JP4192467B2 - 酸化多糖類材料の製造方法及び酸化多糖類材料 - Google Patents

酸化多糖類材料の製造方法及び酸化多糖類材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容易で、酸化度を制御しやすく、且つ選択性の高い、酸化度を制御しやすい酸化多糖類材料の製造方法および酸化多糖類材料に関する。また生体適合性、生分解性、薬物徐放性等を有し、医療材料としても利用可能な酸化多糖類材料、或いは染色性、吸着性、定着性等に優れる酸化多糖類材料の製造方法および酸化多糖類材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物や生物の構造成分として自然界に大量に存在する多糖類は、従来から様々な材料に利用されてきた。繊維材料や紙材料、樹脂・塗料材料、食品材料、接着材料、医療・医薬材料、化粧品材料、分離膜、電気製品材料等、挙げればきりがない。多糖類素材は、一般に生物分解性を有し、生体に対する安全性が高く、結晶性、吸水性、保水性、電気絶縁性等の特性を有する。これらの本来多糖類が持つ特性を生かしながら、物理的、化学的また或いは生物的な改質を施すことで不充分な性質を補って、様々な材料に加工されてきた。近年、循環型社会の構築に向けて、化石原料由来の合成高分子素材に代わって、多糖類素材を利用しようとする動きが高まりを見せており、多糖類素材の改質に関する研究も活発化している。
【0003】
多糖類の酸化による改質は、従来から広く行われてきた。多糖類分子中には多くの水酸基が存在し、その一部が酸化処理によりアルデヒド基やカルボキシル基、ケトン基等に変換される。その効果として、表面電荷や反応性の向上による、繊維の染色性、パルプへの内添剤の定着性の向上、また紙や織布等の基材にコーティングやラミネート加工をする場合の接着強度や塗工性の向上、また選択的な吸着能の向上などが挙げられ、さらに誘導体化の中間物質として利用することも可能である。また生理的な親和性や活性の向上も認められる。
【0004】
従来の酸化手法としては、次亜塩素酸やオゾン、過ヨウ素酸、また二酸化窒素等の酸化剤を用いる方法、および放電処理等により酸化する方法が挙げられる。しかしいずれの方法も、溶解した均一系の反応以外は、副反応が多く、酸化多糖の化学構造は不均一なものとなってしまう。また副反応による低分子量化や脆化による物理的強度の低下を招く場合もある。結晶性の高い多糖類、例えばセルロースやキチン、キトサン等で均一系の反応を行うには、特殊な溶剤に溶解させるか、非晶質化のための再生処理を必要とし、医薬品材料等の高付加価値の製品への適用を除けば、実用的な手法とは言えない。
【0005】
多糖類の化学構造は、例えばセルロースの場合、D−グルコースがβ1,4結合したもので、D−グルコースの2位、3位、6位に水酸基を有する。従来の酸化手法では、その位置選択性は低く、また変換される酸化官能基も、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基と不均一で、グルコピラノース環を解裂するような場合もある。これらの化学構造の不均一性は、材料としての機能のバラツキを招く要因となる。さらに、誘導体化の中間物質として利用する場合、また生理活性や生体内における代謝等が求められる場合には、特に化学構造が均一で、その制御が可能な酸化手法が必要となる。
【0006】
また一方で、ヒアルロン酸や酸化セルロース、或いはキチン、キトサン等の布や紙、或いはフィルムは、創傷被覆剤や止血用の生体吸収材料、体器官の癒合を抑制する医療用材料等として、その有用性が報告されている(特開平10−66723号公報、特開平10−99422号公報)。またセルロースを二酸化窒素で酸化すると、一級水酸基である6位の一部がカルボキシル基に酸化された、ポリグルクロン酸が得られる事が知られている。この酸化セルロース材料は止血用の生体吸収性布の材料として利用されている。しかし二酸化窒素による酸化は、主鎖の解裂による低分子化とともに、2位、3位のケトンへの酸化も起こり、酸化選択性は低いと言われている。また二酸化窒素の有害性にも問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水系で安全且つ容易な多糖類材料の酸化処理方法を提供することであり、結晶性の高い多糖類材料においても、溶解や非晶質化のための再生処理を必要とせず、材料の形状を保ったままの不均一反応でありながら、化学構造を制御可能な、酸化多糖類材料の製造方法及び酸化多糖類の提供にある。すなわち、材料の形状を保ったまま多糖類材料の表面付近が酸化された酸化多糖類材料の製造方法及び酸化多糖類の提供である。また本発明の他の目的は、医療用材料やその他の機能性材料としても有用な、化学構造の制御された酸化多糖類材料を安全且つ安価に提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、多糖類を主成分とする多糖類材料を水中にて、N−オキシル化合物の触媒の存在下で酸化処理し、多糖類材料の表面を改質する酸化多糖類材料の製造方法において、該多糖類材料の形態が、ガーゼ、織布、不織布、紙、フィルムまたはシートのいずれかであることを特徴とする酸化多糖類材料の製造方法である。
【0009】
請求項2の発明は、前記多糖類材料が、セルロース、澱粉、キチン又はキトサンのいずれかひとつを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の酸化多糖類材料の製造方法である。
【0010】
請求項3の発明は、前記N−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルであることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化多糖類材料の製造方法である。
【0011】
請求項4の発明は、前記酸化処理が、水中で臭化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ金属の存在下、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸およびそれらの塩から選ばれる群のうち、少なくとも1種以上の酸化剤を用いて酸化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの一に記載の酸化多糖類材料の製造方法である。
【0012】
請求項5の発明は、前記酸化処理が、アルカリを添加してpH9〜12に保ちながら酸化することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの一に記載の酸化多糖類材料の製造方法である。
【0013】
請求項6の発明は、多糖類を主成分とする多糖類材料を水中にて、N−オキシル化合物の触媒の存在下、多糖類材料の表面部分の、多糖類分子の還元末端、または構成単糖の一級水酸基を選択的に酸化し、カルボキシル基又はその塩類に変換された構造を持つ酸化多糖類材料において、該多糖類材料の形態がガーゼ、織布、不織布、紙、フィルムまたはシートのいずれかであり、多糖類分子の還元末端又は構成単糖の一級水酸基を選択的に酸化し、カルボキシル基に変換された構造が、該ガーゼ、織布、不織布、紙、フィルムまたはシートのいずれかの表面部分に偏析していることを特徴とする酸化多糖類材料である。
【0014】
請求項7の発明は、前記多糖類材料が、セルロース、澱粉、キチン又はキトサンのいずれかひとつを主成分とする材料であって、セルロース、澱粉、キチン又はキトサン分子の還元末端、またはピラノース環の第6位の一級水酸基を選択的に酸化し、カルボキシル基又はその塩類に変換されたウロン酸構造単位が材料の表面部分に偏析していることを特徴とする請求項6に記載の酸化多糖類材料である。
【0015】
請求項8の発明は、前記カルボキシル基が、多糖類成分の構成単糖のモル数に対して1〜60%(酸化度1〜60%)であることを特徴とする請求項6又は7に記載の酸化多糖類材料である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明は多糖類を主成分とする多糖類材料をN−オキシル化合物などの触媒の存在下、酸化することにより、多糖類材料の表面付近を酸化した酸化多糖類材料を提供することにある。すなわち、多糖類材料の形態を保ったまま、表面部分の酸化されている多糖類材料の提供である。特に水中にて酸化反応を行うことを特徴とするものである。
【0025】
本発明は、多糖類材料をアルカリ処理、再生処理等の結晶化度を低下させる処理を行わずに、N−オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)などの触媒の存在下で酸化することを特徴とする。
N−オキシル化合物としては、水溶性の安定ラジカルである2,2,6,6、−テトラメチル−1−ピペリジンN−オキシル(以下TEMPOという)などが挙げられる。
【0026】
この酸化方法では、多糖類分子の還元末端、または構成単糖の一級水酸基を選択的に酸化するものである。また、酸化の程度に応じて、多糖類材料にカルボキシル基又はその塩類を均一かつ効率よく導入できる。N−オキシル化合物は触媒量で済み、例えば、多糖類成分の重量に対して10ppm〜3%あれば充分である。
【0027】
本発明の酸化反応条件などは特に限定されず、材料の成分や形状、使用する設備などによって最適化されるべきであるが、室温以下で反応させると構成単糖の一級水酸基への酸化の選択性を上げ、副反応を抑えることができ、好ましい。また、反応系のpHは、反応の効率の面から、pH9〜12の間で反応を行うことが望ましい。また、水系溶媒中で酸化処理できるのも特徴の一つである。
【0028】
また、本発明に用いられる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。
【0029】
また、臭化物又はヨウ化物との共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基又はその塩類の導入効率を大きく改善できる。
臭化物又はヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。
臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、多糖類成分の重量に対し100ppm〜20%である。
【0030】
本発明に関わる多糖類材料の主成分である多糖類としては、分子内に一級水酸基を有するものであれば特に限定されるものではない。代表的な多糖類としては、セルロース、澱粉、キチン、キトサン等が挙げられる。また、ヘミセルロースやリグニン、タンパク質等の原料由来の副成分や、添加剤や複合化成分等の人為的な第三成分を含んでいても構わない。
【0031】
また、セルロース或いは澱粉或いはキチン及びキトサンを主成分とする多糖類材料の酸化反応では、特に、N−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナトリウムの存在下、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0032】
また本発明に関わる多糖類材料の形態も特に限定されるものではなく、その材料の形態を維持したまま、水中にて、化学構造の選択性高く、材料表面を酸化処理できることが本発明のもう一つの特徴ある。形態の一例としては、繊維状、糸状、ガーゼ、織布或いは不織布、紙、フィルム状、シート状等が挙げられる。
【0033】
従って、再生処理やマーセル化処理といった前処理を必要とすることなく、選択性の高い酸化反応を行うことが出来る。セルロースを主成分とする材料では、セルロース分子の還元末端、またはピラノース環の第6位がカルボキシル基に変換されたウロン酸単位が、材料表面部分に偏析した状態で得られる。また澱粉を主成分とする材料では澱粉分子の還元末端、またはピラノース環の第6位がカルボキシル基に変換されたウロン酸単位が、材料表面部分に偏析した状態で得られる。またキチン及びキトサンを主成分とする材料ではキチン及びキトサン分子の還元末端、またはN−アセチルグルコサミン或いはグルコサミンの第6位がカルボキシル基に変換された構造が、材料表面部分に偏析した状態で得られる。
【0034】
本発明の酸化方法では、酸化改質されるのは材料の表面部分に限られ、また酸化反応も材料を脆化させるような副反応が少ないことから、材料が本来持つ物理的強度(引張強度等)や風合いを失うことなく、表面改質が可能である。
【0035】
具体的には、パルプ等の多糖類材料に用いた場合は、表面付近にアニオン性のカルボキシル基が効果的に導入されて、カチオン性の内添剤の定着性が向上したり、繊維間の結合力が増すことが考えられる。
また、織布、不織布などの布に用いた場合は、表面付近に生体適合性の高いウロン酸単位構造が偏析するため、医療用の布材などに好適に用いることができる。
また、多糖類繊維を用いた場合は、染色性が向上したり、吸水性、吸水速度が向上する。
また、材料表面の濡れ性向上、接着性向上なども期待できる。
【0036】
本発明において、カルボキシル基の導入量は、多糖類成分の構成単糖のモル数に対して1〜60%(酸化度1〜60%)であることが望ましい。酸化度が1%未満では、カルボキシル基を導入した効果が発現しにくく、60%を越えると、表面特性の向上は飽和し、逆に水溶化しやすくなり材料の形態保持が難しくなるとともに、分子量低下等の副反応が起こりやすく、材料の強度低下を招き好ましくない。
【0037】
前記カルボキシル基量は、滴定法や、NMR分析、IR分析等により定量することができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが本発明を限定するものではない。
【0039】
参考例1>
澱粉(ACS ACROS社製)10gを水に懸濁させ、60℃に加熱して溶解させた。この溶液をTEMPO0.125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶液に加え、澱粉の固形重量濃度が約1.3重量%になるように調製した。反応系を冷却し、次に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)100mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対
応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、参考例1の酸化澱粉を得た。
【0040】
参考例1の酸化澱粉及び原料の澱粉を重水に溶解させ、13C−NMRを測定した。結果を図1に示す。
【0041】
図1に示した通り、参考例の酸化澱粉は、酸化前のピラノース環C6位の水酸基を持つ炭素に由来するピークが消え、カルボキシル基に変換していることが分かる。2位、3位の炭素に由来するピークは変化せず、ケトンなどのピークは確認されなかった。従って選択性高く、ピラノース環の6位炭素のみを酸化し、カルボキシル基に変換していることが分かる。
【0042】
参考例2>
原料として針葉樹漂白クラフトパルプ繊維を用い、カナダ標準濾水度が350csfとなるように叩解処理した水分散パルプスラリー(絶乾パルプ量50g相当)にTEMPO0.125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶液を加え、全体としてパルプ濃度が約1.3重量%になるよう調製した。
【0043】
パルプスラリーを冷却し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)10mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中はスラリーのpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。15分後反応を停止し、十分に水洗して参考例2の酸化パルプ繊維を得た。
【0044】
(カルボキシル基量の測定)
参考例2の酸化パルプ繊維、及び原料のパルプ繊維(比較例1)について、パルプ中のカルボキシル基量をTAPPI TEST METHODS T237om−93に従い定量した。その結果、原料パルプではグルコース残基当たり0.6%であったカルボキシル基が、1.5%に上昇しており、カルボキシル基が導入されたことが確認された。
【0045】
(強度物性の評価)
参考例2の酸化パルプ繊維、及び原料のパルプ繊維(比較例1)から手抄紙を作成し、JIS P8113に準じた引張試験を行い、乾燥紙力(23℃50%RH)および湿潤紙力(常温蒸留水中に1分或いは60分浸漬)を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0004192467
【0047】
この表から、参考例2の酸化パルプから抄紙された紙は、比較例に比べて乾燥紙力、および湿潤紙力ともに向上することが確認された。特に蒸留水1分浸漬における強度差が大きい。導入されたカルボキシル基により繊維間の水素結合が増したことによる効果と考察される。また酸化処理による繊維強度の劣化も殆どないものと思われる。
【0048】
(内添剤の定着性の評価)
参考例2の酸化パルプスラリー、及び原料のパルプスラリー(比較例1)に、以下に示す内添剤を絶乾パルプ重量に対して5%(SiO重量換算)添加して5分間攪拌し、手抄紙を作成した。得られた内添紙は、凍結粉砕した後、ペレット状に成形して、蛍光X線分析用の試料とした。蛍光X線分析によりSiの定量を行ったところ、比較例の内添紙ではSiO定着量が1.0%(SiO換算重量%)であったのに対し、参考例2の内添紙では2.5%と2倍以上の定着量を示した。パルプ繊維表面のアニオン性が増加したためと考察される。今回定着量の分析を容易にするためSi系の内添剤を用いたが、一般的なカチオン性内添剤においても同様の効果が期待できると考えられる。
【0049】
上記内添剤として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(S320 チッソ(株)製)2.77g(12.24mmol)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(S530チッソ(株)製)4.525g(18.36mmol)、及び0.1N−塩酸10molを混合し約15分間攪拌した後、イソプロパノールを適量添加し、約15分間攪拌したものを用いた。
【0050】
<実施例3>
米坪100g/m2の上質紙(NPi上質 日本製紙(株)製)、20cm×20cmの試験片5枚を、TEMPO0.125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶液3l中に浸漬して、反応系を冷却し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)20mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。20分後試験片を引き上げ、エタノールおよび水で十分に洗浄、乾燥して実施例3の酸化紙を得た。
【0051】
(カルボキシル基量の測定)
実施例3の酸化紙、及び酸化処理していない上質紙(比較例2)について、凍結粉砕し、紙中のカルボキシル基量をTAPPI TEST METHODS T237 om−93に従い定量した。その結果、比較例2の上質紙は、カルボキシル基がグルコース残基当たり0.9%であったのに対し、実施例3では、5.5%となり、カルボキシル基の導入が確認された。
【0052】
(IR分析)
実施例3及び比較例2の凍結粉砕試料を用いて、KBr法によりIR分析を行った。測定チャートを図2に示す。1610cm-1付近のカルボキシル基のナトリウム塩に由来する吸収の増大が認められた。
【0053】
<実施例4>
セルロースガーゼ5gを、TEMPO0.125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶液1l中に浸漬して、反応系を冷却し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)20mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。90分後ガーゼを引き上げ、エタノール及び水で十分に洗浄、乾燥して実施例4の酸化ガーゼを得た。
【0054】
(カルボキシル基量の測定)
実施例4の酸化ガーゼ、及び酸化処理していないセルロースガーゼ(比較例3)について、凍結粉砕し、試料中のカルボキシル基量をTAPPI TEST METHODS T237 om−93に従い定量した。その結果、比較例3のセルロースガーゼは、グルコース残基当たり0.2%であったのに対し、実施例4は、グルコース残基当たり10.2%のカルボキシル基が確認された。
【0055】
(IR分析)
実施例4及び比較例3の凍結粉砕試料を用いて、KBr法によりIR分析を行った。測定チャートを図3に示す。1610cm-1付近のカルボキシル基のナトリウム塩に由来する吸収の増大が認められた。
【0056】
<実施例5>
キチンフィルム5gを、TEMPO0.125g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶液1l中に浸漬して、反応系を冷却し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)20mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。20分後フィルムを引き上げ、エタノール及び水で十分に洗浄、乾燥して実施例5の酸化フィルムを得た。
【0057】
(IR分析)
実施例5の酸化フィルム、及び酸化処理していないキチンフィルム(比較例4)について、凍結粉砕し、KBr法によりIR分析を行った。測定チャートを図4に示す。1610cm−1付近のカルボキシル基のナトリウム塩由来の吸収が増大しており、カルボキシル基の導入が認められる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の多糖類材料の酸化処理方法によれば、水系で反応中のpHが9から12、反応温度が0℃〜室温までの温和な条件で、効率的な酸化処理を行うことが可能であり、有害な溶剤やガスを使用することなく安全性が高い。また高価な試薬であるN−オキシル化合物は触媒量ですみ、消費されるのは安価な次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤と水酸化ナトリウム等のアルカリであり、触媒は繰り返し利用が可能で、連続処理の場合には、特に安価な酸化方法と言える。
【0059】
また、再生処理等の前処理を必要とすることなく、材料の形状、及び物理的強度、風合い等を保ったまま、副反応が少なく、材料表面にカルボキシル基を導入できる。さらに、多糖類分子の還元末端或いは構成単糖中の一級水酸基のみを酸化する、選択性の高い反応である。
【0060】
また本発明の処理方法により酸化された多糖類材料は、安全で容易に製造され、酸化処理による物理的強度低下が少なく、選択性高く多糖類分子の還元末端或いは構成単糖中の一級水酸基が酸化されてカルボキシル基に変換された構造が材料の表面部分に局在化している特徴を持つ。そのため、材料表面のイオン的物性、水素結合性、染色性、吸着性、定着性、接着性等が向上し、循環型社会の構築に向けた多糖類材料の利用促進の一助となり得る。
【0061】
さらに本発明の酸化多糖類材料は、医療・医薬材料、化粧品材料、他の機能性材料等に利用することも可能であり、多糖類素材の新たな特性や機能性を付与できる可能性がある。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の酸化澱粉および原料の澱粉を重水に溶解させて測定した13C−NMRチャートである。
【図2】実施例3の酸化紙および比較例2の紙の凍結粉砕品のKBr法によるIRチャートである。
【図3】実施例4の酸化ガーゼおよび比較例3のガーゼの凍結粉砕品のKBr法によるIRチャートである。
【図4】実施例5の酸化キチンフィルムおよび比較例4のキチンフィルムの凍結粉砕品のKBr法によるIRチャートである。

Claims (8)

  1. 多糖類を主成分とする多糖類材料を水中にて、N−オキシル化合物の触媒の存在下で酸化処理し、多糖類材料の表面を改質する酸化多糖類材料の製造方法において、該多糖類材料の形態が、ガーゼ、織布、不織布、紙、フィルムまたはシートのいずれかであることを特徴とする酸化多糖類材料の製造方法。
  2. 前記多糖類材料が、セルロース、澱粉、キチン又はキトサンのいずれかひとつを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の酸化多糖類材料の製造方法。
  3. 前記N−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルであることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化多糖類材料の製造方法。
  4. 前記酸化処理が、水中で臭化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ金属の存在下、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸およびそれらの塩から選ばれる群のうち、少なくとも1種以上の酸化剤を用いて酸化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの一に記載の酸化多糖類材料の製造方法。
  5. 前記酸化処理が、アルカリを添加してpH9〜12に保ちながら酸化することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの一に記載の酸化多糖類材料の製造方法。
  6. 多糖類を主成分とする多糖類材料を水中にて、N−オキシル化合物の触媒の存在下、多糖類材料の表面部分の、多糖類分子の還元末端、または構成単糖の一級水酸基を選択的に酸化し、カルボキシル基又はその塩類に変換された構造を持つ酸化多糖類材料において、該多糖類材料の形態がガーゼ、織布、不織布、紙、フィルムまたはシートのいずれかであり、多糖類分子の還元末端又は構成単糖の一級水酸基を選択的に酸化し、カルボキシル基に変換された構造が、該ガーゼ、織布、不織布、紙、フィルムまたはシートのいずれかの表面部分に偏析していることを特徴とする酸化多糖類材料。
  7. 前記多糖類材料が、セルロース、澱粉、キチン又はキトサンのいずれかひとつを主成分とする材料であって、セルロース、澱粉、キチン又はキトサン分子の還元末端、またはピラノース環の第6位の一級水酸基を選択的に酸化し、カルボキシル基又はその塩類に変換されたウロン酸構造単位が材料の表面部分に偏析していることを特徴とする請求項6に記載の酸化多糖類材料。
  8. 前記カルボキシル基が、多糖類成分の構成単糖のモル数に対して1〜60%(酸化度1〜60%)であることを特徴とする請求項6又は7に記載の酸化多糖類材料。
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