JP2018104624A - 無機粒子と繊維との複合体を含有する発泡体、および、その製造方法 - Google Patents

無機粒子と繊維との複合体を含有する発泡体、および、その製造方法 Download PDF

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直之 菅原
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正淳 大石
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Abstract

【課題】本発明の課題は、無機粒子とセルロース繊維の複合体を含む発泡体(フォーム)の製造技術を提供することである。【解決手段】無機粒子とセルロース繊維の複合体を含むスラリーにセルロースナノファイバーを添加することによって強度に優れた発泡体(フォーム)を得ることができる。【選択図】図8

Description

本発明は、表面を無機粒子で被覆したセルロース繊維を含有する発泡体に関する。
繊維表面への無機粒子の担持など、繊維の表面改質は機能発現の手法の一つであり、これまで繊維表面を改質する技術が開発されてきている。例えば、セルロース繊維の表面改質について、特許文献1には、繊維の存在下でキャビテーション気泡を用いて炭酸カルシウムを合成することによって、平均一次粒子径が1μm未満の炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体を効率良く製造することができることが記載されている。
また、発泡体(フォーム)は、その物理的特性から断熱材や消音材などとして利用されており、パルプを含有する発泡体の製造技術も開発されている。
特許文献2には、断熱材としてのセルロースを含む発泡体の製造について記載されており、特許文献2に係る製造方法では、発泡断熱材の主材料にセルロース系材料、天然高分子材料及びポリオレフィン系樹脂を用いると共に、これらの主材料に、塩化ビニル樹脂を加えて発泡成形が行われる。特許文献2の製造方法で製造した発泡体は、セルサイズのムラが少なく平均セル径が小さい(セル密度が大きい)ため、従来の発泡断熱材よりも優れた断熱性能を示すことが記載されている。
特許文献3には、消音材としてのセルロースを含む発泡体の製造について記載されており、特許文献3に係る製造方法では、発泡消音材の主材料にパルプ繊維、ポリプロピレンなどの合成樹脂及び澱粉を用い、押出し成形機を利用して発泡体が製造されている。特許文献3の方法で製造した発泡体には発泡セルが密集配置された表面皮膜層が形成され、この表面皮膜層にはセル皮膜が破れた発泡セルが存在することも記載されている。
特開2015−199655号公報 特開2015−117290号公報 特開2015−193694号公報
本発明の課題は、無機粒子とセルロース繊維との複合体を含有する発泡体を効率的に製造する技術を提供することである。
無機粒子とセルロース繊維との複合体のスラリーにセルロースナノファイバーを添加することによって、生成する泡沫を安定化させるとともに、乾燥後の発泡体(フォーム)の強度を向上させることができる。
(1) 無機粒子とセルロース繊維との複合体とセルロースナノファイバーを含有する水性スラリーを発泡させる工程を含む、発泡体の製造方法。
(2) 撹拌により水性スラリーを発泡させる、(1)に記載の方法。
(3) 発泡させた泡を乾燥させる工程をさらに含む、(1)または(2)に記載の方法。
(4) セルロースナノファイバーが、カチオン化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、TEMPO酸化セルロースナノファイバーからなる群より選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) セルロースナノファイバーが、カチオン化セルロースナノファイバーである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記複合体が、炭酸カルシウムとパルプ繊維の複合体、炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体、または、ハイドロタルサイトとパルプ繊維の複合体を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 無機粒子とセルロース繊維との複合体とセルロースナノファイバーを含有する水性スラリーを発泡させた発泡体。
本発明によれば、無機粒子とセルロース繊維との複合体を含有する発泡体を効率的に製造することができる。特に本発明によれば、複合体に由来する特性(難燃性、消臭性、抗菌性など)と発泡体の構造に由来する特性(断熱性、防音性など)を有している発泡体を製造することができる。また、本発明は繊維としてセルロース繊維を使用するため、リサイクル性が高く、環境負荷の点でも優れている。
図1は、実験1で合成した複合体の電子顕微鏡写真である(サンプル1、左:10000倍、右:50000倍)。 図2は、実験1で合成した複合体の電子顕微鏡写真である(サンプル2、左:10000倍、右:50000倍)。 図3は、実験1で合成した複合体の電子顕微鏡写真である(サンプル3、左:10000倍、右:50000倍)。 図4は、本発明の実施例(サンプル1)で用いた反応装置を示す概略図である。 図5は、本発明の実施例で用いたウルトラファインバブル発生装置を示す模式図である。 図6は、本発明の実施例(サンプル2)で用いた反応装置を示す概略図である。 図7は、実験1のサンプル3を製造するための装置の概略図である(P:ポンプ)。 図8は、実験3のフォームCの外観写真である(左:上面、右:横面)。 図9は、実験3のフォームEの外観写真である(左:上面、右:横面)。
本発明においては、無機粒子とセルロース繊維との複合体のスラリーにセルロースナノファイバーを加え、撹拌することにより発泡体を製造する。
無機粒子とセルロース繊維との複合体
本発明で使用する複合体は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイトなどの無機粒子とセルロース繊維との複合体である。例えば、炭酸マグネシウムと繊維との複合体のスラリーから得られる泡は、他の無機粒子の繊維複合体を含む泡と比較して、強度が高く、扱いやすい。また、炭酸カルシウムやハイドロタルサイトとセルロース繊維との複合体を含有する発泡体は、炭酸マグネシウムを含有する発泡体と比較して、強度が高く、製品として多くの用途が期待される。
本発明に係る複合体を構成するセルロース繊維は、特に制限なく種々のセルロース繊維を使用することができる。複合体を構成するセルロース繊維は、例えば、パルプなどの天然のセルロース繊維はもちろん、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)や合成繊維などを制限なく使用することができる。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、セルロースナノファイバー、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。パルプ化する方法は特に限定されず、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
本発明で用いる複合体に係る繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm〜15mm程度とすることができ、1μm〜12mm、100μm〜10mm、500μm〜8mmなどとしてもよい。
また、好ましい態様において複合体は、セルロース繊維表面の15%以上が無機粒子で被覆されていると、無機粒子に起因する特徴が大きく生じるようになる一方、繊維表面に起因する特徴が小さくなる。繊維と無機粒子の重量比については、好ましくは、5/95〜95/5とすることができ、10/90〜90/10、20/80〜80/20、30/70〜70/30、40/60〜60/40としてもよい。
本発明において、セルロース繊維と複合化する無機粒子は特に制限されないが、水に不溶性または難溶性の無機粒子であることが好ましい。無機粒子の合成を水系で行う場合があり、また、複合体を水系で使用することもあるため、無機粒子が水に不溶性または難溶性であると好ましい。
ここで言う無機粒子とは、金属もしくは金属化合物のことを言う。また金属化合物とは、金属の陽イオン(例えば、Na、Ca2+、Mg2+、Al3+、Ba2+など)と陰イオン(例えば、O2−、OH、CO 2−、PO 3−、SO 2−、NO 、Si 2−、SiO 2−、Cl、F、S2−など)がイオン結合によって結合してできた、一般に無機塩と呼ばれるものを言う。これら無機粒子の合成法は気液法と液液法のいずれでも良い。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸など)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなど)を中和によって反応させさたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸を反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムを反応させることで水酸化アルミニウムを得たり、炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムを反応させることでカルシウムとアルミニウムが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属や金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれ、複合化できる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
本発明で使用する複合体は、一つの好ましい態様において、セルロース繊維の存在下で無機粒子を合成することによって得ることができる。セルロース繊維表面が、無機粒子の析出における好適な場となるため、無機粒子とセルロース繊維との複合体を合成しやすいためである。
一つの好ましい態様として、本発明の複合体における無機粒子の平均一次粒子径を、例えば、1μm以下とすることができるが、平均一次粒子径が500nm以下の無機粒子や平均一次粒子径が200nm以下の無機粒子、さらには平均一次粒子径が100nm以下の無機粒子、平均一次粒子径が50nm以下の無機粒子を用いることができる。また、無機粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真から算出することができる。
また、本発明の複合体における無機粒子は、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
発泡体の製造
本発明の1つの態様においては、無機粒子と繊維との複合体を含むスラリーにセルロースナノファイバーを添加し、撹拌装置を用いて撹拌することによって泡を形成させる。その際、炭酸マグネシウムと繊維との複合体のスラリーから得られる泡沫は、他の無機粒子の複合体から得られる泡沫と比較し、粘度が高く、扱いやすい。
発泡させる際の撹拌速度は、特に制限されないが、好ましくは1000〜10000rpm、より好ましくは2000〜9000rpm、さらに好ましくは4000〜7000rpmである。本発明で使用する撹拌装置は、高速撹拌に対応したものが良い。撹拌羽の形状は、例えば、3本1組のものが好ましい。好ましい撹拌装置としては、例えば、マルチディスパーサーPB95(エスエムテー製)などのディスパーサーが挙げられる。
また別の態様において、本発明では、押出成形機などを用いて泡(フォーム)を形成させることもできる。すなわち、混練した材料を、押出ダイスのノズルから外部に押し出し、大気圧下で水を蒸発させて材料を発泡させることができる。
本発明においては、モールド(型)を用いて所望の形状の発泡体を製造することもできるし、また、発泡させた泡が固まる前にこれらを収束して所望の形状にすることによって種々の形状の発泡体を製造することもできる。
本発明においては、形成させた泡を乾燥させて発泡体(フォーム)を製造するが、乾燥温度は、例えば、50〜150℃、より好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
本発明の好ましい態様において、複合体を含有するスラリーに界面活性剤を添加して、起泡を容易にすることができる。使用する界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のいずれの界面活性剤を使用してもよい。このうち、陰イオン性の界面活性剤を使用することが好ましい。
本発明の発泡体には、例えば、無機粉末としては、軽質炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウムを配合することができ、また粉末の粒子形状は、球状等の定形、或いは不定形、ウィスカー状等の何れであってもよい。また平均粒子径についても特に制限はないが、例えば、0.5〜5μmとしてもよい。炭酸カルシウムは、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、並びにこれらの脂肪酸とアルカリ金属との塩などによって表面処理されたものを使用することも可能である。
本発明においては、微細繊維や無機分(灰分)の歩留りを向上させるため、複合体を含有するスラリーに製紙用歩留剤を添加してもよい。また、歩留剤の添加によって、泡の安定性および発泡体の強度を向上させることも可能である。使用する歩留剤は、表面電荷が正のものと負のもののどちらでも良いが、表面電荷が正のものの方がより好ましい。例えば、ハイモロック ND―300(ハイモ株式会社製)である。
本発明の好ましい態様において、複合体を含有するスラリーに紙力向上剤を配合することができる。本発明で使用する紙力向上剤は、例えば、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤などを使用することができる、例えば、湿潤紙力剤としてWS−2024(星光PMC株式会社製)、乾燥紙力剤としてハーマイドC−10(ハリマ化成グループ株式会社製)が挙げられる。このうち、湿潤紙力剤が好ましい。紙力向上剤としては、例えば、デンプンやペクチン、グアガム、アラビアガム、アルギン酸などの親水性高分子材料を好適に使用することができる。
また、本発明の発泡体には、ポリオレフィン系樹脂や塩化ビニル系樹脂などの樹脂を配合することもできる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどを使用することができ、またコスト面やリサイクル面を考慮して再生ポリオレフィン樹脂を使用することもできる。塩化ビニル樹脂としては、低重合度PVCや高重合度PVCなどを好適に使用することができ、バージン樹脂だけでなく再生樹脂(軟質塩化ビニル樹脂など)を使用してもよい。さらに、本発明の発泡体には、可塑剤を配合してもよい。可塑剤としては、例えば、フタレート系可塑剤やトリメリテート系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、アジペート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好適に使用することができる。
セルロースナノファイバー
本発明においては、無機粒子とセルロース繊維との複合体のスラリーにセルロースナノファイバー(CNF)を添加する。本発明においては、どのような種類のセルロースナノファイバーも使用することができ、例えば、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、カチオン化セルロースナノファイバー、エステル化セルロースナノファイバー、酸化セルロースナノファイバーなどを好ましい例として挙げることができる。好ましい態様において、カチオン化セルロースナノファイバーを複合体スラリーに添加すると、乾燥後の発泡体の強度がより高くなる。
セルロースナノファイバーは、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、化学変性したパルプを適切な濃度に分散した後、解繊処理することによって得ることができる。解繊処理に用いる装置の種類としては、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置が挙げられるが、透明性と流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を効率よく得るには、50MPa以上、好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の条件下で分散できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーで処理することが好ましい。
本発明で用いるセルロースナノファイバーの繊維径は特に制限されないが、例えば、5nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは5nm〜300nmの範囲にあるセルロースナノファイバーを好適に使用することができる。セルロースナノファイバーの繊維径は、例えば、電子顕微鏡観察などで確認することができる。
(パルプ原料)
セルロースナノファイバーを製造するためのパルプ原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものを挙げることができ、それらのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。このうち、白色度が80%以上の漂白済みクラフトパルプ、白色度が80%以上の漂白済みサルファイトパルプ、粉末セルロース、または微結晶セルロース粉末を用いることが量産化やコストの観点から好ましい。また、粉末セルロース及び微結晶セルロース粉末を用いると、高濃度であってもより低い粘度を有するセルロースナノファイバー分散液を製造することができるから、とりわけ好ましい。
粉末セルロースとは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解処理で除去した後、粉砕・篩い分けすることで得られる微結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は100〜500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。体積平均粒子径が100μm以下であると、流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を得ることができる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(登録商標、日本製紙製)、セオラス(商標、旭化成ケミカルズ製)、アビセル(登録商標、FMC製)などの市販品を用いてもよい。
(カルボキシメチル化)
本発明においてカルボキシメチル化セルロースナノファイバー(CM化CNF)を用いる場合、例えば、カルボキシメチル化したパルプからCM化CNFを得ることができる。カルボキシメチル化パルプは、上記のパルプ原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよく、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、パルプの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50となるものが好ましい。
カルボキシメチル化したパルプを製造する方法の一例として、次のような方法を挙げることができる。パルプを発底原料にし、溶媒として3〜20重量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的には水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールを混合する場合の低級アルコールの混合割合は、60〜95重量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う。
(カチオン化)
本発明においてカチオン化セルロースナノファイバー(カチオン化CNF)を用いる場合、カチオン化したパルプからカチオン化CNFを得ることができる。カチオン化パルプは、上記のセルロース原料にグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト又はそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を水及び/又は炭素数1〜4のアルコールの存在下で反応させることによって得ることができる。なお、この方法において、得られるカチオン変性されたパルプのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、水及び/又は炭素数1〜4のアルコールの組成比率をコントロールすることによって、調整することができる。
カチオン変性されたパルプのグルコース単位当たりのカチオン置換度は0.02〜0.50であることが好ましい。パルプにカチオン置換基を導入することで、パルプ同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したパルプは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.02より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.50より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。
(エステル化)
本発明において、リン酸基などを導入したエステル化セルロースナノファイバー(エステル化CNF)を用いる場合、エステル化したパルプからエステル化CNFを得ることができる。エステル化パルプとしてリン酸エステル化パルプを用いる場合、パルプ原料をリン酸エステル化すればよいが、リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムなどを使用することができる。リン酸基を導入するための化合物は、1種だけを用いることもできるし、2種以上を併用してリン酸基を導入することができる。パルプ原料に対するリン酸基を有する化合物の割合は、パルプ原料の固形分100重量部に対して、リン元素に換算した添加量が0.1〜500重量部であることが好ましく、1〜400重量部であることがより好ましく、2〜200重量部であることがさらに好ましい。
(酸化)
本発明においてTEMPO酸化などの酸化セルロースナノファイバー(酸化CNF)を用いる場合、酸化したパルプから酸化CNFを得ることができる。TEMPO酸化したパルプは、例えば、セルロース系原料を酸化する際に、N−オキシル化合物と、並びに臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物の存在下で、酸化剤を逐次添加して行うことで得られるセルロースナノファイバーを溶媒に分散させることで製造することができる。
(1)N−オキシル化合物
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物である。本発明で用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、下記の式1で示される化合物が挙げられ、式中、R1〜R4は、炭素数1〜4程度のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
式1で表される物質のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−オキシラジカル(以下、TEMPOと称する)が特に好ましい。
また、酸化に用いるN−オキシル化合物として、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基をアルコールでエーテル化、またはカルボン酸もしくはスルホン酸でエステル化し、適度な疎水性を付与した4−ヒドロキシTEMPO誘導体や、4−アミノTEMPOのアミノ基をアセチル化して適度な疎水性を付与した4−アセトアミドTEMPOなどが好ましい。特に、下記の式2〜式4のいずれかで表されるN−オキシル化合物は安価であり、かつ均一な酸化セルロースを得ることができるため好ましい(式中、Rは炭素数4以下の直鎖又は分岐状炭素鎖である)。
さらに、下記の式5で表されるN−オキシル化合物、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルは、短時間で効率よくパルプを酸化でき、また、セルロース鎖の切断も起こりにくいため好ましい(式中、R5及びR6は、C1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基または水素であり、同じであっても異なっていてもよい)。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロース系原料を酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.02〜5mmol、さらに好ましくは0.05〜1mmol程度である。
(2)臭化物またはヨウ化物
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.1〜100mmol、好ましくは0.2〜50mmol、さらに好ましくは0.5〜10mmol程度である。
(3)酸化剤
本発明のセルロース系原料は、N−オキシル化合物および臭化物などの存在下で、酸化剤を逐次添加して酸化させることによって、少ないN-オキシル化合物の使用量で、効率的に酸化セルロースを製造することができる。
酸化剤の逐次添加の方法としては、送液ポンプ等の一般的な装置を用いればよく、添加速度は酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gの漂白済み木材パルプに対して、0.01〜50mmol/分、好ましくは0.05〜10mmol/分、さらに好ましくは0.1〜5mmol/分程度である。この範囲よりも添加速度が遅い場合、所定の添加量を添加するのに時間がかかりすぎるために好ましくなく、またこの範囲よりも添加速度が速い場合、酸化剤を逐次添加することの効果が発揮されないため好ましくない。また、この時反応前に添加する酸化剤の10%程度を添加してもよい。
酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。酸化セルロースの生産コストの観点から、使用する酸化剤として現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好適である。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gの漂白済み木材パルプに対して、0.5〜500mmol、好ましくは1.0〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度である。
本発明の方法は温和な条件であっても酸化反応を円滑に進行させることができるという特色がある。そのため、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもセルロース系原料を効率良く酸化できる。なお、反応の進行に伴ってセルロースにカルボキシル基が生成し、反応液のpH低下が認められる。そのため、酸化反応を効率良く進行させるためには、反応液のpHを9〜12に維持することが好ましく、10〜11程度に維持することがより望ましい。
本発明の方法は温和な条件であっても酸化反応を円滑に進行させることができるという特色がある。そのため、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもセルロース系原料を効率良く酸化できる。なお、反応の進行に伴ってセルロースにカルボキシル基が生成し、反応液のpH低下が認められる。そのため、酸化反応を効率良く進行させるためには、反応液のpHを9〜12に維持することが好ましく、10〜11程度に維持することが望ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、0.5〜6時間、好ましくは1〜5時間、さらに好ましくは2〜4時間程度である。
(4)酸化セルロース
酸化セルロースのカルボキシル基量は特に限定されるものではないが、0.5mmol/g以上が好ましく、1.0〜3.0mmol/gがより好ましく、1.4〜2.8mmol/gがさらに好ましく、1.5〜2.5mmol/gが特に好ましい。カルボキシル基量を上記範囲に調整することで酸化セルロースとしての機能を発揮できるとともに、優れたセルロースナノファイバーの原料となる。カルボキシル基量は、酸化反応時間の調整、酸化反応温度の調整、酸化反応時のpHの調整、N−オキシル化合物や臭化物、ヨウ化物、酸化剤の添加量の調整などを行なうことにより調整できる。
なお、酸化パルプのカルボキシル基量は、以下の手順で測定することができる。
酸化パルプの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化パルプ〕= a〔ml〕× 0.05/酸化パルプ質量〔g〕
を用いて算出する。
以下に具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1:無機粒子と繊維との複合体の製造
以下に示す手順により無機粒子とパルプ繊維の複合体を合成し、実験3において使用した。
(サンプル1:炭酸カルシウムとパルプ繊維の複合体、図1)
図4に示すような反応装置を用いて、炭酸カルシウムと繊維の複合体を炭酸ガス法によって合成した。水酸化カルシウム(奥多摩工業、タマエースU)15kgとLBKP(CSF=500mL、平均繊維長=0.76mm)15kgの水性懸濁液1500Lに対し、ウルトラファインバブル発生装置(UFB発生装置、YJ−9、エンバイロビジョン社、図5)を用いてポンプ流量80L/minで反応液を循環させた(ノズルからの噴射速度:125L/min・cm)。ウルトラファインバブル発生装置の給気口から炭酸ガスを吹き込むことによって、炭酸ガスを含む大量の微細気泡(直径1μm以下、平均粒子径:137nm)を反応液中に発生させ、パルプ繊維上に炭酸カルシウム粒子を合成した。反応温度は20℃、炭酸ガスの吹き込み量は20L/minとして反応を行い、反応液のpHが約7になった段階で反応を停止し、サンプル2を得た(反応前のpHは約13)。得られた炭酸カルシウムとパルプ繊維の複合体の灰分は53%、無機粒子の平均一次粒径は50nmだった。
(サンプル2:炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体、図2)
水酸化マグネシウム350g(宇部マテリアルズ、UD653)とクラフトパルプ350g(LBKP/NBKP=1/1、CSF:370ml、平均繊維長:0.9mm)を水中に添加して水性懸濁液を準備した。
図6に示すように、この水性懸濁液35Lをキャビテーション装置(45L容)に入れ、反応溶液を循環させながら、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸マグネシウム微粒子と繊維との複合体を合成した。反応開始温度は約40℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は20L/minとした。反応液のpHが約7.8になった段階でCOの導入を停止し(反応前のpHは10.3)、その後30分間、キャビテーションの発生と装置内でのスラリーの循環を続け、炭酸マグネシウム微粒子とパルプ繊維の複合体を得た(無機粒子の平均一次粒径:1.0μm)。
複合体の合成においては、反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させたが、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は2MPa、出口圧力(下流圧)は0.2MPaだった。
得られた複合体について、繊維:無機粒子の重量比を測定したところ、40:60であった(灰分:60%)。重量比(灰分)は、ろ紙を用いて複合体スラリー(固形分換算で3g)を吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の重量から算出した。
(サンプル3:ハイドロタルサイトとパルプ繊維の複合体、図3)
ハイドロタルサイト(HT)としてMgAl(OH)16CO・4HOを合成するため、アルカリ溶液(A溶液)として、NaCO(和光純薬)およびNaOH(和光純薬)の混合水溶液、酸溶液(B溶液)として、MgCl(和光純薬)およびAlCl(和光純薬)の混合水溶液を調製した。
・アルカリ溶液(A溶液、NaCO濃度:0.05M、NaOH濃度:0.8M)
・酸溶液(B溶液、Mg系、MgCl濃度:0.3M、AlCl濃度:0.1M)
複合化する繊維として、セルロース繊維を使用した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)を8:2の重量比で含み、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を390mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長0.8mm)。
アルカリ溶液にパルプ繊維を添加し、パルプ繊維を含む水性懸濁液を準備した(パルプ繊維濃度:1.56%、pH:約12.4)。この水性懸濁液(パルプ固形分30g)を10L容の反応容器に入れ、水性懸濁液を撹拌しながら、酸溶液(Mg系)を滴下してハイドロタルサイト微粒子と繊維との複合体を合成した。図7に示すような装置を用いて、反応温度は60℃、滴下速度は15ml/minであり、反応液のpHが約7になった段階で滴下を停止した。滴下終了後、30分間、反応液を撹拌し、10倍量の水を用いて水洗して塩を除去することで、サンプル3を得た(無機粒子の平均一次粒径:20nm)。サンプル3の灰分は50%だった。
実験2:セルロースナノファイバーの製造
(カチオン化セルロースナノファイバー:カチオン化CNF)
パルプを攪拌することができるパルパーに、パルプ(LBKP、日本製紙製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で24g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを190g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄してカチオン変性されたパルプを得た。カチオン化パルプの1%スラリーを小型高圧フィルタープレス(YTOH2型、薮田機械社製)で2MPa、15分間処理して、カチオン化セルロースナノファイバーを製造した(固形分:7質量%)。
(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー:CM化CNF)
パルプを撹拌することができる反応器に、パルプ(LBKP、日本製紙製)を乾燥重量で250gを撹拌しながら50重量%水酸化ナトリウム水溶液を112gと、水67gを添加した。30℃で30分攪拌した後、撹拌しながら35重量%モノクロロ酢酸ナトリウム水溶液を364g添加した。その後、30℃で30分攪拌し、30分かけて70℃まで昇温し、70℃で1時間反応した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化されたセルロース(カルボキシメチル化パルプ)を得た。カルボキシメチル化パルプの1%スラリーを、小型高圧フィルタープレス(YTOH2型、薮田機械社製)を用いて2MPaで15分間処理してセルロースナノファイバーを製造した。
(TEMPO酸化セルロースナノファイバー:TEMPO酸化CNF)
粉末セルロース(粒径24μm、日本製紙ケミカル製)15g(絶乾)を、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50mlを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーを、ミキサーにより12000rpmで15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で5回処理して、セルロースナノファイバーを製造した。
実験3:発泡体の製造と評価
(1)実験3−1:泡沫の安定性
(A) LBKP(カナダ標準フリーネスCSF=500mL、平均繊維長=0.76mm、日本製紙製)のスラリー(濃度1.0%)395mlに対して、撹拌しながら、紙力向上剤(WS−2024、星光PMC製、濃度3.0%)1.3ml、歩留剤(ND−300、ハイモ製、濃度0.05%)1.6ml、炭酸カルシウム(試薬特級、和光純薬工業製)0.8g、アニオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、和光一級、和光純薬工業製)0.24gを添加し、発泡体を製造するためのスラリーを調製した。マルチディスパーサー(MULTI DISPERSER SMT、エスエムテー社製)を用いて、このスラリーを、6000rpmで10分間撹拌して発泡させた。
(B) LBKPに代えて実験1で合成した炭酸カルシウム・無機複合体(サンプル1)を使用したこと、炭酸カルシウムを加えていないこと以外は、実験Aと同様にして発泡体を製造するためのスラリーを調製し、発泡させた。
(C) 実験2で製造したカチオン化セルロースナノファイバー0.4gをさらにスラリーに添加してから発泡させたこと、炭酸カルシウムを加えていないこと以外は、実験Bと同様にして実験を行った。
(泡沫の安定性)
得られた泡の安定性を評価する一つの指標として泡の粘度を、以下の手順により評価した。すなわち、約5cm3の体積の泡をスプーンですくいとり、約30cmの高さから泡を落下させ、この時の泡の落下の難易を、下記の基準により目視で評価した。
○:落下に5秒以上の時間がかかる。
△:落下に2秒以上の時間がかかる。
×:2秒未満の時間で落下する。
パルプ繊維を添加した場合(実験A)と無機・パルプ繊維複合体を添加した場合(実験B)を比較すると、実験Bの場合は、泡の安定性が低下することが分かった。その一方で、実験Bと実験Cを比較すると、セルロースナノファイバー(CNF)を添加することによって、泡の安定性を改善することができた。
発泡体を製造するにあたって、泡(泡沫)の安定性が重要になるところ、本発明によってCNFを添加することによって泡の安定性を向上させることができた。
(2)実験3−2:発泡体(フォーム)の製造
(フォームA〜C) 実験A〜Cで得た泡をアルミカップ(直径:約7cm、高さ:約2cm)に入れ、自然対流式恒温機(DSN-115S、ISUZU製)を用いて105℃で18時間乾燥し、発泡体を得た(フォームC:図8)。
(フォームD〜E) カチオン化CNFに代えてCM化CNFまたはTEMPO酸化CNFを用いた以外は、フォームCと同様にして発泡体を得た(フォームD:CM化CNF、フォームE:TEMPO酸化CNF、図9)。
(フォームF〜G) サンプル1の複合体に代えてサンプル2またはサンプル3の複合体を用いた以外は、フォームCと同様にして発泡体を得た(フォームF:炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体、フォームG:ハイドロタルサイトとパルプ繊維の複合体)。
(フォームH) カチオン化CNFに代えてTEMPO酸化CNFを用いた以外は、フォームGと同様にして発泡体を得た。
(発泡体の強度)
得られた発泡体(フォーム)の強度を、触感により評価した。具体的には、フォームの表面を指で5mm程度押しこみ、このときの反発力を下記の基準により3段階で評価した。
○:反発力を感じ、押し込みによりフォームの形状が崩れない。
△:ある程度の反発力を感じるが、押し込むことによりフォームの形状が崩れる。
×:反発力をほとんど感じず、押し込むことによりフォームの形状が崩れる。
(発泡体の灰分)
発泡体を525℃で約2時間加熱した後、残った灰の重量と元の固形分との比率から、無機分の重量比率(灰分)を算出した(JIS P 8251:2003)。
(発泡体の密度)
フォームを含むアルミカップの重さを測定し、そこから事前に測定したアルミカップの重さを引き、フォームの重さを得た。フォームの半径と厚さを測定して体積を求め、フォームの重さを体積で除してフォームの密度を得た。
上記の表に示すように、本発明に基づいてセルロースナノファイバー(CNF)を添加することによって、得られた発泡体の強度が向上した。本発明による強度向上の要因としては、CNF同士の相互作用や複合体のパルプ繊維や無機粒子とCNFとの相互作用(分子間相互作用や水素結合等)によって、フォームに構造的な強度が付与されたと考えられる。また、本発明によれば泡沫の安定性が向上するため、乾燥時の泡沫中の液体の重力落下を防ぐことができ、重力によりパルプなどの固形分を含む液が上から下へと移動することに伴うフォームの強度低下を抑制することもできる。つまり、本発明によれば、均質で強度に優れたフォームを製造することが可能になる。
本発明で使用するCNFは、セルロース繊維をナノレベルまで解繊しているため反応点(相互作用するサイト)が一般的なパルプ繊維と比較して格段に多く、そのため、フォームの強度を大きく向上させることができると考えられる。

Claims (7)

  1. 無機粒子とセルロース繊維との複合体とセルロースナノファイバーを含有する水性スラリーを発泡させる工程を含む、発泡体の製造方法。
  2. 撹拌により水性スラリーを発泡させる、請求項1に記載の方法。
  3. 発泡させた泡を乾燥させる工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. セルロースナノファイバーが、カチオン化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、TEMPO酸化セルロースナノファイバーからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. セルロースナノファイバーが、カチオン化セルロースナノファイバーである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記複合体が、炭酸カルシウムとパルプ繊維の複合体、炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体、または、ハイドロタルサイトとパルプ繊維の複合体を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 無機粒子とセルロース繊維との複合体とセルロースナノファイバーを含有する水性スラリーを発泡させた発泡体。
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