JP7163006B2 - 無機粒子複合繊維の製造方法 - Google Patents

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本発明は、無機粒子複合繊維の製造方法に関する。
無機粒子を繊維に付着させることによって、繊維に所望の機能を付与する技術がある。例えば、特許文献1には、繊維を含む溶液においてキャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって、炭酸カルシウム粒子と繊維との複合体を製造する方法が記載されている。
特開2015-199655号公報(2015年11月12日公開)
より多くの無機物を繊維に付着させることができれば、より高い機能を発揮させることができるため有用である。例えば、化学繊維により多くの無機物を付着させることが必要である。そこで、本発明の一態様は、より多くの無機物が包含された極性の化学繊維を製造し得る方法を提供することを目的とする。
本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1)極性の化学繊維を湿式又は乾式で叩解する叩解工程と、前記叩解工程後の前記化学繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成する、前記化学繊維と前記無機粒子との複合繊維を生成する複合繊維生成工程と、を含む、無機粒子複合繊維の製造方法。
本発明の一態様によれば、より多くの無機粒子が包含された無機粒子複合繊維を製造することができるという効果を奏する。
実施例1で使用したリヨセル(登録商標)のレーザー顕微鏡による観察結果を示す図であり、(a)は叩解前のリヨセル(登録商標)を倍率100倍で観察した結果を示す図であり、(b)は叩解後のリヨセル(登録商標)を倍率100倍で観察した結果を示す図である。 実施例2で使用したポリエステル繊維のレーザー顕微鏡による観察結果を示す図であり、(a)は叩解前のポリエステル繊維を倍率100倍で観察した結果を示す図であり、(b)は叩解後のポリエステル繊維を倍率100倍で観察した結果を示す図である。 実施例1及び比較例1において作製した複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図であり、(a)は比較例1の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(b)は比較例1の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図であり、(c)は実施例1の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(d)は実施例1の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図である。 実施例2及び比較例2において作製した複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図であり、(a)は比較例1の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(b)は比較例1の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図であり、(c)は実施例1の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(d)は実施例1の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図である。 実施例3において作製した複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図であり、(a)は実施例3の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(b)は実施例3の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。尚、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
<無機粒子複合繊維の製造方法>
本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法は、極性の化学繊維を湿式又は乾式で叩解する叩解工程と、前記叩解工程後の前記化学繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成する、前記化学繊維と前記無機粒子との複合繊維を生成する複合繊維生成工程と、を含む。上記構成とすることにより、定着剤を添加しなくとも、無機粒子と極性の化学繊維(以下、「極性化学繊維」と称する。)との無機粒子複合繊維を生成することができる。従って、本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法によれば、極性化学繊維に無機粒子の機能(例えば、難燃性、消臭・抗菌、放射線遮蔽性等)を効果的に付与することができる。
さらに、上記構成とすることにより、叩解していない極性化学繊維を複合繊維の生成に使用した場合と比較して、より多くの無機粒子を含む無機粒子複合繊維(高灰分量の無機粒子複合繊維)を製造することができる。より多くの無機粒子が複合化されている無機粒子複合繊維は、無機粒子に起因する特徴がより大きく生じるようになるため、所望の機能がより向上した無機粒子複合繊維を製造することができる。
また、上記構成とすることにより、叩解していない極性化学繊維を複合繊維の生成に使用した場合と比較して、無機粒子の複合化効率が向上するため、無機粒子複合繊維の製造における歩留りが向上する。尚、本明細書中では、「無機粒子複合繊維」を単に「複合繊維」と称する場合がある。
本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法は、種々の灰分量の無機粒子複合繊維を製造する場合に適用することができるが、従来の方法では製造することができなかった高灰分量の無機粒子複合繊維を製造する場合に特に好適に適用できる。例えば、灰分(重量%)が5重量%以上、さらには10重量%以上の極性化学繊維の無機粒子複合繊維を製造することができる。無機粒子複合繊維の灰分(重量%)の算出方法については、後述する実施例で詳細に説明する。
さらに、本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法は、種々の被覆率の無機粒子複合繊維を製造する場合に適用することができるが、従来の方法では製造することができなかった高被覆率の無機粒子複合繊維を製造する場合に特に好適に適用できる。例えば、被覆率(%)が15%以上、さらには20%以上の極性化学繊維の無機粒子複合繊維を製造することができる。尚、被覆率(%)とは、無機粒子による繊維の被覆率(面積率)を指す。被覆率は、電子顕微鏡で無機粒子複合繊維を確認することによって算出することができる。
〔1.叩解工程〕
叩解工程では、極性化学繊維を湿式又は乾式で叩解する。極性化学繊維についての詳細は後述する。叩解工程では、パルプ繊維に対して通常行われる叩解と同等の処理を、極性化学繊維に対して行えばよい。極性化学繊維の叩解方法としては、例えば、公知の叩解機を用いて極性化学繊維を機械的(力学的)に処理することが挙げられる。叩解機としては、パルプ繊維を叩解する場合に通常使用される叩解機を、極性化学繊維を叩解する場合にも使用することができ、例えば、ナイアガラビーター、PFIミル、ディスクリファイナー、コニカルリファイナー、ボールミル、石臼型ミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、家庭用ジューサーミキサー、乳鉢である。中でも、ナイアガラビーターやディスクリファイナー、コニカルリファイナーを好適に用いることができる。
また、叩解工程では、湿式又は乾式で叩解を行うことができる。ここで、本明細書では、前記「湿式」は、叩解工程に供する対象が極性化学繊維のスラリーである場合を指し、前記「乾式」は、叩解工程に供する対象がスラリーではない極性化学繊維である場合を指す。例えば、「乾式」叩解は、液体中に存在していない状態の極性化学繊維に対して、上述の叩解機等を用いて機械的(力学的)に処理する形態を含む。「湿式」の場合、叩解工程に供されるスラリー中の液体成分としては水が挙げられるが、水以外の液体であってもよく、水と他の液体との混合液であってもよい。尚、本明細書において「スラリー」は、極性化学繊維を含む懸濁液であればよく、その粘度、固形分濃度等は特に限定されない。
叩解工程における処理条件は、パルプ繊維を叩解する場合に通常適用される処理条件を極性化学繊維を叩解する場合にも適用することができる。叩解の処理条件は、例えば、湿式の場合には、極性化学繊維に水を加えて、スラリー中の極性化学繊維の濃度を0.1重量%~50重量%として叩解処理することが好ましく、スラリー中の極性化学繊維の濃度を0.5重量%~40重量%として処理することがより好ましく、1重量%~30重量%として処理することがさらに好ましい。
叩解は、バッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。好ましい一態様において、極性化学繊維を含むスラリーを流動させながら連続式で叩解する。これにより、極性化学繊維の叩解を効率よく行うことができる。
叩解する際は、各種助剤を添加することができる。ここで、助剤は有機物質、無機物質のいずれでもよく、複数を組み合わせて使用することもできる。有機物質の例としては、界面活性剤、柔軟剤などが挙げられる。無機物質の例としては、ガラス、アルミナ、ジルコニアなどからなるビーズもしくはボール、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどの鉱物が挙げられる。これらを添加することによって、繊維表面や繊維全体の物性の変化が促進されるので、叩解による効果をより高めることが可能である。
通常、パルプ繊維に対して叩解を行う場合、叩解後のパルプ繊維では、叩解前と比較して、繊維の切断、フィブリル化、濾水度の低下等の物理的な変化が生じることが知られている。しかし、本発明の方法における叩解工程は、極性化学繊維を機械的に処理するという行為が重要であるので、この機械的な処理の結果として、叩解工程後の極性化学繊維に前述のような物理的な変化が生じているか否かは特に問わない。つまり、叩解工程後の極性化学繊維に、繊維形状の変化、繊維の切断、フィブリル化、濾水度の低下等の物理的な変化が生じていてもよく、表面上は顕著な変化が生じていなくてもよい。例えば、後述する実施例では、極性の再生セルロース繊維であるリヨセル(登録商標)を叩解しているが、電子顕微鏡レベルで観察した場合に、叩解工程後には、リヨセル(登録商標)がフィブリル化されていた。このように、叩解によって極性化学繊維にフィブリル化が生じる場合は、繊維の表面積が増加することにより無機粒子を複合化できる面積が増加するため好ましい。しかし、後述する実施例で使用したポリエステル繊維の様に、使用する極性化学繊維の種類によっては、叩解によってフィブリル化が生じず、叩解工程前後で繊維の表面積に顕著な変化が生じない場合もあり得る。しかし、このような場合であっても、驚くべきことに、叩解工程を経たポリエステル繊維は、叩解工程を経ていないポリエステル繊維と比較して、より多くの無機粒子を複合化することができた。
本発明の一態様において、極性化学繊維として、叩解によってフィブリル化が生じ得る繊維(例えば、リヨセル(登録商標)等)を選択する場合、叩解工程では、JIS P 8121:1995に基づき測定したカナダ標準濾水度(Canadian Standard freeness:CSF)が所定の数値となるように叩解すればよい。叩解によって繊維のフィブリル化が進むにつれて繊維の水切れ状態が低下し、濾水度は低くなる。複合繊維の合成に使用する極性化学繊維の濾水度は特に制限されないため、叩解工程では、未叩解の極性化学繊維の濾水度未満の濾水度となるように叩解を行えばよい。尚、本明細書において、単に「カナダ標準濾水度」又は「CSF」と記載している場合も、JIS P 8121:1995に基づき測定した値を指す。
好ましい一態様において、叩解工程では、極性化学繊維を、カナダ標準濾水度(CSF)が10mL以上、760mL以下の範囲になるように叩解する。好ましい一態様において、カナダ標準濾水度が50mL以上、760mL以下、より好ましくは100mL以上、760mL以下となるように叩解する。カナダ標準濾水度が760mL以下となるように、極性化学繊維を叩解することによって、極性化学繊維の形状を変化させることができる。また、極性化学繊維を叩解することによって、形状の変化のみならず、表面積を増加させることができる場合もある。カナダ標準濾水度が10mL以上となるように極性化学繊維を叩解することによって、得られる複合繊維の水切れが良好となるため、そのような複合繊維は取扱い性に優れる。
上記のCSFの範囲内で、叩解前後の極性化学繊維のCSFの変化量を表すΔCSF(mL)が、所定の数値となるように叩解することが好ましい。ここで、ΔCSFは、叩解工程前の極性化学繊維のCSFから叩解工程後の極性化学繊維のCSFの濾水度を減じた値として表すことができ、下記式(1)から算出される:
ΔCSF(mL)=(叩解工程前の極性化学繊維のCSF)-(叩解工程後の極性化学繊維のCSF)・・・(1)
好ましい一態様において、前記叩解工程では、ΔCSFが、好ましくは5mL以上、より好ましくは10mL以上、さらに好ましくは15mL以上となるように、極性化学繊維を叩解することが好ましい。ΔCSFが5mL以上となるように、極性化学繊維を叩解することによって、極性化学繊維の形状を変化させることができる。また、極性化学繊維を叩解することによって、形状の変化のみならず、表面積を増加させることができる場合もある。
また、詳細は後述するが、複合繊維生成工程において、複数種類の原料物質を反応させて無機粒子を合成する場合がある。このような場合、複合繊維生成工程の前段の叩解工程では、複数種類の原料物質の内の一部の種類の原料物質の存在下で、極性化学繊維を叩解することもできる。これにより、より多くの無機粒子を繊維に複合化することができる。これは、無機粒子を合成するために使用する原料物質の存在下で極性化学繊維を叩解することによって、原料物質と極性化学繊維とが物理的に接触する機会が増え、その結果、極性化学繊維に物理的に付着した原料物質を核として無機粒子が合成されるためであると考えられる。
原料物質の存在下で極性化学繊維を叩解する方法としては特に限定されないが、一つの好ましい態様として、例えば、極性化学繊維を含むスラリー中に複数種類の原料物質の内の一部の種類の原料物質を添加し、このスラリーを叩解してもよい。
また、極性化学繊維を含むスラリー中に複数種類の原料物質の内の一部の種類の原料物質を添加する場合は、前記「一部の種類の原料物質」として、アルカリ性の原料物質又は酸性の原料物質のどちらか一方を少なくとも含ませることもできる。叩解工程に供するスラリーにアルカリ性の原料物質又は酸性の原料物質のどちらか一方を添加することにより、極性化学繊維を効率よく叩解でき、その結果、後段の複合繊維生成工程において、効率よく無機粒子と極性化学繊維との複合繊維を得ることができる。前記「一部の種類の原料物質」として、アルカリ性の原料物質又は酸性の原料物質のいずれを添加するかについては、極性化学繊維の種類、合成する無機粒子の種類等に応じて適切な方を選択すればよい。
前記「アルカリ性の原料物質」としては、例えば、硫酸バリウムを合成するために使用される水酸化バリウムである。前記「酸性の原料物質」としては、例えば、硫酸バリウムを合成するために使用される硫酸アルミニウムである。極性化学繊維を含むスラリーにアルカリ性の原料物質又は酸性の原料物質のどちらか一方を混合後、所定時間経過後に叩解工程を行うこともできるが、混合後すぐに叩解工程を行ってもよい。
〔2.複合繊維生成工程〕
複合繊維生成工程は、極性化学繊維と無機粒子との複合繊維を生成する工程である。複合繊維生成工程では、前記叩解工程後の極性化学繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成することによって、無機粒子複合繊維を生成する。好ましい一態様において、複合繊維生成工程では、前記叩解工程後にカナダ標準濾水度が10mL以上、760mL以下となった極性化学繊維を使用して、複合繊維を生成する。
(無機粒子)
複合繊維生成工程において合成される無機粒子(つまり、極性化学繊維に複合化される無機粒子)の種類は、目的に応じて適宜選択することができる。複合繊維生成工程において無機粒子の合成を水系で行う場合があり、また、複合繊維を水系で使用することもあるため、無機粒子が水に不溶性又は難溶性であることが好ましい。
無機粒子とは、無機化合物の粒子を指し、例えば金属化合物が挙げられる。金属化合物とは、金属の陽イオン(例えば、Na、Ca2+、Mg2+、Al3+、Ba2+等)と陰イオン(例えば、O2-、OH、CO 2-、PO 3-、SO 2-、NO-、Si 2-、SiO 2-、Cl、F、S2-等)がイオン結合によって結合してできた、一般に無機塩と呼ばれるものをいう。無機粒子の具体例としては、例えば、金、カルシウム、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、チタン、銅、銀、亜鉛、白金、鉄、パラジウム及びジルコニウムから成る群より選択される1種以上を含む化合物が挙げられる。また、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合物、シリカ/二酸化チタン複合物)、硫酸カルシウム、ゼオライト、ハイドロタルサイトが挙げられる。炭酸カルシウム-シリカ複合物としては、炭酸カルシウム及び/又は軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用してもよい。以上に例示した無機粒子については、繊維を含む溶液中で、互いに合成する反応を阻害しない限り、単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
また、複合繊維中の無機粒子がハイドロタルサイトである場合、ハイドロタルサイトと極性化学繊維との複合繊維の灰分中、マグネシウム及び亜鉛のうち少なくとも一つを10重量%以上含むことがより好ましい。
本発明の一実施形態において、無機粒子は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム及びハイドロタルサイトからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含み得る。
(無機粒子の合成方法)
無機粒子の合成法は特に限定されず、公知の方法により合成することができる。また、無機粒子の合成法は、気液法及び液液法のいずれでもよい。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。また、水酸化カルシウムと炭酸ガスとを反応させる炭酸ガス法により、炭酸カルシウムを合成することができる。例えば、炭酸カルシウムは、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法により合成してもよい。また、炭酸マグネシウムはマグネシウム塩水溶液に炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを加える方法で合成することもできる。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸等)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸とを反応させることで硫酸バリウムを得ることができる。水酸化バリウムと硫酸アルミニウム(硫酸バンド)とを反応させることで、硫酸バリウムだけでなく水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物も得ることができる。塩化アルミニウム又は硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを反応させることで、水酸化アルミニウムを得ることができる。炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムとを反応させることでカルシウムとアルミニウムとが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属や金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれ、複合化できる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
また、2種類以上の無機粒子を極性化学繊維に複合化させる場合には、極性化学繊維の存在下で1種類の無機粒子の合成反応を行なった後、当該合成反応を止めて別の種類の無機粒子の合成反応を行なってもよく、互いに反応を邪魔しなかったり、一つの反応で目的の無機粒子が複数種類合成されたりする場合には2種類以上の無機粒子を同時に合成してもよい。また、合成反応の前もしくは途中で種結晶を添加することもできる。種結晶の添加によって無機粒子の成長を促したり、所望の粒径にコントロールしやすくしたりすることができる。
複合繊維生成工程の反応条件(反応液の温度、反応液のpH、反応液の電導度、反応時間等)は特に制限されず、無機粒子の合成反応の種類に応じて適宜設定することができる。反応液を撹拌しながら無機粒子の合成反応を行うことによって反応効率を向上させることができる。無機粒子の合成反応は、バッチ反応であっても連続反応であってもよい。
一つの好ましい態様として、複合繊維における無機粒子の平均一次粒子径を、例えば、5μm以下とすることができるが、平均一次粒子径が3μm以下の無機粒子、平均一次粒子径が1μm以下の無機粒子、平均一次粒子径が200nm以下の無機粒子、平均一次粒子径が100nm以下の無機粒子、平均一次粒子径が50nm以下の無機粒子を用いることができる。また、無機粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。尚、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真から算出することができる。
無機粒子を合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する無機粒子を繊維と複合繊維化することができる。例えば、鱗片状の無機粒子が繊維に複合化している複合繊維とすることもできる。複合繊維を構成する無機粒子の形状は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。
また、無機粒子は、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させてもよく、また、粉砕によって凝集塊を細かくしてもよい。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
(極性化学繊維)
化学繊維(chemical fiber)は、化学的なプロセスによって製造された繊維全般を指す。具体的には、従来公知の、合成繊維、再生繊維(半合成繊維)が挙げられる。極性化学繊維は、極性を有する化学繊維であれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。極性化学繊維としては、例えば、分子中に極性基(例えば、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミノ基(-NH)、アルデヒド基、リン酸基、ウレア基、スルホ基、ニトロ基、アミド基、シアノ基、カルボニル基(-COO-)、エーテル基(-O-)、シラノール基等)を有している化学繊維やガラス繊維、もしくはこれらの官能基で表面が修飾されている合成繊維(非極性の合成繊維の表面がこれらの官能基で修飾されているものも含む)である。
極性化学繊維の具体例としては、合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。半合成繊維としては、例えば、再生セルロース繊維、アセテート等を挙げることができる。ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維等を挙げることができる。ポリアミド繊維としては、例えば、ナイロン繊維、アラミド繊維等を挙げることができる。
好ましい一態様において、極性化学繊維は、再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びアクリル繊維から成る群より選択される1種以上の化学繊維である。これらの極性化学繊維は、耐熱性、強度等に優れることから、これらの極性化学繊維に無機粒子の機能を付与した複合繊維を製造することは有用である。再生セルロース繊維としては、例えば、リヨセル(登録商標)、レーヨン、キュプラ(登録商標)等を挙げることができる。再生セルロース繊維を構成するセルロース分子の重合度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。再生セルロース繊維の中で、特に、リヨセル(登録商標)は、強度に優れることから、不織布の材料として好適に採用することができる。このため、高灰分量のリヨセル(登録商標)の複合繊維を製造することができれば有用である。
以上に例示した繊維については単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
また、複合化する極性化学繊維の繊維長は特に制限されず、例えば、平均繊維長が0.1μm~15mm程度とすることができ、1μm~12mm、100μm~10mm、500μm~8mm等としてもよい。
複合繊維生成工程において用いるスラリーに含まれている極性化学繊維の量(つまり、複合繊維の合成に供される極性化学繊維の量)は、極性化学繊維の表面の15%以上が無機粒子で被覆されるような量とすることが好ましい。例えば、複合繊維生成工程によって得られる無機粒子複合繊維中の極性化学繊維と無機粒子との重量比が、5/95~95/5となるような量とすることが好ましく、10/90~90/10、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40となるような量としてもよい。
(その他の物質)
本発明の一態様において、複合繊維生成工程におけるスラリー中には極性化学繊維、無機粒子、無機粒子の合成に使用する原料物質以外の物質が含まれていてもよい。複合繊維生成工程におけるスラリーには、必要に応じて、公知の各種助剤(例えば、キレート剤、表面処理剤、分散剤等、凝集剤、凝結剤、歩留剤、漂白剤、殺菌剤、サイズ剤など)を添加することができる。各種助剤は単独又は複数組み合わせて使用することができる。また、各種助剤をスラリーに添加するタイミングは特に制限されない。各種助剤は、無機粒子に対して、好ましくは0.001重量%~20重量%、より好ましくは0.01重量%~10重量%の量で添加することができる。
<無機粒子複合繊維>
本発明に係る無機粒子複合繊維の製造方法によって製造した無機粒子複合繊維も本発明の範囲に含まれる。極性化学繊維と無機粒子との無機粒子複合繊維では、単に極性化学繊維と無機粒子とが混在しているのではなく、水素結合等によって極性化学繊維と無機粒子とが複合化していることにより、無機粒子が極性化学繊維から脱落し難い。このような複合繊維は、無機粒子の歩留まりが高く、高灰分であっても粉落ちが抑制されているため、各種用途に好適に使用することができる。
本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法によって製造された無機粒子複合繊維は、従来の方法では得られなかった高灰分の極性化学繊維の複合繊維となり得る。例えば、本発明の一態様において製造される無機粒子複合繊維は、灰分(重量%)が、5重量%以上、さらには10重量%以上の極性化学繊維の無機粒子複合繊維となり得る。
さらに、本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法によって製造された無機粒子複合繊維は、従来の方法では得られなかった高被覆率の極性化学繊維の複合繊維となり得る。例えば、本発明の一態様において製造される無機粒子複合繊維は、無機粒子による繊維の被覆率(面積率)(%)が、15%以上、さらには20%以上の極性化学繊維の無機粒子複合繊維となり得る。
さらに、本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法によって製造された無機粒子複合繊維は、無機粒子の複合率が向上しているため、このような無機粒子複合繊維を抄紙してシート化する場合の歩留りを向上させることができる。その結果、シートの製造速度(例えば、抄紙機のワイヤスピード)を向上させることができる。
一つの好ましい態様において、無機粒子複合繊維は、無機粒子と、JIS P 8121:1995に基づくカナダ標準濾水度が10mL以上、760mL以下である極性の化学繊維との複合繊維である。
一つの好ましい態様において、無機粒子複合繊維は、再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びアクリル繊維から成る群より選択される1種以上の極性の化学繊維の無機粒子複合繊維である。
〔用途〕
本発明に係る無機粒子複合繊維の製造方法によって製造した無機粒子複合繊維は、種々の用途に用いることができる。例えば、紙、不織布、繊維、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチック、その他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板等)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体等)、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿等)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、変色防止剤、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤用添加剤、難燃材料、衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、母乳パッド等、ウェットティシュー)等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤等の物品に用いることができる。
本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法によって製造した無機粒子複合繊維を含む前記物品も本発明の範囲に含まれる。また、前記物品の製造のための前記無機粒子複合繊維の使用も本発明の範囲に含まれる。
〔まとめ〕
本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1)極性の化学繊維を湿式又は乾式で叩解する叩解工程と、前記叩解工程後の前記化学繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成する、前記化学繊維と前記無機粒子との複合繊維を生成する複合繊維生成工程と、を含む、無機粒子複合繊維の製造方法。
(2)前記無機粒子複合繊維は、前記無機粒子と、JIS P 8121:1995に基づくカナダ標準濾水度が10mL以上、760mL以下である前記化学繊維との複合繊維である、(1)に記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(3)前記叩解工程では、下記式(1)から算出されるΔCSFが5mL以上となるように、前記化学繊維を叩解する、(1)又は(2)に記載の無機粒子複合繊維の製造方法:
ΔCSF(mL)=叩解工程前の極性の化学繊維のカナダ標準濾水度-叩解工程後の極性の化学繊維のカナダ標準濾水度・・・(1)
(前記式(1)において、前記カナダ標準濾水度は、JIS P 8121:1995に基づき測定した値である)。
(4)前記化学繊維は、再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びアクリル繊維から成る群より選択される1種以上の化学繊維である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(5)前記無機粒子の少なくとも一部に、カルシウム、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、チタン、銅、銀、亜鉛、白金、鉄、パラジウム及びジルコニウムから成る群より選択される1種以上を含む、(1)~(4)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(6)前記無機粒子複合繊維中の前記無機粒子の平均一次粒子径が5μm以下である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(7)前記無機粒子複合繊維は、前記化学繊維の表面の15%以上が前記無機粒子で覆われている、(1)~(6)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(8)前記無機粒子複合繊維中の前記化学繊維と前記無機粒子との重量比が、5/95~95/5である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(9)前記複合繊維生成工程では、複数種類の原料物質を反応させて前記無機粒子を合成し、前記叩解工程では、前記複合繊維生成工程において前記無機粒子を合成するために使用する前記複数種類の原料物質の内の一部の種類の原料物質の存在下で、前記化学繊維を叩解する、(1)~(8)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
(10)無機粒子と、JIS P 8121:1995に基づくカナダ標準濾水度が10mL以上、760mL以下である極性の化学繊維との無機粒子複合繊維。
(11)前記化学繊維は、再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びアクリル繊維から成る群より選択される1種以上の化学繊維である、(10)に記載の無機粒子複合繊維。
(12)前記無機粒子の少なくとも一部に、カルシウム、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、チタン、銅、銀、亜鉛、白金、鉄、パラジウム及びジルコニウムから成る群より選択される1種以上を含む、(10)又は(11)に記載の無機粒子複合繊維。
(13)前記無機粒子複合繊維中の前記無機粒子の平均一次粒子径が5μm以下である、(10)~(12)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維。
(14)前記無機粒子複合繊維は、前記化学繊維の表面の15%以上が前記無機粒子で覆われている、(10)~(13)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維。
(15)前記無機粒子複合繊維中の前記化学繊維と前記無機粒子との重量比が、5/95~95/5である、(10)~(14)のいずれか1つに記載の無機粒子複合繊維。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定
されるものではない。
〔実施例1:硫酸バリウムと極性化学繊維との複合繊維の合成〕
極性化学繊維として、リヨセル(登録商標)(LENZING社製、繊維長4mm)を用いた。リヨセル(登録商標)を含むスラリー(繊維濃度:1重量%、固形分200g)と水酸化バリウム八水和物(和光純薬、368g)をナイアガラビーター(熊谷理機工業製)に供して、水酸化バリウムの存在下で、室温で約10分間、リヨセル(登録商標)を叩解した。
叩解後のリヨセル(登録商標)のカナダ標準濾水度(CSF)をJIS P 8121:1995に基づき測定した。その結果、叩解後のリヨセル(登録商標)のCSFは、748mLであった。これに対して、未叩解のリヨセル(登録商標)のCSFは、769mLであった。叩解前のCSFから叩解後のCSFを減じたΔCSFは、21mLであった。
また、レーザー顕微鏡で繊維の形状を観察した結果、図1に示すように、叩解前は直線型であった繊維が(図1の(a))、叩解後は短く切断され、所々折れ曲がった形状になっていた。さらに外部フィブリルが多く発生していることが確認された(図1の(b))。
叩解後のスラリー500gを1L容のプラスチックカップに移し、スリーワンモーターで600rpmの速度で撹拌しながら硫酸(和光純薬、5%水溶液)を1.2g/minでpHが7になるまで滴下した(硫酸滴下前のpHは12.8)。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続して実施例1の複合繊維のスラリーを得た。以上のように、実施例1では、硫酸バリウムとリヨセル(登録商標)との複合繊維が合成されている。
〔実施例2:硫酸バリウムと極性化学繊維との複合繊維の合成〕
極性化学繊維としてポリエステル繊維(EP043、クラレ社製)を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2の複合繊維のスラリーを得た。
叩解後のポリエステル繊維のCSF測定した結果、叩解後のポリエステル繊維のCSFは、752mLであった。これに対して、未叩解のポリエステル繊維のCSFは、773mLであった。叩解前のCSFから叩解後のCSFを減じたΔCSFは、21mLであった。
また、レーザー顕微鏡で繊維の形状を観察した結果、図2に示すように、叩解前は直線型であった繊維(図2の(a))が、叩解後は所々折れ曲がったり押しつぶされたりした形状に変化したことが確認された(図2の(b))。叩解後のポリエステル繊維にはフィブリルは発生していなかったが、叩解後にCSFが低下した一因として、叩解によって繊維の構造が軟化して保水性が上がったことが考えられた。また、レーザー顕微鏡での観察結果から、形状が直線型から折れ曲がり型に変化していたことから、繊維の形状の変化により、繊維同士の絡み合いが多くなり、濾水度が高くなったためであると考えられた。
〔実施例3:硫酸バリウムと極性化学繊維との複合繊維の合成〕
ポリエステル繊維の叩解時には水酸化バリウムを添加せず、叩解後、反応容器にポリエステル繊維(500g)を移して水酸化バリウム八水和物(和光純薬、9.2g)を加え、30分間スリーワンモーター(600rpm)にて撹拌した。その後は、実施例2と同じ方法で実施例3の複合繊維のスラリーを得た。
〔比較例1:硫酸バリウムと極性化学繊維との複合繊維の合成〕
リヨセル(登録商標)を叩解しなかったこと以外は、実施例1と同じ方法で、比較例1の複合繊維のスラリーを得た。
〔比較例2:硫酸バリウムと極性化学繊維との複合繊維の合成〕
ポリエステル繊維を叩解しなかったこと以外は、実施例2と同じ方法で、比較例2の複合繊維のスラリーを得た。
≪複合繊維の評価≫
得られた複合繊維をエタノールで洗浄後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、複合繊維の表面を観察した。結果を図3~図5に示す。図3は、実施例1及び比較例1において作製した複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図であり、図4は、実施例2及び比較例2において作製した複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である。図3及び図4において、(a)は比較例の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(b)は比較例の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図であり、(c)は実施例の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(d)は実施例の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図である。
また、図5は、実施例3において作製した複合繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図であり、(a)は実施例の複合繊維を倍率3000倍で観察した結果を示す図であり、(b)は実施例の複合繊維を倍率10000倍で観察した結果を示す図である。
≪結果1:実施例1及び比較例1≫
図3に示す通り、観察の結果、実施例1の複合繊維及び比較例1の複合繊維のどちらも、繊維の表面は無機物質によって覆われており、無機物質が繊維に自己定着している様子が観察された。繊維に定着している無機粒子の多くは板状であり、サイズが小さいものは不定形の粒子として観察された。また、観察の結果見積もられた無機粒子の一次粒子径は50~300nmであり、平均一次粒子径は、約150nmであった。実施例1の複合繊維では、比較例1の複合繊維と比較して、叩解によるフィブリルの増加が認められた。
得られた複合繊維について、無機粒子によるリヨセル(登録商標)の被覆率(面積率)をSEMによる観察によって測定した。その結果、実施例1の複合繊維では、被覆率は20%であった。一方、比較例1の複合繊維では、被覆率は15%であった。
得られた複合繊維について、繊維:無機粒子の重量比を測定した。重量比(灰分)は、動的濾水度試験器(DDA、Ab Akribi Kemikonsulter社製)を用いて、複合繊維スラリー(固形分換算で0.5g)を800rpmで撹拌後、0.3barの圧力で強制脱水することによってシート化した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の重量から算出した。その結果、実施例1の複合繊維では、繊維:無機粒子の重量比は、86:14であった(灰分:14%)。これに対して、比較例1の複合繊維では、繊維:無機粒子の重量比は、91:9であった(灰分:9重量%)。
以上の結果から、叩解工程を経たリヨセル(登録商標)を複合繊維の合成に使用することによって、叩解工程を経ていないリヨセル(登録商標)を複合繊維の合成に使用した場合と比較して、より多くの無機粒子を付着させた複合繊維を製造し得ることが明らかになった。
≪結果2:実施例2及び比較例2≫
図4に示す通り、観察の結果、実施例2の複合繊維及び比較例2の複合繊維のどちらも、繊維の表面は無機物質によって覆われており、無機物質が繊維に自己定着している様子が観察された。繊維に定着している無機粒子の多くは板状であり、サイズが小さいものは不定形の粒子として観察された。また、観察の結果見積もられた無機粒子の一次粒子径は50~300nmであり、平均一次粒子径は、約150nmであった。実施例2の複合繊維では、比較例2の複合繊維と比較して、叩解によるフィブリルの増加は認められなかった。
得られた複合繊維について、無機粒子による繊維の被覆率(面積率)は、実施例2の複合繊維では、被覆率は85%であった。一方、比較例2の複合繊維では、被覆率は10%であった。
また、繊維:無機粒子の重量比は、実施例2の複合繊維では、91:9であった(灰分:9重量%)。これに対して、比較例2の複合繊維では、繊維:無機粒子の重量比は、96:4であった(灰分:4重量%)。
以上の結果から、叩解工程を経たポリエステル繊維を複合繊維の合成に使用することによって、叩解工程を経ていないポリエステル繊維を複合繊維の合成に使用した場合と比較して、より多くの無機粒子を付着させた複合繊維を製造し得ることが明らかになった。
≪結果3:実施例3≫
図5に示す通り、観察の結果、実施例3の複合繊維の表面は無機物質によって覆われており、無機物質が繊維に自己定着している様子が観察された。繊維に定着している無機粒子の多くは板状であり、サイズが小さいものは不定形の粒子として観察された。また、観察の結果見積もられた無機粒子の一次粒子径は50~300nmであり、平均一次粒子径は、150nmであった。
実施例3の複合繊維について、無機粒子による繊維の被覆率(面積率)は、75%であった。また、繊維:無機粒子の重量比は、実施例3の複合繊維では、95:6であった(灰分:6重量%)。
以上の結果から、水酸化バリウムの非存在下で、ポリエステル繊維を叩解してから、複合繊維を合成した場合にも、叩解工程を経ていないポリエステル繊維を複合繊維の合成に使用した場合(比較例2)と比較して、より多くの無機粒子を付着させた複合繊維を製造し得ることが明らかになった。
本発明の一態様に係る無機粒子複合繊維の製造方法によれば、より多くの無機物を付着させた繊維を製造することができる。従って、本発明の一態様は、無機粒子の機能(難燃性、消臭・抗菌性、放射線遮蔽性等)を付与した繊維(特に、再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びアクリル繊維のような極性化学繊維)を用いる各種分野に好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. 極性の化学繊維を湿式又は乾式で叩解する叩解工程と、
    前記叩解工程後の前記化学繊維を含むスラリー中で無機粒子を合成する、前記化学繊維と前記無機粒子との複合繊維を生成する複合繊維生成工程と、を含み、
    前記複合繊維生成工程では、複数種類の原料物質を反応させて前記無機粒子を合成し、
    前記叩解工程では、前記複合繊維生成工程において前記無機粒子を合成するために使用する前記複数種類の原料物質の内の一部の種類の原料物質の存在下で、前記化学繊維を叩解し、
    前記叩解工程では、下記式(1)から算出されるΔCSFが5mL以上となるように、前記化学繊維を叩解し、
    前記複合繊維は、前記無機粒子と、JIS P 8121:1995に基づくカナダ標準濾水度が10mL以上、760mL以下である前記化学繊維との複合繊維である、無機粒子複合繊維の製造方法:
    ΔCSF(mL)=叩解工程前の極性の化学繊維のカナダ標準濾水度-叩解工程後の極性の化学繊維のカナダ標準濾水度・・・(1)
    (前記式(1)において、前記カナダ標準濾水度は、JIS P 8121:1995に基づき測定した値である)。
  2. 前記化学繊維は、再生セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びアクリル繊維から成る群より選択される1種以上の化学繊維である、請求項1に記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
  3. 前記無機粒子の少なくとも一部に、カルシウム、ケイ酸、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、チタン、銅、銀、亜鉛、白金、鉄、パラジウム及びジルコニウムから成る群より選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
  4. 前記無機粒子複合繊維中の前記無機粒子の平均一次粒子径が5μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
  5. 前記無機粒子複合繊維は、前記化学繊維の表面の15%以上が前記無機粒子で覆われている、請求項1~4のいずれか1項に記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
  6. 前記無機粒子複合繊維中の前記化学繊維と前記無機粒子との重量比が、5/95~95/5である、請求項1~5のいずれか1項に記載の無機粒子複合繊維の製造方法。
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