート、例えば、アルゴキシノールおよび/またはアルゴキサラートを含むアルギネートなどの溶解度は、未修飾のアルギネートの溶解度より高い。還元多糖および/または高酸化多糖などの多糖の溶解度は、%w/vとして、またはmg/mLで表現することができ、ここでは、1%w/vは10mg/mLの多糖と等しい。例えば、還元多糖および/または高酸化多糖の溶解度は、約10~20%w/v、15~30%w/v、20~40%w/v、30~50%w/v/、40~65%w/v、50~75%w/vまたは60~90%w/vであり得る。例えば、本発明の還元多糖および/または高酸化多糖の溶解度は、約10%w/v、約15%w/v、約20%、約25%w/v、約30%w/v、約35%w/v、約40%w/v、約45%w/v、約50%w/v、約55%w/v、約60%w/v、約65%w/v、約70%w/v、約75%w/v、約80%w/vまたは約90%w/vであり得る。
一部の実施形態では、本発明の多糖は生分解性である。例えば、酸化アルギネート、還元アルギネートおよび高酸化アルギネートは生分解性である。アルギネート、例えば、酸化アルギネート、還元アルギネートおよび高酸化アルギネートは、宿主の内因性酵素、例えば、ヒトに存在し得る内因性酵素による分解を起こしにくい。アルギネート、例えば、酸化アルギネート、還元アルギネートおよび高酸化アルギネートは、酸性またはアルカリ性条件に曝露された場合、化学的に分解され、例えば、加水分解され得る。酸性条件は6.5またはそれ未満のpHを含み、アルカリ性条件は8またはそれよりも高いpHを含む。
II.クリック試薬にコンジュゲートした本発明の多糖
本発明の還元多糖および高酸化多糖、例えば、アルギネートは、クリック試薬にコンジュゲートすることができる。「クリック化学反応試薬」という用語と交換可能なように本明細書で使用されている「クリック試薬」という用語は、穏やかな条件下、水溶液中でその対応するクリック試薬と急速におよび選択的に反応する(「クリック」)ことができる試薬である。穏やかな条件とは、低い反応物質濃度とともに、中性のpH、水溶液および周辺温度を含む。例示的なクリックペア試薬は当業者には周知であり、これらに限定されないが、アジドおよびジベンゾシクロオクチン(DBCO)、テトラジンおよびトランスシクロオクテン、ならびにテトラジンおよびノルボルネンが挙げられ、構造が以下に例示されている。
一部の実施形態では、クリック試薬はテトラジン(Tz)である。本明細書で使用される「テトラジン」および「テトラジン部分」という用語は、ポリマーへ連結するための適切なスペーサーで置換されている(例えば、メチルアミンまたはペンチルアミンなどのアルキルアミン)、および任意選択で、任意の利用可能な位置で1つまたは複数の置換基でさらに置換されている1,2,4,5-テトラジンを含む分子を含む。本開示の組成物および方法に対して適切な例示的なテトラジン部分は、これらに限定されないが、以下に示す構造を含む(それぞれの全内容が本明細書によって参照により本明細書に組み込まれている、例えば、Karverら、(2011年)、Bioconjugate Chem.、22巻:2263~2270頁、およびWO2014/065860を参照されたい):
テトラジンに対する対応試薬の1つはノルボルネン(Nb)である。本明細書で使用される「ノルボルネン」および「ノルボルネン部分」という用語は、これらに限定されないが、多糖に連結するための適切なスペーサーをさらに含み(例えば、メチルアミンまたはペンチルアミンなどのアルキルアミン)、および任意選択で任意の利用可能な位置で1つまたは複数の置換基でさらに置換されているノルボルナジエンおよびノルボルネン基を含む。このような部分は、例えば、ノルボルネン-5-メチルアミンおよびノルボルナジエンメチルアミンを含む。
クリック試薬は通常、カルボキシル部分を介して多糖、例えば、アルギネートにコンジュゲートしている。図1aに例示された1つの具体例では、クリック試薬は、アルギネート中のグルクロン酸に存在するカルボキシレート部分を介してアルギネートポリマーにコンジュゲートしていてもよい。したがって、1つのクリック分子は、未処理のアルギネート中のグルクロネートごとにコンジュゲートしていてもよい。過ヨウ素酸ナトリウムによるアルギネートの酸化後、グルクロネート1つ当たり2つのアルデヒドが生成される。各アルデヒド部分は、イミン結合を介してクリック試薬にコンジュゲートし得る(図1b)。クリック試薬の酸化アルギネートへのこのコンジュゲーションは、コンジュゲーション後、カーゴへの毒性および損傷、ならびにクリック試薬の分解をもたらし得るアルギネートに残留する残留アルデヒドにより、最適とはならない(実施例1および3も参照されたい)。さらに、アルデヒドと、クリック試薬との間のイミン結合は簡単に加水分解可能であり、アルギネートからのクリック試薬の損失をもたらす。図1cにおいて示されている通り、酸化アルギネート中に存在するアルデヒドのさらなる酸化は、これらのアルデヒドをカルボン酸に変換し、これによって、クリックコンジュゲーションのために2つの追加の部位を提供する。
ある特定の高酸化多糖、例えば、高酸化アルギネートポリマーは、これらがクリックコンジュゲーションに対して利用可能な追加の部位を含有するため、クリック試薬コンジュゲーションに対して酸化多糖よりも良い基質であることが驚くことに発見された。還元多糖、例えば、還元アルギネートは、これらがクリック試薬と反応して、これらの分解を引き起こす可能性のあるアルデヒドをより低量で含有するため、クリック試薬コンジュゲーションに対して酸化多糖より適切であることもまた発見された。
一部の実施形態では、本発明の多糖、例えば、アルギネートへコンジュゲートしたクリック試薬はまた、その対応するクリック試薬と反応することができ、ひいては、これがある部分に付着し、これによって、この部分を多糖にコンジュゲートする。クリック試薬を使用して、任意の部分を本発明の多糖にコンジュゲートすることができる。このような部分の非限定的例として、有機小分子、小さな無機分子;サッカリン;単糖;二糖;三糖;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質、ペプチド類似体、ペプチド誘導体;ペプチド模倣体;抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル);抗体の抗原結合性断片;核酸、例えば、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、リボザイム、アプタマー、マイクロRNA、プリマイクロRNA、iRNA、プラスミドDNA(例えば、凝縮プラスミドDNA)、修飾RNA、および核酸類似体または誘導体が挙げられる。一部の実施形態では、この部分は治療剤である。
他の実施形態では、本発明の多糖、例えば、アルギネートにコンジュゲートしたクリック試薬は、以下に詳細に記載されているように架橋剤として機能することができる。
ある特定の実施形態では、本発明の多糖、例えば、アルギネートは、異なるクリックペアに属する2つまたはそれよりも多いクリック試薬にコンジュゲートし得る。例えば、本発明の多糖が、2つの異なるクリックペアに属する2つのクリック試薬にコンジュゲートしている一実施形態では、多糖にコンジュゲートしている第1のクリック試薬はアジド-ジベンゾシクロオクチン(アジド-DBCO)クリックペア由来のアジドであってよく、多糖にコンジュゲートしている第2のクリック試薬は、テトラジン-ノルボルネンクリックペア由来のテトラジンであってよい。このような多糖では、異なる機能に対して2つのクリック試薬を使用することができる。例えば、第1のクリック試薬は、ヒドロゲルを形成する多糖の架橋を促進するために機能することができ、第2の架橋試薬は、上に記載されているように、ある部分を多糖にコンジュゲートするために機能することができる。具体的な実施形態では、本発明の多糖が2つまたはそれよりも多いクリック試薬にコンジュゲートした場合、多糖にコンジュゲートしたクリック試薬は、架橋反応しない、すなわち、互いに反応せず、単にこれらのクリックペアと反応する。
III.架橋剤にコンジュゲートした本発明の多糖
本発明の還元多糖および高酸化多糖は、架橋剤にコンジュゲートしてもよい。架橋剤は、イオンにより、共有結合によりまたは物理的に酸化多糖に付着し得る。一実施形態では、架橋剤は、本発明の還元多糖、例えば、還元アルギネートポリマーに、共有結合または非共有結合により付着している。別の実施形態では、架橋剤は、本発明の高酸化多糖、例えば、高酸化アルギネートポリマーに、共有結合または非共有結合により付着している。
本明細書で使用されている「架橋剤」という用語は、特定の位置、例えば、対象の細胞もしくは組織内側の位置への多糖の架橋を実行および促進することができるか、または多糖、例えば、アルギネートポリマーの架橋を促進することができる任意の薬剤である。ある特定の実施形態では、架橋剤は、例えば、共有結合を介して多糖に付着している。ある特定の実施形態では、架橋剤は、1つのポリマー鎖に単にカップリングし、ペンダント基として機能する。
一部の実施形態では、架橋剤はクリック試薬である。本発明の多糖の架橋のために使用することができる例示的なペアのクリック試薬として、これらに限定されないが、上記に例示されているような構造を有する、アジドとジベンゾシクロオクチン(DBCO)、テトラジンとトランスシクロオクテン、およびテトラジンとノルボルネンが挙げられる。
クリック試薬で修飾された本発明の還元多糖および/または高酸化多糖、例えば、クリック試薬にコンジュゲートしたアルギネートは、共有結合により架橋することによって、クリック架橋されたヒドロゲル、例えば、クリックアルギネートヒドロゲルを形成することができる。クリック化学反応を介したヒドロゲルの形成は、全内容が本明細書によって参照により本明細書に組み込まれている、Desai ら、(2015年)、Biomaterials、50巻:30~37頁に記載されている。架橋反応は、高度に特異的であり、生体直交型であり、急速であり(例えば、Devarajら、(2008年)、Bioconjugate Chem.、19巻(12号):2297~2299頁;Karverら、(2011年)、Bioconjugate Chem.、22巻(11号):2263~2270頁;およびAlgeら、(2013年)、Biomacromol.、14巻(4号):949~953頁を参照されたい)、高い封入後生存率で細胞の組込みを可能にすることが他者により以前に示されている。
例えば、本発明のクリックコンジュゲート多糖、例えば、アルゴキシノールおよび/またはアルゴキサラートを含む、クリックコンジュゲートしたアルギネートからヒドロゲルを生成するために、クリックペアの1つのメンバー、例えば、Nbにコンジュゲートした多糖は、クリックペアの第2のメンバー、例えば、Tzにコンジュゲートした多糖と混合し、穏やかな条件下でインキュベートすることによって、ヒドロゲルを生成することができる。このようなヒドロゲルの特性、例えば、ヒドロゲルの剛性、ゲル化までの時間、またはヒドロゲルの平均細孔サイズは、多糖のクリックコンジュゲーション度;多糖酸化度、すなわち、多糖中に存在する%残留アルデヒド;およびヒドロゲル形成中のクリックコンジュゲート多糖の濃度、例えば、ヒドロゲル形成直前に溶液中に存在するアルギネート物質の%w/v/を含む異なるいくつかのパラメーターにより調整することができる。
「置換度」または「DS」という用語と交換可能なように使用することができる「クリックコンジュゲーション度」という用語は、多糖の1モノマー単位当たりのクリック試薬の平均数、例えば、アルギネート中の1モノマー単位当たりのクリック試薬の平均数を指す。クリック置換度は、クリックコンジュゲーション反応物中のアルギネートモノマーのモルに対する、クリック試薬のモル当量の数を変えることによって変化させることができる。例えば、クリックコンジュゲーション反応物は、約1~約5000のクリック試薬のモル当量、例えば、約1、約5、約10、約20、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、約1000、約1200、約1500、約1800、約2000、約2200、約2500、約2800、約3000、約3200、約3500、約4000、約4200、約4500または約5000のクリック試薬のモル当量を含み得る。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。例えば、クリックコンジュゲーション反応物は、約1~約50、約10~約100、約150~約250、約200~約500、約400~約800、約700~約1000、約1200~約1600、約1500~約2000、約1800~約3500または約3200~約5000のクリック試薬のモル当量を含み得る。
一部の実施形態では、クリック試薬にコンジュゲートした本発明の多糖は、約0.01%~約100%、例えば、約0.01%~約0.5%、約0.1%~約5%、約1%~約10%、約5%~約15%、約10%~約20%、約15%~約25%、約20%~約35%、約30%~約40%、約35%~約50%、約40%~約60%、約50%~約75%、約70%~約90%または約85%~約100%であるクリック置換度を含む。例えば、クリック試薬にコンジュゲートした本発明の多糖は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%であり得る。
一部の実施形態では、ヒドロゲル形成中のクリックコンジュゲート多糖の濃度、例えば、ヒドロゲルの形成直前に溶液中に存在するアルギネート物質の濃度は、約0.01%~約50%w/v、例えば、約0.01%~約10%w/v、約0.1%~約5%w/v、約1%~約15%w/v、約10%~約30%w/v、約12%~約35%w/v、約15%~約25%w/v、約20%~約45%w/vまたは約35%~約50%w/vであってよい。例えば、ヒドロゲルの形成の直前の溶液中に存在するアルギネート物質の濃度は、約0.01%、約0.05%、約1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%または約50%であり得る。
ヒドロゲルの剛性は、クリック置換度に依存することができ、弾性率(または貯蔵弾性率)G’を測定することにより決定することができる。例えば、本発明のヒドロゲルのG’は、1Hzにおける1%歪みで測定した場合、約0~約40000Pa、例えば、約0~約100Pa、約50~約300Pa、約100~約450Pa、約130~約600Pa、約300~約450Pa、約500~約900Pa、約600~約1500Pa、約1200~約2000Paまたは約1900~約40000Paで変動し得る。例えば、1Hzにおける1%歪みで測定した場合の本発明のヒドロゲルのG’は、約100Pa、約200Pa、約500Pa、約1000Pa、約1500Pa、約2000Pa、約2200Pa、約2500Paまたは約3000Paであり得る。
一部の実施形態では、架橋剤はペプチド、例えば、細胞接着剤ペプチドである。したがって、本発明の還元多糖および/または高酸化多糖、例えば、還元アルギネートポリマーおよび/または高酸化アルギネートポリマーは、細胞接着剤ペプチド、例えば、細胞外細胞マトリックス(ECM)構成成分により修飾され得る。細胞接着剤ペプチドは、例えば、アミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を含むことができる。例として、アミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-システイン(RGDC)(配列番号1)およびアルギニン-グリシン-アスパラギン酸-セリン(RGDS)(配列番号2)が挙げられる。他の例では、細胞接着剤ペプチドは、リシン-グルタミン-アラニン-グリシン-アスパラギン酸-バリン(KQAGDV)(配列番号3)またはバリン-アラニン-プロリン-グリシン(VAPG)(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の例では、細胞接着剤ペプチドはCGGGGRGDSP(配列番号5)である。他の細胞接着剤ペプチドは、所望の用途に基づき使用することができ、当業者には明らかである。
場合によっては、細胞接着剤ペプチドは、チオール-エン反応を介して、例えば、チオール-エン光化学反応を介して還元多糖および/または高酸化多糖に共有結合で連結している。例えば、細胞接着剤ペプチドは、ヒドロゲルを形成するための多糖の架橋の前後に、多糖(例えば、アルギネートポリマー)へ共有結合により連結することができる。細胞接着剤ペプチドを多糖に共有結合で連結させるためのチオール-エン反応のこのような使用は、以前に開示された方法、例えば、ペプチドをポリマーにカップリングさせるためのカルボキシル活性化剤(例えば、EDC)を使用する方法などよりも有意に速く、効率的である。
IV.本発明のヒドロゲル
本明細書に記載の還元多糖および/または高酸化多糖は、治療用の用途のためのヒドロゲルを調製するために使用することができる。還元多糖および/または高酸化多糖、例えば、還元アルギネートおよび/または高酸化アルギネートから調製したヒドロゲルは、酸化多糖、例えば、酸化アルギネートから調製したヒドロゲルと比較して、生分解性であり、無毒性である。一部の実施形態では、本発明の還元多糖および/または高酸化多糖を使用して調製したヒドロゲルが細胞を封入する場合、酸化多糖から調製したヒドロゲルと比較して、より少ない細胞毒性が観察されている。治療剤、例えば、タンパク質を封入するために使用される本発明の還元多糖および/または高酸化多糖からヒドロゲルが生成される他の実施形態では、酸化多糖から調製したヒドロゲルと比較してより少ないタンパク質損傷が観察されている。本発明の還元多糖および/または高酸化多糖から生成されるヒドロゲルが、脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームまたはビロソームを封入するために使用される実施形態では、脂質ベースのナノ粒子は宿主内の所望の位置にインタクトで送達される。
本発明のヒドロゲルは、本発明のヒドロゲルにより封入される治療用または診断用薬剤を含む剤形を調製するために使用することができる。本発明のヒドロゲルはまた、治療用または診断用薬剤を含み得る埋め込み型デバイスを調製するために使用することができる。本発明のヒドロゲルは、治療用または診断用薬剤を封入している脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームまたはビロソームと、前記脂質ベースのナノ粒子を封入している、本発明のヒドロゲルとを含む、ドラッグデリバリー組成物を調製するためにも使用することができる。
本発明の還元多糖および/または高酸化多糖は、細孔の平均直径として測定された平均メッシュサイズが比較的幅広い範囲にわたり変動するヒドロゲルを調製するのに有用であることが現在発見された。例えば、本発明の還元多糖および/または高酸化多糖を使用して調製されたヒドロゲルは、約0.5nm~約500nm、例えば、約0.5nm~約1nm、約0.5nm~約5nm、約1nm~約20nm、約10nm~約50nm、約25nm~約80nm、約50nm~約100nm、約70nm~約150nm、約100nm~約250nm、約200nm~約350nm、約250nm~約400nmまたは約350nm~約500nmの範囲の平均直径を有する細孔を有する。一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルは、約0.5nm、約1nm、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nmまたは約500nmの平均直径を有する細孔を有し得る。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。
1つの例では、本発明のヒドロゲルは、驚くほど小さな平均細孔サイズ、例えば、約10nmまたはそれ未満の平均直径を有する。一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルの細孔の直径は、約10.00nmまたはそれ未満、約9.5nmまたはそれ未満、約9.0nmまたはそれ未満、約8.5nmまたはそれ未満、約8.0nmまたはそれ未満、約7.5nmまたはそれ未満、約7.0nmまたはそれ未満、約6.5nmまたはそれ未満、約6.0nmまたはそれ未満、約5.5nmまたはそれ未満、約5.0nmまたはそれ未満、約4.5nmまたはそれ未満、約4.0nmまたはそれ未満、約3.5nmまたはそれ未満、約3.0nmまたはそれ未満、約2.5nmまたはそれ未満、約2.0nmまたはそれ未満、約1.5nmまたはそれ未満または約1nmまたはそれ未満である。例えば、本発明のヒドロゲルは、約10nm~約1nm、約10nm~約4nm、約7nm~約3nm、約5nm~約1nm、約4nm~約2nmまたは約3nm~約0.5nmの平均直径を有する細孔を含み得る。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。
したがって、本発明のヒドロゲルは、治療用もしくは診断用薬剤を封入するため、または小さな分子量の脂質ベースのナノ粒子、例えば、治療用もしくは診断用薬剤を含むリポソームもしくはビロソームを封入するために使用することができる。例えば、本発明のヒドロゲルを使用して、治療用もしくは診断用薬剤、あるいは治療用もしくは診断用薬剤、例えば、1000kDaまたはそれ未満、例えば、950kDaまたはそれ未満、900kDaまたはそれ未満、850kDaまたはそれ未満、800kDaまたはそれ未満、750kDaまたはそれ未満、700kDaまたはそれ未満、650kDaまたはそれ未満、600kDaまたはそれ未満、550kDaまたはそれ未満、500kDaまたはそれ未満、450kDaまたはそれ未満、400kDaまたはそれ未満、350kDaまたはそれ未満、300kDaまたはそれ未満、250kDaまたはそれ未満、200kDaまたはそれ未満、150kDaまたはそれ未満、100kDaまたはそれ未満、90kDaまたはそれ未満、80kDaまたはそれ未満、70kDaまたはそれ未満、60kDaまたはそれ未満、50kDaまたはそれ未満、40kDaまたはそれ未満、30kDaまたはそれ未満、20kDaまたはそれ未満、10kDaまたはそれ未満、8kDaまたはそれ未満、6kDaまたはそれ未満、4kDaまたはそれ未満、2kDaまたはそれ未満、1kDaまたはそれ未満、0.8kDaまたはそれ未満、0.6kDaまたはそれ未満、0.4kDaまたはそれ未満、0.2kDaまたはそれ未満または0.1kDaまたはそれ未満の分子量を有するポリペプチドを封入する脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームを封入することができる。
一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルにより、または本発明のヒドロゲルにより封入された脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームにより封入され得る治療用もしくは診断用薬剤は、ヒドロゲルの細孔が治療剤のサイズと比較して十分に小さいことから、ヒドロゲルの細孔を介して拡散しない。したがって、ヒドロゲルからの治療剤の放出は、対象内でのヒドロゲルの生分解により徐々に生じる。これは、対象、例えば、ヒトにおいて、治療用もしくは診断用薬剤、または治療用もしくは診断用薬剤を封入している脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームの持続放出を提供する。
本明細書で使用される場合、本発明のヒドロゲルにより封入された「治療用または診断用薬剤」という用語は、それを必要とする対象において、障害を処置、予防または診断するために使用することができる任意の薬剤を含む。治療用または診断用薬剤は、細胞、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト間葉幹細胞(hMSC)など、小分子または生物製剤などであってよい。生物製剤は、ペプチド、タンパク質、DNA分子、RNA分子、PNA分子、抗体またはワクチンであってよい。例示的な治療用薬剤として、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 13th Edition, Eds. T.R. Harrisonら、McGraw-Hill N.Y., NY; Physicians’ Desk Reference, 50th Edition, 1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.; Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Edition, Goodman and Gilman, 1990; United States Pharmacopeia, The National Formulary, USP XII NF XVII, 1990; current edition of Goodman and Oilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics; and current edition of The Merck Index(これらの全ての全内容が参考として本明細書に援用される)に見出されるものが挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルにより、または本発明のヒドロゲルで封入される脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームにより封入される治療用もしくは診断用薬剤は、有機小分子、小さな無機分子;サッカリン;単糖;二糖;三糖;オリゴ糖;多糖;ペプチド;タンパク質;ペプチド類似体;ペプチド誘導体;ペプチド模倣体;抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル);抗体の抗原結合性断片;核酸、例えば、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、リボザイム、アプタマー、マイクロRNA、プリマイクロRNA、iRNA、プラスミドDNA(例えば、凝縮プラスミドDNA)、修飾RNA、核酸類似体または誘導体;生物学的物質、例えば、細菌、植物、真菌、または動物細胞などから作製される抽出物;動物組織;天然に存在する組成物または合成組成物;およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される化合物を含むことができる。核酸は、1つまたは複数の非天然ヌクレオチドを含み得る。ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含み得る。
本明細書で使用される「小分子」という用語は、「天然産物のような」化合物を指すことができ、しかし、「小分子」という用語は「天然産物のような」化合物に限定されない。むしろ、小分子は通常、これがいくつかの炭素-炭素結合を含有し、5000ダルトン未満(5kD)、好ましくは3kD未満、さらにより好ましくは2kD未満、および最も好ましくは1kD未満の分子量を有することにより特徴付けられる。場合によっては、小分子が700ダルトンと等しいまたはそれ未満の分子質量を有することが好ましい。
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、その最も広範な意味で使用することによって、ペプチドの所望の機能活性を依然として保持しながら、アミノ酸、アミノ酸同等物もしくは他の非アミノ基を含有する化合物を指す。ペプチド同等物は、1つまたは複数のアミノ酸を関連有機酸(例えば、PABAなど)、アミノ酸などと置き換えること、または側鎖もしくは官能基の置換もしくは修飾によって従来のペプチドと異なり得る。ペプチドは直鎖のまたは環式であることができる。ペプチドは、D-アミノ酸、ベータ-アミノ酸、化学的に修飾されたアミノ酸、天然に存在する非タンパク新生アミノ酸、稀なアミノ酸、およびアミノ酸の特徴であることが当技術分野で公知の特性を有する化学合成化合物の1つまたは複数を含むように修飾することができる。
本明細書で使用されている「核酸」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、その類似体または誘導体を含めた、共有結合により一緒に連結した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。例示的なオリゴヌクレオチドとして、これらに限定されないが、一本鎖および二本鎖のsiRNAおよび他のRNA妨害試薬(RNAi薬剤またはiRNA薬剤)、shRNA(ショートヘアピン型RNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、リボザイム、およびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。核酸は、一本鎖または二重鎖であることができる。核酸は、DNA、RNAまたはハイブリッドであることができ、核酸は、デオキシリボ-とリボヌクレオチドの任意の組合せ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシンおよびグアニンの任意の組合せを含有する。RNA分子は、mRNA、RNAi、siRNA、shRNA、マイクロRNA、isRNA、lncRNAおよびアンチセンスRNAからなる群から選択され得る。
核酸はまた、1つまたは複数の非天然ヌクレオチドを含み得る。例えば、核酸は、当技術分野で公知の1つまたは複数の核酸修飾を含むことができる。例えば、核酸は、1つまたは複数の骨格修飾、例えば、ホスホルアミド(Beaucageら、Tetrahedron、49巻(10号):1925頁(1993年)およびその中の参考文献;Letsinger、J. Org. Chem.、35巻:3800頁(1970年))、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、O-メチルホスホラミダイト(methylphophoroamidite)連結(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Pressを参照されたい)、またはペプチド核酸連結(全内容が本明細書中に参照により組み込まれている、Egholm, J. Am.、Chem. Soc.、114巻:1895頁(1992年);Meierら、Chem. Int. Ed. Engl.、31巻:1008頁(1992年);およびNielsen、Nature、365巻:566頁(1993年)を参照されたい)を含むことができる。核酸はまた、ヌクレオチドの核酸塩基および/または糖部分に対する修飾を含むことができる。糖部分での例示的な糖修飾は、ハロゲンを有する2’-OH(例えば、フルオロ)、O-メチル(mehtyl)、O-メトキシエチル、NH2、SHおよびS-メチルの置換を含む。
一部の実施形態では、「治療用または診断用薬剤」という用語は、生物学的物質、例えば、細胞外マトリクス物質、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン(vitronection)およびラミニンなど;サイトカイン;増殖因子;分化因子、核酸;タンパク質;ペプチド;抗体もしくはその断片もしくはその抗原結合部分、または細胞を含む。
本発明のヒドロゲルに組み込むことができる適切な増殖因子およびサイトカインとして、幹細胞因子(SCF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージ刺激因子(GM-CSF)、間質細胞由来の因子-1、スチール因子、VEGF、TGFβ、血小板由来の増殖因子(PDGF)、アンジオポエチン(angiopoeitins)(Ang)、上皮増殖因子(EGF)、bFGF、HNF、NGF、骨形態形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞(hepatocye)増殖因子、インスリン様増殖因子(IGF-1)、インターロイキン(IL)-3、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-8、IL-11、およびIL-13、コロニー-刺激因子、トロンボポエチン、エリスロポエチン、フィット3-リガンド、および腫瘍壊死因子α(TNFα)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例は、Dijkeら、「Growth Factors for Wound Healing」, Bio/Technology, 7:793-798 (1989); Mulder GD, Haberer PA, Jeter KF, eds. Clinicians’ Pocket Guide to Chronic Wound Repair. 4th ed. Springhouse, PA: Springhouse Corporation; 1998:85; Ziegler T.R., Pierce, G.F., and Herndon, D.N., 1997, International Symposium on Growth Factors and Wound Healing: Basic Science & Potential Clinical Applications (Boston, 1995, Serono Symposia USA), Publisher: Springer Verlagに記載される。
本発明のヒドロゲルに組み込むことができる、または本発明のヒドロゲルにより封入される脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームに組み込むことができる治療用または診断用薬剤の例として、これらに限定されないが、麻薬鎮痛薬;金の塩;コルチコステロイド;ホルモン;抗マラリア薬;インドール誘導体;関節炎処置に対する医薬品;テトラサイクリン、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびオーレオマイシンを含めた抗生剤;家畜および大型ウシに適用される、抗寄生虫様薬物およびイヌジステンパー薬、例えば、フェノチアジン;硫黄に基づく薬物、例えば、スルフイソキサゾール(sulfioxazole);抗腫瘍薬;中毒を管理する医薬品、例えば、アルコール依存症を制御する薬剤およびタバコ中毒を制御する薬剤;薬物中毒のアンタゴニスト、例えば、メサドンなど;重量制御薬;甲状腺を制御する薬物;鎮痛剤;受精または避妊ホルモンを制御する薬物;アンフェタミン;抗高血圧薬;抗炎症剤;鎮咳剤;鎮静剤;神経筋の弛緩薬;抗てんかん薬;抗うつ剤;抗不整脈薬;血管拡張性薬;抗高血圧利尿剤;抗糖尿病剤;抗凝血剤;抗結核剤;抗精神病剤;ホルモンおよびペプチドが挙げられる。上記リストは全部ではなく、組成物中に含まれていてもよい治療剤の幅広い多様性を表すのみであることが理解されている。一部の実施形態では、治療剤はミトキサントロン、ペプチド、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体の抗原結合性断片、タンパク質(例えばVEGF)またはプラスミドDNAである。
当業者であれば、本発明のヒドロゲル、または本発明のヒドロゲルにより封入される脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームに組み込むことができる多くの他の治療用または診断用薬剤を認識している。例として、放射線増感剤、ステロイド、キサンチン、ベータ-2-アゴニスト気管支拡張剤、抗炎症剤、鎮痛剤、カルシウムアンタゴニスト、アンジオテンシン-変換酵素阻害剤、β受容体遮断剤、中枢活性のあるアルファ-アゴニスト,アルファ-1-アンタゴニスト、抗コリン剤/鎮痙剤、バゾプレシン類似体、抗不整脈剤、抗パーキンソン剤、抗狭心症剤/血圧降下剤、抗凝血剤、抗血小板剤、鎮静剤、抗不安剤、ペプチド剤、バイオポリマー剤、抗腫瘍剤、下剤、下痢止剤、抗菌剤、抗真菌剤、ワクチン、タンパク質、または核酸が挙げられる。さらなる態様では、薬学的活性のある薬剤は、クマリン、アルブミン、ステロイド、例えば、ベタメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾンなど、および薬学的に許容されるヒドロコルチゾン誘導体;キサンチン、例えば、テオフィリンおよびドキソフィリンなど;ベータ-2-アゴニスト気管支拡張剤、例えば、サルブタモール、フェノテロール(fenterol)、クレンブテロール、バンブテロール、サルメテロール、フェノテロール;抗喘息抗炎症剤、抗関節炎抗炎症剤、および非ステロイド性抗炎症剤を含む抗炎症剤、例として、これらに限定されないが、スルフィド、メサラミン、ブデソニド、サラゾピリン、ジクロフェナク、薬学的に許容されるジクロフェナク塩、ニメスリド、ナプロキセン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびピロキシカムが挙げられる;鎮痛剤、例えば、サリチル酸塩など;カルシウムチャネル遮断剤、例えば、ニフェジピン、アムロジピン、およびニカルジピンなど;アンジオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ホシノプリルナトリウム、トランドラプリル、ラミプリル、リシノプリル、エナラプリル、キナプリル塩酸塩、およびモエキシプリル塩酸塩など;β受容体遮断剤(すなわち、ベータアドレナリン作動性遮断剤)例えば、ソタロール塩酸塩、チモロールマレイン酸塩、エスモロール塩酸塩、カルテオロール、プロパノロール塩酸塩、ベタキソロール塩酸塩、ペンブトロール硫酸塩、メトプロロール酒石酸塩、メトプロロールコハク酸塩、アセブトロール塩酸塩、アテノロール、ピンドロール、およびビソプロロールフマル酸塩など;中枢活性のあるアルファ-2-アゴニスト、例えば、クロニジンなど;アルファ-1-アンタゴニスト、例えば、ドキサゾシンおよびプラゾシンなど;抗コリン剤/鎮痙剤、例えば、ジサイクロミン塩酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩、グリコピロレート、臭化クリジニウム、フラボキセート、およびオキシブチニンなど;バゾプレシン類似体、例えば、バゾプレシンおよびデスモプレシンなど;抗不整脈剤、例えば、キニジン、リドカイン、トカイニド塩酸塩、メキシレチン塩酸塩、ジゴキシン,ベラパミル塩酸塩、プロパフェノン塩酸塩、フレカイニド酢酸塩、プロカインアミド塩酸塩、モリシジン塩酸塩、およびジソピラミドリン酸塩;抗パーキンソン剤、例えば、ドーパミン、L-ドパ/カルビドパ、セレギリン、ジヒドロエルゴクリプチン、ペルゴリド、リスリド、アポモルフィン、およびブロモクリプチン;抗狭心症剤および血圧降下剤、例えば、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、プロプラノロール、アテノロールおよびベラパミルなど;抗凝血剤および抗血小板剤、例えば、Coumadin、ワルファリン、アセチルサリチル酸、およびチクロピジンなど;鎮静剤、例えば、ベンゾジアゼピン(benzodiazapine)およびバルビツレートなど;抗不安剤、例えば、ロラゼパム、ブロマゼパム、およびジアゼパムなど;ペプチド剤およびバイオポリマー剤、例えば、カルシトニン、ロイプロリドおよび他のLHRHアゴニスト、ヒルジン、シクロスポリン、インスリン、ソマトスタチン、プロチレリン、インターフェロン、デスモプレシン、ソマトトロピン、チモペンチン、ピドチモド、エリスロポエチン、インターロイキン、メラトニン、顆粒球/マクロファージ-CSF、およびヘパリン;抗悪性腫瘍剤、例えば、エトポシド、エトポシドリン酸塩、シクロホスファミド、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ヒドロキシウレア、ロイコボリンカルシウム、タモキシフェン、フルタミド、アスパラギナーゼ、アルトレタミン、ミトタン、およびプロカルバジン塩酸塩;下剤、例えば、センナ濃縮物、カサンスラノール、ビサコジル、およびピコスルフェートナトリウム;下痢止剤、例えば、ジフェノキシン塩酸塩、ロペラミド塩酸塩、フラゾリドン、ジフェノキシレート塩酸塩(hdyrochloride)、および微生物など;ワクチン、例えば、細菌性およびウイルス性ワクチンなど;抗菌剤、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、およびマクロライドなど;抗真菌剤、例えば、イミダゾール誘導体およびトリアゾール誘導体など;ならびに核酸、例えば、生物学的タンパク質をコードするDNA配列、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドなどであってよい。
抗がん剤として、アルキル化剤、白金薬剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生剤、抗有糸分裂剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプで送り込む阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシド還元酵素阻害剤、TNFアルファアゴニスト/アンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫調整剤、ホルモン剤および抗ホルモン剤、光力学的薬剤、およびチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
抗生剤として、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、アミカシン、ネオマイシン)、バシトラシン、コルバペネム(例えば、イミペネム/シスラスタチン)、セファロスポリン、コリスチン、メテナミン、モノバクタム(例えば、アズトレオナム)、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、ナトシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、メズロシリン、アズロシリン)、ポリミキシンB、キノロン、およびバンコマイシン;ならびに静菌剤、例えば、クロラムフェニコール、クリンダニアン、マクロライド(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン)、リンコミアン、ニトロフラントイン、スルホンアミド、テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン(demeclocyline))、およびトリメトプリムが挙げられる。メトロニダゾール、フルオロキノロン、およびリタンピンもまた挙げられる。
酵素阻害剤は、酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害剤の例として、エドロホニウムクロリド、N-メチルフィゾスチグミン、ネオスチグミンブロミド、フィゾスチグミン硫酸塩、タクリン、タクリン、1-ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン、p-ブロモテトラミソール、10-(アルファ-ジエチルアミノプロピオニル)-フェノチアジン塩酸塩、カルミダゾリウムクロリド、ヘミコリニウム-3,3,5-ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3-フェニルプロパルギルアミン、N-モノメチル-Lアルギニンアセテート、カルビドパ、3-ヒドロキシベンジルヒドラジン、ヒドララジン、クロルギリン、デプレニル、ヒドロキシルアミン、イプロニアジドリン酸塩、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリド-インドール、ニアラミド、パルギリン、キナクリン、セミカルバジド、トラニルシプロミン、N,N-ジエチルアミノエチル-2,2-ジフェニルバレレート塩酸塩、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(methylxanthne)、パパベリン、インドメタシン(indomethacind)、2-シクロオクチル-2-ヒドロキシエチルアミン塩酸塩、2,3-ジクロロ-a-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4、5-テトラヒドロ-1H-2-ベンズアゼピン塩酸塩、p-アミノグルテチミド、p-アミノグルテチミド酒石酸塩、3-ヨードチロシン、アルファ-メチルチロシン、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、およびアロプリノールが挙げられる。
抗ヒスタミン剤として、中でもピリラミン、クロルフェニラミン、およびテトラヒドロゾリン(tetrahydrazoline)が挙げられる。
抗炎症剤として、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、ピロキシカム、およびフェナム酸)、アセトアミノフェン、フェナセチン、金塩、クロロキン、D-ペニシラミン、メトトレキセートコルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、およびスルフィンピラゾンが挙げられる。
筋弛緩剤として、メフェネシン、メトカルバモール(methocarbomal)、シクロベンザプリン塩酸塩、トリヘキシフェニジル(trihexylphenidyl)塩酸塩、レボドパ/カルビドパ、およびビペリデンが挙げられる。
抗痙攣剤として、アトロピン、スコポラミン、オキシフェノニウム、およびパパベリンが挙げられる。
鎮痛剤として、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン(idomethacin)、スリンダク、トルメチク、イブプロフェン、ピロキシカム、フェナメート、アセトアミノフェン、フェナセチン、モルヒネ硫酸塩、コデイン硫酸塩、メペリジン、ナロルフィン、オピオイド(例えば、コデイン硫酸塩、フェンタニルクエン酸塩、ヒドロコドン酒石酸水素塩、ロペラミド、モルヒネ硫酸塩、ノスカピン、ノルコデイン、ノルモルヒネ、テバイン、ノルビナルトルフィミン、ブプレノルフィン、クロルナルトレキサミン(chlomaltrexamine)、フナルトレキサミン(funaltrexamione)、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロキソン、ナロキソナジン、ナルトレキソン、およびナルトリンドール)、プロカイン、リドカイン(lidocain)、テトラカインおよびジブカインが挙げられる。
眼用薬剤として、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、メタコリン、アドレナリン、コカイン、アトロピン、アルファ-キモトリプシン、ヒアルロニダーゼ、ベタキサロール、ピロカルピン、チモロール、チモロール塩、およびこれらの組合せが挙げられる。
プロスタグランジンは、当技術分野では認識されており、様々な生物学的作用を有する天然に存在する、化学的に関連した、1つのクラスの長鎖ヒドロキシ脂肪酸である。
抗うつ剤は、うつ病を予防または和らげることが可能な物質である。抗うつ剤の例として、イミプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、アモキサピン、ドキセピン、マプロチリン、トラニルシプロミン、フェネルジン、およびイソカルボキサジドが挙げられる。
栄養因子は、その継続的存在が細胞の生存率または寿命を改善する因子である。栄養因子として、制限なしで、血小板由来増殖因子(PDGP)、好中球活性化タンパク質、単球化学誘引物質タンパク質、マクロファージ炎症性タンパク質、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、および黒色腫成長刺激活性;上皮増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(アルファ)、線維芽細胞増殖因子、血小板由来の内皮細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、神経膠由来の増殖神経栄養因子、繊毛様神経栄養因子、神経増殖因子、骨成長/軟骨誘発因子(アルファおよびベータ)、骨形態形成タンパク質、インターロイキン(例えば、インターロイキン阻害剤またはインターロイキン受容体、インターロイキン1からインターロイキン10を含む)、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ、ベータおよびガンマ)、造血因子、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む;腫瘍壊死因子、およびトランスフォーミング増殖因子(ベータ)(ベータ-1、ベータ-2、ベータ-3、インヒビン、およびアクチビンを含む)が挙げられる。
ホルモンとして、エストロゲン(例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール、ジエチルスチルベストロール(diethylstibestrol)、キネストロール、クロロトリアニセン、エチニルエストラジオール、メストラノール)、抗エストロゲン(例えば、クロミフェン、タモキシフェン)、プロゲスチン(例えば、メドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロン、ヒドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル)、抗黄体ホルモン(ミフェプリストーン)、アンドロゲン(例えば、シピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、ダナゾール、テストラクトン)、抗アンドロゲン(例えば、酢酸シプロテロン、フルタミド)、甲状腺ホルモン(例えば、トリヨードチロニン(triiodothyronne)、チロキシン、プロピルチオウラシル、メチマゾール、およびヨージキソド(iodixode))、および下垂体ホルモン(例えば、コルチコトロピン、ソマトトロピン(sumutotropin)、オキシトシン、およびバゾプレシン)が挙げられる。ホルモンは、ホルモン補充療法および/または避妊目的で一般的に利用される。プレドニゾンなどのステロイドホルモンは、免疫抑制剤および抗炎症剤としても使用される。
治療用または診断用薬剤は、骨原性タンパク質であることができる。したがって、一部の実施形態では、治療用または診断用薬剤は、タンパク質のトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーとして公知のタンパク質のファミリーから選択され、これには、アクチビン、インヒビンおよび骨形態形成タンパク質(BMP)が含まれる。最も好ましくは、活性剤は、骨原性活性、および他の成長および分化タイプの活性を有することが開示されたBMPとして一般的に公知の、サブクラスのタンパク質から選択される少なくとも1つのタンパク質を含む。これらのBMPには、BMPタンパク質が含まれ、例えば、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP5、BMP-6およびBMP-7は、米国特許第5,108,922号;同第5,013,649号;同第5,116,738号;同第5,106,748号;同第5,187,076号;および同第5,141,905号に開示され;BMP-8は、PCT公開WO91/18098に開示され;BMP-9は、PCT公開WO93/00432に開示され,BMP-10は、PCT出願WO94/26893に開示され;BMP-11はPCT出願WO94/26892に開示され、またはBMP-12またはBMP-13は、PCT出願WO95/16035に開示され;BMP-14;BMP-15は、米国特許第5,635,372号に開示され;またはBMP-16は、米国特許第5,965,403号に開示される。使用することができる他のTGF-βタンパク質として、Vgr-2(Jonesら、Mol. Endocrinol. 611961(1992))ならびにPCT出願WO94/15965;WO94/15949;WO95/01801;WO95/01802;WO94/21681;WO94/15966;WO95/10539;WO96/01845;WO96/02559などに記載されるものを含む任意の成長および分化因子(GDF)が挙げられる。BIP(WO94/01557に開示);HP00269(JP公開第7-250688号に開示);およびBMP-14(MP52、CDMP1およびGDF5としても公知)(PCT出願WO93/16099に開示)も本発明において有用であり得る。上記の出願の全ての開示が参考として本明細書に援用される。使用することができるBMPのサブセットとして、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP-16、BMP-17およびBMP18が挙げられる。当技術分野で公知の他の骨原性薬剤、中でも、例えば、テリパラチド(FORTEO(商標))、CHRYSALIN(登録商標)、プロスタグランジンE2、またはLIMタンパク質なども使用することができる。
治療用または診断用薬剤、例えば、タンパク質またはペプチドは、タンパク質組成物から、組み換え技術により生成、または精製することができる。活性剤は、例えば、BMPなどのTGF-β、または他のダイマータンパク質である場合、ホモダイマーであることもできるし、または他のBMP(例えば、BMP-2およびBMP-6のそれぞれ1つのモノマーで構成されるヘテロダイマー)またはTGF-βスーパーファミリーの他のメンバー、例えば、アクチビン、インヒビンおよびTGF-β1(例えば、BMPおよびTGF-βスーパーファミリー関連メンバーのそれぞれ1つのモノマーで構成されるヘテロダイマー)などと共にヘテロダイマーになることもできる。このようなヘテロダイマータンパク質の例は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、公開されたPCT特許出願WO93/09229に記載されている。
治療用または診断用薬剤は、追加の薬剤、例えば、Hedgehog、Frazzled、Chordin、Noggin、CerberusおよびFollistatinタンパク質などをさらに指すことができる。これらのタンパク質ファミリーは、Sasaiら、(1994年)、Cell、791779~790頁(Chordin);PCT特許公開WO94/05800(Noggin);およびFukuiら、Devel. Biol.、159巻:1~31頁(1993年)(Follistatin)に一般的に記載されている。Hedgehogタンパク質は、WO96/16668;WO96/17924;およびWO95/18856に記載されている。Frazzledタンパク質ファミリーは、最近発見されたタンパク質ファミリーであって、Frizzledとして公知の受容体タンパク質ファミリー細胞外結合ドメインに対して高い相同性を有する。Frizzled遺伝子およびタンパク質ファミリーは、Wangら、Biol. Chem.、271巻:44684476頁(1996年)に記載されている。活性剤はまた、他の溶解性受容体、例えば、PCT特許公開WO95/07982で開示された切断された溶解性受容体などを含むことができる。WO95/07982の教示から、切断された溶解性受容体が、多くの他の受容体タンパク質のために調製することができることは当業者であれば認識している。上記刊行物は、本明細書で参照により本明細書に組み込まれている。
本発明のヒドロゲルは細胞を含んでもよい。本発明のヒドロゲルにより封入されるのに適している細胞として、これらに限定されないが、幹細胞(胚幹細胞、間葉幹細胞、骨髄由来の幹細胞および造血幹細胞)、軟骨細胞(chrondrocytes)前駆細胞、膵臓前駆細胞、筋原細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト,神経細胞、グリア細胞、アストロサイト、前脂肪細胞、含脂肪細胞、血管内皮細胞、毛髪卵胞幹細胞、内皮前駆細胞、間葉細胞、神経幹細胞および平滑筋前駆細胞が挙げられる。
一部の実施形態では、細胞は遺伝子修飾された細胞である。細胞は、所望の化合物、例えば、生理活性剤、増殖因子、分化因子、サイトカインなどを発現および分泌するよう遺伝子修飾することができる。目的の化合物を発現および分泌するために細胞を遺伝的に修飾する方法は当技術分野で公知であり、当業者により簡単に適応可能である。
幹細胞に再プログラム化された分化した細胞もまた使用することができる。例えば、Oct3/4、Sox2、c-MycおよびKlf4の形質導入により、ヒト皮膚細胞は胚幹細胞に再プログラム化される(Junying Yuら、Science、2007年、318巻:1917~1920頁 およびTakahashi K.ら、Cell、2007年、131巻:1~12頁)。
組成物への組込みに対して有用な細胞は、任意の供給源、例えば、哺乳動物に由来し得る。例えば、細胞はヒト、ラットまたはマウス由来のものであってよい。ヒト細胞として、これらに限定されないが、ヒト心筋細胞-成人(HCMa)、ヒト皮膚線維芽細胞-胎児(HDF-f)、ヒト表皮性ケラチノサイト(HEK)、ヒト間葉幹細胞-骨髄、ヒト臍帯間葉幹細胞、人毛卵胞の内毛根鞘細胞、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、およびヒト臍静脈平滑筋細胞(HUVSMC)、ヒト内皮前駆細胞、ヒト筋原細胞、ヒト毛細血管内皮細胞、およびヒト神経幹細胞が挙げられる。
例示的ラットおよびマウス細胞として、これらに限定されないが、RN-h(ラットニューロン-海馬の)、RN-c(ラットニューロン-皮質)、RA(ラットアストロサイト)、ラット後根神経節細胞、ラット神経前駆細胞、マウス胚幹細胞(mESC)、マウス神経の前駆細胞、マウス膵臓前駆細胞、マウス間葉細胞およびマウス内胚葉細胞が挙げられる。
一部の実施形態では、組織培養物細胞株を本明細書に記載のヒドロゲルに使用することができる。細胞株の例として、これらに限定されないが、C166細胞(12日目のマウス胎仔の卵黄嚢細胞)、C6グリア細胞腫細胞株、HL1(心筋細胞株)、AML12(非トランスフォーミング肝細胞)、HeLa細胞(子宮頸がん細胞株)およびチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)が挙げられる。
当業者であれば、このような細胞を配置、単離および増大することができる。加えて、細胞培養物の基本原理、ならびに再生医療のための細胞を配置、単離および増大、ならびに調製するための方法は、両方ともその内容がその全体において本明細書中に参照により組み込まれている「Culture of Cells for Tissue Engineering」編集者:Gordana Vunjak-Novakovic、R. Ian Freshney、2006年、John Wiley & Sons, Inc., and Heath C. A.、Trends in Biotechnology、2000年、18巻:17~19頁に記載されている。
一実施形態では、生物製剤は、ペプチド、例えば、250kDaまたはそれ未満の分子量を有するペプチドであってもよい。さらなる実施形態では、ペプチドは、血管新生因子、例えば、FGF、VEGF、VEGFR、IGF、NRP-1、Ang1、Ang2、PDGF、PDGFR、TGF-β、エンドグリン、TGF-β受容体、MCP-1、インテグリン、インテグリンリガンド(例えば、RGDペプチド)、VE-カドヘリン、CD31、エフリン、プラスミノゲン活性因子、プラスミノゲン活性因子阻害剤-1、eNOS、COX-2、AC133、ID1またはID3である。具体的な実施形態では、本発明のヒドロゲルにより封入されたペプチドはVEGFである。
生物製剤、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の薬剤(例えば、抗原性薬剤)などは、精製および/または単離される。具体的には、本明細書で使用される「単離した」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、組換え型技術で生成した場合、他の細胞物質もしくは培地を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%(乾燥重量)である。本明細書の調製物はまた、目的の化合物の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、および最も好ましくは少なくとも約99重量%であることができる。例えば、精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約98重量%、約99重量%または約100重量%(w/w)である。純度は、任意の適当な標準的方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により測定される。精製されたまたは単離したポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然の状態でそれに隣接する遺伝子または配列を含まない。精製されたとはまた、ヒト対象への投与に対して安全である滅菌度、例えば、感染性または毒性の薬剤を含まないことを定義している。
同様に、「実質的に純粋」とは、ヌクレオチド、ポリペプチド、または他の化合物が、それが自然に伴う構成成分から分離されていることを意味する。通常、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらの少なくとも約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約99重量%、またはさらに100重量%さえもが、これらに自然に伴うタンパク質および天然の有機分子を含まない場合、実質的に純粋である。例として、合成化合物、組換え型化合物(例えば、ペプチド、タンパク質、核酸)または精製した化合物、例えば、クロマトグラフィー法を含む標準的手順で精製された化合物などが挙げられる。
「単離した核酸」とは、その構造が、任意の天然に存在する核酸の構造と同一ではない、または3個超の別々の遺伝子に及ぶ、天然に存在するゲノム核酸の任意の断片の構造と同一ではない核酸である。この用語は、例えば、以下を網羅する:(a)天然に存在するゲノムのDNA分子の一部ではあるが、それが自然に生じている生物のゲノムにおいて、分子のその部分をフランキングしている核酸配列の両方によりフランキングされないDNA;(b)ベクターに、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに、生成される分子が任意の天然に存在するベクターもしくはゲノムDNAと同一にならないような方式で組み込まれた核酸;(c)別々の分子、例えば、cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)で生成された断片、または制限断片;および(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち、融合タンパク質をコードしている遺伝子の部分である組換え型ヌクレオチド配列。本発明の開示に従い単離した核酸分子は、合成的に生成された分子、ならびに化学的に変更させた、および/または修飾された骨格を有する任意の核酸をさらに含む。
本発明のヒドロゲルに、もしくは本発明のヒドロゲルに封入されたリポソームに封入することができる治療用または診断用薬剤は、STINGアジュバント、CRISPR-Cas9試薬および破壊されたがん細胞に由来するアジュバント負荷細胞内ベシクルであってよい。
一実施形態では、治療用または診断用薬剤はまたワクチンであってもよい。
ヒドロゲルのポリマー(例えば、アルギネートポリマー)は、約1~90%架橋されていてもよく、例えば、少なくとも約1%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%または約70%架橋されていてもよい。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。例えば、ヒドロゲルのポリマーは、約1%~約10%、約7%~約15%、約12%~約20%、約15%~約30%、約20%~約40%、約30%~約50%、約45%~約65%または約50%~約90%架橋されていてもよい。
「架橋密度」という用語と交換可能なように使用される「%架橋した」という用語は、互いに反応したアルギネートモノマー1モル当たりの、コンジュゲートしたクリック部分のモル数を指す。
ポリマー(例えば、アルギネート)は、酸化されている(例えば、高酸化)、還元されている、またはこれらの混合物であることができる。例えば、本発明のヒドロゲルは、多糖ポリマーの混合物、例えば、アルゴキシノールおよびアルゴキサラートを含むアルギネートポリマーを含み得る。場合によっては、酸化ポリマーまたは部分的酸化ポリマーは生分解性である。例えば、酸化アルギネートまたは部分的酸化アルギネートを含むヒドロゲルは生分解性である。
治療用もしくは診断用薬剤、または治療用もしくは診断用薬剤を封入している脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームまたはビロソームは、本発明のヒドロゲルから持続放出方式で、例えば、一定速度で、所与の時間数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24時間;または日数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8日間;または週数、例えば、1、2、3、4、5、6、7または8週間;または月数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12カ月間放出される。治療用もしくは診断用薬剤または脂質ベースのナノ粒子、例えば、治療用もしくは診断用薬剤を封入しているリポソームもしくはビロソームが本発明のヒドロゲルから一定速度で放出される場合、所与の期間にヒドロゲルから放出される治療用もしくは診断用薬剤の量または脂質ベースのナノ粒子の量はほぼ同じ、例えば、所与の期間の直前または直後の期間の間、ヒドロゲルから放出される治療用もしくは診断用薬剤または脂質ベースのナノ粒子の量の約0%~約20%の範囲内である。
治療用もしくは診断用薬剤または治療用もしくは診断用薬剤を封入している脂質ベースのナノ粒子の放出速度は、ヒドロゲルの調製中に1つまたは複数のパラメーターを変化させることにより調整することができる。このようなパラメーターとして、これらに限定されないが、クリック置換度;%多糖酸化;架橋反応(ゲル化)中のクリックコンジュゲートした多糖の濃度;または取り囲んでいる環境のpHが挙げられる。
クリック置換度は、酸化多糖および還元多糖、または高酸化多糖、例えば、アルゴキシノールもしくはアルゴキサラートとのクリックコンジュゲーション反応において、クリック試薬のモル当量の数を変えることによって調整することができる。例えば、クリックコンジュゲーション反応におけるクリック試薬のモル当量の数を増加させることによって、本発明の多糖にコンジュゲートするクリック分子の数を増加させることができる。別の例では、クリックコンジュゲーション反応において、クリック試薬のモル当量の数を低減させることによって、本発明の多糖にコンジュゲートするクリック分子の数を低減させることができる。一実施形態では、クリックコンジュゲーション反応物は、約1~約2000モル当量のクリック試薬、例えば、約1、約5、約10、約20、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950または約1000モル当量のクリック試薬を含み得る。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。例えば、クリックコンジュゲーション反応物は、約1~約5、約2~約10、約5~約10、約10~約50、約40~約150、約100~約400、約300~約500、約400~約1000、約500~約1500または約1500~約2000モル当量のクリック試薬を含み得る。
一実施形態では、多糖、例えば、酸化多糖および還元多糖、または高酸化多糖(例えば、アルゴキシノールもしくはアルゴキサラートを含む)は約0.01%~約90%、例えば、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%または約90%であるクリック置換度を含み得る。列挙された値の中間の範囲もまた本発明の一部であることが意図されている。例えば、多糖は、約0.01%~約0.05%、約0.01%~約1%、約0.1%~約5%、約5%~約15%、約10%~約20%、約15%~約25%、約20%~約35%、約30%~約40%または約35%~約50%クリック置換されていてもよい。
また、多糖の%酸化を調整することによって、本発明の多糖にコンジュゲートするクリック分子の数を調整することもできる。例えば、アンモニアボランとのその還元前に、または、例えば、亜塩素酸ナトリウムとのそのさらなる酸化前に、多糖の%酸化をより高くすることにより、追加のアルデヒド部分を作り出すことができ、還元の際にこれらをアルコール部分に変換、またはさらなる酸化の際にカルボン酸部分に変換することで、これがクリック試薬コンジュゲーションに対する部位として機能し得る。
本発明の多糖のクリック置換度を調整することによって、ゲル化までの時間、またはクリックコンジュゲートした多糖の架橋結合、およびヒドロゲルの生成にかかる時間を調整することが可能となり得る。例えば、より高いクリック置換度はより短いゲル化時間をもたらすことができる。
クリック置換度を調整することによって、生成したヒドロゲルにおける架橋密度および細孔の平均直径、すなわち、生成したヒドロゲルのメッシュサイズを調整することも可能にする。例えば、より高いクリック置換度は、ヒドロゲルのより小さな平均細孔直径、またはメッシュサイズをもたらすことができ、これによって、治療用もしくは診断用薬剤または脂質ベースのナノ粒子、例えば、治療用もしくは診断用薬剤を含むリポソームもしくはビロソームの放出速度の低減をもたらすことができる。より高いクリック置換度はまた、ヒドロゲル中に治療用または診断用薬剤を含む脂質ベースのナノ粒子のより長期間の保持をもたらすことができる。
また別の例では、架橋反応中の本発明の多糖の濃度を変化させてもよい。例えば、クリックコンジュゲーション反応における多糖、例えば、クリックコンジュゲート多糖のより高い濃度は、生成したヒドロゲルのより小さなメッシュサイズをもたらすことができ、ひいては、これによって、治療用もしくは診断用薬剤または治療用もしくは診断用薬剤を含む脂質ベースのナノ粒子、例えば、リポソームもしくはビロソームの、本発明のヒドロゲルからの放出速度を低減させることができる。より高いクリック置換度はまた、ヒドロゲル中に治療用もしくは診断用薬剤を含む脂質ベースのナノ粒子のより長期間の保持をもたらすことができる。一部の実施形態では、ヒドロゲル形成の間のクリックコンジュゲート多糖の濃度、例えば、ヒドロゲルの形成の直前の溶液に存在するアルギネート物質の濃度は、約0.01%~約50%w/v、例えば、約0.01%~約10%w/v、約0.1%~約5%w/v、約1%~約15%w/v、約10%~約30%w/v、約12%~約35%w/v、約15%~約25%w/v、約20%~約45%w/vまたは約35%~約50%w/vであり得る。
本発明のヒドロゲル、例えば、アルギネートを含むヒドロゲル、例えば、アルゴキシノールおよび/またはアルゴキサラートを含むヒドロゲルなどは、宿主または対象、例えば、ヒト体内に存在する内因性酵素により分解されない。本発明のヒドロゲルは、酸性またはアルカリ性条件に曝露された場合、化学的に分解される、例えば、加水分解され得る。酸性条件は6.5またはそれ未満のpHを含み、アルカリ性条件は8またはそれよりも高いpHを含む。理論に制約されることを望むことなく、本発明のヒドロゲルの化学分解速度はpH依存性であると考えられている。例えば、pH2での本発明のヒドロゲルの化学分解速度は、pH6での化学分解速度よりも高く、pH8での本発明のヒドロゲルの化学分解速度はpH12での化学分解速度よりも高い。
本発明のヒドロゲルが、酸性またはアルカリ性条件に曝露された場合、ヒドロゲル中に含まれるカーゴ、例えば、治療用もしくは診断用薬剤、または脂質ベースのナノ粒子、例えば、治療用もしくは診断用薬剤を封入しているリポソームもしくはビロソームは、中性のpH、例えば、pH7.4でのその放出速度と比較して、より速い速度でヒドロゲルから放出される。例えば、腫瘍内環境は6.5またはそれ未満の酸性pHによって特徴付けられ得るので、本発明のヒドロゲルからのカーゴ放出速度を腫瘍内環境において増加させ、これによって、抗がん剤の持続したおよび標的送達を可能にすることができる。
V.本発明のヒドロゲルに封入された脂質ベースのナノ粒子
本発明はまた、治療用もしくは診断用薬剤を封入している脂質ベースのナノ粒子およびリポソームを封入している本発明のヒドロゲルを含むドラッグデリバリー組成物を提供する。本明細書で使用される「脂質ベースのナノ粒子」という用語は、脂質を含み、対象への治療用または診断用薬剤の送達のために使用することができる任意のナノ粒子を指す。一実施形態では、脂質ベースのナノ粒子はリポソームである。別の実施形態では、脂質ベースのナノ粒子はビロソームである。
リポソームは、全身性酵素的分解からのこのような薬剤の保護を提供し、または抗原提示細胞(APC)を模倣するために使用することができるので、リポソーム中で治療用または診断用薬剤を送達することが望ましいこともある。しかし、リポソームドラッグデリバリーに伴う難題が存在する。例えば、リポソーム組成物は、負荷効率、リポソームにより封入された治療用または診断用薬剤の効力およびリポソームにより封入された治療用または診断用薬剤の全身毒性に対して大きな作用を有し得る。したがって、全身毒性を減少させ、標的組織への薬物カーゴの局在化を提供し得る、持続した、局在的リポソームドラッグデリバリーに対する必要性が存在する。しかし、現在利用可能なリポソーム送達組成物は、リポソームカーゴの放出が数時間または数日間以内に生じ、リポソームカーゴを保持することができない。当技術分野で現在利用可能な組成物はまた、例えば、インタクトなリポソームが、サイトゾル送達のために、カーゴを、細胞膜を横断させる必要がある場合など、リポソームを標的位置にインタクトで送達することが不可能である。
驚くことに、本発明の還元多糖および/または高酸化多糖、例えば、アルゴキシノールおよび/またはアルゴキサラートを含む、例えば、本明細書に記載の方法を使用して作製された多糖は、リポソームを封入するために使用することができるヒドロゲルを調製するのに特に有用であることが発見された。具体的には、驚くことに、本発明のヒドロゲル、例えば、クリック試薬にコンジュゲートしたアルゴキシノールおよび/またはアルゴキサラートを含むアルギネートから調製したヒドロゲルは長い期間にわたりインタクトなリポソームを保持することができ、インタクトなリポソームを対象内の所望の位置、例えば、細胞のサイトゾルに送達することができることが発見された。
本明細書で使用される場合、「インタクトなリポソーム」という用語は、それがヒドロゲルにより封入されている間、または宿主または対象、例えば,ヒトの所望の位置に送達される処理の間、そのサイズ、例えば、平均直径を保持するリポソームを含む。インタクトなリポソームとは、治療用インプットに類似しており、他のリポソームと癒合して、より大きなサイズ、例えば、より大きな平均直径の多分散系リポソームを生成することも、または、より小さなリポソームもしくはミセルへと断片化することもないリポソームである。
リポソームは、宿主、例えば、対象、例えば、ヒトなどの体内で、リポソームを封入しているヒドロゲルが分解された後、所望の位置、例えば、細胞のサイトゾルに、インタクトな形態で送達され得る。1つの例では、ヒドロゲルは、アルギネート、例えば、アルゴキシノールまたはアルゴキサラートを含み、これは、宿主の内因性酵素による分解を受けにくい。アルギネート、例えば、アルゴキシノールまたはアルゴキサラートは宿主の内因性酵素による分解を受けにくいので、アルギネートを含むヒドロゲルはリポソームを長時間の間保持することが可能である。例えば、本発明のリポソームは、少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、少なくとも45日、少なくとも50日、少なくとも55日、少なくとも60日、少なくとも65日、少なくとも70日、少なくとも75日または少なくとも80日にわたってヒドロゲルに封入されたままである。
宿主または対象の体内の所望の位置への送達中にインタクトなままであるリポソームとは、送達中に平均サイズ、例えば、平均直径を保持するリポソームである。例えば、本発明のヒドロゲルによって封入されたインタクトなリポソームの平均直径は、封入前の同じリポソームの平均直径の約50%、例えば、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%または約1%以内であるか、または標準の平均直径の約25%、例えば、約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%または約1%以内である。標準は、ヒドロゲルを用いた封入に使用したリポソームと同じ方式で調製したリポソームであってよい。リポソームのサイズは、当業者に公知の任意の方法、例えば、動的光散乱(DLS)で測定することができる。
本発明との関連で有用なリポソームは、治療用または診断用薬剤を送達するために使用することができる、当技術分野で公知の任意のリポソームであってよい。例えば、リポソームは、中性リポソーム、例えば、荷電していない脂質を含むリポソーム(Niosome)であってよい。このような脂質の例として、これらに限定されないが、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)およびコレステロール(CHOL)が挙げられる。リポソームはまた、荷電したリポソーム、例えば、正荷電または負荷電脂質を含むカチオン性またはアニオン性リポソームなどであってもよい。正荷電脂質の非限定的例として、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル-硫酸塩(DOTAP)および水素化大豆ホスファチジルコリン(soy phosphatidilcholine)(Hydro Soy PC)が挙げられる。負荷電脂質の非限定的例として、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)が挙げられる。一部の実施形態では、本発明との関連で有用なリポソームは、治療用リポソームまたは診断用リポソーム、例えば、上に記載されているような治療用または診断用薬剤を含むリポソームである。
ビロソームは、ビロソームの標的細胞との縮合を可能にするための、ウイルス由来のタンパク質を組み込んだ単層リン脂質膜(単層または二層のいずれか)ベシクルからなる薬物またはワクチン送達機構である。ビロソームは、複製できないが、純粋な溶融活性のあるベシクルである。本発明との関連で有用なビロソームは、任意のウイルス由来のタンパク質を送達するために使用することができる、当技術分野で公知の任意のビロソームであってよい。一部の実施形態では、ビロソームは、インフルエンザウイルス由来のタンパク質、例えば、赤血球凝集素またはノイラミニダーゼを含み得る。一部の実施形態では、ビロソームは、治療用または診断用ビロソーム、例えば、上に記載されているような治療用または診断用薬剤を含むビロソームである。一部の実施形態では、ビロソームはワクチンを含む。
VI.本発明の医薬組成物
対象への投与のため、本発明のヒドロゲルは、薬学的に許容される(例えば、滅菌の)組成物で提供できる。したがって、本明細書に記載の別の態様は、ヒドロゲルと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。これらの薬学的に許容される組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(添加物)および/または希釈剤と一緒に製剤化されたヒドロゲルを含む。以下に詳細に記載されているように、本発明の開示の医薬組成物は、以下に対して適応させたものを含めて、固形のまたは液体形態での投与に対して特異的に製剤化することができる:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性溶液または懸濁剤)、ロゼンジ剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、錠剤(例えば、口腔内頬側、舌下、および/または体内吸収を標的とするもの)、ボーラス、散剤、粒剤、舌への適用のためのペースト剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内(例えば、ボーラスまたは点滴)もしくは硬膜外注射、例えば、無菌溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤として;(3)局所的適用、例えば、クリーム剤、軟膏剤、または制御放出性パッチまたは皮膚に適用するスプレーとして;(4)膣内または直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム剤または発泡剤として;(5)舌下;(6)眼;(7)経皮的;(8)経粘膜;または(9)経鼻的。さらに、化合物は、患者にインプラントする、またはドラッグデリバリーシステムを使用して注射することができる。例えば、すべての内容が本明細書中に参照により組み込まれている、Urquhartら、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 24巻: 199~236頁(1984年); Lewis編、「Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals」(Plenum Press、New York、1981年);米国特許第3,773,919号;および米国特許第35 3,270,960号を参照されたい。
本明細書で使用されている「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を生じることなく、妥当なベネフィットリスク比に見合うように、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適切である、化合物、物質、組成物、および/または剤形を指す。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のため、組成物は、FDA Office of Biological Standards(FDAの生物学的基準)により要求されているような、滅菌性、発熱性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解されている。
本明細書で使用されている「薬学的に許容される担体」という用語は、対象化合物を、身体の1つの器官、または部分から、身体の別の器官、または部分に運ぶまたは輸送することに関与している、薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造補助剤(例えば、滑沢剤、タルクマグネシウム、カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、またはステル酸)、または溶媒封入物質などを意味する。各担体は、製剤の他の成分と相容性があり、患者に対して有害ではないという意味で「許容される」ことが必要である。薬学的に許容される担体として機能することができる物質の一部の例として、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロースなど;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど;(3)セルロース、およびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロースおよび酢酸セルロースなど;(4)粉末状トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなど;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤ワックスなど;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコールなど;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール(PEG)など;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンを含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ酸無水物;(22)充填剤、例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸など;(23)血清構成成分、例えば、血清アルブミン、HDLおよびLDLなど;(22)C2~C12アルコール、例えば、エタノールなど;および(23)医薬製剤に利用される他の無毒性の相容性物質。湿潤剤、着色剤、剥離剤、コーティング剤、崩壊剤、結合剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、プロテアーゼ阻害剤、可塑剤、乳化剤、安定化剤、粘度増加する薬剤、フィルム形成剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤および抗酸化剤もまた製剤中に存在することができる。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は本明細書で交換可能なように使用される。
治療剤を含む本発明のヒドロゲルは、対象内のin vivoの位置に送達することができる。例示的なin vivoの位置として、これらに限定されないが、創傷、外傷または疾患の部位が挙げられる。ヒドロゲルは、in vivoの位置に送達できる、例えば、組成物を対象にインプラントすることができる。インプラントされているヒドロゲル、すなわち、埋め込み型デバイスは、1つまたは複数の添加物をさらに含むことができる。添加物は、分解性(生分解性)ポリマー、マンニトール、デンプン糖、イノシット、ソルビトール、グルコース、ラクトース、サッカロース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、アミノ酸、塩化マグネシウム、クエン酸、酢酸、ヒドロキシル-ブタン二酸、リン酸、グルクロン酸、グルコン酸、ポリ-ソルビトール、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、アルミニウムステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、デンプンまたはこれらの混合物であってよい。
埋め込み型デバイスは、これらに限定されないが、回転楕円体、立方体、多面体、プリズム、円柱、桿体細胞、ディスク、または他の幾何学的形状を含めた、実質的にあらゆる規則的なまたは不規則な形状を有することができる。したがって、一部の実施形態では、インプラントは、直径約0.5~約10mmおよび長さ約0.5~約10cmの円柱状形態のものである。好ましくは、その直径は約1~約5mmであり、長さは約1~約5cmである。
一部の実施形態では、埋め込み型デバイスは球状形態のものである。埋め込み型デバイスが球状形態である場合、その直径は、直径約0.5~約50mmの範囲であることができる。一部の実施形態では、球状インプラントの直径は約5~約30mmである。好ましくは、直径は約10~約25mmである。
一部の実施形態では、本発明のヒドロゲルは、ドラッグデリバリーデバイスまたは薬物デポー剤を調製するために使用することができる。ドラッグデリバリーデバイスはまた生分解性および再充填可能であってもよい。再充填可能な生分解性ドラッグデリバリーデバイスは、例えば、それぞれの全内容が本明細書によって参照により本明細書に組み込まれているPCT/US2015/024540および米国出願第14/878,578号に記載されている。再充填可能な生分解性ドラッグデリバリーデバイスは、再充填薬物にコンジュゲートした標的と相互作用可能な標的認識部分を含む。
一部の実施形態では、再充填可能な生分解性ドラッグデリバリーデバイスを調製するために使用される本発明のヒドロゲルは、上に記載されているような2つの異なるクリックペアに属する少なくとも2つのクリック試薬にコンジュゲートした多糖を含み得る。例えば、多糖は、再充填薬物にコンジュゲートしたそのクリックペアと反応することにより、ドラッグデリバリーデバイスに対する標的認識部分として機能する第1のクリック試薬を含み得る。多糖はまた、上に記載されているような架橋剤として機能する、またはある部分、例えば、治療剤を多糖にコンジュゲートするために機能する第2のクリック試薬を含み得る。一実施形態では、第1のクリック試薬および第2のクリック試薬は交差反応しない、すなわち、互いに反応せずに、これらのクリックペアのみと反応する。
他の実施形態では、本発明のヒドロゲルは、上に記載されているような再充填可能な生分解性ドラッグデリバリーデバイスのための再充填薬物を調製するために使用することができる。再充填薬物を調製するために使用されるヒドロゲルは、上に記載されているような少なくとも2つのクリック試薬にコンジュゲートした多糖を含むことができ、ここでは、少なくとも1つのクリック試薬は、ドラッグデリバリーデバイスにコンジュゲートしたそのクリックペアと反応することによって、標的として機能することができる。
VII.本発明のヒドロゲルを使用した処置方法
本発明はまた、それを必要とする対象を処置する方法に関する。本方法は、本発明のヒドロゲル、剤形、医薬組成物または埋め込み型ドラッグデリバリーデバイスの有効量を対象に投与することを含む。
本明細書で使用されている「投与する」という用語は、所望の作用が生じるように、所望の部位における組成物の少なくとも部分的局在化をもたらす方法または経路により、組成物を対象内に配置することを指す。本明細書に記載の化合物または組成物は、当技術分野で公知の任意の適当な経路で投与することができ、これらの経路は、これらに限定されないが、経口経路、または静脈内、筋肉内、皮下、経皮的、気道(エアゾール剤)、肺、経鼻、直腸、および局所的(口腔内頬側および舌下を含む)投与を含む非経口経路を含む。
例示的投与モードとして、これらに限定されないが、注射、点滴、滴下、吸入、または摂取が挙げられる。「注射」は、制限なしで、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、側脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内注射および点滴を含む。好ましい実施形態では、組成物は静脈点滴または注射により投与される。
投与はまた、経粘膜的または経皮的手段によるものでもよい。経粘膜的なまたは経皮的投与に対して、バリアに浸透するのに適当な浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、一般的に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜的投与のための、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜的投与は、点鼻薬または坐剤の使用を介して達成できる。経皮的投与に対して、化合物は、当技術分野で一般的に公知の軟膏剤、軟膏、ゲル剤、またはクリーム剤へと製剤化される。
一部の実施形態では、投与は、組成物、例えば、本明細書に記載のヒドロゲルを対象にインプラントすることを含む。
本明細書で使用されている「治療有効量」という用語は、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィットリスク比で、対象内の少なくとも細胞の亜集団においていくらかの所望の治療効果を生じるのに有効な化合物、物質、または本明細書に記載の化合物を含む組成物の量を意味する。したがって、「治療有効量」とは、疾患を処置するために対象に投与された場合、疾患に対するこのような処置を実行するのに十分な量を意味する。
有効量の判定は十分に当業者の能力の範囲内である。一般的に、実際の有効量は、特定の化合物、使用技術または適用技術、所望の作用、作用および副作用の期間、対象の病歴、年齢、状態、性別、ならびに対象における医学的状態の重症度およびタイプ、ならびに他の薬学的活性のある薬剤の投与により変わり得る。したがって、本明細書に記載の化合物の有効用量は、対象において少なくともいくらかの所望の治療効果を生じるのに十分な量である。
細胞培養物アッセイおよび動物実験から得たデータは、ヒトにおける使用のための、ある範囲の投与量を策定することにおいて使用することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、わずかな毒性を有するまたは毒性を有さないED50を含む循環濃度の範囲内に位置する。投与量は、利用する剤形および利用する使用または投与経路に応じて、この範囲内で異なってもよい。
有効用量は、最初に細胞培養物アッセイから予測することができる。用量は、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する治療薬の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するために、動物モデルで策定できる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定できる。任意の特定の投与量の作用は、適切なバイオアッセイでモニターすることができる。
一般的に、「処置」または「処置する」という用語は、患者への治療剤の適用または投与、または患者から単離した組織または細胞株への治療剤の適用または投与と定義され、前記患者は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を有し、その目的は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を治癒する、修復する、軽減する、和らげる、変更させる、救済する、緩和する、改善するまたは影響を与えることである。したがって、処置することは、抑制する、阻害する、予防する、処置すること、またはこれらの組合せを含むことができる。処置するとは、中でも、進行を持続する時間を増加させる、寛解を早める、寛解を誘発する、寛解を増強させる、回復を速める、代替の治療薬の効力を増加させる、もしくは代替の治療薬に対する耐性を低減させる、またはこれらの組合せを指す。「抑制する」または「阻害する」とは、中でも、症状の発症を遅らせる、疾患の再発を予防する、再発症状の発現の数または頻度を低減させる、症候性症状の発現の間の潜伏時間を増加させる、症状の重症度を減少させる、急性症状の発現の重症度を減少させる、症状の数を減少させる、疾患関連の症状の発症率を減少させる、症状の潜伏時間を減少させる、症状を緩和する、2次的症状を減少させる、2次感染を減少させる、患者の生存を長引かせること、またはこれらの組合せを指す。一実施形態では、症状は1次であり別の実施形態では、症状は2次である。「1次」とは、障害、例えば、糖尿病の直接的結果である症状を指す一方で、2次とは、第1次的原因から誘導されたまたはその結果として起こる症状を指す。症状は、疾患または病理学的な状態の任意の所見であってよい。
したがって、本明細書で使用される「処置」または「処置する」という用語は、本明細書に記載の化合物の任意の投与を含み、以下を含む:(i)疾患になり得るが、これをまだ経験していない、または疾患の病理もしくは症候を示していない対象が疾患に罹るのを予防すること;(ii)疾患の病理もしくは症候を経験もしくは示している対象において疾患を阻害する(すなわち、病理および/または症候のさらなる発達を止める);または(iii)疾患の病理もしくは症候を経験もしくは示している対象において疾患を緩和する(すなわち、病理および/または症候を逆転する)。
疾患または障害の「処置」、「予防」または「緩和」とは、このような疾患または障害の発症を遅延または予防すること、このような疾患または障害に伴う状態の進行、悪化もしくは劣化、重症度の進行を逆転する、軽減する、緩和する、阻害する、遅らせる、または停止することを意味する。一実施形態では、疾患または障害の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減する。
処置の効力は、障害を診断するための任意の公知の方法に関連して決定される。障害の1つまたは複数の症状の軽減は、化合物が臨床的利益を付与することを示している。上記に記載されている治療方法のいずれかは、例えば、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も好ましくは、ヒトを含めた、任意の適切な対象に適用することができる。
本明細書で使用されている「対象」という用語は、本発明のヒドロゲルまたは埋め込み型ドラッグデリバリーデバイスを投与されることにより利益を受けることができる任意の対象を含む。「対象」という用語は、動物、例えば、脊椎動物、両生類、魚、哺乳動物、ヒト以外の動物を含み、これには、ヒトおよび霊長類、例えば、チンパンジー、サルなどが含まれる。本発明の一実施形態では、対象はヒトである。
「対象」という用語はまた、農業用として生産用家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ロバ、ラクダ、バッファロー、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウおよびハチ;および飼い慣らしたペット、例えば、イヌ、ネコ、かごの鳥および水槽魚、およびまたいわゆる試験動物、例えば、ハムスター、モルモット、ラットおよびマウスを含む。
一実施形態では、本発明は、耳に関連する障害を処置するための方法を提供する。本方法は、それを必要とする対象に、耳に関連する障害、例えば、耳炎などを処置するためのヒドロゲル、または剤形を投与することを含む。このような剤形は、それを必要とする対象の外耳道に投与される。剤形は、様々な治療剤、例えば、少なくとも1種の抗生剤を含み得る。治療剤を耳に送達するためのドラッグデリバリーデバイスは、例えば、全内容が本明細書によって参照により本明細書に組み込まれている、US2014/0107423に記載されている。
別の実施形態では、本発明はまた、眼に関連した障害を処置するためのヒドロゲル、または剤形を提供する。本方法は、それを必要とする対象の眼に、本発明のヒドロゲル、または剤形を投与することを含む。本発明のヒドロゲル、または剤形は少なくとも1種の治療剤を含み得る。眼用剤形に使用することができる治療剤の非限定的例として、例えば、薬学的に有効濃度の、抗生剤、コルチコイド、局所麻酔薬、鼻詰まり薬、非ステロイド性抗フロギスティック、ウイルス増殖抑制剤、殺菌剤、コルチゾン、抗アレルギー性活性物質、プロスタグランジン類似体、活性物質クラスの抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドからの活性物質、抗アレルギー性活性物質、パントテン酸誘導体、非ステロイド性抗炎症薬、血管収縮剤および/または抗緑内障活性物質が挙げられる。眼への投与に対して適切な剤形は、例えば、その全内容が本明細書によって参照により本明細書に組み込まれているUS20150139973に記載されている。
本発明はまた、それを必要とする対象において慢性虚血を処置するための方法を提供する。本方法は、本発明のヒドロゲル、剤形、または埋め込み型デバイスの有効量を対象に投与することを含む。一実施形態では、本発明のヒドロゲル、剤形、または埋め込み型デバイスはVEGFを含む。
虚血部位にVEGFを局在的に送達することは、対象の身体において、VEGFの半減期を増加させ、サイドトリートメントに関連する副作用を減少させることができることが以前に見出された。したがって、一実施形態では、ヒドロゲル、剤形または埋め込み型デバイスは、虚血部位に局在的に投与される。一部の実施形態では、ヒドロゲル、剤形または埋め込み型デバイスは、移植前および/または移植後に、生着される組織に投与される。
本発明はまた、それを必要とする対象において、組織を再生するための方法を提供する。本方法は、細胞をさらに含む本発明のヒドロゲル、剤形、または埋め込み型デバイスの有効量を対象に投与することを含む。例えば、細胞は哺乳動物細胞であってよく、組織は哺乳動物組織であってよい。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、再生される組織と同じタイプのものである。他の実施形態では、哺乳動物細胞は幹細胞である。本明細書に提供されている方法の実施形態は、哺乳動物の組織を、細胞をさらに含む本発明のヒドロゲル、剤形、または埋め込み型デバイスと接触させることを含む。
別の例では、対象において組織を再生するための方法は、本明細書に記載のヒドロゲル、剤形、または埋め込み型デバイスを提供することを含み、このヒドロゲルは、ヒドロゲル内に固定化された細胞を含む(すなわち、細胞はヒドロゲルから脱出することなく長時間の間ヒドロゲル内に残留する)。本方法は、組織をヒドロゲルと接触させることを含み、細胞はヒドロゲル内で固定化される。一部の実施形態では、細胞は子孫細胞である。一部の実施形態では、ヒドロゲルは安定したままであり、宿主細胞の浸潤を許さない。
一実施形態では、本明細書に記載のヒドロゲルは、例えば、膵島移植に対して免疫保護バリアとして有用である。場合によっては、膵島移植は、糖尿病、例えば、I型糖尿病に対する処置である。移植される細胞、例えば、膵島などは、免疫反応により破壊される可能性があり、本発明のヒドロゲルは、ヒドロゲルのインプランテーション/注射前に、島細胞などの細胞を封入することが可能である。こうして、ヒドロゲルは、対象において免疫保護バリアとして、機能し、移植される細胞および組織の免疫拒絶を最小限に抑える。
本発明は、以下の実施例によりさらに例示され、これらの実施例は、限定的であると解釈されるべきではない。本出願全体にわたり引用されたすべての参考文献の全内容は、本明細書によって明示的に参照により本明細書に組み込まれる。
(実施例1)
アルギネート中に存在するアルデヒドは、カーゴタンパク質およびクリック試薬と反応することができる。
高分子量および低分子量のアルギネートを過ヨウ素酸ナトリウムとの反応により酸化させた。この目的を達成するために、約265kDaのMWを有するアルギネート(MVGまたはProtanol LF 20/40、FMC Technologies;I-1GまたはI-8、Kimica Corp.)および約32kDaのMWを有するアルギネート(VLVG、FMC Technologies)を、1%w/vの濃度でddH2Oに溶解した。アルギネートモノマーのモルに対するパーセントモル比に基づいた量で、過ヨウ素酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を溶液に加えた。次いで、溶液を暗所で、室温で終夜反応させた。塩化ナトリウムを、0.3Mの濃度まで溶液に加え、酸化した生成物をタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)で精製するか、またはdiH2O中150mMから0mMのNaClに低減する塩勾配に対する大規模な水分変化と共に、12~14kDa MWCO透析管(Spectrum Labs)を終夜使用して透析した。
0%~50%アルデヒドを含有する酸化アルギネートをVEGFと共にインキュベートした。溶解性のある、変性していない、VEGF(2%w/vアルギネート、4mcg/mL VEGF)におけるパーセント変化を、インキュベーションの5日後、ELISA(R&D Systems Cat#DVE00)で測定した。図2aに示されているように、アルデヒドの%増加は、VEGFにおける%変化と直接的に相関し、50%アルデヒドを含有するアルギネートは、VEGFにおける50%変化をもたらす。データは、酸化アルギネートと共にインキュベートしたアルデヒドがVEGFと反応できることを実証している。
20%~50%アルデヒドを含有する酸化アルギネートはまた、クリック試薬テトラジン(Tz)およびノルボルネン(Nb)ともコンジュゲートした。酸化アルギネートは室温で再懸濁後、有意な色の変化を示したが、これは分解に対するアルデヒド濃度の依存性を示している。図2bに示されているのは、再懸濁後、TzおよびNbにコンジュゲートした酸化アルギネートを含有するバイアルの写真である。左から右に以下を示す:
-20%アルデヒドを有するTzにコンジュゲートしたアルギネート;
-20%アルデヒドを有するNbにコンジュゲートしたアルギネート;
-30%アルデヒドを有するTzにコンジュゲートしたアルギネート;
-30%アルデヒドを有するNbにコンジュゲートしたアルギネート;
-40%アルデヒドを有するTzにコンジュゲートしたアルギネート;
-40%アルデヒドを有するNbにコンジュゲートしたアルギネート;
-50%アルデヒドを有するTzにコンジュゲートしたアルギネート;
-50%アルデヒドを有するNbにコンジュゲートしたアルギネート。
データは、アルデヒドがまたクリック試薬と反応して、アルデヒド濃度に依存する方式で、着色された生成物およびイミンを形成することができることを実証している。これらの色のシフトは、クリック部分に対して望ましくない変更を表す。イミンは、加水分解して、酸性条件でアルデヒドに戻すことができる。
(実施例2)
アルギネートアルデヒドの還元
この実験の目的は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、アンモニアボラン(BH3NH3)および亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)と反応した酸化アルギネート中の残留アルデヒド含有量を決定することであった。図3aに例示されているように、水素化ホウ素ナトリウムとアンモニアボランの両方はアルギネート中に存在するアルデヒドと反応して、アルコールを形成し、亜塩素酸ナトリウムはアルデヒドと反応して、カルボン酸を形成する。
アルギネートを過ヨウ素酸ナトリウムで酸化させて、これが5~50%残留アルデヒドを含有するようにした。次いで、酸化アルギネートを水素化ホウ素ナトリウム、アンモニアボランおよび亜塩素酸ナトリウムと反応させ、各反応後、qNMRを使用して残留アルデヒドの%を定量化した。
実施例1に記載されているような手順を使用して、アルギネートの過ヨウ素酸ナトリウム酸化を行った。
酸化アルギネートを水素化ホウ素ナトリウムで還元するため、アルギネート溶液を水素化ホウ素ナトリウム(SB、Sigma-Aldrich)で、SBとアルギネート酸化モノマーとのモル比>1.5:1で処理した。反応を室温で終夜進行させた。塩化ナトリウムを溶液に加えて、濃度0.3Mに到達し、SBで処理した生成物を、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)で精製するか、またはdiH2O中150mMから0mMのNaClに低減する塩勾配に対する大規模な水分変化と共に、12~14kDa MWCO透析管(Spectrum Labs)を終夜使用して透析した。次いで、還元アルギネートを含有する溶液を凍結し、凍結乾燥させた。
酸化アルギネートをアンモニアボランで還元するため、アルギネート溶液をアンモニアボラン(AB)錯体(Sigma-Aldrich)で、ABとアルギネートアルデヒドとのモル比>1.5:1で処理した。反応を室温で終夜進行させた。塩化ナトリウムを溶液に加えて、濃度0.3Mに到達し、ABで処理した生成物を、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)で精製するか、またはdiH2O中150mMから0mMのNaClに低減する塩勾配に対する大規模な水分変化と共に、12~14kDa MWCO透析管(Spectrum Labs)を終夜使用して透析した。次いで、還元アルギネートを含有する溶液を凍結し、凍結乾燥させた。
酸化アルギネートをさらに酸化するため、アルギネート溶液を亜塩素酸ナトリウム(SC)で、SCとアルギネートアルデヒドとのモル比>1.5:1で処理した。亜塩素酸ナトリウムの添加前、ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma-Aldrich)を溶液に、DMSOと亜塩素酸ナトリウムとのモル比5:1で加え、溶液が均質になるまで混合した。反応を室温で終夜進行させた。次いで、塩化ナトリウムを、濃度0.3Mに到達するまで溶液に加え、SC処理した生成物をタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)で精製するか、またはdiH2O中150mMから0mMのNaClに低減する塩勾配に対する大規模な水分変化と共に、12~14kDa MWCO透析管(Spectrum Labs)を終夜使用して透析した。次いで、高酸化アルギネートを含有する溶液を凍結し、凍結乾燥させた。
図3bは、アンモニアボランまたは水素化ホウ素ナトリウムでさらに還元した、または亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化した、酸化アルギネート中に残留する酸化の%を示す棒グラフである。データは、アンモニアボランがアルデヒドを還元するその能力において水素化ホウ素ナトリウムよりも優り、最も低レベルの残留アルデヒドを含有するアルギネートを生成することを示している。この作用はより高いレベルの酸化を有するアルギネートに対して特に顕著である。データはまた、アルデヒドの亜塩素酸ナトリウム酸化は、「最初のDMSO反応条件」(1:1 水:DMSO)で完了に到達しないことを示している。図6kに示されている通り、残留アルデヒドは、反応条件を33:1 水:DMSOに変化させることによって排除することができる。
(実施例3)
酸化アルギネートの還元処理は、カーゴタンパク質に対するアルデヒドの作用を減少させる。
この実験のゴールは、酸化アルギネート中に存在するアルデヒドの、VEGFの生物学的活性に対する作用を評価することであった。この目的を達成するために、過ヨウ素酸ナトリウムとの反応によりアルギネートを酸化させることによって、0%~50%アルデヒドを含有する酸化アルギネートを生成した。次いで、酸化アルギネートを水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、アンモニアボラン(BH3NH3)および亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)と反応させた。アルギネート濃度20mg/mLおよびVEGF濃度4μg/mLで1%BSAを含有するPBS中、37℃で異なるアルギネートをVEGFと共にインキュベートした。溶解性のある、変性していないVEGF(2%w/vアルギネート、4mcg/mLのVEGF)におけるパーセント変化を、インキュベーションの5日後、EBM細胞培養物培地内でまたは1%BSAを含有する溶液中で、ELISA(R&D Systems Cat#DVE00)で測定した。
データは図4aおよび4bに示されている。図4aは、EBM中でのインキュベーションの5日後測定したVEGFにおける%変化を示している。データは、さらに処理されていない酸化アルギネートに対して、VEGFにおける%変化がアルギネート中に含有されているアルデヒドのパーセントに直接的に相関していることを示している(「0」、「1」、「5」、「10」、「15」、「25」および「50」と示した左から7つまでの棒を参照されたい)。VEGFの%変化は、25%および50%のアルデヒドを含有するアルギネートに対して100%に到達している。データはまた、VEGFの%変化が、アンモニアボランと反応させた酸化アルギネートに対して有意に減少していることを示し(「AB5」、「AB10」、「AB15」、「AB25」および「AB50」と示した棒を参照されたい)、最も高い%変化であるVEGF中約60%は、15%のアルデヒドを含有するアルギネートに対して観察される。水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元はVEGFを保護することにおいてあまり有効ではなく、VEGF中のより高い%変化が試験した各アルギネート物質に対して観察される(「SB5」、「SB10」、「SB15」、「SB25」および「SB50」と示した棒を参照されたい)。亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化は、試験したすべての試料に対して測定された有意な%変化をもたらし(「SC5」、「SC10」、「SC15」、「SC25」および「SC50」と示した棒を参照されたい)、これは、その時間点における反応の非効率性により維持される残留アルデヒドによるものである(最初のDMSO反応条件)。
図4bは、1%BSA溶液中でのインキュベーションの5日後に測定されたVEGFの%変化を示している。データは、VEGFの%変化が、さらに処理していない酸化アルギネート物質に対して、30%超に到達し得ることを示している(「0%Ox」、「1%Ox」、「5%Ox」、「10%Ox」、「15%Ox」、「25%Ox」および「50%Ox」と示した左から7つまでの棒を参照されたい)。アンモニアボランを用いた還元処理(「AB5」、「AB10」、「AB15」、「AB25」および「AB50」と示した棒を参照されたい)または水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元処理(「SC5」、「SC10」、「SC15」、「SC25」および「SC50」と示した棒を参照されたい)は、VEGFの%変化を減少させ、水素化ホウ素ナトリウムはアンモニアボランよりも有効であった。亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化処理(最初のDMSO反応条件)は、対照と比較して、VEGFの%変化の増加をもたらした(「SC5」、「SC10」、「SC15」、「SC25」および「SC50」と示した棒を参照されたい)。
図4aおよび4bに示されているデータは、タンパク質カーゴを保護する能力において様々に処理したアルギネートに差異があることを示している。
(実施例4)
クリック試薬置換度は、亜塩素酸ナトリウムとの反応後、酸化アルギネートに対して増加する。
この実験の目的は、クリック試薬とのクリック試薬コンジュゲーション度が、酸化アルギネートと亜塩素酸ナトリウムとの反応後に増加し得るかどうか決定することであった。図1aに示されている通り、クリック試薬は通常、アルギネート中のグルクロン酸に存在するカルボキシレート部分を介してアルギネートにコンジュゲートすることができ、1つのアルギネートモノマー当たり1つのクリック分子をもたらす。以下の過ヨウ素酸ナトリウムを用いたアルギネート酸化後、1つのアルギネートモノマー当たり2つのアルデヒド試薬が生成され、これらもまたイミン結合を介してクリック試薬にコンジュゲートし得る(図1b)。クリック試薬の酸化アルギネートへのこのコンジュゲーションは、カーゴに毒性および損傷をもたらし得る、ならびにクリック試薬の分解をもたらし得る、コンジュゲーション後にアルギネート中に残留する残留アルデヒドにより、最適とはならない(実施例1および3を参照されたい)。さらに、アルデヒドとクリック試薬との間のイミン結合は簡単に加水分解可能であり、アルギネートからのクリック試薬の損失をもたらす。しかし、図1cに示されている通り、酸化アルギネート中に存在するアルデヒドのさらなる酸化は、これらのアルデヒドをカルボン酸に変換し、クリックコンジュゲーションに対して2つの追加部位を提供する。
酸化アルギネートのさらなる酸化がクリックコンジュゲーションを増加させることができるかどうか決定するために、過ヨウ素酸ナトリウムのみと反応させたアルギネート、または過ヨウ素酸ナトリウムで酸化させ(HighOxアルギネート)、亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化させた(アルゴキサラート含有アルギネート)アルギネートをクリック試薬テトラジン(Tz)およびノルボルネン(Nb)とコンジュゲートし、コンジュゲートしたテトラジンおよびノルボルネンの相対量を比較した。この目的を達成するために、実施例1および2に記載されている手順を使用して、過ヨウ素酸ナトリウムおよびSCを使用してアルギネートを酸化した。次いで、これらの生成物を、1-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-イルメタンアミン(ノルボルネンメタンアミン;TCI)または3-(p-ベンジルアミノ)-1,2,4,5-テトラジンのいずれかで修飾した。最初に、SC処理したアルギネートを0.1M MES、0.3M NaCl、pH6.5を、0.5%w/vの濃度で含有する撹拌した緩衝液に溶解した。次に、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS;Sigma-Aldrich)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC;Sigma-Aldrich)をアルギネートに存在する5×モル過剰のカルボン酸基に加えた。次いで、ノルボルネン(Nb)またはテトラジン(Tz)のいずれかを、NbまたはTzとアルギネートモノマーとの定義されたモル比で加えることによって、Alg-NまたはAlg-Tをそれぞれ得た。カップリング反応物を室温で一晩撹拌し、生成物をタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)で精製するか、またはdiH2O中150mMから0mMのNaClに低減する塩勾配に対する大規模な水分変化と共に、12~14kDa MWCO透析管(Spectrum Labs)を終夜使用して透析した。次いで、精製されたAlg-NおよびAlg-Tポリマーを活性炭で処理し、無菌化濾過し(0.22mm)、冷凍乾燥させた。これにより、アルギネートの利用可能なカルボン酸基が様々な置換度を有する、精製されたAlg-NまたはAlg-Tポリマーが生じた。
図5aは、TzおよびNbにコンジュゲートした、0日目でのHighOxアルギネート(上側パネル)およびTzおよびNbにコンジュゲートした、0日目でのHighOx Scアルギネート(下側パネル)を含有するバイアルの写真を示す。Tz-およびNz-コンジュゲート物質はそれぞれ、名目上ピンク色/赤色であり、わずかに不透明である。図5bは、NMRにより測定されたHighOxおよびHighOx SCアルギネート中に存在するTzの相対量を示す。データは、20~50%酸化を含有するアルギネートに対して、HighOxアルギネートと比較して、HighOx SCアルギネートにコンジュゲートした、1.4~2.3倍多くのTz分子が存在することを示しており、これは、アルゴキサラート含有アルギネートは、より多くのコンジュゲーション可能性を有することを示している。
(実施例5)
クリックコンジュゲート酸化アルギネートの特徴付け。
この実験の目的は、クリックコンジュゲートしたHighOx SCアルギネート物質の特性を特徴付け、これをクリックコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質の特性と比較することであった。両方のアルギネート物質の安定性をUV-Visスペクトルの分析により調査した。Tzコンジュゲート物質に対するデータは、図6aおよび6bに示されている。図6aは、28日目における、20~50%酸化を有するTzコンジュゲートしたHighOx SC物質のUV-Visスペクトル(上側パネル)、および14日目における、20%および30%コンジュゲーションの、TzコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質のUV-Visスペクトルを示す。図6bはまたこれらのTzコンジュゲートしたHighOxおよびHighOx SCアルギネート物質を含有するバイアルの写真を示している。データは、テトラジンコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質が、28日目に515nmにおいて特徴Tzピークを失い、その一方でこのピークは20%および30%酸化を含有するHighOx SCアルギネート物質において14日目にさらに存在することを示している。これらのデータは、亜塩素酸ナトリウム処理したテトラジンコンジュゲートした物質が溶液中でより大きな安定性を表していることを示唆している。
Nbコンジュゲート物質に対するデータは、図6cおよび6dに示されている。図6cは、28日目において、20~50%酸化を有する、NbコンジュゲートしたHighOxアルギネート物質のUV-Visスペクトル(上側パネル)および14日目において、20%~50%コンジュゲーションを有するNbコンジュゲートしたHighOx SC物質のUV-Visスペクトルを示している。図6dはまた、これらのNbコンジュゲートしたHighOxおよびHighOx SCアルギネート物質を含有するバイアルの写真を示す。データは、475nmにおける水平域が、28日目にHighOxアルギネート物質において生成されている一方で、このピークは14日目にHighOx SCアルギネート物質に存在しないことを示している。HighOx SCアルギネート物質はまた300nmにおける減少した吸収によって特徴付けられる。これらのデータは、亜塩素酸ナトリウム処理したノルボルネンコンジュゲートした物質が溶液中でより大きな安定性を表していることを示唆している。
TzコンジュゲートしたおよびNbコンジュゲートしたHighOx(20%および50%アルデヒド)アンモニアボラン(AB)、水素化ホウ素ナトリウム(SB)、および亜塩素酸ナトリウム(SC)アルギネート物質に対する15日目のUV-Visスペクトル(室温で貯蔵された4%w/v溶液)が図6jに示されている。スペクトルは、15日後、TzコンジュゲートしたHighOx物質に対する515nmでのピークが保持され、NbコンジュゲートしたHighOx物質に対して300nmでの吸収は存在しないことを示している。このデータは、アルギネートアルデヒドの還元またはさらなる酸化から、溶液中のクリックコンジュゲート部分より高い安定性が得られることを示している。
TzコンジュゲートしたおよびNbコンジュゲートしたHighOxおよびHighOx SC物質はまた、定量的NMRで調査することによって、これらのアルデヒド含有量を決定した。アルデヒド含有量の定量化は、>約5.1ppmにおいて過ヨウ素酸ナトリウムで生成されたプロトンピークを、ジメチルマロン酸(DMMA;6H@1.3pmm;Sigma-Aldrich)の内部標準と比較することによって、Varian 400MHz上で実施した。試料は、重水素オキシド(D2O;Sigma-Aldrich)において、15mg/mLアルギネートおよび2.5mg/mL DMMAで調製した。
結果は、図6e、6f、6gおよび6hに示されている。具体的には、図6eおよび6fは、NbおよびTzにそれぞれコンジュゲートした、50%酸化を有するHighOxアルギネート物質のNMRスペクトルを示す。図6gおよび6hは、NbおよびTzにそれぞれコンジュゲートした、50%アルデヒドを有するHighOx SCアルギネート物質のNMRスペクトルを示す。データは、HighOxアルデヒドアルギネート物質においてピークの幅の有意な広がりを示し、この物質より動的であることを示している。HighOxアルギネート物質に対するNMRスペクトルはまた、残留アルデヒドの存在を示すピークを含有する。対照的に、HighOx SCアルギネート物質に対するNMRスペクトルはシャープなピークを示し、HighOx SC物質におけるより大きな定義付けをし、残留アルデヒドがほぼ不在であることを示している。HighOx SCアルギネート物質における残留アルデヒドの不在はまたFTIR分析によっても確認されており、FTIRスペクトルは図6iに示されている。全体的には、データは、クリックコンジュゲートしたHighOx SCアルギネート物質は、活動性がより低く、より化学的に安定し、ほんの微量の残留アルデヒドを含有するにすぎないことを示す。
亜塩素酸ナトリウムとの酸化アルギネートの反応条件を評価した。図3bに示されているデータを作成するために使用した最初の反応条件は、溶媒として水:DMSOの1:1混合物を使用し、DMSOは、次亜塩素酸(HOCl)副産物に対するスカベンジャーとして使用した。混合物中のDMSO含有量を33:1 水:DMSOに変化させることによって、反応をさらに完了まで駆動させた。最適条件で生成されたHighOx SCアルギネート物質に対するNMRスペクトルが図6kに示されており、これは、これらの条件下で、亜塩素酸ナトリウムを用いてアルデヒドをさらに処理した後、20%および50%酸化を有する物質中に有意な残留アルデヒドが全く存在しないことを実証している。
(実施例6)
クリックコンジュゲートした酸化アルギネートのゲル化。
ヒドロゲルを形成する能力について、20~50%酸化を有するクリックコンジュゲートしたHighOxおよびHighOx SC物質を調査した。補完的酸化度の調製物(例えば20%アルデヒド-TZおよび20%アルデヒド-Nb)を10%(w/v)で作製し、混合し、20分間ゲル化させた。図8aおよび8bは、過ヨウ素酸酸化し、還元し(AB、SB)、さらに酸化した(SC)物質が、時間の関数として溶液中で分解し(例えば透析滞留時間)、ヒドロゲル形成を制限することを実証している。したがって、ゲル化を増強するために、この処理を修正して、透析をタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)と置き換えることによって、溶液滞留時間を最小限に抑えている。
図8cは、HighOxおよびHighOx SC物質の溶解度は、%酸化の関数として増加し、HighOx SC物質に対して最も高いことを実証している。
(実施例7)
酸化および還元されたアルギネートのin vitroでの分解および溶解度。
この実験の目的は、さらなる還元処理(すなわち、水素化ホウ素ナトリウムまたはアンモニアボランとの反応)または酸化処理(すなわち、亜塩素酸ナトリウムでの還元)後のクリックコンジュゲーション有りおよび無しでの酸化アルギネートの分解および溶解度について調査することであった。
クリックコンジュゲートしたアルギネート物質(MVGアルギネート、280kDa)は、アルギネートを過ヨウ素酸ナトリウムに反応させ、これに続いて、テトラヒドロフラン(THF)で沈殿させることによって調製した。次いで、沈殿した物質を、水素化ホウ素ナトリウムまたはアンモニアボランのいずれかと反応させることによってこれを還元するか、または亜塩素酸ナトリウムと反応させることによってさらに酸化させ、さらに1日間透析した。次いで、これを、TzまたはNbとコンジュゲートし、再度1日間透析した。
クリックとコンジュゲートしていない対照アルギネート物質(VLVGアルギネート、30kDa)を、アルギネートを過ヨウ素酸ナトリウムと反応させて、これに続いて3日間透析することによって調製した。次いで、透析した物質を、水素化ホウ素ナトリウムまたはアンモニアボランのいずれかと反応させることによって還元するか、またはこれを亜塩素酸ナトリウムと反応させることによってさらに酸化し、さらに3日間透析した。
次いで、MVGおよびVLVGアルギネート物質を37℃で29日間までインキュベートし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析して、アルギネート物質の平均分子量を決定した。この目的を達成するために、PBS中アルギネート物質濃度2mg/mLで試料を調製した。次いで、G4000PWxlおよびG5000PWxlカラムを直列に備えたAgilent 1260HPLCを使用して試料を分析した。100μLの注射を使用して、0.5mL/分の流速で、0.1Mナトリウム硝酸塩(Sigma-Aldrich)移動相、カラムを用いて、35℃の検出温度で分析を行った。三重検出を使用して、試料を較正したPEO標準物質(34kDa;Agilent Technologies)と比較した。
結果は図7aおよび7bに示されている。具体的には、図7aは、20%酸化(左パネル)および50%酸化(右のパネル)を有する、TzコンジュゲートしたおよびNbコンジュゲートしたMVGアルギネートの分解を示している。データは、還元処理したMVGアルギネート(AB、SB)およびさらに酸化した(SC)物質はすべて分解性を表していることを示している。
図7bは、未処理のアルギネート(上側の左のパネル)、アンモニアボランで還元処理したアルギネート(上側の右のパネル)、水素化ホウ素ナトリウムで還元処理したアルギネート(下側の左のパネル)、および亜塩素酸ナトリウムで処理したアルギネート(下側の右のパネル)に対する、37℃での、0%~50%酸化を含有するVLVGアルギネートの分解を示す。データは、還元およびさらに酸化した物質が、過ヨウ素酸酸化物質対照と同様の分解プロファイルを表していることを示している。
図7cは、アンモニアボランまたは亜塩素酸ナトリウムのいずれかで20%酸化処理したMVG(280kDa)物質の50%w/v溶液を含有するバイアルの写真である。50%(w/v)の未酸化VLVG(30kDa)が対照として提供されている。未酸化MVGは約5%w/vまでしか溶解しないが、未酸化VLVGは約10%w/vに溶解する。驚くことに、この写真は、アンモニアボランおよび亜塩素酸ナトリウム処理した両方の物質(VLVGと同様の分子量を有する、図8aを参照されたい)が50%w/vで容易に溶解することを示している。データは、亜塩素酸ナトリウムでさらに酸化したTzコンジュゲートしたおよびNbコンジュゲートしたMVG物質が最も溶解性があることを示している。
(実施例8)
テトラジンおよびノルボルネンに対するクリックコンジュゲーションの上限。
この実験の目的は、実施例7に記載の通り調製したVLVG物質に対するクリックコンジュゲーションの上限を決定することであった。同様に実施例7に記載の通り調製したMVG物質は、コンジュゲーション反応において250モル当量のクリック物質を使用して、1モノマー単位当たりのクリック部分の数として定義された、およそ5%の置換度(DS)を得ており、Tzに対する上限は約7.5%であり、Nbに対する上限は20%であった。この実験では、未酸化VLVG物質を、異なる当量のTzまたはNbと反応させ、%DSをqNMRで測定した。データは以下の表に示されている。ノルボルネンNMRピークは、より高いモル当量において有意に拡大しており、したがってノルボルネンに対する値は、過剰報告されたと想定される(OR)。
テトラジンコンジュゲーションはまた、図8に示されている通り、UV-Vis分光分析を使用して測定された。データは、テトラジンに対する置換度が600~1200テトラジン同等物との反応に対して直線的であることを示している。これらのデータは、より低い分子量のアルギネートを使用することにより、さらに大きな置換度を得ることができ、上限にはまだ到達していないことを示している。この実験を還元およびさらに酸化された物質まで拡大することによって、これらのコンジュゲーションの可能性の上限、したがって架橋密度を決定する。
(実施例9)
酸化アルギネート中に存在するアルデヒドの細胞生存度に対する作用。
この実験のゴールは、酸化アルギネート中に存在するアルデヒドの存在下で相対的細胞生存度を決定することであった。この目的を達成するために、アルギネートを過ヨウ素酸ナトリウムで酸化することによって、0~50%酸化を有するアルギネート物質を含有するアルデヒドを生成した。続いて、10mgのこの物質を、10%ウマ血清を有するDMEM中で、5×10
5マウス白血病細胞(ATCC CCL-219、n=1)と直接2日間インキュベートした。MUSE 細胞カウントおよび生存率アッセイキットを使用して、生存細胞数を定量化した。0%酸化に対して正規化したデータは、以下の表において、また図9においてグラフで示されている。
データは、15%酸化までは、細胞生存度がアルデヒドによる影響を受けず、25%および50%酸化において、急速に低下し始めることを示している。
(実施例10)
酸化アルギネートの溶解度
この実験の目的は、クリックコンジュゲーションを有する酸化アルギネートの溶解度を、非酸化アルギネートの溶解度と比較することであった。図10は、分子量250kDaを有する未酸化アルギネート(MVG);分子量30kDaを有する未酸化アルギネート(VLVG)に対する;ならびに20%に酸化し、次いで、亜塩素酸ナトリウムを使用してさらに酸化し、クリック(TzまたはNb)とコンジュゲートして約30kDaの分子量を有する最終生成物を生成する、30kDaの分子量(VLVG)を有するアルギネート(MVG)に対する溶解度(%w/v)を示す棒グラフである。この実験に使用したVLVG物質は、図7cのバイアル5に示されている。この実験に使用したクリックコンジュゲートした、およびナトリウム処理したアルギネート物質が図7cのバイアル3および4において示されている。
図10に提示されたデータは、未酸化MVGは約5%w/vのみに溶解し、未酸化VLVGは約10%w/vに溶解し、クリックコンジュゲートした、亜塩素酸ナトリウム処理したアルギネートは約50%溶解することを示している。データは、アルゴキサラート含有アルギネート、および、程度はわずかにより低いが、アルゴキシノール(algoxalol)を含有するアルギネートは、未酸化のアルギネートと比較して有意に増加した溶解度によって特徴付けられることを実証している。
(実施例11)
架橋の可能性に対するアルギネートの溶解度の影響
この実験の目的は、250kDa(MVG)および30kDa(VLVG)の分子量を有する未酸化アルギネートに対してTzコンジュゲーションの上限を決定することであった。MVG物質は、そのより高い分子量によりVLVG物質より、さらに粘性であり、溶解性が低い。この実験は、実施例8に記載されている実験的手順を使用して行った。
図11aは、MVGおよびVLVG物質に対して達成されたTzコンジュゲーションの上限を示す棒グラフである。図11aのデータは、溶解性の低いMVG物質は最大約500モル当量のTzにコンジュゲートすることができる一方で、より溶解性のあるVLVG物質は最大約2500モル当量のTzにコンジュゲートすることができることを実証している。したがって、VLVG物質がより高い溶解度を有することから(より低い分子量により)より高いクリック置換度が可能となる。このコンジュゲーションの可能性は、アルゴキシノールおよび/またはアルゴキサラート含有アルギネートの使用を介して、そのさらにより低い粘度により、さらに拡大することができる。
図11bは、VLVG物質の置換度をモル当量のTzの関数として示すグラフである。試験した物質は、500、1000、1500、2000および2500モル当量のTzと反応させたVLVGであった。これは、VLVG物質に対するTzコンジュゲーションの上限は、約2500当量のTzにおいて達成されたことを実証している。
(実施例12)
クリックコンジュゲートしたアルギネート物質のゲル化速度に対するアルギネート濃度およびクリック置換度の影響
この実験の目的は、レオロジー測定を使用して、クリックコンジュゲートしたアルギネート物質のゲル化速度を、アルギネート濃度、酸化度およびクリック置換度の関数として研究することであった。この実験は、500、1500および2500モル当量のNbまたはTzを含有するコンジュゲーション反応を使用して、NbおよびTzとコンジュゲートした非酸化VLVG物質を利用した。この実験はまた、過ヨウ素酸ナトリウムを使用して10%または20%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元処理し、次いで、コンジュゲーション反応において250モル当量のNbおよびTzを使用してNbおよびTzとコンジュゲートしたMVG物質を利用した。またこの実験で使用したのは、過ヨウ素酸ナトリウムを使用して20%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元処理し、次いでコンジュゲーション反応において1000モル当量のNbおよびTzを使用してNbまたはTzにコンジュゲートしたLF 20/40アルギネート物質であった。
クリックコンジュゲートしたアルギネート物質のゲル化は、レオロジー測定を使用して、弾性率G’の値を測定することによって決定した。この目的を達成するために、所望の最終濃度(PBS中5%、10%、15%または20%w/v)のAlg-NおよびAlg-T溶液を1:1比率で混合し、ピペットで直接取って、20mmの平坦な上側プレートの形状および400ミクロン形状のギャップを備えたTA Instruments ARG2レオメーターの下側プレート上に置いた。Peltierクーラーを使用して、温度依存性実験に対して温度を制御し、水リザーバーカバーをゲルの上に配置して、試験中にヒドロゲルが乾燥するのを防いだ。ヒドロゲル試料を1Hzにおいて1%歪みの対象下におき、貯蔵および損失弾性率(G’およびG”)を1時間モニターした。
図12aは、試験した異なるVLVG物質に対する弾性率G’対時間における増加を示すグラフである。このデータは異なる物質がゲル化するのにどれだけかかるかを有効に実証し、水平域はゲル様状態が達成されたことを示している。データは、クリック置換度の増加は、より急速なゲル化もたらすことを示している。
図12bは、試験した異なるVLVG物質に対する弾性率G’の値を示す棒グラフである。左側の黒色で示され、「2% 1:3 MVG:VLVG」と示した棒グラフは、対照物質に対応し、これは、カルシウム架橋した、MVG:VLVGの1:3混合物の2%w/v溶液である。
図12cは、試験した異なるVLVG物質に対するメッシュサイズの値を示す棒グラフである。左側の黒色で示され、「2% 1:3 MVG:VLVG」と示した棒グラフは、対照物質に対応し、これは、カルシウム架橋した、MVG:VLVGの1:3混合物の2%w/v溶液である。
図12bおよび12cに示されているデータは、クリック置換度の増加は、弾性率G’の増加に現れているような物質の異なるレオロジー特性および細孔サイズの減少をもたらすことを示している。
図12dは、10%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元し、次いで250モル当量のNbおよびTzを使用して、NbまたはTzとコンジュゲートしたMVG物質に対する、弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。ヒドロゲルは、クリックコンジュゲートした還元アルギネート濃度、5%w/v、10%w/vまたは15%w/vで生成した。図12eは、20%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元し、次いで250モル当量のNbおよびTzを使用して、NbまたはTzとコンジュゲートしたMVG物質に対する、弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。ヒドロゲルは、クリックコンジュゲートした還元アルギネート濃度、5%w/v、10%w/v、15%w/vまたは20%w/vで生成した。図12fは、20%酸化に酸化し、アンモニアボランで還元し、次いで1000モル当量のNbおよびTzを使用して、NbまたはTzとコンジュゲートしたLF20/40物質に対する、弾性率(G’)対時間における増加を示すグラフである。ヒドロゲルは、クリックコンジュゲートした還元アルギネート濃度、5%w/v、10%w/v、15%w/vまたは20%w/vで生成した。
図12d、図12eおよび図12fのデータは、還元アルギネートの濃度の増加は、クリックコンジュゲートしたアルギネートのゲル化の時間を減少させることを示している。結果は、アルギネート酸化度、クリック試薬の相対量およびクリックコンジュゲーション反応におけるアルギネート濃度を変えることによって、クリックコンジュゲートしたアルギネートのゲル化処理を調整することが可能なことを実証している。
(実施例13)
タンパク質放出速度に対するクリック置換度の影響
この実験の目的は、クリックアルギネートヒドロゲルに封入された様々なタンパク質の放出速度に対するクリック置換度の影響を調査することであった。この実験は、実施例11に記載されているように生成された、NbまたはTzとコンジュゲートした、非酸化VLVGおよびMVG物質を利用した。具体的には、250、500、1000、1500、2000および2500モル当量のNbまたはTzにおいて、非酸化VLVG物質をNbまたはTzとコンジュゲートして、NbおよびTzコンジュゲートしたアルギネート(Alg-NおよびAlg-T)を生成した。250モル当量のNbまたはTzで、非酸化MVG物質をNbまたはTzとコンジュゲートした。この実験はまた異なる分子量を有するタンパク質、例えば、インスリン(約3.5kDaのMW)、ウシ血清アルブミン(BSA、約67kDaのMW)およびIgG(約150kDaのMW)を利用した。
クリックコンジュゲートしたアルギネート中にフルオレセイン標識したインスリン(Sigma-Aldrich)、ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)、およびヒト免疫グロブリン(Imuunoglobulin)G(IgG;Sigma-Aldrich)を封入することによって、タンパク質放出曲線を評価した。様々な置換度の冷凍乾燥Alg-NおよびAlg-Tポリマーを、PBS中の所望の最終濃度(4%および5%w/v)まで最初に別々に溶解することによって試料を調製した。目的のタンパク質を加え、タンパク質:アルギネート比1:10(Alg-N+Alg-T、v/v)でAlg-N溶液と混合した。次いで、この溶液をAlg-T溶液と十分に混合し、混合物を少なくとも30分間ゲル化させた。1mLのPBSを各ゲル化に加え、37℃でインキュベートすることによって、試料を作り出した。上清を各時間点で置き換えながら、試料を様々な時間点で収集した。492nmで励起および518nmで発光する蛍光を用いて、プレートリーダーを使用して、上清中のタンパク質含有量を検量線に対して定量化した。
図13aは、異なるクリックコンジュゲーション度で、クリックコンジュゲートしたVLVG物質を使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリンの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。図13bは、ヒドロゲル形成(2500当量の5%VLVG)および線形フィット中、2500モル当量のNbまたはTzおよび5%濃度のAlg-NおよびAlg-Tに対応する、図13aにおける非水平領域曲線を示すグラフである。図13cは、異なるクリックコンジュゲーション度で、クリックコンジュゲートしたVLVG物質を使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたBSAの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。図13dは、ヒドロゲル形成(2500当量の5%VLVG)および線形フィット中、2500モル当量のNbまたはTzおよび5%濃度のAlg-NおよびAlg-Tに対応する、図13cにおける非水平領域曲線を示すグラフである。図13eは、異なるクリックコンジュゲーション度で、クリックコンジュゲートしたVLVG物質を使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。図13fは、ヒドロゲル形成(2500当量の5%VLVG)および線形フィット中、2500モル当量のNbまたはTzおよび5%濃度のAlg-NおよびAlg-Tに対応する、図13eにおける非水平領域曲線を示すグラフである。図13gは、Ca2+で媒介された架橋により生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリン、BSAおよびIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図13a~13gに示されているデータは、アルギネートヒドロゲルからのタンパク質放出プロファイルが、アルギネートのクリック置換度により影響され得ることを実証している。具体的には、データは、より高いクリック置換度はヒドロゲルからのタンパク質の「初期バースト」を減少させることを示している。より高いクリック置換度を有するアルギネートを使用することによって、より小さな「メッシュサイズ」を有するヒドロゲルの生成が可能となり、ひいては、これが、より長いタンパク質放出時間の達成を可能にする。例えば、図13b、13dおよび13fにより証明されるように、最も高いクリック置換度(2500当量)を有するアルギネートは、数日にわたり直線的なタンパク質放出速度をもたらすヒドロゲルを生成する。対照的に、他の物質から生成されたヒドロゲルは、数日ではなく数時間にわたり、非線形の「バースト」タンパク質放出をもたらす。他の物質の例は、例えば、KS Ansethら、Biomed. Mater. Res. A,2009,90:720-729;PP Kunduら、Carbohydrate Polymers,2014,112:627-637;T.Balら、J. Biomed. Mater. Res. Part A,2014.102A:487-495;C.E.Schmidtら、Biomaterials,2005,26:125-135;Y.M.Leeら、Macromol. Research,2006.14:87-93;C.P.Covasら、Mat. Sci. App.2011.2:509-520;W.F.Mielerら、Trans. Am. Ophtalmol. Soc.,2008.106:206-214;W.M.Tianら、Controlled Release,2005.102:13-22.に記載される。
(実施例14)
タンパク質放出速度に対するアルギネート酸化度およびアルギネート濃度の影響
この実験の目的は、クリックアルギネートヒドロゲル中に封入された様々なタンパク質の放出速度に対する、ゲル化処理中のアルギネート酸化度およびアルギネート濃度の影響を調査することであった。この実験は、実施例1に記載されている通り、過ヨウ素酸ナトリウムで5%または10%酸化に最初に酸化されたLF20/40アルギネート物質を利用した。続いて、実施例2に記載されている手順を使用して、酸化LF20/40アルギネートをアンモニアボラン(AB)で還元処理するか、または亜塩素酸ナトリウム(SC)でさらに酸化した。次いで、2000モル当量のNbまたはTz、および実施例4に記載されている手順を使用して、この物質をNbまたはTzとコンジュゲートした。続いて、この物質を使用して、ヒドロゲルを生成し、インスリンまたはIgGを5%または10%w/vアルギネート濃度で封入した。実施例13に記載されている通り、タンパク質放出プロファイルをモニターした。
図14aは、5%または10%に酸化させ、次いで、ABで還元処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリンの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14bは、5%または10%に酸化させ、次いで、SCで酸化処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたインスリンの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14cは、5%または10%に酸化させ、次いで、ABで還元処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14dは、5%または10%に酸化させ、次いで、SCで酸化処理した、5%w/vの濃度でクリックコンジュゲートしたLF20/40アルギネートを使用して生成されたヒドロゲルからのフルオレセインコンジュゲートしたIgGの累積放出(単位:マイクログラム)を示すグラフである。
図14a~14dのデータは、タンパク質放出プロファイルの調整は、ゲル化処理中、AbおよびSCで処理した物質に対するアルギネート酸化度およびアルギネート物質の濃度を変えることによって達成することができることを示している。
(実施例15)
酸化アルギネート中に存在するアルデヒドのクリック部分に対する作用。
この実験のゴールは、アルデヒドの存在下でアルギネートへコンジュゲートしたクリック部分の安定性を決定することであった。この目的を達成するために、250当量のクリック物質を使用したコンジュゲーション反応において非酸化MVG物質をNbまたはTzにコンジュゲートし、続いて2.3%のグルタルアルデヒドに曝露した。バイアルを色の変化について69時間まで観察した。図15aは、2.3%グルタルアルデヒドの存在下、0分後、40分後、21.5時間後および67.5時間後に採取された、Nb(左バイアル)およびTz(右のバイアル)へコンジュゲートした、4%MVG物質を含有するガラスバイアルの一連の写真である。図15bは、0分後、40分後、20時間後および69時間後に採取した、対照としての水(左バイアル)またはDBCO(中央バイアル)もしくはアジド(右のバイアル)へコンジュゲートした、2%MVG物質を含有するガラスバイアルの一連の写真である。図15aのデータは、アルデヒドへの曝露の40分後、NbおよびTzの分解が観察されたことを示している。DBCOおよびアジドの分解は、より長い時間がかかるが、図15bのデータにより証明されるように20時間後に観察された。アルデヒドはアルギネートの酸化により生成されるので、この実験は、アルギネートにコンジュゲートしたクリック部分は、アルギネートの酸化により分解することが予想されることを実証している。したがって、クリック部分の安定性を維持するために、アルデヒドは、例えば、アンモニアボランによる還元を使用して還元により排除するか、または、例えば、亜塩素酸ナトリウムによるさらなる酸化を使用して酸化により排除しなければならない。
(実施例16)
アルギネートヒドロゲルによるリポソームの封入および保持
この実験の目的は、クリックコンジュゲートしたアルギネートから生成されたヒドロゲルの、リポソームを封入する能力およびin vivoでインタクトなリポソームの持続的および局在的送達を提供する能力を調査することであった。この実験は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)およびコレステロール(CHOL)から、DOPC/CHOLの比55:45および全脂質濃度50mMで調製した市販のリポソームを利用した。リポソームはまた、蛍光色素1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩(Dil)を0.5mM(0.47mg/mL)の濃度で含有し、133nmの平均直径を有した。CaSO4および2%または5%w/vのアルギネート濃度でのリポソームの存在下、非酸化MVG物質から架橋により調製したヒドロゲル中にリポソームを封入した。リポソームはまた、250モル当量のNbまたはTzを使用してNbまたはTzにコンジュゲートした非酸化MVG物質から調製したヒドロゲル中に封入し、5%w/vのアルギネート濃度でのリポソームの存在下でゲル化した。最後に、リポソームはまた、例えば、Koshyら、Advanced Healthcare Materials、2016年、5巻、5号、541~547頁に記載の通り調製した、クリックコンジュゲートしたゼラチンから調製したヒドロゲル中に封入した。上清中のDil蛍光の増加を測定することによって、ヒドロゲルからのリポソームの放出をin vitroでモニターした。550nmで励起、580nmで発光する蛍光を用いて、プレートリーダーを使用して、検量線に対して上清タンパク質含有量を定量化した。
図16aは50日間にわたるCa2+架橋アルギネートからの、および非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートからのリポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。図16bは、Ca2+架橋アルギネートヒドロゲル、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルおよびクリックゼラチンヒドロゲルからのリポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。これらの結果は、クリックゼラチンヒドロゲルからのリポソームの定量的な放出が30日後に観察されたことを示している。対照的に、アルギネートヒドロゲルは、リポソームを保持することにおいてより有効であった。具体的には、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルはリポソーム負荷量の少なくとも約95%を50日後に保持していた一方で、Ca2+架橋したアルギネートヒドロゲルは、40日後にリポソーム負荷量の約85%を保持していた。このデータは、試験したヒドロゲルの中で、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルが、40日またはそれよりも長い期間にわたりリポソームを保持することにおいて最も有効であることを実証している。
図16cは、28日間の期間にわたる、Ca2+架橋アルギネートからの、および5%w/vのアルギネート濃度で調製した非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからのリポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。リポソーム放出プロファイルは、in vitroで、PBS--(Ca2+またはMg2+イオンを含有しないPBS緩衝液)中で測定した。
図16cのデータは、28日後、リポソーム負荷量の約60%がCa2+架橋したアルギネートヒドロゲルから放出されたことを示している。リポソームの存在下でのアルギネートのカルシウム架橋は、封入されたリポソームに対して有意な異質性および剪断応力をもたらし、リポソームを放出させることになる。対照的に、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルはそのリポソーム負荷量を少なくとも20日間保持することが可能である。
図16dは、8日間の期間にわたる、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルおよびクリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルからのリポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。アルギネートを消化することが可能なアルギネートリアーゼの添加は、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからのリポソームの急速放出をもたらす。ゼラチンを消化することが可能なコラゲナーゼの添加は、クリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルからのリポソームの急速放出をもたらす。クリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルは、コラゲナーゼがin vivo、例えば、ヒト体内の至る所に存在するため、in vivoで分解することが予想されている。対照的に、アルギネートリアーゼはin vivoの至る所に存在しない、したがって、アルギネートヒドロゲルは、非酸化された場合、in vivoでインタクトなままであると予想されている。酸化では、アルギネート分解はpH依存性である。
(実施例17)
封入後のリポソームのインタクト性
この実験の目的は、リポソームがインタクトなままである能力、例えば、封入後これらの直径を維持し、異なるヒドロゲルにより回収される能力を評定することであった。この実験で試験したヒドロゲルは、実施例16に記載されているような、カルシウム架橋したアルギネートヒドロゲル、非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルおよびクリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルを含む。リポソームのサイズは動的光散乱(DLS)で測定した。
図17aは、ストック標準の動的光散乱(DLS)トレースである。
図17bは、アルギネートリアーゼにより8日後消化された非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルから放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17cは、PBS--緩衝液中5%w/vのアルギネート濃度で調製した非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルから28日後放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17dは、8日後コラゲナーゼで消化されたクリックコンジュゲートしたゼラチンヒドロゲルから放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17eは、PBS--緩衝液中で調製したカルシウム架橋アルギネートから3日後放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17fは、PBS--緩衝液中5%w/vのアルギネート濃度で調製したカルシウム架橋ヒドロゲルから28日後放出された、リポソームのDLSトレースである。
図17a~17fのデータは、クリックコンジュゲートしたアルギネートまたはゼラチンヒドロゲルから放出されたリポソームは、リポソーム標準と同様のサイズであることを実証し、これは、28日後、これらがインタクトなままであることを示している。対照的に、カルシウム架橋したアルギネートヒドロゲルから放出されたリポソームは、リポソーム標準と比較して、実質的により大きな範囲のサイズを有する。これは、カルシウム架橋処理中、リポソームが剪断力により引き裂かれ、続いて溶液中でコンフルエンスに達し、より大きなサイズのリポソーム粒子をもたらしていることを示唆する。カルシウム架橋はまた弱いカルシウム分布により有意な異質性を導入する。
(実施例18)
リポソームを保持するアルギネートヒドロゲルの能力に対する、アルギネート酸化度の影響
この実験の目的は、封入されたリポソームを保持するこれらの能力に対する、アルギネートヒドロゲルのアルギネート酸化度の影響を評定することであった。この実験は、クリックコンジュゲーション反応において250当量のNbまたはTzを使用して、NbまたはTzに架橋したMVGアルギネート物質から調製したアルギネートヒドロゲルを利用した。クリックコンジュゲーション前に、アルギネートを、全酸化0%、5%または10%に酸化させ、次いで、実施例1および2に記載されている手順を使用して、ABで還元処理した。実施例16に記載されているリポソームをヒドロゲルに封入し、上清中のDil蛍光の増加を75日の期間にわたり測定することによって、これらの放出をin vitroでモニターした。
図18は、0%、5%および10%の全酸化まで酸化させ、クリックコンジュゲーション前にABで還元処理したクリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからの、75日にわたるリポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。図18の結果は、クリックコンジュゲーション前の、アルギネートの5%または10%への酸化およびその後のアルギネートの還元は、検出可能なリポソームの放出はあるが、75日の期間にわたるリポソームの保持を可能にする一方で、非酸化アルギネートは、75日にわたり約3%のリポソームを放出していることを実証している。したがって、アルギネートの酸化は、アルギネートヒドロゲルによるリポソームの保持を改善する。
(実施例19)
アルギネートヒドロゲルの安定性に対する、pHの影響
この実験の目的は、pHの関数としてのアルギネートヒドロゲルからのリポソームカーゴの放出を調査することであった。アルギネート生分解は酸またはアルカリにより媒介されるため、アルギネートヒドロゲルからのリポソームカーゴの放出をpH5(0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液中)およびpH9(0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液中)において、14日間にわたりモニターした。第1にMVGアルギネートを20%酸化に酸化し、続いてアンモニアボランを使用してこの物質を還元することによって、試料を調製した。7日後、pH9の試料は大半が分解し、14日後、pH5試料もまた分解したことが判明した。
図19aは、0日目における、アンモニアボランで還元された20%酸化MVGを含む封入されたリポソームを有するヒドロゲル、ヒドロゲルおよび上清を含有するチューブの写真である。図19bは、1日目における、アンモニアボランで還元された20%酸化MVGを使用して調製された封入されたリポソームを有するヒドロゲル、および上清を含有するチューブの写真である。図19cは、7日目における、アンモニアボランで還元された20%酸化MVGを使用して調製された封入されたリポソームを有するヒドロゲル、および上清を含有するチューブの写真である。図19dは、14日目における、アンモニアボランで還元された20%酸化MVGを使用して調製された封入されたリポソームを有するヒドロゲル、および上清を含有するチューブの写真である。図19eは、アルギネートを20%まで酸化させ、続いてこれをアンモニアボランで還元することによって生成されたアルギネートヒドロゲルからの、中性リポソーム(DOPC:コレステロール)の分解ベースの放出を示すグラフである。試料は、腫瘍周囲の微細環境を模倣するためにMES緩衝液pH6.5中で放出された。
図19a~19dの結果は、アルギネートは分解され、リポソームは酸性pH(pH5)または塩基性pH(pH9)において上清に拡散されているが、中性pH(7)では拡散されないことを実証している。したがって、クリックアルギネートヒドロゲルからのリポソーム放出はpH感受性であり、リポソームカーゴの分解媒介性放出を可能にする。
(実施例20)
アルギネートヒドロゲルによるカチオン性リポソームの封入および保持
以前の実験(例えば、実施例16に記載されている実験)は中性であるDOPC/CHOLリポソームを利用した。この実験の目的は、荷電したリポソーム、例えば、カチオン性リポソームを封入および保持するアルギネートヒドロゲルの能力を調査することであった。この実験は、133nmの平均直径を有するN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチル-硫酸塩(DOTAP)および水素化ダイズホスファチジルコリン(Hydro Soy PC)を含有するカチオン性リポソームを利用した。リポソームはまた、蛍光色素1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドカルボシアニン過塩素酸塩(Dil)を含有した。これらのリポソームは、カルシウム架橋したアルギネート物質内に、およびコンジュゲーション反応において250モル当量のクリック試薬を利用した非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネート内に封入した。ヒドロゲルからのカチオン性リポソームの放出を実施例16に記載されている通りモニターした。
図20aはDOTAP:押出し前のHydro Soy PCリポソームのDLSトレースであり、図20bは、押出し後の同じリポソームのDLSトレースである。図20aおよび20bは、押出しを使用して、均一サイズのカチオン性リポソームを調製することが可能であることを実証している。
図20cは、Ca2+架橋アルギネートからの、および非酸化クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからの17日間にわたるカチオン性リポソームの累積放出(%負荷)を示すグラフである。図20cの結果は、クリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルは、17日の期間にわたりカチオン性リポソームを封入し、有効に保持することができることを実証している。対照的に、カチオン性のリポソームのカルシウム架橋したアルギネートヒドロゲルからの放出はわずか2日後には明らかとなる。
(実施例21)
アルゴキシノールおよびアルゴキサラート複合クリックヒドロゲルからのタンパク質放出プロファイル
この実験のゴールは、クリックコンジュゲートした、異なる酸化および還元アルギネート物質を使用して調製したヒドロゲルからの異なるタンパク質放出プロファイルを評価することであった。アルギネートヒドロゲルを調製するために使用した組成物は以下を含んだ:a)50%酸化し、続いて亜塩素酸ナトリウムで酸化し、2000当量で、Tzとコンジュゲートした等分の10%w/vでのMVG、および10%酸化し、続いてアンモニアボランで還元し、2000当量でNbとコンジュゲートした10%w/vのMVG;b)50%酸化し、続いてアンモニアボランで還元し、250当量でTzとコンジュゲートした、等分の10%w/vでのMVG、ならびに10%酸化し、続いてアンモニアボランで還元し、250当量でNbとコンジュゲートした10%w/vでのMVG;c)10%酸化し、続いてアンモニアボランで還元し、2000当量でNbとコンジュゲートした、7部の10%w/vでのMVG、および50%酸化し、続いてアンモニアボランで還元し、2000当量でTzとコンジュゲートした、3部の10%w/vでのMVG;ならびにd)3部のMVGおよび硫酸カルシウムで架橋した1部のMVG。
ヒトIGFおよびヒトVEGF(R&D Systems)を様々なクリックヒドロゲルに封入することにより、タンパク質放出曲線を評価した。試料は、最初に、様々な置換度の冷凍乾燥Alg-NおよびAlg-Tポリマーに、PBS中の所望の最終濃度(w/v)で別々に溶解することにより調製した。タンパク質を加え、2μg/ゲル(100μL)の最終濃度に到達するまでAlg-N溶液と混合した。タンパク質-Alg-N溶液をAlg-T溶液と十分に混合し、少なくとも30分間ゲル化させた。1%BSAを有する1mLのPBSを各ゲルに加え、37℃でインキュベートすることによって、試料を作り出した。各時間点で上清を置き換えながら、試料を様々な時間点で収集した。ヒトVEGFおよびIGF Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を用いて、同等の試料マトリックス(それぞれ1%BSA含有PBSおよび5%Tween20含有PBS)の検量線を使用して、VEGFおよびIGFを有する上清タンパク質含有量を定量化した。
図21aは、様々なアルギネート組成物を使用して調製したクリックコンジュゲートしたアルギネートヒドロゲルからのIGF-1の放出を示すグラフである。図21bは、様々なアルギネート組成物を使用して調製したクリックアルギネートヒドロゲルからのVEGF165の放出を示すグラフである。
図21aおよび21bのデータは、異なるアルギネート組成物を使用して調製した、クリックゲルを使用して、IGF-1およびVEGF165のバースト放出を調整する能力を示している。対照的に、カルシウム架橋したアルギネートヒドロゲルは、拡散を調整することができない。この実施例は、アルゴキシノールとアルゴキサラート含有アルギネート、アルギネート置換度、アルギネート濃度、およびNbとTzの比の様々な組合せを介してタンパク質放出を調整することが可能であることを実証している。
(実施例22)
アルギネート溶液の粘度
この実験のゴールは、アルギネート酸化および/または還元の関数としてクリックコンジュゲートしたアルギネート溶液の粘度を調査することであった。この目的を達成するために、最初に、ddH2O中の所望の最終濃度(w/v)まで冷凍乾燥Alg-NおよびAlg-Tポリマーを別々に溶解することによって、クリックアルギネート溶液を相対粘度について評価した。溶液を直接ピペットで取って、20mm平坦な上側プレート形状および400ミクロン形状のギャップを備えた、TA Instruments ARG2レオメーターの下側プレート上に置いた。Peltierクーラーを使用して、温度(20℃)を制御した。アルギネート試料を、0.1および1Hzの間の歪みの対象下においた。
図22は、異なるアルギネート濃度(%w/v)、酸化度、亜塩素酸ナトリウムまたはアンモニアボランのいずれかでの処理における、様々なアルギネート溶液の相対粘度を示す棒グラフである。粘度は、アルゴキシノールまたはアルゴキサラートのいずれかを含有するアルギネートへのクリックコンジュゲーションにより実質的に減少し、水の粘度と同等である(25℃で0.890cPa)のに対して、酸化なしでの、MVGへのクリックコンジュゲーションは粘度における実質的な差異をもたらさないことをデータは実証している。