JP4872144B2 - 耐水紙およびその製造方法および紙容器 - Google Patents

耐水紙およびその製造方法および紙容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性、撥水性、耐油性、撥油性、高乾燥強度、高湿潤強度等の各種機能に優れ、且つ再生処理に適した各種包装用紙、建装用紙、または保型性が必要な冷凍食品用やテイクアウト用食品紙トレイ、紙カップ、段ボールライナー及び中芯原紙、インスタント食品用紙容器、化粧紙、紙製育苗ポット等に使用される機能紙、および紙容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、これまでの環境負荷型技術から環境保全への技術転換が世界中で巻き起こっている。その一つとして、有限な資源である石油由来のプラスチック材料から、天然再生資源であり無尽蔵にある木材セルロースが注目され、例えば、従来、発泡ポリスチレン等の合成樹脂を使用した容器は環境ホルモンの問題解決も兼ねて、紙容器へ移行し需要も増加してきている。
【0003】
また、製紙業界では故紙の再利用が活発に行われること、プラスチックに比べて燃焼熱が低いことから燃焼炉を傷めずにサーマルリサイクルによってエネルギーに変換が可能である等の理由からその需要はますます増加している。
【0004】
また、このよう状況で増加する紙ゴミは、CO2 量削減による地球温暖化防止や2000年の紙容器を対象とした容器包装リサイクル法の施行の伴い、紙ゴミを回収し、原料として再利用することも望まれている。
【0005】
しかし、紙は、プラスチック材料に比べ劣る物性があり、中でも紙はセルロース繊維が水素結合したものである為、繊維間に容易に水が入り込み耐水性が低い課題がある。耐油性もプラスチックと比較して高くない。
【0006】
従来、耐水性や耐油性等の機能を紙に付与する方法としては、(1)紙を抄紙・抄造する際に、機能性を付与する薬剤をパルプ原料へ添加(内添)、或いは機能材料(繊維)の混抄(2)抄紙・抄造された紙へ機能性薬剤の塗工、或いは含浸(外添)、(3)紙表面へポリエチレンやポエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムのラミネート等の方法がある。
【0007】
しかし、これらの機能化方法は、一部、天然物系のロジンやその誘導体、アルギン酸などを除いて、ほとんど全て石油由来の合成高分子系の内添剤や外添(含浸)剤、そしてプラスチックフィルムを使用する場合が多く、省資源や環境保護の面から見ると改善することが必要であり、近年、社会問題となっている環境ホルモンやアトピー症などの人体への影響も懸念される。またパルプモールド等の3次元成形体には、外添やラミネートの工程が効率的でないという欠点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。即ち、従来の紙へ耐水性を付与する方法である内添、外添(含浸)、塗工、貼り合せ(ラミネート)などとは異なり、石油資源に依存しない省資源、環境保護の面を重視した、紙自体の改質による優れた耐水性を有する機能紙および紙容器を提供するものである。
【0009】
【議題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、原料パルプ自体を改質し、それを製紙に応用することに至ったのである。
【0010】
即ち、本発明は、原料パルプの基本骨格であるセルロース中にある多数のカルビノール基を酸化することで高い電荷極性と疎水性を有するカルボニル基に変換し、その酸化改質パルプをそのまま、或いは非改質のパルプと混抄することで、脱水・乾燥後、紙中に強固な水素結合や疎水結合を生成させ、優れた耐水性を有する紙および紙容器を得ることができた。
【0011】
この理論的な解釈としては、東京大学の磯貝らが、パルプとアルキルケテンダイマー(AKD)との定着挙動について詳細な研究をされている。これによればセルロース分子鎖は親水性と疎水性の両面を有し、AKDはパルプ表面に定着後加水分解し、疎水性の高いケトンがパルプ表面上で均一な分布を形成し、パルプ(セルロース分子)とケトンは水素結合および疎水結合によって強固な定着が起こることを示唆しており、本発明の耐水紙もカルボニル基含有セルロース繊維と未改質セルロース繊維との間で類似の作用が起こっていると考えられる。
【0012】
以上のような本発明の耐水紙および紙容器の概念は、これまでの紙への機能化方法である内添、外添(含浸)、塗工、貼り合せ(ラミネート)などとは異なる全く別の紙自体の改質という発想によるものである。
【0013】
本発明の酸化改質パルプの酸化方法としては、これまで多数の研究報告が有るが、例えば、次亜塩素酸や塩素、二酸化塩素、過酸化水素、オゾンなどによるパルプの漂白剤に使用される酸化剤は、副反応が多くグリコシド結合の開裂による重合度の低下もあるので余り適当ではない。
【0014】
セルロース分子の6位のカルビノール基の選択的な酸化方法としては、四塩化炭素などの非極性溶媒中で二酸化窒素(N)によって酸化する方法や最近、東京大学の磯貝らが開発した2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル・オキシラジカル(TEMPO)を触媒としたアルカリ性水系媒体での次亜塩素酸ナトリウムと臭化ナトリウムによる酸化方法が挙げられる。
【0015】
また、セルロース分子の2位と3位のカルビノール基の選択的な酸化方法としては過ヨウ素酸や過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウムや過ヨウ素酸カリウムなど)、四酢酸鉛、酢酸コバルト(II)と酸素の組み合せ、ヨウ素と酸化水銀(II)の組み合せ、硝酸銀とペルオキソ二硫酸カリウムの組み合せなどの触媒による酸化方法で過ヨウ素酸と過ヨウ素酸塩以外の酸化剤は、有機溶剤中で反応を行うか、毒性が強く安全性に問題がある。
【0016】
また、以上の酸化方法により2位、3位、6位のいずれの位置にカルボニル基が導入されてもグリコシド結合は弱くなり、特にアルカリ条件下ではβ−脱離により主鎖が切断し易く重合度の低下が起こると考えられる。
【0017】
さらに、このような酸化反応は、一般的にセルロース繊維中の非晶領域で反応が進行し易いと考えられる為、酸化基材となるパルプやセルロース粉末を非晶化処理すると酸化率も高くなると考えられる。具体的な非晶化処理法としては、水酸化ナトリウムによるマーセル化や銅エチレンジアミン溶液による再生処理、或いはSO−DEA−DMSOによる再生非晶処理が挙げられる。
【0018】
過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩による酸化では、1,2‐グリコール構造の2つのカルビノール基を同時に酸化し、且つ炭素結合を開裂させる反応であり、多価アルコールや糖類などへ応用されている。
【0019】
製紙分野では、湿潤紙力増強剤として、澱粉を過ヨウ素酸酸化したジアルデヒド澱粉が使用されている。
【0020】
例えば、特開昭61−207454号では内添用紙力増強剤としてカチオン性ポリアクリルアミドを主成分とした水溶性高分子を保護コロイドとしたスチレンモノマーの乳化重合体エマルジョンにジアルデヒドデンプンを付加したものを使用したり、特開昭58−31199号では紙力増強用組成物としてアニオン性ジアルデヒドデンプン分散液と、1級または2級アミノ基を有するカチオン性ポリアミド樹脂とから成り、かつ、それをパルプスラリーに添加し、乾燥工程中、紙および板紙の構造上で反応させて用いることを特徴とする紙力増強組成物、特開平3−185197号では弱カチオン性ジアルデヒド澱粉を原料パルプに内添後、抄紙して得られる水分散性のよいティシュペーパーが提案されている。
【0021】
ジアルデヒド澱粉は、1937年に、Jackson及びHudsonにより過ヨウ素酸或いは過ヨウ素酸塩を使って澱粉を水中で酸化することが試みられグルコース基の2,3位の炭素間の結合が選択的に切断されジアルデヒド型に酸化することが判った。この反応は、その後多くの人々により研究され、同じ多糖類の構成単位を持つセルロースもジアルデヒド化されることが判っている。
【0022】
これらの各種酸化繊維素の研究は戦前から戦後1950年代に活発に行われ、その後、石油由来合成高分子の開発の隆盛に伴い、ほとんど研究されていない。
【0023】
そこで、我々は、これまでの紙の耐水性向上用途として主に内添されていたジアルデヒド澱粉の特性を、そのまま抄紙用原料パルプに付与することを考案した。原料パルプの構成分子はセルロースであり、混抄用途では、パルプ原料はもちろん粉末状のセルロースでも可能である。即ち、ジアルデヒド澱粉と同様に水中で過ヨウ素酸や過ヨウ素酸塩によってセルロースの構成単位であるグルコース基の2位、3位の炭素間の結合が選択的に酸化開裂し、ジアルデヒドセルロースが生成する。
【0024】
澱粉は水可溶性であり均一反応で進行する一方、セルロースは水不溶性であるが、親水性の為不均一反応であるが、反応は進行し重合度が幾らかあればジアルデヒドセルロースも水に溶けず単離精製が容易である。
【0025】
しかし、前述のようにパルプ或いはセルロースへの酸化は不均一反応であり、且つ結晶構造も有している為、結晶領域では剛直なピラノース環は開裂し難く2位、3位のカルビノール基は一部ケトンになったり様々な副反応が起こっている実験結果及び考察が北海道大学の渡辺らによって化繊月報(1954年、9月号、P24)等に報告されている。
【0026】
そして、我々も各種分析・測定で確認していることから、ジアルデヒドパルプ或いはジアルデヒドセルロースと呼ぶのではなく以下は酸化改質パルプ或いは酸化改質セルロースと呼称する。
【0027】
この主に過ヨウ素酸や過ヨウ素酸塩によって酸化された酸化改質パルプ或いは酸化改質セルロースは、酸化度にも影響するが、水への分散状態はパルプ原料やセルロースとほぼ同様である。
【0028】
この反応を抄紙用原料パルプで行えば、そのまま抄紙・抄造することが可能で内添方法による定着性の問題もない。
【0029】
即ち、従来の紙への機能性付与、具体的には内添、外添、塗工、貼り合せ等の方法とは異なる、紙自体の改質による機能性付与と言える。電荷極性の高いカルボニル基や疎水性の高いケトン基を有しているため、強固な水素結合と疎水結合を形成し、通常の紙よりも繊維間強度が高く、紙容器としても容器強度高く、保形性も高い。
【0030】
この様にして出来た紙は、優れた乾燥強度及び湿潤強度を有しており良好な耐水性が発現し、耐水性紙容器として使用できる。また、ジアルデヒド澱粉と同様に故紙再生処理におけるアルカリ雰囲気下での離解にも問題がないと考えられ、酸化度の低い本発明の耐水紙では、故紙再生処理による再利用も可能であると考えられる。
【0031】
主に過ヨウ素酸や過ヨウ素塩によって酸化された酸化改質パルプ、又は酸化改質セルロースは、その興味深い構造を有しているにも関わらず、これまで製紙分野での報告はほとんど見受けられず、特開昭62−57556号で消臭剤として例示されている位である。
【0032】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
請求項1載の発明は、セルロース粉末中のセルロース骨格のカルビノール基を部分的にカルボニル基に変換することを目的に酸化剤を使用して得た酸化改質セルロースを非改質のパルプと混抄した耐水紙である。
【0037】
【0038】
【0039】
請求項2載の発明は、請求項1に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の構成単位であるセルロース骨格でピラノース環の第2位と第3位の炭素間が、酸化剤により開裂し、第2位と第3位のカルビノール基が両方或いは片方がカルボニル基に変換された構造を含んだ酸化改質セルロースを原料とし抄紙・抄造、或いは非改質のパルプと混抄した耐水紙である。
【0040】
請求項3載の発明は、前記請求項2に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の生成せしめる酸化剤として、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いる耐水紙である。
【0041】
請求項4載の発明は、カルボニル基が、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基のうち1種もしくは複数であることを特徴とする請求項から何れかに記載の耐水紙である。
【0042】
請求項5載の発明は、前記請求項4記載のカルボニル基含有セルロース粉末のカルボニル基が特にアルデヒド基である耐水紙である。
【0043】
【0044】
請求項6載の発明は、セルロース粉末中のセルロース骨格のカルビノール基を部分的にカルボニル基に変換することを目的に酸化剤を使用して得た酸化改質セルロースを非改質のパルプと混抄してセルロース骨格のカルビノール基が部分的にカルボニル基に変換された繊維を含む事を特徴とする耐水紙を製造する事を特徴とする耐水紙の製造方法である。
【0047】
請求項7載の発明は、請求項6に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の構成単位であるセルロース骨格でピラノース環の第2位と第3位の炭素間が、酸化剤により開裂し、第2位と第3位のカルビノール基が両方或いは片方がカルボニル基に変換された構造を含んだ酸化改質セルロースを原料とし抄紙・抄造、或いは非改質のパルプと混抄してセルロース骨格のカルビノール基が部分的にカルボニル基に変換された繊維を含む事を特徴とする耐水紙を製造する事を特徴とする耐水紙の製造方法である。
【0048】
請求項8載の発明は、前記請求項7に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の生成せしめる酸化剤として、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いる耐水紙の製造方法である。
【0049】
請求項9載の発明は、カルボニル基が、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基のうち1種もしくは複数であることを特徴とする請求項から何れかに記載の耐水紙の製造方法である。
【0050】
請求項10載の発明は、前記請求項9記載のカルボニル基含有セルロース粉末のカルボニル基が特にアルデヒド基である耐水紙の製造方法である。
【0051】
請求項11載の発明は、前記請求項1から10何れか記載の酸化改質セルロースを含む原料から、湿式のパルプモールド成形手法により成形した紙容器である。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0053】
発明のカルボニル基(ケトン基やアルデヒド基、カルボキシル基;以下同様)含有パルプの対象となるものは、カルボニル基含有パルプ単体紙の場合、通常のパルプ原料、すなわち木材繊維で構わない。
【0054】
具体的には、針葉樹、又は広葉樹の漂白又は未漂白状態の亜硫酸パルプ又はクラフトパルプ、砕木パルプ、熱機械パルプ(TMP)又は化学熱機械パルプ(CTMP)等を単独に、或いは2種類以上混ぜ合わせても構わない。
【0055】
カルボニル基含有パルプを非改質パルプと混抄する場合においては、前述の木材パルプの他に紙の剛性を考慮に入れながら、非木材繊維である麻類、綿(リンター)、わら、竹、ケナフ、バカス、シオグサ、エスパルト、楮、三椏、雁皮、ラミーなどでも良い。
【0056】
また、各種酸化反応では、セルロース繊維の非晶領域で反応が進行し易いので、各種の非晶化処理法、具体的には、水酸化ナトリウムによりマーセル化や銅エチレンジアミン溶液による再生処理、SO‐DEM(ジエチルアミン)‐DMSO溶液による再生非晶処理などによって部分的、或いは全体的に結晶化度を下げたものでも良い。
【0057】
また、本発明では、パルプ中のセルロース骨格のカルビノール基を酸化する目的で酸化剤を使用していることを特徴としており、パルプの脱リグニンを目的とした漂白(晒し)で使用される酸化剤とは異なる。
【0058】
即ち、パルプ漂白の漂白剤として用いられる次亜塩素酸塩や塩素、二酸化窒素、或いは過酸化水素やオゾンなどで酸化漂白する場合には、リグニン等の着色成分を分解除去するためセルロース骨格中のカルビノール基の酸化の他に主鎖の切断など雑多な反応を伴い、高晒しのパルプは繊維自体の強度が弱い。
【0059】
それに対して、本発明の酸化剤はパルプ中のセルロース骨格中のカルビノール基を選択的に酸化するもの、言い換えればその目的の為のものを指している。
【0060】
本発明に関わるセルロースとは、リグニンやヘミセルロースなどの不純物をほとんど含まないセルロース純度の高いものを示し、対象となるのは、前記各種木材や非木材パルプや微生物産生セルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロースなどを高圧ホモジナイザーや凍結粉砕機、ミル等で粉砕した粉末状のもので、市販されている各種セルロース粉末や、酸加水分解処理した微結晶セルロース粉末でも構わない。
【0061】
この場合、粉末の大きさは40から300mesh位が適当であり、これ以上に微細化すると単離が困難になり、一部水溶性化して収率が悪い。酸化剤、及び非晶化処理については、前段落の内容と同様であり、レーヨンやテンセルなどの市販再生セルロースも含まれる。
【0062】
発明のカルボニル基含有パルプ、或いはカルボニル基含有セルロースは、第6位のカルビノール基を選択的に酸化しカルボニル基にならしめたものであり、酸化方法としては、例えばパルプやセルロース粉末を四塩化炭素などの非極性溶媒中で二酸化窒素(N)によって酸化する方法や2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル・オキシラジカル(TEMPO)を触媒としたアルカリ性水系媒体での次亜塩素酸ナトリウムと臭化ナトリウムによる酸化方法などである。
【0063】
請求項1記載の発明のカルボニル基含有パルプ、或いはカルボニル基含有セルロースは、第2位と第3位のカルビノール基が酸化剤により酸化され両方或いは片方がカルボニル基に変換された構造を含んだ酸化改質パルプ或いは酸化改質セルロースであり、下段落記載の酸化剤などによりパルプやセルロース中の結晶領域中で主に起こる反応であることが知られている。
【0064】
発明のカルボニル基含有パルプ、或いはカルボニル基含有セルロースは、第2位と第3位の炭素間で酸化開裂が起こり、カルビノール基が両方或いは片方がカルボニル基に変換された構造を含んだ酸化改質パルプ或いはセルロースであり、酸化剤としては、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウムなど)、四酢酸鉛、酢酸コバルト(II)と酸素の組み合せ、ヨウ素と酸化水銀(II)の組み合せ、硝酸銀とペルオキソ二硫酸カリウムの組み合せなどの酸化剤が挙げられ、パルプやセルロース中の非晶領域中で主に起こる反応であることが知られている。
【0065】
しかし、過ヨウ素酸と過ヨウ素酸塩以外の酸化剤は、有機溶剤中で反応を行うか、毒性が強く安全性にも問題がある。
【0066】
発明は、水中での酸化反応が可能で毒性の低い酸化剤として限定したものである。過ヨウ素酸塩としては、過ヨウ素酸ナトリウムや過ヨウ素酸カリウムが挙げられるが水への溶解度が高い過ヨウ素酸ナトリウムが好適である。
【0067】
過ヨウ素酸酸化によるパルプやセルロースの反応では、セルロースのβ−1,4−グリコシド結合の切断などの副反応が起こり、過ヨウ素酸ナトリウムなどは光に対して不安定で分解するので、暗所のもと、室温以下の温度で操作するのが望ましい。
【0068】
また、アルカリ雰囲気下では特に、生成したカルボニル基含有セルロースのβ−脱離による主鎖の切断やover−oxidationが起こるので、出来れば中性、若しくは酸性側で反応を行うことが望ましい。好ましくは、p.H.=3.0から7.0、より好ましくは、p.H.=3.3から5.0付近である。
【0069】
反応時の添加する過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸ナトリウムは、その添加量や酸化反応時間は多い程、或いは長い程、生成するカルボニル基量も多くなるが、副反応によるパルプ繊維の劣化も起こるので、所望する耐水性などの物性を考慮に入れて調整するのが望ましい。反応機構的には、パルプやセルロースのグルコース単位当たり等モルの過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩が理論上反応するが、グルコース単位当たり1.0mol量以上添加すると、生成物の水分散性が悪くなり、パルプ繊維間やセルロース分子間での凝集が起こってくると考えられる。
【0070】
また、酸化反応時間は、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩の添加量が少なければ影響は少ないが、添加量が、グルコース単位当たり0.6mol量以上あれば、酸化反応時間72時間位から、反応生成物の水分散性が低くなってくる。望ましくは、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩の添加量がグルコース単位当たり0.1から0.6mol量の添加量であり、反応時間は24から65時間位が適当である。
【0071】
また、パルプ繊維を過ヨウ素酸酸化する場合、叩解度が低ければ、パルプ表面積が大きく反応も均一に進行し易いが、叩解によって生じるパルプ表面上の毛羽立ち繊維(ミクロフィブリル)は、副反応によって切断され易く、叩解度は高くなってくる。
【0072】
過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩の添加量が多ければ、その傾向も大きくなる。従って、過ヨウ素酸酸化するパルプの叩解度は、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩の添加量と所望する耐水性などの物性を考慮に入れて調整するのが望ましい。
【0073】
パルプやセルロース粉末の過ヨウ素酸酸化が進むと、セルロース構造中の結晶領域は非晶化されて結晶化度が低下してくることがX線解析によって確認されており、また、その単体紙や混抄紙、特に単体紙の耐水性(低吸水率、高wet/dry)は向上してくる反面、紙本来の靭性が低下して透明性が発現されてくる。
【0074】
請求項2記載の発明は、パルプ、或いはセルロース粉末のカルボニル基含有パルプ繊維で、そのカルボニル基が特にアルデヒド基であることを特徴としている発明である。
【0075】
過ヨウ素酸酸化は、本来前述のように1、2‐グリコール構造の選択的酸化開裂によるジアルデヒド基の生成反応であり、均一反応系ではその傾向が強いが、セルロースへの反応のような不均一反応系では多くの副反応が起こる為、アルデヒド基以外にケトン基やカルボキシル基も副生することからカルボニル基としたが、副反応を抑制する反応条件下で、且つパルプやセルロースも非晶化処理によって結晶化度を下げれば、アルデヒド基量も増大することが判っている。
【0076】
本発明の耐水紙は、セルロース骨格中のカルビノール基を酸化しカルボニル基変換した酸化改質パルプ、或いは酸化改質セルロース粉末を主にしているが、カルボニル基の中でも特に高い電荷極性と反応活性を有するアルデヒド基が望ましいと考えられる。
【0077】
本発明に関わる酸化改質パルプ、或いは酸化改質セルロースの官能基の定量分析としては、北海道大学の渡辺らが紙パルプ技術協会誌(1956年発刊、10、524)に報告している定量方法で適当であり、具体的にはカルボニル基をセミカルバジッド塩酸塩法、カルボキシル基を酢酸カルシウム法、アルデヒド基を亜塩素酸ソーダ法で定量分析している。簡易的には、セミカルバジッド塩酸塩法だけで良い。
【0078】
このように、本発明の耐水紙および紙容器は、従来の機能化薬剤の内添、外添、塗工またはプラスチックフィルムのラミネート等の方法ではなく、ベース基材である紙自体を改質することにより耐水性を付与したものである。
【0079】
即ち、原料パルプに酸化剤を反応させることにより、パルプ中のカルビノール基をカルボニル基(ケトン基やアルデヒド基、カルボキシル基)、中でもアルデヒド基に変換し、それを単体、或いは非改質パルプとの混抄により、カルボニル基の高い電荷極性とケトン基の高い疎水性から強固な水素結合や疎水結合が生じ、通常の紙よりも高い繊維間力が付与され、優れた耐水性を有することができる。
【0080】
また、混抄の場合は、セルロース粉末を酸化したしたものでも良い。
【0081】
本発明の耐水紙の製造法は、従来の工程で製造できる。即ち、カルボニル基含有パルプ繊維単体、或いはそれと非改質のパルプとの混合、又はカルボニル基含有セルロースと非改質のパルプとの混合した水分散スラリーを、抄紙・抄造、プレス工程、乾燥工程を経て作製できる。紙の坪量は、特に制限はないが、30から200g/m2位の紙から、600g/m2位の厚紙でも可能であると考えられる。また、本発明の耐水紙で紙容器を作製する場合には、従来公知の方法が可能であり、例えば、プランジャー型製函機で打ち抜き4隅を貼り合せる組み立て成形法や、専用のトレー成形機で熱圧押付・成形できるプレス式成形法などが可能である。また請求項11記載の発明によれば、酸化改質パルプ、或いは酸化改質セルロースを含む原料から、従来法の湿式のパルプモールド成形手法によりパルプモールド成形することで、後工程なく紙容器を作製することが可能である。
【0082】
【実施例】
次に本発明の適用例、及び製造例を含む実施例に基づきさらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0083】
〈適用例1〉 原料パルプは、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)抄紙用原料を、JIS−P8209『パルプ試験用手漉き紙調整方法』に準拠して離解し、JIS−P8121『パルプのろ水度試験方法』に準拠したカナダ標準ろ水度試験方法で100csfの叩解度のものを水で希釈して、1.0wt%濃度のパルプスラリーを調整した。
【0084】
〈適用例2〉 適用例1で叩解度が350csfである以外、適用例1と同様のNBKPパルプスラリーである。これらを使用して、以下に示す製造例、実施例、比較例で各内添紙を作製した。
【0085】
〈製造例1〉 前記適用例1で、調整したNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=100csf)水分散スラリ−6L(絶乾パルプ量=60g)に対して、過ヨウ素酸ナトリウムをパルプ中のグルコース単位(分子量=162)当たり0.2mol量に当たる約16gを添加し、冷暗所中、攪拌機にて攪拌して酸化反応を行い、24時間後、48時間後、72時間後の改質パルプを各々取り出し、エチレングリコールを数ml加えて未反応の過ヨウ素酸ナトリウムを分解後、メタノールを同容量加えて微少な酸化改質パルプを再沈させて、約200meshの金網で濾過し、十分に水洗後、約1.0wt%の酸化改質パルプ水分散スラリーを得た。
【0086】
〈製造例2〉 同じくNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=100csf)水分散スラリ−6L(絶乾パルプ量=60g)に対して、過ヨウ素酸ナトリウムをパルプ中のグルコース単位(分子量=162)当たり0.6mol量に当たる約48gを添加し、冷暗所中、攪拌機にて攪拌して酸化反応を行い、24時間後、48時間後、72時間後の酸化改質パルプを各々取り出し、エチレングリコールを数ml加えて未反応の過ヨウ素酸ナトリウムを分解後、メタノールを同容量加えて微少な改質パルプを再沈させ、約200meshの金網で濾過し、十分に水洗後、約1.0wt%の酸化改質パルプ水分散スラリーを得た。
【0087】
〈製造例3〉 同じくNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=100csf)水分散スラリ−6L(絶乾パルプ量=60g)に対して、過ヨウ素酸ナトリウムをパルプ中のグルコース単位(分子量=162)当たり1.3mol量に当たる約104gを添加し、冷暗所中、攪拌機にて攪拌して酸化反応を行い、24時間後、48時間後、72時間後の酸化改質パルプを各々取り出し、エチレングリコールを数ml加えて未反応の過ヨウ素酸ナトリウムを分解後、メタノールを同容量加えて微少な酸化改質パルプを再沈させ、約200meshの金網で濾過し、十分に水洗後、約1.0wt%の改質パルプ水分散スラリーを得た。 しかし、48時間後と72時間後の酸化改質パルプは、水分散性が悪く、顕微鏡観察した所、酸化改質パルプ繊維同志の架橋が起こっていた。
【0088】
〈製造例4〉 次に、パルプ原料ではなく、セルロース粉末の酸化改質を行った。セルロース粉末としては、市販の200から300meshのコットンリンターセルロース粉末(商品名;ToyoRoshi−B、アドバンテック東洋(株)製)の水分散液(N.V.=2.0wt%)500mlに対して、過ヨウ素酸ナトリウムをセルロース中のグルコース単位(分子量=162)当たり1.3mol量に当たる約17.15gを添加し、冷暗所中、攪拌機にて攪拌して酸化反応を行い、65時間後の酸化改質セルロースを取り出し、エチレングリコールを数ml加えて未反応の過ヨウ素酸ナトリウムを分解後、メタノールを同容量加えて微少な酸化改質セルロースを再沈させ、ろ紙上で吸引濾過し十分に水洗後、約1.0wt%の酸化改質セルロース水分散スラリーを得た。
【0089】
次に、前記製造した本発明に関わる酸化改質パルプ、及び酸化改質セルロースを利用した本発明の耐水紙の実施例を示すが、これらは、本発明を限定するものではない。
【0090】
参考例1〉 製造例1で調整した本発明に関わる酸化改質パルプスラリーの24時間、48時間、72時間反応試料をそのまま、標準型手漉き角型抄紙機で、坪量約80g/mの酸化改質パルプ紙を抄紙し、脱水プレス(3.5kgf/cm)を5分間行い、ヤンキードライヤー(表面温度=約120℃)で乾燥させ酸化改質パルプ紙を作製した。
【0091】
参考例2〉 製造例2で調整した本発明に関わる酸化改質パルプスラリーの24時間、48時間、72時間反応試料をそのまま、参考例1と同様の手順により酸化改質パルプ紙を作製した。
【0092】
参考例3〉 製造例3で調整した本発明に関わる酸化改質パルプスラリーの24時間反応試料をそのまま、参考例1と同様の手順により酸化改質パルプ紙を作製した。
【0093】
参考例4〉 製造例1で調整した本発明に関わる酸化改質パルプスラリーの48時間反応試料と適用例2で調整した非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−を固形分の混合比率=1:1で混ぜ合わせ、参考例1と同様の手順により酸化改質パルプ混抄紙を作製した。
【0094】
参考例5〉 製造例2で調整した本発明に関わる酸化改質パルプスラリーの48時間反応試料と適用例2の非改質1のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−を固形分の混合比率=1:1で混ぜ合わせ、参考例1と同様の手順により酸化改質パルプ混抄紙を作製した。
【0095】
〈実施例6〉 製造例4で調整した本発明に関わる酸化改質セルローススラリーの65時間反応試料と適用例2の非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−を固形分の混合比率=1:2で混ぜ合わせ、実施例1と同様の手順により酸化改質セルロース混抄紙を作製した。
【0096】
〈比較例1〉 適用例2で調整した非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−をそのまま、参考例1と同様の手順によりNBKP原紙を作製した。
【0097】
〈比較例2〉(市販による湿潤強化紙) 適用例2で調整した非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−に、市販湿潤紙力増強剤(商品;PY−410、ハリマ化成(株)製)のN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比で1wt%混合し5分間攪拌定着後、参考例1と同様の手順により湿潤強化紙を作製した。
【0098】
〈分析例1〉 製造例2でパルプの酸化反応を行った際の過ヨウ素酸ナトリウムの消費量を過ヨウ素酸ナトリウムの特性吸収域におけるUV吸光度の測定により求めた結果を図2に示す。また、過ヨウ素酸ナトリウムの消費量を求める際には、あらかじめ作成した検量線を図1に示す。酸化改質パルプスラリーのカルボニル基量をセミカルバジッド塩酸塩法により、定量分析を行った結果を図3に示す。
【0099】
各種改質パルプ紙は、各物性評価を行う前に、JIS−P8111に基づいて、20℃−65%RH環境下で24時間以上の調湿を行った。
【0100】
〈試験例1〉 各種酸化改質パルプ紙の耐水性を評価する目的として、吸水率を測定した。測定方法は、各種改質パルプ紙を50×50mmの形状に裁断し、蒸留水へ1時間浸水させ、浸水前の重量と浸水後の重量差により、吸水率(含水重量率)を算出した。その結果を表1に示す。 なお、(%)=(浸水前と後の重量差(g)/浸水前の重量(g))×100である。
【0101】
【表1】
Figure 0004872144
【0102】
前記表1の結果より、本発明の耐水紙は、比較例1の原紙や比較例2の市販湿潤紙力剤による内添紙に比べて非常に低い吸水率であることが判った。
【0103】
〈試験例2〉 次に、各種酸化改質パルプを、JIS−8113に基づいて、オートグラフ(島津製作所(株)製、島津オートグラフAG−500A)を使用して、乾燥状態(20℃−65%RH)と湿潤状態(試験片を蒸留水中へ1時間浸水)における各々の破断強度を測定して、湿潤破断強度/乾燥破断強度(wet/dry)を算出し、耐水性を評価した。また、各測定サンプルの厚さを測定し、湿潤応力を求めた。その結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
Figure 0004872144
【0105】
上記、表2の結果から、本発明の耐水紙は、比較例1の原紙や比較例2の市販湿潤紙力剤による内添紙に比べて、非常高いwet/dryであることが判った。但し、参考例2の72時間酸化品と参考例3の24時間酸化品に関しては、過ヨウ素酸酸化によるパルプ繊維の劣化の影響から物性が低くなった。また、紙断面積当たりの紙力である湿潤応力は、市販湿潤紙力剤による内添紙に優るものである。
【0106】
以上のように、本発明の酸化改質パルプをベース材料にした新規の耐水紙は、従来の湿潤強化紙よりも優れた耐水性(低吸水率、高wet/dry)を有し、且つ紙自体を無機物の酸化剤によって改質した機能性付与である為、石油資源に依存せず、再生処理も可能であることから、省資源・環境保護の面でも優位性がある。
【0107】
さらに、前記製造した本発明に関わる酸化改質パルプ、及び酸化改質セルロースを利用した本発明の紙容器の実施例を示すが、これらは、本発明を限定するものではなく、前記本発明の耐水紙より容器成形しても構わない。
【0108】
参考例7〉 製造例1で調整した本発明に関わる酸化改質パルプスラリーの24時間、48時間、72時間反応試料をそのまま、湿式のパルプモールド成形機により、重量20gの紙容器を作製した。
【0109】
〈実施例8〉 製造例4で調整した本発明に関わる酸化改質セルローススラリーの65時間反応試料と適用例2の非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−を固形分の混合比率=1:2で混ぜ合わせ、湿式のパルプモールド成形機により、重量20gの紙容器を作製した。
【0110】
〈比較例3〉 適用例2で調整した非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−をそのまま、湿式のパルプモールド成形機により、重量20gの紙容器を作製した。
【0111】
〈比較例4〉(市販による湿潤強化紙) 適用例2で調整した非改質のNBKP(N.V.=1.0wt%、叩解度=350csf)水分散スラリ−に、市販湿潤紙力増強剤(商品;PY−410、ハリマ化成(株)製)のN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比で1wt%混合し5分間攪拌定着後、湿式のパルプモールド成形機により、重量20gの紙容器を作製した。
【0112】
上記パルプモールド成形した紙容器は、物性評価を行う前に、JIS−P8111に基づいて、20℃−65%RH環境下で24時間以上の調湿を行った。
【0113】
〈試験例3〉 参考例7、実施例8および比較例3、4の紙容器の容器としての耐水強度を求めるため以下に記す試験を実施した。すなわち、先ず、オートグラフ(島津製作所社製 島津オートグラフAG−500A)を用いて、乾燥状態(20°C−65%RH)における定速圧縮試験による座屈時の荷重を測定した。さらに80℃熱水を紙容器に満たし、30分経過後、熱水を捨てて、直ちに同様の定速圧縮試験を行い、湿潤状態での座屈時の荷重を測定した。結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
Figure 0004872144
【0115】
上記、表3の結果から、本発明の紙容器は、比較例3の未添加パルプからなる紙容器や比較例4の市販紙力増強剤内添パルプよりなる紙容器に比べて、湿潤時の強度が極めて高く、特に容器の保形性に優れることが判った。
【0116】
【発明の効果】
本発明の耐水紙は、酸化剤によりパルプ中のカルビノール基を酸化してカルボニル基(ケトン基やアルデヒド基、カルボキシル基)に改質したパルプをそのまま、或いは非改質のパルプとの混合物、又はカルボニル基含有セルロースと非改質のパルプとの混合物の水分散スラリーを抄紙・抄造した耐水紙であり、従来の製紙技術による紙の高機能化とは異なる新規の機能紙と言える。即ち、従来の紙の機能化方法は、機能性を付与する薬剤を内添、外添(含浸)、塗工、或いはプラスチックフィルムの貼り合せなどの方法であったが、本発明の機能紙は、ベース基材である紙自体を改質することを基本としている。
【0117】
具体的には、酸化剤によりパルプ中や混抄用のセルロース中のカルビノール基を酸化して、カルボニル基(ケトン基やアルデヒド基、カルボキシル基)に変換し、高い電荷極性とケトン基の高い疎水性から、強固な水素結合や疎水結合を形成し、通常の紙よりも高い繊維間力から、従来の湿潤強化紙以上の耐水性を付与することが出来る。
【0118】
また、従来の合成高分子系の内添剤や含浸(外添)剤、ラミネート用フィルムとは異なり石油資源を全く使用せず、故紙再生処理も可能であり、自然界のサイクルに沿った省資源、環境保全型の耐水紙と言える。
【0119】
また、上記酸化改質パルプ、酸化改質セルロースを原料としてパルプモールド成形することにより、容器成形工程を必要とせず、また形状の自由度高く、非効率的な外添やラミネートの工程が必要なく、耐水性に優れた紙容器が得られる。
【0120】
従って、本発明の耐水紙および紙容器は、各種包装用紙、建装用紙、また保型性が必要な冷凍食品用やテイクアウト用食品紙トレイ、紙カップ、段ボールライナー及び中芯原紙、インスタント食品用紙容器、化粧紙、紙製育苗ポット等に使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】パルプの酸化反応を行った際の過ヨウ素酸ナトリウムの消費量を過ヨウ素酸ナトリウムの特性吸収域におけるUV吸光度の測定により求めた消費曲線を示す図である。
【図2】過ヨウ素酸ナトリウムの消費量の検量線を示す図である。
【図3】酸化改質パルプスラリーのカルボニル基量をセミカルバジッド塩酸塩法により、定量分析を行った結果を示す図である。

Claims (11)

  1. セルロース粉末中のセルロース骨格のカルビノール基を部分的にカルボニル基に変換することを目的に酸化剤を使用して得た酸化改質セルロースを非改質のパルプと混抄した耐水紙。
  2. 請求項1に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の構成単位であるセルロース骨格でピラノース環の第2位と第3位の炭素間が、酸化剤により開裂し、第2位と第3位のカルビノール基が両方或いは片方がカルボニル基に変換された構造を含んだ酸化改質セルロースを原料とし抄紙・抄造、或いは非改質のパルプと混抄した耐水紙。
  3. 前記請求項2に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の生成せしめる酸化剤として、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いる耐水紙。
  4. カルボニル基が、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基のうち1種もしくは複数であることを特徴とする請求項から何れかに記載の耐水紙。
  5. 前記請求項4記載のカルボニル基含有セルロース粉末のカルボニル基が特にアルデヒド基である耐水紙。
  6. セルロース粉末中のセルロース骨格のカルビノール基を部分的にカルボニル基に変換することを目的に酸化剤を使用して得た酸化改質セルロースを非改質のパルプと混抄してセルロース骨格のカルビノール基が部分的にカルボニル基に変換された繊維を含む事を特徴とする耐水紙を製造する事を特徴とする耐水紙の製造方法。
  7. 請求項6に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の構成単位であるセルロース骨格でピラノース環の第2位と第3位の炭素間が、酸化剤により開裂し、第2位と第3位のカルビノール基が両方或いは片方がカルボニル基に変換された構造を含んだ酸化改質セルロースを原料とし抄紙・抄造、或いは非改質のパルプと混抄してセルロース骨格のカルビノール基が部分的にカルボニル基に変換された繊維を含む事を特徴とする耐水紙を製造する事を特徴とする耐水紙の製造方法。
  8. 前記請求項7に記載のカルボニル基含有セルロース粉末の生成せしめる酸化剤として、過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いる耐水紙の製造方法。
  9. カルボニル基が、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基のうち1種もしくは複数であるを特徴とする請求項から何れかに記載の耐水紙の製造方法。
  10. 前記請求項9記載のカルボニル基含有セルロース粉末のカルボニル基が特にアルデヒド基である耐水紙の製造方法。
  11. 前記請求項1から10何れか記載の酸化改質セルロースを含む原料から、湿式のパルプモールド成形手法により成形した紙容器。
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