JP6820971B2 - 繊維複合体およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、シリカやアルミナと繊維との複合体およびその製造方法に関する。
一般に、炭酸カルシウムは、天然の石灰石や風化貝殻などを原料として物理的に粉砕分級して製造する「天然炭酸カルシウム」と、石灰石を原料として化学的に反応させて製造する「合成炭酸カルシウム」(軽質炭酸カルシウム)とに大きく分けられる。そして、合成炭酸カルシウムの合成法としては、炭酸ガス法、石灰・ソーダ法、ソーダ法が知られており、石灰・ソーダ法およびソーダ法は特殊な用途に一部利用されるものの、工業的な炭酸カルシウムの合成は炭酸ガス法によって行われるのが一般的である。
炭酸ガス法による炭酸カルシウムの合成は、生石灰と炭酸ガスとを反応させることにより行われ、一般に、生石灰CaOに水を加えて消石灰Ca(OH)を得る消和工程と、消石灰に炭酸ガスCOを吹き込んで炭酸カルシウムCaCOを得る炭酸化工程とを有する。今日では、炭酸カルシウムの合成工程、特に炭酸化工程の反応条件を制御することによって、生成物である炭酸カルシウムの粒子形状や粒子径などをコントロールする技術が種々提案されている。
また、パルプなどの繊維上に炭酸カルシウムを析出させる技術についても種々提案されている。特許文献1は、結晶質の炭酸カルシウムが繊維上に機械的に結合した複合体が記載されている。また、特許文献2には、パルプ懸濁液中で炭酸ガス法により炭酸カルシウムを析出させることによって、パルプと炭酸カルシウムの複合体を製造する技術が記載されている。特許文献3には、紙と板紙用として多量の填料を繊維に加えて古紙繊維の白色度と清浄度を向上させる方法であって、古紙パルプのスラリーを気体−液体接触装置に送って、流れに逆らってアルカリ塩のスラリーを流れの方向にパルプを接解領域において接解させると共に適当な反応性ガスを送り沈降性填料と混ぜることによって繊維表面に填料を付着させる技術が記載されている。
特開平06−158585号公報 米国特許第5679220号 米国特許第5665205号
本発明者らは、シリカやアルミナと繊維との複合体およびその製造方法を開発することである。
本発明者らは、炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体を開発していたところ、繊維の存在下で液体を噴射しながらシリカやアルミナを合成することによって、シリカやアルミナと繊維との複合体を効率的に製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1) 反応容器内に液体を噴射しながら繊維の存在下でシリカおよび/またはアルミナを合成することを含む、繊維複合体の製造方法。
(2) キャビテーション気泡の存在下でシリカおよび/またはアルミナを合成する、(1)に記載の方法。
(3)無機酸もしくはアルミニウム塩のいずれか1つ以上と珪酸アルカリ塩を用いて合成する、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 硫酸もしくは硫酸アルミニウムおよび珪酸ナトリウムを用いて合成する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 繊維複合体上のシリカおよび/またはアルミナの平均一次粒子径が100nm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記繊維がパルプ繊維である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 反応液を循環させて反応容器内に噴射することを含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、液体を噴射させながら繊維の存在下でシリカやアルミナを合成することによって、シリカやアルミナと繊維との複合体を製造することができる。
図1は、本発明の実験例で用いた反応装置を示す概略図である。 図2は、実験1で使用した表面をミクロフィブリル化した広葉樹パルプ繊維(CV処理パルプ)の電子顕微鏡写真である(倍率:200倍)。 図3は、実験1で使用したセルロースナノファイバーの電子顕微鏡写真である(倍率:200倍)。 図4は、実験1で合成した炭酸カルシウム微粒子と繊維(CV処理パルプ)との複合体の電子顕微鏡写真である(倍率:左10000倍、右50000倍)。 図5は、実験1で合成した炭酸カルシウム微粒子と繊維(セルロースナノファイバー:CNF)との複合体の電子顕微鏡写真である(倍率:左10000倍、右50000倍)。 図6は、実験1で合成した炭酸カルシウム微粒子と繊維(TMP)との複合体の電子顕微鏡写真である(倍率:2000倍)。 図7は、実験1で合成した炭酸カルシウム微粒子と繊維(CV処理した麻パルプ)との複合体の電子顕微鏡写真である(倍率:2000倍)。 図8は、実験2−1(サンプルC0)の写真である(倍率:左から、2000倍)。 図9は、実験2−2(サンプルC1)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図109は、実験2−3(サンプルC2)の写真である(倍率:50000倍)。 図11は、実験2−4(サンプルC3)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図12は、実験2−5(サンプルC4)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図13は、実験2−6(サンプルC5)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図14は、実験3−1(サンプルC6)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図15は、実験3−2(サンプルC7)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図16は、実験3−3(サンプルC8)の写真である(倍率:左から、2000倍、10000倍、50000倍)。 図17は、実験3−4(サンプルC9)の写真である(倍率:左から、2000倍、50000倍)。
本発明においては、繊維を含有する溶液において液体を噴射させながらシリカおよび/またはアルミナを合成することによって、シリカやアルミナの微粒子と繊維との複合体(繊維複合体)を製造する。
シリカおよび/またはアルミナ
本発明によれば、平均粒子径の小さいシリカおよび/またはアルミナを繊維と複合体化することができる。本発明に係る複合体を構成するシリカおよび/またはアルミナ微粒子の平均一次粒子径は1μm未満であるが、平均一次粒子径を500nm未満、200nm未満、さらには100nm以下とすることもできる。また、シリカおよび/またはアルミナ微粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。
また、本発明で得られるシリカおよび/またはアルミナは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
本発明によって得られた複合体は、種々の形状で用いることができ、例えば、粉体、ペレット、モールド、水性懸濁液、ペースト、シート、その他の形状にして用いることができる。また、複合体を主成分として他の材料と共にモールドや粒子・ペレットなどの成形体にすることもできる。乾燥して紛体にする場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明によれば、一次粒子径が小さくかつ粒度分布の狭い無機微粒子と繊維との複合体を得ることができるため、1μm超の粒子径を有していた従来の製紙用炭酸カルシウムとは異なった特性を発揮させることができる。更には、一次粒子径の小さい無機微粒子を繊維に単に配合した場合と異なり、本発明の複合体は繊維と複合体を形成しているため、無機微粒子がシートに歩留りやすいだけでなく、凝集せずに均一に分散したシートを得ることができる。本発明の複合粒子は、無機微粒子が繊維の外表面・ルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
本発明の複合体を構成する無機微粒子の平均粒子径や形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、無機微粒子を合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する微粒子を繊維と複合体化することができる。
本発明によって得られた複合体は、種々の用途に用いることができる。これに限定されるものではないが、例えば、紙、繊維、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックやその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料等のあらゆる用途に広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。
中でも、本発明の複合体は、製紙用途に適用しやすく、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、耐熱紙、光触媒紙、化粧紙(脂取り紙など)、各種衛生紙(トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ワイパー、おむつ、生理用品等)、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。
また、本発明によって得られる炭酸カルシウム複合体を使用する際には、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子や、各種繊維を併用することができる。例えば、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、ゼオライト、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料および再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合体を形成した無機填料などが挙げられる。炭酸カルシウム−シリカ複合物としては、炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。有機填料としては、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合体、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、変性不溶化デンプン、未糊化デンプンなどが挙げられる。繊維としては、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロースが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ等が例示される。木材パルプ及び非木材パルプは、未叩解及び叩解のいずれでもよい。合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。以上について、これらは単独でも2種類以上の組み合わせで用いても構わない。
液体の噴射
本発明に係る複合体の製法においては、液体を噴射させながら、繊維の存在下でシリカおよび/またはアルミナを合成する。
本発明においては、液体を噴射することによってキャビテーションを発生させてもよい。本発明においてキャビテーションとは、流体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、空洞現象とも言われる。キャビテーションによって生じる気泡(キャビテーション気泡)は、流体の中で圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100ミクロン以下のごく微小な「気泡核」を核として生じる。
本発明においてキャビテーション気泡は、公知の方法によって反応容器内に発生させることができる。例えば、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させること、流体内で高速で攪拌することによってキャビテーションを発生させること、流体内で爆発を生じさせることによってキャビテーションを発生させること、超音波振動子によってキャビテーションを発生させること(バイブトラリー・キャビテーション)などが考えられる。
特に本発明においては、キャビテーション気泡の発生と制御が容易なため、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させることが好ましい。この態様では、ポンプなどを用いて噴射液体を圧縮し高速でノズルなどを介して噴射することによって、ノズル近傍での極めて高いせん断力と急激な減圧による液体自体の膨張と同時にキャビテーション気泡が発生する。流体噴流による方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡を発生させることができる。本発明においては、炭酸カルシウムを合成する際に制御されたキャビテーション気泡を存在させるものであって、流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーション気泡と明らかに異なる。
本発明においては、原料などの反応溶液をそのまま噴射液体として噴射することもできるし、反応容器内に何らかの流体を噴射することもできる。液体噴流が噴流をなす流体は、流動状態であれば液体、気体、粉体やパルプ等の固体の何れでもよく、またそれらの混合物であってもよい。更に必要であれば上記の流体に、新たな流体として、炭酸ガスなど、別の流体を加えることができる。上記流体と新たな流体は、均一に混合して噴射してもよいが、別個に噴射してもよい。
液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機物粒子のスラリーや気泡を含む液体噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
キャビテーションは液体が加速され、局所的な圧力がその液体の蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速及び圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーション状態を表わす基本的な無次元数、キャビテーション数(Cavitation Number)σは次の数
式1のように定義される(加藤洋治編「新版キャビテーション・基礎と最近の進歩」、槇書店、1999年)。
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下の数式2のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381, 1998)。
本発明におけるキャビテーションの条件は、上述したキャビテーション数σが0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満である場合、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いため効果が小さくなり、0.5より大である場合は、流れの圧力差が低くキャビテーションが発生し難くなる。
また、ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は2MPa以上15MPa以下がより好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下が好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難いため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
本発明におけるキャビテーション発生場所は、微粒子を合成する反応容器内に発生させればよい。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することもできる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための液体の噴射は、大気開放の容器の中でなされても良いが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
本発明において、反応液のpHは、珪酸アルカリ塩を出発物質に用いた場合反応開始時は塩基性側であり、無機酸やアルミニウム塩を出発物質に用いた場合は酸性であるが、反応が進行するにしたがって中性に変化する。したがって、反応液のpHをモニターすることによって反応を制御することができる。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧
力が低下し、より強力なキャビテーションが発生させることができる。また、反応容器内の圧力を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力を大きくすることができる。また、炭酸ガスなどのガスを導入する場合は、ガスの溶解と分散を促進することができる。反応温度は0℃以上90℃以下であることが好ましく、特に10℃以上60℃以下であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水性溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
本発明においては、界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも、2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
反応条件
本発明においては、液体を噴射しながら繊維の存在下で、アルミナおよび/またはシリカを合成すればよい。反応の出発物質として無機酸もしくはアルミニウム塩のいずれか1つ以上を用いた場合、珪酸アルカリ塩を添加して合成する。出発物質として珪酸アルカリ塩を用い、無機酸もしくはアルミニウム塩のいずれか1つ以上を添加して合成することもできるが、無機酸および/もしくはアルミニウム塩を出発物質として用いた場合の方が、生成物の繊維への定着は良好である。無機酸としては特に限定されるものではなく、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等を用いることができる。これらの中でもコストおよびハンドリングの点から硫酸が特に好ましい。アルミニウム塩としては、硫酸バンド、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ミョウバン、カリミョウバン等が挙げられ、中でも硫酸バンドを好適に用いることができる。珪酸アルカリ塩としては、珪酸ナトリウムもしくは珪酸カリウムなどが挙げられるが、入手しやすいため珪酸ナトリウムが好適である。珪酸とアルカリのモル比はいずれでも良いが、一般に3号珪酸として流通しているものはSiO:NaO=3〜3.4:1程度のモル比のものであり、これを好適に用いることができ
る。本発明においては、懸濁液などの調製などに水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水などを用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、炭酸化工程で得られた水を好適に用いることできる。
また本発明においては、反応液を循環させて使用することができる。このように反応液を循環させることにより、反応効率を上げ、複合体を効率よく得ることが容易になる。
本発明の複合体を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。例えば、キレート剤を炭酸化反応に添加することができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などのポリヒドロキシカルボン酸、シュウ酸などのジカルボン酸、グルコン酸などの糖酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸などのポリリン酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリルなどのケトン類、ショ糖などの糖類、ソルビトールなどのポリオールが挙げられる。また、表面処理剤としてパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、アビエチン酸等の樹脂酸、それらの塩やエステルおよびエーテル、アルコール系活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシア
ルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸などを添加することができる。また、必要に応じ分散剤を用いることもできる。この分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アクリル酸−マレイン酸共重合体アンモニウム塩、メタクリル酸−ナフトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体、メタクリル酸−ポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体アンモニウム塩、ポリエチレングリコールモノアクリレートなどがある。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。また、添加のタイミングは特に制限されず、また、このような添加剤は、好ましくは0.001〜20%、より好ましくは0.1〜10%の量で添加することができる。
本発明において反応条件は、特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、反応の温度は10〜100℃とすることができ、20〜90℃とすることが好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下しコストが高くなる一方、90℃を超えると粗大な粒子が多くなる傾向がある。
また、本発明において反応はバッチ反応とすることもでき、連続反応とすることもできる。一般に、反応後の残存物を排出する便利さから、バッチ反応工程を行うことが好ましい。反応のスケールは特に制限されないが、100L以下のスケールで反応させてもよいし、100L超のスケールで反応させてもよい。反応容器の大きさは、例えば、10L〜100L程度とすることもできるし、100L〜1000L程度としてもよい。
さらに、反応は、反応懸濁液のpHをモニターすることにより制御することができ、反応液のpHプロファイルに応じて、例えばpH4〜11、好ましくはpH5〜10、より好ましくはpH6〜9のあたりに到達するまで反応を行うことができる。
さらにまた、反応は、反応時間によって制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、反応槽の反応液を攪拌したり、多段反応とすることによって反応を制御することもできる。
本発明においては、反応生成物である複合体が懸濁液として得られるため、必要に応じて、貯蔵タンクに貯蔵したり、濃縮、脱水、粉砕、分級、熟成、分散などの処理を行うことができる。これらは公知の工程によることができ、用途やエネルギー効率などを考慮して適宜決定すればよい。例えば濃縮・脱水処理は、遠心脱水機、沈降濃縮機などを用いて行われる。この遠心脱水機の例としては、デカンター、スクリューデカンターなどが挙げられる。濾過機や脱水機を用いる場合についてもその種類に特に制限はなく、一般的なものを使用することができるが、例えば、フィルタープレス、ドラムフィルター、ベルトプレス、チューブプレス等の加圧型脱水機、オリバーフィルター等の真空ドラム脱水機などを好適に用いて炭酸カルシウムケーキとすることができる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。分級の方法としては、メッシュ等の篩、アウトワード型もしくはインワード型のスリットもしくは丸穴スクリーン、振動スクリーン、重量異物クリーナー、軽量異物クリーナー、リバースクリーナー、篩分け試験機等が挙げられる。分散の方法としては、高速ディスパーザー、低速ニーダーなどが挙げられる。
本発明によって得られた複合体は、完全に脱水せずに懸濁液の状態で填料や顔料に配合することもできるが、乾燥して粉体とすることもできる。この場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明によって得られる複合体は、公知の方法によって改質することが可能である。例えば、ある態様においては、その表面を疎水化し、樹脂などとの混和性を高めたりすることが可能である。
繊維
本発明においては、無機微粒子と繊維とを複合体化する。複合体を構成する繊維は特に制限されないが、例えば、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンなどの半合成繊維、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロースが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、複合体シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、シート強度の向上並びに炭酸カルシウムの定着促進が期待できる。
合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。
以上に示した繊維は単独で用いても良いし、複数を混合しても良い。中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
好ましい態様において、本発明の複合体を構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を本発明の炭酸化反応に供給してもよい。このような物質を反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ
、また、形状的にも繊維状粒子などを合成することができる。
本発明においては、繊維の他にも、無機粒子の生成には直接的に関与しないが、無機粒子に取り込まれて複合粒子を生成するような物質を用いることができる。本発明においては、パルプ繊維を始めとする繊維を使用するが、それ以外にも無機粒子、有機粒子、ポリマーなどを含む溶液中でシリカやアルミナを合成することによって、さらにこれらの物質が取り込まれた複合粒子を製造することが可能である。
シリカおよび/またはアルミナ
本発明においては、繊維を含む溶液中で液体を噴射しつつシリカおよび/またはアルミナの微粒子を合成するが、その合成方法は、公知の方法によることができる。また、本発明においては、シリカやアルミナの微粒子だけでなく、他の無機粒子を繊維と複合体化することができる。
好ましい態様において本発明では、シリカやアルミナだけでなく、炭酸カルシウムの微粒子を繊維と複合体化することができる。この場合、複合体を構成する炭酸カルシウム微粒子の平均一次粒子径は1μm未満であるが、平均一次粒子径が500nm未満の炭酸カルシウムや平均一次粒子径が200nm未満の炭酸カルシウム、さらには100nm以下の炭酸カルシウムを用いることができる。また、炭酸カルシウム微粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。
また、本発明で得られる炭酸カルシウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
本発明の複合体を構成する炭酸カルシウムの平均粒子径や形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、炭酸カルシウムを合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する炭酸カルシウム微粒子を繊維と複合体化することができる。
炭酸カルシウムの合成方法は特に制限されないが、例えば、炭酸ガス法、可溶性塩反応法、石灰・ソーダ法、ソーダ法などによって炭酸カルシウムを合成することができ、好ましい態様において、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する。
一般に、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを製造する場合、カルシウム源として石灰(ライム)が使用され、生石灰CaOに水を加えて消石灰Ca(OH)を得る消和工程と、消石灰に炭酸ガスCOを吹き込んで炭酸カルシウムCaCOを得る炭酸化工程とによって炭酸カルシウムが合成される。この際、生石灰に水を加えて調製した消石灰の懸濁液をスクリーンに通して、懸濁液中に含まれる低溶解性の石灰粒を除去してもよい。また、消石灰を直接カルシウム源としてもよい。本発明において炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する場合、キャビテーション気泡の存在下で炭酸化反応を行えばよい。
一般に、炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを製造する際の反応容器(炭酸化反応機:カーボネーター)として、ガス吹き込み型カーボネーターと機械攪拌型カーボネーターが知られている。ガス吹き込み型カーボネーターでは、消石灰懸濁液(石灰乳)を入れた炭酸化反応槽に炭酸ガスを吹き込み、消石灰と炭酸ガスとを反応させるが、単純に炭酸ガス
を吹き込むだけでは気泡の大きさを均一かつ微細に制御することが難しく、反応効率の点からは制限がある。一方、機械攪拌型カーボネーターでは、カーボネーター内部に攪拌機を設け、その攪拌機の近くに炭酸ガスを導入することによって、炭酸ガスを細かな気泡とし、消石灰と炭酸ガスとの反応効率を向上させている(『セメント・セッコウ・石灰ハンドブック』技報堂出版、1995年、495頁)。
しかし、機械攪拌型カーボネーターのように、炭酸化反応槽内部に設けた攪拌機で攪拌を行う場合、反応液の濃度が高かったり炭酸化反応が進むと反応液の抵抗が大きく十分な攪拌が困難になるため炭酸化反応を的確に制御することが難しかったり、十分な攪拌を行うには攪拌機に相当な負荷がかかりエネルギー的に不利となることがあった。また、ガスの吹込口がカーボネーターの下部にあり、攪拌をよくするために攪拌機の羽根がカーボネーターの底部の近くに設置されている。溶解性が低いライムスクリーン残渣は沈降が速いために、常に底部に滞留しており、ガス吹込口を塞いだり、攪拌機のバランスを崩したりする。さらに、従来の方法では、カーボネーターに加えて、攪拌機や、カーボネーターに炭酸ガスを導入するための設備が必要であり、設備面でもコストがかかるものであった。そして、機械攪拌型カーボネーターでは、攪拌機の近くに供給した炭酸ガスを攪拌機によって細かくすることによって消石灰と炭酸ガスとの反応効率を向上させるものの、反応液の濃度が高い場合などは十分に炭酸ガスを微細化できず、炭酸化反応の面でも、生成する炭酸カルシウムの形態等を正確に制御することが難しいことがあった。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成することによって、効率的に炭酸化反応を進行させ、均一な炭酸カルシウム微粒子を製造することが可能になる。特に噴流キャビテーションを用いることで、羽根などの機械的な攪拌機なしに、十分な攪拌を行うことができる。本発明においては、従来からの公知の反応容器を用いることができ、もちろん、上述したようなガス吹き込み型カーボネーターや機械攪拌型カーボネーターを問題なく使用することができ、これらの容器にノズルなどを用いた噴流キャビテーションを組合せても良い。
炭酸ガス法によって炭酸カルシウムを合成する場合、消石灰の水性懸濁液の固形分濃度は、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%程度である。固形分濃度が低いと反応効率が低く、製造コストが高くなり、固形分濃度が高すぎると流動性が悪くなり、反応効率が落ちる。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸カルシウムを合成するため、固形分濃度の高い懸濁液(スラリー)を用いても、反応液と炭酸ガスを好適に混合することができる。
消石灰を含む水性懸濁液としては、炭酸カルシウム合成に一般に用いられるものを使用でき、例えば、消石灰を水に混合して調製したり、生石灰(酸化カルシウム)を水で消和(消化)して調製することができる。消和する際の条件は特に制限されないが、例えば、CaOの濃度は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、温度は20〜100℃、好ましくは30〜100℃とすることができる。また、消和反応槽(スレーカー)での平均滞留時間も特に制限されないが、例えば、5分〜5時間とすることができ、2時間以内とすることが好ましい。当然であるが、スレーカーはバッチ式であっても連続式であってもよい。なお、本発明においては炭酸化反応槽(カーボネーター)と消和反応槽(スレーカー)とを別々にしてもよく、また、1つの反応槽を炭酸化反応槽および消和反応槽として用いてもよい。
本発明においては、二酸化炭素(炭酸ガス)を含む気体が反応容器に吹き込まれ、反応液と混合される。本発明によれば、ファン、ブロワなどの気体供給装置がなくとも炭酸ガスを反応液に供給することができ、しかも、キャビテーション気泡によって炭酸ガスが微細化されるため炭酸化反応を効率よく行うことができる。
本発明において、二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度に特に制限はないが、二酸化炭素濃度が高い方が好ましい。また、インジェクターに導入する炭酸ガスの量に制限はなく適宜選択することができるが、例えば、消石灰1kgあたり100〜10000L/時の流量の炭酸ガスを用いると好ましい。
本発明の二酸化炭素を含む気体は、実質的に純粋な二酸化炭素ガスでもよく、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、二酸化炭素ガスの他に、空気、窒素などの不活性ガスを含む気体を、二酸化炭素を含む気体として用いることができる。また、二酸化炭素を含む気体としては、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)の他、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラーなどから排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
複合体の成形物
本発明に係る複合体を用いて、適宜、成形物(体)を製造することも可能である。例えば、本発明によって得られた複合体をシート化すると、高灰分のシートを容易に得ることができる。シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合体シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
シート化の際には湿潤および/または乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合体シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
また、填料の繊維への定着を促したり、填料や繊維の歩留を向上させるために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミンおよび第三級および/または四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物などのカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基などのアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性または両イオン性ポリマーとの混合物などを用いることができる。また歩留剤として、カチオン性またはアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲルおよびこれらのアルミニウム改質物などの無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成
分歩留りシステムであってもよい。特に単独または組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
シート化以外の成形法を用いることも可能であり、例えば、パルプモールドと呼ばれるように鋳型に原料を流し込んで吸引脱水・乾燥させる方法や、樹脂や金属などの成形物の表面に塗り広げて乾燥後、基材から剥離する方法などによって、種々の形状を有する成形物を得ることができる。また、樹脂を混ぜてプラスチック様に成形することもできるし、シリカやアルミナ等の鉱物を添加し、焼成することでセラミック様に成形することもできる。以上に示した配合・乾燥・成形において、1種類の複合体のみを用いることもできるし、2種類以上の複合体を混合して用いることもできる。2種類以上の複合体を用いる場合は、予めそれらを混合したものを用いることもできるし、それぞれを配合・乾燥・成形したものを後から混合することもできる。
また、複合体の成形物に後からポリマーなどの各種有機物や顔料などの各種無機物を付与しても良い。
以下に実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実験例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1(参考例):炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体の合成
<炭酸カルシウム・繊維複合体の合成>
水酸化カルシウム(消石灰:Ca(OH)、和光純薬、2重量%)と繊維(0.5%)を含む水性懸濁液を準備した。この水性懸濁液9.5Lを、45L容のキャビテーション装置に入れ、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体を合成した。反応温度は約25℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は12L/minであり、反応液のpHが約7になった段階で反応を停止した(反応前のpHは約12.8)。
複合体の合成においては、図1に示すように反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させたが、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaだった。
この実験においては、炭酸カルシウム微粒子と複合体を形成させる繊維として、以下の4種を使用した。それぞれの繊維の詳細を以下に示す。
(1)表面をミクロフィブリル化した広葉樹パルプ繊維(CV処理パルプ)
(2)セルロースナノファイバー(TEMPO酸化パルプ)
(3)サーモメカニカルパルプ(TMP)
(4)表面をミクロフィブリル化した麻パルプ繊維
(表面をミクロフィブリル化した広葉樹パルプ繊維) カナダ標準濾水度(CSF)が約400mLであるLBKPを水中に離解してパルプ懸濁液(濃度:0.5%)を調製した。このパルプ懸濁液を反応容器に入れ、反応容器内に噴流を導入することによってキャビテーション気泡を発生させた。ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させた。噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaとした。LBKPのCSFが100mL未満になるまで、このキャビテーション処理を約1時間行った。
このようにして得られたパルプの電子顕微鏡写真を図2に示すが、繊維表面のミクロフィブリルが層状に剥離しており、ファイバーテスター(Lorentzen&Wettre)で測定した平均繊維長は0.69mmであった。
(セルロースナノファイバー) N−オキシル化合物で酸化処理したNBKPをナイヤガラビーターでCSFが100mL未満になるまで約15分叩解して、セルロースナノファイバーを得た。得られた繊維の平均繊維長は0.84mmであった(電子顕微鏡写真を図3に示す)。
(サーモメカニカルパルプ) CSFが約400mLまで叩解したサーモメカニカルパルプ(TMP)
(表面をミクロフィブリル化した麻パルプ繊維) 上記の広葉樹パルプ繊維と同様に、麻パルプに対してCSFが100mLより低くなるまでCV処理を行って、表面がミクロフィブリル化した麻パルプを得た。
<複合体の評価>
得られた複合体の電子顕微鏡写真を図4〜7に示す。図4は、キャビテーションで処理した広葉樹パルプ繊維と炭酸カルシウム微粒子との複合体の電子顕微鏡写真である。図4から明らかなように、この複合体は繊維表面に多数の炭酸カルシウム微粒子が析出しており、炭酸カルシウムの一次粒子径は40〜100nm程度(平均:80nm程度)であった。特に、パルプ繊維のフィブリル部分に炭酸カルシウム微粒子が多く生成していた。
また、図5は、TEMPO酸化パルプと炭酸カルシウム微粒子との複合体の電子顕微鏡写真である。図5から明らかように、この複合体でも繊維表面に多数の炭酸カルシウム微粒子が析出しており、炭酸カルシウム微粒子の一次粒子径は40〜100nm程度(平均:80nm程度)であった。この複合体でも、パルプ繊維のフィブリル部分に炭酸カルシウム微粒子が多く生成していた。
また、TMPを用いた場合(図6)、麻パルプを用いた場合(図7)でも、一次粒径が40〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。
複合体を含む反応溶液を濾紙で吸引濾過して観察したところ、繊維と炭酸カルシウム微粒子との複合体は安定して存在しており、繊維から炭酸カルシウム微粒子が脱落することもなかった。
また、これらの複合体の灰分を測定したところ、複合体の81〜82重量%であり、原料(パルプ・水酸化カルシウム)の仕込み比から計算された理論値82重量%と一致した。ここで、複合体の灰分は、複合体を525℃で約2時間加熱した後、残った灰の重量と元の固形分との比率から算出した(JIS P 8251:2003)。
実験2(参考例):炭酸カルシウム微粒子と繊維との複合体の合成
種々の条件で複合体を合成し、電子顕微鏡写真を撮影した。
(実験2−1:サンプルC0、図8)
繊維として広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、CSF:460mL、キャビテーション処理せず)を用いた他は、実験1と同様にして複合体を合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が40〜100nmの炭酸カルシウムが繊維表面に自己定着していた。複合体の灰分は83%であり、仕込み量から計算した理論値(84%)とほぼ同等であった。
(実験2−2:サンプルC1、図9)
繊維としてLBKP(CSF:460mL、キャビテーション処理せず)1250g、水酸化カルシウムを1250g使用し、Ca(OH)の水性懸濁液の総量を100Lとした他は、実験1と同様にして合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が60〜90nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、56%であり、理論値(58%)とほぼ同等であった。
(実験2−3:サンプルC2、図10)
繊維としてLBKP/NBKPの混合パルプ(重量比:8/2、CSF:50ml、キャビテーション処理せず)8300g、水酸化カルシウムを8300g使用し、Ca(OH)の水性懸濁液の総量を415L、二酸化炭素流量を40L/min、反応開始温度を16℃とした他は、実験1と同様にして複合体を合成した。
電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が60〜90nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、56%であり、理論値(58%)とほぼ同等であった。
(実験2−4:サンプルC3、図11)
水酸化カルシウムの仕込み濃度を0.74%とし、二酸化炭素流量を5L/minとした以外は、実験1と同様にして複合体を合成した。
電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、いずれも48%であり、理論値(50%)とほぼ同等であった。
(実験2−5:サンプルC4、図12)
用いるキャビテーションノズルを2流体対応(ノズルから吐出される直前に水酸化カルシウム懸濁液が二酸化炭素ガスと混合される)に変えた以外は、サンプルC3と同様に合成した。
電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が30〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。灰分を測定した結果、いずれも48%であ
り、理論値(50%)とほぼ同等であった。
(実験2−6:サンプルC5、図13)
用いる原料を生石灰とした他は、サンプルC4と同様に合成した。電子顕微鏡による観察の結果、一次粒径が40〜80nmの炭酸カルシウムが繊維表面を覆い、自己定着している様子が観察された。
実験3:シリカおよび/またはアルミナの微粒子と繊維との複合体の合成
以下の条件で繊維複合体を合成し、電子顕微鏡写真を撮影した。
(実験3−1:サンプルC6、図14)
水酸化カルシウム280gとパルプ(LBKP、CSF:約460mL)70gを混合し、水道水を加えて14Lにした。珪酸ナトリウム(SiO換算で約30%)400gを添加した後、混合物を反応容器に投入した。その後の手順や反応条件は実験1と同様であるが、pHが約6.7となった段階で反応を停止した。
電子顕微鏡観察の結果、シリカと思われる一次粒子径20〜50nm程度の粒子が炭酸カルシウムの表面に析出している様子が観察された。また、蛍光X線でシリカ(二酸化珪素、SiO)と炭酸カルシウム(CaCO)の存在比を分析したところ、シリカと炭酸カルシウムの両方が存在していることが確認された(表2)。
(実験3−2:サンプルC7、図15)
実験3−1においてpHが約6.7となった後、さらに硫酸アルミニウム水溶液(アルミナ換算0.8%)を添加してpHが6.2になるまで反応させた。
電子顕微鏡観察の結果、シリカと思われる一次粒子径20〜50nm程度の粒子が炭酸カルシウムの表面に析出している様子が観察された。
(実験3−3:サンプルC8、図16)
サンプルC0の複合体スラリー1kg(濃度2.9%)に珪酸ナトリウム(SiO換算で約30%)29gを加えてラボミキサーで撹拌し、硫酸水溶液(10%)41gを添加して複合体を合成した。
電子顕微鏡観察の結果、一次粒子形80nm程の炭酸カルシウムとともに同程度のサイズのシリカが繊維(LBKP)上に存在することが確認できた。蛍光X線でシリカ(SiO)と炭酸カルシウム(CaCO)の存在比を分析したところ、シリカと炭酸カルシウムの両方が存在していることが確認された(表2)。
(実験3−4:サンプルC9、図17)
パルプ(LBKP/NBKP=8/2、CSF:約50mL)60gと硫酸バンド水溶液(アルミナ換算0.8%、58mL)を混合し、水道水を加えて12Lにした。その後の手順や反応条件は実験1と同様であるが、炭酸ガスを吹き込む代わりに、反応の途中にケイ酸ナトリウム(SiO換算で約30%)380gを滴下し、pHが約9.1となった段階で反応を停止した。
電子顕微鏡観察の結果、一次粒子形20〜50nmのアルミナとシリカの複合結晶がパルプ繊維(LBKP)上に析出していることが確認できた。

Claims (5)

  1. シリカアルミナを含み、平均一次粒子径が100nm以下である微粒子が繊維表面に析出している繊維複合体。
  2. 前記微粒子の平均一次粒子径が20〜50nmである、請求項に記載の繊維複合体。
  3. 前記繊維がセルロース繊維である、請求項1または2に記載の繊維複合体。
  4. 前記繊維がパルプ繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維複合体。
  5. 前記繊維が木材由来である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維複合体。
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