JP2015199655A - 炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体、および、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維を含む溶液においてキャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって、平均一次粒径が1μm未満の炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体を効率的に合成することができる。
【選択図】図4
Description
(1) 繊維を含む溶液においてキャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することを含む、平均一次粒子径が1μm未満の炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体の製造方法。
(2) 炭酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が200nm以下である、(1)に記載の製造方法。
(3) キャビテーション気泡の存在下で、消石灰の水性懸濁液と二酸化炭素を含む気体とを反応させる、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4) 反応容器内に液体を噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 前記繊維が、化学繊維、再生繊維または天然繊維である、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記繊維がパルプ繊維である、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(7) 消石灰の水性懸濁液を反応容器内に噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8) 消石灰の水性懸濁液として、前記反応容器から循環させた反応液を用いる、(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9) 複合体を改質することをさらに含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10) 平均一次粒子径が1μm未満の炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体。
(11) 炭酸カルシウム粒子の平均粒子径が200nm以下である、(10)に記載の複合体。
(12) 前記繊維が、化学繊維、再生繊維または天然繊維である、(10)または(11)に記載の複合体。
(13) 前記繊維がパルプ繊維である、(10)または(11)に記載の複合体。
(14) 前記炭酸カルシウム粒子と前記繊維との重量比が5:95〜95:5である、(10)〜(13)のいずれかに記載の複合体。
(15) 改質されている、(10)〜(14)のいずれかに記載の複合体。
本発明によれば平均粒子径の小さい炭酸カルシウムと繊維との複合体を効率的に製造することができる。本発明に係る複合体を構成する炭酸カルシウム微粒子の平均一次粒子径は1μm未満であるが、平均一次粒子径が500nm未満の炭酸カルシウムや平均一次粒子径が200nm未満の炭酸カルシウム、さらには100nm以下の炭酸カルシウムを用いることができる。また、炭酸カルシウム微粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。
本発明に係る複合体の製法においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成する。本発明においてキャビテーションとは、流体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、空洞現象とも言われる。キャビテーションによって生じる気泡(キャビテーション気泡)は、流体の中で圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100ミクロン以下のごく微小な「気泡核」を核として生じる。
本発明においては、繊維を含む溶液中でキャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウム微粒子を合成するが、炭酸カルシウムの合成方法は、公知の方法によることができる。例えば、炭酸ガス法、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法などによって炭酸カルシウムを合成することができ、好ましい態様において、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する。
本発明においては、炭酸カルシウム微粒子と繊維とを複合体化する。複合体を構成する繊維は特に制限されないが、例えば、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロースが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
本発明において炭酸化反応の条件は、特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、炭酸化反応の温度は0〜90℃とすることができ、10〜70℃とすることが好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下しコストが高くなる一方、90℃を超えると粗大な炭酸カルシウム粒子が多くなる傾向がある。
本発明に係る複合体を用いて、適宜、成形物(体)を製造することも可能である。例えば、本発明によって得られた複合体をシート化すると、高灰分のシートを容易に得ることができる。シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合体シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
<炭酸カルシウム・繊維複合体の合成>
水酸化カルシウム(消石灰:Ca(OH)2、和光純薬、2重量%)と繊維(0.5%)を含む水性懸濁液を準備した。この水性懸濁液9.5Lを、45L容のキャビテーション装置に入れ、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体を合成した。反応温度は約25℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は12L/minであり、反応液のpHが約7になった段階で反応を停止した(反応前のpHは約12.8)。
(1)表面をミクロフィブリル化した広葉樹パルプ繊維(CV処理パルプ)
(2)セルロースナノファイバー(TEMPO酸化パルプ)
(3)サーモメカニカルパルプ(TMP)
(4)表面をミクロフィブリル化した麻パルプ繊維
(表面をミクロフィブリル化した広葉樹パルプ繊維) カナダ標準濾水度(CSF)が約400mLであるLBKPを水中に離解してパルプ懸濁液(濃度:0.5%)を調製した。このパルプ懸濁液を反応容器に入れ、反応容器内に噴流を導入することによってキャビテーション気泡を発生させた。ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させた。噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaとした。LBKPのCSFが100mL未満になるまで、このキャビテーション処理を約1時間行った。
(表面をミクロフィブリル化した麻パルプ繊維) 上記の広葉樹パルプ繊維と同様に、麻パルプに対してCSFが100mLより低くなるまでCV処理を行って、表面がミクロフィブリル化した麻パルプを得た。
得られた複合体の電子顕微鏡写真を図4〜7に示す。図4は、キャビテーションで処理した広葉樹パルプ繊維と炭酸カルシウム微粒子との複合体の電子顕微鏡写真である。図4から明らかなように、この複合体は繊維表面に多数の炭酸カルシウム微粒子が析出しており、炭酸カルシウムの一次粒子径は40〜100nm程度(平均:80nm程度)であった。特に、パルプ繊維のフィブリル部分に炭酸カルシウム微粒子が多く生成していた。
実験1で製造した複合体(CV処理パルプ/炭酸カルシウム複合体、TMP/炭酸カルシウム複合体、麻パルプ/炭酸カルシウム複合体)を以下の手順によりシート化した。複合体のスラリー(約0.5%)に、カチオン性歩留剤(ND300、ハイモ社製)を100ppm、アニオン性歩留剤(FA230、ハイモ社製)を100ppm添加し、500rpmにて撹拌して懸濁液を調成した。得られた懸濁液からJIS P 8222に基づいて坪量が約15〜150g/m2の複合体シートを製造し、ラボチルドレンダーにて65kgf/cmでカレンダー処理した。
種々の条件において、本発明に基づいて複合体を合成し、電子顕微鏡写真を撮影した。
(実験3−1:サンプルC0、図14)
繊維として広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、CSF:460mL、キャビテーション処理せず)を用いた他は、実験1と同様にして複合体を合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が40〜100nmの炭酸カルシウムが繊維表面に自己定着していた。灰分は83%であり、仕込み量から計算した理論値(84%)とほぼ同等であった。
(実験3−2:サンプルC1、図15)
繊維としてLBKP(CSF:460mL、キャビテーション処理せず)1250g、水酸化カルシウムを1250g使用し、Ca(OH)2の水性懸濁液の総量を100Lとした他は、実験1と同様にして合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が60〜90nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、56%であり、理論値(58%)とほぼ同等であった。
(実験3−3:サンプルC2、図16)
繊維としてLBKP/NBKPの混合パルプ(重量比:8/2、CSF:50ml、キャビテーション処理せず)8300g、水酸化カルシウムを8300g使用し、Ca(OH)2の水性懸濁液の総量を415L、二酸化炭素流量を40L/min、反応開始温度を16℃とした他は、実験1と同様にして複合体を合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が60〜90nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、56%であり、理論値(58%)とほぼ同等であった。
(実験3−4:サンプルC3、図17)
水酸化カルシウムの仕込み濃度を0.74%とし、二酸化炭素流量を5L/minとした以外は、実験1と同様にして複合体を合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、いずれも48%であり、理論値(50%)とほぼ同等であった。
(実験3−5:サンプルC4、図18)
用いるキャビテーションノズルを2流体対応(ノズルから吐出される直前に水酸化カルシウム懸濁液が二酸化炭素ガスと混合される)に変えた以外は、サンプルC3と同様に合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、いずれも48%であり、理論値(50%)とほぼ同等であった。
(実験3−6:サンプルC5、図19)
用いる原料を生石灰とした他は、サンプルC4と同様に合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が40〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。
(実験3−7:サンプルC6、図20)
水酸化カルシウム280gとパルプ(LBKP、CSF:約460mL)70gを混合し、水道水を加えて14Lにした。珪酸ナトリウム(SiO2換算で約30%)400gを添加した後、混合物を反応容器に投入した。その後の手順や反応条件は実験1と同様であるが、pHが約6.7となった段階で反応を停止した。電子顕微鏡観察の結果、シリカと思われる一次粒子径20〜50nm程度の粒子が炭酸カルシウムの表面に析出している様子が観察された。また、サンプルC6について蛍光X線でシリカ(SiO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)の存在比を分析したところ(表3)、シリカと炭酸カルシウムの両方が存在していることが確認された。
(実験3−8:サンプルC7、図21)
合成後のサンプルC6にpHが6.2になるまで硫酸バンド水溶液(アルミナ換算で0.8%)を添加した。電子顕微鏡観察の結果、シリカと思われる一次粒子径20〜50nm程度の粒子が炭酸カルシウムの表面に析出している様子が観察された。
(実験3−9:サンプルC8、図22)
サンプルC0の複合体1kgに珪酸ナトリウム(SiO2換算で約30%)29gを加えてラボミキサーで撹拌し、硫酸水溶液(10%)41gを添加して複合体を合成した。電子顕微鏡観察の結果、一次粒子形80nm程の炭酸カルシウムに混じって、同程度のサイズのシリカが存在していた。蛍光X線でシリカ(SiO2)と炭酸カルシウム(CaCO3)の存在比を分析したところ(表3)、シリカと炭酸カルシウムの両方が存在していることが確認された。
化学繊維であるポリビニルアルコール繊維(PVA繊維、フィブリボンド、クラレ製)を用いたた以外は、実験1と同様にして炭酸カルシウムと繊維の複合体を合成した。電子顕微鏡観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、炭酸カルシウム量は83%であり、仕込み量から計算された理論値(84%)と同等の値であった。
(実験3−12:サンプルC11、図24)
化学繊維であるポリオレフィン(SWP E-400、デュポン帝人製)を用い、繊維の仕込み濃度を0.25%とした以外は、サンプルC2と同様にして炭酸カルシウム微粒子と繊維の複合体を合成した。電子顕微鏡観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、炭酸カルシウム量は84%であり、仕込み量から計算された理論値(84%)と同等の値であった。
(実験3−13:サンプルC12、図25)
再生繊維であるリヨセル繊維(TENCEL 、LENZING製)を用い、繊維の仕込み濃度を0.1%とした以外は、サンプルC2と同様にして炭酸カルシウム微粒子と繊維の複合体を合成した。電子顕微鏡観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、炭酸カルシウム量は91%であり、仕込み量から計算された理論値(93%)と同等の値であった。
実験1のTEMPO酸化パルプ複合体および実験3−1の複合体(サンプルC0)について、その表面を改質する実験を行った。複合体スラリー(濃度2.8%)2Lにそれぞれ、90℃の温水(30mL)で溶解したオレイン酸ナトリウム1.7gを添加し、ラボミキサーで5分間撹拌した。
Claims (15)
- 繊維を含む溶液においてキャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することを含む、平均一次粒子径が1μm未満の炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体の製造方法。
- 炭酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が200nm以下である、請求項1に記載の製造方法。
- キャビテーション気泡の存在下で、消石灰の水性懸濁液と二酸化炭素を含む気体とを反応させる、請求項1または2に記載の製造方法。
- 反応容器内に液体を噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記繊維が、化学繊維、再生繊維または天然繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記繊維がパルプ繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 消石灰の水性懸濁液を反応容器内に噴射することによってキャビテーション気泡を発生させる、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 消石灰の水性懸濁液として、前記反応容器から循環させた反応液を用いる、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 複合体を改質することをさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 平均一次粒子径が1μm未満の炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体。
- 炭酸カルシウム粒子の平均一次粒子径が200nm以下である、請求項10に記載の複合体。
- 前記繊維が、化学繊維、再生繊維または天然繊維である、請求項10または11に記載の複合体。
- 前記繊維がパルプ繊維である、請求項10または11に記載の複合体。
- 前記炭酸カルシウム粒子と前記繊維との重量比が5:95〜95:5である、請求項10〜13のいずれかに記載の複合体。
- 改質されている、請求項10〜請求項14のいずれかに記載の複合体。
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